(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(i)ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)と、マレイミド化合物(B)と、溶媒を含むナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂溶液(AB)、(ii)ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)のプレポリマーと、マレイミド化合物(B)と、溶媒を含むナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂溶液(AB)、又は、(iii)ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)とマレイミド化合物(B)のプレポリマーと、溶媒を含むナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂溶液(AB)を調製し、該樹脂溶液(AB)を−20℃〜40℃の温度で1日〜2年間保存し、ここで、該樹脂溶液(AB)の固形分が40重量%〜90重量%であることを特徴とする、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂溶液(AB)の保存方法。
前記ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂溶液(AB)が、更に、前記ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)以外のシアン酸エステル樹脂(G)、前記ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)と該ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)以外のシアン酸エステル樹脂(G)のプレポリマー、又は、前記ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)と前記マレイミド化合物(B)と前記ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)以外のシアン酸エステル樹脂(G)のプレポリマーを含む、請求項1に記載のナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂溶液(AB)の保存方法。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板用の積層板としては、エポキシ樹脂をジシアンジアミドで硬化させて得られるFR−4タイプの積層板が広く使用されている。しかしながら、この手法では高耐熱性化の要求に対応するには限界があった。また、耐熱性に優れるプリント配線板用樹脂としてはシアン酸エステル樹脂が知られており、ビスフェノールA型シアン酸エステル樹脂と他の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂との樹脂組成物を用いたプリプレグが、近年、半導体プラスチックパッケージ用積層板に幅広く使用されている。
【0003】
また、近年、電子機器や通信機、パーソナルコンピューター等に広く用いられている半導体の高集積化・高機能化・高密度実装化はますます加速しており、半導体プラスチックパッケージもQFPからBGA・CSPのようなエリア実装型への展開、さらにMCP・SIP等の高機能型の出現のように、その形態は多種多様になりつつある。そのため、以前にも増して半導体プラスチックパッケージ用積層板に対する高信頼性化の要求が強まっている。
【0004】
半導体素子は、熱膨張率が3〜6ppm/℃であり、一般的な半導体プラスチックパッケージ用プリント配線板の熱膨張率より小さい。そのため、半導体プラスチックパッケージに熱衝撃が加わったときに、半導体素子と半導体プラスチックパッケージ用プリント配線板の熱膨張率差により、半導体プラスチックパッケージに反りが発生し、半導体素子と半導体プラスチックパッケージ用プリント配線板間や、半導体プラスチックパッケージと実装されるプリント配線板間で接続不良が生じることがある。そのため、該反りを小さくして接続信頼性を確保するためには、面方向の熱膨張率が小さいプリント配線板の開発が必要である。
【0005】
プリント配線板用の積層板の面方向の熱膨張率を低くする方法としては、樹脂組成物に無機フィラーを充填させる方法がある。しかしながら、無機フィラーの充填量が多くなると、得られた樹脂組成物が脆くなり、プリント配線板の層間接続で必要となるスルーホールを形成するドリル加工品質を低下させ、また、加工に用いるドリルビットの磨耗が早くなり、加工の生産性を著しく低下させるという問題があった。また、面方向の熱膨張率を低くする他の方法としては、ゴム弾性のある有機フィラーを、エポキシ樹脂を含むワニスに配合することが知られているが(特許文献1〜5)、このワニスを使用した場合には、積層板の難燃化のために臭素系難燃化剤を使用することがあった。
【0006】
上記のように、従来、積層板に難燃性を付与するために、臭素系難燃剤を併用する処方が用いられてきた。しかしながら、昨今の環境問題の高まりに呼応して、ハロゲン系化合物を使用しない樹脂組成物が求められ、この要求に対して、ハロゲン系難燃剤の代わりにリン化合物の使用が検討されてきた。しかしながら、リン化合物は燃焼時にホスフィンなどの有毒化合物が発生する恐れもあるため、ハロゲン系化合物とリン化合物を使用せずとも難燃性を有する積層板の開発が望まれている。
【0007】
そして、ハロゲン系化合物とリン化合物を使用せずとも難燃性を有する積層板の開発を目的として、シアン酸エステル樹脂の検討が行われており、ノボラック型シアン酸エステル樹脂(特許文献6)やナフトールアラルキル型のシアン酸エステル樹脂が知られている。しかしながら、フェノールノボラック型シアン酸エステル樹脂は、シアネート基当量が小さく、その剛直な骨格構造に起因して硬化時に未反応シアネート基が多く残存し易く、金属箔との密着性、耐水性や吸湿耐熱性などの特性において満足できるものではなかった。一方、ナフトールアラルキル型のシアン酸エステル樹脂を含む樹脂組成物は、樹脂骨格が剛直構造であるという特性を生かして、耐熱性を維持できると共に、反応阻害要因を低減させて硬化性を高め、耐水性、吸湿耐熱性に優れるという特性を有する(特許文献7)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)に溶媒とマレイミド化合物(B)を加え、混合する方法、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)のプレポリマーを含む溶媒溶液にマレイミド化合物を加え、混合する方法、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)とマレイミド化合物(B)のプレポリマーに溶媒を加え、混合する方法、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)とマレイミド化合物(B)を含む溶媒溶液をプレポリマー化する方法などにて作製したナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂溶液(AB)を保存する方法である。
