【文献】
MORETTO, N., et al.,Conformation-sensitive Antibodies against Alzheimer Amyloid-β by Immunization with a Thioredoxin-co,J. Biol. Chem.,2007年 4月13日,Vol.282, No.15,p.11436-11445
【文献】
LAMBERT, M.P., et al.,Monoclonal antibodies that target pathological assemblies of Aβ.,J. Neurochem.,2007年,Vol.100, No.1,p.23-35
【文献】
東海林幹夫 他,アルツハイマー病の抗体治療,アミロイドーシスに関する調査研究 平成19年度 総括・分担研究報告書,2008年,p.76-78
【文献】
松原悦朗,アルツハイマー病の抗体治療,臨床検査,2008年 3月15日,Vol.52, No.3,p.297-301
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の抗Aβオリゴマーヒト化抗体(以下、本発明の抗体、本発明のヒト化抗体ともいう)は、Aβオリゴマーに結合し、Aβモノマーに結合しないことを特徴とするヒト化抗体である。本発明の抗体は、単離された抗体、精製された抗体または抗体組成物であることが好ましい。
【0027】
前記単離された抗体、精製された抗体および抗体組成物とは、目的の抗体を実質的に100%含み、抗体作製における抗体生産細胞、組織、または抗体産生動物由来の共雑タンパク質等の不純物を含まない抗体をいう。
【0028】
抗体とは、2本の重鎖(H鎖)と2本の軽鎖(L鎖)からなるヘテロ4量体のタンパク質である。抗体には、単一の抗原を認識するポリクローナル抗体とモノクローナル抗体がある。
【0029】
ポリクローナル抗体とは、単一の抗原を認識する抗体の混合物である。ポリクローナル抗体としては、例えば、抗原を免疫した宿主動物の抗血清などが挙げられる。
【0030】
モノクローナル抗体とは、単一クローンの抗体産生細胞が分泌する抗体である。モノクローナル抗体は、ただ一つのエピトープ(抗原決定基ともいう)を認識し、モノクローナル抗体を構成するアミノ酸配列(1次構造)が均一である。
【0031】
本発明の抗体はモノクローナル抗体であることが好ましい。本発明においてモノクローナル抗体としては、抗体重鎖(以下、H鎖と記す)の相補性決定領域(Complementarity Determining region;CDR、以下CDRと記す)1〜3が、それぞれ配列番号1〜3で示されるアミノ酸配列を含み、かつL鎖CDR1〜3が、それぞれ配列番号4〜6で示されるアミノ酸配列を含むモノクローナル抗体、抗体のH鎖可変領域(以下、VHと記す)が配列番号8で示されるアミノ酸配列を含み、かつL鎖可変領域(以下、VLと記す)が配列番号10で示されるアミノ酸配列を含むモノクローナル抗体、および抗Aβオリゴマーマウスモノクローナル抗体4H5を挙げることができる。
【0032】
エピトープとしては、例えば、モノクローナル抗体が認識して結合する単一のアミノ酸配列、アミノ酸配列からなる立体構造、糖鎖が結合したアミノ酸配列および糖鎖が結合したアミノ酸配列からなる立体構造などが挙げられる。
【0033】
本発明の抗体が認識するエピトープとしては、Aβタンパク質および該タンパク質断片の少なくとも一方を含み、かつ複合体を形成したAβオリゴマー上に存在するエピトープであればいかなるものもでもよい。
【0034】
本発明の抗体が結合するエピトープとしては、例えば、Aβオリゴマー上に露出しているAβのアミノ酸の一次配列からなるエピトープ、Aβオリゴマーの立体構造からなるエピトープなどが挙げられる。
【0035】
アミロイドの主要構成成分であるAβタンパク質とは、40〜42アミノ酸からなるペプチドで、アミロイド前駆体タンパク質(amyloid precursor protein; APP、以下APPと記す)という前駆体タンパク質から、プロテアーゼの作用によって産生されることが知られている。
【0036】
APPから生成されるアミロイド分子には、超遠心沈査画分に回収されるアミロイド線維とは別に、可溶性のモノマーおよび可溶性のオリゴマーの非線維性重合体がある。
【0037】
本発明において、Aβオリゴマーとは、非線維性重合体を指し、Aβタンパク質または該タンパク質断片の少なくとも一方を含み、かつ複合体を形成したAβオリゴマーをいう。
【0038】
Aβオリゴマーとして、具体的には、例えば、Aβ40(Aβ1−40)オリゴマー、Aβ42(Aβ1−42)オリゴマー、並びにAβ40およびAβ42の少なくとも一方が含まれるAβオリゴマーが挙げられる。また、本発明において、Aβオリゴマーとしては、Aβ40およびAβ42の少なくとも一方に、AβのN末端が欠損したAβ断片を含むAβオリゴマーが挙げられる。
【0039】
本発明におけるAβ42オリゴマーとは、具体的には、SDS−PAGEにより測定される分子量が45〜160kDaであり、Blue Native−PAGEにより測定される分子量が22.5〜1,035kDaである分子をいう。
【0040】
前記Aβオリゴマーは、分子篩では、主に、>100kDa保持液に回収される。また、原子間力顕微鏡による観察では、高さ1.5〜3.1nmの粒状分子、数珠状分子および輪状分子が混在した形態を呈す。
【0041】
また、前記Aβオリゴマーは、ゲル濾過法では、分子量>680kDa以上のvoid volume画分8と分子量17〜44kDa境界の画分15に溶出される。
【0042】
本発明の抗体は、Aβオリゴマーに結合し、Aβモノマーに結合しないヒト化抗体であればよく、その由来および形状については制限されない。
【0043】
本発明の抗体は、生理的分子である可溶性アミロイドβ(Aβ)モノマーを認識せず、可溶性Aβオリゴマーのみに反応することが好ましい。
【0044】
本発明において、可溶性Aβモノマーには結合せず、可溶性Aβオリゴマーのみに結合するとは、限外濾過・分子篩法により判別されるAβモノマーおよびAβオリゴマーのうち、モノマー(約4.5kDa)を認識せず、Aβダイマー以上の可溶性のAβオリゴマーを特異的に認識することをいう。従って、本発明の抗体は、Aβダイマー以上の可溶性Aβオリゴマーに特異的に結合することがより好ましい。
【0045】
本発明の抗体は、以下の(1)〜(5)の少なくとも1つの活性を有する。
(1)抗神経毒性活性;
(2)Aβアミロイド線維形成抑制活性;
(3)Aβオリゴマーのみを認識する特異性;
(4)AD脳においてAβオリゴマーを捕捉する能力;
(5)APPswe−トランスジェニックマウス(Tg2576)におけるアルツハイマー病様表現型発症(記憶障害、脳Aβ蓄積レベル)を予防する能力。
【0046】
本発明の抗体の前記(1)〜(5)に関する活性は、国際公開第2009/051220号に記載の方法を用いて、確認することができる。
【0047】
本発明の抗体は、遺伝子組換え抗体として作製することもできる。本発明において、遺伝子組換え抗体は、ヒト型キメラ抗体、ヒト化抗体(または、ヒト型CDR移植抗体ともいう)、ヒト抗体および抗体断片など、遺伝子組換えにより製造される抗体を包含する。
【0048】
遺伝子組換え抗体において、モノクローナル抗体の特徴を有し、抗原性が低く、血中半減期が延長されたものは、治療薬として好ましい。遺伝子組換え抗体としては、例えば、上記本発明のモノクローナル抗体を遺伝子組換え技術を用いて改変したものが挙げられる。
【0049】
前記ヒト型キメラ抗体とは、ヒト以外の動物の抗体の重鎖可変領域(以下、VHと記す)および軽鎖可変領域(以下、VLと記す)とヒト抗体の重鎖定常領域(以下、CHと記す)および軽鎖定常領域(以下、CLと記す)とからなる抗体をいう。
【0050】
本発明におけるヒト型キメラ抗体は、Aβオリゴマーを特異的に結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマより、前記VHおよびVLをコードするcDNAを取得し、ヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子を有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入してヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築し、動物細胞へ導入することにより発現させ、製造することができる。
【0051】
前記CHとしては、ヒトイムノグロブリン(以下、hIgと表記する)に属すれるCHであればいかなるものでもよいが、hIgGクラスに属するCHが好ましく、hIgGクラスのサブクラスであるhIgG1、hIgG2、hIgG3、hIgG4に属するCHを用いることもできる。
【0052】
また、前記CLとしては、hIgに属するCLであればいずれのものでもよく、κクラスまたはλクラスのものを用いることができる。
【0053】
本発明におけるヒト化抗体とは、ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのCDRのアミノ酸配列をヒト抗体のVHおよびVLの適切な位置に移植した抗体をいう。
【0054】
ヒト化抗体は、ヒト以外の動物由来のハイブリドーマから生産されるAβオリゴマーに特異的に結合するモノクローナル抗体のVHおよびVLのCDRのアミノ酸配列を、任意のヒト抗体のVHおよびVLのフレームワーク領域(Framework Region;以下FRと表記する)に移植したV領域のアミノ酸配列を作製し、V領域のアミノ酸配列をコードするcDNAを構築し、ヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子を有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入してヒト化抗体発現ベクターを構築し、動物細胞へ導入することにより発現させ、製造することができる。
【0055】
ヒト化抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列としては、ヒト抗体由来のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列であれば、いかなるものでも用いることができる。
【0056】
例えば、Protein Data Bankなどのデータベースに登録されているヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列、並びにSequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept.Health and Human Services(1991)などに記載の、ヒト抗体のVHおよびVLのFRの各サブグループの共通アミノ酸配列などを用いることができる。
【0057】
本発明のヒト化抗体としては、例えば、抗体のVHのCDR1〜3がそれぞれ配列番号1〜3で示されるアミノ酸配列を含み、かつ抗体のVLのCDR1〜3がそれぞれ配列番号4〜6で示されるアミノ酸配列を含むヒト化抗体が挙げられる。
【0058】
本発明のヒト化抗体としては、以下の(a)VHおよび(b)VLの少なくとも一方を含むヒト化抗体が好ましい。なお、以下の(a)および(b)において、導入される改変の数に制限はない。
(a)配列番号12で示されるアミノ酸配列、または配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeu、46番目のGln、48番目のMet、49番目のVal、77番目のSer、93番目のVal、および98番目のArgから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むVH
(b)配列番号14で示されるアミノ酸配列、または配列番号14で示されるアミノ酸配列の2番目のIle、3番目のVal、15番目のPro、50番目のGln、および105番目のGlnから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むVL
【0059】
本発明のヒト化抗体に含まれるVHとしては、例えば、配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeu、46番目のGln、48番目のMet、49番目のVal、77番目のSer、93番目のVal、および98番目のArgが、他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むVHが好適に挙げられる。
【0060】
また、本発明のヒト化抗体に含まれるVHとしては、以下の(1)〜(6)から選ばれる1のVHもまた好ましい。
(1)配列番号12で示されるアミノ酸配列の46番目のGln、48番目のMet、49番目のVal、77番目のSer、93番目のVal、および98番目のArgが、他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むVH
(2)配列番号12で示されるアミノ酸配列の46番目のGln、48番目のMet、49番目のVal、93番目のVal、および98番目のArgが、他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むVH
(3)配列番号12で示されるアミノ酸配列の46番目のGln、48番目のMet、49番目のVal、77番目のSer、および98番目のArgが、他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むVH
(4)配列番号12で示されるアミノ酸配列の46番目のGln、48番目のMet、49番目のVal、および98番目のArgが、他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むVH
(5)が配列番号12で示されるアミノ酸配列の46番目のGln、48番目のMet、および49番目のValが、他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むVH
(6)配列番号12で示されるアミノ酸配列中48番目のMet、および49番目のValが、他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むVH
【0061】
前記VHのアミノ酸配列としては、例えば、配列番号12で示されるアミノ酸配列中の18番目のLeuをArgに、46番目のGlnをGluに、48番目のMetをValに、49番目のValをAlaに、77番目のSerをAsnに、93番目のValをMetに、および98番目のArgをGlyに置換する改変から選ばれる少なくとも1つの改変が導入されたアミノ酸配列が挙げられる。
【0062】
前記VHのアミノ酸配列としては、さらに具体的には、例えば、以下の7個〜1個の改変が導入されたアミノ酸配列が挙げられる。
【0063】
7個の改変が導入されたVHのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、配列番号12で示されるアミノ酸配列中の18番目のLeuをArgに、46番目のGlnをGluに、48番目のMetをValに、49番目のValをAlaに、77番目のSerをAsnに、93番目のValをMetに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列が挙げられる。
【0064】
6個の改変が導入されたVHのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、以下の(1)〜(7)のアミノ酸配列が挙げられる。
