特許第5691941号(P5691941)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5691941
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】引戸用ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 5/02 20060101AFI20150312BHJP
   E05F 3/16 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   E05F5/02 A
   E05F3/16
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-186847(P2011-186847)
(22)【出願日】2011年8月30日
(65)【公開番号】特開2013-49955(P2013-49955A)
(43)【公開日】2013年3月14日
【審査請求日】2014年5月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211695
【氏名又は名称】中西金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(72)【発明者】
【氏名】辻 崇宏
【審査官】 七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−63768(JP,A)
【文献】 特開2003−106056(JP,A)
【文献】 特許第3467551(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 1/00− 13/04、17/00
E06B 3/04− 3/46、
3/50− 3/52
E06B 11/00− 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
引戸の戸先側若しくは戸尻側の端部上面又は引戸の上部が係合する上枠の引戸開閉方向端部に取り付けられ、引戸開閉方向に延びて引戸幅方向に離間した一対のブレーキ板と、
前記引戸の上部が係合する上枠の引戸開閉方向端部又は前記引戸の戸先側若しくは戸尻側の端部上面に取り付けられ、前記引戸を閉め切る際又は開け切る際に前記ブレーキ板の内面と摺動する摺動部を有するブレーキ体とを備え、
前記ブレーキ体を、基体と、引戸幅方向に分離した部分を少なくとも前記基体側に有する、前記基体に対して引戸開閉方向にスライド可能なスライド体とにより構成し、前記スライド体の引戸幅方向外面に前記摺動部を形成するとともに、前記スライド体の前記基体側端面に引戸幅方向外方へ行くにしたがって前記基体に近づく一対の傾斜面を形成し、前記基体の前記スライド体側端面に前記スライド体の傾斜面に当接する一対の傾斜面を形成してなり、
前記基体に対して前記スライド体が引戸開閉方向にスライドしてこれらが離間した状態で、前記引戸を閉め切る際又は開け切る際には、前記ブレーキ板の内面に前記スライド体が挟まれて前記スライド体が前記ブレーキ板とともに移動して前記スライド体の傾斜面が前記基体の傾斜面により当て止めされ、
この状態から前記引戸を前記閉め切る方向又は開け切る方向と逆方向に動かす際には、前記ブレーキ板の内面に挟まれた前記スライド体が前記基体に対して相対的に引戸開閉方向にスライドして前記基体から離間した状態となることを特徴とする引戸用ブレーキ装置。
【請求項2】
前記スライド体の傾斜面に沿う水平方向と引戸開閉方向とがなす角度を約45°としてなる請求項1記載の引戸用ブレーキ装置。
【請求項3】
前記基体の一対の傾斜面の間に前記スライド体の前記引戸幅方向に分離した部分間に挿入される突部を形成してなる請求項1又は2記載の引戸用ブレーキ装置。
【請求項4】
前記一対のブレーキ板の内面に、それらの引戸幅方向の間隔が前記引戸を閉め切る際又は開け切る際に前記ブレーキ体に近い方が広くなるテーパ面を形成してなる請求項1〜3の何れか1項に記載の引戸用ブレーキ装置。