【0015】
本発明において用いられるナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)は、ナフトールとアラルキレン基が交互に結合したナフトールアラルキル樹脂をシアン酸エステル化したものであれば、特に限定されるものではない。なお、シアン酸エステルの溶媒溶解性と積層板の難燃性の面から、上記一般式(1)で示されるナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂またはそのプレポリマーが好ましい。一般式(1)で示されるシアン酸エステル樹脂(A)は、α-ナフトールあるいはβ-ナフトール等のナフトール類とp-キシリレングリコール、α,α’-ジメトキシ-p-キシレン、1,4-ジ(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ベンゼン等との反応により得られるナフトールアラルキル樹脂とシアン酸とを縮合させて得られるものである。その製法は特に限定されず、シアン酸エステル合成として現存するいかなる方法で製造してもよい。具体的に例示すると、下記一般式(2):
【化2】
(式中、Rはそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を示し、nは1以上の整数を示す)で示されるナフトールアラルキル樹脂とハロゲン化シアンを不活性有機溶媒中、塩基性化合物の存在下で反応させることにより得ることができる。また、同様なナフトールアラルキル樹脂と塩基性化合物による塩を、水を含有する溶液中にて形成させ、その後、ハロゲン化シアンと2相系界面反応を行い、合成する方法を採ることもできる。なお、一般式(1)中のnは10以下であることがさらに望ましい。nが10以下の場合、樹脂粘度が高くならず、基材への含浸性が良好で、積層板としての性能を低下させない。また、合成時に分子内重合が起こり難く、水洗時の分液性が向上し、収量の低下を防止できる。
【0016】
本発明において用いられるマレイミド化合物(B)は1分子中に1個以上のマレイミド基を有する化合物であれば、特に限定されるものではない。該マレイミド化合物(B)の具体例としては、N-フェニルマレイミド、N-ヒドロキシフェニルマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル}プロパン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5-ジメチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ポリフェニルメタンマレイミド、これらマレイミド化合物のプレポリマー、もしくはマレイミド化合物とアミン化合物のプレポリマーなどが挙げられ、1種もしくは2種類以上を便宜混合して使用することも可能である。より好適なものとしては、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル}プロパン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタンが挙げられる。
【0017】
上記マレイミド化合物(B)の添加量は、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)とマレイミド化合物(B)の合計量の5〜75重量%の範囲が好ましい。添加量が5重量%未満では得られる積層板の耐熱性が低下し、一方、75重量%より多いと吸湿特性が低下する場合がある。また、マレイミド化合物(B)の添加量がナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)とマレイミド化合物(B)の合計量の5重量%未満の溶液と75重量%より多い溶液では長期の保管により析出が発生する場合がある。
【0018】
本発明のナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂溶液(AB)には、所期の特性が損なわれない範囲において、上記ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)以外のシアン酸エステル樹脂(G)を併用して、混合またはさらにプレポリマー化することも可能である。ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)以外のシアン酸エステル樹脂(G)としては、公知のものが使用できる。例えば、ビスフェノールA型シアン酸エステル樹脂、ビスフェノールF型シアン酸エステル樹脂、ビスフェノールM型シアン酸エステル樹脂、ビスフェノールP型シアン酸エステル樹脂、ビスフェノールE型シアン酸エステル樹脂、フェノールノボラック型シアン酸エステル樹脂、クレゾールノボラック型シアン酸エステル樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型シアン酸エステル樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアン酸エステル樹脂、ビフェノール型シアン酸エステル樹脂等、及びこれらのプレポリマー等が挙げられ、1種もしくは2種以上適宜混合して使用することも可能である。なお、上記ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂溶液(AB)は、前記シアン酸エステル樹脂(G)をそのまま含んでもよいし、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)と前記シアン酸エステル樹脂(G)のプレポリマーを含んでもよいし、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)とマレイミド化合物(B)と前記シアン酸エステル樹脂(G)のプレポリマーを含んでもよい。
【0019】
ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)とマレイミド化合物(B)および必要に応じて配合されるシアン酸エステル樹脂(G)を混合する方法としては、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)、マレイミド化合物(B)、シアン酸エステル樹脂(G)を単独重合、もしくは共重合する目的ではなく、樹脂の混合溶液を作製する方法であれば特に限定させるものではなく、例えば、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)、マレイミド化合物(B)、溶媒を含む混合物を加熱しながら攪拌する方法、加熱機能がある超音波洗浄機を用いる方法等が挙げられる。
【0020】
ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)とマレイミド化合物(B)を混合させた溶液に使用する溶媒は、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)とマレイミド化合物(B)と非ハロゲン系エポキシ樹脂(C)との混合物が相溶するものであれば、特に限定されるものではない。具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類等が挙げられる。
【0021】
また、プレポリマー化する方法としては、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)とマレイミド化合物(B)および必要に応じて配合されるナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)以外のシアン酸エステル樹脂(G)を単独重合、もしくは共重合する方法であれば限定されるものではないが、例示すれば、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)を高温にて加熱溶解させ、加熱しながら攪拌する方法、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)を溶媒に溶解させた溶液を加熱し、還流する方法、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)とマレイミド化合物(B)を高温にて加熱溶解させ、加熱しながら攪拌する方法、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)とマレイミド化合物(B)を溶媒に溶解させた溶液を加熱し、還流する方法、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)とマレイミド化合物(B)とシアン酸エステル樹脂(G)を高温にて加熱溶解させ、加熱しながら攪拌する方法、
ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)とマレイミド化合物(B)とシアン酸エステル樹脂(G)を溶媒に溶解させた溶液を加熱し、還流する方法などが挙げられ、シアン酸エステル樹脂、マレイミド化合物溶液が作製できる方法であれば特に限定されない。また、硬化速度を便宜調節するために硬化促進剤を使用することもできる。使用する硬化促進剤としては、鉱酸、ルイス酸等の酸類、ナトリウムアルコラート、第3級アミン類等の塩基、炭酸ナトリウム等の塩類等が挙げられる。
【0022】
作製したナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂溶液(AB)の保管条件
として、温度は−20℃〜40℃の範囲
であり、また、固形分が40重量%〜90重量%の溶液にて保管する
。また、保管期間は
、1日〜2年間の範囲
である。
【0023】
本発明は、前記ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂溶液(AB)を保存した後に、該樹脂溶液(AB)に非ハロゲン系エポキシ樹脂(C)、シリコーンゴムパウダー(D)及び無機充填材(E)を配合したワニスを作製し、該ワニスを基材(F)に含浸させて形成したプリプレグを開示する。
【0024】
本発明において使用される非ハロゲン系エポキシ樹脂(C)とは、1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、意図的に分子骨格内にハロゲン原子を有しない化合物であれば特に限定されるものではない。例えば、該非ハロゲン系エポキシ樹脂(C)としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、3官能フェノール型エポキシ樹脂、4官能フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ポリオール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン、グリシジルエステル、ブタジエンなどの2重結合をエポキシ化した化合物、水酸基含有シリコーン樹脂類とエピクロルヒドリンとの反応により得られる化合物等が挙げられ、特に難燃性を向上させるためには、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。ここで、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂とは、下記一般式(3)で表せるものであり、具体的には、フェノールフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの非ハロゲン系エポキシ樹脂(C)は、1種もしくは2種以上を適宜混合して使用することが可能である。
【化3】
(式中、Gはグリシジル基を示し、Ar
1はベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基、ビフェニルテトライル基等の単環又は多環の芳香族炭化水素が置換基になった4価の芳香族基を示し、Ar
2はベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基、ビフェニルトリイル基等の単環又は多環の芳香族炭化水素が置換基になった3価の芳香族基を示し、Rx及びRyはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、又はアリール基を示し、mは1〜5までの整数を示し、nは1から50までの整数を示す。)
【0025】
本発明において使用されるナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)と非ハロゲン系エポキシ樹脂(C)は、樹脂組成物中のナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)のシアネート基数(CN)と非ハロゲン系エポキシ樹脂(C)のエポキシ基数(Ep)の比(CN/Ep)が0.3〜2.5で配合することが好ましい。CN/Epが0.3未満では、積層板の難燃性が低下し、一方、2.5を超えると、硬化性などが低下する場合がある。
【0026】
本発明において使用されるシリコーンゴムパウダー(D)とは、ビニル基含有ジメチルポリシロキサンとメチルハイドロジェンポリシロキサンの付加重合物による微粉末である。シリコーンゴムパウダーは凝集性が強く、樹脂組成物中での分散性が悪くなることがあるため、シリコーンレジンで表面を被覆して分散性を向上させた、シリコーンゴムパウダーを用いることが好ましい。この表面を被覆するシリコーンレジンはシロキサン結合が三次元網目状に架橋したポリメチルシルセスキオキサンである。シリコーンゴムパウダー(D)の平均粒子径(D50)は特に限定されないが、分散性を考慮すると平均粒子径(D50)が1〜15μmであることが好ましい。ここで、平均粒子径(D50)とは、メジアン径(メディアン径)であって、測定した粉体の粒度分布を2つに分けたときの大きい側と小さい側が等量となる径であり、一般的には湿式レーザー回折・散乱法により測定される。また、シリコーンゴムパウダー(D)の配合量は特に限定されないが、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)とマレイミド化合物(B)と非ハロゲン系エポキシ樹脂(C)の合計配合量100重量部に対して、3〜30重量部の範囲が好ましく、3〜25重量部の範囲が特に好ましい。シリコーンゴムパウダー(D)の配合量がこの範囲より少ないと、面方向の熱膨張低減効果が十分得られないことがあり、一方、この範囲より多いと、成形性や分散性が低下することがある。
