(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の規制部は、前記回転部材における前記押圧部材の押圧力が作用する位置、又は、前記支持部材における前記押圧部材を支持する位置のいずれか一方にのみ設けられていることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の用紙分離装置。
【背景技術】
【0002】
例えば原稿を自動的に搬送するための原稿搬送装置(ADF)などには、複数枚の用紙が積層された状態で搬送(重送)されるのを防止するために、用紙分離装置が備えられている。この種の用紙分離装置の中には、互いに対向する分離ローラ(分離回転部材)と分離パッド(分離部材)との間を原稿が通過する際に、重送される原稿を分離して、1枚ずつ原稿を搬送することができるようになっているものがある。
【0003】
図11は、第1の従来例に係る原稿搬送装置100の内部構成の一例を示した断面斜視図である。この例では、原稿を分離するために回転可能な分離ローラ101と、分離ローラ101の外周面に対向する分離パッド102とが設けられている。分離ローラ101と分離パッド102との間には、原稿を搬送するための原稿搬送路103が形成されている。
【0004】
分離パッド102は、回転軸(図示せず)を中心に回転可能に設けられた回転部材104により支持されている。回転部材104の裏面(分離パッド102側とは反対側の面)には、圧縮ばね105が取り付けられている。
図11では、圧縮ばね105の軸線を通る断面を示している。当該圧縮ばね105により回転部材104が分離ローラ101側に押圧され、当該回転部材104を介して分離パッド102が分離ローラ101側に押圧されるようになっている。
【0005】
圧縮ばね105における回転部材104側とは反対側の端部は、調整ねじ106により支持されている。より具体的には、調整ねじ106に設けられたフランジ部107上に、圧縮ばね105の端面が当接するようになっている。調整ねじ106は、圧縮ばね105の軸線方向に締め付け可能となっており、当該調整ねじ106の締め付け量を調整することにより、フランジ部107の高さを調整することができる。これにより、フランジ部107の高さに応じて圧縮ばね105の圧縮量が変化し、分離ローラ101側への分離バッド102の押圧力が変化するようになっている。
【0006】
図12は、第2の従来例に係る原稿搬送装置200の内部構成の一例を示した断面図である。この例においても、原稿を分離するために回転可能な分離ローラ201と、分離ローラ201の外周面に対向する分離パッド202とが設けられ、分離ローラ201と分離パッド202との間には、原稿を搬送するための原稿搬送路203が形成されている。
【0007】
分離パッド202を支持する回転部材204の裏面(分離パッド202側とは反対側の面)には、圧縮ばね205が取り付けられている。当該圧縮ばね205により回転部材204が分離ローラ201側に押圧され、当該回転部材204を介して分離パッド202が分離ローラ201側に押圧されるようになっている。
【0008】
圧縮ばね205における回転部材204側とは反対側の端部は、支持部材206により支持されている。支持部材206は、回転軸207を中心に回転可能となっており、支持部材206に取り付けられた調整ねじ208の締め付け量を調整することにより、回転軸207を中心に支持部材206を回転させることができるようになっている。これにより、調整ねじ208の締め付け量に応じて圧縮ばね205の圧縮量が変化し、分離ローラ201側への分離バッド202の押圧力が変化するようになっている。
【0009】
他の従来技術として、例えば下記特許文献1には、ソレノイドを用いて圧縮ばねの圧縮量を調整することができるような構成も提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記のような従来技術では、圧縮ばねの圧縮量を調整するための部材として、調整ねじ又はソレノイド、及び、その他の各種部材を設ける必要があるため、構造が複雑であるとともに、部品点数が多いため、製造コストが高いという問題がある。
