(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5691653
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】電気伝導率計
(51)【国際特許分類】
G01R 27/22 20060101AFI20150312BHJP
G01N 27/06 20060101ALI20150312BHJP
G01R 35/00 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
G01R27/22 A
G01N27/06 Z
G01R35/00 J
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-46153(P2011-46153)
(22)【出願日】2011年3月3日
(65)【公開番号】特開2012-184925(P2012-184925A)
(43)【公開日】2012年9月27日
【審査請求日】2014年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219451
【氏名又は名称】東亜ディーケーケー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091281
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】赤堀 登央
(72)【発明者】
【氏名】武田 良夫
【審査官】
柳 重幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−099871(JP,A)
【文献】
特開平06−223291(JP,A)
【文献】
特開2000−088674(JP,A)
【文献】
特開2008−245831(JP,A)
【文献】
実開昭56−065478(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 27/00−27/32
35/00−35/06
G01N 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定液に電流を通流させるセンサ部を備えた検出器と、前記センサ部の出力信号を変換して被測定液の電気伝導率を測定する変換器と、を備えた電気伝導率計であって、所定温度における被測定液を模擬する等価抵抗を、前記センサ部に代えて前記変換器に接続することにより測定値を校正可能とした電気伝導率計において、
オン動作により前記等価抵抗を前記変換器に接続するリードスイッチと、このリードスイッチに対し相対的に移動して前記リードスイッチに磁束を作用させることにより前記リードスイッチをオン動作させる永久磁石と、を備え、
前記リードスイッチをトランスファー接点タイプとし、その常閉接点側に温度補償用のサーミスタを接続すると共に常開接点側に前記等価抵抗を接続し、前記永久磁石により前記リードスイッチをオン動作させて前記常開接点を閉じるように構成したことを特徴とする電気伝導率計。
【請求項2】
請求項1に記載した電気伝導率計において、
前記リードスイッチを前記検出器の内部に配置し、前記永久磁石を前記検出器の外部に配置したことを特徴とする電気伝導率計。
【請求項3】
請求項2に記載した電気伝導率計において、
前記永久磁石を前記検出器の外面に沿って移動可能に配置したことを特徴とする電気伝導率計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の電気伝導率を測定する電気伝導率計(導電率計)に関し、詳しくは、被測定液を模擬した等価抵抗を用いて電気伝導率の測定値を校正するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体の電気伝導率計は、上下水や各種製造・加工プロセスの溶液濃度、抵抗率の測定等に広く用いられている。この種の電気伝導率計では、一定温度(例えば25℃)における被測定液の電気伝導率の測定値が真値を示すように、電気伝導率が既知である標準液(電解液)を用いて測定値を校正し、液体濃度に応じた測定値が得られるか等の直線性確認試験を行っている。
なお、電気伝導率計における校正方法は、例えば、JIS K 0552「超純水の電気伝導率試験方法」に記載されている。
【0003】
一方、特許文献1には、電解液を用いずに測定値を簡単に校正可能とした導電率計が開示されている。
この先行技術は、液体の導電率測定用のセンサ部と、センサ部の検出信号を導電率に変換する変換部と、センサ部及び変換部を接続するケーブルと、温度測定値校正用の第1のダミー抵抗と導電率測定値校正用の第2のダミー抵抗とを有するダミー抵抗ユニットと、を備え、測定値の校正時には、センサ部から取り外したケーブルにダミー抵抗ユニットを接続して変換部により測定動作を行い、そのときの測定値がダミー抵抗ユニットによる真値となるように変換部を調整するものである。
【0004】
上記先行技術によれば、電解液を用いずに校正することができるため、電解液を規定濃度、規定温度に維持する困難を解消できると共に、センサ部を被測定設備に設置したままの状態で簡便に校正作業を行うことができる等の利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−114575号公報(段落[0015]〜[0026]、
