特許第5692225号(P5692225)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5692225
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】易接着性ポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 7/04 20060101AFI20150312BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   C08J7/04 FCFD
   B32B27/36
【請求項の数】4
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-516249(P2012-516249)
(86)(22)【出願日】2012年2月27日
(86)【国際出願番号】JP2012054730
(87)【国際公開番号】WO2012121042
(87)【国際公開日】20120913
【審査請求日】2012年6月5日
(31)【優先権主張番号】特願2011-51174(P2011-51174)
(32)【優先日】2011年3月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 晃侍
(72)【発明者】
【氏名】澤田 薫
【審査官】 中村 勇介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−309217(JP,A)
【文献】 特開2009−300658(JP,A)
【文献】 特開2010−274646(JP,A)
【文献】 特開2012−182424(JP,A)
【文献】 特開2006−335954(JP,A)
【文献】 特開2004−107409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C08J 7/04− 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも片面に塗布層を有する易接着性ポリエステルフィルムであって、
ヘイズが2.0%以下であり、
前記塗布層が、ポリエステル樹脂と、ブロックイソシアネートを主成分とし、
前記ブロックイソシアネートにおいて、解離温度が130℃以下、かつ、ブロック剤の沸点が180℃以上であることを特徴とする易接着性ポリエステルフィルム。
【請求項2】
前記ポリエステル樹脂が下記式(1)で表されるジカルボン酸成分および/または下記式(2)で表されるジオール成分を含むことを特徴とする請求項1に記載の易接着性ポリエステルフィルム。
(1)HOOC−(CH−COOH (式中、nは4≦n≦10の整数)
(2)HO−(CH−OH (式中、nは4≦n≦10の整数)
【請求項3】
前記ポリエステル樹脂の酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の易接着性ポリエステルフィルム。
【請求項4】
請求項1〜のいずれかに記載の易接着性ポリエステルフィルムを巻き取ってなる易接着性ポリエステルフィルムロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密着性と耐湿熱性に優れた易接着性ポリエステルフィルムに関する。詳しくは、ディスプレイなどに主として用いられる、ハードコートフィルム、反射防止フィルム、光拡散シート、プリズム状レンズシート、近赤外線遮断フィルム、透明導電性フィルム、防眩フィルムなどの機能性フィルムの基材として好適な易接着性ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶ディスプレイ(LCD)の部材として用いられる機能性フィルムの基材には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル、ポリカーボネート(PC)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリオレフィン等からなる透明な熱可塑性樹脂フィルムが用いられている。
【0003】
前記の熱可塑性樹脂フィルムを各種機能性フィルムの基材として用いる場合には、各種用途に応じた機能層が積層される。例えば、液晶ディスプレイ(LCD)では、表面の傷つきを防止する保護膜(ハードコート層)、外光の映り込みを防止する反射防止層(AR層)、光の集光や拡散に用いられるプリズム層、輝度を向上する光拡散層等の機能層が挙げられる。このような基材の中でも、特に、ポリエステルフィルムは、優れた透明性、寸法安定性、耐薬品性に優れ、比較的安価であるため各種機能性フィルムの基材として広く使用されている。
【0004】
一般に、二軸配向ポリエステルフィルムや二軸配向ポリアミドフィルムのような二軸配向熱可塑性フィルムの場合、フィルム表面は高度に結晶配向しているため、各種塗料、接着剤、インキなどとの密着性が乏しいという欠点がある。このため、従来から二軸配向熱可塑性樹脂フィルム表面に種々の方法で易接着性を付与する方法が提案されてきた。
【0005】
例えば、基材である熱可塑性樹脂フィルムの表面に、ポリエステル、アクリル、ポリウレタン、アクリルグラフトポリエステルなどの各種樹脂を被覆層の主たる構成成分とする塗布層を設けることにより、基材フィルムに易接着性を付与する方法が一般的に知られている。この塗布法の中でも、結晶配向が完了する前の熱可塑性樹脂フィルムに、前記樹脂の溶液または樹脂を分散媒で分散させた分散体を含有する水性塗布液を基材フィルムに塗工し、乾燥後、少なくとも一軸方向に延伸し、次いで熱処理を施して、熱可塑性樹脂フィルムの配向を完了させる方法(いわゆる、インラインコート法)や、熱可塑性樹脂フィルムの製造後、該フィルムに水系または溶剤系の塗布液を塗布後、乾燥する方法(いわゆる、オフラインコート法)が工業的に実施されている。
【0006】
例えば、基材であるポリエステルフィルムの表面に、ポリエステル、アクリル、ポリウレタン、アクリルグラフトポリエステルなどの各種樹脂を主たる構成成分とする塗布層を設けることにより、基材フィルムに易接着性を付与する方法が知られている(特許文献1〜4)。この塗布法の中でも、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムに、前記樹脂の溶液または樹脂を分散媒で分散させた分散体を含有する水性塗布液を基材フィルムに塗工し、乾燥後、少なくとも一軸方向に延伸し、次いで熱処理を施して、ポリエステルフィルムの配向を完了させる方法(いわゆる、インラインコート法)や、ポリエステルフィルムの製造後、該フィルムに水系または溶剤系の塗布液を塗布後、乾燥する方法(いわゆる、オフラインコート法)が工業的に実施されている。
【0007】
また、特許文献5、6では、塗布液に樹脂とイソシアネート架橋剤を添加した易接着性ポリエステルフィルムも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−141574号公報
【特許文献2】特許第3737738号公報
【特許文献3】特許第3900191号公報
【特許文献4】特開2007−253512号公報
【特許文献5】特許第4130964号公報
【特許文献6】特開2009−178955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、タブレットPCやスマートフォンなどの携帯情報端末の発達により、ディスプレイの高精細化、軽量化や高い意匠性が求められている。例えば、アイコンシートなど従来はガラス素材が用いられた部材もフィルムへの置き換えが進んでいる。このような部材には意匠性の点から縁面部分などの一部を金属蒸着などにより鏡面様の金属光沢処理を施す場合がある。しかしながら、このような態様ではフィルムそのものでは視認上、全く問題がないものであっても、鏡面処理などの意匠を付与した際に微小な塗布面凹凸が観察されることがあった。
【0010】
さらに、地球環境負荷の低減のためディスプレイを有する家電製品などで、従来以上の長寿命化が期待されている。そのため、部材として用いられる光学機能性フィルムにおいても、高温高湿下でも長期間、密着性を保持することが必要であると考えられた。しかしながら、上記特許文献に開示されるような易接着性フィルムは、当初は良好な密着性を示すものの、高温高湿下の長期間の使用においては密着強度の低下は避けられず、初期性能が長期間維持しないという問題があった。
【0011】
