特許第5691746号(P5691746)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社今仙電機製作所の特許一覧

<>
  • 特許5691746-リクライニング装置 図000002
  • 特許5691746-リクライニング装置 図000003
  • 特許5691746-リクライニング装置 図000004
  • 特許5691746-リクライニング装置 図000005
  • 特許5691746-リクライニング装置 図000006
  • 特許5691746-リクライニング装置 図000007
  • 特許5691746-リクライニング装置 図000008
  • 特許5691746-リクライニング装置 図000009
  • 特許5691746-リクライニング装置 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5691746
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】リクライニング装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/427 20060101AFI20150312BHJP
   B60N 2/22 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   B60N2/427
   B60N2/22
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-79061(P2011-79061)
(22)【出願日】2011年3月31日
(65)【公開番号】特開2012-214067(P2012-214067A)
(43)【公開日】2012年11月8日
【審査請求日】2014年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095795
【弁理士】
【氏名又は名称】田下 明人
(74)【代理人】
【識別番号】100143454
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 克彦
(72)【発明者】
【氏名】植田 勝
【審査官】 永安 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−278644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/427
B60N 2/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートのシートクッションに対してヘッドレストが設けられるシートバックを傾動させるリクライング装置であって、
前記シートクッションが固定されるシートクッション側部材と前記シートバックが固定されるシートバック側部材とを相対傾動可能に連結するリクライング機構と、
前記リクライング機構のうち前記シートバック側部材の傾動に追従する部位に一側端部が連結されるとともに前記シートバック側部材に他側端部が連結されて、これら一側端部および他側端部をそれぞれ連結する破断部および変形部を有する衝撃吸収部材と、
を備え、
前記変形部は、前記破断部よりも変形容易であって、前記一側端部と前記他側端部とを引き離す外力による前記破断部の破断直後では、当該外力に応じて変形し破断しないように形成されることを特徴とするリクライング装置。
【請求項2】
前記破断部には、他の部位よりも幅を狭くした幅狭部が形成されることを特徴とする請求項1に記載のリクライング装置。
【請求項3】
前記破断部は、前記一側端部と前記他側端部とを最短距離で連結するように形成されることを特徴とする請求項1または2に記載のリクライング装置。
【請求項4】
前記変形部は、前記破断部に対して対称となるように一対形成されることを特徴とする請求項3に記載のリクライング装置。
【請求項5】
前記衝撃吸収部材は、前記破断部および前記変形部が一体的に形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のリクライング装置。
【請求項6】
前記衝撃吸収部材は、前記破断部および前記変形部が別体として形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のリクライング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートのシートクッションに対してシートバックを傾動させるリクライング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートのシートクッションに対してシートバックを傾動させるリクライング装置として、下記特許文献1に開示されるリクライング装置が知られている。このリクライング装置は、車両用シートのシートバックが通常の着座状態にある場合に、シートバックフレーム側のヒンジブラケットの切欠溝の上端部に中間ヒンジのストッパーピンが係止され、回動規制されている。