【0012】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、分離回転部材側への分離部材の押圧力を簡単な構成で調整することができる用紙分離装置、並びに、これを備えた画像読取装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。また、本発明は、製造コストを低減することができる用紙分離装置、並びに、これを備えた画像読取装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る用紙分離装置は、用紙を分離するために回転可能な分離回転部材と、前記分離回転部材の外周面に対向して設けられ、用紙を搬送するための搬送路を前記分離回転部材との間に形成する分離部材と、回転軸を中心に回転可能に設けられ、前記分離部材を支持するとともに、前記回転軸を中心に回転することにより前記分離部材を前記分離回転部材側に押圧可能な回転部材と、前記回転部材を前記分離回転部材側に押圧するための押圧部材とを備え、前記回転部材における前記押圧部材の押圧力が作用する位置と前記回転軸との間の距離が、調整可能となっていることを特徴とする。
【0014】
このような構成によれば、回転部材における押圧部材の押圧力が作用する位置と回転軸との間の距離を調整するだけで、回転部材に作用するトルクを変更することができる。回転部材に作用するトルクが変化すれば、分離回転部材側への分離部材の押圧力も変化するため、分離回転部材側への分離部材の押圧力を簡単な構成で調整することができる。
【0015】
前記押圧部材の取付位置を変更することにより、前記回転部材における前記押圧部材の押圧力が作用する位置と前記回転軸との間の距離が、調整可能となっていてもよい。
【0016】
このような構成によれば、押圧部材の取付位置を変更するだけで、分離回転部材側への分離部材の押圧力を調整することができる。押圧部材の取付位置を変更できるような構成は複雑な構造を必要とせず、調整ねじ又はソレノイドなどを用いる構成と比較して部品点数も少ないため、製造コストを低減することができる。
【0017】
前記用紙分離装置は、前記押圧部材における前記回転部材側とは反対側の端部を支持する支持部材を備え、前記回転部材における前記押圧部材の押圧力が作用する位置、及び、前記支持部材における前記押圧部材を支持する位置のうち少なくとも一方には、前記押圧部材の端部の移動を規制するための複数の規制部が設けられ、当該複数の規制部のいずれかに前記押圧部材の端部を取付可能であってもよい。
【0018】
このような構成によれば、複数の規制部のいずれかに押圧部材の端部を取り付けるという簡単な構成で、分離回転部材側への分離部材の押圧力を調整することができる。
【0019】
前記複数の規制部が、前記押圧部材の端部を収容する凹部を含んでいてもよい。
【0020】
このような構成によれば、凹部に押圧部材の端部を収容させるという非常に簡単な構成で、分離回転部材側への分離部材の押圧力を調整することができる。
【0021】
前記複数の規制部が、前記押圧部材の端部に挿入される凸部を含んでいてもよい。
【0022】
このような構成によれば、凸部に押圧部材の端部を挿入させるという非常に簡単な構成で、分離回転部材側への分離部材の押圧力を調整することができる。
【0023】
前記複数の規制部は、前記回転部材における前記押圧部材の押圧力が作用する位置、又は、前記支持部材における前記押圧部材を支持する位置のいずれか一方にのみ設けられていてもよい。
【0024】
このような構成によれば、押圧部材の一方の端部をいずれかの規制部に取り付けるだけでよいため、押圧部材の両端部をいずれも規制部に取り付けるような構成と比較して、分離回転部材側への分離部材の押圧力をより簡単な構成で調整することができる。
【0025】
本発明に係る画像読取装置は、前記用紙分離装置と、前記用紙としての原稿を搬送するための原稿搬送ローラと、前記原稿の画像を読み取るための画像読取部とを備えたことを特徴とする。
【0026】
このような構成によれば、本発明に係る前記用紙分離装置と同様の効果を奏する画像読取装置を提供することができる。したがって、分離回転部材側への分離部材の押圧力を簡単な構成で調整することができるとともに、製造コストを低減することができる画像読取装置を提供することができる。
