(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5692193
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】擬似太陽光照射装置
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20060101AFI20150312BHJP
H01L 31/04 20140101ALI20150312BHJP
F21V 9/02 20060101ALI20150312BHJP
F21V 21/30 20060101ALI20150312BHJP
F21Y 101/00 20060101ALN20150312BHJP
【FI】
F21S2/00 365
H01L31/04
F21V9/02
F21V21/30
F21Y101:00 300
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-213580(P2012-213580)
(22)【出願日】2012年9月27日
(65)【公開番号】特開2014-67662(P2014-67662A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2013年8月7日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 数行
(72)【発明者】
【氏名】松浦 哲哉
【審査官】
石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−186890(JP,A)
【文献】
特開2011−252814(JP,A)
【文献】
特開2001−127324(JP,A)
【文献】
特開2011−233484(JP,A)
【文献】
特開2011−091089(JP,A)
【文献】
特表2012−519276(JP,A)
【文献】
特開2007−299969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21V 9/02
F21V 21/30
H01L 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源から出射した光の分光分布を太陽光の分光分布に近似するように補正するスペクトル補正フィルタと、
前記光源及び前記スペクトル補正フィルタが設置された光源台と、
試験体を保持するステージと、を備えた擬似太陽光照射装置であって、
前記試験体に照射される光の入射角を可変とするために前記光源台の位置を調整する位置調整手段が前記光源台に設けられており、
前記光源台は、前記ステージを軸として回転する
ことを特徴とする擬似太陽光照射装置。
【請求項2】
前記位置調整手段は、前記ステージに保持された前記試験体に対する光の入射角を−90〜90°の範囲で可変とする請求項1記載の擬似太陽光照射装置。
【請求項3】
光源と、
前記光源から出射した光の分光分布を太陽光の分光分布に近似するように補正するスペクトル補正フィルタと、
試験体を保持するステージと、を備えた擬似太陽光照射装置であって、
前記スペクトル補正フィルタと前記ステージとの間に光散乱手段が設けられており、
前記試験体に照射される光の入射角を可変とする角度調整手段が前記ステージに設けられており、
前記光散乱手段はヘーズ標準板であり、
前記ヘーズ標準板は、2つ以上のヘーズ標準板が組み合わせて使用され、
前記2つ以上のヘーズ標準板は、ヘーズ値が30%以上のヘーズ標準板と、ヘーズ値が30%未満のヘーズ標準板との組み合わせであることを特徴とする擬似太陽光照射装置。
【請求項4】
光源と、
前記光源から出射した光の分光分布を太陽光の分光分布に近似するように補正するスペクトル補正フィルタと、
前記光源及び前記スペクトル補正フィルタが設置された光源台と、
試験体を保持するステージと、を備えた擬似太陽光照射装置であって、
前記スペクトル補正フィルタと前記ステージとの間に光散乱手段が設けられており、
前記試験体に照射される光の入射角を可変とするために前記光源台の位置を調整する位置調整手段が前記光源台に設けられていることを特徴とする擬似太陽光照射装置。
【請求項5】
前記光散乱手段がヘーズ標準板である請求項4記載の擬似太陽光照射装置。
