(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5692249
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】建設機械のアタッチメント部材の組立、分解、輸送方法及び同アタッチメント部材用架台
(51)【国際特許分類】
E02F 3/38 20060101AFI20150312BHJP
【FI】
E02F3/38 Z
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-8162(P2013-8162)
(22)【出願日】2013年1月21日
(65)【公開番号】特開2014-139371(P2014-139371A)
(43)【公開日】2014年7月31日
【審査請求日】2014年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】小田 博之
(72)【発明者】
【氏名】山崎 隆典
(72)【発明者】
【氏名】堀本 弘之
【審査官】
富山 博喜
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−090680(JP,A)
【文献】
特開2011−256626(JP,A)
【文献】
特開平11−193543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業アタッチメントを構成するアタッチメント部材に、アタッチメント部材を支持する架台の上端部を左右方向の水平軸まわりに回動可能に取付けることにより、上記架台を、接地面に対して垂直に立つ立ち姿勢と接地面に沿って倒れる倒れ姿勢とに姿勢変更可能に構成し、上記架台には、上記立ち姿勢での接地部と、上記倒れ姿勢での接地部と、倒れ姿勢でアタッチメント部材の荷重を受ける荷重受け部を設け、地上において上記架台を立ち姿勢として、上記アタッチメント部材を他のアタッチメント部材に対して着脱する組立/分解作業を行い、上記架台を倒れ姿勢として上記アタッチメント部材と一体にトレーラ輸送することを特徴とする建設機械のアタッチメント部材の組立、分解、輸送方法。
【請求項2】
上記架台を上記アタッチメント部材の先端部に取付け、この架台を、上記アタッチメント部材に対する取付点が前方に位置する前倒れの倒れ姿勢でトレーラ輸送することを特徴とする請求項1記載の建設機械のアタッチメント部材の組立、分解、輸送方法。
【請求項3】
上記架台の倒れ姿勢での接地部を、上記倒れ姿勢における後端部下面に設定したことを特徴とする請求項2記載の建設機械のアタッチメント部材の組立、分解、輸送方法。
【請求項4】
上記架台の下端部に支持ベースを、架台の立ち姿勢で水平、倒れ姿勢で垂直となってそれぞれの下面が接地部となり、かつ、左右両端部がアタッチメント部材の幅外に突出する状態で設け、この支持ベースの、上記アタッチメント部材の幅外に突出する左右両端部に張り出し足を、立ち姿勢で後向きに、倒れ姿勢で上向きにそれぞれ突出する状態で設け、架台の倒れ姿勢でアタッチメント部材を上記両側張り出し足よりも内側に位置させることを特徴とする請求項3記載の建設機械のアタッチメント部材の組立、分解、輸送方法。
【請求項5】
上記架台全体の重心を、上記立ち姿勢で上記アタッチメント部材に対する取付点よりも前方に設定することにより、アタッチメント部材を吊り上げ機械により吊り上げた状態で上記架台を前倒れの傾斜姿勢で垂下させることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の建設機械のアタッチメント部材の組立、分解、輸送方法。
【請求項6】
上記架台を地上で倒れ姿勢としてアタッチメント部材に固定し、アタッチメント部材と架台を一体に吊り上げてトレーラ台車に積載することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の建設機械のアタッチメント部材の組立、分解、輸送方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の建設機械のアタッチメント部材の組立、分解、輸送方法に使用される建設機械のアタッチメント部材用架台であって、上端部に取付部を有し、この取付部により、作業アタッチメントを構成するアタッチメント部材に、左右方向の水平軸まわりに回動して接地面に対し垂直に立つ立ち姿勢と接地面に沿って倒れる倒れ姿勢とに姿勢変更可能に取付けるように構成し、かつ、上記立ち姿勢での接地部と、上記倒れ姿勢での接地部と、上記倒れ姿勢で上記アタッチメント部材の荷重を受ける荷重受け部を備えたことを特徴とする建設機械のアタッチメント部材用架台。
【請求項8】
上記倒れ姿勢での接地部を、上記アタッチメント部材に対する取付点が前方に位置する前倒れの倒れ姿勢における架台下面側に設けたことを特徴とする請求項7記載の建設機械のアタッチメント部材用架台。
【請求項9】
上記倒れ姿勢での接地部を、上記前倒れの倒れ姿勢における架台後端部の下面側に設けたことを特徴とする請求項8記載の建設機械のアタッチメント部材用架台。