本発明は上記課題に鑑み、密着性と外観性に優れ、さらに好適には、湿熱環境下でも良好な密着性を有する易接着性ポリエステルフィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、少なくとも片面に塗布層を有するポリエステルフィルムであって、ポリエステル樹脂とブロックイソシアネートを主成分とし、前記ブロックイソシアネートにおいて、解離温度が130℃以下、かつ、ブロック剤の沸点が180℃以上である塗布層を用いることにより、高透明かつ高温高湿下での密着性が向上することを見出し、本発明に至ったものである。
【0013】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、驚くべきことに、ポリエステル樹脂とブロックイソシアネートを主成分とし、前記ブロックイソシアネートの解離温度が130℃以下、かつ、ブロック剤の沸点が180℃以上である塗布層を用いることにより、密着性と外観性が向上することを見出し、本発明に至ったものである。
【0014】
すなわち、前記の課題は、以下の解決手段により達成することができる。
(1)ポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布層を有する易接着性ポリエステルフィルムであって、ヘイズが2.0%以下であり、前記塗布層が、ポリエステル樹脂と、ブロックイソシアネートを主成分とし、前記ブロックイソシアネートにおいて、解離温度が130℃以下、かつ、ブロック剤の沸点が180℃以上であることを特徴とする易接着性ポリエステルフィルム。
(2)前記ポリエステル樹脂が下記式(1)で表されるジカルボン酸成分および/または下記式(2)で表されるジオール成分を含むことを特徴とする前記易接着性ポリエステルフィルム。
(1)HOOC−(CH−COOH (式中、nは4≦n≦10の整数)
(2)HO−(CH−OH (式中、nは4≦n≦10の整数)
(3)前記ポリエステル樹脂の酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含むことを特徴とする前記易接着性ポリエステルフィルム。
)前記易接着性ポリエステルフィルムを巻き取ってなる易接着性ポリエステルフィルムロール。
【発明の効果】
【0015】
本発明の易接着性ポリエステルフィルムは、密着性と外観性に優れ、さらに好適には、湿熱環境下でも良好な密着性を有する。さらに、本発明の好ましい態様においては光干渉縞が抑制され、視認性に優れる。そのため、本発明の易接着性ポリエステルフィルムはディスプレイなどの光学部材のベースフィルムとして好適である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(ポリエステルフィルム)
本発明で基材を構成するポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリメチレンテレフタレート、および共重合成分として、例えば、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコールなどのジオール成分や、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などのジカルボン酸成分などを共重合したポリエステル樹脂などを用いることができる。
【0017】
本発明で好適に用いられるポリエステル樹脂は、主に、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートの少なくとも1種を構成成分とする。これらのポリエステル樹脂の中でも、物性とコストのバランスからポリエチレンテレフタレートが最も好ましい。また、これらのポリエステルフィルムは二軸延伸することで耐薬品性、耐熱性、機械的強度などを向上させることができる。
【0018】
また、前記のポリエステルフィルムは、単層であっても複層であってもかまわない。また、本発明の効果を奏する範囲内であれば、これらの各層には、必要に応じて、ポリエステル樹脂中に各種添加剤を含有させることができる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐光剤、ゲル化防止剤、有機湿潤剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤などが挙げられる。
【0019】
また、フィルムの滑り性、巻き性、耐ブロッキング性などのハンドリング性や、耐摩耗性、耐スクラッチ性などの摩耗特性を改善するために、ポリエステルフィルム中に不活性粒子を含有させる場合がある。しかしながら、光学用部材の基材フィルムとして用いる場合は、高度な透明性を維持しながらハンドリング性に優れていることが要求される。具体的には、光学用部材の基材フィルムとして使用する場合、易接着性ポリエステルフィルムの全光線透過率が85%以上であることが好ましく、87%以上がより好ましく、88%以上がさらに好ましく、89%以上がよりさらに好ましく、90%以上が特に好ましい。
【0020】
また、高い鮮明度のためには、基材フィルム中への不活性粒子の含有量はできるだけ少ない方が好ましい。したがって、フィルムの表層のみに粒子を含有させた多層構成にするか、あるいは、フィルム中に実質的に粒子を含有させず、塗布層にのみ微粒子を含有させることが好ましい。
【0021】
特に、透明性の点から、ポリエステルフィルム中に不活性粒子を事実上含有させない場合は、フィルムのハンドリング性を向上させるために、無機及び/または耐熱性高分子粒子を水系塗布液中に含有させ、塗布層表面に凹凸を形成させることが好ましい。
【0022】
なお、「不活性粒子が実質上含有されていない」とは、例えば、無機粒子の場合、蛍光X線分析で粒子に由来する元素を定量分析した際に、50ppm以下、好ましくは10ppm以下、最も好ましくは検出限界以下となる含有量を意味する。これは積極的に粒子を基材フィルム中に添加させなくても、外来異物由来のコンタミ成分や、原料樹脂あるいはフィルムの製造工程におけるラインや装置に付着した汚れが剥離して、フィルム中に混入する場合があるためである。
【0023】
また、高い透明性とハンドリング性を両立させる点からは、表層にのみ不活性粒子を添加することも好ましい態様である。例えば、3層構成とする場合、最外層(A層/B層/A層の場合はA層)に粒子を含有し、中心層(B層)には実質的に粒子を含まないことが好ましい。
【0024】
最外層に含まれる粒子の種類及び含有量は、無機粒子であっても、有機粒子であってもよく、特に限定されるものではないが、シリカ、二酸化チタン、タルク、カオリナイト等の金属酸化物、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウムなどのポリエステルに対し不活性な無機粒子が例示される。これらの不活性な無機粒子は、いずれか一種を単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0025】
前記の粒子は、平均粒子径が0.1〜3.5μmであることが好ましい。平均粒子径が下限未満では十分なハンドリング性が得られない場合がある。上限を越えると透明性が低下する場合がある。最外層の無機粒子の含有量は最外層を構成するポリエステルに対し、0.01〜0.20質量%であることが好ましい。下限未満では十分なハンドリング性が得られない。上限を越えると透明性が低下する。
【0026】
さらに、反射性や高い隠蔽性が求められる場合は、基材フィルム中に空洞発現剤を添加し、ボイド含有率の高い白色フィルムを用いてもよい。また、成形性が要求される用途では、ポリエステル樹脂として共重合成分を添加することで成形性を付与した成形用フィルムを用いても良い。
【0027】
本発明で用いる基材フィルムの厚さは、特に制限しないが、30〜500μmの範囲で、使用する規格に応じて任意に決めることができる。基材フィルムの厚みの上限は、350μmが好ましく、特に好ましくは250μmである。一方、フィルム厚みの下限は、50μmが好ましく、さらに好ましくは75μmであり、特に好ましくは100μmである。フィルム厚みが下限未満では、剛性や機械的強度が不十分となりやすい。一方、フィルム厚みが上限を超えると、コスト高となる場合がある。
【0028】
(塗布層)
本発明の易接着性ポリエステルフィルムは、ポリエステル樹脂と、解離温度が130℃以下、かつ、ブロック剤の沸点が180℃以上であるブロックイソシアネートを主成分とする塗布層を有することが重要である。ここで、「主成分」とは、塗布層に含まれる全固形成分中として50質量%以上、より好ましくは70質量%以上含有することを意味する。
【0029】