(1)配列番号12で示されるアミノ酸配列の46番目のGlnをGluに、48番目のMetをValに、49番目のValをAlaに、77番目のSerをAsnに、93番目のValをMetに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(2)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、48番目のMetをValに、49番目のValをAlaに、77番目のSerをAsnに、93番目のValをMetに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(3)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、46番目のGlnをGluに、49番目のValをAlaに、77番目のSerをAsnに、93番目のValをMetに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(4)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、46番目のGlnをGluに、48番目のMetをValに、77番目のSerをAsnに、93番目のValをMetに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(5)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、46番目のGlnをGluに、48番目のMetをValに、49番目のValをAlaに、93番目のValをMetに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(6)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、46番目のGlnをGluに、48番目のMetをValに、49番目のValをAlaに、77番目のSerをAsnに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(7)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、46番目のGlnをGluに、48番目のMetをValに、49番目のValをAlaに、77番目のSerをAsnに、および93番目のValをMetに置換したアミノ酸配列
【0065】
5個の改変が導入されたVHのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、以下の(1)〜(21)のアミノ酸配列が挙げられる。
(1)配列番号12で示されるアミノ酸配列の48番目のMetをValに、49番目のValをAlaに、77番目のSerをAsnに、93番目のValをMetに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(2)配列番号12で示されるアミノ酸配列の46番目のGlnをGluに、49番目のValをAlaに、77番目のSerをAsnに、93番目のValをMetに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(3)配列番号12で示されるアミノ酸配列の46番目のGlnをGluに、48番目のMetをValに、77番目のSerをAsnに、93番目のValをMetに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(4)配列番号12で示されるアミノ酸配列の46番目のGlnをGluに、48番目のMetをValに、49番目のValをAlaに、93番目のValをMetに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(5)配列番号12で示されるアミノ酸配列の46番目のGlnをGluに、48番目のMetをValに、49番目のValをAlaに、77番目のSerをAsnに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(6)配列番号12で示されるアミノ酸配列の46番目のGlnをGluに、48番目のMetをValに、49番目のValをAlaに、77番目のSerをAsnに、および93番目のValをMetに置換したアミノ酸配列
(7)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、49番目のValをAlaに、77番目のSerをAsnに、93番目のValをMetに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(8)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、48番目のMetをValに、77番目のSerをAsnに、93番目のValをMetに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(9)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、48番目のMetをValに、49番目のValをAlaに、93番目のValをMetに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(10)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、48番目のMetをValに、49番目のValをAlaに、77番目のSerをAsnに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(11)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、48番目のMetをValに、49番目のValをAlaに、77番目のSerをAsnに、および93番目のValをMetに置換したアミノ酸配列
(12)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、46番目のGlnをGluに、77番目のSerをAsnに、93番目のValをMetに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(13)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、46番目のGlnをGluに、49番目のValをAlaに、93番目のValをMetに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(14)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、46番目のGlnをGluに、49番目のValをAlaに、77番目のSerをAsnに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(15)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、46番目のGlnをGluに、49番目のValをAlaに、77番目のSerをAsnに、および93番目のValをMetに置換したアミノ酸配列
(16)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、46番目のGlnをGluに、48番目のMetをValに、93番目のValをMetに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(17)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、46番目のGlnをGluに、48番目のMetをValに、77番目のSerをAsnに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(18)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、46番目のGlnをGluに、48番目のMetをValに、77番目のSerをAsnに、および93番目のValをMetに置換したアミノ酸配列
(19)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、46番目のGlnをGluに、48番目のMetをValに、49番目のValをAlaに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(20)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、46番目のGlnをGluに、48番目のMetをValに、49番目のValをAlaに、および93番目のValをMetに置換したアミノ酸配列
(21)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、46番目のGlnをGluに、48番目のMetをValに、49番目のValをAlaに、および77番目のSerをAsnに置換したアミノ酸配列
【0066】
4個の改変が導入されたVHのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、以下の(1)〜(35)のアミノ酸配列が挙げられる。
(1)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、46番目のGlnをGluに、48番目のMetをValに、および49番目のValをAlaに置換したアミノ酸配列
(2)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、46番目のGlnをGluに、48番目のMetをValに、および77番目のSerをAsnに置換したアミノ酸配列
(3)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、46番目のGlnをGluに、48番目のMetをValに、および93番目のValをMetに置換したアミノ酸配列
(4)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、46番目のGlnをGluに、48番目のMetをValに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(5)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、46番目のGlnをGluに、49番目のValをAlaに、および77番目のSerをAsnに置換したアミノ酸配列
(6)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、46番目のGlnをGluに、49番目のValをAlaに、および93番目のValをMetに置換したアミノ酸配列
(7)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、46番目のGlnをGluに、49番目のValをAlaに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(8)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、46番目のGlnをGluに、77番目のSerをAsnに、および93番目のValをMetに置換したアミノ酸配列
(9)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、46番目のGlnをGluに、77番目のSerをAsnに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(10)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、46番目のGlnをGluに、93番目のValをMetに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(11)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、48番目のMetをValに、49番目のValをAlaに、および77番目のSerをAsnに置換したアミノ酸配列
(12)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、48番目のMetをValに、49番目のValをAlaに、および93番目のValをMetに置換したアミノ酸配列
(13)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、48番目のMetをValに、49番目のValをAlaに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(14)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、48番目のMetをValに、77番目のSerをAsnに、および93番目のValをMetに置換したアミノ酸配列
(15)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、48番目のMetをValに、77番目のSerをAsnに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(16)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、48番目のMetをValに、93番目のValをMetに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(17)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、49番目のValをAlaに、77番目のSerをAsnに、および93番目のValをMetに置換したアミノ酸配列
(18)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、49番目のValをAlaに、77番目のSerをAsnに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(19)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、49番目のValをAlaに、93番目のValをMetに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(20)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、77番目のSerをAsnに、93番目のValをMetに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(21)配列番号12で示されるアミノ酸配列の46番目のGlnをGluに、48番目のMetをValに、49番目のValをAlaに、および77番目のSerをAsnに置換したアミノ酸配列
(22)配列番号12で示されるアミノ酸配列の46番目のGlnをGluに、48番目のMetをValに、49番目のValをAlaに、および93番目のValをMetに置換したアミノ酸配列
(23)配列番号12で示されるアミノ酸配列の46番目のGlnをGluに、48番目のMetをValに、49番目のValをAlaに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(24)配列番号12で示されるアミノ酸配列の46番目のGlnをGluに、48番目のMetをValに、77番目のSerをAsnに、および93番目のValをMetに置換したアミノ酸配列