【請求項10】
架台下端部に支持ベースを、左右両端部がアタッチメント部材の幅外に突出する状態で設け、この支持ベースには、上記立ち姿勢での接地部と、倒れ姿勢での接地部と、荷重受け部をそれぞれ設けるとともに、左右両端部に張り出し足を、立ち姿勢で後向きに、倒れ姿勢で上向きにそれぞれ突出する状態で設け、上記倒れ姿勢でアタッチメント部材が上記両側張り出し足よりも内側に位置するように構成したことを特徴とする請求項8または9記載の建設機械のアタッチメント部材用架台。
【請求項11】
架台全体の重心を、上記立ち姿勢で上記アタッチメント部材に対する取付点よりも前方に設定することにより、アタッチメント部材を吊り上げ機械により吊り上げ状態で架台全体が前倒れの傾斜姿勢で垂下するように構成したことを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の建設機械のアタッチメント部材用架台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はショベルや解体機等の建設機械における作業アタッチメントを構成するアタッチメント部材の組立、分解、輸送方法、及びこの方法に使用されるアタッチメント部材用架台に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ショベルや解体機等の建設機械は、
図11に示すクローラ式の下部走行体1と、この下部走行体1上に地面に対して垂直な軸Oまわりに旋回自在に搭載された上部旋回体2とから成るベースマシン3の前部に作業アタッチメントが装着されて構成される。
【0003】
作業アタッチメントは、ベースマシン3(上部旋回体2)に起伏自在に取付けられたメインブーム4と、このメインブーム4の先端にブーム接続ブロック5を介して取付けられたフロントブーム6と、このフロントブーム6の先端にアーム接続ブロック7を介して取付けられたアーム(図示しない)とから成り、アームの先端にバケット等の作業装置が取付けられる。
【0004】
図11中、8はメインブーム4を起伏させるブーム起伏シリンダ、9はフロントブーム6を上下回動させるフロントブームシリンダ、10はアーム接続ブロック7(アーム)を上下回動させるアームシリンダである。
【0005】
このような作業アタッチメント付きの建設機械においては、作業アタッチメントの組立、分解時に、その構成部材であるアタッチメント部材を架台によって地上に水平に支持し、この状態で隣り合う他のアタッチメント部材に対する着脱を行う。
【0006】
図11,12は一例として、アタッチメント分解時に、フロントブーム6と、ブーム接続、アーム接続両ブロック5,7と、フロントブーム、アーム両シリンダ9,10の一体物(以下、これ全体をアタッチメント部材といい、符号「A」を付す)をメインブーム4から取り外してトレーラ15で輸送する場合を示す。
【0007】
手順1:
図11に示すように、アタッチメント部材Aを前下がりに倒し、その先端部(アーム接続ブロック7)を架台11によって支持する。
【0008】
架台11は、下面が接地する状態で自立し、上端部がアタッチメント部材Aの先端部にピン等によって取付けられる。
【0009】
手順2:クレーン等の吊り上げ機械(図では吊りロープ12のみを示す)でアタッチメント部材Aを吊り、荷重をある程度支持した状態で、メインブーム4をわずかに起伏させる(必要に応じてベースマシン3の自走機能を加える)ことにより、メインブーム4とアタッチメント部材A(ブーム接続ブロック5)とを接続する接続ピン13,14の荷重を抜いて同ピン13,14を取り外す。
【0010】
手順3:
図12に示すように架台11を取付けたままアタッチメント部材Aを吊り上げて輸送用トレーラ15の台車16に積載する。
【0011】
このとき、アタッチメント部材Aの後端部(ブーム接続ブロック5)は台車16に、前端部(アーム接続ブロック7)は架台11にそれぞれ支持される。
【0012】
こうしてアタッチメント部材Aをトレーラ輸送し、到着現場で上記と逆の手順で地上に降ろし、別輸送されたメインブーム4及びアームに接続してアタッチメントの組立を行う。
【0013】
一方、架台を用いたアタッチメント部材の組立、分解、輸送方法として、特許文献1,2に記載されたものが公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2011−102517号公報
【特許文献2】特開2010−163823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献1,2に記載された技術を含む従来技術においては、
図12に示すように組立、分解のための架台11をそのままトレーラ輸送時の架台として利用すると、輸送時全高寸法Hが大きくなって法制限を超えてしまうという問題があった。
【0016】
このため、輸送時には別の低い架台に取り替えなければならず、組立、分解、輸送の作業性が悪いとともに、組立、分解用と輸送用の二種類の架台を用意しなければならないことでコスト、取り扱いの面でも不利となっていた。