【請求項5】
前記スライド体の引戸幅方向に分離した部分の間隔を変えることにより制動力を調整する制動力調整手段を設けてなる請求項1〜4の何れか1項に記載の引戸用ブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸を閉め切る際又は開け切る際には摩擦抵抗力を増大させて制動し、引戸を閉め切る方向又は開け切る方向と逆方向に動かす際には摩擦抵抗力を減少させて軽く移動させるように構成した引戸用ブレーキ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
引戸開閉の操作力が必要以上に大きく、引戸移動の勢いが強すぎると、引戸が枠体に当たって騒音がしたり、引戸が跳ね返って開いてしまうことから、引戸を閉め切る際又は開け切る際には摩擦抵抗力を増大させて制動し、引戸を閉め切る方向又は開け切る方向と逆方向に動かす際には摩擦抵抗力を減少させて軽く移動させるように構成した引戸用ブレーキ装置がある(例えば、特許文献1及び2参照。)。
特許文献1の引戸用ブレーキ装置は、鴨居の案内溝に装着され、引戸の移動方向に沿った長手部材にて形成し、摩擦面となるほぼ平行な2面を具備する制動部材と、引戸の上部に装着され、制動部材の摩擦面を挟んで当接摺動でき、引戸の移動中に制動部材との当接摺動により摩擦抵抗力を発生させる摺動部材を具備する当接部材とによって構成され、当接部材は、断面L字状に形成された2つの板状部材からなり、板状部材の垂直部分に設けた摺動部材を対向配置させるとともに、水平部分を重ね合わせて配置し、水平部分には引戸の移動方向に対して斜め方向に形成した貫通孔を、水平部分を重ねた状態で互いにクロスするように形成して、両貫通孔に遊嵌させた取付ネジを設けており、当接部材は、制動部材との当接摺動の際の摩擦抵抗力によって、引戸の一方向への移動時には、摺動部材間の間隔が狭くなるようにずれ、引戸の逆方向への移動時には、摺動部材間の間隔が広くなるようにずれるよう構成したものである。
また、特許文献2の引戸用ブレーキ装置は、引戸上部の走行方向両端部に、案内レールの内部に収容される箱形に形成された制動部材受を取り付け、引戸が当接するストッパと反対側に配置された制動部材受と接触して引戸がストッパに当接する前に引戸の走行速度を減速する制動部材を引戸の上部の前後方向への移動を規制するガイド部材に取り付け、制動部材に、ガイド部材のケーシングのケーシング本体から露出して制動部材受の外枠材のキャッチ板に当接される1対の小駒状の制動板と、制動板を支持する角度が逆の2つの支持面と、支持面に開口され制動板を抜止め係止させるとともに支持面に沿って少しのスライドを許容する取付窓と、ガイド部材のケーシングのケーシング本体の内部に収容されて両制動板の間に引張力を付与して掛け渡されたコイルスプリングとを備えてなるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3423180号公報
【特許文献2】特開2008−63768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の引戸用ブレーキ装置は、その当接部材が、断面L字状に形成された2つの板状部材の水平部分を重ね合わせて配置し、水平部分には引戸の移動方向に対して斜め方向に形成した貫通孔を、水平部分を重ねた状態で互いにクロスするように形成して、両貫通孔に遊嵌させた取付ネジを設け、垂直部分には引戸の移動中に制動部材との当接摺動により摩擦抵抗力を発生させる摺動部材を保持させ、制動部材との当接摺動の際の摩擦抵抗力によって、引戸の一方向への移動時には、摺動部材間の間隔が狭くなるようにずれ、引戸の逆方向への移動時には、摺動部材間の間隔が広くなるようにずれるよう構成されており、部品点数が比較的多いこと等から製造コストが増大する。
