【実施例1】
【0021】
図1ないし
図6は、この発明の実施例1による誘導加熱式蒸気発生装置を示す。
【0022】
この実施例1の誘導加熱式蒸気発生装置1の加熱容器10は、磁性の導電性金属、例えばSUS430又は440のような磁性ステンレス鋼製の金属管で形成した複数の加熱管11と、この加熱管11の上端に連通結合され、加熱管11で発生された蒸気を集める蒸気ヘッダ12と、加熱管11の下端に連通結合され、この加熱管11へ水を供給する給水ヘッダ17とを備える。
【0023】
蒸気ヘッダ12は、ここでは、非磁性ステンレス鋼のような材質の金属管を、外周が円形となるように円形に成形してドーナツ状の密閉容器としている(
図2参照)。給水ヘッダ17は、箱状の密閉容器であれば、外形は、円形でも、矩形でもよいがここでは矩形としている。
【0024】
加熱管11は、ドーナツ状の蒸気ヘッダ12の形状と近似させて、複数の管をその外側と内側に分けて2重の環状に配としている(
図2参照)。そして、加熱管の11の各管の上端は、
図3に示すように、ドーナツ状の蒸気ヘッダ12の円形の外周壁および内周壁にこれを貫通して溶接により機密的に結合されている。そして、加熱管11の各管は、蒸気ヘッダ12の外周壁および内周壁に蒸気ヘッダの半径方向に対して一定の方向に傾斜して結合し、加熱管11の各管から蒸気ヘッダ12内に吐き出される蒸気が蒸気ヘッダの半径方向に対して同じ方向に傾斜して吐き出されるようにしている。これにより、この加熱管11から蒸気ヘッダ12内に吐き出される蒸気がこの中で旋回流を形成するようになる。加熱管11と蒸気ヘッダ12とは、溶接により結合されるため、結合部分のシールが不要となり結合構造が簡単となる。
【0025】
加熱管11の下端は、直接、給水ヘッダ17にこれに連通するように結合してもよいが、組み立てを容易にするため、および加熱管11自身の熱膨張による応力を緩和するために、フレキブルチューブとして市販されている可撓性金属管11cを介して給水ヘッダ17に結合するのがよい。
【0026】
加熱容器10の複数の加熱管11の外側にこれを取り囲んで誘導加熱コイル20を配置し、さらに、この誘導加熱コイル20の外側にこれ取り囲んで、誘導加熱コイル20から漏洩する磁束を遮蔽するためのシールドコイル30を配置している。
【0027】
誘導加熱コイル20は、低抵抗の銅等の導電材で形成された内部に冷却水流通路を有する管状導体を所要ターン円筒状に巻回して構成されている。
【0028】
また、シールドコイル30も1本の内部に冷却水通流路を備えた管状導体31を複数ターン(ここでは6ターン)巻回して円筒状に構成され、
図5に示すように各ターン間の導体を電気導体で形成された短絡板32により短絡接続することにより、各ターンが独立した電気的に閉回路を構成する。シールドコイル30のうち、径の大きいターンの上端および下端は、ほぼ誘導加熱コイル20の上端および下端の位置におかれ、各ターンの導体は相互に適宜の間隔離されている。
【0029】
このように構成された蒸気発生装置1おける給水系統および蒸気取り出し系統は
図6に示すように構成されている。
【0030】
すなわち、リザーバタンク71が設けられ、ここに水道や純水装置等から供給される水Wが一旦に貯留される。このリザーバタンク71に貯留された水Wは、実線矢印で示すように、給水口71aから給水ポンプ72により配管を通して誘導加熱コイル20の冷却水入口20aに供給される。誘導加熱コイル20に供給された水Wは、コイル導体内の冷却水通流路を通流してこのコイル導体を冷却する過程で予備加熱されて、誘導加熱コイル20の冷却水出口20bら配管を介して給水ヘッダ17の給水口17aに供給される。
【0031】
給水ヘッダ17と蒸気ヘッダ12とは、複数の加熱管11を介して連通される。
【0032】
蒸気ヘッダ12に貯留されて蒸気Sは、点線矢印で示すように、上端の蒸気出口12cから配管14を介してシールドコイル30の冷却水入口30aに供給される。この蒸気は、シールドコイル30のコイル導体内の冷却水通流路を通流してコイル導体を冷却する過程で、加熱され、過熱蒸気となってシールドコイル30の蒸気出口30bから蒸気取出管62へ送られ、ここから、さらに図示しない配管を通して蒸気の使用場所へ送られる。
【0033】
さらに、給水ヘッダ17と蒸気ヘッダ12には、これらが連通されるように、透明の耐熱管で構成された水位検出管73が連結されている。水位検出管73内の水位は加熱管11内の水位と同じレベルを示すので、この検出管73の設定された水位Lの位置に光電的に水位を検出する水位検出器74を対向配置して、加熱容器10内の水位を検知するようにしている。この水位検出器74の検出信号によりポンプ72の運転を制御することにより、加熱容器10内の水位が常に設定された一定の水位に保たれるように調節を行っている。
【0034】
