【実施例】
【0036】
本発明をさらに詳細に説明するために以下に実施例を挙げるが、本発明は実施例になんら限定されるものではない。なお、実施例に記載された測定値は以下の方法によって測定したものである。また、特記しない限り、部は重量部を表すものとする。
【0037】
以下、実施例中の本文及び表に示した化合物の略号はそれぞれ以下の化合物を示す。
T:テレフタル酸
I:イソフタル酸
O:オルソフタル酸
SIPA:5−スルホイソフタル酸ナトリウム
HOPA:水添オルソフタル酸
AA:アジピン酸
SA:セバシン酸
TMA:無水トリメリット酸
NPG:ネオペンチルグリコール
EG:エチレングリコール
PD:1,5−ペンタンジオール
HD:1,6−ヘキサンジオール
2MD:2−メチル−1,3−プロパンジオール
BEPD:2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール
DEG:ジエチレングリコール
【0038】
樹脂組成:試料を重クロロホルムに溶解し、400MHzの核磁気共鳴(NMR)スペクトル装置(Varian製)を用いて
1H−NMR法により定量した。測定条件は、室温、d1=26sである。
【0039】
数平均分子量:試料を、樹脂濃度が0.5重量%程度となるようにテトラヒドロフランに溶解し、孔径0.5μmのポリ四フッ化エチレン製メンブランフィルターで濾過したものを測定用試料として、テトラヒドロフランを移動相とし示差屈折計を検出器とするゲル浸透クロマトグラフィーにより、数平均分子量を測定した。流速は1mL/分、カラム温度は30℃とした。カラムには昭和電工製KF−802、804L、806Lを用いた。分子量標準には単分散ポリスチレンを使用した。
【0040】
比重:水温30℃の塩化カルシウム水溶液中に試料約0.1gを投入し、塩化カルシウム濃度を調整し樹脂が浮き沈みしなくなった際の塩化カルシウム水溶液の比重を比重計で測定し、その値をもって樹脂比重とした。
【0041】
酸価:樹脂0.2gを20mlのテトラヒドロフランに溶解後、0.1N−NaOHエタノール溶液でフェノールフタレインを指示薬として測定した。測定値を樹脂固形分10
6g中の当量で示した。
【0042】
ガラス転移温度:試料5mgをアルミニウム製サンプルパンに入れて密封し、セイコーインスツルメンツ(株)製示差走査熱量分析計DSC−220を用いて、200℃まで、昇温速度20℃/分にて測定し、ガラス転移温度以下のベースラインの延長線と遷移部における最大傾斜を示す接線との交点の温度で求めた。
【0043】
導電性:横河M&C社製直流精密測定器ダブルブリッジ2769−10を用いて測定した。導電性は体積抵抗率(単位:Ω・cm)で表した。
【0044】
分散安定性:導電性ペーストを30℃で24時間静置した後の沈殿の有無を観察した。
○---沈殿なし。
△---少しの沈殿が認められ、沈殿量は全金属微粒子の20重量%以下である。
×---多量の沈殿がある。沈殿量は全金属微粒子の20重量%を越える。
【0045】
基材密着性:基材に対する金属薄膜層の密着性を常温におけるテープ剥離テストにより評価した。剥離テストは住友スリーエム製スコッチテープを貼り、これを剥がした際の金属薄膜層の剥離状態を観察した。
○---剥離なし
△---一部、剥離する
×---全面剥離する
【0046】
用いた金属微粒子
銀微粒子(1):
硝酸銀をアスコルビン酸とドデシルアミンによりヘキサン中で還元することにより得た。洗浄、乾燥後、透過型電子顕微鏡により観察したところ、平均粒径60nmの球状の粒子であった。
銀微粒子(2):
硝酸銀を水素化ホウ素ナトリウムとドデシルアミンによりヘキサン中で還元することにより得た。洗浄、乾燥後、透過型電子顕微鏡により観察したところ、平均粒径830nmの球状の粒子であった。
銀微粒子(3):
硝酸銀をアスコルビン酸とオクチルアミンによりヘキサン中で還元することにより得た。洗浄、乾燥後、透過型電子顕微鏡により観察したところ、平均粒径143nmの球状の粒子であった。
【0047】
合成例1 カルボキシル基含有分岐ポリエステル(b1)の合成