また、特許文献2の引戸用ブレーキ装置は、その制動部材が、ガイド部材のケーシングのケーシング本体から露出して制動部材受の外枠材のキャッチ板に当接される1対の小駒状の制動板と、制動板を支持する角度が逆の2つの支持面と、支持面に開口され制動板を抜止め係止させるとともに支持面に沿って少しのスライドを許容する取付窓と、ガイド部材のケーシングのケーシング本体の内部に収容されて両制動板の間に引張力を付与して掛け渡されたコイルスプリングとを備えてなるものであり、部品点数が比較的多いこと等から製造コストが増大する。
【0005】
そこで本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、引戸を閉め切る際又は開け切る際には摩擦抵抗力を増大させて制動し、引戸を閉め切る方向又は開け切る方向と逆方向に動かす際には摩擦抵抗力を減少させて軽く移動させることができる構成でありながら、簡素な構成により製造コストを低減することができる引戸用ブレーキ装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る引戸用ブレーキ装置は、前記課題解決のために、引戸の戸先側若しくは戸尻側の端部上面又は引戸の上部が係合する上枠の引戸開閉方向端部に取り付けられ、引戸開閉方向に延びて引戸幅方向に離間した一対のブレーキ板と、前記引戸の上部が係合する上枠の引戸開閉方向端部又は前記引戸の戸先側若しくは戸尻側の端部上面に取り付けられ、前記引戸を閉め切る際又は開け切る際に前記ブレーキ板の内面と摺動する摺動部を有するブレーキ体とを備え、前記ブレーキ体を、基体と、引戸幅方向に分離した部分を少なくとも前記基体側に有する、前記基体に対して引戸開閉方向にスライド可能なスライド体とにより構成し、前記スライド体の引戸幅方向外面に前記摺動部を形成するとともに、前記スライド体の前記基体側端面に引戸幅方向外方へ行くにしたがって前記基体に近づく一対の傾斜面を形成し、前記基体の前記スライド体側端面に前記スライド体の傾斜面に当接する一対の傾斜面を形成してなり、前記基体に対して前記スライド体が引戸開閉方向にスライドしてこれらが離間した状態で、前記引戸を閉め切る際又は開け切る際には、前記ブレーキ板の内面に前記スライド体が挟まれて前記スライド体が前記ブレーキ板とともに移動して前記スライド体の傾斜面が前記基体の傾斜面により当て止めされ、この状態から前記引戸を前記閉め切る方向又は開け切る方向と逆方向に動かす際には、前記ブレーキ板の内面に挟まれた前記スライド体が前記基体に対して相対的に引戸開閉方向にスライドして前記基体から離間した状態となることを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、ブレーキ体を、基体と基体に対して引戸開閉方向にスライド可能なスライド体とにより構成しており、スライド体の引戸幅方向外面にブレーキ板の内面と摺動する摺動部が形成され、スライド体の基体側には引戸幅方向外方へ行くにしたがって基体に近づく一対の傾斜面が形成されるとともに、基体のスライド体側端面にはスライド体の傾斜面に当接する一対の傾斜面が形成されている。
したがって、基体に対してスライド体が引戸開閉方向にスライドしてこれらが離間した状態で、引戸を閉め切る際又は開け切る際には、ブレーキ板の内面にスライド体が挟まれてスライド体がブレーキ板とともに移動してスライド体の傾斜面が基体の傾斜面により当て止めされ、引戸幅方向に分離しているスライド体の基体側部分には引戸幅方向外方への力が作用するため、摩擦抵抗力が増大して引戸は急制動される。
その上、引戸を閉め切った状態又は開け切った状態から逆方向に動かす際には、ブレーキ板の内面に挟まれたスライド体が基体に対して相対的に引戸開閉方向にスライドして基体から離間した状態となり、スライド体の基体側部分が引戸幅方向に分離していることから引戸幅方向へ弾性変形しやすいため、摩擦抵抗力が減少して引戸を軽快に移動させることができる。
その上さらに、引戸開閉方向に延びて引戸幅方向に離間した一対のブレーキ板と、基体、及び、基体に対して引戸開閉方向にスライド可能な、引戸幅方向外面に引戸を閉め切る際又は開け切る際にブレーキ板の内面と摺動する摺動部が形成されたスライド体からなる2ピース構造のブレーキ体とにより引戸用ブレーキ装置を構成していることから、構成が簡素であるため、製造コストを低減することができる。
