特許第5691879号(P5691879)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5691879
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】車両用フロントドア構造
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/00 20060101AFI20150312BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   B60J5/00 P
   B60J5/04 M
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-141635(P2011-141635)
(22)【出願日】2011年6月27日
(65)【公開番号】特開2013-6554(P2013-6554A)
(43)【公開日】2013年1月10日
【審査請求日】2013年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】230111796
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 忠敬
(74)【代理人】
【識別番号】230112449
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 春平
(74)【代理人】
【識別番号】100102945
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100120673
【弁理士】
【氏名又は名称】松元 洋
(72)【発明者】
【氏名】金行 大輔
(72)【発明者】
【氏名】能塚 泰造
【審査官】 中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−097051(JP,U)
【文献】 特開2003−205741(JP,A)
【文献】 特開2009−083854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00,5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両外側に位置するドアアウタパネルと、車両内側に位置するドアインナパネルと、ドアガラスによって開閉される開口部と、前記ドアアウタパネルと前記ドアインナパネルとの間であって前記開口部の車両前方側に配設されてドアミラーを固定するドアサイドミラーリンフォースと、前記ドアガラスの前方を案内するガイドレールとを備える車両用フロントドア構造において、
前記ガイドレールは前記ドアインナパネルに対向する第一側面部、前記ドアガラスの車両前方側の端部に対向する第二側面部および前記ドアアウタパネルに対向する第三側面部からなる断面視略コの字状に形成され、
前記ドアサイドミラーリンフォースは、前記ドアインナパネル側に配置される一方、前記ドアミラーの取付け部に対応する部分が前記ガイドレールの前記第二側面部に沿って車両外側へ向かって突出して凸面部を形成し、
前記ドアアウタパネルは前記ガイドレールの第三側面部に対向する位置から前記ドアサイドミラーリンフォースの凸面部に対向する位置までの部分が断面視直線状に形成され、
前記凸面部が前記ドアアウタパネルの断面視直線状の部分と重ね合わされ、
前記ドアサイドミラーリンフォースの前記開口部側の側端部が、前記ドアインナパネルの前記開口部側の側端部と前記ガイドレールの第一側面部とによって挟み込まれた状態で前記ドアインナパネルの側端部と前記ガイドレールの第一側面部とに接合された
ことを特徴とする車両用フロントドア構造。
【請求項2】
前記ドアインナパネルの前記開口部側の側端部を、前記ガイドレールの前記第一側面部の開口部側の側端部と前記ドアサイドミラーリンフォースの前記開口部側の側端部を挟み込んだ状態で前記ガイドレールの前記開口部側の側端部に沿って折り曲げるヘミング加工により、前記ドアサイドミラーリンフォースの前記開口部側の側端部が、前記ドアインナパネルの前記開口部側の側端部と前記ガイドレールの第一側面部とに接合された
ことを特徴とする請求項1記載の車両用フロントドア構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用フロントドア構造に関し、特にドアミラー固定部にドアミラー取付用の補強部材を備えた車両用フロントドア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用フロントドアを構成するドア本体は、主にドアアウタパネルとドアインナパネルとで構成されており、その開口部に該開口部を開閉するドアガラスが昇降可能に取り付けられている。このような車両用フロントドアの構造において、例えばドアミラーの取付部など、上記開口部の付け根部分における剛性がドアの開閉強度耐久性や高速走行時の空気の吸い出し音に大きく影響することが知られている。
【0003】
従来、ドア本体と、ドア本体に設けられたドアガラスの窓枠部を形成するドアサッシュと、ドアサッシュの前枠部の中間よりドア本体側へ延びてドアガラスの前方をガイドするガイドレールと、ドアサッシュの前枠部とガイドレールとで形成される車両の前端コーナー部に設けられ、その下部がドアインナパネルに固定されるとともにドアミラーの固定に用いられる補強部材とを有する車両用フロントドアの構造において、ドアアウタパネルおよびドアインナパネルにドアサッシュの前部枠および補強部材に重合する重合部を設け、この重合部をドアサッシュの前部枠および補強部材と固定することによってドアの剛性を向上させるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、上述した特許文献1に開示されたような車両用フロントドアの構造において、ドアサッシュの前枠部に延長部を延設するとともに、補強部材の上記延長部に対応する部分に打ち出し部を形成し、延長部と打ち出し部とを固定することによってドアサッシュと補強部材との固定箇所を増やしドアのサッシュ剛性を向上させるようにしたものもある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−342745号公報
