特許第5691714号(P5691714)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5691714
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】剥離紙用原紙
(51)【国際特許分類】
   D21H 27/00 20060101AFI20150312BHJP
   D21H 19/58 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   D21H27/00 A
   D21H19/58
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-65202(P2011-65202)
(22)【出願日】2011年3月24日
(65)【公開番号】特開2012-201990(P2012-201990A)
(43)【公開日】2012年10月22日
【審査請求日】2013年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊須 豊
(72)【発明者】
【氏名】次良丸 靖
(72)【発明者】
【氏名】八幡 慶
【審査官】 中村 勇介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−008298(JP,A)
【文献】 特開2000−355670(JP,A)
【文献】 特開2010−222757(JP,A)
【文献】 特開2001−002975(JP,A)
【文献】 特開2001−064896(JP,A)
【文献】 特開2000−178897(JP,A)
【文献】 特開2004−027444(JP,A)
【文献】 特開2001−253017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B 1/00− 1/38
D21C 1/00−11/14
D21D 1/00−99/00
D21F 1/00−13/12
D21G 1/00− 9/00
D21H11/00−27/42
D21J 1/00− 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に顔料および接着剤を主成分とする塗工層を設けた剥離紙用原紙であって、前記接着剤が少なくとも芳香族ビニル系単量体、脂肪族共役ジエン系単量体およびエチレン性不飽和酸単量体を水性媒体中で乳化重合して得られる共重合体ラテックスで、前記共重合体ラテックス中のエチレン性不飽和酸単量体の全単量体成分における配合比率が5〜40質量%であり、前記塗工層中にカチオン性含窒素化合物を含有させることを特徴とする剥離紙用原紙。
【請求項2】
前記カチオン性含窒素化合物が変性ポリアミド樹脂であることを特徴とする請求項に記載の剥離紙用原紙。
【請求項3】
前記顔料100質量部に対して、前記接着剤を30〜70質量部配合することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の剥離紙用原紙。
【請求項4】
前記顔料100質量部に対して、前記カチオン性含窒素化合物を0.1〜20.0質量部配合することを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の剥離紙用原紙。
【請求項5】
前記接着剤が少なくとも芳香族ビニル系単量体20〜70質量%、脂肪族共役ジエン系単量体25〜70質量%およびエチレン性不飽和酸単量体5〜40質量%を水性媒体中で乳化重合して得られる共重合体ラテックスであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の剥離紙用原紙。
【請求項6】
前記顔料が体積平均粒子径0.1〜10.0μm、アスペクト比3.0以上であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の剥離紙用原紙。
【請求項7】
前記顔料がカオリンであることを特徴とする請求項に記載の剥離紙用原紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離紙用原紙に関し、特に原紙上にポリエチレンなどによるラミネートを使用せずに、溶剤系、無溶剤系、並びに水系シリコーン剥離剤に対する高いバリアー性を示し、安定した剥離力が得られ、且つ再離解により古紙としての再生利用が可能な剥離紙用原紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
剥離紙はラベル、ステッカーなどの商業、事務用途、工程用剥離紙などの工業用途など広範囲な用途に使用されている。木材パルプを主体とした剥離紙は、一般にフィルムを基材にした剥離フィルムに比べ安価であり、剥離紙そのものは再離解することにより再生利用が可能であること、また用途によっては汎用のポリマーフィルムよりも高温度条件下での強度、伸縮性に優れるといった利点から好まれて使用されている。
【0003】
木材パルプを主体とした剥離紙用原紙は剥離剤であるシリコーンを塗工するため、目止め層としてポリオレフィン系樹脂をラミネートしたものが多用されてきた。しかしながら、前記剥離紙用原紙は古紙として再生利用する際の再離解性に劣る、または水系エマルジョン型シリコーンを塗工すると塗工欠陥が発生しやすいといった欠点があり、主に顔料塗工層(クレーコート層)を設けることによるシリコーンの目止め層について技術開発が進められている。
