(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記無機材料の、前記所定パターンのエッチングストッパ層で覆われていない部分をエッチングにより除去した後、前記無機材料を前記アルカリ溶液によって狭小化する前に、前記エッチングストッパ層を除去する、請求項3から6のいずれか1項に記載のマスクの作成方法。
前記基板の上にアルカリ溶液に可溶な無機材料を成膜するステップでは、前記アルカリ溶液に対するエッチングレートが相対的に早い第1の無機材料と、前記アルカリ溶液に対するエッチングレートが相対的に遅い第2の無機材料と、をこの順に形成する、請求項1から8のいずれか1項に記載のマスクの作成方法。
請求項1から10のいずれか1項に記載のマスクの作成方法により、第1の薄膜が形成された基板の上に、アルカリ溶液に可溶な無機材料を有するマスクを作成するステップと、
前記第1の薄膜の該マスクで覆われていない部分を除去して、前記第1の薄膜をパターニングするステップと、を含む、薄膜のパターニング方法。
前記第1の薄膜をパターニングするステップの後に、前記第1の薄膜が除去された部分および前記マスク上に前記第2の薄膜を形成することを含む、請求項11または12に記載の薄膜のパターニング方法。
前記第2の薄膜を形成した後に、前記マスク上に形成された前記第2の薄膜の少なくとも一部が露出するように、前記基板の上に形成された前記第2の薄膜をレジストで覆うステップと、
前記マスク上で前記レジストから露出している前記第2の薄膜の一部を除去して前記マスクの一部を露出させるステップと、
アルカリ溶液によって前記マスクを除去して、前記第1の薄膜と前記レジストとの間に空間を形成するステップと、
前記レジストとともに、前記マスク上に形成されていた、前記レジストに付着した前記第2の薄膜を除去するステップと、を含む、請求項13に記載の薄膜のパターニング方法。
前記レジストに付着した前記第2の薄膜を除去するステップは、前記第1の薄膜をパターニングするステップにおいて前記マスク上に付着した付着物を除去することを含む、請求項14に記載の薄膜のパターニング方法。
【背景技術】
【0002】
例えば、磁気記録装置に用いられる薄膜磁気ヘッドなどのマイクロデバイスは、基板の上に形成された薄膜を所定の形状にパターニングすることによって製造される。具体的には、各膜は、めっき法やスパッタ法などの成膜技術、フォトリソグラフィ法のようなパターニング技術、エッチングならびに化学機械研磨(CMP)法などの除去技術を使用して形成される。
【0003】
基板上に形成された薄膜のパターニングには、例えば、フォトリソグラフィ法が利用される。具体的には、まず、基板の上に薄膜を塗布し、この薄膜上にフォトレジストを塗布する。そして、所定の開口パターンを有するフォトマスクを用いて、フォトレジストを所定のパターンに露光する。その後、フォトレジストを現像することにより、所定パターンのフォトレジストを薄膜上に形成する。それから、フォトレジストで覆われていない薄膜の部分を、エッチングなどにより除去することで、薄膜を所定の形状にパターニングすることができる。
【0004】
上記薄膜磁気ヘッドなどのマイクロデバイスでは、基板の上に形成される薄膜を微小にパターニングしたいという要望がある。
【0005】
しかしながら、フォトリソグラフィ法を用いたパターンニングでは、パターンニングされる薄膜の狭小化のサイズに下限が生じる。すなわち、光学的理論限界、つまり回折限界によって、フォトレジストへの露光パターンの狭小化に限界がある。このため、比較的幅広なフォトレジストパターンしか形成することができず、その結果、パターンニングされる薄膜の狭小化について限界があった。
【0006】
特許文献1は、より狭小なパターンを有するレジストパターンを作製する方法、および薄膜パターンを狭小化する方法を開示している。具体的には、基板上に被ミリング薄膜を形成する。次いで、被ミリング薄膜上にポリメチルグルタルイミド(PMGI)層を塗布する。次いで、PMGI層上にフォトレジスト層を塗布する。その後、所定パターンのマスクを介して、フォトレジスト層を例えば紫外線(UV)によって露光する。次いで、フォトレジスト層に対して現像処理を行うとともに、フォトレジスト層から露出したPMGI層をアルカリ水溶液などで除去することによって、プレレジストパターンを得る。その後、プレレジストパターンに対してアッシング処理を施して、プレレジストパターンを狭小化する。