【0008】
ここで、前記スライド体の傾斜面に沿う水平方向と引戸開閉方向とがなす角度を約45°としてなると好ましい。
このような構成によれば、引戸を閉め切る際又は開け切る際に、スライド体の傾斜面が基体の傾斜面により当て止めされ、引戸幅方向に分離しているスライド体の基体側部分に引戸幅方向外方への力を作用させて摩擦抵抗力が増大させ、引戸を急制動する機能を確保しながら、スライド体の傾斜面に沿う水平方向と引戸開閉方向とがなす角度が大きい場合に生じやすい、制動した引戸が引戸を閉め切る方向又は開け切る方向と反対の方向へ跳ね返る現象や、前記角度が小さい場合に生じやすい、引戸を閉めきった後又は開け切った後に引戸がじわじわと前記反対の方向へ移動する現象の発生を抑制することができる。
【0009】
また、前記基体の一対の傾斜面の間に前記スライド体の前記引戸幅方向に分離した部分間に挿入される突部を形成してなると好ましい。
このような構成によれば、スライド体の引戸幅方向に分離した部分間に突部が挿入された状態では、引戸幅方向に分離しているスライド体の基体側部分の引戸幅方向内方への移動が抑制されることから、スライド体の引戸幅方向外面に形成された摺動部とブレーキ板の内面との摺動による制動力の大きさ(ブレーキの利き)を確保することができる。
その上、スライド体の傾斜面が基体の傾斜面により当て止めされ、その衝突後にスライド体の傾斜面が基体の傾斜面から離れる方向に移動する力がスライド体に作用したとしても、その際におけるスライド体の移動を抑制する制動力が大きくなるため、スライド体とともに移動する引戸が縦枠から離れるのを抑制することができる。
【0010】
さらに、前記一対のブレーキ板の内面に、それらの引戸幅方向の間隔が前記引戸を閉め切る際又は開け切る際に前記ブレーキ体に近い方が広くなるテーパ面を形成してなると好ましい。
このような構成によれば、一対のブレーキ板の内面に形成された、引戸幅方向の間隔が引戸を閉め切る際又は開け切る際にブレーキ体に近い方が広くなるテーパ面により、引戸に作用する制動力が徐々に大きくなるため、制動力をより大きくすることができるとともに、引戸を閉め切る際又は開け切る際に制動される引戸の動作がより円滑になる。
【0011】
さらにまた、前記スライド体の引戸幅方向に分離した部分の間隔を変えることにより制動力を調整する制動力調整手段を設けてなると好ましい。
このような構成によれば、スライド体の引戸幅方向に分離した部分があることから、この分離した部分を押し広げることにより、スライド体の引戸幅方向に分離した部分の間隔を変えて制動力を調整することができるため、このようなスライド体の引戸幅方向に分離した部分の間隔を変えることにより制動力を調整する制動力調整手段を設けることにより、制動力の調整を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明に係る引戸用ブレーキ装置によれば、引戸を閉め切る際又は開け切る際には摩擦抵抗力を増大させて制動し、引戸を閉め切る方向又は開け切る方向と逆方向に動かす際には摩擦抵抗力を減少させて軽く移動させることができる構成でありながら、引戸開閉方向に延びて引戸幅方向に離間した一対のブレーキ板と、基体、及び、基体に対して引戸開閉方向にスライド可能な、引戸幅方向外面に引戸を閉め切る際又は開け切る際にブレーキ板の内面と摺動する摺動部が形成されたスライド体からなる2ピース構造のブレーキ体とからなる簡素な構成により、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係る引戸用ブレーキ装置を上枠及び引戸に取り付けた例についてその要部を拡大して示す斜視図であり、(a)は引戸の上部が係合する上枠の引戸開閉方向端部に取り付けたブレーキ体を、(b)は引戸の戸先側端部上面に取り付けたブレーキ板を示している。
図2】ブレーキ体及びブレーキ板を取り出して示す斜視図である。
図3】ブレーキ体の分解斜視図である。
