(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
化学機械研磨装置において、研磨パッドを担持したプラテンを回転させながら、前記研磨パッドの表面をアームに保持されたコンディショニングディスクによりドレッシングする工程を含み、
前記ドレッシングは、前記コンディショニングディスクを前記研磨パッドの表面に押圧し、さらに前記アームを前記アームの回転軸回りで回転運動させ、前記コンディショニングディスクの位置を、前記プラテンの径方向上に、前記プラテンの中心部と外周部との間で変化させることにより実行され、
前記ドレッシングの際、前記アームに作用するトルクの平均値<N>および変動幅Yを、前記コンディショニングディスクの、前記プラテンの径方向上における複数の位置にわたって求め、前記トルクの平均値<N>および前記トルクの変動幅Yの値をもとに、前記アームに対するメンテナンスの要否を判定し、
前記研磨パッドの表面には、前記プラテンの径方向に複数の区間が設定され、前記複数の位置は前記複数の区間の一つに含まれ、前記複数の区間の少なくとも一つにおいて前記トルクの平均値<N>に対するトルクの変動幅Yの比Y/<N>が所定値を超えた場合に、前記アームに対するメンテナンスが必要であると判定することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、第1の実施形態に係る化学機械研磨システム20の全体的な構成を示す図である。
【0015】
図1を参照するに化学機械研磨システム20は化学機械研磨装置20Aとデータ処理装置20B、および欠陥検査装置20Cを含み、前記化学機械研磨装置20Aは、モータ21Mにより回転軸21Nの回りを矢印Aで示す方向に所定速度で回転されるプラテン21を備えており、前記プラテン21上には研磨パッド21Pが担持され、プラテン21とともに前記所定速度で回動する。
【0016】
前記研磨パッド21P上にはスラリが、滴下ノズル21Sより滴下され、さらに半導体ウェハなどのワークWを担持した研磨ヘッド22が、前記ワークWを、前記研磨パッド21Pに、モータ22Mにより矢印Bの方向に所定速度で回転させながら、所定の圧力で押圧する。
【0017】
さらに前記研磨パッド21P上には、ダイヤモンド砥粒を樹脂あるいは金属ディスク中に埋設したコンディショニングディスク23が設けられている。前記コンディショニングディスク23はアーム23Aの先端部に、モータ23Mを介して保持され、モータ23Mにより矢印Cの方向に所定速度で回転され、前記研磨パッド21Pに所定の圧力Fで押圧される。一方、前記アーム23Aは、図示しない駆動モータを含み、前記プラテン21の面に垂直な回動軸23Nの回りで回動する軸受け部23Bに、基部を固定されている。前記軸受け部23Bには、その際のトルクNを前記回動軸23Nの回りで測定するトルク測定部23D設けられている。このようなトルク測定部23Dは、例えばロードセルや歪みゲージ、AEセンサ等の応力センサを含み、前記プラテン21の前記
図1における矢印Aで示す方向への回転、および前記コンディショニングディスク23の前記
図1における矢印Cで示す方向への回転、さらに前記研磨パッド21Pと前記コンディショニングディスク23との間の摩擦などにより前記アーム23Aに生じる応力を測定し、測定結果をもとに前記軸23N回りのトルクNを、前記アーム23Aの角位置θとともに求めている。
【0018】
図2は、前記化学機械研磨装置20のうち、プラテン21およびコンディショニングディスク23を含む部分の平面図を示す。
【0019】
図2を参照するに、前記アーム23Aは前記軸受け部23Bにより、前記回動軸23Nの回りで第1の角位置(θ=θmin;ホームポジション)と第2の角位置(θ=θMAX)との間で往復駆動され、これに伴って前記コンディショニングディスク23は、前記プラテン21と共に回転している研磨パッド21P上を、まんべんなく走査する。前記ホームポジションでは、前記コンディショニングディスク23は前記研磨プラテンの外周の外に外れ、研磨パッド21Pには当接しない。前記アーム23Aが前記軸23Nの回りで回動することにより、前記コンディショニングディスク23は前記研磨パッド21P上において、前記プラテン21の径方向に位置を変化させる。後で説明するように前記研磨パッド21P上には、データ処理の都合上、前記プラテン21の径方向に区間r