(25)配列番号12で示されるアミノ酸配列の46番目のGlnをGluに、48番目のMetをValに、77番目のSerをAsnに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(26)配列番号12で示されるアミノ酸配列の46番目のGlnをGluに、48番目のMetをValに、93番目のValをMetに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(27)配列番号12で示されるアミノ酸配列の46番目のGlnをGluに、49番目のValをAlaに、77番目のSerをAsnに、および93番目のValをMetに置換したアミノ酸配列
(28)配列番号12で示されるアミノ酸配列の46番目のGlnをGluに、49番目のValをAlaに、77番目のSerをAsnに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(29)配列番号12で示されるアミノ酸配列の46番目のGlnをGluに、49番目のValをAlaに、93番目のValをMetに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(30)配列番号12で示されるアミノ酸配列の46番目のGlnをGluに、77番目のSerをAsnに、93番目のValをMetに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(31)配列番号12で示されるアミノ酸配列の48番目のMetをValに、49番目のValをAlaに、77番目のSerをAsnに、および93番目のValをMetに置換したアミノ酸配列
(32)配列番号12で示されるアミノ酸配列の48番目のMetをValに、49番目のValをAlaに、77番目のSerをAsnに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(33)配列番号12で示されるアミノ酸配列の48番目のMetをValに、49番目のValをAlaに、93番目のValをMetに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(34)配列番号12で示されるアミノ酸配列の48番目のMetをValに、77番目のSerをAsnに、93番目のValをMetに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(35)配列番号12で示されるアミノ酸配列の49番目のValをAlaに、77番目のSerをAsnに、93番目のValをMetに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
【0067】
3個の改変が導入されたVHのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、以下の(1)〜(35)のアミノ酸配列が挙げられる。
(1)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、46番目のGlnをGluに、および48番目のMetをValに置換したアミノ酸配列
(2)配列番号12で示されるアミノ酸配列の118番目のLeuをArgに、46番目のGlnをGluに、および49番目のValをAlaに置換したアミノ酸配列
(3)配列番号12で示されるアミノ酸配列の118番目のLeuをArgに、46番目のGlnをGluに、および77番目のSerをAsnに置換したアミノ酸配列
(4)配列番号12で示されるアミノ酸配列の118番目のLeuをArgに、46番目のGlnをGluに、および93番目のValをMetに置換したアミノ酸配列
(5)配列番号12で示されるアミノ酸配列の118番目のLeuをArgに、46番目のGlnをGluに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(6)配列番号12で示されるアミノ酸配列の118番目のLeuをArgに、48番目のMetをValに、および49番目のValをAlaに置換したアミノ酸配列
(7)配列番号12で示されるアミノ酸配列の118番目のLeuをArgに、48番目のMetをValに、および77番目のSerをAsnに置換したアミノ酸配列
(8)配列番号12で示されるアミノ酸配列の118番目のLeuをArgに、48番目のMetをValに、および93番目のValをMetに置換したアミノ酸配列
(9)配列番号12で示されるアミノ酸配列の118番目のLeuをArgに、48番目のMetをValに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(10)配列番号12で示されるアミノ酸配列の118番目のLeuをArgに、49番目のValをAlaに、および77番目のSerをAsnに置換したアミノ酸配列
(11)配列番号12で示されるアミノ酸配列の118番目のLeuをArgに、49番目のValをAlaに、および93番目のValをMetに置換したアミノ酸配列
(12)配列番号12で示されるアミノ酸配列の118番目のLeuをArgに、49番目のValをAlaに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(13)配列番号12で示されるアミノ酸配列の118番目のLeuをArgに、77番目のSerをAsnに、および93番目のValをMetに置換したアミノ酸配列
(14)配列番号12で示されるアミノ酸配列の118番目のLeuをArgに、77番目のSerをAsnに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(15)配列番号12で示されるアミノ酸配列の118番目のLeuをArgに、93番目のValをMetに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(16)配列番号12で示されるアミノ酸配列の146番目のGlnをGluに、48番目のMetをValに、および49番目のValをAlaに置換したアミノ酸配列
(17)配列番号12で示されるアミノ酸配列の146番目のGlnをGluに、48番目のMetをValに、および77番目のSerをAsnに置換したアミノ酸配列
(18)配列番号12で示されるアミノ酸配列の146番目のGlnをGluに、48番目のMetをValに、および93番目のValをMetに置換したアミノ酸配列
(19)配列番号12で示されるアミノ酸配列の146番目のGlnをGluに、48番目のMetをValに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(20)配列番号12で示されるアミノ酸配列の146番目のGlnをGluに、49番目のValをAlaに、および77番目のSerをAsnに置換したアミノ酸配列
(21)配列番号12で示されるアミノ酸配列の146番目のGlnをGluに、49番目のValをAlaに、および93番目のValをMetに置換したアミノ酸配列
(22)配列番号12で示されるアミノ酸配列の146番目のGlnをGluに、49番目のValをAlaに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(23)配列番号12で示されるアミノ酸配列の146番目のGlnをGluに、77番目のSerをAsnに、および93番目のValをMetに置換したアミノ酸配列
(24)配列番号12で示されるアミノ酸配列の146番目のGlnをGluに、77番目のSerをAsnに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(25)配列番号12で示されるアミノ酸配列の146番目のGlnをGluに、93番目のValをMetに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(26)配列番号12で示されるアミノ酸配列の148番目のMetをValに、49番目のValをAlaに、および77番目のSerをAsnに置換したアミノ酸配列
(27)配列番号12で示されるアミノ酸配列の148番目のMetをValに、49番目のValをAlaに、および93番目のValをMetに置換したアミノ酸配列
(28)配列番号12で示されるアミノ酸配列の148番目のMetをValに、49番目のValをAlaに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(29)配列番号12で示されるアミノ酸配列の148番目のMetをValに、77番目のSerをAsnに、および93番目のValをMetに置換したアミノ酸配列
(30)配列番号12で示されるアミノ酸配列の148番目のMetをValに、77番目のSerをAsnに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(31)配列番号12で示されるアミノ酸配列の148番目のMetをValに、93番目のValをMetに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(32)配列番号12で示されるアミノ酸配列の149番目のValをAlaに、77番目のSerをAsnに、および93番目のValをMetに置換したアミノ酸配列
(33)配列番号12で示されるアミノ酸配列の149番目のValをAlaに、77番目のSerをAsnに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(34)配列番号12で示されるアミノ酸配列の149番目のValをAlaに、93番目のValをMetに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(35)配列番号12で示されるアミノ酸配列の177番目のSerをAsnに、93番目のValをMetに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
【0068】
2個の改変が導入されたVHのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、以下の(1)〜(21)のアミノ酸配列が挙げられる。
(1)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、および46番目のGlnをGluに置換したアミノ酸配列
(2)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、および48番目のMetをValに置換したアミノ酸配列
(3)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、および49番目のValをAlaに置換したアミノ酸配列
(4)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、および77番目のSerをAsnに置換したアミノ酸配列
(5)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、および93番目のValをMetに置換したアミノ酸配列
(6)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(7)配列番号12で示されるアミノ酸配列の46番目のGlnをGluに、および48番目のMetをValに置換したアミノ酸配列
(8)配列番号12で示されるアミノ酸配列の46番目のGlnをGluに、および49番目のValをAlaに置換したアミノ酸配列
(9)配列番号12で示されるアミノ酸配列の46番目のGlnをGluに、および77番目のSerをAsnに置換したアミノ酸配列
(10)配列番号12で示されるアミノ酸配列の46番目のGlnをGluに、および93番目のValをMetに置換したアミノ酸配列
(11)配列番号12で示されるアミノ酸配列の46番目のGlnをGluに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(12)配列番号12で示されるアミノ酸配列の48番目のMetをValに、および49番目のValをAlaに置換したアミノ酸配列
(13)配列番号12で示されるアミノ酸配列の48番目のMetをValに、および77番目のSerをAsnに置換したアミノ酸配列
(14)配列番号12で示されるアミノ酸配列の48番目のMetをValに、および93番目のValをMetに置換したアミノ酸配列
(15)配列番号12で示されるアミノ酸配列の48番目のMetをValに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(16)配列番号12で示されるアミノ酸配列の49番目のValをAlaに、および77番目のSerをAsnに置換したアミノ酸配列
(17)配列番号12で示されるアミノ酸配列の49番目のValをAlaに、および93番目のValをMetに置換したアミノ酸配列
(18)配列番号12で示されるアミノ酸配列の49番目のValをAlaに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(19)配列番号12で示されるアミノ酸配列の77番目のSerをAsnに、および93番目のValをMetに置換したアミノ酸配列
(20)配列番号12で示されるアミノ酸配列の77番目のSerをAsnに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(21)配列番号12で示されるアミノ酸配列の93番目のValをMetに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
【0069】
1個の改変が導入されたVHのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、以下の(1)〜(5)のアミノ酸配列が挙げられる。
(1)配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに置換したアミノ酸配列
(2)配列番号12で示されるアミノ酸配列の46番目のGlnをGluに置換したアミノ酸配列、48番目のMetをValに置換したアミノ酸配列
(3)配列番号12で示されるアミノ酸配列の49番目のValをAlaに置換したアミノ酸配列、77番目のSerをAsnに置換したアミノ酸配列
(4)配列番号12で示されるアミノ酸配列の93番目のValをMetに置換したアミノ酸配列
(5)配列番号12で示されるアミノ酸配列の98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
【0070】
上記VHのアミノ酸配列の中でも、配列番号12で示されるアミノ酸配列、配列番号12で示されるアミノ酸配列の46番目のGlnをGluに、93番目のValをMetに、および、98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列、並びに配列番号12で示されるアミノ酸配列の46番目のGlnをGluに、77番目のSerをAsnに、93番目のValをMetに、および、98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列が好ましい。
【0071】
本発明のヒト化抗体に含まれるVLとしては、例えば、配列番号14で示されるアミノ酸配列の2番目のIle、3番目のVal、15番目のPro、50番目のGln、および105番目のGlnが、他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むVLが好適に挙げられる。
【0072】
また、本発明のヒト化抗体に含まれるVLとしては、以下の(1)〜(6)から選らばれる1のアミノ酸配列を含むVLもまた好ましい。