【0004】
例えば特許文献1には、体積平均粒子径0.5μm〜5μmの平板顔料を使用した塗工層を用いることが開示されているが、顔料の粒子径を最適化するだけでは本発明の所望するバリアー性、安定した剥離力を達成するのは困難である。
特許文献2には、溶剤バリアー性を発現させるために顔料塗工層の上に更に水性塗料からなるバリアー層を設けることが開示されているが、水系シリコーン系剥離剤を用いると安定した剥離力が得られないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4490518号公報
【特許文献2】特開平6−57697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂のラミネート層と同等の目止め性をもち、安定した剥離力を発現し、且つ古紙として再生利用が可能な剥離紙用原紙に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するため、原紙上に設ける塗工層、すなわち前記塗工層に含有させる顔料および接着剤について種々検討し、本発明を完成するに至った。本発明は、以下の各発明を包含する。
【0008】
(1)基材上に顔料および接着剤を主成分とする塗工層を設けた剥離紙用原紙であって、前記接着剤が少なくとも芳香族ビニル系単量体、脂肪族共役ジエン系単量体およびエチレン性不飽和酸単量体を水性媒体中で乳化重合して得られる共重合体ラテックスで、前記共重合体ラテックス中のエチレン性不飽和酸単量体の全単量体成分における配合比率が5〜40質量%であり、前記塗工層中にカチオン性含窒素化合物を含有させる剥離紙用原紙。
【0010】
)前記カチオン性含窒素化合物が変性ポリアミド樹脂である()に記載の剥離紙用原紙。
【0011】
)前記顔料100質量部に対して、前記接着剤を30〜70質量部配合する(1)または(2)に記載の剥離紙用原紙。
【0012】
)前記顔料100質量部に対して、前記カチオン性含窒素化合物を0.1〜20.0質量部配合する()〜()のいずれか1項に記載の剥離紙用原紙。
【0013】
)前記接着剤が少なくとも芳香族ビニル系単量体20〜70質量%、脂肪族共役ジエン系単量体25〜70質量%およびエチレン性不飽和酸単量体5〜40質量%を水性媒体中で乳化重合して得られる共重合体ラテックスである(1)〜()のいずれか1項に記載の剥離紙用原紙。
【0014】
)前記顔料が体積平均粒子径0.1〜10.0μm、アスペクト比3.0以上である(1)〜()のいずれか1項に記載の剥離紙用原紙。
【0015】
)前記顔料がカオリンである()に記載の剥離紙用原紙。
【発明の効果】
【0016】
本発明の剥離紙用原紙を用いることにより、剥離剤を塗工して剥離紙とした際に、安定した剥離力を発現し、且つ古紙として再生利用が可能な剥離紙を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について実施形態を示して詳細に説明する。
本発明において用いる接着剤としては、少なくとも芳香族ビニル系単量体、脂肪族共役ジエン系単量体およびエチレン性不飽和酸単量体からなる単量体混合物を水性媒体中で乳化重合して得られる共重合体ラテックスであり、前記共重合体ラテックス中のエチレン性不飽和酸単量体の全単量体成分における配合比率が5〜40質量%であることが必要である。エチレン性不飽和酸単量体の配合比率の好ましい範囲は5〜30質量%である。前記配合比率が5質量%未満であると、充分なバリアー性が得られない。逆に40質量%を超えてもバリアー性が劣る。
【0018】
本発明の共重合体ラテックスに用いられるエチレン性不飽和酸単量体としては、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスフィニル基等の酸基を有するエチレン性不飽和酸単量体であれば特に限定されず、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸単量体、エチレン性不飽和スルホン酸単量体およびエチレン性不飽和リン酸単量体等が挙げられ、特に重合安定性の点でエチレン性不飽和カルボン酸単量体が好ましい。
【0019】
エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸などの不飽和モノカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、ブテントリカルボン酸などの不飽和多価カルボン酸などが挙げられ、特に不飽和モノカルボン酸が好ましい。
【0020】
本発明の共重合体ラテックスに用いられる脂肪族共役ジエン系単量体としては特に限定されないが、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンおよびクロロプレン等を挙げることができる。これらは単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。これらの脂肪族共役ジエン系単量体のうち、1,3−ブタジエンが好ましい。
【0021】