【請求項6】
前記ヘーズ標準板は、2つ以上のヘーズ標準板が組み合わせて使用され、
前記2つ以上のヘーズ標準板は、ヘーズ値が30%以上のヘーズ標準板と、ヘーズ値が30%未満のヘーズ標準板との組み合わせである請求項5記載の擬似太陽光照射装置。
【請求項7】
前記光源として、2つの光源を備え、
前記2つの光源は、所定の分光分布を有する第1の光を照射する第1の光源と、第1の光とは異なる分光分布を有する第2の光を照射する第2の光源であり、
第1の光源に対向するように配置された第1のスペクトル補正フィルタと、
第2の光源に対向するように配置された第2のスペクトル補正フィルタと、
第1の光および第2の光が入射し、入射した第1の光および第2の光から選択された光を混合するための波長混合フィルタと、
を備える請求項1、2、3、4、5又は6記載の擬似太陽光照射装置。
【請求項8】
前記光源のオンとオフとを制御し、前記光源を一定の時間間隔を置きながら順に光を出射させ、前記ステージに保持された前記試験体に対して、任意の時間で任意の角度から順次光を照射するための制御部を備える請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の擬似太陽光照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、擬似太陽光照射装置及び太陽電池モジュールの評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池の性能測定や加速劣化試験などのために、擬似太陽光照射装置(ソーラーシミュレーター)が利用される。擬似太陽光照射装置は、擬似的な太陽光を人工的に発生させる光源装置である。
【0003】
例えば、特許文献1には、主光源より照射される擬似太陽光に特定波長の光線を重畳し、これを試験体に照射することができる擬似太陽光照射装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−133017号公報
【特許文献2】特開2010−123682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の擬似太陽光照射装置は、試験体に対して一定の光量の光を直角に照射させることしか想定されていない。例えば、特許文献2には、再集光効率を測定するために、光源として正午の太陽光を想定し、入射角度が約0度の並行光を測定光源として採用したことが記載されている(特許文献2の
図8参照)。
【0006】
しかし、太陽は地球の自転に合わせて日周運動をしているため、試験体に対して直角に光を照射させるだけでは、日中のすべての時間において高効率で発電することが求められる太陽電池モジュールの性能を適切に評価することができない。また、曇天では日射量が低下するし、太陽からの直達光はほとんど届かず、到達する太陽光の大半を散乱光が占めるが、一定の光量の光を真上から照射するだけでは、曇天下でも高効率で発電することが求められる太陽電池モジュールの性能を適切に評価することができない。
【0007】
本発明は、これらの問題を解決するためになされたものであり、一日の太陽の軌跡を擬似的に再現でき、一日の日射量を再現することができる擬似太陽光照射装置を提供する。本発明は、また、曇天下での太陽光線を擬似的に再現することができる擬似太陽光照射装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の擬似太陽光照射装置は、光源と、上記光源から出射した光の分光分布を太陽光の分光分布に近似するように補正するスペクトル補正フィルタと、試験体を保持するステージと、を備えた擬似太陽光照射装置であって、上記試験体に照射される光の入射角を可変とする角度調整手段が上記ステージに設けられていることを特徴としている。
【0009】
上記の構成によれば、ステージの角度を調整することによって、ステージに保持された試験体に入射する光の入射角を任意に設定できることから、日周運動する太陽からの光を擬似的に再現することができる。例えば、日の出の太陽や日没直前の太陽からの光の入射角を再現することも可能である。
【0010】
角度調整手段は、ステージに保持された試験体に対する光の入射角を0〜90°、好ましくは−90〜90°の範囲で可変とすることができる。
【0011】