【0007】
上記のように、フォトリソグラフィ法によって形成されたプレレジストパターンにアッシング処理を施すことによって、光学的理論限界よりも狭小なレジストパターンを得ることが出来る。このレジストパターンを用いて、被ミリング薄膜をパターニングすることで、より微細なパターニングが可能である。また、プレレジストパターンの下部、つまりPMGI層がアッシングにより比較的小さくなり、T字形状のプレレジストパターンが形成されている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、薄膜をパターニングするためのマスクの作成方法、薄膜のパターニング方法およびマイクロデバイスの製造方法を、薄膜磁気ヘッドに用いられる磁気抵抗効果(MR)素子等の製造を例に挙げて説明する。本発明は、薄膜磁気ヘッドのみならず、任意のマイクロデバイスの製造に適用できる。
【0020】
まず、本発明の方法を用いて製造されるMR素子を含んだ薄膜磁気ヘッドの構成の一例について説明する。
図1は、エアベアリング面200に直交する面における、薄膜磁気ヘッド291の概略断面図である。ここで、エアベアリング面200とは、記録媒体262の信号を読み取る際に、記録媒体262と対向する薄膜磁気ヘッド291の一面のことである。
【0021】
薄膜磁気ヘッド291は、記録媒体262に磁気情報を書き込む書込素子293と、記録媒体262に書き込まれた磁気情報を読み出す読出素子10と、を有している。この代わりに、薄膜磁気ヘッド291は、読出素子10のみを有するものであっても良い。
【0022】
図2は、エアベアリング面200から見た読出素子10の一面を示している。読出素子10は、磁気抵抗効果素子20と、MR素子20の膜面直交方向PにMR素子20を挟んで設けられた、下部及び上部シールド層40,50と、を有している。
【0023】
MR素子20のトラック幅方向Tの両側には、MR素子20にバイアス磁界を印加する磁性層82が設けられている。ここで、トラック幅方向Tとは、MR素子20が記録媒体262に面しているときに、記録媒体262の記録トラックが延在している方向に直交する方向である(
図2参照)。磁性層82と下部シールド層40との間、および磁性層82とMR素子20との間には、絶縁層80が設けられている。
【0024】
MR素子20としては、センス電流を素子の膜面と平行方向に流すCIP(Current In Plane)素子や、センス電流を素子の膜面と直交する方向Pに流すCPP(Current Perpendicular to the Plane)素子がある。一例として、CPP素子は、外部磁界に応じて磁化方向が変化する磁性層(フリー層)と、磁化方向が固定された磁性層(ピンド層)と、ピンド層とフリー層との間に挟まれた非磁性中間層と、を含む積層体からなる。また、ピンド層の磁化方向を固定するため、積層体は反強磁性層(ピンニング層)を備えている。フリー層の磁化方向は外部磁界に応じて変化し、ピンド層の磁化方向とのなす相対角度が変化する。これによりMR素子20の電気抵抗が変化する。この性質を利用して、MR素子20は外部磁界を検出できる。この例に限定されず、MR素子20は、磁気抵抗効果を示す素子であれば、どのような構成であっても良い。
【0025】
次に、
図1を参照して、書込素子293の構成について詳細に説明する。書込素子293は、読出素子10の上に、スパッタ法等によって形成された素子間シールド126を介して設けられている。書込素子293はいわゆる垂直磁気記録用の構成を有している。書込のための磁極層は主磁極層121と補助磁極層122とからなる。これらの磁極層121,122は、フレームめっき法等によって形成される。主磁極層121は、例えばFeCoから形成され、エアベアリング面200において、エアベアリング面200とほぼ直交する向きで露出している。主磁極層121の周囲には、絶縁材料からなるギャップ層124の上を延びるコイル層123が巻回しており、コイル層123によって主磁極層121に磁束が誘導される。コイル層123は、フレームめっき法等によって形成される。この磁束は、主磁極層121の内部に導かれ、エアベアリング面200から記録媒体262に向けて延びている。主磁極層121は、エアベアリング面200付近で、膜面直交方向Pだけでなく、トラック幅方向T(