本発明の共重合体ラテックスに用いられる芳香族ビニル系単量体としては特に限定されないが、例えば、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、ヒドロキシメチルスチレン等を挙げることができる。これらは単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。これらの芳香族ビニル系単量体のうち、スチレンが好ましい。
【0022】
脂肪族共役ジエン系単量体、芳香族ビニル系単量体の配合比率は、使用されるエチレン性不飽和酸単量体の配合比率にもよるが、前記共重合体のガラス点移温度が−5〜40℃程度になるように調節するのが好ましい。すなわち、脂肪族共役ジエン系単量体の使用量が多過ぎると、共重合体の塗膜の柔軟性が増し、接着強度が強くなり過ぎて、剥離紙用原紙の離解性が低下する。また、芳香族ビニル系単量体の使用量が多過ぎると、共重合体の成膜性が悪化し、目止めの効果が低下する。さらに、塗膜が脆く、スリット加工、断裁の際のダストの発生が多くなるといった問題も発生する。
【0023】
本発明において芳香族ビニル系単量体、脂肪族共役ジエン系単量体およびエチレン性不飽和酸単量体の各単量体成分の配合比率としては、芳香族ビニル系単量体20〜70質量%、脂肪族共役ジエン系単量体25〜70質量%、エチレン性不飽和酸単量体5〜40質量%が好ましく、より好ましくは芳香族ビニル系単量体25〜60質量%、脂肪族共役ジエン系単量体25〜60質量%、エチレン性不飽和酸単量体5〜30質量%である。
【0024】
また、本発明の共重合体ラテックスには、必要に応じて、上記の単量体と共重合可能な他の単量体を用いてもよい。
【0025】
共重合可能な他の単量体としては、例えば、エチレン性不飽和ニトリル、ジビニルベンゼン等の共役ジビニル化合物、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のポリ(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸テトラフルオロプロピル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジブチル、マレイン酸ジエチル、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸シアノメチル、(メタ)アクリル酸2−シアノエチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジル、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、フマロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−シアノエチルアクリロニトリル等が挙げられる。これら共重合可能な他の単量体は二種類以上を併用してもよい。これらは本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
【0026】
本発明において用いられる顔料としては、特に制限はなく、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、雲母等の無機顔料を適宜選択して用いることができる。
前記顔料は、目止め層としての効果を最大限発現させるためには、レーザー回折式粒度分布計(島津社製、「SALD−2000J」)を用いた体積平均粒子径0.1〜10.0μmのものを使用することが好ましく、より好ましくは1.0〜10.0μmである。また、アスペクト比3以上、より好ましくは10以上のものを使用することが特に好ましい。体積平均粒子径が0.1μm未満の場合、顔料粒子がピンホールを貫通して裏面まで浸透するため効果的な目止め性が得られず、逆にそれが10.0μmを超える粗大な顔料粒子を用いると、塗工面が粗となり、離型剤塗工時に塗工量がより多く必要となり不経済である。
前記顔料は最密充填する場合、一般に板状顔料の空隙率は球状顔料に比べて低く、緻密な塗布層が形成される。このことから前記顔料の中でも、板状顔料を用いることが好ましく、カオリンが特に好ましい。
【0027】
本発明における顔料と共重合体ラテックスの配合比率は、顔料100質量部に対して共重合体ラテックス30〜170質量部が好ましく、より好ましくは35〜100質量部である。共重合体ラテックスの比率が30質量部未満であると、充分なバリアー性が得られず、またスリット加工、断裁の際のダストの発生が多くなるといった問題が発生し易くなり、170質量部を超えると再生利用する際の離解性が悪化する。
【0028】
ところで、膨潤性無機層状化合物であるカオリンは水中で分散した際に、平板状単位の平面部分がアニオン性、エッジ部分がカチオン性に帯電しているため、いわゆるカードハウス構造をとることが知られている。そこで、カチオン性含窒素化合物を膨潤性無機層状化合物の平面部分(アニオン性)に吸着させることで、層を形成した後、膨潤性無機層状化合物と接着剤樹脂の酸基、好ましくはカルボン酸基との密着性を向上し、優れた目止め性を実現させることができる。
【0029】
本発明で使用できるカチオン性含窒素化合物は、水溶液中でカチオン性を示す化合物であれば特に制限はないが、カチオン化度が0.1〜10meq/gのものが好ましく、0.2〜7meq/gが特に好ましい。カチオン化度が0.1meq/g未満であると、カチオン性が弱く、無機層状化合物への吸着力が弱くなるため効果が得られず、10meq/gを超えて大きいと、塗料が凝集し易くなり取扱いが困難となる。