【0027】
本発明に係る画像形成装置は、前記用紙分離装置と、前記用紙としての記録紙を搬送するための記録紙搬送ローラと、前記記録紙に画像を形成するための画像形成部とを備えたことを特徴とする。
【0028】
このような構成によれば、本発明に係る前記用紙分離装置と同様の効果を奏する画像形成装置を提供することができる。したがって、分離回転部材側への分離部材の押圧力を簡単な構成で調整することができるとともに、製造コストを低減することができる画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、本発明の一実施形態に係る用紙分離装置2cを備えた画像形成装置1の内部構成を示す概略断面図である。
【0031】
本実施形態における画像形成装置1は、例えば、原稿搬送装置(ADF)2により自動的に供給される原稿の画像を画像読取部3で1枚ずつ読み取り、その原稿の画像データに基づいて記録紙Pに画像を形成する複写機である。当該画像形成装置1には、筺体1a内に、上記画像読取部3の他、画像形成部4及び給紙部5などが備えられており、当該筺体1aの上面に原稿搬送装置2が設けられている。
【0032】
原稿搬送装置2は、原稿トレイ2aを備えており、当該原稿トレイ2a上に原稿をセットすることができるようになっている。原稿搬送装置2は、ピックアップローラ2b及び用紙分離装置2cにより、原稿トレイ2a上にセットされた原稿を1枚ずつ送り出す。用紙分離装置2cは、例えば分離ローラ20及び分離パッド21を備えている。送り出された原稿は、複数の原稿搬送ローラ2d、2e、2fにより原稿搬送路2gを搬送され、当該原稿搬送路2gの途中で第2ガラス板3c上を通過する際に、画像読取部3により画像が読み取られる。画像が読み取られた後の原稿は、排出ローラ2hにより原稿排出トレイ2i上に順次排出される。
【0033】
画像読取部3には、例えばCCD(Charge Coupled Devices)又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどの受光部が設けられている。画像読取部3は、主走査方向に直交する水平方向(副走査方向)に発光部を移動させながら第1ガラス板3d上に置かれた原稿に光を照射し、原稿からの反射光を受光部で受光することによって、原稿の画像を読み取ることができる。また、画像読取部3は、静止した状態で第2ガラス板3cに向かって光を照射し、原稿搬送装置2により第2ガラス板3c上を搬送される原稿からの反射光を受光部で受光することによって、原稿の画像を読み取ることもできる。
【0034】
第1ガラス板3dに置かれた原稿を読み取る場合には、受光部で原稿からの反射光を受光することにより主走査が行われるとともに、発光部が副走査方向に移動することにより副走査が行われる。一方、原稿搬送装置2により1枚ずつ第2ガラス板3c上に搬送される原稿を読み取る場合には、受光部で原稿からの反射光を受光することにより主走査が行われるとともに、第2ガラス板3c上を原稿が搬送されることにより副走査が行われる。
【0035】
第1ガラス板3d及び第2ガラス板3cは、筺体1aの上面に形成されており、原稿搬送装置2は、筺体1aの上面に対して上下に開閉可能に取り付けられている。したがって、第1ガラス板3d上に置かれた原稿を画像読取部3で読み取る場合には、原稿搬送装置2を閉じることにより、当該原稿搬送装置2と第1ガラス板3dとの間に原稿を挟むことができるようになっている。すなわち、原稿搬送装置2は、第1ガラス板3d上のセット位置に置かれている原稿を押さえるために開閉される開閉カバー10を構成している。ただし、開閉カバー10は、原稿搬送装置2により構成されるものに限らず、開閉可能な他のあらゆるカバーを採用することができる。
【0036】
