【実施例】
【0034】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の部及び%は特に断らない限り、それぞれ質量部及び質量%を示す。
【0035】
(
参考例1)
攪拌機を備え、温度調節可能なオートクレーブの内部を真空に脱気し、メタクリル酸:76g、ブタジエン:188g、スチレン:136g、アルキルフェニルエ−テルサルファイト型乳化剤:10g、イオン交換水:170gを投入し、65℃にて反応させた。
重合開始後6時間目から16時間目の間に、イオン交換水240gと上記と同じ乳化剤2g、過硫酸カリウム0.8gを連続添加しながら重合を継続した。連続添加終了後、重合系を80℃に昇温し、重合開始後30時間目に冷却し、酸変性SBRラテックス(A)を得た。かくして得られたラテックスのガラス転移温度は12℃であった。
カオリン(商品名:HTクレー、BASF社製)(体積平均粒子径:5.6μm、アスペクト比:5.0)100部からなる顔料をコーレス分散機で固形分50%になるように水中に分散して顔料スラリーを得た。このスラリー200部に対し酸変性SBRラテックス(A)(固形分:50%)100部を添加し、塗工液(A)を調製した。
この塗工液(A)を、米坪49g/m
2、厚さ64μmの上質紙の片面にエアナイフコーターで乾燥後の塗布量が表面に10g/m
2となるように塗工、乾燥し、剥離紙用原紙を得た。
【0036】
(剥離層の形成)
(溶剤型シリコーン)
上記のように作成した剥離紙用原紙の表面に、付加反応型シリコーン(商品名:KS−835/信越化学工業社製)100部に白金触媒(商品名:PL50T、信越化学工業社製)0.3部、トルエン200部を加えてシリコーン剥離剤塗液を調製し、得られたシリコーン剥離剤塗液をメイヤーバーにより、乾燥後の塗布量が1.0g/m
2となるように塗工し、剥離紙を得た。
(無溶剤型シリコーン)
同じく上記のように作成した剥離紙用原紙の表面に、付加反応型無溶剤シリコーン(商品名:LTC1067M/東レ・ダウコーニング社製)100部に白金触媒(商品名:SRX212、東レ・ダウコーニング社製)2部を加えてシリコーン剥離剤塗液を調製し、得られたシリコーン剥離剤塗液を塗工量が1.0g/m
2となるようにグラビア印刷機で塗工し、剥離紙を得た。
(水系エマルジョン型シリコーン)
同じく上記のように作成した剥離紙用原紙の表面に、付加反応型シリコーン(商品名:KM−763/信越化学工業社製)100部、白金触媒(商品名:PM−3、信越化学工業社製)2部、水400部を加えてシリコーン剥離剤塗液を調製し、得られたシリコーン剥離剤塗液をメイヤーバーにより、乾燥後の塗布量が1.0g/m
2となるように塗工し、剥離紙を得た。
【0037】
(実施例
1)
参考例1の塗工液Aを下記塗工液(B)に置き換えた以外は実施例1と同様にして剥離紙用原紙、剥離紙を得た。
(塗工液Bの調製)
カオリン(商品名:HTクレー、BASF社製)100部をコーレス分散機で固形分50%になるように水中に分散して顔料スラリーを得た。このスラリー200部に対し酸変性SBRラテックス(A)100部、含窒素化合物(変性ポリアミド樹脂、商品名:SPI203(H)、住友化学社製、固形分50%)4部を添加し、塗工液(B)を調製した。
【0038】
(実施例
2)
実施例
1の塗工液(B)の酸変性SBRラテックス(A)を、酸変性SBRラテックス(メタクリル酸:38部、ブタジエン:42部、スチレン:20部、Tg:39℃、固形分:50%)に置き換えた以外は実施例
1と同様にして剥離紙用原紙、剥離紙を得た。
【0039】
(実施例
3)
実施例
1の塗工液(B)の調製において、酸変性SBRラテックスを100部から60部に減配した以外は実施例
1と同様にして剥離紙用原紙、剥離紙を得た。
【0040】
(実施例
4)
実施例
1の塗工液(B)の調製において、酸変性SBRラテックスを100部から400部に増配した以外は実施例
1と同様にして剥離紙用原紙、剥離紙を得た。
