(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
奥行き情報が明示的にも又はステレオ画像のように暗示的にも与えられていない供給される非立体画像のシーン構造を推定するために、前記非立体画像の画面内の所定領域における画素値の少なくとも一部の統計量を利用して、前記複数の基本奥行きモデルの画像間の合成比率を算定する合成比率算定ステップと、
前記複数の基本奥行きモデルの画像を、前記合成比率で合成して、基本奥行きモデル合成画像を生成する合成ステップと、
前記非立体画像の映像信号における各画素に対して、エッジを示す高域成分を検出する高域成分検出ステップと、
前記映像信号の特定期間毎に、その特定期間に含まれる複数の画素に対して検出された複数の高域成分の中で最も大きい高域成分を特定する高域成分比較ステップと、
前記高域成分比較ステップにより特定された前記最も大きい高域成分に基づいて、ゲインを生成するゲイン生成ステップと、
前記映像信号と前記ゲイン生成ステップで生成された前記ゲインとを乗算して、前記映像信号のレベルを補正する補正信号生成ステップと、
前記合成ステップにより合成した前記基本奥行きモデル合成画像に前記補正信号生成ステップによって補正された映像信号を加算して、前記非立体画像と共に擬似的な立体画像を構成する、前記非立体画像とは別視点の画像を生成するための奥行き推定データを生成する加算ステップと
を含むことを特徴とする奥行き推定データ生成方法。
奥行き情報が明示的にも又はステレオ画像のように暗示的にも与えられていない供給される非立体画像のシーン構造を推定するために、前記非立体画像の画面内の所定領域における画素値の少なくとも一部の統計量を利用して、基本となる複数のシーン構造のそれぞれについて奥行き値を示す複数の基本奥行きモデルの画像間の合成比率を算定する合成比率算定機能と、
前記複数の基本奥行きモデルの画像を、前記合成比率で合成して、基本奥行きモデル合成画像を生成する合成機能と、
前記非立体画像の映像信号における各画素に対して、エッジを示す高域成分を検出する高域成分検出機能と、
前記映像信号の特定期間毎に、その特定期間に含まれる複数の画素に対して検出された複数の高域成分の中で最も大きい高域成分を特定する高域成分比較機能と、
前記高域成分比較機能により特定された前記最も大きい高域成分に基づいて、ゲインを生成するゲイン生成機能と、
前記映像信号と前記ゲイン生成機能で生成された前記ゲインとを乗算して、前記映像信号のレベルを補正する補正信号生成機能と、
前記合成機能により合成した前記基本奥行きモデル合成画像に前記補正信号生成機能によって補正された映像信号を加算して、前記非立体画像と共に擬似的な立体画像を構成する、前記非立体画像とは別視点の画像を生成するための奥行き推定データを生成する加算機能と
をコンピュータにより実現させることを特徴とする奥行き推定データ生成プログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の疑似立体画像生成装置は、入力非立体画像の高域成分評価値に応じて決定した合成比率に応じて複数種類の基本奥行きモデルの画像を合成し、その基本奥行きモデルの合成画像にオブジェクト情報として非立体画像のR信号を重畳することで、最終的な奥行き推定データを生成している。
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の疑似立体画像生成装置では、どのような絵柄に対してもR信号のレベルのみに依存して基本奥行きモデルの合成画像に重畳して奥行き推定データを生成するため、例えば同一オブジェクト内の細かい部分(小面積)だけが過度に飛び出して見える場合があり、その結果、同一オブジェクト内の分離やオブジェクトの位置関係の不一致が発生するという課題がある。
【0007】
本発明は以上の点に鑑みなされたもので、同一オブジェクト内の分離やオブジェクトの位置関係の不一致の発生を防ぎ自然な立体効果をもたらす疑似立体画像を生成する奥行き推定データの生成装置、生成方法及び生成プログラム、並びに疑似立体画像の生成装置、生成方法及び生成プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、第1の発明の奥行き推定データ生成装置は、基本となる複数のシーン構造のそれぞれについて奥行き値を示す複数の基本奥行きモデルの画像を発生する発生手段と、奥行き情報が明示的にも又はステレオ画像のように暗示的にも与えられていない供給される非立体画像のシーン構造を推定するために、非立体画像の画面内の所定領域における画素値の少なくとも一部の統計量を利用して、複数の基本奥行きモデルの画像間の合成比率を算定する合成比率算定手段と、発生手段から発生した複数の基本奥行きモデルの画像を、合成比率で合成して、基本奥行きモデル合成画像を生成する合成手段と、非立体画像