図4】ブレーキ体の底面図であり、(a)はスライド体が基体から離間した状態を、(b)はスライド体が基体に当て止めされた状態を示している。
図5】スライド体が基体に当て止めされた状態のブレーキ体を示す、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は制動力調整手段の構成例を示す縦断面図である。
図6】引戸を閉め切る際における引戸用ブレーキ装置の動作説明図であり、(a)はスライド体が基体から離間した状態で引戸を閉方向へ移動させてブレーキ板がスライド体に近づいている状態を、(b)はさらにブレーキ板がスライド体に近づいている状態を、(c)はブレーキ板の内面にスライド体の摺動部が当接している状態を、(d)はブレーキ板とともに移動したスライド体が基体に当て止めされた状態を示している。
図7】引戸を閉め切った状態から開く際における引戸用ブレーキ装置の動作説明図であり、(a)は引戸を閉め切ってスライド体が基体に当て止めされた状態を、(b)は引戸を開方向へ移動させてブレーキ板の内面に摺動部が当接したスライド体がブレーキ板とともにスライドして基体から離間した状態を、(c)はさらに引戸を開方向へ移動させてスライド体の摺動部とブレーキ板の内面とが離れた状態を、(d)はさらに引戸を開方向へ移動させた状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明の実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明するが、本発明は、添付図面に示された形態に限定されず特許請求の範囲に記載の要件を満たす実施形態の全てを含むものである。
なお、本明細書においては、引戸の閉方向(図中矢印D1参照。)に向かって左方から見た図を正面図とする。
【0015】
図1(a)に示すように、引戸Sは、枠体Fで仕切られた例えば出入口である開口部Eを開閉するものであり、図1及び図2に示すように、本発明の実施の形態に係る引戸用ブレーキ装置1は、引戸Sの戸先C側の端部上面に取付孔9A,9Bを利用して取り付けられた支持部材9に支持固定された、引戸開閉方向Aに延びて引戸幅方向(引戸厚み方向)Bに離間した一対のブレーキ板2,2と、引戸Sの上部が係合する上枠Uの引戸開閉方向A端部に取付板10の取付孔10A,10Bを利用して取り付けられた、図1(a)のように引戸Sを閉方向D1へ移動させて戸先Cを縦枠Lに当接させた状態まで閉め切る際に、ブレーキ板2,2の内面2A,2Aと摺動する摺動部6A,6Aを有するブレーキ体3とを備えている。
なお、引戸Sは、出入口である開口部Eを開閉する引戸だけでなく、クローゼットや食器棚等に使用される引戸であってもよい。
【0016】
図3に示すように、ブレーキ体3は、合成樹脂製の基体4及び基体4に対して引戸開閉方向Aにスライド可能な合成樹脂製のスライド体5等により構成される。
ここで、スライド体5は、引戸幅方向Bに分離した一対の摺動体6,6により構成され、摺動体6,6の引戸幅方向B外面の基体4側部分を鋼板製のブレーキ板2,2の内面2A,2Aと摺動する摺動部6A,6Aとするとともに、摺動体6,6には、それらの基体4側端面に引戸幅方向B外方へ行くにしたがって基体4に近づく一対の傾斜面6B,6Bが形成される。
また、基体4には、スライド体5(摺動体6,6)側端面に引戸幅方向B外方へ行くにしたがってスライド体5から遠ざかる、摺動体6,6の傾斜面6B,6Bと当接する(傾斜面6B,6Bと略平行な)一対の傾斜面4B,4Bが形成されるとともに、傾斜面4B,4Bの間に、引戸幅方向Bに分離した一対の摺動体6,6間に挿入(嵌合)される突部4Aが形成される。
【0017】
基体4は、引戸幅方向B外面であり引戸開閉方向Aに延びるガイド面4C,4Cを有しており、基体4の上面(図3では下面)が取付板10に繋がり一体化される。