上記特許文献のように、易接着性を付与するためにポリエステル樹脂は好適に用いられるが、塗布層の密着性を向上させる点から架橋構造を積極的に導入し、強硬な塗布層にすることが望ましいと考えられていた。そこで、特許文献5、6のように、架橋剤として、イソシアネートを使用した例が提案されている。しかし、これらの架橋剤は、反応性が高いため水系の塗布液中で水と反応して架橋反応性を喪失したり、ポリエステル樹脂と反応し、凝集物が生じやすい傾向がある。そのため、いわゆるポットライフが短く、長期間安定的に塗布することは困難であった。そこで、特許文献2のように、熱付加により解離するブロック剤で官能基をブロックしたイソシアネートが用いられる場合がある。しかしながら、未解離のブロック剤の影響により、高温高湿下で密着性(耐湿熱性)など高い密着性が要求される場合は十分な接着性が得られない場合があった。
【0030】
さらに、鏡面処理などを施した場合に視認される微小な塗布面凹凸について鋭意検討したところ、驚くべきことに、このような微小塗布面凹凸は上記のようなブロックイソシアネートに起因することがわかった。これは、解離したブロック剤が高温により揮発する際に塗布面に微小な凹凸状のピンホールが形成されるためと考えられた。
【0031】
そこで、本発明者は鋭意検討した結果、ポリエステル樹脂と、解離温度が130℃以下、かつ、ブロック剤の沸点が180℃以上であるブロックイソシアネートを主成分とする塗布層を採用することにより、優れた密着性と外観性とが得られることを見出した。すなわち、解離温度が上記温度を超える場合は、熱付加によるブロック剤の解離が不十分となり十分な架橋構造が得られず密着性、特に耐湿熱性が低下するものと考えられる。また、ブロック剤の沸点が上記温度を下回る場合は、塗布層に残存したブロック剤が熱付加により揮発し、塗布外観が低下するものと考えられる。
【0032】
本発明は、上記態様により、ハードコート層、レンズ層、さらに他の機能層との高温高湿下での密着性(耐湿熱性)を向上させることができる。さらに、本発明の構成を以下に詳細する。
【0033】
(ポリエステル樹脂)
本発明の塗布層にはポリエステル樹脂を含有させる必要がある。ポリエステル樹脂を含有させることで、密着性を向上させることができる。
【0034】
ポリエステル樹脂の数平均分子量は15000以上であることが好ましい。数平均分子量が低い場合、末端のカルボン酸基が増加するため、加水分解が促進され、高温高湿下の密着性が得られないだけでなく、基材フィルムとの密着性も低下させてしまう。また、上記数平均分子量は、20000以上がより好ましく、さらに製造可能な限り、高い方が好ましい。しかし、数平均分子量が大きくなると、塗布液への溶解性が低下する場合もあることから、上記数平均分子量は、60000以下であることが好ましい。
【0035】
前記ポリエステル樹脂の酸価は3KOHmg/g以下であることが好ましく、より好ましくは2KOHmg/g以下であり、さらに好ましくは1KOHmg/g以下のポリエステル樹脂である。
【0036】
ポリエステル樹脂は酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ダイマー酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、4−ナトリウムスルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸等が挙げられる。ジオール成分としては、エチレングリコール、プロパングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。本発明のフィルムに主としてアクリル樹脂よりなるハードコート層などを設けた場合、塗布層と他層との屈折率の差により干渉縞が発生し、視認性の点で問題となる場合がある。そのため、耐湿熱性、虹彩状色彩の抑制効果を向上させることから、酸成分としてより高い屈折率が得られるナフタレンジカルボン酸を含有させることが好ましい。
【0037】
また、ハードコート層を設けた際の虹彩状色彩の抑制の点から、ポリエステル樹脂の成分として、下記式(1)のジカルボン酸成分および/または下記式(2)のジオール成分を含有することが好ましい。ポリエステル樹脂中の下記式(1)のジカルボン酸成分および/または下記式(2)のジオール成分は10%以上が好ましく、15%以上がより好ましく、20%以上がさらに好ましい。また、上記ポリエステル樹脂中の下記式(1)のジカルボン酸成分および/または下記式(2)のジオール成分は70%以下が好ましく、60%以下がより好ましく、50%以下がさらに好ましい。上記上限を超える場合は、塗膜が柔軟になりすぎて、耐湿熱性が低下する場合がある。上記下限未満の場合は、ポリエステル樹脂の柔軟性が低下し、塗膜が硬くなりすぎ、密着性が低下する場合がある。
(1)HOOC−(CH−COOH (式中、nは4≦n≦10の整数)
(2)HO−(CH−OH (式中、nは4≦n≦10の整数)
【0038】
ポリエステル樹脂は水、または、水溶性の有機溶剤(例えば、アルコール、アルキルセルソルブ、ケトン系、エーテル系を50質量%未満含む水溶液)または、有機溶剤(例えば、トルエン、酢酸エチル等)に対して溶解または分散したものが使用できる。
【0039】
ポリエステル樹脂を水系塗液として用いる場合には、水溶性あるいは水分散性のポリエステル樹脂が用いられるが、このような水溶性化あるいは水分散化のためには、スルホン酸塩基を含む化合物や、カルボン酸塩基を含む化合物を共重合させることが好ましい。そのために、前記のジカルボン酸成分の他に、ポリエステルに水分散性を付与させるため、5−スルホイソフタル酸またはそのアルカリ金属塩を1〜10モル%の範囲で使用するのが好ましく、例えば、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレンイソフタル酸−2,7−ジカルボン酸および5−(4−スルホフェノキシ)イソフタル酸またはそのアルカリ金属塩を挙げることができる。
【0040】
ポリエステル樹脂の数平均分子量を15000以上とし、かつブロッキングを抑制する程度のガラス転移温度を有するには、ポリエステル樹脂に分岐構造を導入することが好ましい。しかしながら、分岐構造が多くなると酸価も高くなる傾向にある。そのため、本願発明のポリエステル樹脂は、カルボキシル基が3個以上/1分子あるいは水酸基が3個以上/1分子有する第三成分のモル比は全ジカルボン酸成分中5.0モル%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1.0モル%以下である。
【0041】
前記ポリエステル樹脂は塗布層中に10質量%以上85質量%以下含有することが好ましい。高い密着性が求められる場合、より好ましくは20%質量%以上80質量%以下である。ポリエステル樹脂の含有量が多い場合には、高温高湿下での密着性が低下し、逆に、含有量が少ない場合には、基材フィルムとの密着性が低下する。
【0042】
本発明のポリエステル樹脂は、接着性を向上させるために2種類以上含有させても良い。例えば、密着性や耐湿熱性の両立のためにガラス転移温度の異なる2種類以上のポリエステル樹脂を用いることも好ましい。
【0043】
本発明では、密着性を向上させるためにポリエステル樹脂以外の樹脂を含有させても良い。このような樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。
【0044】
(ブロックイソシアネート)
本発明において、塗布層中に解離温度が130℃以下、かつ、ブロック剤の沸点が180℃以上であるブロックイソシアネートを含有させる必要がある。ブロックイソシアネートはポリイソシアネートとブロック剤を反応させることで得られる。なお、解離温度、沸点は示差熱分析により測定することができる。
【0045】
ブロックイソシアネートの解離温度は130℃以下が好ましく、125℃以下がより好ましく、120℃以下がよりさらに好ましい。ブロック剤は塗布液の塗布後の乾燥工程やインラインコート法の場合はフィルム製膜工程における熱付加により官能基と解離し、再生イソシアネート基が生成される。そのため、ポリエステル樹脂などとの架橋反応が進行し、常温、高温高湿下での接着性が向上する。ブロックイソシアネートの解離温度が上記温度以下である場合は、ブロック剤の解離が十分進行するため、接着性、特に耐湿熱性が良好となる。解離温度の下限は、塗布液の安定化のため室温以上であれば特に限定しないが、50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましい。
【0046】
ブロック剤は活性水素を分子内に1個有する化合物が好適に用いられる。この場合、解離温度を上記のように比較的低くするためには、高い電子密度が得られるブロック剤を採用することが好ましい。例えば、分子内に複素環やそれに類似した構造を有するブロック剤などが好適に用いられる。
【0047】