画像形成部4は、感光体ドラム4a、帯電器4b、光書込みユニット4c、現像器4d、転写器4e及び定着器4fを備え、電子写真方式により記録紙Pに画像を形成する。感光体ドラム4aの表面には感光体が形成されており、画像形成時には、回転駆動される感光体ドラム4aの表面が帯電器4bにより一様に帯電される。光書込みユニット4cは、画像読取部3で読み取った原稿の画像データなどに基づいて、LED(Light-Emitting Diode)又はレーザ光源から光を出力する。帯電器4bにより一様に帯電された感光体ドラム4aの表面には、光書込みユニット4cから出力される光で露光されることにより、静電潜像が形成される。
【0037】
静電潜像が形成された感光体ドラム4aの表面には、現像器4dから供給されるトナーが付着することによりトナー像が形成され、このトナー像が転写器4eを用いて記録紙Pに転写される。トナー像が転写された記録紙Pは、定着器4fにより加熱処理及び加圧処理が施された後、排出ローラ4gから排出トレイ4h上に排出される。
【0038】
給紙部5は、記録紙Pを収容するための給紙カセット6を備えており、この給紙カセット6内に設けられた支持板9上に、記録紙Pを積層した状態で収容することができるようになっている。支持板9は、その第1端部における軸線9aを中心に回転可能となっており、第1端部とは反対側の第2端部が圧縮ばね9bによって上方へ付勢されることにより、最上部の記録紙Pが給紙ローラ7に対して押圧される。給紙ローラ7に対向する位置には、例えば分離パッド(図示せず)が配置されており、給紙ローラ7が回転駆動されることにより給紙カセット6内から送り出される記録紙Pは、上記分離パッドの作用により、記録紙搬送路12に1枚ずつ送り出される。
【0039】
記録紙搬送路12には、1つ又は複数の記録紙搬送ローラ13が設けられている。給紙カセット6から1枚ずつ送り出される記録紙Pは、記録紙搬送ローラ13により記録紙搬送路12内を搬送され、画像形成部4へと送られる。そしてレジストローラ14により、記録紙Pは感光体ドラム4aの直前で一旦停止され、感光体ドラム4aに形成されるトナー像を転写させるタイミングに合わせて送り出される。
【0040】
図2は、原稿搬送装置2の内部構成の一例を示した断面斜視図であり、用紙分離装置2cの近傍を斜め上方から見た図を示している。
図3は、原稿搬送装置2の内部構成の一例を示した断面斜視図であり、用紙分離装置2cの近傍を斜め下方から見た図を示している。
【0041】
本実施形態における原稿搬送装置2に備えられた用紙分離装置2cは、複数枚の原稿が積層された状態で搬送(重送)されている場合に、分離ローラ20及び分離パッド21によって、当該複数枚の原稿のうち少なくとも1枚を分離する。
【0042】
分離ローラ20は、原稿を分離するために回転可能な分離回転部材であり、例えば原稿を搬送する方向(
図1における時計回り)に回転可能となっている。ただし、分離回転部材は、分離ローラ20に限らず、ベルトなどにより構成されるものであってもよい。分離パッド21は、分離ローラ20の外周面に対向して設けられた分離部材であり、分離ローラ20との間に原稿搬送路2gを形成している。分離ローラ20は、原稿の搬送方向に対して直交方向に延びる長尺形状を有しており、当該分離ローラ20における長手方向の中央部に対向する位置に、分離パッド21が設けられている。分離パッド21は、摩擦力が比較的大きい材料で形成されていることが好ましく、例えばゴム、コルク又はスポンジなどにより形成することができる。
【0043】
分離パッド21は、回転軸223を中心に回転可能な回転部材22により支持されている。回転部材22の回転軸223は、例えば分離ローラ20の回転軸線に対して平行方向(原稿の搬送方向に対して直交方向)に延びている。したがって、回転軸223を中心に回転部材22を分離ローラ20側へ回転させることにより、分離ローラ20と分離パッド21との間を通過しようとする原稿に対して分離パッド21を押圧することができる。これにより、複数枚の原稿が重送されている場合には、分離ローラ20側に押圧される分離パッド21によって、当該分離パッド21側の原稿が分離され、分離ローラ20に接触している1枚の原稿だけが下流側に搬送される。
【0044】
回転部材22の裏面側(分離パッド21側とは反対側)には、当該回転部材22を分離ローラ20側に押圧する押圧部材としての圧縮ばね23が設けられている。
図2及び