また、摺動体6,6は、底面視(平面視)略U字状の連結体11の遊端部11A,11Aの基端部側に繋がり一体化されており、連結体11の引戸幅方向B内面である被ガイド面11B,11Bが基体4のガイド面4C,4Cに対向するように組み付けられ、連結体11の遊端部11A,11Aがガイドブロック12の凹部12Aに嵌合された状態で、調整ねじ8がガイドブロック12の螺孔12Bに螺合され、ガイドブロックの引戸幅方向B外面である被ガイド面12C,12Cが取付板10に立設された引戸開閉方向Aに延びるガイド部10C,10Cの引戸幅方向B内面に対向する(図5(a)も参照。)。
したがって、スライド体5(摺動体6,6)並びに連結体11及びガイドブロック12は、基体4及び取付板10により、これらに対して引戸開閉方向Aにスライド可能に支持されており、スライド体5(摺動体6,6)は、図4(a)に示すような基体4から離間した位置から、図4(b)に示すような基体4に当て止めされた位置との間で引戸開閉方向Aにスライドすることができる。
【0018】
図3及び図5に示すように、調整ねじ8の頭部8Aの側面は、そのねじ部に近くなるほど小径としたテーパ面(円錐面)であり、摺動体6,6の基体4から遠い側の引戸幅方向B内面も、調整ねじ8の頭部8A側面のテーパ面(円錐面)に外接するテーパ面(円錐面)6Cとされる。
したがって、調整ねじ8を締める方向へ回転させることにより摺動体6,6の間隔が広くなって摺動部6A,6A間の長さが長くなり、調整ねじ8を緩める方向へ回転させることにより摺動体6,6の間隔が狭くなって摺動部6A,6A間の長さが短くなる。
このようなスライド体5(摺動体6,6)の引戸幅方向Bに分離した部分の間隔を変えることにより制動力を調整する制動力調整手段7を設けることにより、制動力の調整を容易に行うことができる。
なお、取付板10の長孔10Dは、軸方向へ移動するとともに取付板10に対して引戸開閉方向Aへスライドする調整ねじ8の先端との干渉を避けるためのものである。
【0019】
次に、図6を参照して引戸Sを閉め切る際における引戸用ブレーキ装置1の動作を、図7を参照して引戸Sを閉め切った状態から開く際における引戸用ブレーキ装置1の動作を説明する。ここで、図6及び図7においては、引戸用ブレーキ装置1の動作説明のために、障子(引戸S)側のブレーキ板2,2と枠体F(上枠U)側のブレーキ体3とを取り出して、これらの底面図(下側から見た図)を示している。
ブレーキ体3の基体4からスライド体5である摺動体6,6が離間した状態で、図6(a)から図6(b)のように引戸Sが閉方向D1へ移動し、さらに引戸が閉方向D1へ移動すると、ブレーキ板2,2の内面2A,2Aに摺動体6,6の摺動部6A,6Aが当接し、摺動体6,6が引戸幅方向B内方へ弾性変形して摺動体6,6がブレーキ板2,2の内面2A,2Aに挟まれた図6(c)に示す状態となる。
この状態からさらに閉方向D1へ移動する引戸Sには、弾性変形して追従する摺動体6,6から制動力が付与されるとともに、図6(d)に示すようにブレーキ板2,2とともに移動した摺動体6,6の傾斜面6B,6Bが基体4の傾斜面4B,4Bに当て止めされた状態では、引戸幅方向Bに分離している摺動体6,6に引戸幅方向B外方への力が作用するため、ブレーキ板2,2との間の摩擦力が増大して引戸Sは急制動される。
【0020】
図7(a)に示す引戸Sを閉め切った状態から、引戸Sを開方向D2へ開くと、ブレーキ板2,2の内面2A,2Aに挟まれた摺動体6,6が基体4に対して開方向D2にスライドして基体5から離間した図7(b)に示す状態になる。
このように、摺動体6,6が基体4から離間した状態では、摺動体6,6は引戸幅方向Bに分離していることから引戸幅方向Bへ弾性変形しやすいため、ブレーキ板2,2との間の摩擦力が減少して制動力が小さくなるため引戸Sを軽快に移動させることができ、図7(c)及び図7(d)のようにブレーキ板2,2の内面2A,2Aが摺動体6,6の摺動部6A,6Aから離れた際には、制動力が無くなるため、さらに引戸Sを軽快に移動させることができる。
【0021】
また、図4に示す一対の摺動体6,6の傾斜面6B,6Bがなす角度H及び基体4の傾斜面4B,4Bがなす角度Hを約90°としており、したがって、摺動体6の傾斜面6Bに沿う水平方向と引戸開閉方向Aとがなす角度G及び基体4の傾斜面4Bに沿う水平方向と引戸開閉方向Aとがなす角度Gを約45°としている。