ブロック剤の沸点は180℃以上が好ましく、190℃以上がより好ましく、200℃以上がさらに好ましく、210℃以上がよりさらに好ましい。ブロック剤の沸点が高い程、塗布液の塗布後の乾燥工程やインラインコート法の場合はフィルム製膜工程における熱付加によってもブロック剤の揮発が抑制され、微小な塗布面凹凸による塗布面外観欠点が良好になり、塗布外観や透明性が向上する。ブロック剤の沸点の上限は特に限定しないが、生産性の点から300℃程度が上限であると思われる。沸点は分子量と関係するため、ブロック剤の沸点を高くするためには、分子量の大きなブロック剤を用いることが好ましく、ブロック剤の分子量は50以上が好ましく、60以上がより好ましく、80以上がさらに好ましい。
【0048】
本発明のブロックイソシアネートに用いる解離温度が130℃以下、かつ、ブロック剤の沸点が180℃以上であるブロック剤としては、
重亜硫酸塩系化合物:重亜硫酸ソーダなど、
ピラゾール系化合物:3,5−ジメチルピラゾール、3−メチルピラゾール、4−ブロモー3,5−ジメチルピラゾール、4−ニトロー3,5−ジメチルピラゾールなど、
活性メチレン系:マロン酸ジエステル(マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸ジ2−エチルヘキシル)など、
トリアゾール系化合物:1,2,4−トリアゾールなど、
が挙げられる。なかでも、耐湿熱性、黄変防止の点から、ピラゾール系化合物が好ましい。
【0049】
本発明のブロックイソシアネートの前駆体であるポリイソシアネートは、ジイソシアネートを導入して得られる。例えば、ジイソシアネートのウレタント変性体、アロファネート変性体、ウレア変性体、ビウレット変性体、ウレトジオン変性体、ウレトイミン変性体、イソシアヌレート変性体、カルボジイミド変性体等が挙げられる。
【0050】
ジイソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,4−ナフチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジフェニルプロパン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルプロパンジイソシアネート、3,3′−ジメトキシジフェニル−4,4′−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、キシリレンジイソシアネート等の芳香族脂肪族ジイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート及び4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート、および2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類が挙げられる。透明性、接着性、耐湿熱性の点から、脂肪族、脂環式イソシアネートやこれらの変性体が好ましい。芳香族イソシアネートを使用した場合、黄変の問題があり、高い透明性が要求される光学用としては、好ましくない場合がある。また、脂肪族系と比較して、強硬な塗膜になるため、光硬化型樹脂等の収縮、膨潤による応力を緩和できなくなり、密着性が低下する場合がある。
【0051】
本発明のブロックイソシアネートは、水溶性、または、水分散性を付与するために前駆体であるポリイソシアネートに親水基を導入することができる。親水基としては、(1)ジアルキルアミノアルコールの四級アンモニウム塩やジアルキルアミノアルキルアミンの四級アンモニウム塩など、(2)スルホン酸塩、カルボン酸塩、リン酸塩など、(3)アルコキシ基で片末端封鎖されたポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。親水性部位を導入した場合は(1)カチオン性、(2)アニオン性、(3)ノニオン性となる。なかでも、他の水溶性樹脂はアニオン性のものが多いため、容易に相溶できるアニオン性やノニオン性が好ましい。また、アニオン性は他の樹脂との相溶性に優れ、ノニオン性はイオン性の親水基をもたないため、耐湿熱性を向上させるためにも好ましい。また、アニオン性やカチオン性のものは他の樹脂と凝集、もしくは自己凝集し、透明性や外観性に影響する場合があるため、上記のなかでもノニオン性のものがより好ましい。
【0052】
アニオン性の親水基としては、ポリイソシアネートに導入するための水酸基、親水性を付与するためのカルボン酸基を有するものが好ましい。例えば、グリコール酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、オキシ酪酸、オキシ吉草酸、ヒドロキシピバリン酸、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、カルボン酸基を有するポリカプロラクトンが挙げられる。カルボン酸基を中和するには、有機アミン化合物が好ましい。例えば、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、エチレンジアミンなどの炭素数1から20の直鎖状、分岐状の1,2または3級アミン、モルホリン、N−アルキルモルホリン、ピリジンなどの環状アミン、モノイソプロパノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルイソプロパノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの水酸基含有アミンなどが挙げられる。
【0053】
ノニオン性の親水基としては、アルコキシ基で片末端封鎖されたポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールのエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドの繰り返し単位が3〜50が好ましく、より好ましくは、5〜30である。繰り返し単位が小さい場合は、樹脂との相溶性が悪くなり、ヘイズが上昇し、大きい場合は、高温高湿下の接着性が低下する場合がある。
【0054】
本発明のブロックイソシアネートは水分散性向上のために、ノニオン系、アニオン系、カチオン系、両性界面活性剤を添加することができる。例えばポリエチレングリコール、多価アルコール脂肪酸エステル等のノニオン系、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、アルキルリン酸塩等のアニオン系、アルキルアミン塩、アルキルベタイン等のカチオン系、カルボン酸アミン塩、スルホン酸アミン塩、硫酸エステル塩等の界面活性剤などが挙げられる。
【0055】
また、水以外にも水溶性の有機溶剤を含有することができる。例えば、反応に使用した有機溶剤やそれを除去し、別の有機溶剤を添加することもできる。
【0056】
塗布層中のポリエステル樹脂とブロックイソシアネートの質量比(ポリエステル樹脂/ブロックイソシアネート)は1/9〜9/1が好ましく、1/9〜8/2がより好ましく、2/8〜6/4がよりさらに好ましい。また、塗布層の固形成分中のブロックイソシアネートの含有量としては、10質量%以上90質量%以下が好ましい。より好ましくは、20質量%以上80質量%以下である。少ない場合には、塗布層の耐溶剤性が低下し、高温高湿下での密着性が低下し、多い場合には、塗布層の樹脂の柔軟性が低下し、常温、高温高湿下での密着性が低下する。ブロックイソシアネートは2種類以上を組み合わせても良いし、2種類以上のブロック剤を組合せても良い。その際は、少なくとも1種のブロックイソシアネートは本発明の規定を満足する必要がある。
【0057】
本発明において、塗膜強度を向上させるために、2種類の架橋剤を混合させても良い。混合させる架橋剤としては、メラミン系、エポキシ系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等が挙げられる。塗液の経時安定性、高温高湿処理下の密着性向上効果からカルボジイミド系、オキサゾリン系が好ましい。また、架橋反応を促進させるため、触媒等を必要に応じて適宜使用される。
【0058】
(添加剤)
本発明において、塗布層中に粒子を含有させることもできる。粒子は(1)シリカ、カオリナイト、タルク、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウム、カーボンブラック、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化錫、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の無機粒子、(2)アクリルあるいはメタアクリル系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系、ナイロン、スチレン/アクリル系、スチレン/ブタジエン系、ポリスチレン/アクリル系、ポリスチレン/イソプレン系、ポリスチレン/イソプレン系、メチルメタアクリレート/ブチルメタアクリレート系、メラミン系、ポリカーボネート系、尿素系、エポキシ系、ウレタン系、フェノール系、ジアリルフタレート系、ポリエステル系等の有機粒子が挙げられる。