図1における紙面直交方向。)にも絞られており、高記録密度化に対応した微細で強い書込磁界を発生する。
【0026】
補助磁極層122は主磁極層121と磁気的に結合した磁性層である。補助磁極層122は主磁極層121から分岐して設けられ、エアベアリング面200側ではギャップ層124及びコイル絶縁層125を介して主磁極層121と対向している。補助磁極層122のエアベアリング面200側の端部は、補助磁極層122の他の部分より層断面が広いトレーリングシールド部を形成している。このような補助磁極層122を設けることによって、エアベアリング面200近傍において、補助磁極層122と主磁極層121との間の磁界勾配がより急峻になる。
【0027】
以下、本発明のマスクの作成方法、薄膜のパターニング方法およびマイクロデバイスの製造方法の好適な第1の実施形態を、上記の薄膜磁気ヘッドに用いられるMR素子等の製造方法を例に挙げて説明する。本実施形態では、多数個取りのウエハ(
図28も参照)上で、MR素子20を形成することが好ましい。
【0029】
なお、
図5(a)、
図6(a)・・・
図15(a),
図17(a),
図18(a)・・・
図20(a)は、マイクロデバイスの断面図、例えば、薄膜磁気ヘッド291のエアベアリング面200となるべき面に沿ったウエハの断面図である。
図5(b)、
図6(b)・・・
図15(b),
図17(b),
図18(b)・・・
図20(b)は、上記マイクロデバイスの断面と直交する方向に切ったウエハの断面図、例えば、上記薄膜磁気ヘッド291のエアベアリング面200となるべき面と直交する方向300に切ったウエハの断面図である。
図5(c)、
図6(c)・・・
図15(c),
図17(c),
図18(c)・・・
図20(c)は、マイクロデバイスの上面図、例えば、薄膜磁気ヘッド291のウエハの上面図である。
【0030】
まず、
図5(a),
図5(b),
図5(c)に示すように、基板40の上に、第1の薄膜20を成膜する。第1の薄膜20は、例えばスパッタリングにより堆積される。なお、基板とは、基板単体のみならず、基板上において薄膜やマイクロデバイスを構成する所定の下地層が形成されている場合も含む。マイクロデバイスとして薄膜磁気ヘッドを製造する目的では、基板40を下部シールド層40に、第1の薄膜20を外部磁場に応じて電気抵抗が変化する積層膜20に置き換えれば良い。一例として、積層膜20は、外部磁界に対して磁化方向が固定された下部磁性層と、非磁性中間層と、外部磁界に応じて磁化方向が変化する上部磁性層とを含んでおり、外部磁場に応じて電気抵抗が変化する。以下の説明では、“基板”の代わりに“下部シールド層”と称し、“第1の薄膜”の代わりに“積層膜”と称することがある。
【0031】
次に、上記の第1の薄膜20をパターニングするためのマスクを作成する(
図3も参照)。まず、
図6(a),
図6(b),
図6(c)に示すように、第1の薄膜20が形成された基板40の上に、アルカリ溶液に可溶な無機材料62を成膜する(ステップS1)。無機材料62は例えば低温原子層蒸着法または高温原子層蒸着法により形成できる。無機材料62は、Al
2O
3、ZnO、SnO、SnO
2、PbO、PbO
2、Pb
3O
4、MgO、Nb
2O
5、Ta
2O
5、TiO
2、WO
3から選択された無機酸化物、またはこれらの2以上の組み合わせを用いることができる。
【0032】
次に、無機材料62を所定パターンに形成する(ステップS2)。無機材料62を所定パターンに形成する方法の好ましい一例が、
図4のフローチャートに示されている。
【0033】
具体的には、まず、
図7(a),
図7(b),