【特許文献2】特開2005−263141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような従来のフロントドア構造にあっては、上記補強部材とガイドレールとが、補強部材の後端側をドアアウタパネル側に屈曲させることによって形成した側端部と、断面視コの字状のガイドレールの底面部分(車両前方側で上下に延びる面)とを溶接等で固定することにより接合されていた。すなわち、補強部材とガイドレールの二枚の部材を仮止めしただけの構成となっていた。一方で、車両用フロントドア構造においてはドアガラスによって開閉される開口部の付け根部分における剛性のさらなる向上が求められていた。
【0007】
このようなことから本発明は、車両用フロントドアのドアガラスにより開閉される開口部の付け根部分の剛性をより向上させることが可能な車両用フロントドア構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための第1の発明に係る車両用フロントドア構造は、車両外側に位置するドアアウタパネルと、車両内側に位置するドアインナパネルと、ドアガラスによって開閉される開口部と、前記ドアアウタパネルと前記ドアインナパネルとの間であって前記開口部の車両前方側に配設されてドアミラーを固定するドアサイドミラーリンフォースと、前記ドアガラスの前方を案内するガイドレールとを備える車両用フロントドア構造において、前記ガイドレールは前記ドアインナパネルに対向する第一側面部、前記ドアガラスの車両前方側の端部に対向する第二側面部および前記ドアアウタパネルに対向する第三側面部からなる断面視略コの字状に形成され、前記ドアサイドミラーリンフォースは、前記ドアインナパネル側に配置される一方、前記ドアミラーの取付け部に対応する部分が前記ガイドレールの前記第二側面部に沿って車両外側へ向かって突出して凸面部を形成し、前記ドアアウタパネルは前記ガイドレールの第三側面部に対向する位置から前記ドアサイドミラーリンフォースの凸面部に対向する位置までの部分が断面視直線状に形成され、前記凸面部が前記ドアアウタパネルの断面視直線状の部分と重ね合わされ、前記ドアサイドミラーリンフォースの前記開口部側の側端部が、前記ドアインナパネルの前記開口部側の側端部と前記ガイドレールの第一側面部とによって挟み込まれた状態で前記ドアインナパネルの側端部と前記ガイドレールの第一側面部とに接合されたことを特徴とする。
【0009】
上記の課題を解決するための第2の発明に係る車両用フロントドア構造は、第1の発明に係る車両用フロントドア構造において、前記ドアインナパネルの前記開口部側の側端部を、前記ガイドレールの前記第一側面部の開口部側の側端部と前記ドアサイドミラーリンフォースの前記開口部側の側端部を挟み込んだ状態で前記ガイドレールの前記開口部側の側端部に沿って折り曲げるヘミング加工により、前記ドアサイドミラーリンフォースの前記開口部側の側端部が、前記ドアインナパネルの前記開口部側の側端部と前記ガイドレールの第一側面部とに接合されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上述した第1の発明に係る車両用フロントドア構造によれば、車両外側に位置するドアアウタパネルと、車両内側に位置するドアインナパネルと、ドアガラスによって開閉される開口部と、ドアアウタパネルとドアインナパネルとの間であって開口部の車両前方側に配設されてドアミラーを固定するドアサイドミラーリンフォースと、ドアガラスの前方を案内するガイドレールとを備える車両用フロントドア構造において、ガイドレールはドアインナパネルに対向する第一側面部、ドアガラスの車両前方側の端部に対向する第二側面部およびドアアウタパネルに対向する第三側面部からなる断面視略コの字状に形成され、ドアサイドミラーリンフォースは、ドアインナパネル側に配置される一方、ドアミラーの取付け部に対応する部分がガイドレールの第二側面部に沿って車両外側へ向かって突出して凸面部を形成し、ドアアウタパネルはガイドレールの第三側面部に対向する位置からドアサイドミラーリンフォースの凸面部に対向する位置までの部分が断面視直線状に形成され、凸面部がドアアウタパネルの断面視直線状の部分と重ね合わされ、ドアサイドミラーリンフォースの開口部側の側端部が、ドアインナパネルの開口部側の側端部とガイドレールの第一側面部とによって挟み込まれた状態でドアインナパネルの側端部とガイドレールの第一側面部とに接合されたので、ドアミラーを固定するために設けられるドアサイドミラーリンフォースを利用して、新たな部材を追加することなくドアガラスによって開閉される開口部の付け根部分の剛性を向上させることができる。
【0011】
また、上述した第2の発明に係る車両用フロントドア構造によれば、ドアインナパネルの開口部側の側端部を、ガイドレールの第一側面部の開口部側の側端部とドアサイドミラーリンフォースの開口部側の側端部を挟み込んだ状態でガイドレールの開口部側の側端部に沿って折り曲げるヘミング加工により、ドアサイドミラーリンフォースの開口部側の側端部が、ドアインナパネルの開口部側の側端部とガイドレールの第一側面部とに接合されたので、ドアガラスによって開閉される開口部の付け根部分の剛性をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例に係る車両用フロントドア構造を示す斜視図である。