の映像信号における各画素に対して、エッジを示す高域成分を検出する高域成分検出手段と、
映像信号の特定期間毎に、その特定期間に含まれる複数の画素に対して検出された複数の高域成分の中で最も大きい高域成分を特定する高域成分比較手段と、高域成分
比較手段により
特定された
最も大きい高域成分に基づいて、ゲインを生成するゲイン生成手段と、
映像信号とゲイン生成手段からのゲインとを乗算して、
映像信号のレベルを
補正する補正信号生成手段と、合成手段により合成した基本奥行きモデル合成画像に
補正信号生成手段によって補正された映像信号を加算して、非立体画像と共に擬似的な立体画像を構成する、非立体画像とは別視点の画像を生成するための奥行き推定データを生成する加算手段とを有することを特徴とする。
【0009】
また、上記の目的を達成するため、第2の発明の奥行き推定データ生成装置は、
基本となる複数のシーン構造のそれぞれについて奥行き値を示す複数の基本奥行きモデルの画像を発生する発生手段と、奥行き情報が明示的にも又はステレオ画像のように暗示的にも与えられていない供給される非立体画像のシーン構造を推定するために、非立体画像の画面内の所定領域における画素値の少なくとも一部の統計量を利用して、複数の基本奥行きモデルの画像間の合成比率を算定する合成比率算定手段と、発生手段から発生した複数の基本奥行きモデルの画像を、合成比率で合成して、基本奥行きモデル合成画像を生成する合成手段と、非立体画像の映像信号のエッジを示す高域成分を検出する高域成分検出手段と、高域成分検出手段により検出された高域成分の値が大であるほど小なる値とされるゲインを生成するゲイン生成手段と、映像信号とゲイン生成手段からのゲインとを乗算して、映像信号のレベルを補正する補正信号生成手段と、合成手段により合成した基本奥行きモデル合成画像に補正信号生成手段によって補正された映像信号を加算して、非立体画像と共に擬似的な立体画像を構成する、非立体画像とは別視点の画像を生成するための奥行き推定データを生成する加算手段とを備える。また、上記ゲイン生成手段が、高域成分検出手段から供給される高域成分の値が、オブジェクト信号の予め設定した特定期間毎に、閾値を分割して得た複数の閾値分割範囲のいずれの閾値分割範囲に含まれるかを比較し、特定期間内において高域成分の値が含まれる最も閾値が大きな閾値分割範囲を示すフラグを出力する高域成分比較手段と、複数の閾値分割範囲に対応して閾値が大きな閾値分割範囲ほど小なる値の比率が予め設定されており、高域成分比較手段から供給されるフラグが示す閾値分割範囲に対応して設定された比率をゲインとして算出するゲイン算出手段とを有することを特徴とする。
【0010】
また、上記の目的を達成するため、第3の発明の奥行き推定データ生成方法は、奥行き情報が明示的にも又はステレオ画像のように暗示的にも与えられていない供給される非立体画像のシーン構造を推定するために、前記非立体画像の画面内の所定領域における画素値の少なくとも一部の統計量を利用して、前記複数の基本奥行きモデルの画像間の合成比率を算定する合成比率算定ステップと、複数の基本奥行きモデルの画像を、前記合成比率で合成して、基本奥行きモデル合成画像を生成する合成ステップと、非立体画像
の映像信号における各画素に対して、エッジを示す高域成分を検出する高域成分検出ステップと、
映像信号の特定期間毎に、その特定期間に含まれる複数の画素に対して検出された複数の高域成分の中で最も大きい高域成分を特定する高域成分比較ステップと、高域成分
比較ステップにより
特定された
前記最も大きい高域成分に基づいて、ゲインを生成するゲイン生成ステップと、
映像信号と前記ゲイン生成ステップで生成された前記ゲインとを乗算して、前記
映像信号のレベルを
補正する補正信号生成ステップと、合成ステップにより合成した前記基本奥行きモデル合成画像に
前記補正信号生成ステップによって補正された映像信号を加算して、前記非立体画像と共に擬似的な立体画像を構成する、前記非立体画像とは別視点の画像を生成するための奥行き推定データを生成する加算ステップとを含むことを特徴とする。
また、上記の目的を達成するため、第4の発明の奥行き推定データ生成方法は、第2の発明の奥行き推定データ生成装置の各構成要素に対応した各ステップからなることを特徴とする。また、上記の目的を達成するため、第5の発明の奥行推定データ生成プログラムは、第3の発明の奥行推定データ生成方法の各ステップに対応する機能をコンピュータに実現させることを特徴とする。更に、上記の目的を達成するため、第6の発明の奥行推定データ生成プログラムは、第4の発明の奥行き推定データ生成方法の各ステップに対応する機能をコンピュータに実現させることを特徴とする。
【0011】