なお、本発明において、入射角とは、
図7に示すとおり、光源1から出射された光の光軸と、ステージ3に保持されている試験体5の平面と光軸との交点を通る垂線との間の角度αをいう。
【0012】
本発明の第2の擬似太陽光照射装置は、光源と、上記光源から出射した光の分光分布を太陽光の分光分布に近似するように補正するスペクトル補正フィルタと、上記光源及び上記スペクトル補正フィルタが設置された光源台と、試験体を保持するステージと、を備えた擬似太陽光照射装置であって、上記試験体に照射される光の入射角を可変とするために上記光源台の位置を調整する位置調整手段が上記光源台に設けられていることを特徴とする。
【0013】
上記の構成によれば、光源台の位置を調整することによって、ステージに保持された試験体に入射する光の入射角を任意に設定できることから、日周運動する太陽からの光を擬似的に再現することができる。例えば、日の出の太陽や日没直前の太陽からの光の入射角を再現することも可能である。
【0014】
位置調整手段は、ステージに保持された試験体に対する光の入射角を0〜90°、好ましくは−90〜90°の範囲で可変とすることができる。
【0015】
本発明の第3の擬似太陽光照射装置は、光源と、上記光源から出射した光の分光分布を太陽光の分光分布に近似するように補正するスペクトル補正フィルタと、試験体を保持するステージと、を備えた擬似太陽光照射装置であって、上記スペクトル補正フィルタと上記ステージとの間に光散乱手段が設けられていることを特徴とする。
【0016】
上記の構成によれば、光散乱手段が設けられていることによって、曇天下での太陽光線を擬似的に再現することが可能である。曇天下では日射量が低下する。また、太陽電池が受ける太陽光は、直達光及び散乱光の2つに分けることができるが、曇天下の太陽電池には直達光が殆ど届かず、到達する光の大半を散乱光が占める。従って、従来の擬似太陽光照射装置では、曇天下での太陽電池モジュールの性能を適切に評価することができない。本発明の第3の擬似太陽光照射装置は、容易に低い日射量を再現することができるし、散乱光を再現することもできる。
【0017】
散乱光を高い精度で再現することができることから、光散乱手段は、ヘーズ標準板であることが好ましい。ヘーズ標準板は表面が平滑であってもよい。
【0018】
本発明の第1〜3の擬似太陽光照射装置は、光源を2つ備える擬似太陽光照射装置であり、所定の分光分布を有する第1の光を照射する第1の光源と、第1の光源に対向するように配置された第1のスペクトル補正フィルタと、第1の光とは異なる分光分布を有する第2の光を照射する第2の光源と、第2の光源に対向するように配置された第2のスペクトル補正フィルタと、第1の光および第2の光が入射し、入射した第1の光および第2の光から選択された光を混合するための波長混合フィルタと、を備えることが好ましい。
【0019】
上記の構成によれば、2種類の光源を使用して、幅広い分光分布を有する光線を利用することができるので、太陽光線に近い分光特性を有する光線を容易に再現することができる。
【0020】
上記の擬似太陽光照射装置は、光源のオンとオフとを制御し、上記ステージの角度又は上記光源台の位置の変更に合わせて、光源を一定の時間間隔を置きながら順に光を出射させ、ステージに保持された試験体に対して、任意の時間で任意の角度から順次光を照射するための制御部を備えることができる。
【0021】
上記の擬似太陽光照射装置が制御部を備えることによって、自動で太陽の日周運動に合わせた光の入射角を再現することができ、各入射角での太陽電池モジュールの出力特性を測定することができる。
【0022】
本発明の第1の評価方法は、光源から太陽電池モジュールに対して、入射角α
1で光を照射して、出力電流を検出するステップと、光源の位置又は太陽電池モジュールの角度を変化させて、入射角α
2(α
2はα
1と異なる)で光を照射して、出力電流を検出するステップと、光源の位置又は太陽電池モジュールの角度を変化させて、入射角α
x(α
xはα
1及びα
2と異なる、xは3以上の整数である)で光を照射して、出力電流を検出するステップを繰り返すステップと、からなることを特徴とする。
【0023】
上記の構成によれば、一日の太陽の軌跡と一日の日射量とを評価条件に反映させることができるので、現実に設置されている太陽電池モジュールの発電条件に近い条件での太陽電池モジュールの出力特性を評価することができる。