図7(c)に示すように、無機材料62の上にエッチングストッパ層64を成膜する(ステップS21)。エッチングストッパ層64は、後に無機材料62をエッチングする際に、エッチング耐性を有する材料を用いる。
【0034】
次に、
図8(a),
図8(b),
図8(c)に示すように、例えばフォトリソグラフィ法によってエッチングストッパ層64の上に所定パターンのフォトレジスト66を形成する(ステップS22)。フォトレジスト66は、ポジ型レジストであっても良く、ネガ型レジストであっても良い。また、フォトレジスト66は、モノレイヤー型のものであってもバイレイヤー型のものであってもよい。
【0035】
次に、
図9(a),
図9(b),
図9(c)に示すように、エッチングストッパ層64の、フォトレジスト66で覆われていない部分を除去して、所定パターンのエッチングストッパ層64を形成する(ステップS23)。エッチングストッパ層64は、フォトレジスト66のパターンに対応するパターンに形成される。エッチングストッパ層64は例えばミリングによって除去することができる。
【0036】
次に、
図10(a),
図10(b),
図10(c)に示すように、必要であれば、エッチングストッパ層64上のフォトレジスト66を除去する。フォトレジスト66は、リフトオフ法によって除去することができる。この段階に限らず、フォトレジスト66の除去は、適当な段階で行うことができる。特に、フォトレジスト66の除去は、好ましくは後に説明する第1の薄膜20のパターニングの前、より好ましくは無機材料62の狭少化の前までに行うことができる。
【0037】
次に、
図11(a),
図11(b),
図11(c)に示すように、無機材料62の、エッチングストッパ層64で覆われていない部分をエッチングにより除去する(ステップS24)。無機材料62は例えば反応性イオンエッチングにより除去することができる。この場合、エッチングストッパ層64としては、反応性イオンエッチングに対して耐性を有する材料を用いることが好ましい。一例として、エッチングストッパ層64は、Niおよび/またはNiFeを用いることができる。
【0038】
無機材料62の、所定パターンのエッチングストッパ層64で覆われていない部分をエッチングにより除去した後であって、無機材料62をアルカリ溶液によって狭小化する後述のステップS3の前に、エッチングストッパ層64を除去することが好ましい(
図12(a),
図12(b),
図12(c)参照)。エッチングストッパ層64は例えばFeCl
2によるエッチングで除去できる。エッチングストッパ層64は、第1の薄膜20のパターニングが終わった後に、無機材料62からなるマスクとともに除去しても良い。マスクの除去については後述する。
【0039】
この後、
図13(a),
図13(b),
図13(c)に示すように、所定パターンの無機材料62をアルカリ溶液によって狭小化してマスク63を形成する(ステップS3)。アルカリ溶液は、無機材料62を狭小化できるものであれば、無機現像液や有機現像液などのどのような材料でも使用できる。例えばアルカリ溶液として水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液を用いることができる。
【0040】
アルカリ溶液は、無機材料62の大きさを調節する目的のため、エッチングレートが小さいもの、例えば比較的濃度が薄いものであることが好ましい。上記のように狭小化されたマスク63は、第1の薄膜20をパターニングする際のマスクとして利用することができる。マスク63を構成する無機材料は、一般に、有機材料よりも強度が高いため、狭小化されマスクとして用いられたときの安定性が高いという利点がある。その結果、マスク63が傾いたり倒れたりすることを防止できる。
【0041】
また、ガスによるアッシングではなく、アルカリ溶液によって無機材料62を狭小化し、マスク63を形成するため、ウエハ上で一括して第1の薄膜20をパターニングする際にも、ウエハの中央部と外周部とでマスク63の幅や形状にばらつきが生じることを抑制できる。その結果、このマスク63を使用してパターニングされた薄膜やマイクロデバイスの形状のばらつきが抑制される。
【0042】