【0030】
カチオン性含窒素化合物を具体的に挙げると、ポリアルキレンポリアミン、ポリアミド化合物、ポリアミドアミン−エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミン−エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミドポリ尿素−エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミンポリ尿素−エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物、及びポリアミドアミンポリ尿素−エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミドポリ尿素化合物、ポリアミンポリ尿素化合物、ポリアミドアミンポリ尿素化合物及びポリアミドアミン化合物、ポリエチレンイミン、ポリビニルピリジン、アミノ変性アクリルアミド系化合物、ポリビニルアミン、ポリアルキレンイミン、シクロペンチル変性ポリエチレンイミン、ポリエチレンポリアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、カチオン性ポリウレタンなどの化合物などの含窒素4級塩化合物がある。また、カチオン変性ポリウレタン樹脂、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、第3級窒素含有アクリル系樹脂等などのカチオン性樹脂などが挙げられ、これらの中でも変性ポリアミド樹脂が好適である。
【0031】
カチオン性含窒素化合物の配合量としては、顔料100質量部に対し、0.1〜20質量部、好ましくは1〜10質量部である。カチオン性含窒素化合物の配合量が0.1質量部未満であると、充分なバリアー効果が得られないおそれがある。配合量が20質量部を超えると、ゲル化により本発明の所望する塗工適性が得られないおそれがある。
【0032】
本発明における塗工層には必要に応じて前記効果を阻害しない範囲において各種塗工に用いられる着色染料、ワックス、更には界面活性剤、消泡剤、増粘剤、保水剤といった塗工助剤を適宜添加することが可能である。
【0033】
前記塗工層の塗布方法としては特に限定されるものではなく、バーコーター、エアナイフコーター、ロッドコーター、ブレードコーター、カーテンコーターなど既存の塗工設備が適用可能である。また、塗布量としては特に限定されるものではないが、充分なバリアー性を発現するためには、5〜20g/m程度の範囲で適宜選択することが可能である。
【実施例】
【0034】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の部及び%は特に断らない限り、それぞれ質量部及び質量%を示す。
【0035】
参考例1)
攪拌機を備え、温度調節可能なオートクレーブの内部を真空に脱気し、メタクリル酸:76g、ブタジエン:188g、スチレン:136g、アルキルフェニルエ−テルサルファイト型乳化剤:10g、イオン交換水:170gを投入し、65℃にて反応させた。
重合開始後6時間目から16時間目の間に、イオン交換水240gと上記と同じ乳化剤2g、過硫酸カリウム0.8gを連続添加しながら重合を継続した。連続添加終了後、重合系を80℃に昇温し、重合開始後30時間目に冷却し、酸変性SBRラテックス(A)を得た。かくして得られたラテックスのガラス転移温度は12℃であった。
カオリン(商品名:HTクレー、BASF社製)(体積平均粒子径:5.6μm、アスペクト比:5.0)100部からなる顔料をコーレス分散機で固形分50%になるように水中に分散して顔料スラリーを得た。このスラリー200部に対し酸変性SBRラテックス(A)(固形分:50%)100部を添加し、塗工液(A)を調製した。
この塗工液(A)を、米坪49g/m、厚さ64μmの上質紙の片面にエアナイフコーターで乾燥後の塗布量が表面に10g/mとなるように塗工、乾燥し、剥離紙用原紙を得た。
【0036】
(剥離層の形成)
(溶剤型シリコーン)
上記のように作成した剥離紙用原紙の表面に、付加反応型シリコーン(商品名:KS−835/信越化学工業社製)100部に白金触媒(商品名:PL50T、信越化学工業社製)0.3部、トルエン200部を加えてシリコーン剥離剤塗液を調製し、得られたシリコーン剥離剤塗液をメイヤーバーにより、乾燥後の塗布量が1.0g/mとなるように塗工し、剥離紙を得た。
(無溶剤型シリコーン)
同じく上記のように作成した剥離紙用原紙の表面に、付加反応型無溶剤シリコーン(商品名:LTC1067M/東レ・ダウコーニング社製)100部に白金触媒(商品名:SRX212、東レ・ダウコーニング社製)2部を加えてシリコーン剥離剤塗液を調製し、得られたシリコーン剥離剤塗液を塗工量が1.0g/mとなるようにグラビア印刷機で塗工し、剥離紙を得た。
(水系エマルジョン型シリコーン)
