(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電池セルの安定した状態を、イグニッションスイッチがオフ状態となってから予め定められた一定期間の経過をもとに判定する電池セル安定状態判定手段を備えたことを特徴とする請求項1または2記載の電池セルの電圧バランス制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、従来の電池セルの電圧バランス制御装置では、電池セルのうちで最も低い電圧値を示す電池セルに、他の電池セルの電圧値を合致させるように放電ループをオンにして抵抗を含む放電回路で前記他の電池セルを放電させる結果、不必要な電力消費が発生し、また不必要な電力消費が発生することによる電池温度の上昇と電池の劣化、出力の低下の増進が加速され、さらにバランス時間が長時間化するなどの課題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、不必要な電力消費の発生を抑制し、これにより電池温度の上昇、電池の劣化、出力低下を抑制し、効率のよい充電を可能にして電池の性能を最大限発揮できるようにした電池セルの電圧バランス制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、組電池を構成する直列接続された複数の電池セルの電池電圧のバラツキを調整制御する電圧バランス制御装置であって、前記電池セルの充電状態が満充電に近い高充電状態における前記電池セル間の電池電圧の差分量を検出する電池電圧検出手段と、前記電池電圧検出手段により検出した前記電池セル間の電池電圧の差分量をもとに、前記電池セル間の電池電圧・放電容量特性が交差する前記高充電状態における充・放電最良点を判定する充・放電最良点判定手段と、前記充・放電最良点判定手段により判定した充・放電最良点を含む前記高充電状態において前記電池セル間の電圧バランスを確立させる電圧バランス制御手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、電池セルの充電状態が満充電に近い高充電状態における前記電池セル間の電池電圧の差分量を電池電圧検出手段により検出し、前記電池電圧検出手段により検出した前記電池セル間の電池電圧の差分量をもとに、前記電池セル間の電池電圧・放電容量特性が交差する前記高充電状態における充・放電最良点を充・放電最良点判定手段により判定し、前記充・放電最良点判定手段により判定した充・放電最良点を含む前記高充電状態において前記電池セル間の電圧バランスを電圧バランス制御手段により確立させるように構成したので、低充電状態において電圧バランスを確立させた場合の不必要な電力消費の発生を抑制でき、これによる電池温度の上昇、電池の劣化、出力低下が抑制でき、効率のよい充電を可能にして電池の性能を最大限発揮できるようにした電池セルの電圧バランス制御装置を提供できる効果がある。
【0008】
請求項2記載の発明によれば、充・放電最良点は、劣化度合いの異なる複数の電池セル間の電池電圧・放電容量特性が交差する点であり、電圧バランス制御手段は、前記複数の電池セルの内、劣化度合いの
大きい一方の電池セルの電圧が前記充・放電最良点より大きい時に、
当該一方の電池セルを放電して前記電池セル間の電圧バランスを確立させるように構成したので、低充電状態において電圧バランスを確立させた場合の不必要な電力消費の発生を抑制でき、これによる電池温度の上昇、電池の劣化、出力低下が抑制でき、効率のよい充電を可能にして電池の性能を最大限発揮できるようにした電池セルの電圧バランス制御装置を提供できる効果がある。
【0010】
請求項