無機材料62の上にエッチングストッパ層64が残っていれば、無機材料62の狭小化の処理の際に、無機材料62の高さの低下を防止することができる。この場合、マスク63を使用する際に十分な厚みを確保し易いという利点がある。
【0043】
次に、上記のように狭小化されたマスク63を用いて、第1の薄膜20をパターニングする方法について説明する。
図14(a),
図14(b),
図14(c)に示すように、第1の薄膜20のマスク63で覆われていない部分を除去する。これにより、基板40上の第1の薄膜20を所定の形状にパターニングすることができる。ここでは、第1の薄膜20のトラック幅方向Tの両側が除去されている。これにより、第1の薄膜20、例えばMR素子のトラック幅方向Tの幅を部分的に狭小化することができる。この際に、マスク63の周囲に第1の薄膜20(以下「第1の薄膜20a」と称する)が付着する。
【0044】
第1の薄膜20の除去は、例えばイオンビームミリングによって行うことができる。この場合、マスク63は、イオンビームミリングで削られ難い材料、例えばアルミナ(Al
2O
3)からなることが好ましい。
【0045】
次に、
図15(a),
図15(b),
図15(c)に示すように、絶縁層80および磁性層82(まとめて「第2の薄膜80,82」と称することがある)を第1の薄膜20が除去された部分に形成する。なお、このとき、マスク63に付着した第1の薄膜20aの周囲にも、第2の薄膜80,82(以下「第2の薄膜80a,82a」と称する)が付着する(以下、マスク63に付着した「第1の薄膜20a」および「第2の薄膜80a,82a」をまとめて「マスクへの付着物20a,80a,82a」と称する)。
図2に示すMR素子20以外のマイクロデバイスの製造においては、その構成に応じて、第1の薄膜20および第2の薄膜80,82の材料を適宜選択すれば良い。
【0046】
次に、第1の薄膜20を所定のパターンに形成するためのマスク63を除去する。マスク63はアルカリ溶液によって除去することが好ましい。マスク63の除去の好ましい工程を、
図16のフローチャートおよび
図17(a),
図17(b),
図17(c)〜
図20(a),
図20(b),
図20(c)を参照して説明する。
【0047】
まず、
図17(a),
図17(b),
図17(c)に示すように、第2の薄膜80,82を形成した後に、マスク63上に形成された第2の薄膜80a,82aの少なくとも一部が露出するように、第2の薄膜80,82をレジスト68で覆う(ステップS4)。レジスト68は、ステップS5におけるミリング及びアルカリ溶液に耐性を有する材料からなることが好ましい。
【0048】
次に、
図18(a),
図18(b),
図18(c)に示すように、マスク63上でレジスト68から露出している第2の薄膜80a,82aの一部を除去してマスク63の一部を露出させる(ステップS5)。第2の薄膜80a,82aの除去は、ミリングによって行うことができる。
【0049】
次に、
図19(a),
図19(b),
図19(c)に示すように、アルカリ溶液によってマスク63を除去して、第1の薄膜20とレジスト68との間に空間98を形成する(ステップS6)。アルカリ溶液によって、マスク63を除去するため、
図19(a)および
図19(b)に示す狭い空間98に存在していたマスク63を除去することができる。本ステップでは、マスク63を全て除去するために、エッチングレートが早いアルカリ溶液を使用することが好ましい。
【0050】
次に、
図20(a),
図20(b),
図20(c)に示すように、レジスト68とともに、レジスト68に付着した、マスクへの付着物20a,80a,82aを除去する(ステップS7)。レジスト68の除去は、例えばリフトオフ法によって行うことができる。上記のように、第1の薄膜20とレジスト68との間に空間98を形成しておくことで、容易にレジスト68およびレジスト68に付着したマスクへの付着物20a,80a,82aを除去することができる。
【0051】
この後、薄膜磁気ヘッド291を製造する場合には、第1の薄膜(MR素子)20および第2の薄膜80,82の上に例えばめっき法により上部シールド層50を形成する。これにより、
図2に示す読出素子10が形成される。