0,r
1,r
2,・・・が設定されており、前記コンディショニングディスク23は前記アーム23Aの回動に伴って、前記区間r
0,r
1,r
2,・・・を順次連続的に走査する。
【0020】
前記アーム23Aの角位置θは、データ処理装置20Bにおいて直ちに、前記コンディショニングディスク23の前記プラテン21上における、プラテン21の中心あるいは外周からのラジアル方向の距離に変換される。以下では、アーム23Aの角位置θは、プラテン21の中心からのラジアル方向の距離に変換されるものとする。
【0021】
前記軸受け部23Bはまた、前記プラテン21の面およびその外周方向に平行な軸23Pの回りで回動、あるいは前記軸23Nに沿って上下運動することができ、その結果、前記コンディショニングディスク23を前記研磨パッド23Pに、前記アーム23Aを介して、前記所定圧力Fで押圧することが可能である。
【0022】
このような化学機械研磨装置20Aとしては、限定はされないが、例えばApplied Materials社より市販のモデルReflection-LKを挙げることができる。
【0023】
前記化学機械研磨システム20では、さらにデータ処理装置20Bと欠陥検査装置20Cが設けられているが、前記データ処理装置20Bは、前記軸受け部23Bより出力された前記トルクNの値と前記アーム23Aの位置、すなわち前記プラテン23の中心から測った、前記コンディショニングディスク23の径方向への位置を表す情報を供給され、これを以下に説明するように統計処理して、前記アーム23Aおよび軸受け部23Bの状態が異常である場合に、アラームを発生させる。
【0024】
また前記欠陥検査装置20は、実際に研磨されたウェハの表面を顕微鏡により検査し、画像処理を行って欠陥の数を計数するとともにその分布を求め、欠陥数をヒストグラムで出力したり、欠陥の分布をマップの形で出力したりする。
【0025】
図1では、あたかも前記研磨パッド21Pのコンディショニングディスク23によるドレッシングが、前記ワークWの化学機械研磨と同時に実行されているかのように示されているが、これは図示の都合上のことであり、実際には研磨パッド21Pのコンディショニングに引き続き、ワークWの化学機械研磨がなされるのがふつうである。ただし
図1の化学機械研磨システム20において、研磨パッド21PのコンディショニングとワークWの化学機械研磨を同時に実行する場合が排除されるわけではない。
【0026】
図3は、このような化学機械研磨システム20において得られたトルクNの値と、そのときのコンディショニングディスク23の前記研磨パッド21P上における位置、より具体的には、前記プラテン21の中心からのラジアル距離との関係をプロットした図である。
図3中、縦軸が前記トルクNの値を任意単位で示しており、横軸が前記ラジアル距離をインチの単位で示している。
図3中、矢印Aは前記研磨パッド21Pを、前記コンディショニングディスク23により、をプラテン21の中心から外周方向に走査した場合を示しており、一方矢印Bは前記研磨パッド21Pを、前記コンディショニングディスク23により、をプラテン21の外周部から中心方向に走査した場合を示している。
【0027】
図3の例では前記コンディショニングディスクとして、径が4インチの金属ディスクの表面に樹脂層によりダイヤモンド砥粒を埋設したものを使い、前記コンディショニングディスク23を前記研磨パッド21P上において、前記プラテン21の中心から半径距離が1〜14インチの範囲で走査させている。なお前記半径距離が14インチを超えると、コンディショニングディスク23は前記プラテン21の外周の外側に、すなわち前記研磨パッド21Pの外側に外れる。半径距離が19インチの位置が、