【0027】
本発明において使用される無機充填材(E)としては、例えば、天然シリカ、溶融シリカ、アモルファスシリカ、中空シリカ等のシリカ類、ベーマイト、酸化モリブデン、モリブデン酸亜鉛等のモリブデン化合物、アルミナ、タルク、焼成タルク、マイカ、ガラス短繊維、球状ガラス(Eガラス、Tガラス、Dガラスなどのガラス微粉末類)などが挙げられる。これらの中でも溶融シリカが低熱膨張性に優れるため好ましい。これらの無機充填材(E)は、1種もしくは2種以上を適宜混合して使用することが可能である。また、無機充填材(E)の平均粒子径(D50)は特に限定されるものではないが、分散性を考慮すると、平均粒子径(D50)が0.2〜5μmであることが好ましい。また、無機充填材(E)の配合量は、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)とマレイミド化合物(B)と非ハロゲン系エポキシ樹脂(C)の合計配合量100重量部に対して、50〜150重量部の範囲が好ましい。また、無機充填材(E)の配合量が多すぎると成形性が低下することがあることから、無機充填材(E)の配合量は50〜140重量部の範囲が特に好ましい。
【0028】
前記無機充填材(E)に関連して、シランカップリング剤や湿潤分散剤を併用することも可能である。これらのシランカップリング剤としては、一般に無機物の表面処理に使用されているシランカップリング剤であれば、特に限定されるものではない。具体例としては、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン系化合物、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシシラン系化合物、γ-メタアクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのビニルシラン系化合物、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩などのカチオニックシラン系化合物、フェニルシラン系化合物などが挙げられ、1種もしくは2種以上を適宜組み合わせて使用することも可能である。また、湿潤分散剤とは、塗料用に使用されている分散安定剤であれば、特に限定されるものではない。例えば、ビッグケミー・ジャパン(株)製のDisperbyk−110、111、180、161、BYK−W996、W9010、W903等の湿潤分散剤が挙げられる。
【0029】
本発明に使用されるプリプレグの樹脂組成物には、所期の特性が損なわれない範囲において、他の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂及びそのオリゴマー、エラストマー類などの種々の高分子化合物、他の難燃性の化合物、添加剤などの併用も可能である。これらは一般に使用されているものであれば、特に限定されるものではない。例えば、難燃性の化合物では、メラミンやベンゾグアナミンなどの窒素含有化合物、オキサジン環含有化合物などが挙げられる。また、添加剤としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤、光増感剤、染料、顔料、増粘剤、滑剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、光沢剤、重合禁止剤等が挙げられ、所望に応じて適宜組み合わせて使用することも可能である。
【0030】
本発明に使用されるプリプレグの樹脂組成物には、必要に応じ、硬化速度を適宜調節するために硬化促進剤を併用することも可能である。これら硬化促進剤は、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)や非ハロゲン系エポキシ樹脂(C)の硬化促進剤として一般に使用されるものであれば、特に限定されるものではない。これら硬化促進剤の具体例としては、銅、亜鉛、コバルト、ニッケル等の有機金属塩類、イミダゾール類及びその誘導体、第3級アミン等が挙げられる。
【0031】
本発明において使用される基材(F)には、各種プリント配線板材料に用いられている公知のものを使用することが出来る。例えば、Eガラス、Dガラス、Sガラス、NEガラス、Tガラス等のガラス繊維、あるいはガラス以外の無機繊維、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステルなどの有機繊維が挙げられ、目的とする用途や性能により適宜選択できる。形状としては織布、不織布、ロービング、チョップドストランドマット、サーフェシングマットなどが挙げられる。厚みについては、特に制限はされないが、通常は0.01〜0.30mm程度のものを使用する。
【0032】
本発明のプリプレグの製造に使用されるワニスの作製方法は、前記ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂溶液(AB)を1日〜2年間保管を行った後、非ハロゲン系エポキシ樹脂(C)、シリコーンゴムパウダー(D)、および無機充填材(E)を添加することにより作製する方法であれば、特に限定されない。シアン酸エステル樹脂(G)は、ワニス作製時に配合してもよい。本発明では、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂溶液(AB)をワニスに用いているため、単独溶液では析出しやすいナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)がワニス中で析出することもない。そのため、このワニスから製造されるプリプレグからなる金属箔張り積層板は、吸湿耐熱性、金属箔との密着性に優れる。
【0033】
本発明のプリプレグの製造方法は、前記ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂溶液(AB)を含むワニスを用いて基材(F)に含浸して製造する方法であれば、特に限定されない。例えば、前記ワニスを基材(F)に含浸または塗布し、必要に応じて存在する溶媒を除去した後、100〜200℃の乾燥機中で、1〜60分加熱させる方法などにより半硬化させ、プリプレグを製造する方法などが挙げられる。基材(F)に対する樹脂組成物の付着量は、プリプレグ中の樹脂組成物含有量(無機充填材(E)を含む)で20〜90重量%の範囲が好ましい。
【0034】
本発明の積層板の製造方法は、例えば、下記(1)〜(5)のいずれかに記載の方法により得られたプリプレグを硬化して得られる積層板の製造方法である。
(1)ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)に溶媒とマレイミド化合物(B)を加え、混合する方法、
ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)に溶媒を加え、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)をプレポリマー化した後、更にマレイミド化合物(B)を加え、混合する方法、
ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)をプレポリマー化した後、更に溶媒とマレイミド化合物(B)を加え、混合する方法、
ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)とマレイミド化合物(B)をプレポリマー化した後、溶媒を加え、混合する方法、或いは、
ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)に溶媒とマレイミド化合物(B)を加え、混合し、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)及びマレイミド化合物(B)をプレポリマー化する方法などにて作製したナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂溶液(AB)の保存を行った後、該樹脂溶液(AB)、非ハロゲン系エポキシ樹脂(C)、シリコーンゴムパウダー(D)、および無機充填材(E)からなるワニスを作製し、該ワニスを基材(F)に含浸させて形成されるプリプレグの製造方法。
(2)前記ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂溶液(AB)を保存する期間が1日〜2年間である、上記(1)に記載のプリプレグの製造方法。
(3)前記ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)が上記一般式(1)で示されることを特徴とする、上記(1)に記載のプリプレグの製造方法。
(4)前記ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)に溶媒とマレイミド化合物(B)と前記ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)以外のシアン酸エステル樹脂(G)を加え、混合する方法、
前記ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)をプレポリマー化した後、更に溶媒とマレイミド化合物(B)と前記ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)以外のシアン酸エステル樹脂(G)を加え、混合する方法、
前記ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)に溶媒を加え、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)をプレポリマー化した後、マレイミド化合物(B)及び前記ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)以外のシアン酸エステル樹脂(G)を加え、混合する方法、
前記ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)にマレイミド化合物(B)を加え、混合し、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)及びマレイミド化合物(B)をプレポリマー化した後、溶媒と前記ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)以外のシアン酸エステル樹脂(G)を更に加え、混合する方法、
前記ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)に溶媒とマレイミド化合物(B)を加え、混合し、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)及びマレイミド化合物(B)をプレポリマー化した後、前記ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)以外のシアン酸エステル樹脂(G)を更に加え、混合する方法、
前記ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)に前記ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)以外のシアン酸エステル樹脂(G)を加え、混合し、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)及び前記ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)以外のシアン酸エステル樹脂(G)をプレポリマー化した後、溶媒とマレイミド化合物(B)を更に加え、混合する方法、
前記ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)に溶媒と前記ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)以外のシアン酸エステル樹脂(G)を加え、混合し、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)及び前記ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)以外のシアン酸エステル樹脂(G)をプレポリマー化した後、マレイミド化合物(B)を更に加え、混合する方法、
前記ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)にマレイミド化合物(B)と前記ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)以外のシアン酸エステル樹脂(G)を加え、混合し、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)とマレイミド化合物(B)と前記ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)以外のシアン酸エステル樹脂(G)をプレポリマー化した後、溶媒を加え、混合する方法、或いは、
前記ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)に溶媒とマレイミド化合物(B)と前記ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)以外のシアン酸エステル樹脂(G)を加え、混合し、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)とマレイミド化合物(B)と前記ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)以外のシアン酸エステル樹脂(G)をプレポリマー化する方法などにて、前記ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂溶液(AB)を作製する、上記(1)に記載のプリプレグの製造方法。