(1)配列番号14で示されるアミノ酸配列の2番目のIle、15番目のPro、50番目のGln、および105番目のGlnが、他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むVL
(2)配列番号14で示されるアミノ酸配列の2番目のIle、15番目のPro、および50番目のGlnが、他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むVL
(3)配列番号14で示されるアミノ酸配列の15番目のPro、および50番目のGlnが、他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むVL
(4)配列番号14で示されるアミノ酸配列の2番目のIleが、他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むVL
(5)配列番号14で示されるアミノ酸配列の15番目のProが、他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むVL
(6)配列番号14で示されるアミノ酸配列の50番目のGlnが、他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むVL
【0073】
前記VLのアミノ酸配列としては、例えば、配列番号14で示されるアミノ酸配列の2番目のIleをValに、3番目のValをLeuに、15番目のProをLeuに、50番目のGlnをLysに、および105番目のGlnをGlyに置換する改変から選ばれる少なくとも1つの改変が導入されたアミノ酸配列が挙げられる。
【0074】
上記の改変が導入された本発明の抗体のVLのアミノ酸配列としては、さらに具体的には、例えば、以下の5個〜1個の改変が導入されたVLのアミノ酸配列が挙げられる。
【0075】
5個の改変が導入されたVLのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、配列番号14のアミノ酸配列中の2番目のIleをValに、3番目のValをLeuに、15番目のProをLeuに、50番目のGlnをLysに、および105番目のGlnをGlyに置換したアミノ酸配列が挙げられる。
【0076】
4個の改変が導入されたVLのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、以下の(1)から(5)のアミノ酸配列が挙げられる。
(1)配列番号14で示されるアミノ酸配列の3番目のValをLeuに、15番目のProをLeuに、50番目のGlnをLysに、および105番目のGlnをGlyに置換したアミノ酸配列
(2)配列番号14で示されるアミノ酸配列の2番目のIleをValに、15番目のProをLeuに、50番目のGlnをLysに、および105番目のGlnをGlyに置換したアミノ酸配列
(3)配列番号14で示されるアミノ酸配列の2番目のIleをValに、3番目のValをLeuに、50番目のGlnをLysに、および105番目のGlnをGlyに置換したアミノ酸配列
(4)配列番号14で示されるアミノ酸配列の2番目のIleをValに、3番目のValをLeuに、15番目のProをLeuに、および105番目のGlnをGlyに置換したアミノ酸配列
(5)配列番号14で示されるアミノ酸配列の2番目のIleをValに、3番目のValをLeuに、15番目のProをLeuに、および50番目のGlnをLysに置換したアミノ酸配列
【0077】
3個の改変が導入されたVLのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、以下の(1)〜(10)のアミノ酸配列が挙げられる。
(1)配列番号14で示されるアミノ酸配列の2番目のIleをValに、3番目のValをLeuに、および15番目のProをLeuに置換したアミノ酸配列
(2)配列番号14で示されるアミノ酸配列の2番目のIleをValに、3番目のValをLeuに、および50番目のGlnをLysに置換したアミノ酸配列
(3)配列番号14で示されるアミノ酸配列の2番目のIleをValに、3番目のValをLeuに、および105番目のGlnをGlyに置換したアミノ酸配列
(4)配列番号14で示されるアミノ酸配列の2番目のIleをValに、15番目のProをLeuに、および50番目のGlnをLysに置換したアミノ酸配列
(5)配列番号14で示されるアミノ酸配列の2番目のIleをValに、15番目のProをLeuに、および105番目のGlnをGlyに置換したアミノ酸配列
(6)配列番号14で示されるアミノ酸配列の2番目のIleをValに、50番目のGlnをLysに、および105番目のGlnをGlyに置換したアミノ酸配列
(7)配列番号14で示されるアミノ酸配列の3番目のValをLeuに、15番目のProをLeuに、および50番目のGlnをLysに置換したアミノ酸配列
(8)配列番号14で示されるアミノ酸配列の3番目のValをLeuに、15番目のProをLeuに、および105番目のGlnをGlyに置換したアミノ酸配列
(9)配列番号14で示されるアミノ酸配列の3番目のValをLeuに、50番目のGlnをLysに、および105番目のGlnをGlyに置換したアミノ酸配列
(10)配列番号14で示されるアミノ酸配列の15番目のProをLeuに、50番目のGlnをLysに、および105番目のGlnをGlyに置換したアミノ酸配列
【0078】
2個の改変が導入されたVLのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、以下の(1)〜(10)のアミノ酸配列が挙げられる。
(1)配列番号14で示されるアミノ酸配列の2番目のIleをValに、および3番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(2)配列番号14で示されるアミノ酸配列の2番目のIleをValに、および15番目のProをLeuに置換したアミノ酸配列
(3)配列番号14で示されるアミノ酸配列の2番目のIleをValに、および50番目のGlnをLysに置換したアミノ酸配列
(4)配列番号14で示されるアミノ酸配列の2番目のIleをValに、および105番目のGlnをGlyに置換したアミノ酸配列
(5)配列番号14で示されるアミノ酸配列の3番目のValをLeuに、および15番目のProをLeuに置換したアミノ酸配列
(6)配列番号14で示されるアミノ酸配列の3番目のValをLeuに、および50番目のGlnをLysに置換したアミノ酸配列
(7)配列番号14で示されるアミノ酸配列の3番目のValをLeuに、および105番目のGlnをGlyに置換したアミノ酸配列
(8)配列番号14で示されるアミノ酸配列の15番目のProをLeuに、および50番目のGlnをLysに置換したアミノ酸配列
(9)配列番号14で示されるアミノ酸配列の15番目のProをLeuに、および105番目のGlnをGlyに置換したアミノ酸配列
(10)配列番号14で示されるアミノ酸配列の50番目のGlnをLysに、および105番目のGlnをGlyに置換したアミノ酸配列
【0079】
1個の改変が導入されたVLのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、以下の(1)〜(5)のアミノ酸配列が挙げられる。
(1)配列番号14で示されるアミノ酸配列の2番目のIleをValに置換したアミノ酸配列
(2)配列番号14で示されるアミノ酸配列の3番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(3)配列番号14で示されるアミノ酸配列の15番目のProをLeuに置換したアミノ酸配列
(4)配列番号14で示されるアミノ酸配列の50番目のGlnをLysに置換したアミノ酸配列
(5)配列番号14で示されるアミノ酸配列の105番目のGlnをGlyに置換したアミノ酸配列
【0080】
上記VLのアミノ酸配列の中でも、配列番号14で示されるアミノ酸配列、配列番号14で示されるアミノ酸配列の15番目のProをLeuに置換したアミノ酸配列、並びに配列番号14で示されるアミノ酸配列の2番目のIleをValに、15番目のProをLeuに、および、50番目のGlnをLysに置換したアミノ酸配列が好ましい。
【0081】
本発明の抗体の具体例としては、上記のVHとVLをそれぞれ組み合わせたいずれかの抗体を挙げることができる。
【0082】
本発明の抗体としては、例えば、以下の(1)〜(4)の抗体が好適に挙げられる。
(1)配列番号12で示されるアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号14で示されるアミノ酸配列を含むVLの少なくとも一方を含むヒト化抗体
(2)配列番号12で示されるアミノ酸配列を含むVHおよび
図2で示されるアミノ酸配列のいずれか1を含むVLの少なくとも一方を含むヒト化抗体
(3)
図1で示されるアミノ酸配列のいずれか1を含むVHおよび配列番号14で示されるアミノ酸配列を含むVLの少なくとも一方を含むヒト化抗体
(4)
図1で示されるアミノ酸配列のいずれか1を含むVHおよび
図2で示されるアミノ酸配列のいずれか1を含むVLを含むヒト化抗体
【0083】
図1で示されるVHのアミノ酸配列のうち、4H5HV0、HV5aおよびHV6が好ましい。また、
図2で示されるVLのアミノ酸配列のうち、4H5LV0、LV1bまたはLV3が好ましい。
【0084】
したがって、
図1で示されるアミノ酸配列のいずれか1を含むVHおよび
図2で示されるアミノ酸配列のいずれか1を含むVLを含むヒト化抗体としては、
図1で示される4H5HV0、HV5aおよびHV6のいずれか1のアミノ酸配列を含むVHと、
図2で示される4H5LV0、LV1bおよびLV3のいずれか1のアミノ酸配列を含むVLを含むヒト化抗体が好ましい。
【0085】
具体的には、例えば、配列番号12、15および16で示されるアミノ酸配列のいずれか1を含むVHと、配列番号14、17および18で示されるアミノ酸配列のいずれか1を含むVLとを含むヒト化抗体を挙げることができる。
【0086】
図1で示されるVHのアミノ酸配列と
図2で示されるVLのアミノ酸配列の組み合わせとしては、HV0とLV0、HV5aとLV0、HV5aとLV1b、HV5aとLV3、HV6とLV0、HV6とLV1bおよびHV6とLV3の組み合わせが好ましい。
【0087】
したがって、本発明の抗体としては、以下の(1)〜(7)のヒト化抗体がさらに好ましい。
(1)
図1のHV0で示されるアミノ酸配列を含むVHと
図2のLV0で示されるアミノ酸配列を含むVLとを含むヒト化抗体(HV0LV0)
(2)
図1のHV5aで示されるアミノ酸配列を含むVHと
図2のLV0で示されるアミノ酸配列を含むVLとを含むヒト化抗体(HV5aLV0)
(3)
図1のHV5aで示されるアミノ酸配列を含むVHと
図2のLV1bで示されるアミノ酸配列を含むVLとを含むヒト化抗体(HV5aLV1b)
(4)
図1のHV5aで示されるアミノ酸配列を含むVHと
図2のLV3で示されるアミノ酸配列を含むVLとを含むヒト化抗体(HV5aLV3)
(5)
図1のHV6で示されるアミノ酸配列を含むVHと
図2のLV0で示されるアミノ酸配列を含むVLとを含むヒト化抗体(HV6LV0)
(6)
図1のHV6で示されるアミノ酸配列を含むVHと
図2のLV1bで示されるアミノ酸配列を含むVLとを含むヒト化抗体(HV6LV1b)
(7)
図1のHV6で示されるアミノ酸配列を含むVHと
図2のLV3で示されるアミノ酸配列を含むVLとを含むヒト化抗体(HV6LV3)
【0088】
前記抗体としては、具体的には、例えば、VHおよびVLに含まれるアミノ酸配列の組み合わせが、以下の(1)〜(7)であるヒト化抗体を挙げることができる。
(1)配列番号12で示されるアミノ酸配列および配列番号14で示されるアミノ酸配列
(2)配列番号15で示されるアミノ酸配列および配列番号14で示されるアミノ酸配列
(3)配列番号15で示されるアミノ酸配列および配列番号17で示されるアミノ酸配列
(4)配列番号15で示されるアミノ酸配列および配列番号18で示されるアミノ酸配列
(5)配列番号16で示されるアミノ酸配列および配列番号14で示されるアミノ酸配列
(6)配列番号16で示されるアミノ酸配列および配列番号17で示されるアミノ酸配列
(7)配列番号16で示されるアミノ酸配列および配列番号18で示されるアミノ酸配列
【0089】
更に、本発明のヒト化抗体には、上記ヒト化抗体と競合してAβオリゴマーに反応するヒト化抗体、および上記ヒト化抗体が反応するエピトープと同じエピトープに結合するヒト化抗体も包含される。
【0090】
本発明において、ヒト抗体とは、元来ヒト体内に天然に存在する抗体をいうが、最近の遺伝子工学的、細胞工学的、発生工学的な技術の進歩により作製されたヒト抗体ファージライブラリーおよびヒト抗体産生トランスジェニック動物から得られる抗体なども含まれる。
【0091】
ヒト体内に天然に存在する抗体は、例えば、ヒト末梢血リンパ球を単離し、EBウイルスなどを感染させ不死化し、クローニングすることにより、該抗体を産生するリンパ球を培養でき、培養上清中より該抗体を精製することができる。
【0092】
ヒト抗体ファージライブラリーは、ヒトB細胞から調製した抗体遺伝子をファージ遺伝子に挿入することによりFab、scFvなどの抗体断片をファージ表面に発現させたライブラリーである。
【0093】
ヒト抗体ファージライブラリーより、抗原を固定化した基質に対する結合活性を指標として所望の抗原結合活性を有する抗体断片を表面に発現しているファージを回収することができる。該抗体断片は、さらに、遺伝子工学的手法により2本の完全なH鎖および2本の完全なL鎖からなるヒト抗体分子へも変換することができる。
【0094】
ヒト抗体産生トランスジェニック動物は、ヒト抗体遺伝子が細胞内に組込まれた動物を意味する。具体的には、例えば、マウスES細胞へヒト抗体遺伝子を導入し、該ES細胞をマウスの初期胚へ移植後、発生させることによりヒト抗体産生トランスジェニックマウスを作製することができる。ヒト抗体産生トランスジェニック動物からのヒト抗体は、通常のヒト以外の動物で行われているハイブリドーマ作製方法を用い、ヒト抗体産生ハイブリドーマを取得し、培養することで培養上清中にヒト抗体を産生蓄積させることにより作製することができる。
【0095】
上記抗体または抗体断片を構成するアミノ酸配列において、1つ以上のアミノ酸が欠失、付加、置換または挿入され、かつ上述の抗体またはその抗体断片と同様な活性を有するモノクローナル抗体またはその抗体断片も、本発明のモノクローナル抗体またはその抗体断片に包含される。
【0096】
欠失、置換、挿入および/または付加されるアミノ酸の数は1個以上でありその数は特に限定されないが、部位特異的変異導入法[Molecular Cloning 2nd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Current protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons(1987−1997)、Nucleic Acids Research,10,6487(1982)、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,79,6409(1982)、Gene,34,315(1985)、Nucleic Acids Research,13,4431(1985)、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,82,488(1985)]などの周知の技術により、欠失、置換もしくは付加できる程度の数である。例えば、1〜数十個が好ましく、1〜20個がより好ましく、1〜10個がさらに好ましく、1〜5個が特に好ましい。
【0097】
