特許第5692248号(P5692248)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5692248
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/08 20060101AFI20150312BHJP
【FI】
   E02F9/08 Z
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-4039(P2013-4039)
(22)【出願日】2013年1月11日
(65)【公開番号】特開2014-134077(P2014-134077A)
(43)【公開日】2014年7月24日
【審査請求日】2014年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後口 明日香
【審査官】 富山 博喜
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−146834(JP,A)
【文献】 特開2011−074606(JP,A)
【文献】 特開2002−327459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
前記下部走行体の上に搭載された機械本体と、
前記機械本体の前側に、横軸及び縦軸の2軸回りに揺動可能に支持されたアタッチメントと、
を備えた作業機械であって、
前記機械本体は、前記アタッチメントを横軸回りに揺動可能に支持したスイングブラケットを、縦軸回りに揺動可能に支持した、鋳造品からなるフロントブラケットを有し、
前記フロントブラケットは、
上壁部、下壁部、一対の側壁部及び後壁部の各々によって上下左右及び後側の面が囲まれた固定部と、
前記上壁部及び前記下壁部が前方に突出することによって構成され、前記スイングブラケットを支持する支持部と、
を有し、
前記下壁部の上面は、
前記支持部の後端部から後方に向かって下る傾斜面と、
前記傾斜面に連なって、前記一対の側壁部の各々の内面下側の縁に沿って延びる断面円弧状の側方曲面部と、
を有し、
前記後壁部は、前後方向に開口する開口を有し、
前記開口の下側の縁の少なくとも一部が、前記傾斜面の最下部に連なって、当該最下部と同じ高さかそれよりも下方に位置している作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記下壁部の上面は、更に、前記傾斜面に連なって、前記後壁部の内面下側の縁に沿って延びる断面円弧状の後方曲面部を有し、
前記側方曲面部と前記後方曲面部とが交わる前記後壁部の内面下側の各隅に球面状の肉厚部が形成されている作業機械。
【請求項3】
請求項2に記載の作業機械において、
前記肉厚部において、前記側方曲面部側の曲率半径よりも前記後方曲面部側の曲率半径の方が大きくなっている作業機械。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の作業機械において、
前記アタッチメントから延びる線状部材の束が、前記開口を通じて配策されている作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横軸及び縦軸の2軸回りにアタッチメントが揺動可能な作業機械に関し、その中でも特にアタッチメントを支持するフロントブラケットの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、このような作業機械では、上部旋回体に設けられたフロントブラケットに、スイングブラケットが縦軸回りに揺動可能に支持されており、そのスイングブラケットに、バケットやアーム、ブームなどで構成されたアタッチメントが横軸回りに揺動自在に支持されている。それにより、アタッチメントは、起伏動作だけでなく左右への揺動動作も行えるようになっている。
【0003】
このようなスイングブラケットやフロントブラケットの構造は、例えば、特許文献1に開示されている。一般に、フロントブラケットは、鋼板を組み合わせて形成される製缶品が多いが、特許文献1では、精密鋳鋼によって形成されている。
【0004】
本発明に関し、フロントブラケットに関するものではないが、上部旋回体に入り込んだ泥等の堆積を低減できるようにした建設機械は、特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−146834号公報