【0024】
上記評価方法において、入射角α
1、α
2及びα
xを0〜90°、好ましくは−90〜90°の間の角度に設定することができる。
【0025】
本発明の第2の評価方法は、光源から出射された光を光散乱手段により散乱させて太陽からの直達光及び散乱光を再現するステップと、光源から太陽電池モジュールに対して、散乱させた光を照射して、出力電流を検出するステップと、からなることを特徴とする。
【0026】
上記の構成によれば、曇天での太陽光線を評価条件に反映できるので、現実に設置されている曇天下の太陽電池モジュールの発電条件に近い条件での太陽電池モジュールの出力特性を評価することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の第1及び第2の擬似太陽光照射装置は、一日の太陽の軌跡を擬似的に再現でき、一日の日射量を再現することができる。また、本発明の第2の擬似太陽光照射装置は曇天下での太陽光線を擬似的に再現することができる。
【0028】
本発明の第1の評価方法は、日周運動する太陽からの光を受けた場合の太陽電池モジュールの出力特性を正確に評価することができる。また、本発明の第2の評価方法は、曇天下での太陽電池モジュールの出力特性を正確に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の第1の擬似太陽光照射装置の一実施形態を示す図である。
【
図2】本発明の第1の擬似太陽光照射装置の一実施形態を示す図である。
【
図3】本発明の第2の擬似太陽光照射装置の一実施形態を示す図である。
【
図4】制御部及び検出部を備える擬似太陽光照射装置を説明するための図である。
【
図5】本発明の第3の擬似太陽光照射装置の一実施形態を示す図である。
【
図6】光源を2つ備える擬似太陽光照射装置の一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明の第1の擬似太陽光照射装置の一実施形態を示す図である。本発明の第1の擬似太陽光照射装置は、光源1とスペクトル補正フィルタ2とステージ3とから構成される。
図1に示す擬似太陽光照射装置10においては、光源1から出射された光が楕円鏡4に反射して集光され、スペクトル補正フィルタ2を通過することにより、太陽光の分光分布に近似した分光分布を有する光のみが選択された後、ステージ3に保持された試験体5に照射される。光源1としては、キセノン光源又はハロゲン光源を使用できる。
【0032】
ステージ3は、角度調整手段6を備えている。
図1に示す角度調整手段6は、本体7と、本体7の垂線に対して所定の角度で傾斜することができる支持部8と、支持部8を本体7に対して回動自在に係合する係合ネジ9とを有しており、支持部8にはステージ3が固定されている。
【0033】
図2に示すように、支持部8はステージ3の平面の垂線が光軸に対して−90〜90°となるように可動させることができ、これによって、ステージ3上に保持された試験体5に対して−90〜90°の角度から擬似太陽光を照射させることができる。
【0034】
図2では、ステージ3をステージ3の平面を通るある特定の方向を軸として、当該軸が当該平面の垂線に対して90°となるように回転させている。このように回転させる場合、ステージ3の平面の垂線と光軸とを一致させれば、太陽が試験体5のちょうど真上に位置する場合の太陽光を再現できる。
【0035】
また、ステージ3をステージ3の平面の垂線が光軸と角度を有するように設置した状態で、当該垂線と当該光軸とを含む平面を通るある特定の方向を軸として回転させることにより、地球上の緯度の高い位置での太陽の軌跡を再現することができる。
【0036】
図3は、本発明の第2の擬似太陽光照射装置の一実施形態を示す図である。
図3に示す擬似太陽光照射装置30においては、光源1及びスペクトル補正フィルタ2が光源台31に設置されており、光源台31に設けられている位置調整手段(図示せず)によって、ステージ3を固定した状態で、光源台31をステージ3を軸として回転させることができる。
【0037】
図3に示すように、光源台31はステージ3の平面の垂線が光軸に対して−90〜90°となるように可動させることができ、これによって、ステージ3上に保持された試験体5に対して−90〜90°の角度から擬似太陽光を照射させることができる。