【0052】
図1に示す薄膜磁気ヘッド291を製造するには、上記の読出素子10の上に書込素子293を形成する。そして、読出素子10および書込素子293が形成されたウエハをバーに切断し、研磨によってエアベアリング面200を露出させる。さらに、バーをスライダに分離し、洗浄、検査等の工程を経て、スライダが完成する(
図29も参照)。
【0053】
次に、本発明のマスクの作成方法、薄膜のパターニング方法およびマイクロデバイスの製造方法の好適な第2の実施形態を、薄膜磁気ヘッドに用いられるMR素子等の製造方法を例に挙げて説明する。
図21(a),
図21(b),
図21(c)〜
図27(a),
図27(b),
図27(c)は、薄膜磁気ヘッド等のマイクロデバイスにおけるMR素子等を形成するための薄膜のパターニングの一連のステップを示している。これらの図のうち、
図21(a),
図21(b),
図21(c)〜
図24(a),
図24(b),
図24(c)は、第2の実施形態に係るマスクの作成方法を示している。また、
図25(a),
図25(b),
図25(c)〜
図27(a),
図27(b),
図27(c)は、当該マスクを用いた薄膜のパターニング方法を示している。
【0054】
なお、
図21(a)、
図22(a)・・・
図27(a)は、マイクロデバイスの断面図、例えば、薄膜磁気ヘッド291のエアベアリング面200となるべき面に沿ったウエハの断面図である。
図21(b)、
図22(b)・・・
図27(b)は、上記マイクロデバイスの断面と直交する方向に切った断面図、例えば、上記薄膜磁気ヘッド291のエアベアリング面200となるべき面と直交する方向300に切ったウエハの断面図である。
図21(c)、
図22(c)・・・
図27(c)は、マイクロデバイスの上面図、例えば、薄膜磁気ヘッド291のウエハの上面図である。
【0055】
まず、
図21(a),
図21(b),
図21(c)に示すように、第1の実施形態と同様に、基板40の上に、第1の薄膜20を成膜する。第1の薄膜20は、例えばスパッタリングにより堆積される。なお、基板とは、基板単体のみならず、基板上において薄膜やマイクロデバイスを構成する所定の下地層が形成されている場合も含む。マイクロデバイスとして薄膜磁気ヘッドを製造する目的では、基板40を下部シールド層40に、第1の薄膜20を外部磁場に応じて電気抵抗が変化する積層膜20に置き換えれば良い。一例として、積層膜20は、外部磁界に対して磁化方向が固定された下部磁性層と、非磁性中間層と、外部磁界に応じて磁化方向が変化する上部磁性層とを含んでおり、外部磁場に応じて電気抵抗が変化する。以下の説明では、“基板”の代わりに“下部シールド層”と称し、“第1の薄膜”の代わりに“積層膜”と称することがある。
【0056】
次に、上記の第1の薄膜20をパターニングするためのマスクを作成する。まず、
図22(a),
図22(b),
図22(c)に示すように、第1の薄膜20が形成された基板40の上に、アルカリ溶液に可溶な無機材料62a,62bを成膜する(ステップS1)。ここで、本実施形態では、無機材料は、アルカリ溶液に対するエッチングレートが相対的に早い第1の無機材料62aと、アルカリ溶液に対するエッチングレートが相対的に遅い第2の無機材料62bと、をこの順に形成する。
【0057】
第1の無機材料62aおよび第2の無機材料62bは、例えば、Al
2O
3、ZnO、SnO、SnO
2、PbO、PbO
2、Pb
3O
4、MgO、Nb
2O
5、Ta
2O
5、TiO
2、WO
3から選択された無機酸化物、またはこれらの2以上の組み合わせからなる。第1および第2の無機材料62a,62bのエッチングレートは、材料の選択や無機材料の形成方法によって調節できる。例えば、第1の無機材料62aおよび第2の無機材料62bをAl
2O
3とし、第1の無機材料62aは低温原子層蒸着法により形成し、第2の無機材料62bは高温原子層蒸着法により形成する。これにより、第1の無機材料62aと第2の無機材料62bの密度が異なり、エッチングレートに差を付けることができる。
【0058】