温度計、撹拌機、リービッヒ冷却管を具備した反応容器にイソフタル酸ジメチル131.9部、ネオペンチルグリコール48.0部、1,6−ヘキサンジオール122.0部、及びテトラブトキシチタネート0.1部を仕込み、150〜230℃で180分間加熱し、エステル交換を行った後、無水フタル酸43.7部、無水トリメリット酸3.8部、を追加しエステル化反応を200〜250℃で60分行った。次いで260℃まで昇温しつつ、系を徐々に減圧し、10分後に0.3mmHg以下とした。この条件で60分反応後、反応系を窒素雰囲気下に常圧に戻し系の温度を220℃に設定した。無水トリメリット酸1.9部を添加し、常圧窒素雰囲気下、220℃で45分攪拌し、淡黄色透明なポリエステル(b1)を得た。得られた樹脂の分析結果を表1、2に示す。
【0048】
合成例2 カルボキシル基含有分岐ポリエステル(b2)の合成
温度計、撹拌機、リービッヒ冷却管を具備した反応容器にイソフタル酸ジメチル131.9部、ネオペンチルグリコール48.0部、1,6−ヘキサンジオール122.0部、及びテトラブトキシチタネート0.1部を仕込み、150〜230℃で180分間加熱し、エステル交換を行った後、無水フタル酸42.9部、無水トリメリット酸3.8部、を追加しエステル化反応を200〜250℃で60分行った。次いで260℃まで昇温しつつ、系を徐々に減圧し、10分後に0.3mmHg以下とした。この条件で60分反応後、反応系を窒素雰囲気下に常圧に戻し系の温度を220℃に設定した。無水トリメリット酸3.8部を添加し、常圧窒素雰囲気下、220℃で45分攪拌し、淡黄色透明なポリエステル(b2)を得た。得られた樹脂の分析結果を表1、2に示す。
【0049】
合成例3 カルボキシル基含有分岐ポリエステル(b3)の合成
温度計、撹拌機、リービッヒ冷却管を具備した反応容器にイソフタル酸ジメチル131.9部、ネオペンチルグリコール48.0部、1,6−ヘキサンジオール122.0部、及びテトラブトキシチタネート0.1部を仕込み、150〜230℃で180分間加熱し、エステル交換を行った後、無水フタル酸44.1部、無水トリメリット酸3.8部、を追加しエステル化反応を200〜250℃で60分行った。次いで260℃まで昇温しつつ、系を徐々に減圧し、10分後に0.3mmHg以下とした。この条件で60分反応後、反応系を窒素雰囲気下に常圧に戻し系の温度を220℃に設定した。無水トリメリット酸1部を添加し、常圧窒素雰囲気下、220℃で45分攪拌し、淡黄色透明なポリエステル(b3)を得た。得られた樹脂の分析結果を表1、2に示す。
【0050】
合成例4 カルボキシル基含有分岐ポリエステル(b4)の合成
温度計、撹拌機、リービッヒ冷却管を具備した反応容器にイソフタル酸ジメチル97.0部、2−メチル−1,3−プロパンジオール153.0部、2−ブチル−2−エチル1,3−プロパンジオール48.0部、及びテトラブトキシチタネート0.1部を仕込み、150〜230℃で180分間加熱し、エステル交換を行った後、水添無水フタル酸45.4部、アジピン酸26.3部、無水トリメリット酸3.8部、を追加しエステル化反応を200〜250℃で60分行った。次いで260℃まで昇温しつつ、系を徐々に減圧し、10分後に0.3mmHg以下とした。この条件で60分反応後、反応系を窒素雰囲気下に常圧に戻し系の温度を220℃に設定した。無水トリメリット酸1.9部を添加し、常圧窒素雰囲気下、220℃で45分攪拌し、淡黄色透明なポリエステル(b4)を得た。得られた樹脂の分析結果を表1、2に示す。
【0051】
合成例5 カルボキシル基含有分岐ポリエステル(b5)の合成
温度計、撹拌機、リービッヒ冷却管を具備した反応容器にイソフタル酸ジメチル131.9部、2−メチル−1,3−プロパンジオール99.0部、1,5−ペンタンジオール94.0部、及びテトラブトキシチタネート0.1部を仕込み、150〜230℃で180分間加熱し、エステル交換を行った後、水添無水フタル酸45.4部、無水トリメリット酸3.8部、を追加しエステル化反応を200〜250℃で60分行った。次いで260℃まで昇温しつつ、系を徐々に減圧し、10分後に0.3mmHg以下とした。この条件で60分反応後、反応系を窒素雰囲気下に常圧に戻し系の温度を220℃に設定した。無水トリメリット酸1.9部を添加し、常圧窒素雰囲気下、220℃で45分攪拌し、淡黄色透明なポリエステル(b5)を得た。得られた樹脂の分析結果を表1、2に示す。