【0003】
この状態で、シートバックフレームの一側側より衝撃荷重が加えられると、シートバックフレーム側のヒンジブラケットの切欠溝の上端部と中間ヒンジのストッパーピンとで衝撃荷重が受けられる。そして、ヒンジブラケットの切欠溝の上端部が所定の衝撃荷重を受けると、ストッパーピンが衝撃吸収スリットを拡開して衝撃吸収スリットの長さの範囲で衝撃を吸収し、衝撃吸収スリットの上端でストッパーピンが停止する。すなわち、ストッパーピンが衝撃吸収スリットを変形させることで、衝撃荷重が吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−033242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図9は、後面衝突時の乗員Hの状態とシート100の後傾状態との関係を示す説明図であり、図9(A)は、後方衝撃力が作用する前の状態を示し、図9(B)は、後方衝撃力が作用した直後の状態を示し、図9(C)は、乗員Hの頭部H1がシートバック112のヘッドレスト113に接触した状態を示す。
ところで、図9(A)に例示するように、リクライング装置が搭載された車両用シート100に乗員Hが着座した状態において、車両の後方からの衝突等による衝撃力(以下、後方衝撃力という)が作用すると、この衝撃力を受けた乗員Hによりシートバック112が後方に後傾することで、乗員Hに対する当該後方衝撃力が吸収される。
【0006】
しかしながら、大きな後方衝撃力が作用したために、図9(B)に例示するように、当該後方衝撃力の作用直後に乗員Hの胸部H2等によりシートバック112が押圧されると、乗員Hの頭部H1がシートバック112のヘッドレスト113等に接触することなくシートバック112が後方に後傾する。このため、図9(C)に例示するような乗員Hの頭部H1がシートバック112のヘッドレスト113等に接触するまでの時間が長くなってしまい、頭部H1の拘束が遅れてしまうという問題がある。
【0007】
上記特許文献1のような構成では、衝撃吸収スリットの変形により後方衝撃力を吸収できるものの、シートバックの後傾量が多くなり、頭部の拘束が遅れてしまうという問題を解決することができない。
一方、後方衝撃力の作用時にシートバックの後方への後傾を抑制するため、シートバックの強度を単に高めると、シートバックの後傾は抑制されるものの、当該後方衝撃力の吸収が不十分になるという問題がある。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、後面衝突時に、着座する乗員の頭部を早期に拘束するとともに衝撃力を好適に吸収し得るリクライング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1のリクライニング装置では、車両用シートのシートクッションに対してヘッドレストが設けられるシートバックを傾動させるリクライング装置であって、前記シートクッションが固定されるシートクッション側部材と前記シートバックが固定されるシートバック側部材とを相対傾動可能に連結するリクライング機構と、前記リクライング機構のうち前記シートバック側部材の傾動に追従する部位に一側端部が連結されるとともに前記シートバック側部材に他側端部が連結されて、これら一側端部および他側端部をそれぞれ連結する破断部および変形部を有する衝撃吸収部材と、を備え、前記変形部は、前記破断部よりも変形容易であって、前記一側端部と前記他側端部とを引き離す外力による前記破断部の破断直後では、当該外力に応じて変形し破断しないように形成されることを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載のリクライニング装置において、前記破断部には、他の部位よりも幅を狭くした幅狭部が形成されることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載のリクライニング装置において、前記破断部は、前記一側端部と前記他側端部とを最短距離で連結するように形成されることを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項3に記載のリクライニング装置において、前記変形部は、前記破断部に対して対称