次に、第1の無機材料62aおよび第2の無機材料62bを所定パターンに形成する(ステップS2)。本ステップS2は、第1の実施形態と同様に行うことができる(
図4および
図7(a),
図7(b),
図7(c)〜
図12(a),
図12(b),
図12(c)も参照)。ここでは、本ステップS2の詳細な説明は省略する。本ステップの終了後、
図23(a),
図23(b),
図23(c)に示す所定パターンの第1の無機材料62aおよび第2の無機材料62bが形成されている。
【0059】
この後、
図24(a),
図24(b),
図24(c)に示すように、第1の無機材料62aおよび第2の無機材料62bをアルカリ溶液によって狭小化してマスク63a,63bを形成する(ステップS3)。アルカリ溶液は、第1の無機材料62a,第2の無機材料62bを狭小化できるものであれば、どのような材料でも使用できる。
【0060】
ここで、第1の無機材料62aは、第2の無機材料62bよりもエッチングレートが早いため、第2の無機材料62bよりも狭小となる。これにより、マスク63a,63b全体が実質的にT字形状となる。このようにして、T字形状のマスク63a,63bは、第1の薄膜20をパターニングするマスクとして利用することができる。この場合、マスク63aがマスク63bよりも小さいため、マスク63a,63bが、第1の薄膜20と結合し難くなり、除去が容易となるという利点がある。
【0061】
この後、第1の実施形態と同様に、
図25(a),
図25(b),
図25(c)に示すように、第1の薄膜20のマスク63a,63bで覆われていない部分を除去する。この際に、マスク63a,63bの周囲に第1の薄膜20(以下「第1の薄膜20a」と称する)が付着する。それから、第2の薄膜としての絶縁層80および磁性層82を第1の薄膜20の除去した部分に形成する。
【0062】
このとき、マスク63a,63bに付着した第1の薄膜20aの周りにも、第2の薄膜80,82が付着する(以下「第2の薄膜80a,82a」と称する)。ここで、本実施形態では、マスク63aがマスク63bよりも小さいため、マスク63a,63b上に形成された第1の薄膜20a、第2の薄膜80a,82a(以下「第1の薄膜20a」および「第2の薄膜80a,82a」をまとめて「マスクへの付着物20a,80a,82a」と称する)が、第1の薄膜(MR素子)20の両側に堆積された第2の薄膜80,82と結合し難くなるという利点がある。
【0063】
次に、
図26(a),
図26(b),
図26(c)に示すように、マスク63a,63bを、例えばリフトオフ法により除去し、その後、マスクへの付着物20a,80a,82aを除去する。マスク63a,63bおよびマスクへの付着物20a,80a,82aは、第1の実施形態と同様に、
図16に示すフローチャートに従って除去することができる。上述したように、マスクへの付着物20a,80a,82aと、基板40の上の第2の薄膜80,82との間の結合力は小さくなっているため、マスクへの付着物20a,80a,82aを容易に除去することができる。
【0064】
この後、
図27(a),
図27(b),
図27(c)に示すように、磁性層82および第1の薄膜(MR素子)20の上に、例えばめっき法により上部シールド層50を形成する。これにより、
図2に示す読出素子10が形成される。
【0065】
図1に示す薄膜磁気ヘッド291を製造するには、第1の実施形態で説明したように、上記の読出素子10の上に書込素子293を形成すれば良い。
【0066】
次に、上述した薄膜磁気ヘッド291の製造に用いられるウエハについて説明する。
図28を参照すると、ウエハ100には、少なくとも前述の薄膜磁気ヘッド291が成膜されている。ウエハ100は、エアベアリング面を研磨加工する際の作業単位である、複数のバー101に分割される。バー101は、研磨加工後さらに切断されて、薄膜磁気ヘッド291を含むスライダ210に分離される。ウエハ100には、ウエハ100をバー101に、バー101をスライダ210に切断するための切り代(図示せず)が設けられている。
【0067】