【特許文献2】特開2011−256627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この種の作業機械では、フロントブラケットが外部に露出しているため、泥水がフロントブラケットに入り込んでその内部に溜まるという問題がある。
【0007】
泥水には固形分が多く含まれているため、泥水が溜まると泥が堆積して固着する。そうして形成される土塊を含め、フロントブラケットの内部から泥水を円滑に排出させるには、フロントブラケットに比較的大きな開口を設ける必要がある。
【0008】
ところが、フロントブラケットの側面や底面に大きな孔を空けると、フロントブラケットの強度及び剛性が低下する。低下する強度及び剛性を補うために、側面や底面の厚みを大きくすれば、フロントブラケットの重量や部材コストが増加する。
【0009】
そこで、本発明の目的は、作業機械のフロントブラケットを改良し、強度及び剛性を保持しながら排出性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、フロントブラケットが鋳造品であることを利用して、強度及び剛性を保持しながら、泥水等の優れた排出性が得られるように、フロントブラケットの下部構造を工夫した。
【0011】
すなわち、本発明に係る作業機械は、下部走行体と、前記下部走行体の上に搭載された機械本体と、前記機械本体の前側に、横軸及び縦軸の2軸回りに揺動可能に支持されたアタッチメントと、を備えた作業機械である。前記機械本体は、前記アタッチメントを横軸回りに揺動可能に支持したスイングブラケットを、縦軸回りに揺動可能に支持した、鋳造品からなるフロントブラケットを有している。
【0012】
前記フロントブラケットは、上壁部、下壁部、一対の側壁部及び後壁部の各々によって上下左右及び後側の面が囲まれた固定部と、前記上壁部及び前記下壁部が前方に突出することによって構成され、前記スイングブラケットを支持する支持部と、を有している。前記下壁部の上面は、前記支持部の後端部から後方に向かって下る傾斜面と、前記傾斜面に連なって、前記一対の側壁部の各々の内面下側の縁に沿って延びる断面円弧状の側方曲面部と、を有している。
【0013】
そして、前記後壁部は、前後方向に開口する開口を有し、前記開口の下側の縁の少なくとも一部が、前記傾斜面の最下部に連なって、当該最下部と同じ高さかそれよりも下方に位置している。
【0014】
この作業機械によれば、スイングブラケットを支持する支持部を構成している上壁部と下壁部とが前方に突出しているため、これらの間から泥水等がフロントブラケットの内部に入り込む。入り込んだ泥水は、フロントブラケットの下壁部の上面に受け止められるが、その上面には、支持部の後端部から後方に向かって下る傾斜面が形成されており、傾斜面の左右両側には、断面円弧状の側方曲面部が形成されているため、泥水は、隅部に溜まることなく円滑にフロントブラケットの後方の最下部へと誘導される。
【0015】
そして、後壁部に開口する開口の下側の縁の少なくとも一部が、傾斜面の最下部に連なって、これと同じ高さかそれよりも下方に位置しているため、泥水を、フロントブラケットの内部に留めることなく、開口を通じてフロントブラケットの後方に円滑に排出できる。
【0016】
鋳造によってフロントブラケットを一体化したことに加え、側方曲面部を設けたことで、構造的に箱構造の固定部が強化できるので、後壁部に開口を設けても強度及び剛性を保持できる。
【0017】
具体的には、前記下壁部の上面は、更に、前記傾斜面に連なって、前記後壁部の内面下側の縁に沿って延びる断面円弧状の後方曲面部を有し、前記側方曲面部と前記後方曲面部とが交わる前記後壁部の内面下側の各隅に球面状の肉厚部が形成されているようにしてもよい。
【0018】
そうすれば、肉厚部や後方曲面部によって更に泥水の排出性が向上するし、後壁部も構造的に強化される。従って、開口を大きくしても強度及び剛性が保持できるため、よりいっそう排出性を向上させることができる。
【0019】
より具体的には、前記肉厚部において、前記側方曲面部側の曲率半径よりも前記後方曲面部側の曲率半径の方が大きくなっているようにするのが好ましい。
【0020】
そうすれば、よりいっそう後壁部を構造的に強化できるので、より大きな開口が形成できる。従って、泥水の排出性をよりいっそう向上させることができる。
【0021】
例えば、前記アタッチメントから延びる線状部材の束を、前記開口を通じて配策するとよい。
【0022】
そうすれば、線状部材(油圧配管や電気配線等)の束を、機外にはみ出すことなく配策することができるので、美観の向上や油圧配管等の破損防止が図れる。
【発明の効果】
【0023】