【0041】
(実施例
5)
実施例
1の塗工液(B)の調製において、カオリンをカオリン(商品名:UW90、BASF社製)(体積平均粒子径:2.6μm、アスペクト比:10.0)に置き換えた以外は実施例
1と同様にして剥離紙用原紙、剥離紙を得た。
【0042】
(実施例
6)
実施例
1の塗工液(B)の調製において、カオリンを重質炭酸カルシウム(商品名:FMT90、ファイマテック社製)(体積平均粒子径:1.1μm、アスペクト比:1.0)に置き換えた以外は実施例
1と同様にして剥離紙用原紙、剥離紙を得た。
【0043】
(比較例1)
実施例7の塗工液(B)の調製において、酸変性SBRラテックスをメタクリル酸:3部、ブタジエン:34部、スチレン:63部、Tg:6℃、固形分:50%に置き換えた以外は実施例7と同様にして剥離紙用原紙、剥離紙を得た。
【0044】
(比較例2)
実施例7の塗工液(B)の調製において、酸変性SBRラテックスをメタクリル酸:45部、ブタジエン:50部、スチレン:5部、Tg:26℃、固形分:50%に置き換えた以外は実施例7と同様にして剥離紙用原紙、剥離紙を得た。
【0045】
(比較例3)
実施例1の塗工液(A)の替わりに、厚さ20μmのポリエチレンをラミネートし剥離紙用原紙としてもちいた以外は実施例1と同様にして剥離紙用原紙、剥離紙を得た。
【0046】
<試験方法>
1)溶剤バリアー性:
染料溶液(0.1%オイルレッドトルエン溶液)、2mlを塗工面に滴下し直後にウエスにて拭取り、染料の原紙への染み込み具合を5×5cm
2の範囲で目視にて観察し、剥離紙用原紙のバリアー性を評価した。
◎:全く染み込まない
○:1〜2点の小さな染み込みが観られる
△:1〜3点の大きめな染み込みが見られる
×:無数の染み込みが観られる。
【0047】
2)剥離力測定:
クラフト粘着テープNo.712F(日東電工社製)を貼り付け、2Kgのローラーを一往復させて圧着し、剥離力測定用のサンプルを作成した。その後、引っ張り試験機を用いて180°の角度で剥離するのに要する力(N/50mm)を測定した。
【0048】
3)離解性
供試紙を1cm×1cmの寸法に切断し、その8gを、家庭用ミキサー中において500mlの水に混合(濃度1.6%)し、2分間攪拌して再生パルプを調製し、内容物を取り出し、このパルプスラリーから、実験室用手抄きマシンにより紙シートを作製した。得られたシートを温度120℃の熱風循環式オーブン中で20分乾燥した。乾燥シート中の未離解物(フィルム片、繊維塊、未離解紙片など)の有無を目視検査した。未離解物が含まれず、均一なシートを形成したものを、良好と判定した。
【0049】
4)ガラス転移温度
接着剤のガラス転移温度は以下のようにして計算した。本発明でいうガラス転移温度とは、例えば、妹尾学・栗田公夫・矢野彰一郎・澤口孝志著「基礎高分子科学」(共立出版株式会社、2000年)に記載されているような非晶領域における高分子鎖のセグメントがミクロブラウン運動を開始する温度で、共重合体の場合は、同書131〜132頁に記載されているFoxの式により計算されるガラス転移温度である。即ち、共重合体のガラス転移温度は次式によって計算されたものである。
【0050】
【数1】
【0051】
前記式において、Tgとは共重合体のガラス転移温度であり、絶対温度に換算して計算される。Tg
1、Tg
2、・・・・・、Tg
nは、成分1、2、・・・・・、nのそれぞれのホモポリマー1、2、・・・・・、nのガラス転移温度であり、絶対温度に換算して計算される。また、W
1、W
2、・・・・・、W
nは、共重合体成分中における特定のモノマーの質量分率である。
【0052】
【表1】
【0053】
本発明の結果から明らかなように、本発明の実施例で得られた剥離紙用原紙を用いることにより、トルエン溶液に対する高いバリアー性をもち、溶剤、無溶剤、および水系エマルジョン型のシリコーンに対しても、良好な剥離力を持った剥離紙が得られ、かつ該剥離紙は、良好な離解性を示し、再生紙としての再利用が可能であった。