【0059】
前記粒子の平均粒径は特に限定されないが、フィルムの透明性を維持する点から、前記粒子の平均粒径が1〜500nmのものが好適であり、1〜100nmであればより好ましい。なお、前記の平均粒径はコールターカウンター(ベックマン・コールター製、マルチサイザーII型)を用いて、粒子を膨潤させない溶媒に分散させて測定した平均粒径である。
【0060】
前記粒子としては、平均粒径の異なる粒子を2種類以上を用いても良い。
【0061】
粒子の含有量としては、0.5質量%以上20質量%以下が好ましい。少ない場合は、十分な耐ブロッキング性を得ることができない。また、対スクラッチ性が悪化してしまう。多い場合は、塗布層の透明性が悪くなるだけでなく、塗膜強度が低下する。
【0062】
塗布層には、コート時のレベリング性の向上、コート液の脱泡を目的に界面活性剤を含有させることもできる。界面活性剤は、カチオン系、アニオン系、ノニオン系などいずれのものでも構わないが、シリコン系、アセチレングリコール系又はフッ素系界面活性剤が好ましい。これらの界面活性剤は、機能層との密着性を損なわない程度の範囲で塗布層に含有させることが好ましい。
【0063】
本発明の易接着性ポリエステルフィルムは、ヘイズ値が2.0%以下であることが好ましく、より好ましくは1.8%以下であり、さらに好ましくは1.5%以下である。アニオン性のブロックイソシアネートを用いることで、他の樹脂との相溶性が向上し、高い透明性が得られる。
【0064】
塗布層に他の機能性を付与するために、機能層との密着性を損なわない程度の範囲で、各種の添加剤を含有させても構わない。前記添加剤としては、例えば、蛍光染料、蛍光増白剤、可塑剤、紫外線吸収剤、顔料分散剤、抑泡剤、消泡剤、防腐剤、帯電防止剤等が挙げられる。
【0065】
本発明において、易接着性ポリエステルフィルム上に塗布層を設ける方法としては、溶媒、粒子、樹脂を含有する塗布液をポリエステルフィルムに塗布、乾燥する方法が挙げられる。溶媒として、トルエン等の有機溶剤、水、あるいは水と水溶性の有機溶剤の混合系が挙げられるが、好ましくは、環境問題の点から水単独あるいは水に水溶性の有機溶剤を混合したものが好ましい。
【0066】
(易接着性ポリエステルフィルムの製造)
本発明の易接着性ポリエステルフィルムの製造方法について、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する)フィルムを例にして説明するが、当然これに限定されるものではない。
【0067】
塗布層は、製膜したフィルムもしくはフィルム製造工程の任意の段階で、PETフィルムの少なくとも片面に、塗布液を塗布し、形成する。特に、ブロック剤の解離のために高い熱付加が可能なフィルム製造工程での塗布(インラインコート法)が好ましい。塗布層はPETフィルムの両面に形成させても特に問題はない。塗布液中の樹脂組成物の固形分濃度は、2〜35重量%であることが好ましく、特に好ましくは4〜15重量%である。
【0068】
塗布液をPETフィルムに塗布するための方法は、公知の任意の方法を用いることができる。例えば、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ダイコーター法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーコート法、パイプドクター法、含浸コート法、カーテンコート法、などが挙げられる。これらの方法を単独で、あるいは組み合わせて塗工する。
【0069】
インラインコート法による場合、塗布層は未延伸あるいは一軸延伸後のPETフィルムに前記塗布液を塗布、乾燥した後、少なくとも一軸方向に延伸し、次いで熱処理を行って形成させる。
【0070】
本発明において、最終的に得られる塗布層の厚みは20〜350nm、乾燥後の塗布量は、0.02〜0.5g/mであることが好ましい。塗布層の塗布量が0.02g/m未満であると、接着性に対する効果がほとんどなくなる。一方、塗布量が0.5g/mを越えると、ヘイズが増加してしまう。
【0071】
基材となるフィルムは、PETフィルムを例にすると、以下のようにして得ることができる。PET樹脂を十分に真空乾燥した後、押出し機に供給し、Tダイから約280℃の溶融PET樹脂を回転冷却ロールにシート状に溶融押出しし、静電印加法により冷却固化せしめて未延伸PETシートを得る。前記未延伸PETシートは、単層構成でもよいし、共押出し法による複層構成であってもよい。また、PET樹脂中に不活性粒子を実質的に含有させないことが好ましい。
【0072】
得られた未延伸PETシートを、80〜120℃に加熱したロールで長手方向に2.5〜5.0倍に延伸して、一軸延伸PETフィルムを得る。さらに、フィルムの端部をクリップで把持して、70〜140℃に加熱されたテンター内の熱風ゾーンに導き、幅方向に2.5〜5.0倍に延伸し、テンター内の熱処理ゾーンに導き、熱処理を行う。本発明のブロックイソシアネートが熱付加により好適にブロック剤が解離するために、熱処理の際のテンター内の最高温度および熱処理時間は160℃以上、1秒以上が好ましく、180℃以上、5秒以上がより好ましい。また、ブロック剤の揮発を好適に抑制するために、熱処理の際のテンター内の最高温度および熱処理温度は250℃以下、60秒以下が好ましく、240℃以下、50秒以下がより好ましい。なお、上記熱処理時間は延伸後におけるテンター内の熱処理ゾーンから冷却ゾーンまでの滞在時間をいう。
【0073】
本発明の易接着性ポリエステルフィルムを巻き取ってなる易接着性ポリエステルフィルムロールも本発明の好適な態様である。本発明の塗布層は、架橋剤の添加により耐ブロッキング性が良好なため、生産性向上のためにロール体とした場合であっても好適に用いることができる。
【0074】
本発明の易接着性ポリエステルフィルムの厚さは特に限定されないが、25〜500μmの範囲で、使用する用途の規格に応じて任意に決めることができる。易接着性ポリエステルフィルムの厚みの上限は、400μmが好ましく、特に好ましくは350μmである。一方、フィルム厚みの下限は、50μmが好ましく、特に好ましくは75μmである。フィルム厚みが25μm未満では、機械的強度が不十分となりやすい。一方、フィルム厚みが500μmを超えるとロール状に巻き取ることが困難になりやすい。
【0075】
本発明の易接着性ポリエステルフィルムをロールとする場合には、その巻き長及び幅は、当該フィルムロールの用途により適宜決定される。フィルムロールの巻き長は1500m以上が好ましく、より好ましくは1800m以上である。また、巻き長の上限としては5000mが好ましい。また、フィルムロールの幅は500mm以上であることが好ましく、より好ましくは800mmである。なお、フィルムロールの幅の上限としては2000mmが好ましい。
【0076】
(光学用積層ポリエステルフィルム)
本発明の光学用積層ポリエステルフィルムは、前述のポリエステルフィルムの塗布層の少なくとも片面に、ハードコート層、光拡散層、レンズ層、電磁波吸収層、近赤外線遮断層、透明導電層から選択される、少なくとも1層の光学機能層を積層することにより得られる。なお、前記レンズ層としては特に形状を問わないが、例えば、プリズム状レンズ、フレネル状レンズ、マイクロレンズなどが好適に適用できる。
【0077】
前記光学機能層に用いられる材料は特に限定されるものではなく、乾燥、熱、化学反応、もしくは電子線、放射線、紫外線のいずれかを照射することによって重合、および/または反応する樹脂化合物を用いることができる。このような、硬化性樹脂としては、メラミン系、アクリル系、シリコン系、ポリビニルアルコール系の硬化性樹脂が挙げられるが、高い表面硬度もしくは光学設計を得る点で光硬化性型のアクリル系硬化性樹脂が好ましい。このようなアクリル系硬化性樹脂としては、多官能(メタ)アクリレート系モノマーやアクリレート系オリゴマーを用いることができ、アクリレート系オリゴマーの例としては、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリブタジエンアクリレート系、シリコーンアクリレート系などが挙げられる。これらアクリル系硬化性樹脂に反応希釈剤、光重合開始剤、増感剤などを混合することで、前記光学機能層を形成するためのコート用組成物を得ることができる。
【0078】