また、上記の目的を達成するため、第
7の発明の疑似立体画像生成装置は、奥行き情報が明示的にも又はステレオ画像のように暗示的にも与えられていない非立体画像が供給される
第1又は第2の発明の奥行き推定データ生成装置にて生成された奥行き推定データと、非立体画像とに基づいて、非立体画像のテクスチャのシフトを対応部分の奥行き推定データに応じた量だけ行うことによって別視点画像を生成する別視点画像生成手段と、非立体画像及び別視点画像の一方を左目画像とし、他方を右目画像とする疑似立体画像を出力する手段とを有することを特徴とする。
【0012】
また、上記の目的を達成するため、第
8の発明の疑似立体画像生成方法は、奥行き情報が明示的にも又はステレオ画像のように暗示的にも与えられていない非立体画像が供給される第3
又は第4の発明の奥行き推定データ生成方法にて生成された奥行き推定データと、非立体画像とに基づいて、非立体画像のテクスチャのシフトを対応部分の奥行き推定データに応じた量だけ行うことによって別視点画像を生成する別視点画像生成ステップと、非立体画像及び別視点画像の一方を左目画像とし、他方を右目画像とする疑似立体画像を出力するステップとを含むことを特徴とする。
【0013】
更に、上記の目的を達成するため、第
9の発明の疑似立体画像生成プログラムは、奥行き情報が明示的にも又はステレオ画像のように暗示的にも与えられていない非立体画像が供給される第
5又は第6の発明の奥行き推定データ生成プログラムにて生成された奥行き推定データと、非立体画像とに基づいて、非立体画像のテクスチャのシフトを対応部分の奥行き推定データに応じた量だけ行うことによって別視点画像を生成する別視点画像生成機能と、非立体画像及び別視点画像の一方を左目画像とし、他方を右目画像とする疑似立体画像を出力する機能とをコンピュータに実現させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、同一オブジェクト内の分離やオブジェクトの位置関係の不一致の発生を防ぎ、自然な立体効果をもたらす疑似立体画像を生成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明になる擬似立体画像生成装置の一実施の形態のブロック図を示す。本実施の形態の疑似立体画像生成装置1は、奥行き情報が明示的にも又はステレオ画像のように暗示的にも与えられていない2次元カラー画像(非立体画像)から擬似的な3次元カラー立体画像を生成する所謂2D3D変換を行う装置であり、非立体画像の入力映像信号に基づいて、入力非立体画像の視点と別視点の画像を生成する。
【0018】
疑似立体画像生成装置1は、非立体画像の入力映像信号に対して奥行き推定データを生成する奥行き推定データ生成装置10と、奥行き推定データから入力非立体画像と共に擬似的な立体画像を構成する、入力非立体画像とは別視点の画像を生成して入力非立体画像と共にステレオペアとして出力するステレオペア生成装置20とから構成されている。ステレオ表示装置30は、ステレオペア生成装置20から出力されたステレオペアを入力信号として受け、疑似的な立体画像を表示する。
【0019】
奥行き推定データ生成装置10は、本発明になる奥行き推定データ生成装置の一実施の形態である奥行き推定部11から構成されている。奥行き推定部11の詳細な構成は後述する。ステレオペア生成部20は、奥行き推定部11で生成された奥行き推定データに応じて、入力される非立体画像のテクスチャをシフトするテクスチャシフト部21と、オクルージョンを補償するオクルージョン補償部22と、ポスト処理を行うポスト処理部23とから構成されており、ポスト処理部23からシフトされた左目画像24を出力すると共に、入力映像信号である右目画像25を出力する。すなわち、ステレオペア生成部20は、入力非立体画像を右目画像25としたとき、この右目画像25と擬似的な立体画像を構成する左目画像24を生成して右目画像25と共にステレオペアとして出力する。ステレオペア生成部20は、奥行き推定データと非立体画像とに基づいて、非立体画像のテクスチャのシフトを対応部分の奥行き推定データに応じた量だけ行うことによって別視点画像を生成する別視点画像生成手段を構成している。
【0020】
次に、本発明の奥行き推定データ生成装置の一実施の形態を構成する奥行き推定部11の構成及び動作について更に詳細に説明する。
【0021】
図2は、奥行き推定部11の一実施例のブロック図を示す。同図に示すように、奥行き推定部11は、画像入力部111、画面上部の高域成分評価部112、画面下部の高域成分評価部113、フレームメモリ114〜116、合成部117、オブジェクト信号補正部118及び加算部119から構成されている。この奥行き推定部11は、オブジェクト信号補正部118の構成に特徴がある。