上記の抗体のアミノ酸配列において1つ以上のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入または付加されたとは、次のことを示す。即ち、同一配列中の任意、かつ1もしくは複数のアミノ酸配列中において、1または複数のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入または付加があることを意味する。また、欠失、置換、挿入または付加が同時に生じる場合もあり、置換、挿入または付加されるアミノ酸残基は天然型と非天然型いずれの場合もある。
【0098】
天然型アミノ酸残基としては、例えば、L−アラニン、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン、L−グルタミン酸、グリシン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−セリン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、L−バリンおよびL−システインなどが挙げられる。
【0099】
以下に、相互に置換可能なアミノ酸残基の好ましい例を示す。同一群に含まれるアミノ酸残基は相互に置換可能である。
A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2−アミノブタン酸、メチオニン、O−メチルセリン、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニンおよびシクロヘキシルアラニン
B群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2−アミノアジピン酸および2−アミノスベリン酸
C群:アスパラギンおよびグルタミン
D群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4−ジアミノブタン酸および2,3−ジアミノプロピオン酸
E群:プロリン、3−ヒドロキシプロリンおよび4−ヒドロキシプロリン
F群:セリン、スレオニンおよびホモセリン
G群:フェニルアラニンおよびチロシン
【0100】
本発明において、抗体断片としては、Fab、F(ab’)
2、Fab’、scFv、diabody、dsFvおよびCDRを含むペプチドなどが挙げられる。
【0101】
Fabは、IgGを蛋白質分解酵素であるパパインで処理して得られる断片のうち(H鎖の224番目のアミノ酸残基で切断される)、H鎖のN末端側約半分とL鎖全体がジスルフィド結合で結合した分子量約5万の抗原結合活性を有する抗体断片である。
【0102】
本発明のFabは、Aβオリゴマーを特異的に認識し、かつ該細胞外領域に結合するモノクローナル抗体をパパインで処理して得ることができる。また、該抗体のFabをコードするDNAを原核生物用発現ベクターまたは真核生物用発現ベクターに挿入し、該ベクターを原核生物または真核生物へ導入することにより発現させ、Fabを製造することもできる。
【0103】
F(ab’)
2は、IgGのヒンジ領域の2個のジスルフィド結合の下部を蛋白質分解酵素であるペプシンで分解して得られた、2つのFab領域がヒンジ部分で結合して構成された、分子量約10万の抗原結合活性を有する断片である。
【0104】
本発明のF(ab’)
2は、Aβオリゴマーを特異的に認識し、かつ該細胞外領域に結合するモノクローナル抗体をペプシンで処理して得ることができる。また、下記のFab’をチオエーテル結合またはジスルフィド結合させ、作製することもできる。
【0105】
Fab’は、上記F(ab’)
2のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断した分子量約5万の抗原結合活性を有する抗体断片である。
【0106】
本発明のFab’は、本発明のAβオリゴマーを特異的に認識し、かつ該細胞外領域に結合するF(ab’)
2をジチオスレイトールなどの還元剤で処理して得ることができる。
【0107】
また、該抗体のFab’断片をコードするDNAを原核生物用発現ベクターまたは真核生物用発現ベクターに挿入し、該ベクターを原核生物または真核生物へ導入することにより発現させ、Fab’を製造することもできる。
【0108】
scFvは、1本のVHと1本のVLとを適当なペプチドリンカー(以下、Pと表記する)を用いて連結した、VH−P−VLまたはVL−P−VHポリペプチドで、抗原結合活性を有する抗体断片である。
【0109】
本発明のscFvは、本発明のAβオリゴマーを特異的に認識し、かつ該細胞外領域に結合するモノクローナル抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、scFvをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターまたは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物または真核生物へ導入することにより発現させ、製造することができる。
【0110】
diabodyは、scFvが二量体化した抗体断片で、二価の抗原結合活性を有する抗体断片である。二価の抗原結合活性は、同一であることもできるし、一方を異なる抗原結合活性とすることもできる。
【0111】
本発明のdiabodyは、本発明のAβオリゴマーを特異的に認識し、かつ該細胞外領域に結合するモノクローナル抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、scFvをコードするDNAをペプチドリンカーのアミノ酸配列の長さが8残基以下となるように構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターまたは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物または真核生物へ導入することにより発現させ、製造することができる。
【0112】
dsFvとは、VHおよびVL中のそれぞれ1アミノ酸残基をシステイン残基に置換したポリペプチドを該システイン残基間のジスルフィド結合を介して結合させたものをいう。システイン残基に置換するアミノ酸残基は既知の方法[Protein Engineering,7,697(1994)]に従って、抗体の立体構造予測に基づいて選択することができる。
【0113】
本発明のdsFvは、本発明のAβオリゴマーを特異的に認識し、かつ該細胞外領域に結合するモノクローナル抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、dsFvをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターまたは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物または真核生物へ導入することにより発現させ、製造することができる。
【0114】
CDRを含むペプチドは、VHまたはVLのCDRの少なくとも1領域以上を含んで構成される。複数のCDRを含むペプチドは、直接または適当なペプチドリンカーを介して結合させることができる。
【0115】
本発明のCDRを含むペプチドは、本発明のAβオリゴマーに特異的に結合するヒト化抗体のVHおよびVLのCDRをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターまたは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物または真核生物へ導入することにより発現させ、製造することができる。また、CDRを含むペプチドは、Fmoc法、およびtBoc法などの化学合成法によって製造することもできる。
【0116】
本発明のモノクローナル抗体には、本発明の抗Aβオリゴマーヒト化抗体またはその抗体断片に放射性同位元素、低分子の薬剤、高分子の薬剤、蛋白質、または抗体医薬などを化学的若しくは遺伝子工学的に結合させた抗体の誘導体も含まれる。
【0117】
本発明の抗体の誘導体は、本発明の抗Aβオリゴマーヒト化抗体または該抗体断片のH鎖またはL鎖のN末端側またはC末端側、抗Aβオリゴマーヒト化抗体または該抗体断片中の適当な置換基または側鎖および糖鎖などに、放射性同位元素、低分子の薬剤、高分子の薬剤、免疫賦活剤、蛋白質および抗体医薬などを化学的手法[抗体工学入門、地人書館(1994)]により結合させることにより製造することができる。
【0118】
また、本発明の抗Aβオリゴマーヒト化抗体または該抗体断片をコードするDNAと、結合させたい蛋白質または抗体医薬をコードするDNAを連結させて発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを適当な宿主細胞へ導入し、発現させる遺伝子工学的手法により、本発明の抗体の誘導体を製造することができる。
【0119】
上記抗体の誘導体を検出方法、定量方法または診断方法において、検出用試薬、定量用試薬または診断薬として使用する場合に、本発明の抗Aβオリゴマーヒト化抗体またはその抗体断片に結合する薬剤としては、通常の免疫学的検出または測定法で用いられる標識体が挙げられる。
【0120】
標識体としては、例えば、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼおよびルシフェラーゼなどの酵素、アクリジニウムエステルおよびロフィンなどの発光物質、またはフルオレセインイソチオシアネート(FITC)およびテトラメチルローダミンイソチオシアネート(RITC)などの蛍光物質などが挙げられる。
【0121】
以下に、具体的な抗体作製方法について記載する。
1.抗Aβオリゴマーモノクローナル抗体の作製
本発明において、抗Aβオリゴマーモノクローナル抗体は、以下のようにして作製することができる。
【0122】
(1)抗原の調製
抗原とするAβオリゴマーを作製する方法としては、合成Aβ1−42(ペプチド研、大阪)を蒸留脱イオン水または10mmol/L リン酸緩衝液中に溶解させ、それを37℃で18時間インキュベート後、4−12% SDS−PAGEにてペプチドを分離し、CBB染色にて可視化後、Aβ1−42モノマーの混入のないAβ1−42テトラマーのみを切り出すことにより、Aβ1−42オリゴマーを作製することができる。
【0123】
また、合成したAβ1−40ペプチドのN末端に6−Carboxytetramethylrhodamine(6−TAMRA)(SIGMA)を従来の方法を用いて化学結合させた修飾Aβ1−40を、合成Aβ1−40(ペプチド研、大阪)とともに重合反応させることにより、オリゴマーを多く含むAβ1−40オリゴマーを調製することもできる。
【0124】
(2)動物の免疫
抗原をBalb−cマウスの肉趾に対して、完全フロイントアジュバントにより乳化させた2.5μgのAβ1−42テトラマーまたはAβ1−40オリゴマーによる免疫処置を行い、続いてさらに6回の追加免疫を行う。抗体産生細胞とミエローマ細胞との融合は、公知の方法、例えば、ケーラーとミルステインらの方法(Kohler.G.and Milstein,C.、Methods Enzymol.(1981)73,3−46)等により行うことができる。具体的には、抗原を免疫したマウスの鼠径リンパ節から抗体を産生する免疫細胞を取得する。
【0125】
免疫は、動物の皮下、静脈内または腹腔内に、例えば、フロインドの完全アジュバント、または水酸化アルミニウムゲルと百日咳菌ワクチンなどの適当なアジュバントとともに抗原を投与することにより行う。
【0126】
抗原が部分ペプチドである場合には、BSA(ウシ血清アルブミン)およびKLH(Keyhole Limpet hemocyanin)などのキャリア蛋白質とコンジュゲートを作製し、これを免疫原として用いる。
【0127】
抗原を免疫する動物としてはハイブリドーマを作製することが可能であれば、いかなるものも用いることができるが、好ましくはマウス、ラット、ハムスター、ニワトリまたはラビットなどが用いられる。また、このような動物から抗体産生能を有する細胞を取得し、該細胞にin vitroで免疫を施した後に、骨髄腫細胞と融合して作製したハイブリドーマが生産する抗体なども包含される。
【0128】
(3)骨髄腫細胞の調製
骨髄腫細胞としては、マウスから得られた株化細胞を用い、例えば、8−アザグアニン耐性マウス(BALB/c由来)骨髄腫細胞株P3−X63Ag8−U1(P3−U1)[Current Topics in Microbiology and Immunology,18,1(1978)]、P3−NS1/1−Ag41(NS−1)[European J.Immunology,6,511(1976)]、SP2/0−Ag14(SP−2)[Nature,276,269(1978)]、P3−X63−Ag8653(653)[J.Immunology,123,1548(1979)]およびP3−X63−Ag8(X63)[Nature,256,495(1975)]などを用いる。
【0129】
前記骨髄腫細胞は、正常培地[グルタミン、2−メルカプトエタノール、ジェンタマイシン、FBS、および8−アザグアニンを加えたRPMI1640培地]で継代し、細胞融合の3〜4日前に正常培地に継代し、融合当日2×107個以上の細胞数を確保する。
【0130】
(4)細胞融合とモノクローナル抗体産生ハイブリドーマの調製
(2)で得られる融合用抗体産生細胞と(3)で得られる骨髄腫細胞を、ポリエチレングリコール1500を用いて融合することで、ハイブリドーマを作製することができる。
【0131】
培養後、培養上清の一部を抜き取り、後述のドットブロット法、バインディングアッセイなどのハイブリドーマの選択方法により、Aβオリゴマーに反応し、Aβモノマーに反応しない細胞群を選択する。次に、限界希釈法によりクローニングを2回繰り返し[1回目はHT培地(HAT培地からアミノプテリンを除いた培地)、2回目は正常培地を使用する]、安定して強い抗体価の認められたものをモノクローナル抗体産生ハイブリドーマとして選択する。
【0132】
(5)精製モノクローナル抗体の調製
プリスタン処理[2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン(Pristane)0.5mlを腹腔内投与し、2週間飼育する]した8〜10週令のマウスまたはヌードマウスに、(4)で得られるモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを腹腔内に注射する。
【0133】
10〜21日でハイブリドーマは腹水癌化する。このマウスから腹水を採取し、遠心分離して固形分を除去後、40〜50%硫酸アンモニウムで塩析し、カプリル酸沈殿法、DEAE−セファロースカラム、プロテインA−カラムまたはゲル濾過カラムによる精製を行ない、IgGまたはIgM画分を集め、精製モノクローナル抗体とする。
【0134】
(6)モノクローナル抗体の選択
抗体をスクリーニングする方法としては、抗体とAβオリゴマーの結合活性を指標に抗体を選択する方法が挙げられる。
【0135】
本発明の抗体の抗原(Aβオリゴマー)への結合活性は、例えば、吸光度測定法、酵素結合免疫吸着アッセイ法(ドットブロット法、ELISA)、酵素免疫アッセイ法(EIA)、放射免疫アッセイ法(RIA)、免疫蛍光法等および表面プラズモン共鳴法(SPR法)を利用したBiacore(ビアコア社製)の少なくとも1を用いて解析することができる。
【0136】
具体的には、例えば、抗Aβオリゴマーモノクローナル抗体のAβオリゴマーに対する結合は、18時間プレインキュベートした2.5μlのAβ1−42(2.5μg/ドット)をニトロセルロース膜上に固相化するドットブロット法で確認することができる。膜上の非特異結合部位を5%低脂肪乳、1%BSA及び0.05%Tween−20を含有するリン酸緩衝液でブロッキング後、培養液上清とともにインキュベートし、培養上清中のAβオリゴマー結合抗体は西洋ワサビペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウスF(ab’)