図29を参照すると、スライダ210は、ほぼ六面体形状をなしており、そのうちの一面は、例えばハードディスクのような記録媒体と対向するエアベアリング面200となっている。図において、x方向は上記のトラック幅方向Tに相当し、z方向は上記の膜面直交方向Pに相当し、y方向はx方向およびz方向に直交する方向に相当する。
【0068】
図30を参照すると、ヘッドジンバルアセンブリ220は、スライダ210と、スライダ210を弾性的に支持するサスペンション221と、を備えている。サスペンション221は、例えばステンレス鋼によって形成された、板ばね状のロードビーム222と、ロードビーム222上に設けられたフレクシャ223と、ロードビーム222の他端部に設けられたベースプレート224と、を有している。フレクシャ223は、スライダ210に接合され、スライダ210に適度な自由度を与える。フレクシャ223の、スライダ210が取り付けられる部分には、スライダ210の姿勢を一定に保つためのジンバル部が設けられている。
【0069】
スライダ210は、回転駆動される円盤状の記録媒体であるハードディスク262に対向する。ハードディスク262が
図30におけるz方向に回転すると、ハードディスク262とスライダ210との間を通過する空気流によって、スライダ210に、y方向下向きに揚力が生じる。スライダ210は、この揚力によってハードディスクの表面から浮上するようになっている。スライダ210の空気流出側の端部(
図29における左下の端部)の近傍には、薄膜磁気ヘッド291が形成されている。
【0070】
ヘッドジンバルアセンブリ220をアーム230に取り付けたものはヘッドアームアセンブリと呼ばれる。アーム230は、スライダ210をハードディスク262のトラック幅方向xに移動させる。アーム230の一端はベースプレート224に取り付けられている。アーム230の他端部には、ボイスコイルモータの一部となるコイル231が取り付けられている。アーム230の中間部には軸受け部233が設けられている。アーム230は、軸受け部233に取り付けられた軸234によって回動自在に支持されている。アーム230及び、アーム230を駆動するボイスコイルモータは、アクチュエータを構成する。
【0071】
次に、
図31及び
図32を参照して、上述したスライダ210が組込まれたヘッドスタックアセンブリとハードディスク装置について説明する。ヘッドスタックアセンブリとは、複数のアーム230を有するキャリッジ251の各アーム230にヘッドジンバルアセンブリ220が取り付けられたものである。
図31はヘッドスタックアセンブリの側面図である。位置決め装置250としてのヘッドスタックアセンブリは、複数のアーム230を有するキャリッジ251を有している。各アーム230には、ヘッドジンバルアセンブリ220が、互いに間隔を開けて垂直方向に並ぶように取り付けられている。キャリッジ251の、アーム230とは反対側に、ボイスコイルモータの一部となるコイル231が取り付けられている。ボイスコイルモータは、コイル231を介して互いに対向する永久磁石263を有している。
【0072】
図32を参照すると、ヘッドスタックアセンブリ250は、ハードディスク装置に組込まれている。ハードディスク装置は、スピンドルモータ261に取り付けられた複数枚のハードディスク262を有している。ハードディスク262毎に、ハードディスク262を挟んで対向するように2つのスライダ210が配置されている。スライダ210を除くヘッドスタックアセンブリ250及び上記アクチュエータは、位置決め装置に対応し、スライダ210を支持すると共に、スライダ210をハードディスク262に対して位置決めする。スライダ210は、アクチュエータによって、ハードディスク262のトラック幅方向に動かされ、ハードディスク262に対して位置決めされる。スライダ210に含まれる薄膜磁気ヘッド291は、書込素子によってハードディスク262に情報を記録し、読出素子によってハードディスク262に記録されている情報を再生する。
【0073】
本発明の望ましい実施形態について提示し、詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲の趣旨または範囲から逸脱しない限り、さまざまな変更及び修正が可能であることを理解されたい。