また、本発明のポリエステルフィルムは、前記光学用途以外でも良好な接着強度が得られうる。具体的には、写真感光層、ジアゾ感光層、マット層、磁性層、インクジェットインキ受容層、ハードコート層、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、印刷インキやUVインキ、ドライラミネートや押し出しラミネート等の接着剤、金属あるいは無機物またはそれらの酸化物の真空蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、CVD、プラズマ重合等で得られる薄膜層、有機バリアー層等が挙げられる。
【実施例】
【0079】
次に、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は当然以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた評価方法は以下の通りである。
【0080】
(1)固有粘度
JIS K 7367−5に準拠し、溶媒としてフェノール(60質量%)と1,1,2,2−テトラクロロエタン(40質量%)の混合溶媒を用い、30℃で測定した。
【0081】
(2)解離温度、沸点
ブロックイソシアネートの解離温度は示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ株式会社製、DSC6200)によりDSC分析にて測定し、ブロック剤の沸点は熱重量・示差熱分析(TG/DTA)により測定した。なお、沸点の測定は1気圧下で行なった。
【0082】
(3)ガラス転移点温度
JIS K7121に準拠し、示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ株式会社製、DSC6200)を使用して、DSC曲線からガラス転移開始温度を求めた。
【0083】
(4)数平均分子量
樹脂0.03gをテトラヒドロフラン 10ml に溶かし、GPC−LALLS装置低角度光散乱光度計 LS−8000(東ソー株式会社製、テトラヒドロフラン溶媒、リファレンス:ポリスチレン)を用い、カラム温度30℃、流量1ml/分、カラム(昭和電工社製shodex KF−802、804、806)を用い、数平均分子量を測定した。
【0084】
(5)樹脂組成
樹脂を重クロロホルムに溶解し、ヴァリアン社製核磁気共鳴分析計(NMR)ジェミニ−200を用いて、H−NMR分析を行ってその積分比より各組成のモル%比を決定した。
【0085】
(6)酸価
1g(固形分)の試料を30mlのクロロホルムまたはジメチルホルムアミドに溶解し、フェノールフタレインを指示薬として0.1Nの水酸化カリウムエタノール溶液で滴定して、試料1g当たりのカルボキシル基を中和するのに必要なKOHの量(mg)を求めた。
【0086】
(7)易接着性ポリエステルフィルムの全光線透過率
得られた易接着性ポリエステルフィルムの全光線透過率はJIS K 7105に準拠し、濁度計(日本電色製、NDH2000)を用いて測定した。
【0087】
(8)易接着性ポリエステルフィルムのヘイズ
得られた易接着性ポリエステルフィルムのヘイズはJIS K 7136に準拠し、濁度計(日本電色製、NDH2000)を用いて測定した。
【0088】
(9)接着性
得られた光学用積層ポリエステルフィルムのハードコート層面に、隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて、光硬化型アクリル層を貫通して基材フィルムに達する100個のマス目状の切り傷をつける。次いで、セロハン粘着テープ(ニチバン社製、405番;24mm幅)をマス目状の切り傷面に貼り付け、消しゴムでこすって完全に密着させた。その後、垂直にセロハン粘着テープを積層ポリエステルフィルムのハードコート層面から引き剥がす作業を1回行った後、光学用積層ポリエステルフィルムのハードコート層面から剥がれたマス目の数を目視で数え、下記の式からハードコート層と基材フィルムとの密着性を求めた。なお、マス目の中で部分的に剥離しているものも剥がれたマス目として数え、下記の基準でランク分けをした。
密着性(%)=(1−剥がれたマス目の数/100)×100
◎:100%、または、ハードコート層の材破
○:99〜90%
△:89〜70%
×:69〜0%
【0089】
(10)耐湿熱性
得られた光学用積層ポリエステルフィルムを、高温高湿槽中で80℃、95%RHの環境下48時間放置した。次いで、光学用積層ポリエステルフィルムを取りだし、室温常湿で12時間放置した。その後、垂直にセロハン粘着テープを積層ポリエステルフィルムのハードコート層面から引き剥がす作業を5回行う以外は、前記(9)と同様の方法でハードコート層と基材フィルムの密着性を求め、下記の基準でランク分けをした。
◎:100%、または、ハードコート層の材破
○:99〜90%
△:89〜70%
×:69〜0%
【0090】
(11)干渉斑改善性(虹彩状色彩)
得られた光学用積層ポリエステルフィルムを10cm(フィルム幅方向)×15cm(フィルム長手方向)の面積に切り出し、試料フィルムを作成した。得られた試料フィルムのハードコート層とは反対面に、黒色光沢テープ(日東電工製、ビニルテープNo21;黒)を貼り合わせた。この試料フィルムのハードコート面を上面にして3波長形昼白色(ナショナル パルック、F.L 15EX−N 15W)を光源として斜め上から目視でもっとも反射が強く見える位置関係(光源からの距離40〜60cm、フィルム面の垂線に対して15〜45°の角度)で観察した。
【0091】
目視で観察した結果を、下記の基準でランク分けをする。なお、観察は該評価に精通した5名で行ない、最も多いランクを評価ランクとする。仮に、2つのランクで同数となった場合には、3つに分かれたランクの中心を採用した。
○:ほとんど虹彩状色彩が見られない
△:僅かに虹彩状色彩が観察される
×:はっきりとした虹彩状色彩が観察される
【0092】
(12)外観性
ハードコート層を有する光学用積層ポリエステルフィルムのハードコート層面に約100Å厚みの金属(Al)蒸着を施した。金属蒸着面を下に、ブロムライト(VIDEO LIGHT VLG301 100V 300W LPL社製)を用いてフィルム面に対して約10°から45°の範囲で照射し、目視観察により次の3段階で評価した。
○:塗布面微小突起に起因する塗布層面のチラチラ感がなく、クリアな鏡面感がある
△:塗布面微小突起に起因する塗布層面のチラチラ感があまりない。
×:塗布面微小突起に起因する塗布層面のチラチラ感がある。
【0093】
(ポリエステル樹脂の重合)
攪拌機、温度計、および部分還流式冷却器を具備するステンレススチール製オートクレーブに、ジメチルテレフタレート194.2質量部、ジメチルイソフタレート184.5質量部、ジメチルー5−ナトリウムスルホイソフタレート14.8質量部、ジエチレングリコール233.5質量部、エチレングリコール136.6質量部、およびテトラーnーブチルチタネート0.2質量部を仕込み、160℃から220℃まで4時間かけてエステル交換反応を行なった。次いで255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後、30Paの減圧下で1時間30分反応させ、共重合ポリエステル樹脂(A−1)を得た。得られた共重合ポリエステル樹脂(A−1)は、淡黄色透明であった。得られた共重合ポリエステル樹脂(A−1)の還元粘度を測定したところ,0.70dl/gであった。DSCによるガラス転移温度は40℃であった。
【0094】
同様の方法で、別の組成の共重合ポリエステル樹脂(A−2)〜(A−7)を得た。これらの共重合ポリエステル樹脂に対し、H−NMRで測定した組成(モル%比)及びその他特性を表1に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
(ポリエステル水分散体の調整)
攪拌機、温度計と還流装置を備えた反応器に、ポリエステル樹脂(A−1)30質量部、エチレングリコールn−ブチルエーテル15質量部を入れ、110℃で加熱、攪拌し樹脂を溶解した。樹脂が完全に溶解した後、水55質量部をポリエステル溶液に攪拌しつつ徐々に添加した。添加後、液を攪拌しつつ室温まで冷却して、固形分30質量%の乳白色のポリエステル水分散体(B−1)を作製した。同様にポリエステル樹脂(A−1)の代わりにポリエステル樹脂(A−2)〜(A−7)を使用して、水分散体を作製し、それぞれ水分散体(B−2)〜(B−7)とした。
【0097】
(ブロックポリイソシアネート架橋剤C−1の重合)