【0022】
図2において、画像入力部111は、フレームメモリを備えており、非立体画像信号である1フレーム分の入力映像信号を一時記憶した後、その1フレーム分の入力映像信号中の輝度信号を画面上部の高域成分評価部112、及び画面下部の高域成分評価部113にそれぞれ供給すると共に、入力映像信号中の赤色信号(R信号)をオブジェクト信号補正部118に供給する。
【0023】
画面上部の高域成分評価部112及び画面下部の高域成分評価部113は、本発明においてそれぞれ非立体画像のシーン構造を推定するために、非立体画像の画面内の所定領域における画素値の少なくとも一部の統計量を利用して、後述する3種類の基本奥行きモデルの画像間の合成比率を算定する合成比率算定手段を構成している。
【0024】
すなわち、画面上部の高域成分評価部112は、1フレーム分の入力映像信号における画面の上部約20%にあたる領域内での高域成分を求めて、画面上部の高域成分評価値(top_act)として算出する。そして、画面上部の高域成分評価部112は、画面上部の高域成分評価値(top_act)を合成部117に供給する。画面下部の高域成分評価部113は、1フレーム分の入力映像信号における画面の下部約20%領域内にあたる領域内での高域成分を求めて、画面下部の高域成分評価値(bottom_act)として算出する。そして、画面下部の高域成分評価部113は、画面下部の高域成分評価値(bottom_act)を合成部117に供給する。画面上部の高域成分評価値(top_act)及び画面下部の高域成分評価値(bottom_act)は、それぞれ非立体画像の画面上部、画面下部の各所定領域(各20%領域)における画素値の統計量を示す。なお、高域成分は非立体画像のエッジを示す周波数信号成分である。
【0025】
一方、フレームメモリ114は基本奥行きモデルタイプA、フレームメモリ115は基本奥行きモデルタイプB、フレームメモリ116は基本奥行きモデルタイプCの画像を予め格納しており、本発明の奥行き推定データ生成装置の発生手段を構成している。これらの基本奥行きモデルタイプA〜Cの画像は、それぞれ擬似立体画像信号を生成するための基本となるシーン構造の奥行き値を示す画像である。
【0026】
例えば、上記の基本奥行きモデルタイプAの画像は、球面状の凹面による奥行きモデルの画像で、
図3に示すような立体構造の画像を示す。多くの場合に、この基本奥行きモデルタイプAの画像が使用される。オブジェクトが存在しないシーンにおいては、画面中央を一番遠距離に設定することにより、違和感の少ない立体感及び快適な奥行き感が得られるからである。
【0027】
また、上記の基本奥行きモデルタイプBの画像は、基本奥行きモデルタイプAの画像の上部を球面でなく、アーチ型の円筒面に置き換えたもので、
図4に立体構造を示すような、上部を円筒面(軸は垂直方向)で下部を凹面(球面)としたモデルの画像である。
【0028】
更に、上記の基本奥行きモデルタイプCの画像は、
図5に立体構造を示すような、上部を平面とし、下部をその平面から連続し、下に行くほど手前側に向かう円筒面状としたもので、上部が平面、下部が円筒面(軸は水平方向)としたモデルの画像である。基本奥行きモデルタイプ発生手段を構成するフレームメモリ114〜116に格納されている、これら基本奥行きモデルタイプA〜Cの画像は、合成部117へ供給される。
【0029】
合成部117は、まず、画面上部の高域成分評価部112から供給された画面上部の高域成分評価値と、画面下部の高域成分評価部113から供給された画面下部の高域成分評価値とに基づいて、画像のシーンを考慮することなく、予め定められた方法により、基本奥行きモデルタイプAの合成比率k1、基本奥行きモデルタイプBの合成比率k2、基本奥行きモデルタイプCの合成比率k3を自動的に算出する。なお、3つの合成比率k1〜k3の合計値は常に「1」である。
【0030】
図6は、合成比率の決定条件の一例を示す。
図6は、横軸に示す画面上部の高域成分評価値(以下、上部の高域成分評価値と略す)top_actと、縦軸に示す画面下部の高域成分評価値(以下、下部の高域成分評価値と略す)bottom_actの各値と、予め指定された値tps、tpl、bms、bmlとの兼ね合いにより合成比率が決定されることを示す。
【0031】
図6において、複数のタイプが記載されている領域については、高域成分評価値に応じて線形に合成される。例えば、
図6において、「TypeA/B」の領域では、下記のように上部の高域成分評価値(top_act)と下部の高域成分評価値(bottom_act)との比率で基本奥行きモデルタイプAの値であるTypeAと基本奥行きモデルタイプBの値であるTypeBの比率が決定され、基本奥行きモデルタイプCの値であるTypeCは比率の決定には用いられない。
【0032】
