【実施例】
【0030】
表1〜3に示す配合からなる19種類のタイヤトレッド用ゴム組成物(実施例1〜6、比較例1〜13)を、表4に示す配合剤を共通配合として含むように調製した。先ず、硫黄、加硫促進剤を除く成分を1.8Lの密閉型ミキサーで5分間混練し放出する。このマスターバッチを室温で放冷した後、オープンロールに供し硫黄、加硫促進剤を加えて混練することにより調製した。尚、表1〜3において、フィラー総量はシリカ及びカーボンブラックの配合量の合計を表わし、シリカ比率はフィラー総量に占めるシリカの重量比率を表わし、シランカップリング剤比率は、シランカップリング剤の配合量がシリカ配合量に対する割合を表わす。また、表1〜3において、変性S−SBR1及び2、S−SBR1及び2、並びにBRの配合量を夫々の上段に示すと共に、油展オイルを除いた正味のゴム成分の配合量を、夫々の下段に括弧付きで示した。更に、使用した変性S−SBR1及び2、S−SBR1及び2について、変性基の種類、スチレン含有量、シス量、トランス量、ビニル量、重量平均分子量、ガラス転移点(Tg)、及び油添量を表5に示した。
【0031】
得られた19種類のタイヤトレッド用ゴム組成物の加工性の指標としてムーニー粘度を以下の方法で測定した。
【0032】
加工性;ムーニー粘度
得られたゴム組成物の加工性を、ムーニー粘度(ML
1+4 )により評価した。ムーニー粘度(ML
1+4 )は、JIS K6300に準拠して、ムーニー粘度計にてL型ロータ(38.1mm径、5.5mm厚)を使用し、予熱時間1分、ロータの回転時間4分、100℃、2rpmの条件で測定した。得られた結果は、比較例1の値の逆数を100とする指数として表1に示した。この指数が大きいほどムーニー粘度が低く加工性が優れることを意味する。尚、指数値が98以上であれば許容範囲内(従来レベル)であるものとする。
【0033】
また得られた19種類のタイヤトレッド用ゴム組成物を所定形状の金型中で、160℃、20分間プレス加硫して加硫ゴムサンプルを作製し、下記に示す方法でウェットグリップ性能、転がり抵抗、及び耐摩耗性を測定した。
【0034】
ウェットグリップ性能;tanδ(0℃)
得られた加硫ゴムサンプルのウェットグリップ性能を、ウェットグリップ性能の指標であることが知られているtanδ(0℃)により評価した。tanδ(0℃)は、東洋精機製作所社製粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hzの条件下で、温度0℃の損失正接tanδ(0℃)を測定した。得られた結果は、比較例1の値を100とする指数として表1に示した。この指数が大きいほどウェットグリップ性能が優れることを意味する。
【0035】
転がり抵抗;tanδ(60℃)
得られた加硫ゴムサンプルの転がり抵抗を、転がり抵抗の指標であることが知られているtanδ(60℃)により評価した。tanδ(60℃)は、東洋精機製作所社製粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hzの条件下で、温度60℃の損失正接tanδ(60℃)を測定した。得られた結果は、比較例1の値の逆数を100とする指数として表1に示した。この指数が大きいほどtanδ(60℃)が小さく低発熱で転がり抵抗が優れることを意味する。尚、指数値が98以上であれば許容範囲内(従来レベル)であるものとする。
【0036】
耐摩耗性
得られた加硫ゴムサンプルを、JIS K6264に準拠して、ランボーン摩耗試験機(岩本製作所社製)を使用して、荷重49N、スリップ率25%、時間4分、室温の条件で摩耗量を測定した。得られた結果は、比較例1の摩耗量の逆数を100とする指数として表1に示した。この指数が大きいほど耐摩耗性が優れることを意味する。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
【表4】
【0041】
【表5】
【0042】
なお、表1〜3及び5において使用した原材料の種類を下記に示す。
NR:天然ゴム、SIR20
変性S−SBR1:末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴム、旭化成社製E581、ゴム成分100重量部に対しオイル分37.5重量部を含む油展品