図2で示したホームポジションに対応する。
【0028】
図3を参照するに、前記プラテン21の回転方向とコンディショニングディスク23の回転方向との関係により、前記アーム23Aを前記
図3中、矢印Aに示すようにプラテン21の中心から外周方向に移動させた場合は正のトルクが検出され、一方アーム23Aを逆に
図3中、矢印Bで示すようにプラテン21の外周から中心方向に移動させた場合には負のトルクか検出されることがわかる。
図3中、個々の四角形は前記軸受け部23Bにより測定されたトルクNの値とそのときのコンディショニングディスク23の径方向での位置を示している。
【0029】
図3の例は、比較的良好なドレッシングが行われている場合を示しており、アーム23をプラテン21の中心から外周へ移動させた場合と外周から中心へ移動させた場合のいずれにおいてもトルクNの変動幅が比較的小さく、かつ検出されているトルクNの絶対値が比較的大きく、このため、前記アーム23をプラテンの中心から外周へ移動させた場合のデータ点と、同じアーム23をプラテンの外周から中心へ移動させた場合のデータ点との間に、広いギャップが生じているのがわかる。
【0030】
なお
図3の例では、前記プラテン21の中心から外周へと旋回したアーム23Aは、前記コンディショニングディスク23がおおよそ13〜14インチの位置にあるときに折り返しており、また前記プラテン21の外周から中心へと旋回したアーム23Aは、前記コンディショニングディスク23がおおよそ1〜2インチの位置にあるときに折り返している。このような折り返し点では、検出されるトルクNの値が正から負に、あるいは負から正に、大きく変動している。
【0031】
図4は、アーム23Aおよび軸受け部23Bの状態が良好な場合と不良である場合とを比較した図である。
図4中、右側の図は前記アーム23Aおよび軸受け部23Bの状態が良好である場合を、左側の図は不良である場合を示している。
【0032】
図4を参照するに、右側の図では、前記
図3の場合と同様に、アーム23をプラテン21の中心から外周へ移動させた場合と外周から中心へ移動させた場合のいずれにおいてもトルクNの変動幅が小さく、かつ検出されているトルクNの絶対値が大きく、前記アーム23をプラテンの中心から外周へ移動させた場合のデータ点と、同じアーム23をプラテンの外周から中心へ移動させた場合のデータ点との間に、非常に広いギャップが生じているのがわかる。すなわち
図4の右側の図は、前記コンディショニングディスク23が研磨パッド21Pに安定に、かつしっかりと係合し、その表面を削っている状態に対応していると考えられる。
【0033】
これに対し
図4の左側の図ではトルクNの変動幅が大きく、かつトルクNの絶対値が小さく、その結果、アーム23をプラテン21の中心から外周へ移動させた場合と外周から中心へ移動させた場合で符号が反転するトルクNの差が非常に小さくなっているのがわかる。すなわち
図4の左側の図は、コンディショニングディスク23が研磨パッド21Pを十分に削っておらず、かつその作用も不均一であることを示唆している。
【0034】
図5は、前記
図3や
図4の実験に基づいて、化学機械研磨システム20において、アーム23Aおよび軸受け部23Bが様々な状態にある化学機械研磨装置20Aを使い、所定のドレッシングを行った場合のトルクNの平均値とトルクNの変動幅を、前記プラテン21の中心から測ったコンディショニングディスク23のラジアル距離(インチ)に対応させて示す図である。ただし
図5の実験では、前記研磨パッド21Pとしてニッタハース社のIC1510(登録商標)を使っている。また前記コンディショニングディスク23として、表面に形成した樹脂層中にダイヤ粒径が#80〜110のダイヤモンド砥粒を埋設した径が4インチの金属ディスクを使っている。また前記実験において前記プラテン21およびコンディショニングディスク23は、同一方向にそれぞれ40〜80rpmおよび80〜110rpmの範囲内の所定の回転数で回転され、前記コンディショニングディスク23は前記研磨パッド21Pに、6〜11lbfの範囲内の所定の圧力で押圧されている。