TypeA:TypeB:TypeC
=(top_act−tps):(tp1−top_act):0
また、
図6において、「TypeA/B/C」の領域では、TypeA/BとTypeA/Cとの平均を採用して、下記のようにTypeA/B/Cの値が決定される。
【0033】
TypeA:TypeB:TypeC
=(top_act−tps)+(bottom_act−bms):(tpl−top_act):(bml−bottom_act)
なお、合成比率k1、k2、k3は次式で算出される。
【0034】
k1=TypeA/(TypeA+TypeB+TypeC) (1)
k2=TypeB/(TypeA+TypeB+TypeC) (2)
k3=TypeC/(TypeA+TypeB+TypeC) (3)
合成部117は、続いて、上記のように算出した合成比率k1〜k3のうち、合成比率k1と基本奥行きモデルタイプAの値であるTypeAとの第1の乗算結果と、合成比率k2と基本奥行きモデルタイプBの値であるTypeBとの第2の乗算結果と、合成比率k3と基本奥行きモデルタイプCの値であるTypeCとの第3の乗算結果とをそれぞれ算出し、更にそれら3つの乗算結果を加算して合成奥行きモデルとなる画像信号を生成する。
【0035】
なお、上記の基本奥行きモデルタイプA〜Cの画像、及び上記の合成比率の決定条件は、本出願人が特許文献1にて開示した公知の基本奥行きモデルタイプA〜Cの画像及び決定条件であるが、これに限定されるものではない。また、合成部117の構成は本出願人が特開2006−185033号公報にて開示した構成であってもよい。
【0036】
このように、基本となるシーンの奥行き構造モデルとして3種類の基本奥行きモデルタイプを用意し、上記の合成部117において基本奥行きモデルタイプAの画像を基本にしながらも、上部の高域成分評価値top_actが小さい場合は、画面上部に空もしくは平坦な壁が存在するシーンと認識して画面上部の奥行きを深くした基本奥行きモデルタイプBの画像の合成比率を増加させ、下部の高域成分評価値bottom_actが小さい場合は、画面下部に平坦な地面もしくは水面が手前に連続的に広がるシーンと認識して、画面上部を遠景として平面近似し、画面下部については下に行くほど奥行きの浅くなる基本奥行きモデルタイプCの画像の合成比率を増加させる合成処理を行うことで、どのような画像に対しても違和感を感じさせることがなく、またできる限り現実に近いシーン構造の決定を行うことができる。
【0037】
次に、オブジェクト信号補正部118は、画像入力部111から供給される入力映像信号中のR信号(これは生成する疑似立体画像の凹凸に関するオブジェクト情報を示すオブジェクト信号に相当する)を補正し、補正後のオブジェクト信号R’を加算部119に供給する。R信号をオブジェクト信号として使用する理由の一つは、R信号の大きさが、順光に近い環境で、かつ、テクスチャの明度が大きく異ならないような条件において、被写体の凹凸と一致する確率が高いという経験則によるものである。更に、もう一つの理由として、赤色及び暖色は色彩学における前進色であり、寒色系よりも奥行きが手前に認識されるという特徴があり、この奥行きを手前に配置することで立体感を強調することが可能であるということである。
【0038】
図7は、オブジェクト信号補正部118の一実施例のブロック図を示す。同図に示すように、オブジェクト信号補正部118は、画像入力部111から供給されるオブジェクト信号であるR信号の高域成分を検出する高域成分検出部1181と、上記の高域成分と分割した複数の閾値範囲とを比較する高域成分比較部1182と、高域成分比較部1182の比較結果に応じてゲインを算出するゲイン算出部1183と、ゲインとオブジェクト信号(R信号)とを乗算する乗算部1184と、乗算部1184から出力される乗算信号の高域成分を低減し、補正後のオブジェクト信号(R’信号)を生成する空間ローパスフィルタ(LPF)1185とから構成されている。
【0039】
高域成分検出部1181は、画像入力部111から非立体画像の入力映像信号中のR信号がオブジェクト信号として供給され、そのR信号の高域成分を検出する。R信号の高域成分は入力映像信号のエッジ成分を示す。
【0040】
図8は、高域成分検出部1181の検出位相の説明図を示す。高域成分検出部1181は、
図8(A)のように、現在の画素を黒丸で示し、検出位相の画素を白丸で示すものとすると、
図8(B)に模式的に示すように、画面水平方向において処理対象の現在の画素pに対して左側に隣接する画素x_mと右側に隣接する画素x_pとの差分の絶対値(水平差分Act_H)を算出し、また、