図3では、圧縮ばね23の軸線を通る断面を示している。当該圧縮ばね23により回転部材22が分離ローラ20側に押圧され、当該回転部材22を介して分離パッド21が分離ローラ20側に押圧されるようになっている。ただし、押圧部材は、圧縮ばね23に限らず、例えばゴムなどの弾性部材に例示されるような他の部材であってもよい。
【0045】
圧縮ばね23における回転部材22側とは反対側の端部は、支持部材24により支持されている。当該支持部材24は、例えば原稿搬送装置2内において原稿搬送路2gの一部を形成するためのガイド部材25に一体的に形成されている。本実施形態では、当該ガイド部材25に対して回転部材22が回転可能に取り付けられているが、このような構成に限られるものではない。
【0046】
図4は、ガイド部材25における支持部材24の近傍を斜め上方から見た斜視図である。
図5は、回転部材22における裏面側の形状を示した斜視図である。
【0047】
図2〜
図5に示すように、回転部材22には、圧縮ばね23の上端面に当接する当接面221が形成されている。一方、支持部材24には、圧縮ばね23の下端面に当接する当接面241が形成されている。これらの当接面221,241は互いに平行に対向しており、圧縮ばね23は、軸線が当接面221,241に対して直交方向に延びるように当接面221,241間に取り付けられている。
【0048】
圧縮ばね23は、当接面221,241に平行な方向に沿って取付位置を変更できるようになっている。前記取付位置は、回転部材22の回転軸223に対して直交方向に変更できることが好ましい。圧縮ばね23の取付位置を変更することにより、回転部材22における圧縮ばね23の押圧力が作用する位置(当接面221における圧縮ばね23の当接位置)と回転部材22の回転軸223との距離が、調整可能となっている。
【0049】
図3及び
図5に示すように、回転部材22の当接面221には、圧縮ばね23の上端部の移動を規制するための3つの規制部222が設けられている。各規制部222は、例えば当接面221に形成された凹部からなり、当該凹部は圧縮ばね23の外周面の形状に対応する円弧状の内側面を有する。各規制部222は、回転部材22の回転軸223に対して直交方向に一直線上に並べて連結されることにより、1つの凹部として形成されている。3つの規制部222のいずれかに圧縮ばね23の上端部を収容して取り付けることにより、回転部材22における圧縮ばね23の押圧力が作用する位置を3段階で切り替えることができる。
【0050】
また、
図2及び
図4に示すように、支持部材24の当接面241には、圧縮ばね23の下端部の移動を規制するための3つの規制部242が設けられている。各規制部242は、例えば当接面241から突出するリブの内側に形成された凹部からなり、当該凹部は圧縮ばね23の外周面の形状に対応する円弧状の内側面を有する。各規制部242は、回転部材22の回転軸223に対して直交方向に一直線上に並べて連結されることにより、1つの凹部として形成されている。3つの規制部242のいずれかに圧縮ばね23の下端部を収容して取り付けることにより、支持部材24における圧縮ばね23を支持する位置を3段階で切り替えることができる。
【0051】
回転部材22の規制部222の数と、支持部材24の規制部242の数は、同数であることが好ましい。ただし、規制部222,242は、それぞれ3つに限らず、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0052】
図6A〜
図6Cは、圧縮ばね23の取付位置について説明するための用紙分離装置2cの断面図である。
【0053】
図6Aでは、回転部材22の3つの規制部222、及び、支持部材24の3つの規制部242のうち、いずれも中央の規制部222,242に圧縮ばね23が取り付けられている。
図6Bでは、回転部材22の3つの規制部222、及び、支持部材24の3つの規制部242のうち、いずれも回転軸223から遠い方の規制部222,242に圧縮ばね23が取り付けられている。
図6Cでは、回転部材22の3つの規制部222、及び、支持部材24の3つの規制部242のうち、いずれも回転軸223に近い方の規制部222,242に圧縮ばね23が取り付けられている。