3記載の発明によれば、電池セルの安定した状態を、イグニッションスイッチがオフ状態となってから予め定められた一定期間の経過をもとに判定する電池セル安定状態判定手段を備えるように構成したので、イグニッションスイッチがオフ状態となってから予め定められた一定期間が経過した電池セルの安定した状態の高充電状態において、電圧バランス制御手段により前記電池セル間の電圧バランスを確立させるため、不必要な電力消費の発生を抑制でき、これによる電池温度の上昇、電池の劣化、出力低下が抑制でき、効率のよい充電を可能にして電池の性能を最大限発揮できるようにした電池セルの電圧バランス制御装置を提供できる効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態である電池セルの電圧バランス制御装置の構成を示すブロック図である。
この実施の形態の電池セルの電圧バランス制御装置では、複数の電池セル1,2,3,4が直列接続されて1つの組電池を構成している。
また、組電池を構成する複数の電池セル1,2,3,4のそれぞれに対し電圧をモニタし、また、電池セル1,2,3,4のセル充電電流とセル放電電流を制御するセル制御ユニット6,7,8,9と、電池セル1,2,3,4から構成された組電池を充電するDC/DCコンバータ機能を備えた充電用電源10と、セル制御ユニット6,7,8,9においてモニタされたモニタ電圧値、セル充電電流、セル放電電流をもとに電池セル1,2,3,4の充電を制御するECU11とを備えている。ECU11は、充・放電最良点判定用マップMPと充・放電最良点判定手段131を備えている。
充・放電最良点判定用マップMPは、電池セルの充放電特性、電池セルの劣化に伴う充放電特性の変化をデータとして保存している。
図4は、この充・放電最良点判定用マップMPの電池セルの充放電特性、電池セルの劣化に伴う充放電特性の変化を示す充・放電最良点判定用マップMPの一例を示している。縦軸に電池電圧(V)、横軸に電池放電容量(Ah)をとる。図において符号111は劣化していない正常な電池セル(劣化度合いの小さい一方の電池セル)の充放電特性を示す。また、符号112は、符号111で示した充放電特性を、電池セルの正極側端子と負極側端子とを放電回路で接続し放電させ電池電圧をさらに低下させる方向へ平行移動させた特性を示している。また、符号113は、劣化が進んだ電池セル(劣化度合いの大きい他方の電池セル)の充放電特性を示しており、電池電圧が3.4ボルトを下回ると急激に下降する充放電特性を示している。充・放電最良点判定手段131は、周知の技術であるSOC測定法を利用して容量を測定し、実際の電池セルの電池電圧の変化から電池セルの充放電特性を特定し、充・放電最良点判定用マップMPを参照し対応する充放電特性を判定し、劣化していない電池セルと劣化が進んだ電池セルとを識別し、高容量状態における劣化していない電池セルの充放電特性と劣化が進んだ電池セルの充放電特性との交点を充・放電最良点として判定する。すなわち、本発明において、充・放電最良点は、劣化度合いの異なる複数の電池セル間の電池電圧・放電容量特性が交差する点である。
なお、ECU11は、複数の電池セル1,2,3,4から例えば電気自動車の電動モータへ供給される電力を制御する制御ECUであり、各種データを受信し、受信したデータを解析し、各種指令を送信する。
【0013】
図2は、
図1に示したセル制御ユニット6,7,8,9の構成を示す回路図である。
図2においてセル制御ユニット6は、スイッチ回路61と負荷抵抗回路62およびセル電圧モニタ63を備えている。スイッチ回路61は、ECU11から出力される制御信号をもとに閉成される常開接点により構成されている。負荷抵抗回路62は、ECU11から出力される制御信号をもとに抵抗値が可変される可変抵抗回路により構成されている。セル電圧モニタ63は、電池セル1の正極側出力端子と負極側出力端子とへパラレルに接続されており、電池セル1の電池電圧を検出する。セル電圧モニタ63により検出された電池セル1の電池電圧はECU11へ出力される。スイッチ回路61と負荷抵抗回路62とは直列に接続され電池セル1のセル放電回路を構成し、スイッチ回路61の負荷抵抗回路62と接続されていない他方の端子は電池セル1の正極側出力端子へ接続され、また、負荷抵抗回路62のスイッチ回路61と接続されていない他方の端子は電池セル1の負極側出力端子へ接続されている。
以下、セル制御ユニット7,8,9は、それらに接続される電池セルが電池セル2,3,4である点以外は、セル制御ユニット6と同様の構成であるため、重複する説明は省略する。