図8(C)に模式的に示すように、画面垂直方向において処理対象の現在の画素pに対して1ライン上側の隣接画素y_mと1ライン下側の隣接画素y_pとの差分の絶対値(垂直差分Act_V)を算出する。従って、水平差分Act_Hと垂直差分Act_Vはそれぞれ次式により算出される。
【0041】
Act_H=abs(x_m−x_p) (4)
Act_V=abs(y_m−y_p) (5)
ここで、(4)式及び(5)式中、absは絶対値を意味する。
そして、高域成分検出部1181は、上記の水平差分Act_Hと垂直差分Act_Vとを次式のように加算することで、高域成分Act_HVを算出する。
【0042】
Act_HV=Act_H+Act_V (6)
高域成分比較部1182は、高域成分検出部1181から供給される高域成分Act_HVが、
図9に示す5つに分割された閾値範囲を示すスレッショルドレンジRange_a、Range_b、Range_c、Range_d及びRange_eのいずれに入っているかを示す比較結果を次式により求める。
【0043】
Range_a=Edge_th<Act_HV (7a)
Range_b=Edge_th×3/4<Act_HV≦Edge_th (7b)
Range_c=Edge_th×2/4<Act_HV≦Edge_th×3/4 (7c)
Range_d=Edge_th×1/4<Act_HV≦Edge_th×2/4 (7d)
Range_e=Act_HV≦Edge_th×1/4 (7e)
ここで、Range_a、Range_b、Range_c、Range_d及びRange_eは、(7a)式〜(7e)式の右辺の不等式を満足するとき値が「1」、満足しないとき値が「0」である。なお、Edge_thは予め設定した閾値で、例えば「40」である。従って、一例として、高域成分Act_HVが「35」であるときは、高域成分比較部1182は、(7b)式の不等式のみを満足するので、Range_a=0、Range_b=1、Range_c=0、Range_d=0、Range_e=0の比較結果を出力する。
【0044】
続いて、高域成分比較部1182は、
図10に示すように、上記の比較結果が得られた黒丸で示す現在の画素を中心とし、現在の画素の左右各3画素(白丸で示す)からなる計7画素において、前記の5つのスレッショルドレンジRange_a、Range_b、Range_c、Range_d及びRange_eのいずれに含まれているかを判別し、含まれているスレッショルドレンジのうち、最も閾値レベルが大きいスレッショルドレンジに対応したフラグFlagに「1」をたてる。従って、高域成分比較部1182は、上記の連続する7画素期間において、例えばRange_a=1、Range_e=1の比較結果を判別した場合は、閾値レベルが大きい方のスレッショルドレンジRange_aに対応したフラグflag_aに「1」をたてる。このような動作は次式により示される。
【0045】
for( x=−3;x<=3;x++){
if( Range_a(x)==1) Flag_a=1;
if( Range_b(x)==1) Flag_b=1;
if( Range_c(x)==1) Flag_c=1;
if( Range_d(x)==1) Flag_d=1;
if( Range_e(x)==1) Flag_e=1;
} (8)
図10に示した高域成分比較部1182における高域成分の比較期間である7画素期間は、オブジェクト内の小面積部分を示す特定期間である。ただし、高域成分比較部1182における特定期間は、
図10に示した7画素期間に限定されるものではない。
【0046】
ゲイン算出部1183は、高域成分比較部1182から供給される上記フラグに従い、次式に示す計算式によりゲイン(Depth_Gain)を算出する。
【0047】
if( Flag_a == 1) Depth_Gain=2/8;
else if( Flag_b == 1) Depth_Gain=3/8;
else if( Flag_c == 1) Depth_Gain=5/8;
else if( Flag_d == 1) Depth_Gain=7/8;
else Depth_Gain=8/8; (9)
従って、ゲイン算出部1183は、高域成分比較部1182から供給されるフラグFlag_a〜Flag_eのうち値「1」であるフラグが、スレッショルドレンジの閾値レベルが大きいフラグであるほど、小なる値のゲイン(Depth_Gain)を算出し、値「1」であるフラグが閾値レベルが最小のスレッショルドレンジRange_eを示すFlag_eであるときは最大値「1」のゲイン(Depth_Gain)を算出する。(9)式に示すようにゲイン(Depth_Gain)は1以下で0より大なる比率を示す。
【0048】
乗算部1184は、ゲイン算出部1183により算出されたゲイン(Depth_Gain)を、次式に示すように画像入力部111から供給される入力映像信号中のR信号と乗算して乗算結果R_outを出力する。