2(1:3000;Amersham)で検出し、LAS3000 mini(Fujitsu,Tokyo,Japan)を用いる高感度化学発光(ECL)キットを用いて検出できる(国際公開第2009/051220号)。
【0137】
ELISAでは、抗体をプレート上に固定し、それに対する抗原をプレートに添加し、次いで、抗体を産生する細胞の培養上清または精製抗体などの所望の抗体を含む試料を添加する。次に、一次抗体を認識しかつアルカリホスファターゼなどの酵素でタグ付加された二次抗体を添加し、プレートをインキュベーションする。洗浄後に、p−ニトロフェニルリン酸などの酵素基質をプレートに添加し、吸光度を測定して、目的試料の抗原結合能力を評価することができる。
【0138】
また、本発明において、AβモノマーではなくAβオリゴマーを特異的に検出するために、化学発光を利用するサンドイッチ固相酵素免疫アッセイ(化学発光−ELISA)を用いて、抗体の反応性を確認することもできる(国際公開第2009/051220号)。
【0139】
また、本発明において、マウスin vivoにおいて、末梢から投与されたモノクローナル抗体の有効性を評価するためには、投与マウスから入手した血漿および臓器におけるAβオリゴマー分析を、6E10−HRP標識6E10(Senetek PLC,Napa,CA,USA)ヒト特異的オリゴマーELISAを行うことも可能である(国際公開第2009/051220号)
【0140】
更に、本発明の抗Aβオリゴマーヒト化抗体が、AD脳内のAβオリゴマーに結合しうるか否かは、Aβオリゴマーを大量に含有するアミロイド分画(Matsubara E,et al;Neurobiol Aging,2004)にて免疫沈降実験(Ghiso J, et al:Biochem J,1993)を行うことで、確認することができる(国際公開第2009/051220号)。
【0141】
(7)抗Aβオリゴマー抗体の活性評価
本発明において、抗Aβオリゴマー抗体がAβオリゴマー特異的に結合し、細胞保護活性を有することは、Yamamoto N,et al:J.Biol.Chem.,282:2646−2655,2007、または国際公開第2009/051220号に記載の、AβインキュベーションおよびThTアッセイ法、Aβ誘発性神経毒性アッセイ法や、限外濾過およびゲルろ過を用いて分離された各分子サイズのAβオリゴマーに対する反応性により確認することができる。
【0142】
更に、Aβアミロイド線維形成抑制活性は、チオフラビンTアッセイおよび電子顕微鏡検査を用いて確認することができる。
【0143】
本発明において、AD脳における両抗体のAβオリゴマー捕捉能は、抗Aβオリゴマーヒト化抗体を用いた免疫沈降を行う際に、SDS安定性4−、5−、8−、12−merの存在を確認することで測定することができる。
【0144】
また、本発明において、APPswe−トランスジェニックマウス(Tg2576)におけるアルツハイマー病様表現型発症を予防する能力を確認する方法としては、本発明のヒト化抗体を該マウスに投与し、記憶障害、老人斑病変、シナプス機能不全およびAβ蓄積等のアルツハイマー様表現型を予防できるか否かを検証することが挙げられる(国際公開第2009/051220号)。
【0145】
2.遺伝子組換え抗体の作製
遺伝子組換え抗体を安定に発現する形質転換株の取得と遺伝子組換え抗体の調製は以下のようにして行うことができる。
【0146】
(1)遺伝子組換え抗体発現用ベクターの構築
遺伝子組換え抗体発現用ベクターは、ヒト抗体のCHおよびCLをコードするDNAが組み込まれた動物細胞用発現ベクターであり、動物細胞用発現ベクターにヒト抗体のCHおよびCLをコードするDNAをそれぞれクローニングすることにより構築することができる。
【0147】
ヒト抗体のC領域は任意のヒト抗体のCHおよびCLを用いることができる。例えば、ヒト抗体のγ1サブクラスのCHおよびκクラスのCLなどを用いる。ヒト抗体のCHおよびCLをコードするDNAには、cDNAを用いるが、エキソンとイントロンからなる染色体DNAを用いることもできる。
【0148】
動物細胞用発現ベクターには、ヒト抗体のC領域をコードする遺伝子を組込み発現できるものであればいかなるものでも用いることができる。例えば、pAGE107[Cytotechnol.,3,133(1990)]、pAGE103[J.Biochem.,101,1307(1987)〕、pHSG274[Gene,27,223(1984)]、pKCR[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,78,1527(1981)]、pSG1bd2−4[Cytotechnol.,4,173(1990)]およびpSE1UK1Sed1−3[Cytotechnol.,13,79(1993)]などを用いる。
【0149】
動物細胞用発現ベクターのうちプロモーターには、例えば、SV40の初期プロモーター[J.Biochem.,101,1307(1987)]、モロニーマウス白血病ウイルスLTR[Biochem.Biophys.Res.Commun.,149,960(1987)〕および免疫グロブリンH鎖のプロモーター[Cell,41,479(1985)]などを用いる。また、エンハンサーには、例えば、エンハンサー[Cell,33,717(1983)]などを用いる。
【0150】
遺伝子組換え抗体発現用ベクターには、遺伝子組換え抗体発現ベクターの構築の容易さ、動物細胞への導入の容易さ、動物細胞内での抗体H鎖およびL鎖の発現量のバランスが均衡するなどの点から、抗体H鎖およびL鎖が同一のベクター上に存在するタイプ(タンデム型)の遺伝子組換え抗体発現用ベクター[J. Immunol.Methods,167,271(1994)]を用いるが、抗体H鎖およびL鎖が別々のベクター上に存在するタイプを用いることもできる。
【0151】
タンデム型の遺伝子組換え抗体発現用ベクターには、pKANTEX93(国際公開第97/10354号)、pEE18[Hybridoma,17,559(1998)]などを用いる。
【0152】
(2)ヒト以外の動物由来の抗体のV領域をコードするcDNAの取得およびアミノ酸配列の解析
非ヒト抗体を産生するハイブリドーマからRNAを抽出し、cDNAを合成後、適当なクローニングベクターに遺伝子をクローングし、DNAシークエンサーを用いた配列解析を行うことで、VH及びVLをコードするDNA配列を決定することができる。
【0153】
決定したDNA配列からVHおよびVLの全アミノ酸配列をそれぞれ推定し、既知の抗体のVHおよびVLの全アミノ酸配列[Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Dept. Health and Human Services(1991)]と比較することにより、取得したcDNAが分泌シグナル配列を含む抗体のVHおよびVLの完全なアミノ酸配列をコードしているかをそれぞれ確認する。
【0154】
分泌シグナル配列を含む抗体のVHおよびVLの完全なアミノ酸配列に関しては、既知の抗体のVHおよびVLの全アミノ酸配列[Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept.Health and Human Services(1991)]と比較することにより、分泌シグナル配列の長さおよびN末端アミノ酸配列を推定でき、更にはそれらが属するサブグループを知ることができる。
【0155】
また、VHおよびVLの各CDRのアミノ酸配列についても、既知の抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列[Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept.Health and Human Services(1991)]と比較することによって見出すことができる。
【0156】
(3)ヒト型キメラ抗体発現ベクターの構築
(1)で得られる遺伝子組換え抗体発現用ベクターのヒト抗体のCHまたはCLをコードするそれぞれの遺伝子の上流に、それぞれ非ヒト抗体のVHまたはVLをコードするcDNAをそれぞれクローニングすることで、ヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築することができる。
【0157】
非ヒト抗体のVHまたはVLをコードするcDNAの3’末端側と、ヒト抗体のCHまたはCLの5’末端側とを連結するために、連結部分の塩基配列が適切なアミノ酸をコードし、かつ適当な制限酵素認識配列になるように設計したVHおよびVLのcDNAを作製する。
【0158】
作製されたVHおよびVLのcDNAを、(1)で得られるヒト化抗体発現用ベクターのヒト抗体のCHまたはCLをコードするそれぞれの遺伝子の上流にそれらが適切な形で発現するようにそれぞれクローニングし、ヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築する。
【0159】
また、非ヒト抗体VHまたはVLをコードするcDNAを、適当な制限酵素の認識配列を両端に有する合成DNAを用いてPCR法によりそれぞれ増幅し、(1)で得られる遺伝子組換え抗体発現用ベクターにクローニングすることもできる。
【0160】
(4)ヒト化抗体のV領域をコードするcDNAの構築
ヒト化抗体のVHまたはVLをコードするcDNAは、以下のようにして構築することができる。
【0161】
非ヒト抗体のVHまたはVLのCDRのアミノ酸配列を移植するヒト抗体のVHまたはVLのフレームワーク領域(以下、FRと表記する)のアミノ酸配列をそれぞれ選択する。選択するFRのアミノ酸配列には、ヒト抗体由来のものであれば、いずれのものでも用いることができる。
【0162】
例えば、Protein Data Bankなどのデータベースに登録されているヒト抗体のFRのアミノ酸配列、またはヒト抗体のFRの各サブグループの共通アミノ酸配列[Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept.Health and Human Services(1991)]などを用いる。
【0163】
抗体の結合活性の低下を抑えるため、元の抗体のVHまたはVLのFRのアミノ酸配列とできるだけ高い相同性(少なくとも60%以上)のFRのアミノ酸配列を選択する。
【0164】
次に、選択したヒト抗体のVHまたはVLのFRのアミノ酸配列に、もとの抗体のCDRのアミノ酸配列をそれぞれ移植し、ヒト化抗体のVHまたはVLのアミノ酸配列をそれぞれ設計する。
【0165】
設計したアミノ酸配列を抗体の遺伝子の塩基配列に見られるコドンの使用頻度[Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept.Health and Human Services(1991)]を考慮してDNA配列に変換し、ヒト化抗体のVHまたはVLのアミノ酸配列をコードするDNA配列をそれぞれ設計する。
【0166】
(5)ヒト化抗体のV領域のアミノ酸配列の改変
ヒト化抗体は、非ヒト抗体のVHおよびVLのCDRのみをヒト抗体のVHおよびVLのFRに移植しただけでは、その抗原結合活性は元の非ヒト抗体に比べて低下する[BIO/TECHNOLOGY,9,266(1991)]。
【0167】
ヒト化抗体では、ヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列の中で、直接抗原との結合に関与しているアミノ酸残基、CDRのアミノ酸残基と相互作用するアミノ酸残基、および抗体の立体構造を維持し、間接的に抗原との結合に関与しているアミノ酸残基を同定し、それらのアミノ酸残基を元の非ヒト抗体のアミノ酸残基に置換することにより、低下した抗原結合活性を上昇させることができる。
【0168】
抗原結合活性に関わるFRのアミノ酸残基を同定するために、X線結晶解析[J.Mol.Biol.,112,535(1977)]およびコンピューターモデリング[Protein Engineering,7,1501(1994)]などを用いることにより、抗体の立体構造の構築および解析を行うことができる。
【0169】
また、それぞれの抗体について数種の改変体を作製し、それぞれの抗原結合活性との相関を検討することを繰り返し、試行錯誤することで必要な抗原結合活性を有する改変ヒト化抗体を取得できる。
【0170】
ヒト抗体のVH及びVLのFRのアミノ酸残基は、改変用合成DNAを用いて(4)に記載のPCR反応を行うことにより、改変させることができる。PCR反応後の増幅産物について(2)に記載の方法により、塩基配列を決定し、目的の改変が施されたことを確認する。
【0171】
(6)ヒト化抗体発現ベクターの構築
(1)で得られる遺伝子組換え抗体発現用ベクターのヒト抗体のCHまたはCLをコードするそれぞれの遺伝子の上流に、構築した遺伝子組換え抗体のVHまたはVLをコードするcDNAをそれぞれクローニングし、ヒト化抗体発現ベクターを構築することができる。
【0172】
例えば、(4)および(5)で得られるヒト化抗体のVHまたはVLを構築する際に用いる合成DNAのうち、両端に位置する合成DNAの5’末端に適当な制限酵素の認識配列を導入することで、(1)で得られるヒト化抗体発現用ベクターのヒト抗体のCHまたはCLをコードするそれぞれの遺伝子の上流にそれらが適切な形で発現するようにそれぞれクローニングする。
【0173】
(7)遺伝子組換え抗体の一過性発現
(3)および(6)で得られる遺伝子組換え抗体発現ベクター、またはそれらを改変した発現ベクターを用いて遺伝子組換え抗体の一過性発現を行い、作製した多種類のヒト化抗体の抗原結合活性を効率的に評価することができる。
【0174】
発現ベクターを導入する宿主細胞には、遺伝子組換え抗体を発現できる宿主細胞であれば、いかなる細胞でも用いることができるが、例えばCOS−7細胞[American Type Culture Collection(ATCC)番号:CRL1651]を用いる[Methods in Nucleic Acids Res.,CRC press,283(1991)]。
【0175】
(8)遺伝子組換え抗体を安定に発現する形質転換株の取得と遺伝子組換え抗体の調製
(3)および(6)で得られた遺伝子組換え抗体発現ベクターを適当な宿主細胞に導入することにより遺伝子組換え抗体を安定に発現する形質転換株を得ることができる。
【0176】
宿主細胞への発現ベクターの導入には、エレクトロポレーション法[日本国特開平2−257891号公報、Cytotechnology,3,133(1990)]などを用いる。
【0177】
遺伝子組換え抗体発現ベクターを導入する宿主細胞には、遺伝子組換え抗体を発現させることができる宿主細胞であれば、いかなる細胞でも用いることができる。例えば、CHO−K1(ATCC CCL−61)、DUkXB11 (ATCC CCL−9096)、Pro−5(ATCC CCL−1781)、CHO−S(Life Technologies,Cat # 11619)、ラットミエローマ細胞YB2/3HL.P2.G11.16Ag.20(またはYB2/0ともいう)、マウスミエローマ細胞NSO、マウスミエローマ細胞SP2/0−Ag14(ATCC番号:CRL1581)、マウスP3X63−Ag8.653細胞(ATCC番号:CRL1580)、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子(以下、dhfrと表記する)が欠損したCHO細胞[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,77,4216(1980)]、レクチン耐性を獲得したLec13[Somatic Cell and Molecular genetics,12,55(1986)]、α1,6−フコース転移酵素遺伝子が欠損したCHO細胞(国際公開第2005/035586号、国際公開第02/31140号)およびラットYB2/3HL.P2.G11.16Ag.20細胞(ATCC番号:CRL1662)などを用いる。