図2〜
図6等)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された先行技術では、校正を行うたびにセンサ部からケーブルを取り外してダミー抵抗ユニットを接続しなくてはならず、その作業は極めて煩雑である。
また、変換器に等価抵抗(上記ダミー抵抗に相当)を内蔵し、電磁リレーやソフトウェアによって校正時に等価抵抗を接続することも考えられるが、既存の変換器のハードウェアやソフトウェアを変更したり、余分な電力を必要とする等の問題がある。
【0007】
そこで、本発明の解決課題は、簡単な操作によって測定値の校正を可能とし、ハードウェア、ソフトウェアの大幅な変更や余分な電力消費を不要にした電気伝導率計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、被測定液に電流を通流させるセンサ部を備えた検出器と、前記センサ部の出力信号を変換して被測定液の電気伝導率を測定する変換器と、を備えた電気伝導率計であって、所定温度における被測定液を模擬する等価抵抗を、前記センサ部に代えて前記変換器に接続することにより測定値を校正可能とした電気伝導率計において、
オン動作により前記等価抵抗を前記変換器に接続するリードスイッチと、このリードスイッチに対し相対的に移動して前記リードスイッチに磁束を作用させることにより前記リードスイッチをオン動作させる永久磁石と、を備え
、
前記リードスイッチをトランスファー接点タイプとし、その常閉接点側に温度補償用のサーミスタを接続すると共に常開接点側に前記等価抵抗を接続し、前記永久磁石により前記リードスイッチをオン動作させて前記常開接点を閉じるように構成したものである。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載した電気伝導率計において、前記リードスイッチを前記検出器の内部に配置し、前記永久磁石を前記検出器の外部に配置したものである。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載した電気伝導率計において、前記永久磁石を前記検出器の外面に沿って移動可能に配置したものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、リードスイッチに対して永久磁石を相対的に移動させてリードスイッチをオンさせることにより、変換器の入力側に、センサ部に代えて等価抵抗を接続することができる。このため、ケーブル等の部品を接続替えする煩雑な作業を伴わずに測定値の校正作業を容易かつ迅速に行うことができる。
また、変換器のハードウェアやソフトウェアの大幅な変更が不要であり、電磁リレー等による電力消費もないため、経済性に優れている。更に、既存の検出器の回路や構造に若干の変更を加えるだけで実現可能であるから、製造コストを抑制して資源の有効利用を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態における検出器の断面図である。
【
図2】
図1におけるリードスイッチ、サーミスタ、等価抵抗と変換器との接続形態を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態における磁石保持具の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
図1は、この実施形態に係る電気伝導率計の検出器100の断面図であり、この検出器100は、例えば被測定液に浸漬されてその電気伝導率を測定するために使用される。
【0015】
図1において、101は検出器100を被測定設備に取り付けるためのフランジであり、その底面中央部にはほぼ円筒状の検出器本体部102が垂設されている。検出器本体部102の下端部には、電磁誘導により被測定液に電流を通流させてその電気伝導率を測定するための検出コイル103及び励磁コイル104が、同軸上に配置されている。ここで、検出コイル103及び励磁コイル104を纏めてセンサ部109という。
【0016】
前記コイル103,104は変換器(図示せず)の測定用入力端子に接続されており、変換器では、励磁コイル104に交流電圧を印加したときに被測定液に流れる交流電流(被測定液の電気伝導率に比例する)を介して検出コイル103に交流電圧を誘導させ、この電圧に基づいて被測定液の電気伝導率を測定する。
なお、105は、被測定液を検出器本体部102の内部に導入するための開口部である。
【0017】
ここで、本実施形態では、上述したように電磁式の電気伝導率計について説明するが、本発明は、センサ部としての一対の電極間に被測定液を介して流れる電流を検出する電極式の電気伝導率計にも適用可能である。また、検出器は被測定液に浸漬されるタイプだけでなく、いわゆる流液型であっても良い。
【0018】
検出器本体部102の内部には、リードスイッチ(リードリレー)106、サーミスタ107及び等価抵抗108が収納されている。
図1では、これらの部品のみを示してあるが、プリント基板等を用いて各部品(特にリードスイッチ106)の位置を固定しておくことが望ましい。
【0019】
図2は、リードスイッチ106、サーミスタ107及び等価抵抗108と変換器との接続状態を示している。
図2において、リードスイッチ106は、いわゆるトランスファー接点タイプであり、その共通端子S