このような傾斜面6B,6B及び4B,4Bの角度設定により、前記角度Gが大きい場合に生じやすい、制動した引戸Sが開方向D2へ跳ね返る現象や、前記角度Gが小さい場合に生じやすい、引戸Sを閉めきった後に引戸Sがじわじわと開方向D2へ移動する現象の発生を抑制することができる。
【0022】
さらに、基体4の傾斜面4B,4Bの間には、上述のとおり、摺動体6,6間に挿入(嵌合)される突部4Aが形成されていることから、突部4Aが摺動体6,6間に挿入された状態では、摺動体6,6の引戸幅方向B内方への移動が抑制されるため、摺動体6,6の引戸幅方向B外面に形成された摺動部6A,6Aとブレーキ板2,2の内面2A,2Aとの摺動による制動力の大きさ(ブレーキの利き)を確保することができる。
その上、摺動体6,6の傾斜面6B,6Bが基体4の傾斜面4B,4Bにより当て止めされ、その衝突後に摺動体6,6の傾斜面6B,6Bが基体4の傾斜面4B,4Bから離れる方向に移動する力が作用したとしても、その際における摺動体6,6(スライド体5)の移動を抑制する制動力が大きくなるため、摺動体6,6とともに移動する引戸Sが縦枠Lから離れるのを抑制することができる。
【0023】
さらにまた、図6及び図7に示すように、一対のブレーキ板2,2の内面には、それらの引戸幅方向Bの間隔が引戸Sを閉め切る際にブレーキ体3に近い方が広くなるテーパ面を形成している。
したがって、このようなテーパ面により、引戸Sに作用する制動力が徐々に大きくなるため、制動力をより大きくすることができるとともに、引戸Sを閉め切る際に制動される引戸Sの動作がより円滑になる。
【0024】
また、引戸用ブレーキ装置1を、引戸開閉方向Aに延びて引戸幅方向Bに離間した一対のブレーキ板2,2と、基体4、及び、基体4に対して引戸開閉方向Aにスライド可能な、引戸幅方向B外面に引戸Sを閉め切る際にブレーキ板2,2の内面2A,2Aと摺動する摺動部6A,6Aが形成されたスライド体5(摺動体6,6)からなる2ピース構造のブレーキ体3とにより構成していることから、構成が簡素であるため、製造コストを低減することができる。
【0025】
以上の説明においては、ブレーキ板2,2を引戸Sの戸先C側上面に取り付け、ブレーキ体3を引戸Sの上部が係合する上枠Uの引戸開閉方向A端部(引戸Sの戸先C側に対応する端部)に取り付ける例を示したが、ブレーキ板2,2を引戸Sの戸尻側上面に取り付け、ブレーキ体3を引戸Sの上部が係合する上枠Uの引戸開閉方向A端部(引戸Sの戸尻側に対応する端部)に取り付けてもよい。このように、引戸用ブレーキ装置1を引戸Sの戸尻側に装着した場合は、引戸Sを開け切る際に摩擦抵抗力を増大させて引戸Sが制動される。
あるいは、ブレーキ板2,2を引戸Sの上部が係合する上枠Uの引戸開閉方向A端部に取り付け、ブレーキ体3を引戸Sの戸先C側若しくは戸尻側の端部上面に取り付けてもよい。
また、スライド体3を引戸幅方向Bに分離した一対の摺動体6,6により構成する例を示したが、スライド体3は、引戸幅方向Bに分離した部分(引戸幅方向Bへ弾性変形しやすい部分)を少なくとも基体4側に有するものであればよい。
【符号の説明】
【0026】
A 引戸開閉方向
B 引戸幅方向
C 戸先
D1 閉方向
D2 開方向
E 出入口(開口部)
F 枠体
G 摺動体の傾斜面に沿う水平方向と引戸開閉方向とがなす角度
H 一対の摺動体の傾斜面がなす角度
L 縦枠
S 引戸
U 上枠
1 引戸用ブレーキ装置
2 ブレーキ板
2A 内面
3 ブレーキ体
4 基体
4A 突部
4B 傾斜面
4C ガイド面
5 スライド体
6 摺動体
6A 摺動部
6B 傾斜面
6C テーパ面(円錐面)
7 制動力調整手段
8 調整ねじ
8A 頭部
9 支持部材
9A,9B 取付孔
10 取付板
10A,10B 取付孔
10C ガイド部
10D 長孔
11 連結体
11A 遊端部
11B 被ガイド面
12 ガイドブロック
12A 凹部
12B 螺孔
12C 被ガイド面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7