【0049】
R_out=R×Depth_Gain (10)
ただし、(10)式中、RはR信号の現在の画素の画素値を示す。
【0050】
空間LPF1185は、乗算結果R_outに対して空間低域フィルタ特性を施してR’信号を生成する。ここで、空間LPF1185は、水平LPFと垂直LPFとが縦続接続された公知のデジタルフィルタの構成とされている。一例として、上記水平LPFは各々遅延時間が1水平走査期間である縦続接続された遅延素子8個と、入力信号又は各遅延素子の出力信号をそれぞれ各タップ係数1/32、2/32、4/32、6/32、6/32、6/32、4/32、2/32、1/32と乗算する9個の乗算器と、それらの乗算結果を合成する加算器からなる9タップの構成である。また、上記垂直LPFは、各々遅延時間が1垂直走査期間である縦続接続された遅延素子2個と、入力信号又は各遅延素子の出力信号をそれぞれ各タップ係数1/4、2/4、1/4と乗算する3個の乗算器と、それらの乗算結果を合成する加算器からなる3タップの構成である。
【0051】
非立体画像の凹凸成分の変化が大きい領域については、後段のステレオペア生成部20においてテクスチャシフトされたシフト画素が、周辺の画素と重なったり、表示する画素が存在しなかったりするため、シフト画像の破綻が目立つようになる。この問題に対して、空間LPF1185は乗算部1184からの乗算信号の高域成分を低減することで凹凸成分を滑らかにするものであり、連続する凹凸成分の変化が大きいときに発生する、シフト処理画像の不自然性を緩和する働きがある。
【0052】
次に、オブジェクト信号補正部118の動作について、
図11のタイミングチャートと共に更に詳細に説明する。一例として、
図11(A)に模式的に示すように、入力R信号は時刻t3から時刻t6までの期間伝送される黒丸で示す5画素の小面積部分の値が「80」で、それ以外の白丸で示す画素値は「0」であるものとする。従って、この場合、特許文献1記載の疑似立体画像生成装置におけるR信号のゲインは、
図11(B)に示すように、時刻t3から時刻t6までの期間「80」、それ以外の期間は「0」である。なお、R信号は一例として0〜255の範囲内の画素値を絵柄に応じて示すものとする。
【0053】
この入力R信号に対して、高域成分検出部1181は、
図11(C)に示すように、時刻t3で入力される値「80」の1番目の画素の左側に隣接する値「0」の画素の入力時刻t2から右側に隣接する値「80」の2番目の画素の入力時刻t4までの期間、値「80」の高域成分Act_HVを出力する。また、高域成分検出部1181は、
図11(C)に示すように、値「80」の画素に続いて入力される値「0」の最初の画素の左側に隣接する値「80」の5番目の画素の入力時刻t5から上記最初の画素の右側に隣接する値「0」の画素の入力時刻t7までの期間、値「80」の高域成分Act_HVを出力する。
【0054】
これにより、高域成分比較部1182は、時刻t2の画素の3画素前の画素入力時刻t1から時刻t7の画素の3画素後4画素目の入力時刻t8までの期間、(8)式に従い「1」の値のフラグFlag_aを出力する。また、時刻t1以前、及び時刻t8以降の期間では、(8)式に従い「1」の値のフラグFlag_eを出力する。従って、ゲイン算出部1183は、(9)式に従い、
図11(D)に示すように、上記の時刻t1から時刻t8までの期間は値が「2/8」で、時刻t1以前、及び時刻t8以降の期間では値が「1」であるゲインDepth_Gainを算出して出力する。
【0055】
従って、乗算部1184は、
図11(E)に示すように、値が「80」である時刻t3から時刻t6までのR信号入力期間のみ値が「20」(=80×2/8)で、時刻t3以前及び時刻t6以降の値が「0」のR信号入力期間では値が「0」(=0×1又は0×2/8)である信号R_outを(10)式により算出して出力する。
【0056】
これにより、空間LPF1185は乗算部1184から供給される
図11(E)に示す信号R_outに対して所定の空間低域フィルタ特性を施し、
図11(F)に示すように、時刻t2から時刻t4の期間、値「0」から値「20」へ滑らかに立ち上がり、時刻t5から時刻t7の期間、値「20」から値「0」へ滑らかに立ち下がる波形のR’信号を補正されたオブジェクト信号として生成する。このR’信号は、
図2の加算部119に供給される。加算部119は、合成部117から供給される合成奥行きモデルとなる画像信号(すなわち、背景の画像信号)と、加算信号生成部118から供給されるR’信号(すなわち、画像の凹凸を示す補正されたオブジェクト信号)とを加算して最終的な奥行き推定データを生成する。
【0057】