【0035】
ただし
図5のプロットでは、トルクNの平均値および変動幅を求めるに当たり、アーム23が折り返すためトルクNの値が正から負にあるいは負から正に変化する0〜3インチの範囲および11〜15インチの範囲は除外している。
【0036】
より具体的には、前記研磨パッド21Pの表面を、前記3インチから11インチまでの範囲で
図2に示したような幅が0.8インチの同心円状の区間1〜10に分割し、各々の区間毎に観測されたトルクNの絶対値の区間当たりの平均値<N>、および前記トルクNの絶対値の区間当たりの変動幅Yを示している。
図5中、左側の図が前記区間当たりの平均値<N>を示しており、右側の図が前記区間当たりの変動幅Yを示している。
図5中、右側および左側の図において横軸は、前記プラテン21の回転中心から前記10に分割した同心円状の区間1〜10までの距離をインチで表している。
【0037】
図5を参照するに、曲線Iの例では区間当たりのトルク平均値<N>がいずれの区間でも最も小さく、アーム23Aに十分なトルクNがかかっていないこと(
図5の左図を参照)がわかる。この曲線Iの例では、その結果、研磨パッド21Pのドレッシングが不完全であることが予測される。また前記曲線Iの例では、トルクの区間当たりの変動幅Yは比較的小さいが(
図5の右図を参照)、これはトルクの値自体が小さいためであると考えられる。
【0038】
曲線IIの例でもトルクの区間当たりの平均値<N>が、いずれの区間においても前記曲線Iの場合よりは大きいものの、やはり小さく(
図5の左図を参照)、アーム23Aに十分なトルクNがかかっていないことが予測される。また前記曲線IIの例では、トルクの区間当たりの変動幅Yが、曲線Iの場合よりも多少大きくなっており(
図5の右図を参照)、ドレッシングが不均一になっていることが予測される。
【0039】
さらに曲線IIIの例ではトルクの区間当たりの平均値<N>が、いずれの区間においても前記曲線IIの場合より大きいものの、やはり比較的小さく(
図5の左図を参照)、アーム23Aに十分なトルクNがかかっていないことが予測される。また前記曲線IIIの例では、トルクの区間当たりの変動幅が非常に大きくなっており(
図5の右図を参照)、これはコンディショニングディスク23が前記研磨パッド21Pの表面を跳躍しながら走査している(スティックスリップ現象)ことを示していると考えられる。
【0040】
同様に曲線IVの例でもトルクの区間当たりの平均値<N>は、いずれの区間においても前記曲線IIIの場合より大きいものの、やはり比較的小さく(
図5の左図を参照)、アーム23Aに十分なトルクNがかかっていないことが予測される。また前記曲線IVの例でも、トルクの区間当たりの変動幅が非常に大きくなっており(
図5の右図を参照)、やはりコンディショニングディスク23が前記研磨パッド21Pの表面を跳躍しながら走査していることを示していると考えられる。
【0041】
さらに曲線Vの例では、トルクの区間当たりの平均値<N>がいずれの区間においても非常に大きいが(
図5の左図を参照)、トルクの区間当たりの変動幅もやはり非常に大きく(
図5の右図を参照)、均一なドレッシングはなされていないものと予測される。
【0042】
一方、
図5中、曲線VIの例ではトルクの区間当たりの平均値<N>が、前記曲線I〜IVの場合と比較して格段に増大し、かつトルクの区間当たりの変動幅Yも比較的小さく、効果的なコンディショニングが均一になされていることが予測される。
【0043】
さらに
図5中、曲線VIIの例ではトルクの区間当たりの平均値<N>が前記曲線VIの例と同様に大きく、またトルクの区間当たりの変動幅Yが曲線VIの場合と比較して、全体的にさらに減少しており、効率的なコンディショニングが、より均一になされていることが予測される。
【0044】
さらに
図5中、曲線VIIIの例ではトルクの区間当たりの平均値<N>が前記曲線VIIの例よりも、全区間1〜10にわたりさらに増大しており、またトルクの区間当たりの変動幅Yが曲線VIIの場合と比較して、全区間1〜10にわたり、にさらに減少していることがわかる。このことから、曲線VIIIの例では、非常に効率的なコンディショニングが、非常に均一になされていることが予測される。