となるように一対形成されることを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のリクライニング装置において、前記衝撃吸収部材は、前記破断部および前記変形部が一体的に形成されることを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のリクライニング装置において、前記衝撃吸収部材は、前記破断部および前記変形部が別体として形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明では、リクライング機構のうちシートバック側部材の傾動に追従する部位に一側端部が連結されるとともにシートバック側部材に他側端部が連結されて、これら一側端部および他側端部をそれぞれ連結する破断部および変形部を有する衝撃吸収部材が設けられている。そして、変形部は、破断部よりも変形容易であって、一側端部と他側端部とを引き離す外力による破断部の破断直後では、当該外力に応じて変形し破断しないように形成される。
【0016】
これにより、車両の後方からの衝突等による後方衝撃力が一側端部と他側端部とを引き離す外力として作用すると、破断部が破断するまで一側端部および他側端部の相対移動が抑制される。このため、破断部が破断するまで一側端部が連結されるリクライング機構と他側端部が連結されるシートバック側部材との相対移動が抑制されて、シートバックの後方への後傾が抑制されるので、車両用シートに着座している乗員の頭部を、シートバックのヘッドレストにより早期に拘束しやすくすることができる。そして、破断部の破断直後では、変形部が破断することなく当該外力に応じて変形するため、この変形部の変形に応じて当該後方衝撃力を好適に吸収することができる。
したがって、後面衝突時に、着座する乗員の頭部を早期に拘束しやすくするとともに後方衝撃力を好適に吸収することができる。
【0017】
請求項2の発明では、破断部には、他の部位よりも幅を狭くした幅狭部が形成されるため、破断部が破断する際には幅狭部から破断するので、破断箇所のばらつきがなくなり、破断箇所がばらつく場合と比較して、破断タイミング等のばらつきが抑制される。これにより、頭部の早期拘束と衝撃力の吸収とを高い精度で実現することができる。
【0018】
請求項3の発明では、破断部は、一側端部と他側端部とを最短距離で連結するように形成されるため、破断部が破断する際の変位量を小さくでき、破断タイミング等のばらつきを抑制することができる。
【0019】
請求項4の発明では、変形部は、一側端部と他側端部とを最短距離で連結するように形成される破断部に対して対称となるように一対形成されるため、破断部の破断後に両変形部がそれぞれ同じように変形するので、後方衝撃力をより好適に吸収することができる。
【0020】
請求項5の発明では、衝撃吸収部材は、破断部および変形部が一体的に形成されるため、破断部および変形部を有する衝撃吸収部材を容易に形成することができる。
【0021】
請求項6の発明では、衝撃吸収部材は、破断部および変形部が別体として形成されるため、頭部の早期拘束を目的とした破断部の構成と、後方衝撃力の吸収を目的とした変形部の構成とを、互いに他方を考慮することなく設計できるので、材料や形状など設計の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明のリクライニング装置を備える車両用シートの一例を概念的に示す側面図である。
図2図1のリクライニング装置の側面図である。
図3図1のリクライニング装置の分解斜視図である。
図4】リクライニング機構に衝撃吸収部材を組み付けた状態を示す斜視図である。
図5】衝撃吸収部材の詳細形状を示す正面図である。
図6】衝撃吸収部材の変形過程を説明する説明図である。
図7】シートバックの後傾量と後方衝撃力との関係を示すグラフである。
図8】本実施形態に係る変形例の衝撃吸収部材の要部を示す正面図である。
図9】後面衝突時の乗員の状態とシートの後傾状態との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るリクライニング装置20を備える車両用シート10の一実施形態について図を参照して説明する。図1は、本発明のリクライニング装置20を備える車両用シート10の一例を概念的に示す側面図である。
図1に示すように、本発明のリクライニング装置20を備える車両用シート10は、乗員の座部を受けるシートクッション11と、このシートクッション11に対して傾動可能であって乗員の背部を受けるシートバック12とを備えている。そして、シートバック12の上部には、乗員の頭部を受けるヘッドレスト13が設けられている。
【0024】