(5)前記無機充填材(E)が溶融シリカであることを特徴とする、上記(1)に記載のプリプレグの製造方法。
【0035】
具体的には、前述のプリプレグを1枚あるいは複数枚を重ね、所望によりその片面もしくは両面に、銅やアルミニウムなどの金属箔を配置した構成で、積層成形することにより製造する。使用する金属箔は、プリント配線板材料に用いられるものであれば、特に限定されず、例えば、銅箔等が挙げられる。積層成形条件としては、通常のプリント配線板用積層板および多層板の手法が適用できる。例えば、多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機などを使用し、温度は100〜300℃、圧力は2〜100kgf/cm
2、加熱時間は0.05〜5時間の範囲が一般的である。また、必要に応じて150〜300℃の温度で後硬化を行っても良い。
【実施例】
【0036】
以下に合成例、実施例、比較例を示し、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0037】
(合成例1)α−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂の合成−1
下記式(4):
【化4】
で表されるα−ナフトールアラルキル樹脂(SN485、OH基当量:219g/eq.、軟化点:86℃、新日鐵化学(株)製)103g(OH基0.47モル)をクロロホルム 500mlに溶解後、トリエチルアミン 0.7モルを添加混合し、これを0.93モルの塩化シアンのクロロホルム溶液 300gに、−10℃で1.5時間かけて滴下し、30分撹拌した後、更に0.1モルのトリエチルアミンとクロロホルム 30gの混合溶液を滴下し、30分撹拌して反応を完結させた。生成するトリエチルアミンの塩酸塩を濾別した後、得られた濾液を0.1N塩酸 500mlで洗浄した後、水 500mlでの洗浄を4回繰り返した。ついで、クロロホルム/水混合溶液のクロロホルム層を分液処理により抽出、クロロホルム溶液に硫酸ナトリウムを添加し脱水処理を行った。硫酸ナトリウムを濾別した後、75℃でエバポレートし、更に90℃で減圧脱気することにより、褐色固形の下記式(5):
【化5】
で表されるα−ナフトールアラルキル型のシアン酸エステル樹脂を得た。赤外吸収スペクトルにおいて、2264cm
-1付近にシアン酸エステル基の吸収を確認した。また、
13C-NMR及び
1H-NMRにより、構造を同定したところ、OH基からOCN基への転化率は99%以上であった。さらに、GPCでの示差屈折率検出により、nが1〜4の化合物の割合が93重量%であった。
【0038】
(合成例2)α−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂の合成−2
α−ナフトールアラルキル樹脂(SN485、OH基当量:219g/eq.、軟化点:86℃、新日鐵化学(株)製)の代わりにα−ナフトールアラルキル樹脂(SN4105、OH基当量:226g/eq.、軟化点:105℃、新日鐵化学(株)製)102g(OH基0.45モル)を使用し、塩化シアンの使用量を0.90モルとした以外は合成例1と同様の手法にて上記式(5)で表わされるα−ナフトールアラルキル型のシアン酸エステル樹脂を合成した。赤外吸収スペクトルにおいて、2264cm
-1付近にシアン酸エステル基の吸収を確認。また、
13C-NMR及び
1H-NMRにより、構造を同定したところ、OH基からOCN基への転化率は99%以上であった。さらに、GPCでの示差屈折率検出により、nが1〜4の化合物の割合が75重量%であった。
【0039】
(合成例3)ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂とマレイミド化合物のプレポリマー化
合成例1にて作製したα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル(シアネート当量:237g/eq.)60重量部、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン(BMI−70、ケイ・アイ化成製)40重量部を160℃で加熱溶融させ、攪拌しながら6時間反応させ、冷却後メチルエチルケトンを80重量部添加し、1時間攪拌することにより、ナフトールアラルキル型シアン酸エステルとマレイミド化合物の混合溶液(プレポリマー化溶液)を得た。
【0040】
(比較合成例1)α−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂のプレポリマー化
合成例1にて作製したα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂50重量部にメチルエチルケトンを20重量部添加した溶液を30時間加熱し、還流処理を行うことによりα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂のプレポリマー溶液を得た。
【0041】
(実施例1)
合成例1にて作製したα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル(シアネート当量:237g/eq.)50重量部とビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン(BMI−70、ケイ・アイ化成製)20重量部にメチルエチルケトンを50重量部添加し、60℃にて1時間攪拌し、均一な混合溶液を作製した。上記の混合溶液を室温にて1ヶ月放置し、更にフェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC−3000−FH、エポキシ当量:320g/eq.、日本化薬(株)製)30重量部、湿潤分散剤(disperbyk−161、ビックケミージャパン(株)製)2重量部、球状溶融シリカ(SC2050MOB、アドマテックス(株)製)90重量部、シリコーンレジンで表面を被覆して分散性を向上させた、シリコーンゴムパウダー(KMP−600、信越化学工業(株)製)20重量部、オクチル酸亜鉛0.02重量部を混合して、ワニスを得た。このワニスをメチルエチルケトンで希釈し、厚さ0.1mmのEガラス織布に含浸塗工し、160℃で4分間乾燥して、樹脂含有量50重量%のプリプレグを得た。
【0042】
(実施例2)
実施例1において、均一な混合溶液の保存期間を1ヶ月から6ヶ月と変更した以外は、実施例1と同様にしてプリプレグを得た。
【0043】
(実施例3)
実施例1において、均一な混合溶液の保存期間を1ヶ月から12ヶ月と変更した以外は、実施例1と同様にしてプリプレグを得た。
【0044】
(実施例4)
実施例1において、合成例1にて作製したα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル(シアネート当量:237g/eq.)50重量部を合成例2で得たα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(シアネート当量:244g/eq.)50重量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてプリプレグを得た。