【0045】
以上の予測を確認するため、本発明の発明者は、曲線I〜VIIIのそれぞれの実験において、コンディショニングに引き続き、シリコンウェハ上に形成された熱酸化膜を化学機械研磨する実験を行った。この実験では、前記曲線I〜VIIIのコンディショニングのそれぞれの後に、厚さが120nmの熱酸化膜を形成された径が300mmのシリコンウェハを前記ワークWとして、前記研磨ヘッド23Bに保持し、酸化膜研磨用スラリを200ml/分の流量で滴下しながら前記研磨ヘッド23Bを40〜80rpmの範囲内の所定の速度で回転させ、前記研磨パッド21Pに、3〜8psiの範囲内の所定の圧力で押圧することにより、前記熱酸化膜の化学機械研磨を60〜120秒の範囲内で行った。
【0046】
図6は、このようにして行ったシリコンウェハの表面を、
図1の欠陥検査装置20Cにより検査した結果を示すグラフである。
図6中、縦軸はウェハ当たりの欠陥数を、横軸のI〜VIIIは、
図5の曲線I〜VIIIの実験にそれぞれ対応している。
【0047】
図6を参照するに、ウェハ当たりの欠陥数の限度を200個とすると、曲線VI〜VIIIの実験で得られたウェハのみが合格し、曲線I〜Vの実験で得られたウェハは不合格であることがわかる。これは先に説明した、曲線VI〜VIIIの実験では、アーム23Aに大きなトルクNが余り変動せずにかかっていて、コンディショニングディスク23が研磨パッド21Pの表面を効果的に、かつ一様に研削しているのに対し、曲線I〜Vの実験ではアーム23AにかかるトルクNが小さく、あるいはトルクNが大きくても不安定で、一様な研削がなされていない、との予測を裏付けるものである。
【0048】
図7は、前記トルクNの区間当たりの変動幅Yを、全区間1〜10にわたり平均したトルクNの平均変動幅<Y>、および前記トルクNの区間あたりの平均値<N>を全区間1〜10にわたりさらに平均したトルクNの二重平均値<<N>>をプロットした散布図である。
図7中、縦軸が前記平均変動幅<Y>を、横軸が前記二重平均値<<N>>を示している。
【0049】
図7を参照するに、合格した曲線VI〜VIIIの実験に対応するプロットは、トルクNの平均変動幅<Y>が小さく、同時にトルクNの二重平均値<<N>>が大きい、グラフ中、右下の領域に集まっているのに対し、合格しなかった曲線I〜IVの実験に対応するプロットは、グラフの左端に集合しているのがわかる。また、トルクNの二重平均値<<N>>は大きかったが、トルクNの平均変動幅<Y>も大きく不合格となった曲線Vの実験は、グラフの右上に位置しているのがわかる。
【0050】
図7中、それぞれの点について、平均変動幅<Y>と二重平均値<<N>>の比R(R=<Y>/<<N>>)を求めると、曲線Iの実験では0.9、曲線IIの実験では1.1、曲線IIIの実験では1.2、曲線IVの実験では1.1、曲線Vの実験では0.8であるのに対し、曲線VIの実験では0.7、曲線VIIの実験では0.6、また曲線VIIIの実験では0.5となり、前記アーム23Aおよび軸受け部23Bに対し、前記比Rが0.8未満、より好ましくは0.7以下のものを合格させるという基準を設定すると、引き続いて行った研磨結果が不良となるような事態を回避できることがわかる。
【0051】
なお、上記の説明でトルクNは任意単位としているので,前記トルクNの変動幅Yおよび平均値<N>あるいは平均値<Y>および二重平均値<<N>>の値自体は、トルクNの単位如何により変化するが、前記比Rの値は単位を含んでおらず、トルクNの単位の取り方で変化することはないことに注意すべきである。
【0052】
このように本実施形態では、研磨パッド21Pのドレッシングの際に、コンディショニングディスク23を担持するアーム23Aに印加されるトルクNの値を取得し、その平均値<N>およびその変動幅Yをもとに、ドレッシングの状態を判断しているため、トルクNの平均値<N>だけ、あるいはその変動幅Yだけを使って判定するよりも信頼性の高い判定を行うことができ、無駄なメンテナンスや誤ったメンテナンスを回避することが可能となる。