シートクッション11の骨格となる座部フレーム11aと、シートバック12の骨格となる背部フレーム12aとが、座部フレーム11aの端部に設置されたリクライニング装置20により連結されており、当該リクライニング装置20の操作レバー(図示略)の操作に応じて、ヘッドレスト13とともにシートバック12がシートクッション11に対して傾動可能となっている。
【0025】
次に、リクライニング装置20について、図2図5を用いて詳細に説明する。図2は、図1のリクライニング装置20の側面図である。図3は、図1のリクライニング装置20の分解斜視図である。図4は、リクライニング機構21に衝撃吸収部材30を組み付けた状態を示す斜視図である。図5は、衝撃吸収部材の詳細形状を示す正面図である。なお、図4では、便宜上、第2プレート23を波線を用いて図示している。
【0026】
図2図4に示すように、リクライニング装置20は、リクライニング機構21と、座部フレーム11aに固定される第1プレート22と、背部フレーム12aに固定される第2プレート23と、連結プレート24と、衝撃吸収部材30とを備えている。
【0027】
リクライニング機構21は、一側面21aに連結される第1プレート22と、他側面21bに連結プレート24を介して連結される第2プレート23とを、回動軸21cを中心に相対傾動可能に連結する機構である。当該リクライニング機構21では、回動軸21cに連結される上記操作レバーの操作に応じて当該回動軸21cが回動することで、第1プレート22および第2プレート23が相対回動可能な状態になる。すなわち、上記操作レバーの操作に応じて、第2プレート23が固定される背部フレーム12aが、第1プレート22が固定される座部フレーム11aに対して回動軸21cを基準に傾動可能となり、シートクッション11に対するシートバック12の傾動位置が調整可能な状態となる。なお、第1プレート22は、特許請求の範囲に記載の「シートクッション側部材」の一例に相当し、第2プレート23は、特許請求の範囲に記載の「シートバック側部材」の一例に相当し得る。
【0028】
第2プレート23には、その下端部に、連結プレート24の下端部を締結するための貫通穴23aが形成されるとともに、その中央部に、衝撃吸収部材30の他側端部32(後述する)を締結するための貫通穴23bが形成されている。
【0029】
連結プレート24は、中央に形成される係合穴24aにリクライニング機構21の他側面21bの複数の係合突起21dを係合することにより、当該他側面21bに連結される。また、連結プレート24は、下端部に取り付けられる締結具24bと第2プレート23の下端に形成される貫通穴23aとを締結具25により締結するとともに、上端部に形成される貫通穴24cと第2プレート23に固定される衝撃吸収部材30の貫通穴31a(後述する)とを締結具26により締結することにより、第2プレート23に連結される。これにより、連結プレート24は、リクライニング機構21の他側面21bの回動(傾動)に追従するように、当該他側面21bおよび第2プレート23と一体となって回動軸21cを中心に回動する。
【0030】
図5に示すように、衝撃吸収部材30は、貫通穴31aが形成される一側端部31と、貫通穴32aが形成される他側端部32と、これら一側端部31および他側端部32をそれぞれ連結する破断部33および一対の変形部34a,34bとを備えており、各部が一体的に形成されている。
【0031】
破断部33は、一側端部31と他側端部32とが引き離されることで当該破断部33が破断する際の変位量を小さくするために、一側端部31と他側端部32とを最短距離で連結するように形成されている。この破断部33の中間部位には、破断箇所のばらつきを抑制するために、他の部位よりも幅を狭くした幅狭部33aが形成されている。当該破断部33は、後述する後方衝撃力が一側端部31と他側端部32とを引き離す外力Fとして作用する場合に、この外力Fが所定値を超えるまで破断しないように、その幅および板厚等が設定されて形成されている。ここで、上記所定値は、図4の矢印αにて示す後方衝撃力の作用直後に乗員の胸部等によりシートバックが押圧される際に乗員の頭部がヘッドレスト等に接触する時間まで当該シートバックの後傾を抑制し、この時間を過ぎると破断する程度に設定されている。
【0032】
一対の変形部34a,34bは、破断部33に対して対称に湾曲して一側端部31と他側端部32とを連結するように形成されている。両変形部34a,34bは、上記外力Fに対して破断部33よりも変形容易であって、上記外力Fによる破断部33の破断直後では、当該外力に応じて変形し破断しないように、その幅および板厚等が設定されて形成されている。
【0033】