撹拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコにヘキサメチレンジイソシアネートを原料としたイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物(旭化成ケミカルズ製、デュラネートTPA)52.21質量部にポリエチレングリコールモノメチルエーテル(平均分子量 1000)20.72質量部を滴下し、素雰囲気下、70℃で5時間保持した。その後、3,5−ジメチルピラゾール(解離温度:120℃、沸点:218℃)27.08質量部を滴下した。反応液の赤外スペクトルを測定し、イソシアネート基の吸収が消失したことを確認後、ジプロピレングリコールジメチルエーテル25質量部、水125質量部を加え、30℃で高速攪拌し、固形分40質量%のブロックポリイソシアネート水分散液(C−1)を得た。
【0098】
(ブロックポリイソシアネート架橋剤C−2の重合)
撹拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコにヘキサメチレンジイソシアネートを原料としたビウレット構造を有するポリイソシアネート化合物(旭化成ケミカルズ製、デュラネート24A−100)52.54質量部にポリエチレングリコールモノメチルエーテル(平均分子量 1000)19.78質量部素雰囲気下、70℃で5時間保持した。その後、3,5−ジメチルピラゾール(解離温度:120℃、沸点:218℃)27.67質量部を滴下した。反応液の赤外スペクトルを測定し、イソシアネート基の吸収が消失したことを確認後、ジプロピレングリコールジメチルエーテル25質量部、水125質量部を加え、30℃で高速攪拌し、固形分40質量%のブロックポリイソシアネート水分散液(C−2)を得た。
【0099】
(ブロックポリイソシアネート架橋剤C−3の重合)
撹拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコにヘキサメチレンジイソシアネートを原料としたイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物(旭化成ケミカルズ製、デュラネートTPA)66.04質量部、N−メチルピロリドン17.50質量部に3,5−ジメチルピラゾール(解離温度:120℃、沸点:218℃)25.19質量部を滴下し、素雰囲気下、70℃で1時間保持した。その後、ジメチロールプロパン酸5.27質量部を滴下した。反応液の赤外スペクトルを測定し、イソシアネート基の吸収が消失したことを確認後、N,N−ジメチルエタノールアミン5.59質量部、水132.5質量部を加え、固形分40質量%のブロックポリイソシアネート水分散液(C−3)を得た。
【0100】
(ブロックポリイソシアネート架橋剤C−4の重合)
ブロックポリイソシアネート水分散液(C−1)の3,5−ジメチルピラゾール(解離温度:120℃、沸点:218℃)をマロン酸ジエチル(解離温度:120℃、沸点199℃)に変更した以外は、同様の方法で固形分40%のブロックポリイソシアネート水分散液(C−4)を得た。
【0101】
(ブロックポリイソシアネート架橋剤C−5の重合)
ブロックポリイソシアネート水分散液(C−1)の3,5−ジメチルピラゾール(解離温度:120℃、沸点:218℃)をメチルエチルケトオキシム(解離温度:140℃、沸点:152℃)に変更した以外は、同様の方法で固形分40%のブロックポリイソシアネート水分散液(C−5)を得た。
【0102】
(ブロックポリイソシアネート架橋剤C−6の重合)
ブロックポリイソシアネート水分散液(C−3)の3,5−ジメチルピラゾール(解離温度:120℃、沸点:218℃)をメチルエチルケトオキシム(解離温度:140℃、沸点:152℃)に変更した以外は、同様の方法で固形分40%のブロックポリイソシアネート水分散液(C−6)を得た。
【0103】
実施例1
(1)塗布液の調整
下記の塗剤を混合し、塗布液を作成した。ポリエステル樹脂は数平均分子量20000である。
水 51.77質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ポリエステル水分散体(B−1) 13.17質量%
ブロックポリイソシアネート水分散液(C−1) 4.23質量%
粒子 0.71質量%
(平均粒径40nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
粒子 0.07質量%
(平均粒径450nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
界面活性剤 0.05質量%
(シリコーン系、固形分濃度100質量%)
【0104】
(2)易接着性ポリエステルフィルムの製造
フィルム原料ポリマーとして、固有粘度が0.62dl/gで、かつ粒子を実質上含有していないPET樹脂ペレットを、133Paの減圧下、135℃で6時間乾燥した。その後、押し出し機に供給し、約280℃でシート状に溶融押し出しして、表面温度20℃に保った回転冷却金属ロール上で急冷密着固化させ、未延伸PETシートを得た。
【0105】
この未延伸PETシートを加熱されたロール群及び赤外線ヒーターで100℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向に3.5倍延伸して、一軸延伸PETフィルムを得た。
【0106】
次いで、前記塗布液をロールコート法でPETフィルムの片面に塗布した後、80℃で20秒間乾燥した。なお、最終(二軸延伸後)の乾燥後の塗布量が0.10g/mになるように調整した。引続いてテンターで、120℃で幅方向に4.0倍に延伸し、フィルムの幅方向の長さを固定した状態で、230℃で0.5秒間加熱し、さらに230℃で10秒間3%の幅方向の弛緩処理を行ない、厚さ100μmの易接着性ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表2に示す。
【0107】
(3)光学用積層ポリエステルフィルムの製造
前記の易接着性ポリエステルフィルムの塗布層面に、下記組成のハードコート層形成用塗布液を#10ワイヤーバーを用いて塗布し、70℃で1分間乾燥し、溶剤を除去した。次いで、ハードコート層を塗布したフィルムに高圧水銀灯を用いて300mJ/cmの紫外線を照射し、厚み5μmのハードコート層を有する光学用積層ポリエステルフィルムを得た。
ハードコート層形成用塗布液
メチルエチルケトン 39.00質量%
トルエン 26.00質量%
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 22.83質量%
(新中村化学製A−DPH)
ポリエチレンジアクリレート 11.17質量%
(新中村化学製A−400)
光重合開始剤 1.00質量%
(チバスペシャリティーケミカルズ社製イルガキュア184)
【0108】
比較例1
塗布液を下記に変更したこと以外は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムおよび光学用積層ポリエステルフィルムを得た。
水 50.36質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ポリエステル水分散体(B−1) 18.81質量%
粒子 0.71質量%
(平均粒径40nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
粒子 0.07質量%
(平均粒径450nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
界面活性剤 0.05質量%
(シリコーン系、固形分濃度100質量%)
【0109】
比較例2
ブロックポリイソシアネート水分散液をブロックポリイソシアネート水分散液(C−5)に変更した以外は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムおよび光学用積層ポリエステルフィルムを得た。
【0110】
比較例3
ブロックポリイソシアネート水分散液をブロックポリイソシアネート水分散液(C−6)に変更した以外は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムおよび光学用積層ポリエステルフィルムを得た。
【0111】
比較例4
ブロックポリイソシアネート水分散液をヘキサメチレンジイソシアネートを原料としたイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート水分散液(旭化成ケミカルズ製WT30−100)に変更し、塗布液を作成して24時間後に塗布した以外は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムおよび光学用積層ポリエステルフィルムを得た。
【0112】
実施例2
ポリエステル水分散体を分子量15000のポリエステル水分散体(B−2)に変更した以外は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムおよび光学用積層ポリエステルフィルムを得た。