【0053】
一方、特許文献1のように前記トルクNの変動幅Yだけをモニタした場合には、曲線IVや曲線Vの例についてはドレッシングの不良を検出できても、曲線I〜IIIの例については検出できない。また前記トルクNの平均値<N>あるいは二重平均値<<N>>だけをモニタした場合には、前記曲線I〜IVの例についてドレッシングの不良を検出できるが、曲線Vの例については問題を検出することができない。このような場合には、ウェハの研磨が終了して始めて問題が検出され、かつその問題がアーム23Aおよび軸受け部23Bに起因するものであることは示されないので、誤ったメンテナンスが行われる可能性もある。
【0054】
図8は、前記
図1に示すデータ処理装置21Bにおいて
図7で示した統計処理を行うためのフローチャートを示す。
【0055】
図8を参照するにステップ1において、前記軸受け部23Bに設けられたトルク測定部より、前記アーム23Aに作用するトルクNの値と前記コンディショニングディスクの、前記プラテン21の中心からのラジアル方向の位置に関する情報を取得し、前記区間1〜10の各々において、トルクNの平均値<N>および変動幅Yを求める。
【0056】
さらにステップ3において、前記区間1〜10の全体にわたり、前記トルクNの平均値<N>を平均し、前記二重平均値<<N>>を求め、また前記変動委幅Yの平均値<Y>を求める。
【0057】
さらにステップ4において、このようにして求めた平均値<Y>および二重平均値<<N>>より、前記比Rを式R=<Y>/<<N>>により求め、ステップ5において、前記比Rが0.8未満であるか否かが判定される。
【0058】
前記比Rが0.8未満である場合には、ドレッシングは正常に行われており、プロセスはステップ1に戻る。一方前記比Rが0.8以上となる場合には、ステップ6において、アーム23Aおよび軸受け23Bのメンテナンスが必要であることを示すアラームが発せられる。
【0059】
なお本実施形態において、
図8のフローチャートに代えて、
図9に示すフローチャートを使うことも可能である。
図9のフローチャートではステップ11において前記ステップ1と同様にトルクNの値を前記コンディショニングディスクのそれぞれの位置に対して取得した後、ステップ12において、特定の区間について前記トルクNの平均値<N>および変動値Yを求め、ステップ13において前記比Rを、Yと<N>の比(R=Y/<N>)として求めている。
【0060】
さらにステップ14において前記ステップ5と同様に前記比Rが0.8未満であるか否かが判定され、YESであれば研磨装置20Aの運転は継続されるが、NOである場合、ステップ15において、メンテナンスが必要であるとのアラームが発せられる。
【0061】
図9の変形例において、ステップ12で選ばれる特定の区間としては、経験的に確実な判断ができることがわかっている区間を選ぶことができる。あるいは
図9の変形例において、前記特定の区間として、前記区間1〜10の全てを一つの区間として選ぶことも可能である。
【0062】
なお以上の実施形態ではドレッシングに回転するコンディショニングディスク23を使った場合を説明したが、本実施形態はこのような特定の構成に限定されるものではなく、
図10の変形例に示すように、回転するコンディショニングディスク23の代わりにコンディショニングブラシ33を使った場合にも有効である。ただし
図10中、先に説明した部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
【0063】
以上の実施形態では、半導体装置の製造について説明を行ったが、上記実施形態は半導体装置以外の製造にも適用可能である。
【0064】
以上、本発明を好ましい実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨内において様々な変形・変更が可能である。