【0178】
また、細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素などの蛋白質、N−グリコシド結合複合型糖鎖の還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素などの蛋白質および細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースのゴルジ体への輸送に関与する蛋白質などの活性が低下または欠失した宿主細胞、例えばα1,6−フコース転移酵素遺伝子が欠損したCHO細胞(国際公開第2005/035586号、国際公開第02/31140号)などを用いることもできる。
【0179】
発現ベクターの導入後、遺伝子組換え抗体を安定に発現する形質転換株は、G418硫酸塩(以下、G418と表記する)などの薬剤を含む動物細胞培養用培地で培養することにより選択する(日本国特開平2−257891号公報)。
【0180】
動物細胞培養用培地には、RPMI1640培地(インビトロジェン社製)、GIT培地(日本製薬社製)、EX−CELL301培地(ジェイアールエイチ社製)、IMDM培地(インビトロジェン社製)、Hybridoma−SFM培地(インビトロジェン社製)、またはこれら培地にFBSなどの各種添加物を添加した培地などを用いる。
【0181】
得られた形質転換株を培地中で培養することで培養上清中に遺伝子組換え抗体を発現蓄積させる。培養上清中の遺伝子組換え抗体の発現量および抗原結合活性はELISA法などにより測定できる。
【0182】
また、形質転換株は、DHFR増幅系(日本国特開平2−257891号公報)などを利用して遺伝子組換え抗体の発現量を上昇させることができる。
【0183】
遺伝子組換え抗体は、形質転換株の培養上清よりプロテインA−カラムを用いて精製する[Monoclonal Antibodies−Principles and practice,Third edition,Academic Press(1996)、Antibodies−A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory(1988)]。
【0184】
また、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィーおよび限外濾過などの蛋白質の精製で用いられる方法を組み合わすこともできる。
【0185】
精製した遺伝子組換え抗体のH鎖、L鎖或いは抗体分子全体の分子量は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法[Nature,227,680(1970)]およびウェスタンブロッティング法[Monoclonal Antibodies−Principles and practice,Third edition,Academic Press(1996)、Antibodies−A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory(1988)]などを用いて測定することができる。
【0186】
3.抗体のエフェクター活性を制御する方法
本発明の抗Aβオリゴマーヒト化抗体のエフェクター活性を制御する方法としては、抗体のFc領域の297番目のアスパラギン(Asn)に結合するN結合複合型糖鎖の還元末端に存在するN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)にα-1,6結合するフコース(コアフコースともいう)の量を制御する方法(国際公開第2005/035586号、国際公開第2002/31140号、国際公開第00/61739号)や、抗体のFc領域のアミノ酸残基を改変することで制御する方法、および抗体サブクラスを変更することなどが知られている。本発明の抗Aβオリゴマーヒト化抗体にはいずれの方法を用いても、エフェクター活性を制御することができる。
【0187】
エフェクター活性とは、抗体のFc領域を介して引き起こされる抗体依存性の活性をいい、抗体依存性細胞傷害活性(ADCC活性)、補体依存性傷害活性(CDC活性)や、マクロファージや樹状細胞などの食細胞による抗体依存性ファゴサイトーシス(Antibody−dependent phagocytosis,ADP活性)などが知られている。
【0188】
抗体のFcのN結合複合型糖鎖のコアフコースの含量を制御することで、抗体のエフェクター活性を増加または低下させることができる。抗体のFcに結合しているN結合複合型糖鎖に結合するフコースの含量を低下させる方法としては、α1,6−フコース転移酵素遺伝子が欠損したCHO細胞を用いて抗体を発現することで、フコースが結合していない抗体を取得する方法を用いることができる。フコースが結合していない抗体は高いADCC活性を有する。
【0189】
一方、抗体のFcに結合しているN結合複合型糖鎖に結合するフコースの含量を増加させる方法としては、α1,6−フコース転移酵素遺伝子を導入した宿主細胞を用いて抗体を発現させることで、フコースが結合している抗体を取得する方法を用いることができる。フコースが結合している抗体は、フコースが結合していない抗体よりも低いADCC活性を有する。
【0190】
また、抗体のFc領域のアミノ酸残基を改変することでADCC活性やCDC活性を増加または低下させることができる。例えば、米国特許出願公開第2007/0148165号明細書に記載のFc領域のアミノ酸配列を用いることで、抗体のCDC活性を増加させることができる。また、米国特許第6,737,056、米国特許第7,297,775号明細書または米国特許第7,317,091号明細書に記載のアミノ酸改変を行うことで、ADCC活性またはCDC活性を、増加させることも低下させることもできる。
【0191】
更に、ヒトIgGサブクラスにおいて、IgG2およびIgG4サブクラスは、IgG1やIgG3サブクラスに比べてエフェクター活性が低いことが知られており、エフェクター活性の低い抗体サブクラスのFc領域に組換えることで、エフェクター活性を低下した抗体を作製することができる。
【0192】
IgG2やIgG4サブクラスに関する抗体の安定化については、国際公開第2006/075668号、国際公開第2006/035586号などに記載の方法を用いることにより、安定でありかつエフェクター活性を制御したIgG2抗体やIgG4抗体を作製することができる。
【0193】
更に、上述の方法を組み合わせて、一つの抗体に使用することにより、抗体のエフェクター活性が制御された抗体を取得することができる。
【0194】
4.本発明の抗Aβオリゴマー抗体を用いた治療方法
アルツハイマー病に伴う記憶力低下は、可溶性Aβオリゴマーによって引き起こされるシナプス機能不全に関連することが示唆されている[Klein WL,2001,Trends Neurosci;Selkoe DJ,2002,Science]。従って、Aβオリゴマーの過度の蓄積および沈着は、アルツハイマー病を結果として引き起こす複雑な下流カスケードの引き金を引く可能性がある。
【0195】
本発明において治療とは、疾患または疾病による症状を呈する臓器、組織に対して、必ずしも完全な治療効果または予防効果を有する必要はなく、部分的な効果を有する場合であってよい。
【0196】
本発明におけるアルツハイマー病の治療とは、アルツハイマー病によって生じ得る少なくとも1つの症状を改善することであり、例えば、認知機能障害の改善および抑制、老人斑形成の改善および抑制、シナプス機能不全の改善および抑制、並びに脳組織中および血液中等におけるAβ蓄積の減少および抑制等が挙げられる。
【0197】
ここで認知機能障害には、例えば、記憶障害とされる、長期/短期記憶障害、物体認識記憶障害、空間記憶障害、および連合情緒記憶障害が含まれる。
【0198】
また、本発明の抗Aβオリゴマーヒト化抗体を用いた治療方法としては、認知機能障害を抑制する方法、アルツハイマー病を抑制する方法、アルツハイマー病の進行を抑制する方法、老人斑形成を抑制する方法、Aβの蓄積を抑制する方法、神経毒性活性を中和する(抑制する)方法、Aβアミロイド線維形成を阻害する方法およびシナプス毒性活性を中和する(抑制する)方法を挙げることができる。
【0199】
さらに他の態様として、認知機能障害の予防および治療の少なくとも一方ための方法、アルツハイマー病の予防および治療の少なくとも一方のための方法も挙げることができる。
【0200】
また、本発明の抗体または該抗体断片、またはこれらの誘導体を含有する治療剤は、有効成分としての該抗体もしくは該抗体断片、またはこれらの誘導体のみを含むものであってもよいが、通常は薬理学的に許容される1以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野において公知の方法により製造した医薬製剤として提供される。
【0201】
投与経路としては、例えば、経口投与、並びに口腔内、気道内、直腸内、皮下、筋肉内および静脈内などの非経口投与が挙げられる。
【0202】
投与形態としては、例えば、噴霧剤、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤、乳剤、座剤、注射剤、軟膏およびテープ剤などが挙げられる。
【0203】
経口投与に適当な製剤は、乳剤、シロップ剤、カプセル剤、錠剤、散剤および顆粒剤などである。
【0204】
乳剤またはシロップ剤のような液体調製物は、水、ショ糖、ソルビトールおよび果糖などの糖類、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコールなどのグリコール類、ごま油、オリーブ油および大豆油などの油類、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類などの防腐剤、並びにストロベリーフレーバーおよびペパーミントなどのフレーバー類などを添加剤として用いて製造する。
【0205】
カプセル剤、錠剤、散剤および顆粒剤などは、乳糖、ブドウ糖、ショ糖およびマンニトールなどの賦形剤、デンプンおよびアルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムおよびタルクなどの滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロースおよびゼラチンなどの結合剤、脂肪酸エステルなどの界面活性剤並びにグリセリンなどの可塑剤などを添加剤として用いて製造する。
【0206】
非経口投与に適当な製剤としては、例えば、注射剤、座剤および噴霧剤などが挙げられる。
【0207】
注射剤は、例えば、塩溶液若しくはブドウ糖溶液またはこれらの混合物からなる担体などを用いて製造する。
【0208】
座剤は、例えば、カカオ脂、水素化脂肪およびカルボン酸などの担体を用いて製造する。
【0209】
噴霧剤は受容者の口腔および気道粘膜を刺激せず、かつ本発明のモノクローナル抗体またはその抗体断片を微細な粒子として分散させ、吸収を容易にさせる担体などを用いて製造する。
【0210】
担体としては、例えば、乳糖およびグリセリンなどが挙げられる。また、エアロゾルまたはドライパウダーとして製造することもできる。
【0211】
さらに、上記非経口剤においても、経口投与に適当な製剤で添加剤として例示した成分を添加することもできる。
【実施例1】
【0212】
抗Aβオリゴマーヒト化抗体の作製
(1)抗Aβオリゴマーヒト化抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列の設計
抗Aβオリゴマーヒト化抗体のVHのアミノ酸配列を以下のようにして設計した。
初めに、Kabatら[Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Dept. Health and Human Services(1991)]の報告に基づいて、参考例で作製された抗Aβオリゴマーマウスモノクローナル抗体4H5抗体のVHのアミノ酸配列(配列番号8)のCDR配列を決定した。その結果、VHのCDR1〜3を配列番号1〜3とした。
【0213】
次に、VHのCDR1〜3のアミノ酸配列(配列番号1〜3)を移植するために、ヒト抗体のVHのFRのアミノ酸配列を選択した。配列解析システムとしてGCG Package(ジェネティック・コンピューター・グループ社製)を用いて、既存の蛋白質のアミノ酸データベースをBLASTP法[Nucleic Acid Res.,25,3389(1997)]により4H5VHと相同性の高いヒト抗体を検索した。
【0214】
相同性スコアと実際のアミノ酸配列の相同性を比較したところ、SWISSPROTデータベースアクセッションナンバー:CAA67407、immunoglobulin gamma heavy chain(以下、CAA67407と表記)が80.5%を示し、最も相同性の高いヒト抗体であったため、この抗体のFRのアミノ酸配列を選択した。
【0215】
以上のようにして決定したヒト抗体のFRのアミノ酸配列の適切な位置に、4H5のVHのCDRのアミノ酸配列(配列番号1〜3)を移植した。このようにして、抗Aβオリゴマー4H5ヒト化抗体のVHのアミノ酸配列4H5HV0(配列番号12)を設計した。
【0216】
次に、H鎖と同様にして、VLのアミノ酸配列(配列番号10)のCDR1〜3の配列を配列番号4〜6と決定し、抗Aβオリゴマー4H5ヒト化抗体のVLのアミノ酸配列を以下のようにして設計した。4H5抗体のVLのCDR1〜3のアミノ酸配列(配列番号4〜6)を移植するために、ヒト抗体のVLのFRのアミノ酸配列を選択した。
【0217】
カバットらは、既知の様々なヒト抗体のVLをそのアミノ酸配列の相同性からサブグループ(HSG I〜IV)に分類し、それらのサブグループ毎に共通配列を報告している[Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Dept. Health and Human Services(1991)]。
【0218】
そこで、ヒト抗体のVLのサブグループI〜IVの共通配列のFRのアミノ酸配列と4H5VLのFRのアミノ酸配列との相同性検索を実施した。相同性を検索した結果、HSGI、HSGII、HSGIII、およびHSGIVの相同性はそれぞれ68.8%、86.3%、68.8%、76.3%であった。従って、4H5VLのFRのアミノ酸配列はサブグループIIと最も高い相同性を有していた。
【0219】
以上の結果から、ヒト抗体のVLのサブグループIIの共通配列のFRのアミノ酸配列の適切な位置に、4H5VLのCDRのアミノ酸配列(配列番号4〜6)を移植した。
【0220】
しかし、4H5VLのアミノ酸配列(配列番号10)中の109番目のLeuは、カバットらが挙げるヒト抗体FRのアミノ酸配列の相当する部位において、最も使用される頻度が高いアミノ酸残基ではないが、比較的高い頻度で使用されるアミノ酸残基である。
したがって、上記の4H5のアミノ酸配列で認められるアミノ酸残基を用いることとした。このようにして、抗Aβオリゴマー4H5ヒト化抗体のVLのアミノ酸配列4H5LV0(配列番号14)を設計した。
【0221】
上記で設計した抗Aβオリゴマー4H5ヒト化抗体のVHのアミノ酸配列4H5HV0およびVLのアミノ酸配列4H5LV0は、選択したヒト抗体のFRのアミノ酸配列に抗Aβオリゴマーマウスモノクローナル抗体である4H5のCDRのアミノ酸配列のみを移植した配列である。
【0222】
しかし、一般に、ヒト化抗体を作製する場合には、単なるヒト抗体のFRへのマウス抗体のCDRのアミノ酸配列の移植のみでは結合活性が低下してしまうことが多い。