変性S−SBR2:末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴム、日本ゼオン社製NS530、ゴム成分100重量部に対しオイル分20.0重量部を含む油展品
S−SBR1:溶液重合スチレンブタジエンゴム、JSR社製HP755B、ゴム成分100重量部に対しオイル分37.5重量部を含む油展品
S−SBR2:溶液重合スチレンブタジエンゴム、旭化成社製タフデン1834、ゴム成分100重量部に対しオイル分37.5重量部を含む油展品
BR1:ブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol BR1220、分子量分布Mw/Mn=2.9
BR2:ブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol BRX5000、分子量分布Mw/Mn=6.4、ゴム成分100重量部に対し低分子量成分を40重量部含む
シリカ1:Rhodia Silica社製ZEOSIL 115GR、窒素吸着比表面積=116m
2 /g
シリカ2:Rhodia Silica社製ZEOSIL PREMIUM 200MP、窒素吸着比表面積=204m
2 /g
シリカ3: Rhodia Silica社製ZEOSIL 1165MPGR、窒素吸着比表面積=162m
2 /g
CB:カーボンブラック、キャボットジャパン社製ショウブラックN234
カップリング剤:EVONIK DEGUSSA社製SI69
アロマオイル:昭和シェル石油社製エキストラクト4号S
【0043】
また、表4において使用した原材料の種類を下記に示す。
加工助剤:SCHILL&SEILACHER社製Struktol A50P
亜鉛華:正同化学社製酸化亜鉛3種
ステアリン酸:千葉脂肪酸社製ビーズステアリン酸桐
老化防止剤:フレキシス社製SANTOFLEX 6PPD
ワックス:大内新興化学工業社製サンノック
加硫促進剤:大内新興化学工業社製ノクセラーCZ−G
硫黄:アクゾノーベル社製クリステックスHS OT 20
【0044】
表1及び3の結果から明らかなように、実施例1〜6のタイヤトレッド用ゴム組成物は、いずれも比較例1と比べ加工性及び転がり抵抗を良好に維持しながらウェットグリップ性能及び耐摩耗性を向上することが出来た。
【0045】
一方、表1の結果から明らかなように、比較例2のタイヤトレッド用ゴム組成物は、天然ゴムの代わりに低Tgであるスチレンブタジエンゴムを使用したがウェットグリップ性能が悪化した。比較例3のタイヤトレッド用ゴム組成物は、分子量分布Mw/Mnが4.0より大きいブタジエンゴムを使用したため加工性及びウェットグリップ性能が悪化した。
【0046】
また、表2の結果から明らかなように、比較例4のタイヤトレッド用ゴム組成物は、変性S−SBR2の重量平均分子量が100万より小さいためウェットグリップ性能及び耐摩耗性が悪化した。比較例5のタイヤトレッド用ゴム組成物は、変性S−SBR1の代わりに未変性のS−SBR1を使用したため耐摩耗性が悪化した。比較例6のタイヤトレッド用ゴム組成物は、変性S−SBR1が60重量%未満、BRが30重量%を超えるため加工性及びウェットグリップ性能が悪化した。比較例7のタイヤトレッド用ゴム組成物は、変性S−SBR1が60重量%未満、NRが30重量%を超えるためウェットグリップ性能が悪化した。比較例8のタイヤトレッド用ゴム組成物は、シリカ1の窒素吸着比表面積が120m
2 /g未満であるためウェットグリップ性能及び耐摩耗性が悪化した。比較例9のタイヤトレッド用ゴム組成物は、シリカ2の窒素吸着比表面積が180m
2 /gを超えるため加工性が悪化した。
【0047】
表3の結果から明らかなように、比較例10のタイヤトレッド用ゴム組成物は、フィラー総量が80重量部より大きいため加工性及び転がり抵抗が悪化した。比較例11のタイヤトレッド用ゴム組成物は、全フィラー中に占めるシリカの比率が90重量%より大きいため加工性及び耐摩耗性が悪化した。比較例12のタイヤトレッド用ゴム組成物は、全フィラー中に占めるシリカの比率が60重量%より小さいため転がり抵抗が悪化した。比較例13のタイヤトレッド用ゴム組成物は、シランカップリング剤の配合量がシリカ配合量の6重量%より小さいため加工性及耐摩耗性が悪化した。