【0038】
図5は、本発明の第3の擬似太陽光照射装置の一実施形態を示す図である。
図5に示す擬似太陽光照射装置50は、光源1とスペクトル補正フィルタ2とステージ3とから構成されており、スペクトル補正フィルタ2とステージ3との間に光散乱手段51が設けられている。光散乱手段51は、
図3のようにスペクトル補正フィルタ2とステージ3との間に設けてもよいし、光源1とスペクトル補正フィルタ2との間に設けてもよい。光源1から出射された光は、楕円鏡4に反射して集光され、スペクトル補正フィルタ2を通過することにより、太陽光の分光分布に近似した分光分布を有する光のみが選択された後、光散乱手段51により散乱されて、ステージ3に保持された試験体5に照射される。光源1としては、キセノン光源又はハロゲン光源を使用できる。
【0039】
図5に示す擬似太陽光照射装置50では、本発明の第1及び第2の擬似太陽光照射装置と同様に、角度調整手段6が設けられており、このような構成にすることにより、日周運動する太陽からの光を曇天の条件で受けた太陽電池モジュールの出力特性を正確に評価することができる。
【0040】
散乱光を高い精度で再現することができることから、光散乱手段は、ヘーズ標準板であることが好ましい。ヘーズ標準板は表面が平滑であってもよい。
2つ以上のヘーズ標準板を組み合わせて使用することもできる。2つ以上のヘーズ標準板を組み合わせて使用すると、容易に所望の散乱光を再現することができる。2つ以上のヘーズ標準板は、それぞれ同一のヘーズ値を有するヘーズ標準板であってもよいし、お互いに異なるヘーズ値を有するヘーズ標準板であってもよい。
お互いに異なるヘーズ値を有するヘーズ標準板を組み合わせる場合、ヘーズ値が大きい(30%以上)ヘーズ標準板とヘーズ値が小さい(30%未満)ヘーズ標準板とを組み合わせることができる。
上記ヘーズ値は、「ISO 14782 Plastics − Determination of haze for transparent materials」、これに基づく翻訳規格「JIS K 7136 プラスチック−透明材料のヘーズの求め方」に従って測定することができる。
ヘーズ値(H)は全光線透過率(Tt)に対する拡散光透過率(Td)の比として、
H=Td/Tt×100
と定義される。
【0041】
光散乱手段51は、曇天での太陽光を精度高く再現することができることから、光軸が光散乱手段51の平面に直角に交わるように設置することが好ましい。
【0042】
図6に示すように、本発明の第1〜3の擬似太陽光照射装置は、2つの光源を有するものであってもよい。
図6に示す擬似太陽光照射装置60では、光源61と光源63とが設けられており、光源61に対向するようにスペクトル補正フィルタ62が設置され、光源63に対向するようにスペクトル補正フィルタ64が設置され、それぞれ所望の分光分布を有する光が選択されて、波長混合フィルタ67に到達する。波長混合フィルタ67では、異なる2つの分光分布を有する光が重畳されて擬似太陽光が作られる。合成されることにより作られた擬似太陽光は、反射鏡68により反射されて所望の角度に調整された後、コリメータレンズ69を介して、試験体5に照射される。
【0043】
光源61及び光源63は、一方をキセノン光源とし、他方をハロゲン光源とすることができる。キセノン光源からは太陽光を擬似するために必要な短波長の光を多く出射することができ、ハロゲン光源からは太陽光を擬似するために必要な長波長の光を多く出射することができる。
【0044】
波長混合フィルタ67としては、ハーフミラーを用いることができる。
【0045】
コリメータレンズ69は、擬似太陽光を集光する作用を有しており、擬似太陽光の広がりや強度を調整することができる。
【0046】
本発明の第1〜3の擬似太陽光照射装置は、光源のオンとオフとを制御し、光源を一定の時間間隔を置きながら順に光を出射させ、ステージに保持された試験体に対して、任意の時間で任意の角度から順次光を照射するための制御部を備えることも好ましい。
【0047】
また、本発明の第1〜3の擬似太陽光照射装置は、試験体として太陽電池モジュールを好適に使用することができ、太陽電池モジュールからの出力電流を検出するための検出手段を備えることも好ましい。
【0048】