上述のように構成される衝撃吸収部材30は、図4から分かるように、一側端部31にて、貫通穴31aおよび貫通穴24cに締結される締結具26により連結プレート24の上端部に連結され、他側端部32にて、貫通穴32aおよび貫通穴23bに締結される締結具27により第2プレート23の中央部に連結される。このようにして、衝撃吸収部材30は、連結プレート24および第2プレート23に組み付けられ、上記操作レバーの操作に応じてシートバック12がシートクッション11に対して傾倒する場合には、連結プレート24および第2プレート23等と一体となって回動軸21cを中心に回動(傾動)する。
【0034】
次に、衝撃吸収部材30による作用効果を図6および図7を用いて説明する。図6は、衝撃吸収部材30の変形過程を説明する説明図であり、図6(A)は、外力Fが作用する前の状態を示し、図6(B)は、外力Fが作用した直後の状態を示し、図6(C)は、破断部33が破断した後の状態を示す。図7は、シートバック12の後傾量と後方衝撃力との関係を示すグラフである。
【0035】
上記操作レバーが操作されないためにリクライニング機構21が相対傾動不能な状態であり、この状態において車両の後方からの衝突等による後方衝撃力が生じると、この衝撃力を受けた乗員によりシートバック12を後傾させる力が作用する。この場合、リクライニング機構21は相対回動しないため、第2プレート23には、シートバック12を介して、第1プレート22に対して貫通穴23a近傍を基準に後傾させる力が作用することとなる(図4の矢印α参照)。このため、上記後方衝撃力が一側端部31と他側端部32とを引き離す外力Fとして、衝撃吸収部材30に作用することとなる。
【0036】
このため、図6(A)に示す状態の衝撃吸収部材30に対して、上記外力Fが作用した直後では、図6(B)に示すように、破断部33が幅狭部33a近傍でわずかに延伸するだけで破断しないため、一側端部31および他側端部32の大きな相対移動が抑制される。そして、上記外力Fの増加により破断部33が破断した直後では、両変形部34a,34bが破断することなく当該外力Fに応じて変形している。この破断後に、図6(C)に示すように、一側端部31および他側端部32が大きく相対移動して両変形部34a,34bが上記外力Fに応じてさらに変形することで、当該外力F、すなわち、上記後方衝撃力が好適に吸収されることとなる。
【0037】
このときのシートバック12の後傾量(シートバック12の上部の変動量)と後方衝撃力との関係を図7のグラフを用いて説明する。図7の符号S1は、本発明の構成における後傾量と後方衝撃力との関係を示し、符号S2は、従来の構成における後傾量と後方衝撃力との関係を示す。
【0038】
破断部および変形部が採用されない従来の構成であって後方衝撃力の吸収を重視した構成では、図7の符号S2にて示すように、比較的小さな後方衝撃力によりシートバックの後傾量が増加し、乗員の頭部の拘束が遅れてしまう。
【0039】
一方、本発明の特徴的構成である衝撃吸収部材30が採用されるリクライニング装置20に対して、上記後方衝撃力(外力F)が作用した直後では、破断部33がわずかに変形するだけで破断しないために、図7の符号Aにて示すように、大きな後方衝撃力が作用しても後傾量はわずかに増加するだけである。
【0040】
このように、上記後方衝撃力が一側端部31と他側端部32とを引き離す外力Fとして作用すると、破断部33が破断するまで一側端部31および他側端部32の相対移動が抑制される。このため、破断部33が破断するまで一側端部31が連結されるリクライニング機構21と他側端部32が連結される第2プレート23との相対移動が抑制されて、シートバック12の後方への後傾が抑制されるので、車両用シート10に着座している乗員の頭部を、シートバック12のヘッドレスト13により早期に拘束しやすくすることができる。
【0041】
そして、後方衝撃力がさらに増加することで破断部33が破断すると、一側端部31および他側端部32は両変形部34a,34bのみにより連結された状態となるために、図7の符号Bにて示すように、一側端部31および他側端部32を引き離すために必要な力が低下する。
【0042】
このように、破断部33の破断直後では、両変形部34a,34bが破断することなく当該外力Fに応じて変形するため、これら両変形部34a,34bの変形に応じて当該後方衝撃力を好適に吸収することができる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態に係るリクライニング装置20では、リクライニング機構21のうち背部フレーム12a(第2プレート23)の傾動に追従する連結プレート24に一側端部31が連結されるとともに第2プレート23に他側端部32が連結されて、これら一側端部31および他側端部32をそれぞれ連結する破断部33および両変形部34a,34bを有する衝撃吸収部材30が設けられている。そして、両変形部34a,34bは、破断部33よりも変形容易であって、一側端部31と他側端部32とを引き離す外力Fによる破断部33の破断直後では、当該外力Fに応じて変形し破断しないように形成される。