本発明を適用した作業機械によれば、フロントブラケットが強度及び剛性だけでなく排出性にも優れるため、耐久性や美観の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施形態の作業機械を示す概略側面図である。
図2】本実施形態の作業機械を示す概略斜視図である。
図3】基部を示す概略斜視図である。
図4】フロントブラケットの接合構造を示す斜視図である。
図5】フロントブラケットの接合構造を示す分解斜視図である。
図6】フロントブラケットの下側部分を示す概略斜視図である。
図7図5における矢印線V−Vでの断面で見る概略平面図である。
図8図7における矢印線W−Wでの概略断面図である。
図9図7における矢印線X−Xでの概略断面図である。
図10図7における矢印線Y−Yでの概略断面図である。
図11】フロントブラケットの変形例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。
【0026】
図1及び図2に、本発明を適用した油圧ショベル(作業機械)1を示す。この油圧ショベル1は、後方小旋回型の小型機種であり、クローラ式の下部走行体2と、その上に旋回可能に搭載された上部旋回体(機械本体)3とで構成されている。
【0027】
上部旋回体3の右側には、燃料タンクや作動油タンク等を収容した側部機械室4が配置され、上部旋回体3の後側には、エンジン等を収容した後部機械室5が配置されている。上部旋回体3の左側には、運転シートや操作レバー等を備えた操作スペース6が配置され、上部旋回体3の上側には、操作スペース6に被さるようにフード7が設置されている。
【0028】
なお、図3等に示すように、特に言及しない限り、説明で用いる上下左右等の方向は上部旋回体3を基準に表している。
【0029】
上部旋回体3の前側には、アタッチメント10が、横軸HJ及び縦軸VJの2軸回りに揺動可能に支持されている。アタッチメント10は、バケット11やアーム12、ブーム13、油圧シリンダ14a〜14dなどで構成されている。
【0030】
具体的には、バケット11は、アーム12の先端部に支持されており、油圧制御されたバケットシリンダ14aの伸縮に応じて、横方向に延びる第1横軸HJ1回りに揺動する。アーム12は、その基端部がブーム13の先端部に支持されており、油圧制御されたアームシリンダ14bの伸縮に応じて、第1横軸HJ1と平行に延びる第2横軸HJ2回りに揺動する。
【0031】
ブーム13は、その基端部がスイングブラケット15に支持されており、油圧制御されたブームシリンダ14cの伸縮に応じて、第1横軸HJ1等と平行に延びる第3横軸HJ3回りに揺動する。スイングブラケット15は、上部旋回体3のフロントブラケット30に支持されており、図2に示すように、油圧制御されたスイングシリンダ14dの伸縮に応じて、縦方向に延びる縦軸VJ回りに揺動する。
【0032】
なお、図1及び図2では、アタッチメント10に沿って配策されている油圧ホースやケーブルについては図示を省略している。
【0033】
従って、この油圧ショベル1では、操作レバー等を操作することにより、アタッチメント10を起伏自在、かつ、左右方向に揺動自在に動かすことができる。動作するアタッチメント10に対して前後のバランスを保持するために、上部旋回体3の後部には、高重量のカウンターウエイト8が設置されている。
【0034】
そして、アタッチメント10やカウンターウエイト8等を安定して支持するために、上部旋回体3には強度及び剛性に優れた基台20が備えられている。基台20は、下部フレーム21や一対の縦板22,22、フロントブラケット30等で構成されている。図3に、その基台20を簡略化して示す。
【0035】
下部フレーム21は、肉厚な鋼板と、その周囲に組み付けられた枠等とで形成されている。下部フレーム21は、旋回ベアリング23を介して下部走行体2に旋回可能に支持されている。下部フレーム21の中央部位には、スイベルジョイント用の丸孔21aが形成されている。丸孔21aは、旋回ベアリング23の中心部を通じて下部走行体2の下方に開放されている。
【0036】
一対の縦板22,22は、下部フレーム21の左右方向における中央部位に配置されており、主に基台20の前後方向の強度及び剛性を強化している。これら縦板22,22は、いずれも帯状の肉厚な鋼板からなり、下部フレーム21の上面に立設され、左右に離れて対向しながら前後方向に延びている。この油圧ショベル1では、両縦板22,22は、後側に向かって次第に離れるようにV字状に配置されている。
【0037】
なお、図示はしていないが、下部フレーム21の上には、左右方向に延びる横梁が複数設置されている。基台20は、これら横梁と縦板22とで、左右方向の強度及び剛性も構造的に強化されている。