このような誘導加熱蒸気発生装置1により蒸気を発生するには、まず、リザーバタンク71からポンプ72により給水し、給水ヘッダ17および加熱管11に予め設定した水位Lとなるまで水Wを貯留し、次いで、誘導加熱コイル20に図示しない高周波交流電源から高周波の加熱電力の供給を開始する。
【0035】
これにより、加熱管11が誘導加熱コイル20の発生する高周波磁界により電磁的に誘導加熱され、この熱によって加熱管11内の水が加熱されて蒸気が発生する。加熱管11内で発生した蒸気は管内を上昇して、管の上端の開口11aから加熱容器10の上部の蒸気ヘッダ12内に吐き出される。
【0036】
加熱管11から蒸気ヘッダ12内へ吐き出される蒸気Sは、加熱管11の上端が蒸気ヘッダの内外周壁に一定角度傾斜して結合されているので、
図4に点線矢印で示すように加熱管11の開口11aから蒸気ヘッダ12の内外周壁の半径方向に対して傾斜して吐き出される。このため、加熱管か11ら吐き出された蒸気は、蒸気ヘッダ12内を、内外周壁12aおよび12bに沿って、反時計方向に旋回して流れ、蒸気ヘッダ12内に蒸気の旋回流が形成される。このように、蒸気Sが蒸気ヘッダ12内を旋回して流れる過程で蒸気に作用する遠心力により、水分を含む湿り蒸気S中の水分と気体分が分離され、水分は重力により落下し、加熱管11に戻されるので、蒸気ヘッダ11内には水分の除去された乾燥した蒸気が残る。
【0037】
この水分の除去された乾燥した蒸気Sは蒸気ヘッダ12に設けられた蒸気取出口12cに結合された蒸気取出管14から取り出され、シールドコイル30のコイル導体の冷却水通路へ供給され、ここを流れるコイル導体を冷却する過程で各コイル導体のジュール熱により再加熱されて過熱蒸気S´となり、過熱蒸気取出管62から取り出される。この過熱蒸気S´は、湿り気の除かれた乾燥した蒸気Sを過熱したものであるので、乾燥して良質の過熱蒸気となる。
【0038】
なお、この発明おいて、シールドコイル30は、誘導加熱コイル20から漏洩する磁束を遮蔽して漏洩を防止する働き以外にも、加熱容器10で発生された蒸気を再加熱して過熱蒸気を発生する働きをするので、300℃以上の高温となるので、大きな熱応力を受ける。特に、誘導加熱コイル20の軸方向の中央部で漏洩磁束密度が高くなるので、この部分に配置されたシールドコイル導体はより高温となった、大きな熱応力を受ける。
【0039】
シールドコイル30の巻き数を偶数にして、各巻回(ターン)導体の間隔をほぼ均等な間隔とするようにし、誘導加熱コイル20の軸方向の中央部付近へのシールドコイル30の配置を避けるようにすると、各閉回路を構成する導体が、均等に発熱し、ほぼ均等な熱応力を受けるようにするようになる。
【実施例2】
【0040】
図7に、この発明の実施例2よる誘導加熱式蒸気発生装置1の加熱容器10の要部の構成を示す。
【0041】
この実施例2は、加熱容器10の加熱管11と蒸気ヘッダ12との結合部分を変形したものである。外側に配列された加熱管11は、実施例1におけるように、蒸気ヘッダ12の外周壁12aに傾斜して結合するが、内側に配列した加熱管11´は、蒸気ヘッダ12の底部に垂直に結合している。
【0042】
蒸気ヘッダ12に傾斜しないで垂直に加熱管を結合した場合は、蒸気ヘッダに12の加熱管を結合する穴の穴あけ加工が斜めにあける場合に比して容易となる。
【0043】
蒸気ヘッダ12に垂直に結合した加熱管11´から蒸気ヘッダ12内吐き出される蒸気は、旋回流とならないが、傾斜して結合された外側の加熱管11から吐き出された蒸気の旋回流と一緒に旋回することになり、蒸気ヘッダ12内の全部の蒸気がこの中を旋回することになる。
【0044】
このため、実施例2の加熱容器10の蒸気ヘッダ12においても、蒸気の気液分離機能は発揮される。
【実施例3】
【0045】
図8に、この発明の実施例3よる誘導加熱式蒸気発生装置1の加熱容器10の要部の構成を示す。
【0046】
この実施例3は、蒸気ヘッダの形状を変換したものである。前記実施例1および2においては、蒸気ヘッダ12は、ドーナツ状の密閉容器で構成されているが、実施例3の蒸気ヘッダ12´は、
図8(a)、(b)に示すように、外周が円形の密閉された筐体状容器で構成されている。
【0047】
この蒸気ヘッダ12´の外周壁12´aには、加熱管11から蒸気が蒸気ヘッダ12´内に斜めに吐き出されてこの中に一定方向の旋回流が形成されるように、実施例1および2の場合と同様に、外側に配列された加熱管11を傾斜して結合している。内側に配列した加熱管11´は、蒸気ヘッダ12の底部に垂直に結合する。
【0048】
この実施例3の蒸気ヘッダ12´においても、実施例2の蒸気ヘッダ12と同様に、加熱管から吐き出された蒸気が一定方向の旋回流を形成し、この旋回流による遠心力により湿った蒸気から水分の分離が行なわれ、乾燥した蒸気を発生することができる。