【0017】
なお、輸送時の全高寸法Hが法制限内に収まるように架台11を低くすることが考えられるが、こうするとアタッチメントの倒し角度が制限されている機械では、組立、分解時にアタッチメントを下げても架台に届かない等の弊害が生じる。
【0018】
そこで本発明は、組立、分解に適した高さを持った架台をそのまま輸送用として使用しながら、輸送時の全高寸法を法制限内に抑えることができる建設機械のアタッチメント部材の組立、分解、輸送方法及び同アタッチメント部材用架台を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決する手段として、本発明の方法においては、作業アタッチメントを構成するアタッチメント部材に、アタッチメント部材を支持する架台の上端部を左右方向の水平軸まわりに回動可能に取付けることにより、上記架台を、接地面に対して垂直に立つ立ち姿勢と接地面に沿って倒れる倒れ姿勢とに姿勢変更可能に構成し、上記架台には、上記立ち姿勢での接地部と、上記倒れ姿勢での接地部と、倒れ姿勢でアタッチメント部材の荷重を受ける荷重受け部を設け、地上において上記架台を立ち姿勢として、上記アタッチメント部材を他のアタッチメント部材に対して着脱する組立/分解作業を行い、上記架台を倒れ姿勢として上記アタッチメント部材と一体にトレーラ輸送するものである。
【0020】
また、本発明の架台においては、上端部に取付部を有し、この取付部により、作業アタッチメントを構成するアタッチメント部材に、左右方向の水平軸まわりに回動して接地面に対し垂直に立つ立ち姿勢と接地面に沿って倒れる倒れ姿勢とに姿勢変更可能に取付けるように構成し、かつ、上記立ち姿勢での接地部と、上記倒れ姿勢での接地部と、上記倒れ姿勢で上記アタッチメント部材の荷重を受ける荷重受け部を備えたものである(請求項7)。
【0021】
この方法及び架台によれば、アタッチメント部材のトレーラ輸送時には架台を倒すことで架台高さを低くし、輸送時の全高寸法を法制限内に抑えることができる。
【0022】
本発明の方法において、上記架台を上記アタッチメント部材の先端部に取付け、この架台を、上記アタッチメント部材に対する取付点が前方に位置する前倒れの倒れ姿勢でトレーラ輸送するのが望ましい(請求項2)。
【0023】
また、本発明の架台において、上記倒れ姿勢での接地部を、上記アタッチメント部材に対する取付点が前方に位置する前倒れの倒れ姿勢における架台下面側に設けるのが望ましい(請求項8)。
【0024】
なお、この明細書において、
図1,2,11に示すアタッチメント組立、分解時を基準として、アタッチメント先端側(アーム側)を「前方」、同根元側(メインブーム側)を「後方」という。従って、トレーラ輸送時の進行方向がアタッチメント部材にとっては後方となる。
【0025】
アタッチメント部材の先端部を架台で支持した状態でトレーラ輸送する場合、輸送時全高寸法を低くする観点からは、架台を前倒れ、後倒れいずれの倒れ姿勢としてもよい。
【0026】
但し、アタッチメント部材に対する取付点(上端部)が後方に位置する後倒れ姿勢とすると、架台がアタッチメント部材の先端部から前方に飛び出すため、架台を含めたアタッチメント部材の全長が長くなる。
【0027】
これに対し、請求項2,8のように架台を前倒れに倒すことにより、架台を含めたアタッチメント部材の全長を短くすることができる。このため、トレーラ輸送時の長さ制限等の点で有利となる。
【0028】
本発明の方法及び架台において、倒れ姿勢での接地部を、上記倒れ姿勢での後端部下面に設定するのが望ましい(請求項3,9)。
【0029】
こうすれば、トレーラ輸送時に架台がアタッチメント部材に対する取付点よりも進行方向の前方でトレーラ台車に接地し、アタッチメント部材をトレーラ台車に載せるのに必要な前後方向寸法を小さくできるため、トレーラ台車として車長の短いものを使用することができる。
【0030】
また本発明の方法においては、架台下端部に支持ベースを、架台の立ち姿勢で水平、倒れ姿勢で垂直となってそれぞれの下面が接地部となり、かつ、左右両端部がアタッチメント部材の幅外に突出する状態で設け、この支持ベースの、上記アタッチメント部材の幅外に突出する左右両端部に張り出し足を、立ち姿勢で後向きに、倒れ姿勢で上向きにそれぞれ突出する状態で設け、架台の倒れ姿勢でアタッチメント部材を上記両側張り出し足よりも内側に位置させるのが望ましい(請求項4)。
【0031】
本発明の架台においては、架台下端部に支持ベースを、左右両端部がアタッチメント部材の幅外に突出する状態で設け、この支持ベースには、上記立ち姿勢での接地部と、倒れ姿勢での接地部と、荷重受け部をそれぞれ設けるとともに、左右両端部に張り出し足を、立ち姿勢で後向きに、倒れ姿勢で上向きにそれぞれ突出する状態で設け、上記倒れ姿勢でアタッチメント部材が上記両側張り出し足よりも内側に位置するように構成するのが望ましい(請求項10)。
【0032】
こうすれば、上記支持ベースの幅広設定と両側張り出し足により支持ベースの接地面積を増やして架台の転倒角度を大きくすること、つまり、架台を立ち姿勢に安定させることができる。