【0038】
両縦板22,22の後部でカウンターウエイト8の荷重を受け止めるように、カウンターウエイト8が、両縦板22,22の後部を跨いだ状態で下部フレーム21の上に載置されている。それに対応して、両縦板22,22の前部には、動作するアタッチメント10の荷重を受け止めるフロントブラケット30が取り付けられている。
【0039】
(フロントブラケット)
具体的には、図4及び図5に詳しく示すように、フロントブラケット30は、両縦板22,22の前端部の間に挟み込まれた状態で、下部フレーム21及び両縦板22,22に溶接して固定されている。
【0040】
フロントブラケット30は、鋳造品であり、一体に成形された上壁部31、下壁部32、一対の側壁部33,33、後壁部34等で構成されている。上壁部31及び下壁部32は、各々、前側が窄んだ平面視で略三角形状をした壁状の部分であり、上下に離れて対向している。各側壁部33は、これら上壁部31及び下壁部32の上下に対向した側縁に連なる壁状の部分であり、左右に離れて対向している。
【0041】
側壁部33は、上壁部31及び下壁部32の後側の部分にのみ設けられ、上壁部31の前端部分及び下壁部32の前端部分は、両側壁部33,33よりも前方に突出している。それにより、フロントブラケット30の前側には、上下に対向する一対のフランジ壁31a,32aで構成された支持部38が形成されている。
【0042】
各フランジ壁31a,32aは、平面視で略三角形状をしており、その前端部には、上下方向に貫通した円筒状のボス部39が形成されている。
【0043】
図1に示したように、フロントブラケット30は、この支持部38でスイングブラケット15を支持している。具体的には、上下のボス部39,39の間に、スイングブラケット15の上下方向に延びる軸筒部15aが挿入され、これらをシャフトで連結することにより、スイングブラケット15がフロントブラケット30に支持されている。
【0044】
支持部38は、外部に露出しているため、図3に白抜き矢印で示したように、上下のフランジ壁31a,32aの間の隙間から雨水や泥、土等(総称して泥水という)がフロントブラケット30の内部に入り込む。そのため、この油圧ショベルでは、フロントブラケット30に入り込んだ泥水を下部フレーム2に導いて、丸孔21a等から機外に容易に排出できるように、フロントブラケット30の構造が工夫されている(この点については別途後述)。
【0045】
後壁部34は、フロントブラケット30の後側に位置して、上壁部31の下面、下壁部32の上面及び両側壁部33,33の内面に連なる壁状の部分である。後壁部34は、上壁部31、下壁部32及び両側壁部33,33の各々と略直交し、前後方向に面している。
【0046】
これら上壁部31、下壁部32、一対の側壁部33,33及び後壁部34の各々により、フロントブラケット30の後部には、上下左右及び後側の面が囲まれた箱構造が形成されている(この部分を固定部35ともいう)。固定部35により、フロントブラケット30の後部は、構造的に強度及び剛性が強化され、フロントブラケット30と縦板22等とが強固に溶接されている。
【0047】
後壁部34には、前後方向に貫通する横長楕円状の大きな開口45が形成されている。
【0048】
図4に示したように、この開口45を通じて、アタッチメント10から延びる油圧配管や電気配線(線状部材)の束46が上部旋回体3の内部に配策されている。開口45を通じて、これら油圧配管等の束46を配策することにより、油圧配管等の束46を、機外にはみ出すことなく配策することができるので、美観の向上や油圧配管等の破損防止が図れる。
【0049】
すなわち、開口45には、油圧配管等の束46を効率的に上部旋回体3の内部に導くガイド孔としての機能がある。それに加え、この開口45には、フロントブラケット30に入り込んだ泥水を円滑に排出させる泥水排出口としての機能も備えられている。
【0050】
具体的には、フロントブラケット30が鋳造による一体物であることを利用して、高度な強度及び剛性を保持しながら、入り込んだ泥水を円滑に排出できるように、下壁部32の上面の構造が工夫されている。
【0051】
図6図10に、フロントブラケット30の下側部分を詳細に示す。図7では、等高線(2点鎖線)を用いて下壁部32の上面の曲面の変化を簡略化して表してある。
【0052】
図8に示すように、下壁部32の上面は後方に向かって下る傾斜面47となっている。具体的には、上面の左右方向の中間部分が前後方向に延びる傾斜面47となっており、その傾斜面47が、下壁部32の前端部に設けられたボス部39の縁から後方に向かって、下壁部32の後端に至るまで緩やかに下り傾斜している。