【0045】
(実施例5)
合成例1にて作製したα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル(シアネート当量:237g/eq.)52重量部とビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン(BMI−70、ケイ・アイ化成製)20重量部にメチルエチルケトンを52重量部添加し、60℃にて1時間攪拌し、均一な混合溶液を作製した。上記の混合溶液を室温にて1ヶ月放置し、更にフェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC−3000−H、エポキシ当量:290g/eq.、日本化薬(株)製)28重量部、湿潤分散剤(disperbyk−161、ビックケミージャパン(株)製)2重量部、球状溶融シリカ(SC2050MOB、アドマテックス(株)製)90重量部、シリコーンレジンで表面を被覆して分散性を向上させた、シリコーンゴムパウダー(KMP−600、信越化学工業(株)製)20重量部、オクチル酸亜鉛0.02重量部を混合して、ワニスを得た。このワニスをメチルエチルケトンで希釈し、厚さ0.1mmのEガラス織布に含浸塗工し、160℃で4分間乾燥して、樹脂含有量50重量%のプリプレグを得た。
【0046】
(実施例6)
合成例1にて作製したα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル(シアネート当量:237g/eq.)55重量部とビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン(BMI−70、ケイ・アイ化成製)20重量部にメチルエチルケトンを55重量部添加し、60℃にて1時間攪拌し、均一な混合溶液を作製した。上記の混合溶液を室温にて1ヶ月放置し、更にフェノールフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(ザイロック型エポキシ樹脂、エポキシ当量:240g/eq.、日本化薬(株)製)25重量部、湿潤分散剤(disperbyk−161、ビックケミージャパン(株)製)2重量部、球状溶融シリカ(SC2050MOB、アドマテックス(株)製)90重量部、シリコーンレジンで表面を被覆して分散性を向上させた、シリコーンゴムパウダー(KMP−600、信越化学工業(株)製)20重量部、オクチル酸亜鉛0.02重量部を混合して、ワニスを得た。このワニスをメチルエチルケトンで希釈し、厚さ0.1mmのEガラス織布に含浸塗工し、160℃で4分間乾燥して、樹脂含有量50重量%のプリプレグを得た。
【0047】
(実施例7)
合成例1にて作製したα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル(シアネート当量:237g/eq.)40重量部に合成例3にて作製したビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン(BMI−70、ケイ・アイ化成製)とα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステルとのプレポリマー20重量部にメチルエチルケトンを40重量部添加し、60℃にて1時間攪拌し、均一な混合溶液を作製した。上記の混合溶液を室温にて1ヶ月放置し、フェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC−3000−FH、エポキシ当量:320g/eq.、日本化薬(株)製)30重量部、湿潤分散剤(disperbyk−161、ビックケミージャパン(株)製)2重量部、球状溶融シリカ(SC2050MOB、アドマテックス(株)製)90重量部、シリコーンレジンで表面を被覆して分散性を向上させた、シリコーンゴムパウダー(KMP−600、信越化学工業(株)製)20重量部、オクチル酸亜鉛0.02重量部を混合して、ワニスを得た。このワニスをメチルエチルケトンで希釈し、厚さ0.1mmのEガラス織布に含浸塗工し、160℃で4分間乾燥して、樹脂含有量50重量%のプリプレグを得た。
【0048】
(比較例1)
合成例1にて作製したα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル(シアネート当量:237g/eq.)50重量部にメチルエチルケトン50重量部を添加し、60℃にて1時間攪拌し、均一な混合溶液を作製した。別途、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン(BMI−70、ケイ・アイ化成製)20重量部にメチルエチルケトンを20重量部添加し、60℃にて1時間攪拌し、均一な混合溶液を作製した。これらシアネート樹脂溶液、マレイミド化合物溶液を別々に室温にて1ヶ月放置した。次いで、シアネート樹脂溶液、マレイミド化合物溶液、フェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC−3000−FH、エポキシ当量:320g/eq.、日本化薬(株)製)30重量部、湿潤分散剤(disperbyk−161、ビックケミージャパン(株)製)2重量部、球状溶融シリカ(SC2050MOB、アドマテックス(株)製)90重量部、シリコーンレジンで表面を被覆して分散性を向上させた、シリコーンゴムパウダー(KMP−600、信越化学工業(株)製)20重量部、およびオクチル酸亜鉛0.02重量部を混合して、ワニスを得た。このワニスをメチルエチルケトンで希釈し、厚さ0.1mmのEガラス織布に含浸塗工し、160℃で4分間乾燥して、樹脂含有量50重量%のプリプレグを得た。
【0049】
(比較例2)
合成例2にて作製したα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル(シアネート当量:237g/eq.)50重量部にメチルエチルケトン50重量部を添加し、60℃にて1時間攪拌し、均一な混合溶液を作製した。別途、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン(BMI−70、ケイ・アイ化成製)20重量部にメチルエチルケトンを20重量部添加し、60℃にて1時間攪拌し、均一な混合溶液を作製した。これらシアネート樹脂溶液、マレイミド化合物溶液を別々に室温にて1ヶ月放置した。次いで、シアネート樹脂溶液、マレイミド化合物溶液、フェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC−3000−FH、エポキシ当量:320g/eq.、日本化薬(株)製)30重量部、湿潤分散剤(disperbyk−161、ビックケミージャパン(株)製)2重量部、球状溶融シリカ(SC2050MOB、アドマテックス(株)製)90重量部、シリコーンレジンで表面を被覆して分散性を向上させた、シリコーンゴムパウダー(KMP−600、信越化学工業(株)製)20重量部、およびオクチル酸亜鉛0.02重量部を混合して、ワニスを得た。このワニスをメチルエチルケトンで希釈し、厚さ0.1mmのEガラス織布に含浸塗工し、160℃で4分間乾燥して、樹脂含有量50重量%のプリプレグを得た。