【0052】
比較合成例6 カルボキシル基を付加しない分岐ポリエステル(b6)の合成
温度計、撹拌機、リービッヒ冷却管を具備した反応容器にイソフタル酸ジメチル131.9部、ネオペンチルグリコール48.0部、1,6−ヘキサンジオール122.0部、及びテトラブトキシチタネート0.1部を仕込み、150〜230℃で180分間加熱し、エステル交換を行った後、無水フタル酸44.4部、無水トリメリット酸3.8部、を追加しエステル化反応を200〜250℃で60分行った。次いで260℃まで昇温しつつ、系を徐々に減圧し、10分後に0.3mmHg以下とした。この条件で60分反応後、無水トリメリット酸を付加させる事無く反応を終了し、淡黄色透明なポリエステル(b6)を得た。得られた樹脂の分析結果を表1、2に示す。
【0053】
比較合成例7 カルボキシル基含有分岐ポリエステル(b7)の合成
温度計、撹拌機、リービッヒ冷却管を具備した反応容器にテレフタル酸ジメチル95.1部、イソフタル酸ジメチル94.1部、無水トリメリット酸3.8部、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール73.0部、エチレングリコール81.0部、及びテトラブトキシチタネート0.1部を仕込み、150〜230℃で180分間加熱し、エステル交換を行った後、30分で反応系を250℃に昇温し、次いで260℃まで昇温しつつ、系を徐々に減圧し、10分後に0.3mmHg以下とした。この条件で60分反応後、反応系を窒素雰囲気下に常圧に戻し系の温度を220℃に設定した。無水トリメリット酸1.9部を添加し、常圧窒素雰囲気下、220℃で45分攪拌し、淡黄色透明なポリエステル(b7)を得た。得られた樹脂の分析結果を表1、2に示す。
【0054】
比較合成例8 カルボキシル基含有ポリエステル(b8)の合成
温度計、撹拌機、リービッヒ冷却管を具備した反応容器にイソフタル酸ジメチル135.8部、ネオペンチルグリコール48.0部、1,6−ヘキサンジオール122.0部、及びテトラブトキシチタネート0.1部を仕込み、150〜230℃で180分間加熱し、エステル交換を行った後、無水フタル酸43.7部を追加しエステル化反応を200〜250℃で60分行った。次いで260℃まで昇温しつつ、系を徐々に減圧し、10分後に0.3mmHg以下とした。この条件で60分反応後、反応系を窒素雰囲気下に常圧に戻し系の温度を220℃に設定した。無水トリメリット酸1.9部を添加し、常圧窒素雰囲気下、220℃で45分攪拌し、淡黄色透明なポリエステル(b8)を得た。得られた樹脂の分析結果を表1、2に示す。
【0055】
比較合成例9 カルボキシル基含有分岐ポリエステル(b9)の合成
温度計、撹拌機、リービッヒ冷却管を具備した反応容器にテレフタル酸ジメチル92.2部、イソフタル酸ジメチル97.0部、無水トリメリット酸3.8部、エチレングリコール99.2部、ジエチレングリコール42.4部、及びテトラブトキシチタネート0.1部を仕込み、150〜230℃で180分間加熱し、エステル交換を行った後、30分で反応系を250℃に昇温し、次いで260℃まで昇温しつつ、系を徐々に減圧し、10分後に0.3mmHg以下とした。この条件で60分反応後、反応系を窒素雰囲気下に常圧に戻し系の温度を220℃に設定した。無水トリメリット酸1.9部を添加し、常圧窒素雰囲気下、220℃で45分攪拌し、淡黄色透明なポリエステル(b9)を得た。得られた樹脂の分析結果を表1、2に示す。
【0056】
比較合成例10 カルボキシル基含有分岐ポリエステル(b10)の合成
温度計、撹拌機、リービッヒ冷却管を具備した反応容器にイソフタル酸ジメチル131.9部、ネオペンチルグリコール48.0部、1,6−ヘキサンジオール122.0部、及びテトラブトキシチタネート0.1部を仕込み、150〜230℃で180分間加熱し、エステル交換を行った後、無水フタル酸42.2部、無水トリメリット酸3.8部、を追加しエステル化反応を200〜250℃で60分行った。次いで260℃まで昇温しつつ、系を徐々に減圧し、10分後に0.3mmHg以下とした。この条件で60分反応後、無水トリメリット酸を添加する事なく反応を終了し、淡黄色透明なポリエステル(b10)を得た。得られた樹脂の分析結果を表1、2に示す。