同じく上記のように作成した剥離紙用原紙の表面に、付加反応型シリコーン(商品名:KM−763/信越化学工業社製)100部、白金触媒(商品名:PM−3、信越化学工業社製)2部、水400部を加えてシリコーン剥離剤塗液を調製し、得られたシリコーン剥離剤塗液をメイヤーバーにより、乾燥後の塗布量が1.0g/mとなるように塗工し、剥離紙を得た。
【0037】
(実施例
参考例1の塗工液Aを下記塗工液(B)に置き換えた以外は実施例1と同様にして剥離紙用原紙、剥離紙を得た。
(塗工液Bの調製)
カオリン(商品名:HTクレー、BASF社製)100部をコーレス分散機で固形分50%になるように水中に分散して顔料スラリーを得た。このスラリー200部に対し酸変性SBRラテックス(A)100部、含窒素化合物(変性ポリアミド樹脂、商品名:SPI203(H)、住友化学社製、固形分50%)4部を添加し、塗工液(B)を調製した。
【0038】
(実施例
実施例の塗工液(B)の酸変性SBRラテックス(A)を、酸変性SBRラテックス(メタクリル酸:38部、ブタジエン:42部、スチレン:20部、Tg:39℃、固形分:50%)に置き換えた以外は実施例と同様にして剥離紙用原紙、剥離紙を得た。
【0039】
(実施例
実施例の塗工液(B)の調製において、酸変性SBRラテックスを100部から60部に減配した以外は実施例と同様にして剥離紙用原紙、剥離紙を得た。
【0040】
(実施例
実施例の塗工液(B)の調製において、酸変性SBRラテックスを100部から400部に増配した以外は実施例と同様にして剥離紙用原紙、剥離紙を得た。
【0041】
(実施例
実施例の塗工液(B)の調製において、カオリンをカオリン(商品名:UW90、BASF社製)(体積平均粒子径:2.6μm、アスペクト比:10.0)に置き換えた以外は実施例と同様にして剥離紙用原紙、剥離紙を得た。
【0042】
(実施例
実施例の塗工液(B)の調製において、カオリンを重質炭酸カルシウム(商品名:FMT90、ファイマテック社製)(体積平均粒子径:1.1μm、アスペクト比:1.0)に置き換えた以外は実施例と同様にして剥離紙用原紙、剥離紙を得た。
【0043】
(比較例1)
実施例7の塗工液(B)の調製において、酸変性SBRラテックスをメタクリル酸:3部、ブタジエン:34部、スチレン:63部、Tg:6℃、固形分:50%に置き換えた以外は実施例7と同様にして剥離紙用原紙、剥離紙を得た。
【0044】
(比較例2)
実施例7の塗工液(B)の調製において、酸変性SBRラテックスをメタクリル酸:45部、ブタジエン:50部、スチレン:5部、Tg:26℃、固形分:50%に置き換えた以外は実施例7と同様にして剥離紙用原紙、剥離紙を得た。
【0045】
(比較例3)
実施例1の塗工液(A)の替わりに、厚さ20μmのポリエチレンをラミネートし剥離紙用原紙としてもちいた以外は実施例1と同様にして剥離紙用原紙、剥離紙を得た。
【0046】
<試験方法>
1)溶剤バリアー性:
染料溶液(0.1%オイルレッドトルエン溶液)、2mlを塗工面に滴下し直後にウエスにて拭取り、染料の原紙への染み込み具合を5×5cmの範囲で目視にて観察し、剥離紙用原紙のバリアー性を評価した。
◎:全く染み込まない
○:1〜2点の小さな染み込みが観られる
△:1〜3点の大きめな染み込みが見られる
×:無数の染み込みが観られる。
【0047】
2)剥離力測定:
クラフト粘着テープNo.712F(日東電工社製)を貼り付け、2Kgのローラーを一往復させて圧着し、剥離力測定用のサンプルを作成した。その後、引っ張り試験機を用いて180°の角度で剥離するのに要する力(N/50mm)を測定した。
【0048】
3)離解性
供試紙を1cm×1cmの寸法に切断し、その8gを、家庭用ミキサー中において500mlの水に混合(濃度1.6%)し、2分間攪拌して再生パルプを調製し、内容物を取り出し、このパルプスラリーから、実験室用手抄きマシンにより紙シートを作製した。得られたシートを温度120℃の熱風循環式オーブン中で20分乾燥した。乾燥シート中の未離解物(フィルム片、繊維塊、未離解紙片など)の有無を目視検査した。未離解物が含まれず、均一なシートを形成したものを、良好と判定した。
【0049】
4)ガラス転移温度
接着剤のガラス転移温度は以下のようにして計算した。本発明でいうガラス転移温度とは、例えば、妹尾学・栗田公夫・矢野彰一郎・澤口孝志著「基礎高分子科学」(共立出版株式会社、2000年)に記載されているような非晶領域における高分子鎖のセグメントがミクロブラウン運動を開始する温度で、共重合体の場合は、同書131〜132頁に記載されているFoxの式により計算されるガラス転移温度である。即ち、共重合体のガラス転移温度は次式によって計算されたものである。
【0050】
【数1】
【0051】
前記式において、Tgとは共重合体のガラス転移温度であり、絶対温度に換算して計算される。Tg、Tg、・・・・・、Tgは、成分1、2、・・・・・、nのそれぞれのホモポリマー1、2、・・・・・、nのガラス転移温度であり、絶対温度に換算して計算される。また、W、W、・・・・・、Wは、共重合体成分中における特定のモノマーの質量分率である。
【0052】
【表1】
【0053】
本発明の結果から明らかなように、本発明の実施例で得られた剥離紙用原紙を用いることにより、トルエン溶液に対する高いバリアー性をもち、溶剤、無溶剤、および水系エマルジョン型のシリコーンに対しても、良好な剥離力を持った剥離紙が得られ、かつ該剥離紙は、良好な離解性を示し、再生紙としての再利用が可能であった。