なお、セル制御ユニット7,8,9におけるスイッチ回路、負荷抵抗回路、セル電圧モニタを符号を変えて区別した。具体的には、スイッチ回路71,81,91,負荷抵抗回路72,82,92、セル電圧モニタ73,83,93とした。
【0014】
また、スイッチ回路101と電流制限回路102とは直列接続され、スイッチ回路101と電流制限回路102との直列回路は充電用電源10に直列に接続されている。そして、充電用電源10の正極側出力端子がスイッチ回路101と電流制限回路102との直列回路を介して、複数の電池セル1,2,3,4から構成される組電池の正極側出力端子へ接続され、また充電用電源10の負極側出力端子が前記組電池の負極側出力端子へ接続されている。スイッチ回路101と電流制限回路102との直列回路は、複数の電池セル1,2,3,4から構成される組電池に対し充電用電源10により充電を行う充電回路を構成している。
スイッチ回路101は、ECU11から出力される制御信号をもとに閉成される常開接点により構成されている。また、電流制限回路102は、ECU11から出力される制御信号をもとに抵抗値が可変される可変抵抗回路により構成されている。
【0015】
次に動作について説明する。
図5は、この実施の形態の電池セルの電圧バランス制御装置の動作を示すフローチャートである。この動作は
図5に示すフローチャートをECU11が実行することで実現される。
先ず、イグニッションスイッチをオフにした状態から一定時間の経過を判定する(ステップS1)。イグニッションスイッチをオフにした状態では、各電池セルは負荷との接続は遮断されている。また、前記一定時間の経過は、イグニッションスイッチをオフにした状態から電池セルの状態が安定した状態に落ち着くまでの経過時間に対応している。そして、この一定時間が経過すると、各電池セルの電池電圧をセル電圧モニタにより検出する。つまり、電池セル1の電池電圧をセル電圧モニタ63により検出し、電池セル2の電池電圧をセル電圧モニタ73により検出し、電池セル3の電池電圧をセル電圧モニタ83により検出し、電池セル4の電池電圧をセル電圧モニタ93により検出する。そして、検出した電池セルの電池電圧から劣化していない電池セルと、劣化している電池セルとを識別する。
図4に示した充・放電最良点判定用マップMPに示した符号111と符号113で示す充・放電特性から明らかなように、劣化していない電池セルと劣化している電池セルとの相違は高容量状態(満充電の状態から10Ah程度の放電を行なった状態までの範囲)で電池セルの放電に伴って電池電圧が逆転する点である。従って周知のSOC測定方法により各電池セルの容量を測定し、高容量状態で電池セルを放電させたときに電池電圧が逆転する(劣化していない電池セルの電池電圧をV1、劣化している電池セルの電池電圧をV2とすると、V1<V2の状態からV1>V2の状態へ電池セルの電池電圧が逆転するとともに差分量ΔVの絶対値が一定の大きさを超える)電池セルを検出することで劣化していない電池セルと劣化している電池セルとの識別が可能となる。
続いて容量の測定結果から充・放電最良点を充・放電最良点判定手段131により判定する(ステップS3)。この充・放電最良点は、高容量状態で電池放電容量を変化させたときの劣化している電池セルの充・放電特性と劣化していない電池セルの充・放電特性との交点を求めるものであり、満充電の状態から10Ahの放電を行なったときの電池電圧の変化から求めることが可能である。
【0016】
続いて、高容量状態で充・放電制御を行う(ステップS4)。この充・放電制御では、前記充・放電最良点
よりも電池放電容量の小さい高容量状態の下限値、つまり満充電の状態から
5Ah程度の放電を行なった状態での電池電圧の範囲内で充・放電制御を行う。
図3は、この実施の形態の電池セルの電圧バランス制御装置の動作である高容量状態での充・放電制御の一例を示す説明図である。
図3において電池セル4が劣化している電池セルであり、