図6A〜
図6Cのいずれにおいても、圧縮ばね23の圧縮量は同一であり、当該圧縮ばね23の押圧力F1も同一である。ただし、圧縮ばね23の取付位置に応じて、圧縮ばね23の圧縮量が変化し、当該圧縮ばね23の押圧力F1も変化するような構成であってもよい。
【0054】
回転部材22の当接面221における圧縮ばね23の押圧力が作用する位置の中心は、力点P1を構成している。回転部材22の回転軸223の軸心は、支点P2を構成している。分離パッド21における分離ローラ20の外周面との接点(原稿が通過する際には、原稿を介して分離ローラ20の外周面に接する点)は、作用点P3を構成している。力点P1と支点P2の距離L1は、圧縮ばね23の取付位置によって変化する。一方、支点P2と作用点P3の距離L2は、圧縮ばね23の取付位置にかかわらず一定である。
【0055】
この場合、力点P1における圧縮ばね23の押圧力F1によって回転部材22に作用するトルクTは、下記式(1)で表すことができる。
T=F1×L1 ・・・・・(1)
【0056】
したがって、分離ローラ20側への分離パッド21の押圧力F2は、下記式(2)で表すことができる。
F2=(F1×L1)/L2 ・・・・・(2)
【0057】
この例では、
図6A〜
図6Cのいずれにおいても、圧縮ばね23の押圧力F1、及び、支点P2と作用点P3の距離L2は同一である。そのため、上記式(2)によれば、力点P1と支点P2の距離L1が長い
図6Bの場合の方が、
図6Aの場合よりも分離ローラ20側への分離パッド21の押圧力F2が大きい。また、力点P1と支点P2の距離L1が短い
図6Cの場合の方が、
図6Aの場合よりも分離ローラ20側への分離パッド21の押圧力F2が小さい。
【0058】
本実施形態では、回転部材22における圧縮ばね23の押圧力F1が作用する位置と回転軸223との間の距離L1を調整するだけで、回転部材22に作用するトルクTを変更することができる。回転部材22に作用するトルクTが変化すれば、分離ローラ20側への分離パッド21の押圧力F2も変化するため、分離ローラ20側への分離パッド21の押圧力F2を簡単な構成で調整することができる。
【0059】
特に、圧縮ばね23の取付位置を変更するだけで、分離ローラ20側への分離パッド21の押圧力F2を調整することができる。圧縮ばね23の取付位置を変更できるような構成は複雑な構造を必要とせず、調整ねじ又はソレノイドなどを用いる構成と比較して部品点数も少ないため、製造コストを低減することができる。
【0060】
また、複数の規制部222,242のいずれかに圧縮ばね23の端部を取り付けるという簡単な構成で、分離ローラ20側への分離パッド21の押圧力F2を調整することができる。さらに、凹部からなる規制部222,242に圧縮ばね23の端部を収容させるという非常に簡単な構成で、分離ローラ20側への分離パッド21の押圧力F2を調整することができる。
【0061】
図7は、別実施形態に係る用紙分離装置2cのガイド部材25における支持部材24の近傍を斜め上方から見た斜視図である。
図8は、別実施形態に係る用紙分離装置2cの回転部材22における裏面側の形状を示した斜視図である。
【0062】
この例では、回転部材22の当接面221に設けられた3つの規制部222が、例えば当接面221から突出する凸部からなり、当該凸部は圧縮ばね23の内周面の形状に対応する円弧状の外側面を有する。各規制部222は、回転部材22の回転軸223に対して直交方向に一直線上に並べて配置されている。3つの規制部222のいずれかを圧縮ばね23の上端部に挿入して取り付けることにより、回転部材22における圧縮ばね23の押圧力が作用する位置を3段階で切り替えることができる。
【0063】
また、支持部材24の当接面241に設けられた3つの規制部242は、例えば当接面241から突出する凸部からなり、当該凸部は圧縮ばね23の内周面の形状に対応する円弧状の外側面を有する。各規制部242は、回転部材22の回転軸223に対して直交方向に一直線上に並べて配置されている。3つの規制部242のいずれかを圧縮ばね23の下端部に挿入して取り付けることにより、支持部材24における圧縮ばね23を支持する位置を3段階で切り替えることができる。