【0053】
従って、下壁部32の上面では、その後端の縁が最も低くなっている(最下部47a)。この最下部47aが開口45の下側の縁に連なることにより、開口45の下側の縁の中間部分には、最下部47aと同じ高さかそれよりも下方に位置する幅広な流出領域48が形成されている。
【0054】
しかも、傾斜面47の左右両側や後側はR形状に形成されている。
【0055】
具体的には、各側壁部33の内面の下側の縁と下壁部32の上面の左右の縁とによって構成される側方の隅部に、これら縁に沿って延びる側方曲面部53が形成されている。側方曲面部53は、図9に示すように、側壁部33の内面と下壁部32の上面とに接する円弧状の断面を有している。
【0056】
そして、後壁部34の内面の下側の縁と下壁部32の上面の後の縁とによって構成される後方の隅部に、これら縁に沿って延びる後方曲面部54が形成されている。後方曲面部54もまた、図10に示すように、後壁部34の内面と下壁部32の上面とに接する円弧状の断面を有している。
【0057】
これら側方曲面部53と後方曲面部54とが交わる後壁部34の内面下側の各隅には、球面状の肉厚部55が形成されている。
【0058】
具体的には、下壁部32の上面の左右の後端、後壁部34の内面の左右の端、及び各側壁部33の内面の後端で構成される左右の角隅部が、内側に盛り上がることによって肉厚部55が形成されている。肉厚部55は、これら各面に接する球面状の断面を有している。
【0059】
特に、この肉厚部55においては、側方曲面部53側の曲率半径r1よりも後方曲面部54側の曲率半径r2の方が大きくなっている。
【0060】
すなわち、後方曲面部54の角隅部寄りの曲率半径r2は、側方曲面部53の角隅部寄りの曲率半径r1よりも大きくなっている。それにより、肉厚部55では、後側の部分が前側の部分よりも内側に盛り上がって緩やかな曲面を形成している。
【0061】
このように下壁部32の上面の構造を工夫したことにより、フロントブラケット30の内部に泥水が入り込んでも、開口45を通じて下部フレーム21に泥水を円滑に排出させることができる。
【0062】
まず、フロントブラケット30の内部に入り込んだ泥水は、傾斜面47によってその最下部47aへと導かれる。最下部47aが連なる、開口45の下側の縁には、順勾配で幅広な流出領域48が形成されているので、大きな土塊でも支障なく開口45を通じてフロントブラケット30から排出させることができる。
【0063】
傾斜面47の左右両側や後側に側方曲面部53や後方曲面部54が形成されているため、泥が固着し難くなっている。しかも、最も泥の固着し易い、後壁部34の内面下側の角隅には球面状の肉厚部55が設けられているので、泥の固着が効果的に防止できる。従って、泥の堆積も効果的に抑制できる。
【0064】
しかも、側方曲面部53、後方曲面部54、及び肉厚部55を設けたことで、構造的に固定部35の強度及び剛性が強化できるため、側壁部33や後壁部34、下壁部32の肉厚を相対的に薄くすることが可能になり、フロントブラケット30全体としての軽量化や部材コストの削減が図れている。
【0065】
特に、後方曲面部54の曲率半径r2を相対的に大きくしたことにより、後壁部34の付け根部分がよりいっそう強化され、強度及び剛性を保持しながら後壁部34に大きな開口45を形成することが可能となっている。また、後方曲面部54の曲率半径r2を相対的に大きくしたことで、泥の固着の抑制や泥水の排出性も向上させることができる。
【0066】
(変形例等)
なお、本発明にかかる作業機械は、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。
【0067】
例えば、図11に示すように、開口45の上下方向の中間部位に、左右方向に延びる横リブ56を設けることにより、開口45を、上側のガイド孔と下側の泥水排出口とに区画してもよい。そうすれば、油圧配管等の束46の泥汚れを軽減できる。
【符号の説明】
【0068】
1 油圧ショベル(作業機械)
2 下部走行体
3 上部旋回体(機械本体)
10 アタッチメント
15 スイングブラケット
30 フロントブラケット
31 上壁部
32 下壁部
33 側壁部
34 後壁部
35 固定部
38 支持部
39 ボス部
45 開口
47 傾斜面
47a 最下部
53 側方曲面部
54 後方曲面部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11