【0050】
(比較例3)
ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン(BMI−70、ケイ・アイ化成製)20重量部にメチルエチルケトンを20重量部添加し、60℃にて1時間攪拌し、均一な混合溶液を作製した。比較合成例1にて作製したα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステルのプレポリマー溶液とマレイミド化合物溶液を別々に室温にて1ヶ月放置した。次いで、シアネート樹脂溶液、マレイミド化合物溶液、フェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC−3000−FH、エポキシ当量:320g/eq.、日本化薬(株)製)30重量部、湿潤分散剤(disperbyk−161、ビックケミージャパン(株)製)2重量部、球状溶融シリカ(SC2050MOB、アドマテックス(株)製)90重量部、シリコーンレジンで表面を被覆して分散性を向上させた、シリコーンゴムパウダー(KMP−600、信越化学工業(株)製)20重量部、およびオクチル酸亜鉛0.02重量部を混合して、ワニスを得た。このワニスをメチルエチルケトンで希釈し、厚さ0.1mmのEガラス織布に含浸塗工し、160℃で4分間乾燥して、樹脂含有量50重量%のプリプレグを得た。
【0051】
(比較例4)
合成例1にて作製したα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル(シアネート当量:237g/eq.)40重量部と2,2-ビス(4-シアネートフェニル)プロパン8重量部にメチルエチルケトンを40重量部添加し、60℃にて1時間攪拌し、均一な混合溶液を作製した。別途、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン(BMI−70、ケイ・アイ化成製)12重量部にメチルエチルケトンを12重量部添加し、60℃にて1時間攪拌し、均一な混合溶液を作製した。上記の混合溶液を室温にて1ヶ月放置し、フェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC−3000−FH、エポキシ当量:320g/eq.、日本化薬(株)製)30重量部、湿潤分散剤(disperbyk−161、ビックケミージャパン(株)製)2重量部、球状溶融シリカ(SC2050MOB、アドマテックス(株)製)90重量部、シリコーンレジンで表面を被覆して分散性を向上させた、シリコーンゴムパウダー(KMP−600、信越化学工業(株)製)20重量部、オクチル酸亜鉛0.02重量部を混合して、ワニスを得た。このワニスをメチルエチルケトンで希釈し、厚さ0.1mmのEガラス織布に含浸塗工し、160℃で4分間乾燥して、樹脂含有量50重量%のプリプレグを得た。
【0052】
(比較例5)
実施例1において、シリコーンレジンで表面を被覆して分散性を向上させた、シリコーンゴムパウダー(KMP−600、信越化学工業(株)製)20重量部を除いた以外は、実施例1と同様にしてプリプレグを得た。
【0053】
(比較例6)
合成例1にて作製したα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル(シアネート当量:237g/eq.)50重量部の代わりに2,2-ビス(4-シアネートフェニル)プロパンのプレポリマー(BT2070、シアネート当量:139g/eq.、三菱ガス化学(株)製)50重量部を使用した以外は、実施例1と同様にしてプリプレグを得た。
【0054】
(比較例7)
実施例1において、合成例1にて作製したα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル(シアネート当量:237g/eq.)50重量部とビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン(BMI−70、ケイ・アイ化成製)20重量部にメチルエチルケトンを50重量部添加し、60℃にて1時間攪拌して作製した均一な混合溶液の代わりに、合成例1にて作製したα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル(シアネート当量:237g/eq.)70重量部にメチルエチルケトンを50重量部添加し、60℃にて1時間攪拌して作製した混合溶液を使用した以外は、実施例1と同様にしてプリプレグを得た。
【0055】
<金属箔張り積層板の作製>
実施例1〜7および比較例1〜7で得られたプリプレグを、それぞれ4枚重ねて12μm厚の電解銅箔(3EC−III、三井金属鉱業(株)製)を上下に配置し、圧力30kgf/cm
2、温度220℃で120分間の積層成形を行い、絶縁層厚さ0.38〜0.45mmの銅張り積層板を得た。
【0056】
α−ナフトールアラルキル型シアン酸エステルとビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン溶液を用いて保存安定性を評価した結果を表1に示す。
【0057】
保存安定性試験は、α−ナフトールアラルキル型シアン酸エステルとビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン混合溶液を室温にて放置したサンプルの析出を目視にて評価し、析出がみられないものを○、析出が発生したものを×と表記した。
【0058】
得られた金属箔張り積層板を用いて、難燃性、熱膨張率、銅箔ピール強度および吸湿耐熱性を評価した結果を表2に示す。
【0059】
難燃性の評価と熱膨張率の測定は、金属箔張り積層板をエッチングにより銅箔を除去した後、下記方法で行った。
【0060】
燃焼試験:UL94垂直燃焼試験法に準拠して評価した。
【0061】
熱膨張率:熱機械分析装置(TAインスツルメント製)で40℃から340℃まで毎分10℃で昇温し、60℃から120℃での面方向の線膨張係数を測定した。測定方向はガラスクロスの縦糸方向(Y)と横方向(X)の両方向を測定した。
【0062】
銅箔ピール強度の測定は、JIS C6481に準拠して測定し、吸湿耐熱性は50mm×50mmのサンプルの片面における半分以外の全銅箔をエッチング除去した試験片をプレシャークッカー試験機(PC−3型)で121℃、2気圧で3時間処理後、260℃の半田中に30秒浸漬した後の外観変化を目視で観察し、評価結果を(フクレ発生数/試験数)にて表記した。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(A)とマレイミド化合物(B)を混合する方法もしくはプレポリマー化する方法にて作製した混合樹脂溶液(AB)を使用した実施例1〜7は、シアン酸エステル樹脂(A)とマレイミド化合物(B)の混合樹脂溶液(AB)を使用せずにワニスを作製した比較例1〜4、6と比較し、吸湿耐熱性に優れ、銅箔ピール強度が高い結果となっている。また、シリコーンレジンで表面を被覆して分散性を向上させた、シリコーンゴムパウダーを使用しなかった比較例5は、実施例1と比較すると熱膨張率が高かった。さらに、α−ナフトールアラルキル型シアン酸エステルを使用しなかった比較例6は、実施例1と比較すると難燃性に劣っていた。