【0044】
このように、破断部33が破断するまで一側端部31および他側端部32の相対移動が抑制され、破断部33の破断直後では両変形部34a,34bが破断することなく当該外力Fに応じて変形するため、後面衝突時に、着座する乗員の頭部を早期に拘束しやすくするとともに後方衝撃力を好適に吸収することができる。
【0045】
また、破断部33には、他の部位よりも幅を狭くした幅狭部33aが形成されるため、破断部33が破断する際には幅狭部33aから破断するので、破断箇所のばらつきがなくなり、破断箇所がばらつく場合と比較して、破断タイミング等のばらつきが抑制される。これにより、頭部の早期拘束と衝撃力の吸収とを高い精度で実現することができる。
【0046】
さらに、破断部33は、一側端部31と他側端部32とを最短距離で連結するように形成されるため、破断部33が破断する際の変位量を小さくでき、破断タイミング等のばらつきをさらに抑制することができる。
【0047】
また、両変形部34a,34bは、一側端部31と他側端部32とを最短距離で連結するように形成される破断部33に対して対称となるように一対形成されるため、破断部33の破断後に両変形部34a,34bがそれぞれ同じように変形するので、後方衝撃力をより好適に吸収することができる。
【0048】
さらに、衝撃吸収部材30は、破断部33および両変形部34a,34bが一体的に形成されるため、破断部33および両変形部34a,34bを有する衝撃吸収部材30を容易に形成することができる。
【0049】
図8は、本実施形態に係る変形例の衝撃吸収部材30aの要部を示す正面図である。
上記実施形態に係る変形例として、図8に例示するように、衝撃吸収部材30aは、破断部33と両変形部34a,34bとがそれぞれ両端部31,32を有するように別体として形成されて、それぞれの一側端部31同士および他側端部32同士を重ねることで構成されてもよい。これにより、頭部の早期拘束を目的とした破断部33の構成と、後方衝撃力の吸収を目的とした両変形部34a,34bの構成とを、互いに他方を考慮することなく設計できるので、材料や形状など設計の自由度を高めることができる。
【0050】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよい。
(1)衝撃吸収部材30,30aは、一側端部31と他側端部32とを最短距離で連結する破断部33と、この破断部33に対して対称となるように一側端部31および他側端部32を連結するように形成される一対の変形部34a,34bとを有するように形成されることに限らず、一側端部31および他側端部32を1または複数の破断部と1または複数の変形部とによりそれぞれ連結するように形成されてもよい。このとき、破断部および変形部は、一側端部31と他側端部32とを最短距離で連結するように形成されてもよいし、湾曲して連結するように形成されてもよい。このように形成される場合であっても、変形部は、破断部よりも変形容易であって、一側端部31と他側端部32とを引き離す外力による破断部の破断直後では、当該外力に応じて変形し破断しないように形成される。
【0051】
(2)一側端部31は、連結プレート24に連結されることに限らず、リクライニング機構21のうち背部フレーム12a(第2プレート23)の傾動に追従する部位、例えば、他側面21bに連結されてもよい。
【0052】
(3)幅狭部33aは、当該破断部33の中間部位に形成されることに限らず、破断箇所のばらつきをなくすことを目的として、他の部位に形成されてもよし、当該破断部33に対して1または複数の凹状の切り欠き等により形成されてもよい。また、破断部33が破断箇所のばらつきの少ない形状等であれば、当該破断部33に対して幅狭部33aを形成しなくてもよい。
【符号の説明】
【0053】
10…車両用シート
11…シートクッション
11a…座部フレーム
12…シートバック
12a…背部フレーム
13…ヘッドレスト
20…リクライニング装置
21…リクライニング機構
22…第1プレート(シートクッション側部材)
23…第2プレート(シートバック側部材)
30,30a…衝撃吸収部材
31…一側端部
32…他側端部
33…破断部
33a…幅狭部
34a,34b…変形部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9