【0223】
このため、結合活性の低下を回避するため、CDRのアミノ酸配列の移植とともに、ヒト抗体とマウス抗体で異なっているFRのアミノ酸残基のうち、結合活性に影響を与えると考えられるアミノ酸残基を改変することが行われている。
【0224】
そこで、本実施例でも、結合活性に影響を与えると考えられるFRのアミノ酸残基を以下のようにして同定した。
【0225】
まず、上記で設計した抗Aβオリゴマー4H5ヒト化抗体のVHのアミノ酸配列4H5HV0およびVLのアミノ酸配列4H5LV0よりなる抗体V領域(以下、HV0LV0と表す)の三次元構造をコンピューターモデリングの手法を用いて構築した。
【0226】
三次元構造座標作製および三次元構造の表示には、Discovery Studio(アクセルリス社製)を添付の使用説明書に従い、用いた。また、抗Aβオリゴマーマウスモノクローナル抗体4H5のV領域の三次元構造のコンピューターモデルも同様にして構築した。
【0227】
更に、HV0LV0のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列の中で、4H5と異なっているアミノ酸残基を選択し、4H5のアミノ酸残基へ改変したアミノ酸配列を作製し、同様に三次元構造モデルを構築した。
【0228】
これら作製した4H5、HV0LV0および改変体のV領域の三次元構造を比較し、抗体の結合活性に影響を与えると予測されるアミノ酸残基を同定した。
【0229】
その結果、HV0LV0のFRのアミノ酸残基の中で抗原結合部位の三次元構造を変化させ、抗体の結合活性に影響を与えると考えられるアミノ酸残基として、4H5HV0では配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeu、46番目のGln、48番目のMet、49番目のVal、77番目のSer、93番目のVal、および98番目のArgを、4H5LV0では2番目のIle、3番目のVal、15番目のPro、50番目のGln、および105番目のGlnをそれぞれ選択した。
【0230】
これらの選択したアミノ酸残基のうち、少なくとも1つ以上のアミノ酸配列を4H5の同じ部位に存在するアミノ酸残基へ改変し、様々な改変を有するヒト化抗体のVHおよびVLを設計した。
【0231】
具体的には、VHについては、配列番号12で示されるアミノ酸配列の18番目のLeuをArgに、46番目のGlnをGluに、48番目のMetをValに、49番目のValをAlaに、77番目のSerをAsnに、93番目のValをMetに、および98番目のArgをGlyに置換するアミノ酸改変のうち、少なくとも1つの改変を導入した。
【0232】
また、VLについては、配列番号14で示されるアミノ酸配列の2番目のIleをValに、3番目のValをLeuに、15番目のProをLeuに、50番目のGlnをLysに、および105番目のGlnをGlyに置換するアミノ酸改変のうち、少なくとも1つの改変を導入した。
【0233】
HV0LV0のFRに存在する、少なくとも1つのアミノ酸残基を改変した抗Aβオリゴマー4H5ヒト化抗体の抗体V領域として、HV0LV0、HV0LV1a、HV0LV1b、HV0LV1c、HV0LV3、HV0LV5、HV2LV0、HV2LV1a、HV2LV1b、HV2LV1c、HV2LV3、HV2LV5、HV3LV0、HV3LV1a、HV3LV1b、HV3LV1c、HV3LV3、HV3LV5、HV4LV0、HV4LV1a、HV4LV1b、HV4LV1c、HV4LV3、HV4LV5、HV5aLV0、HV5aLV1a、HV5aLV1b、HV5aLV1c、HV5aLV3、HV5aLV5、HV5bLV0、HV5bLV1a、HV5bLV1b、HV5bLV1c、HV5bLV3、HV5bLV5、HV6LV0、HV6LV1a、HV6LV1b、HV6LV1c、HV6LV3、HV6LV5、HV7LV0、HV7LV1a、HV7LV1b、HV7LV1c、HV7LV3、およびHV7LV5をそれぞれ設計した。
【0234】
H鎖可変領域HV2、HV3,HV4,HV5a、HV5b,HV6、HV7のアミノ酸配列およびL鎖可変領域LV1a、LV1b、LV1c、LV3、LV5のアミノ酸配列をそれぞれ
図1および2に示した。
【0235】
(2)抗Aβオリゴマーヒト化抗体の作製
抗Aβオリゴマーヒト化抗体の可変領域のアミノ酸配列をコードするDNAは、4H5VHおよび4H5VLのアミノ酸配列をコードするDNA(配列番号7、9)で用いられているコドンを利用し、アミノ酸改変を行う場合は、哺乳動物細胞において高頻度で使用されるコドンを用いて、作製した。
【0236】
抗Aβオリゴマー4H5ヒト化抗体の4H5HV0および4H5LV0のアミノ酸配列をコードするDNA配列を配列番号11および13にそれぞれ示す。また、アミノ酸改変を行った可変領域の作製には、4H5VHおよび4H5VLのアミノ酸配列をコードするDNAで用いられているコドンを使用した。
【0237】
これらDNA配列を用いて、ヒト化抗体の発現ベクターの構築およびヒト化抗体の発現をそれぞれ行った。
【0238】
(3)抗Aβオリゴマーヒト化抗体のVHをコードするcDNAの構築
上記(1)で設計した配列番号12に表される抗Aβオリゴマーヒト化抗体のVHのアミノ酸配列4H5HV0、および上記(2)の方法により設計した
図1に示されるHV5a、およびHV6をコードするcDNAを全合成にて作成した。
【0239】
(4)抗Aβオリゴマーヒト化抗体のVLをコードするcDNAの構築
上記(1)で設計した配列番号14に表される抗Aβオリゴマーヒト化抗体のVLのアミノ酸配列4H5LV0、および上記(2)の方法により設計した
図2に示されるLV1b、およびLV3をコードするcDNAを全合成にて作成した。
【0240】
(5)抗Aβオリゴマーヒト化抗体発現ベクターの構築
国際公開第97/10354号に記載のヒト化抗体発現用ベクターpKANTEX93の適当な位置に上記(3)および(4)で得られた4H5HV0、HV5aおよびHV6のいずれか1をコードするcDNA、並びに4H5LV0、LV1bおよびLV3のいずれか1をコードするcDNAを挿入し、各種抗Aβオリゴマーヒト化抗体発現ベクターを構築した。
【0241】
(6)動物細胞を用いた抗Aβオリゴマーヒト化抗体の発現
上記(5)で得られた抗Aβオリゴマーヒト化抗体発現ベクターを用いて抗Aβオリゴマーヒト化抗体の動物細胞での発現を、常法[Antibody Engineering, A Practical Guide,W.H. Freeman and Company(1992)]により行い、抗Aβオリゴマーヒト化抗体(HV0LV0、HV5aLV0、HV5aLV1b、HV5aLV3、HV6LV0、HV6LV1bおよびHV6LV3)を産生する形質転換株を取得した。
【0242】
発現させる動物細胞株としては、α1,6−フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)の遺伝子をダブルノックアウトしたCHO/DG44細胞株(以下、FUT8ノックアウトCHO細胞)を用いた。この宿主細胞株で発現させた抗体のN−結合型複合型糖鎖のコア部分には、フコースが付加されないことが知られている(国際公開第2002/31140号)。
【0243】
(7)精製抗Aβオリゴマーヒト化抗体取得
本実施例(6)で得られた形質転換株を、通常の培養法で培養した後、細胞懸濁液を回収し、3000rpm、4℃の条件で20分間の遠心分離を行い、培養上清を回収した後、0.22μm孔径Millex GVフィルターを通して濾過滅菌した。
【0244】
0.8cm径のカラムにProsep vA High Capacity(Millipore社製)0.5mLを充填し、精製水5.0mLおよびPBSバッファー(pH7.4)5.0mLを順次通塔し、担体の平衡化を行った。
【0245】
次に、上記培養上清をカラムに通塔した後、PBSバッファー(pH7.4)5.0mLで洗浄した。洗浄後、0.1mol/Lクエン酸緩衝液(pH 5.0)、0.1Mクエン酸緩衝液(pH 3.5)、0.1Mクエン酸緩衝液(pH 3.0)の順に各2.0mLを用いて担体に吸着した抗体の溶出を行った。
【0246】
溶出は500μLずつ、4画分に分けて取得した。次に、得られた精製画分のSDS−PAGE解析を行い、目的蛋白質の溶出が確認された画分をまとめ、150mmol/LNaCl、10mmol/L クエン酸Na溶液(pH6.0)を用いて、4℃で一昼夜透析を行った。
【0247】
透析後、抗Aβオリゴマーヒト化抗体溶液を回収し、0.22μm孔径Millex GV(MILLIPORE社)を用いて滅菌濾過した後に、280nmの吸光度(OD280nm)を吸光光度計(SHIMADZU UV−1700)を用いて測定し、各精製抗Aβオリゴマーヒト化抗体濃度を算出した。
【0248】
その結果、抗体のVHが4H5HV0、VLが4H5LV0からなる抗Aβオリゴマーヒト化抗体HV0LV0、抗体のVHがHV5a、VLがLV0からなるHV5aLV0、抗体のVHがHV5a、VLがLV1bからなるHV5aLV1b、抗体のVHがHV5a、VLがLV3からなるHV5aLV3、抗体のVHがHV6、VLがLV0からなるHV6LV0、抗体のVHがHV6、VLがLV1bからなるHV6LV1b、および抗体のVHがHV6、VLがLV3からなるHV6LV3の7種類を作製した。
【実施例2】
【0249】
抗原の作製
(1)Aβオリゴマーの調製
Amyloid β−Protein, Human 1−42ペプチド(ペプチド研究所社製)を、ヘキサフロロイソプロパノールを用いて1mmol/Lとなるよう調製した。調製した溶液を10分間ソニケーションした後、室温で一晩風乾させた。次に、ジメチルスルホキシドを4μL添加し、3分間ソニケーションを実施した。調製した溶液に酢酸溶液(pH4.5)200μL添加し、4℃の条件で一晩静置保存することで、Aβオリゴマーを調製した。
【0250】
(2)Aβモノマーの調製
Biotin−beta−Amyloid, Human 1−40(AnaSpec社製)を、0.1%アンモニア水を用いて250μmol/Lとなるよう調製した。調製した溶液を5分間ソニケーションした後、16000rpm、4℃の条件で60分間の遠心分離を行い、上清を回収することでAβモノマーを調製した。
【実施例3】
【0251】
抗Aβオリゴマーヒト化抗体の活性評価
(1)ビアコアによる抗Aβオリゴマーヒト化抗体のAβオリゴマーへの結合活性評価
各抗Aβオリゴマーヒト化抗体(HV0LV0、HV5aLV0、HV5aLV1b、HV5aLV3、HV6LV0、HV6LV1bおよびHV6LV3)のAβオリゴマーに対する結合活性を反応速度論的に解析するため、表面プラズモン共鳴法(SPR法)を用いて結合活性測定を行った。
【0252】
以下の操作は全てBiacore T100(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用いて行った。実施例2(1)で得られたAβオリゴマーを、アミンカップリング法によりCM5センサーチップ(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)に固定化した。
【0253】
Aβオリゴマーを固定化したチップに30 μg/mLから2倍希釈で段階的に希釈して8濃度に調製した測定サンプル(HV0LV0、HV5aLV0、HV5aLV1b、HV5aLV3、HV6LV0、HV6LV1bおよびHV6LV3)をマルチカイネティクスの自動プログラムに従い低濃度から順に連続添加して測定した。
【0254】
装置添付の解析ソフトBiacore T100 Evaluation software(Biacore社製)を用い、Bivalent Analyteモデルで解析し、各抗体のAβオリゴマーに対する結合速度定数ka及び解離速度定数kdを算出した。
【0255】
その結果得られた各抗体の結合速度定数ka1、解離速度定数kd1および解離定数KD(kd1/ka1)を表1に示す。
【0256】
【表1】
【0257】
表1に示すように、各抗Aβオリゴマーヒト化抗体(HV0LV0、HV5aLV0、HV5aLV1b、HV5aLV3、HV6LV0、HV6LV1bおよびHV6LV3)はいずれも、Aβオリゴマーに対し、1.2×10
−7から5.5×10
−8mol/Lのアフィニティーでの結合能を示した。
【0258】
(2)ビアコアによる抗Aβオリゴマーヒト化抗体のAβモノマーへの結合活性評価
各抗Aβオリゴマーヒト化抗体(HV0LV0、HV5aLV0、HV5aLV1b、HV5aLV3、HV6LV0、HV6LV1bおよびHV6LV3)のAβモノマーに対する結合活性を解析するため、本実施例(1)と同様の手法により結合活性測定を行った。また対照抗体として抗Aβ抗体6E10(COVANCE社製)の測定を行った。
【0259】
実施例2(2)で得られたAβモノマーを、ビオチンキャプチャー法によりSAセンサーチップ(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)に固定化した。Aβモノマーを固定化したチップに30μg/mLから2倍希釈で段階的に希釈して5濃度に調製した測定サンプル(HV0LV0、HV5aLV0、HV5aLV1b、HV5aLV3、HV6LV0、HV6LV1bおよびHV6LV3)をマルチカイネティクスの自動プログラムに従い低濃度から順に連続添加して測定した。センサーグラムを
図3および
図4に示す。
【0260】
図3および
図4に示すように、4種類の抗Aβオリゴマーヒト化抗体(HV0LV0、HV5aLV0、HV5aLV1b、HV5aLV3、HV6LV0、HV6LV1bおよびHV6LV3)はいずれもAβモノマーへの結合能を示さないことが明らかとなった。
【0261】
[参考例]
1.抗原の作製
Aβ 1−40ペプチドを合成し、そのN末端に蛍光色素6−Carboxytetramethylrhodamine(6−TAMRA)(SIGMA)を化学結合した化合物を作製した。この化合物を、Aβ1−40ペプチド(ペプチド研)とともに重合反応させることにより、オリゴマーを多く含む標品(Aβ1−40オリゴマー)を調製した。
【0262】
2.抗体産生ハイブリドーマの作製
上述の方法で作製した抗原をBalb−cマウスの肉趾に対して、免疫処置を行い、続いてさらに6回の追加免疫を行った。鼠径リンパ節を用いて、ポリエチレングリコール1500を用いたSp2/O−Ag14細胞との融合によってハイブリドーマを作製した。
【0263】
3.ドットブロット解析
初期スクリーニングは、18時間プレインキュベートした2.5μlのAβ1−42(2.5μg/ドット)をニトロセルロース膜上に固相化するドットブロット解析で行った。膜上の非特異結合部位を5%低脂肪乳、1%BSA及び0.05%Tween−20を含有するリン酸緩衝液でブロッキング後、培養液上清とともにインキュベートした。
【0264】
培養上清中のAβオリゴマー結合抗体は西洋ワサビペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウスF(ab’)
2(1:3000;Amersham)で検出し、LAS3000 mini(Fujitsu,Tokyo,Japan)を用いる高感度化学発光(ECL)キットによって描出した。これにより、抗Aβオリゴマーマウスモノクローナル抗体4H5を確立した。
【0265】
上記の参考例は、PCT/JP2009/52039(国際公開第2009/099176号)に記載されている。
【0266】
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更および変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお、本出願は、2009年8月7日付けで出願された米国仮出願(61/232,027号)に基づいており、その全体が引用により援用される。