このように、本実施の形態の奥行き推定部11では、奥行き推定データを生成するために、加算部119において合成奥行きモデルとなる画像信号と加算されるオブジェクト信号を、
図11(B)に示したR信号に比べて、画像の小面積部分で周辺画素との凹凸の差が抑制された
図11(F)に示したR’信号としたため、例えば同一オブジェクト内の細かい部分(小面積)だけが過度に飛び出して見える現象を抑制することができる。その結果、本実施の形態によれば、同一オブジェクト内の分離やオブジェクトの位置関係の不一致が発生するという課題を解決することができる。
【0058】
再び
図1に戻って説明する。テクスチャシフト部21は、上記のようにして奥行き推定部11により生成された奥行き推定データと、入力映像信号とに基づいて、入力映像信号とは別視点の画像信号を生成する。例えば、テクスチャシフト部21は、入力映像信号が右目用画像信号であるとしたときは、その右目用画像信号を画面表示させた場合の視点を基準にして、左に視点移動した画像信号を生成する。その場合、テクスチャシフト部21は、ユーザーに対してテクスチャを近景として表示させるときは、近い画像ほどユーザーの内側(鼻側)に見えるので、画面右側へテクスチャを奥行きに応じた量だけ移動した画像信号を生成する。また、テクスチャシフト部21は、ユーザーに対してテクスチャを遠景として表示させるときは、遠い画像ほどユーザーの外側に見えるので、画面左側へテクスチャを奥行きに応じた量だけ移動した画像信号を生成する。
【0059】
ここでは、それぞれの画素に対する奥行き推定データを8ビットの値Ddで表すものとする。テクスチャシフト部21は、Ddの小さい値(すなわち、画面奥に位置するもの)から順に、そのDdに対応する入力右目用画像信号のテクスチャをそれぞれの画素毎に(Dd−m)/n画素分右にシフトした画像信号を生成する。上記のmは飛び出し感を表すパラメータ(輻輳値)であり、上記のnは奥行きを表すパラメータ(奥行き値)である。
【0060】
なお、ユーザーには、奥行き推定データを示す値Ddの小さいテクスチャは画面奥側に見え、奥行き推定データを示す値Ddの大きいテクスチャは画面手前に見える。奥行き推定データを示す値Dd、輻輳値m、奥行き値nは0〜255の範囲の値であり、例えば、輻輳値m=200、奥行き値n=20である。
【0061】
なお、本発明は以上の実施の形態に限定されるものではなく、例えばオブジェクト信号補正部118は、空間LPF1185を省略し構成としてもよい。また、オブジェクト信号補正部118の補正対象のオブジェクト信号はR信号に限定されるものではなく、青色信号(B信号)でもよい。赤色及び暖色が前進色であるのに対し、青色は後退色であり、暖色系よりも奥行きが奥に認識される特徴がある。よって、青色の部分を奥に配置することによっても立体感の強調は可能であるからである。更には、オブジェクト信号としてR信号とB信号とを併用して、赤色の部分を手前、青色の部分を奥に配置することによって立体感を強調することも可能である。
【0062】
また、高域成分比較部1182は、特定期間内において高域成分が分割された複数の閾値分割範囲内のどの閾値分割範囲内に含まれるかを検出し、更に検出した閾値分割範囲に応じたフラグに「1」を立てているが、閾値を設けることなく供給される高域成分の値を検出するように構成してもよい。
【0063】
また、ステレオペアに関して、左右反転することで左目画像を原画、右目画像を生成した別視点画像のステレオペアを構成してもよい。また、
図1の疑似立体画像生成装置1においては、入力非立体画像を右目画像25として左目画像24を生成しているが、入力非立体画像を左目画像として右目画像を生成するようにしてもよく、更には左右どちらについても別視点画像を用いる、すなわち、右に視点移動した別視点画像と左に視点移動した別視点画像を用いてステレオペアを構成することも可能である。
【0064】
また、ステレオペア生成装置20として2視点での例を説明しているが、2視点以上の表示が可能な表示装置にて表示する場合、その視点数に応じた数の別視点画像を生成する複数視点画像生成装置を構成することも可能である。
【0065】
また、疑似立体表示システムにおいては音声出力を装備する形態のものも考えられる。この場合、静止画等音声情報を持たない画像コンテンツについては、画像にふさわしい環境音を付加するような態様のものが考えられる。
【0066】
なお、本発明は、ハードウェアにより
図1の構成の擬似立体画像生成装置1や、
図2及び
図7に示した奥行き推定データ生成装置20を構成する場合に限定されるものではなく、コンピュータプログラムによるソフトウェアにより擬似立体画像生成や奥行き推定データ生成を行うこともできる。この場合、コンピュータプログラムは、記録媒体からコンピュータに取り込まれてもよいし、ネットワーク経由でコンピュータに取り込まれてもよい。