図4に示すように、制御部41からの信号により光源1のオンとオフとを制御し、光源1から光を受けた試験体5からの出力電流を、検出手段42により検出することができる。制御部41は、ステージ3の角度を調整する信号を角度調整手段に対して出力してもよい。この構成によれば上記ステージの角度又は上記光源台の位置の変更に合わせて、光源を一定の時間間隔を置きながら順に光を出射させ、ステージに保持された試験体に対して、任意の時間で任意の角度から順次光を照射し、自動で太陽の日周運動に合わせた光の入射角を再現して、各入射角での太陽電池モジュールの出力特性を測定することができる。
【0049】
次に、本発明の第1及び第2の擬似太陽光照射装置を使用した太陽電池モジュールの第1の評価方法について説明する。光源から試験体5としての太陽電池モジュールに対して入射角α
1で光を照射させると、太陽電池モジュールから電流が出力される。出力電流は、検出手段42により検出され、検出値が記録媒体等(図示せず)に記録される。入射角α
1は−90〜90°の任意の角度を設定することができる。
【0050】
ついで、光源1の位置又は太陽電池モジュール5の角度が入射角α
2になるように変更する。入射角α
2は任意の角度とすることができるが、α
1よりも大きくなるように、又は、小さくなるように設定し、更に繰り返されるステップにおいて、α
xをα
1及びα
2よりも大きくなるように、又は、α
1及びα
2よりも小さくなるように設定して、各ステップを繰り返すと、時間的な労力も、データを処理する労力も低減することができる。各入射角の差は例えば5°とすることができる。
【0051】
光源1の位置又は太陽電池モジュール5の角度を変更したら、光源から試験体5としての太陽電池モジュールに対して入射角α
2で光を照射させ、入射角α
2における太陽電池モジュールからの出力電流を同様に検出手段42により検出して、記録する。
【0052】
ついで、光源1の位置又は太陽電池モジュール5の角度が入射角α
x(xは3以上の整数である)になるように変更し、光源から試験体5としての太陽電池モジュールに対して入射角α
xで光を照射させ、入射角α
xにおける太陽電池モジュールからの出力電流を同様に検出手段42により検出して、記録する。以上のステップを任意の回数繰り返し、各入射角αでの出力電流を測定する。
【0053】
以上のステップを任意の回数繰り返すことにより、太陽電池モジュールの出力特性の評価が終了する。繰り返しの回数が多いほど、日周運動する太陽からの光を受けた場合の太陽電池モジュールの出力特性を正確に評価することができる。例えば、−90〜90°の範囲で5°刻みで測定を繰り返すことにより、太陽の1日の日周運動を反映させた太陽電池モジュールの出力特性を適切に評価することができる。xの上限、すなわち、ステップの繰り返し回数は特に限定されず、大きいほうが詳細なデータを入手することができるが、時間的な負担等が増えることから、両者を比較衡量して適宜設定すればよい。例えば、入射角α
1を−90°として5°毎に+90°まで光を照射して出力電流を検出する場合、xは37が上限となる。
【0054】
次に、本発明の第3の擬似太陽光照射装置を使用した太陽電池モジュールの第2の評価方法について説明する。光源1から出射された光を光散乱手段51により散乱させて太陽からの散乱光を再現し、散乱光を試験体5としての太陽電池モジュールに照射すると、太陽電池モジュールから電流が出力される。出力電流は、検出手段42により検出され、記録媒体等(図示せず)に記録される。このようにして、曇天下での太陽電池モジュールの出力特性を正確に評価することができる。
【0055】
第2の評価方法において、入射角αは−90〜90°の任意の角度を設定することができるが、正確な評価のためには1°で測定することが好ましい。また、−90〜90°の範囲の任意の入射角での出力電流を複数測定することにより、日周運動する太陽から、曇天下で光を受けた場合の太陽電池モジュールの出力特性を正確に評価することもできる。
【符号の説明】
【0056】
1 光源
2 スペクトル補正フィルタ
3 ステージ
4 楕円鏡
5 試験体
6 角度調整手段
7 本体
8 支持部
9 係合ネジ
10,30,50,60 擬似太陽光照射装置
31 光源台
51 光散乱手段
61,63 光源
62,64 スペクトル補正フィルタ
65,66 楕円鏡
67 波長混合フィルタ
68 反射鏡
69 コリメータレンズ