図4の充・放電特性では符号113で示され、電池放電容量、電池容量として30Ahの容量を有している。また、電池セル1,2,3は劣化していない電池セルであり、
図4の充・放電特性では符号111で示され、電池放電容量、電池容量として50Ahの容量を有している。すなわち、一例として
図2の回路図の電池セル4が劣化している電池セル、他の電池セル1,2,3は劣化していない電池セルとする。
図3(イ)で示される状態は、電池セル4が満充電の状態であり、他の電池セル1,2,3は電池放電容量30Ah残っている状態であり、電池セル4が満充電の状態であることから電池セル1,2,3については満充電の状態まで充電することが出来ない。
図4に示す充・放電特性上では充・放電特性の横軸上のポイントC1が満充電の状態の電池セル4の容量を示し、また充・放電特性の横軸上のポイントC2が電池セル1,2,3の容量を示す。従って、この実施の形態では、
図2に示すスイッチ回路101を開状態に切り替えて、スイッチ回路91を閉成し、電池セル4の正極側出力端子と負極側出力端子とに負荷抵抗回路92を接続し、電池セル4を所定放電量、例えば5Ah放電させる。この5Ah放電させた後は、
図2に示すスイッチ回路91を開状態に切り替えて電池セル4の正極側出力端子と負極側出力端子とから負荷抵抗回路92を切り離す。
図3(ロ)は電池セル4を5Ah放電させた状態を示している。この状態では、
図4の充・放電特性上、電池セル4の容量はポイントC1からポイントC3へ変化する。このとき電池セル4の容量は25Ah、電池セル1,2,3の容量は30Ahを維持している。
そして、この状態からスイッチ回路101を閉成し、電流制限回路102を介して電池セル1,2,3,4が直列接続されてなる組電池を5Ah充電する。
図3(ハ)は、これにより5Ah充電され容量が30Ahとなった電池セル4と、容量が35Ahとなった電池セル1,2,3を示している。
図4の充・放電特性上では、電池セル4の容量はポイントC3からポイントC1へ変化し、また電池セル1,2,3の容量はポイントC2からポイントC4へ変化する。
続けて、この状態から、さらに
図2に示すスイッチ回路101を開状態に切り替えて、スイッチ回路91を閉成し、電池セル4の正極側出力端子と負極側出力端子とに負荷抵抗回路92を接続し、電池セル4を所定放電量、例えば5Ah放電させる。この5Ah放電させた後は、
図2に示すスイッチ回路91を開状態に切り替えて電池セル4の正極側出力端子と負極側出力端子とから負荷抵抗回路92を切り離す。この状態では、
図4の充・放電特性上、電池セル4の容量はポイントC1からポイントC3へ変化する。このとき電池セル4の容量は25Ah、電池セル1,2,3の容量は35Ahを維持している。そして、この状態からスイッチ回路101を閉成し、電流制限回路102を介して電池セル1,2,3,4が直列接続されてなる組電池を5Ah充電する。
図4の充・放電特性上では、電池セル4の容量はポイントC1からポイントC3へ変化し、また電池セル1,2,3の容量はポイントC4からポイントC5へ変化する。
以後、電池セル4の5Ah放電と、電池セル1,2,3,4が直列接続されてなる組電池の5Ah充電を繰り返すことで、
図3(ニ)に示すように電池セル1,2,3と電池セル4に対し満充電、すなわち電池セル1,2,3に対しては容量50Ah、電池セル4に対しては容量30Ahになるまで充・放電制御を行う。
すなわち、第1の実施の形態では、複数の電池セル1,2,3,4の内、劣化度合いの
大きい一方の電池セル4の電圧が充・放電最良点より大きい時に、
当該電池セル4を放電して電池セル1,2,3,4間の電圧バランスを確立させている。
【0017】
以上説明したように、この実施の形態によれば、高容量状態で劣化電池セルの放電と、前記劣化電池セルを含む電池セルが直列接続された組電池の充電とを繰り返し行い、劣化電池セルを含む組電池を満充電状態に充電できるように構成したので、不必要な電力消費の発生を抑制し、これにより電池温度の上昇、電池の劣化、出力低下を抑制し、効率のよい充電を可能にして電池の性能を最大限発揮できるようにした電池セルの電圧バランス制御装置を提供できる効果がある。