【0057】
比較合成例11 スルホン酸金属塩基含有ポリエステル(b11)の合成
温度計、撹拌機、リービッヒ冷却管を具備した反応容器にイソフタル酸ジメチル126.1部、5−スルホイソフタル酸ナトリウム14.8部、ネオペンチルグリコール48.0部、1,6−ヘキサンジオール122.0部、及びテトラブトキシチタネート0.1部を仕込み、150〜230℃で180分間加熱し、エステル交換を行った後、無水フタル酸44.4部、を追加しエステル化反応を200〜250℃で60分行った。次いで260℃まで昇温しつつ、系を徐々に減圧し、10分後に0.3mmHg以下とした。この条件で60分反応後、無水トリメリット酸3.8部を添加し、常圧窒素雰囲気下、220℃で45分攪拌し、淡黄色透明なポリエステル(b11)を得た。得られた樹脂の分析結果を表1、表2に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
実施例1
下記の配合割合の組成物を3本ロールで練り合わせた。
ポリエステル(b1)の溶液 8.3部
(エチルカルビトールアセテート/ブチルセロソルブアセテート=1/1(重量比)の24重量%溶液)
銀微粒子(1)(平均粒径60nm) 23.0部
得られた練り合わせ物にエチルカルビトールアセテートとブチルセロソルブアセテート各々9.3部を加え、プラネタリーミキサーで10分間攪拌混合し、固形分濃度50重量%の導電性ペーストを得た。
得られた導電性ペーストを厚さ25μmのポリイミドフィルム上に、乾燥後の厚みが2μmになるように塗布し、120℃で10分間乾燥して金属薄膜層を得た。次いで、100℃、線圧50kg/cmでクロムめっきロールとゴムロールからなるカレンダーロールに通した。さらに、180℃で1時間熱処理し、銀微粒子の焼成を進めた。導電性ペーストの分散安定性と金属薄膜層の基材密着性および導電性の測定結果を表3に示す。カレンダー処理をせずに焼成処理を施した場合の導電性も表3に示した。
【0061】
実施例2〜5及び比較例6〜11
実施例1と同様にして表3、表4に記載した配合比率の導電性ペーストを得た。実施例1と同様に評価した。結果を表3、表4に示した。
比較例12、13
金属微粒子として銀粒子(1)の代わりに銀粒子(2)を用い、実施例1同様の方法で金属薄膜層を形成し、実施例1同様に評価した。結果を表4に示した。
【0062】
実施例14、15
金属微粒子として銀粒子(1)の代わりに銀粒子(3)を用い、実施例1同様の方法で金属薄膜層を形成し、実施例1同様に評価した。結果を表4に示した。
【0063】
実施例16、17及び比較例18〜20
金属微粒子として銀粒子(1)又は(3)を用い、銀微粒子と分岐型ポリエステル(b1)の配合比率を表4の様に変化させ、実施例1同様の方法で導電性薄膜を形成し、実施例1同様に評価した。結果を表4に示した。但し、比較例19では3本ロールによる練り合わせ物がペースト状にならず、基材上に薄く塗布する事が出来なかった。
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
表3、表4に示されたとおり、本発明の金属微粒子分散体は金属粒子の分散安定性に優れ、本導電性ペーストから形成された金属薄膜層は基材との密着性に優れている。加えて優れた導電性能を発揮する事が分かる。比較例6はバインダーとして配合される分岐型ポリエステル樹脂が酸価を有さない場合、比較例7は分岐型ポリエステル樹脂の酸成分が本請求の範囲から外れ、かつガラス転移温度も請求範囲外となる場合、比較例8はポリエステル樹脂が分岐構造を有さない場合である。また、比較例9は酸成分、グリコール成分共に本請求範囲から外れ、ガラス転移温度も請求範囲外となる場合である。更に比較例10は本発明の分岐型ポリエステル樹脂の酸価が本請求の範囲から外れる例、比較例11は磁気テープ用バインダーとして磁性粒子の分散効果に優れるスルホン酸金属塩基を含有するポリエステル樹脂を用いた場合の例であるが、分岐構造が無く、酸価も本請求範囲から外れるものである。比較例12,13は金属粒子の粒子径が本発明の請求範囲を満たさない場合である。また比較例18〜20は銀微粒子と分岐型ポリエステル樹脂の配合比率が本発明の請求範囲から外れる例である。