図2図1のII−II矢視断面図である。
図3図1のIII−III矢視断面図である。
図4】本発明の実施例に係る車両用フロントドア構造が適用されるサイドミラー取付け部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る車両用フロントドア構造を詳細に説明する。
【実施例】
【0014】
図1乃至図4を用いて本発明に係る車両用フロントドア構造の実施例を説明する。
図4に示すように、車両用フロントドア1にあっては、ドアガラス3によって開閉される開口部の車両前方側にドアミラー2が取り付けられる。このドアミラー2の取付け部(以下、ドアミラー取付け部という)近傍におけるフロントドア1の内部は図1に示すような構造を有している。
【0015】
図1はドアアウタパネル11(図2,3参照)を取り外して車両用フロントドア1の前端コーナー部を車外から見た状態を示す斜視図である。図1に示すように、車両用フロントドア1のドア本体を構成するドアインナパネル12にはドアガラス3によって開閉される開口部12aが形成されている。図示はしないがドアアウタパネル11についても同様にドアガラス3によって開閉される開口部が形成されている。
【0016】
そして、図1乃至図3に示すように、車両用フロントドア1の開口部12aの車両前方側において、ドアアウタパネル11とドアインナパネル12との間にはドアサイドミラーリンフォース13とガイドレール14とが設けられている。
【0017】
ドアサイドミラーリンフォース13はドアミラー2を固定する目的で配設される板状の部材であり、開口部12aの車両前方側においてドアインナパネル12に固定されている。ドアサイドミラーリンフォース13には、ドアミラー取付け部に対応する部分に凸面部13aが設けられている。凸面部13aにはミラー取付用穴13b,13cが設けられており、ドアアウタパネル11に設けられた取付用穴11a,11bを介してドアミラー2が固定される。
【0018】
ガイドレール14はドアガラス3の前方を案内するように第一側面部14a、第二側面部14b、第三側面部14cからなる断面視略コの字状に形成されており、開口部12a前方に下方に向かって延設されている。このガイドレール14の第一側面部14aはドアインナパネル12に対向し、第三側面部14cはドアアウタパネル11に対向し、第二側面部14bはドアガラス3の車両前方側の端部に対向している。
【0019】
そして、本実施例においては、図2および図3に示すようにドアサイドミラーリンフォース13の側端部13dが、ドアインナパネル12の側端部12bとガイドレール14の第一側面部14aとの間に挟み込まれるように配設されている。換言すると、ドアインナパネル12、ドアサイドミラーリンフォース13、およびガイドレール14はその開口部12a側の部分が重なり合った状態となっている。そしてこの重なり合った部分が三枚ヘミング加工により接合されている。
【0020】
なお、図2中に示す符号12c、13eはそれぞれドアインナパネル12、ドアサイドミラーリンフォース13に設けられた作業用の穴である。
【0021】
以下に、上述した本実施例に係る車両用フロントドア構造による作用効果について説明する。本実施例に係る車両用フロントドア構造にあっては、上述したようにドアガラス3によって開閉される開口部12aの前方に位置するドアインナパネル12の側端部12bとガイドレール14の第一側面部14aとの間に、ドアサイドミラーリンフォース13の側端部13dを挟み込み、これら三枚の部材を接合する構成としている。
【0022】
このため、ドアアウタパネル11、ドアインナパネル12、およびドアサイドミラーリンフォース13の三枚の部材によって、ドアミラー取付け部の剛性を確保することとなり、従来、補強部材の側端部を車両外側へ屈曲させ、この屈曲した部分とガイドレール14の底面部13bとの二枚の部材を重ねてこれを仮止めしていた構造に比較して、車両用フロントドア1のドアガラス3によって開閉される開口部12aの付け根部分の剛性を向上させることができる。
【0023】
しかも、従来、ドアミラー取付け部の剛性の向上に寄与していなかったドアサイドミラーリンフォース13を用いることにより、新たな部材を追加することなくドアガラス3によって開閉される開口部12aの付け根部分の剛性を向上させることが可能となる。
【0024】
なお、上述した実施例では、ドアインナパネル12の側端部12bと、ドアサイドミラーリンフォース13の側端部13dと、ガイドレール14の第一側面部14aとを三枚ヘミング加工により接合する例を示したが、これらを接合する方法は三枚ヘミング加工に限らず、例えばスポット溶接など、ドアガラス3によって開閉される開口部12aの前方に位置するドアインナパネル12の側端部12bとガイドレール14の第一側面部14aとの間に、ドアサイドミラーリンフォース13の側端部13dを挟み込んだ状態で接合するようにすればよく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、ドアミラー固定部にドアミラー取付用の補強部材を備える車両用フロントドア構造に適用して好適なものである。
【符号の説明】
【0026】
1 フロントドア
2 ドアミラー
3 ドアガラス
11 ドアアウタパネル
12 ドアインナパネル
12a 開口部
12b 側端部
13 ドアサイドミラーリンフォース
13a 凸面部
13d 側端部
14 ガイドレール
14a 第一側面部
14b 第二側面部
14c 第三側面部
図1
図2
図3
図4