0は変換器の入力側に接続されている。また、リードスイッチ106の常閉接点S
1は温度補償用のサーミスタ107の一端に接続され、常開接点S
2は等価抵抗108の一端に接続されている。また、サーミスタ107の他端と等価抵抗108の他端とは、一括して変換器の入力側に接続されている。
【0020】
ここで、サーミスタ107は被測定液の温度を検出して変換器に入力し、その液温を例えば25℃に換算して電気伝導率の測定値を温度補償するためのものである。
また、等価抵抗108は、実際に被測定液を測定する代わりその抵抗値を模擬するためのものであり、この等価抵抗108を変換器の測定入力端子に接続したときに変換器によって測定、表示される抵抗値が、既知である等価抵抗108の抵抗値になるように、変換器のボリュームや測定レンジ等を調整するためのものである。
【0021】
再び
図1において、リードスイッチ106は検出器本体部102の内部上方に配置されている。そして、検出器本体部102の外部には、上記リードスイッチ106と対向する位置Pに移動可能なように、永久磁石110が配置されている。ここで、永久磁石110が検出器本体部102から離脱しないように、後述する如く、永久磁石110を何らかの形で検出器本体部102に取り付けておくことが望ましい。
【0022】
永久磁石110は、測定値の校正時に、リードスイッチ106に磁界を作用させてそのリードを
図2における常閉接点S
1側から常開接点S
2側に切り替える機能を有している。この永久磁石110は、通常の測定時にはその磁界がリードスイッチ106に作用しない位置、例えば検出器本体部102の下方位値にあり、校正時に軸方向に沿って位置Pまで移動することにより、リードスイッチ106に磁界を作用させてリードを常開接点S
2側に切り替える。
【0023】
なお、永久磁石110は必ずしも検出器本体部102の外面を軸方向に沿って移動させる必要はなく、通常の測定時には検出器本体部102の軸に直交する平面内でリードスイッチ106から離れた位置に置き、校正時に上記平面内をリードスイッチ106の近傍まで移動させても良い。
また、永久磁石110による磁界がリードスイッチ106に作用する状態と作用しない状態とを作ればよいため、永久磁石110とリードスイッチ106とは相対的に移動すれば足りる。
【0024】
図1には、永久磁石110の保持構造につき示されていないが、例えば
図3に示すように、検出器本体部102を包囲するような円環状の磁石保持具110Aのリードスイッチ106に対向する周方向一部に永久磁石110を内蔵し、この磁石保持具110Aを、周知の支持手段により支持しながら検出器本体部102の軸方向に平行移動させても良い。
また、円環状の磁石保持具110Aの内周面及び検出器本体部102の外周面にねじ切りを施して、磁石保持具110Aを検出器本体部102の軸方向に沿って回転移動させ、
図1の位置Pにて永久磁石110とリードスイッチ106とを対向させるようにしても良い。
永久磁石110は、上述したように何らかの保持機構、支持機構を用いて検出器本体部102に取り付けることが望ましいが、永久磁石110を紛失するおそれや保管の煩わしさがなければ、校正時に人手によって永久磁石110をリードスイッチ106に近接させても良い。
【0025】
次に、この実施形態の動作を説明する。
まず、被測定液の電気伝導率の測定時には、永久磁石110を
図1の実線の位置に配置し、永久磁石110からの磁束がリードスイッチ106に作用しないようにする。この時、リードスイッチ106のリードは常閉接点S
1側にあるため、測定モードにおける変換器の入力端子にはサーミスタ107が接続されている。これにより、変換器では、サーミスタ107による検出抵抗値から被測定液の温度を求め、この温度を用いてセンサ部109からの検出信号(電気伝導率に相当)を周知の演算式により温度補償して例えば25℃における電気伝導率を演算し、この演算値を測定値とする。
【0026】
また、測定値を校正する場合には、永久磁石110を
図1の一点鎖線の位置Pに移動させ、永久磁石110からの磁束の作用によってリードスイッチ106のリードを常開接点S
2側に切り替える。このため、校正モードの変換器の入力端子には等価抵抗108が接続されることになる。この等価抵抗108の抵抗値は既知であるから、変換器では、その抵抗値に応じた電気伝導率が測定値として変換され、表示されるように、ボリューム等を調整すればよい。
これにより、実際の測定時に変換器によって測定される電気伝導率は、変換器に入力されるセンサ部109の検出信号に応じた電気伝導率の真値に常に一致することとなり、測定値の校正が完了するものである。
【0027】
なお、実施形態ではトランスファ接点タイプのリードスイッチ106を用いてサーミスタ107または等価抵抗108のいずれかを変換器に接続可能としているが、一般的な2枚のリードを有するメーク接点(一回路)タイプのリードスイッチと永久磁石とを用いて等価抵抗のみを変換器に接続し、温度補償用のサーミスタについては別回路を形成して変換器に接続するように構成しても良い。
【符号の説明】
【0028】
100:検出器
101:フランジ
102:検出器本体部
103:検出コイル
104:励磁コイル
105:開口部
106:リードスイッチ
107:サーミスタ
108:等価抵抗
109:センサ部
110:永久磁石
110A:磁石保持具
S
0:共通端子
S
1:常閉端子
S
2:常開端子