【0113】
実施例3
ポリエステル水分散体を分子量23000のポリエステル水分散体(B−3)に変更した以外は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムおよび光学用積層ポリエステルフィルムを得た。
【0114】
実施例4
ポリエステル水分散体を分子量46000のポリエステル水分散体(B−4)に変更した以外は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムおよび光学用積層ポリエステルフィルムを得た。
【0115】
実施例5
ポリエステル水分散体を分子量50000のポリエステル水分散体(B−5)に変更した以外は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムおよび光学用積層ポリエステルフィルムを得た。
【0116】
実施例6
ポリエステル水分散体を分子量8000のポリエステル水分散体(B−6)に変更した以外は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムおよび光学用積層ポリエステルフィルムを得た。
【0117】
実施例7
ポリエステル水分散体を酸価50KOHmg/gのポリエステル水分散体(B−7)に変更した以外は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムおよび光学用積層ポリエステルフィルムを得た。
【0118】
実施例8
塗布液を下記に変更したこと以外は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムおよび光学用積層ポリエステルフィルムを得た。
水 50.83質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ポリエステル水分散体(B−1) 16.93質量%
ブロックポリイソシアネート水分散液(C−1) 1.41質量%
粒子 0.71質量%
(平均粒径40nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
粒子 0.07質量%
(平均粒径450nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
界面活性剤 0.05質量%
(シリコーン系、固形分濃度100質量%)
【0119】
実施例9
塗布液を下記に変更したこと以外は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムおよび光学用積層ポリエステルフィルムを得た。
水 51.30質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ポリエステル水分散体(B−1) 15.05質量%
ブロックポリイソシアネート水分散液(C−1) 2.82質量%
粒子 0.71質量%
(平均粒径40nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
粒子 0.07質量%
(平均粒径450nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
界面活性剤 0.05質量%
(シリコーン系、固形分濃度100質量%)
【0120】
実施例10
塗布液を下記に変更したこと以外は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムおよび光学用積層ポリエステルフィルムを得た。
水 52.70質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ポリエステル水分散体(B−1) 9.41質量%
ブロックポリイソシアネート水分散液(C−1) 7.06質量%
粒子 0.71質量%
(平均粒径40nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
粒子 0.07質量%
(平均粒径450nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
界面活性剤 0.05質量%
(シリコーン系、固形分濃度100質量%)
【0121】
実施例11
塗布液を下記に変更したこと以外は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムおよび光学用積層ポリエステルフィルムを得た。
水 54.12質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ポリエステル水分散体(B−1) 3.76質量%
ブロックポリイソシアネート水分散液(C−1) 11.29質量%
粒子 0.71質量%
(平均粒径40nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
粒子 0.07質量%
(平均粒径450nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
界面活性剤 0.05質量%
(シリコーン系、固形分濃度100質量%)
【0122】
実施例12
塗布液を下記に変更したこと以外は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムおよび光学用積層ポリエステルフィルムを得た。
水 54.59質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ポリエステル水分散体(B−1) 1.88質量%
ブロックポリイソシアネート水分散液(C−1) 12.70質量%
粒子 0.71質量%
(平均粒径40nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
粒子 0.07質量%
(平均粒径450nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
界面活性剤 0.05質量%
(シリコーン系、固形分濃度100質量%)
【0123】
実施例13
ブロックポリイソシアネート水分散液(C−1)をブロックポリイソシアネート水分散液(C−2)に変更した以外は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムおよび光学用積層ポリエステルフィルムを得た。
【0124】
実施例14
ブロックポリイソシアネート水分散液(C−1)をブロックポリイソシアネート水分散液(C−3)に変更した以外は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムおよび光学用積層ポリエステルフィルムを得た。
【0125】
実施例15
ブロックポリイソシアネート水分散液(C−1)をブロックポリイソシアネート水分散液(C−4)に変更した以外は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムおよび光学用積層ポリエステルフィルムを得た。
【0126】
実施例16
塗布液を作成して、24時間後に塗布した以外は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムおよび光学用積層ポリエステルフィルムを得た。
【0127】
実施例17
塗布液を下記に変更したこと以外は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムおよび光学用積層ポリエステルフィルムを得た。
水 60.88質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ポリエステル水分散体(B−1) 6.59質量%
ブロックポリイソシアネート水分散液(C−1) 2.12質量%
粒子 0.35質量%
(平均粒径40nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
粒子 0.04質量%
(平均粒径450nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
界面活性剤 0.02質量%
(シリコーン系、固形分濃度100質量%)
【0128】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明の易接着ポリエステルフィルムは、外観性と機能層との密着性に優れるため、ディスプレイなどに主として用いられる、ハードコートフィルム及び該フィルムを用いた反射防止フィルム、光拡散シート、プリズム状レンズシート、近赤外線遮断フィルム、透明導電性フィルム、防眩フィルム、などの機能性フィルムの基材フィルムとして好適である。