【0064】
この例においても、回転部材22の規制部222の数と、支持部材24の規制部242の数は、同数であることが好ましいが、規制部222,242は、それぞれ3つに限らず、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0065】
本実施形態では、凸部からなる規制部222,242に圧縮ばね23の端部を挿入させるという非常に簡単な構成で、分離ローラ20側への分離パッド21の押圧力F2を調整することができる。
【0066】
図9は、ガイド部材25における支持部材24の変形例を示した斜視図である。
図5又は
図8に例示されるように、回転部材22における圧縮ばね23の押圧力F1が作用する位置(当接面221)に複数の規制部222が設けられている場合、支持部材24には複数の規制部242を設けず、例えば
図9のような構成としてもよい。
【0067】
この例では、支持部材24により、圧縮ばね23の下端部がスライド可能に保持されるようになっている。より具体的には、支持部材24の当接面241から突出する環状リブの内側に、長孔状の溝部244が形成されており、当該溝部244内に圧縮ばね23の下端部が収容されることにより、当該下端部が回転部材22の回転軸223に対して直交方向にスライド可能となっている。
【0068】
図10は、回転部材22における裏面側の形状の変形例を示した斜視図である。
図4又は
図7に例示されるように、支持部材24における圧縮ばね23を支持する位置(当接面241)に複数の規制部242が設けられている場合、回転部材22には複数の規制部222を設けず、例えば
図10のような構成としてもよい。
【0069】
この例では、回転部材22により、圧縮ばね23の上端部がスライド可能に保持されるようになっている。より具体的には、回転部材22の当接面221に形成された凹部により、長孔状の溝部224が形成されており、当該溝部224内に圧縮ばね23の上端部が収容されることにより、当該上端部が回転部材22の回転軸223に対して直交方向にスライド可能となっている。
【0070】
図9又は
図10に例示されるような構成では、圧縮ばね23の一方の端部をいずれかの規制部(222又は242)に取り付けるだけでよいため、圧縮ばね23の両端部をいずれも規制部222,242に取り付けるような構成と比較して、分離ローラ20側への分離パッド21の押圧力F2をより簡単な構成で調整することができる。
【0071】
このように、圧縮ばね23の端部を規制するための規制部222,242は、回転部材22又は支持部材24のいずれか一方にのみ設けられていてもよい。また、規制部222,242は、凹部又は凸部のいずれか一方を含むような構成に限らず、例えば凹部及び凸部が組み合わされた構成など、他の各種形状を採用することができる。
【0072】
分離ローラ20の外周面に対向して設けられる分離部材は、分離パッド21に限らず、例えばローラなどの他の部材により構成されるものであってもよい。この場合、例えば分離部材としてのローラが回転部材22により支持されるような構成であってもよい。
【0073】
回転部材22における圧縮ばね23の押圧力F1が作用する位置と回転軸223との間の距離L1が調整可能な構成であれば、圧縮ばね23の取付位置が変更可能な構成に限らず、例えば回転部材22の回転軸223の位置を変更可能な構成などであってもよい。
【0074】
以上の実施形態では、用紙分離装置2cが、画像形成装置1としての複写機に備えられた構成について説明したが、このような構成に限らず、画像読取部3を備えていないプリンタなどの他の画像形成装置1にも、本発明に係る用紙分離装置2cを適用可能である。この場合、給紙ローラ7に対向する位置に設けられた分離パッド(図示せず)に関して、本発明に係る用紙分離装置2cが適用されてもよい。すなわち、本発明における用紙には、原稿だけでなく、記録紙などの他の各種用紙が含まれる。
【0075】
また、画像形成部4を備えていないスキャナ装置などの画像読取装置に、本発明に係る用紙分離装置2cを適用してもよい。さらに、本発明に係る用紙分離装置2cを単体で提供することも可能である。