【0033】
また、架台の倒れ姿勢で、両張り出し足間にアタッチメント部材が入る(両張り出し足がアタッチメント部材の幅外に位置する)ため、アタッチメント部材の配管等の付属物が張り出し足と干渉するおそれがない。
【0034】
本発明の方法及び架台において、上記架台全体の重心を、上記立ち姿勢で上記アタッチメント部材に対する取付点よりも前方に設定することにより、アタッチメント部材を吊り上げ機械により吊り上げた状態で上記架台を前倒れの傾斜姿勢で垂下させる(架台の場合は垂下させるように構成する)のが望ましい(請求項5,11)。
【0035】
こうすれば、トレーラ輸送の準備段階として架台を前倒れに倒す際に倒れ易くなる。
【0036】
この場合、本発明の方法においては、上記架台を地上で倒れ姿勢としてアタッチメント部材に固定し、アタッチメント部材と架台を一体に吊り上げてトレーラ台車に積載するのが望ましい(請求項6)。
【0037】
こうすれば、トレーラ台車上で架台を倒す場合や、架台とアタッチメント部材を地上で一旦切り離して別々に吊り上げ、台車上でセットし直す場合と比べて作業性が良い。
【発明の効果】
【0038】
本発明によると、組立、分解に適した高さを持った架台をそのまま輸送用として使用しながら、輸送時の全高を法制限内に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の実施形態によるアタッチメント分解時の手順1として架台をアタッチメント部材の先端部に取付ける段階を示す側面図である。
【
図2】同、手順2としてアタッチメント部材を架台で支持した状態を示す側面図である。
【
図3】同、手順3として架台を含めたアタッチメント部材を吊り上げた状態の側面図である。
【
図4】同、手順4として架台を接地させた状態の側面図である。
【
図5】同、手順5として架台を前倒れの倒れ姿勢とし、かつ、アタッチメント部材に固定した状態の側面図である。
【
図6】同、手順6としてアタッチメント部材を架台と一体に吊り上げてトレーラ台車に積み込んだ状態の側面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る架台の斜視図である。
【
図11】従来の方法によるアタッチメント分解時の手順1としてアタッチメント部材を架台で支持した状態の側面図である。
【
図12】同、アタッチメント部材を架台とともにトレーラに積み込んだ状態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の実施形態を
図1〜
図10によって説明する。
【0041】
実施形態は、背景技術の説明に合わせて、メインブーム4と、このメインブーム4の先端にブーム接続ブロック5を介して取付けられたフロントブーム6と、このフロントブーム6の先端にアーム接続ブロック7を介して取付けられたアーム(図示しない)とから成る作業アタッチメントを適用対象とし、フロントブーム6と、ブーム、アーム両接続ブロック5,7と、フロントブーム、アーム両シリンダ9,10の一体物であるアタッチメント部材Aをメインブーム4から取り外してトレーラ輸送する場合を例にとって説明する。
【0042】
図1〜
図10において、
図11,12に示す部分と同一部分には同一符号を付して示し、その重複説明を省略する。
【0043】
図1はアタッチメント部材Aの先端部に架台21を取付ける段階、
図2はこの架台21を接地させてアタッチメント部材Aの先端部を支持した状態をそれぞれ示す。
【0044】
架台21の構成を
図7〜10等によって説明する。
【0045】
この架台21は、架台本体22の下端部に接地具としての支持ベース23が、架台本体22から左右両側にはみ出す状態で取付けられて成っている。
【0046】
架台本体22は、たとえば上下に長い左右一対の板状の支柱24,24によって構成されている。
【0047】
この架台本体22(両支柱24,24)の上端部には、アタッチメント部材Aに対する取付部としての左右方向に貫通する取付穴25が設けられ、
図1〜6に示すようにこの取付穴25と、アタッチメント部材Aの先端部(アーム接続ブロック7)に設けられたアーム接続ピン穴(符号省略)とに跨って取付ピン26(左右方向の水平軸)が差し込まれる。
【0048】
これにより、架台21がアタッチメント部材先端部に取付ピン26まわりに回動可能に取付けられ、
図2,7〜9に示すように接地面(地面またはトレーラ台車16の積載面)に対して垂直に立つ立ち姿勢と、
図5,6,10に示すように接地面に沿って前倒れに倒れる倒れ姿勢とに姿勢変更可能に構成されている。
【0049】
なお、「前倒れ」とは、アタッチメント部材Aに対する架台21の取付点(取付穴25及び取付ピン26)が前方、支持ベース23が後方にそれぞれ位置する倒れ姿勢をいう。
【0050】
支持ベース23は、四角パイプ等から成る前後一対の梁材27,28の左右両端に、前後方向に延びる張り出し足29,29が、架台立ち姿勢で後向きに突出する状態で取付けられて成り、立ち姿勢で水平、倒れ姿勢で垂直となってそれぞれの下面が接地部となる。
【0051】
すなわち、立ち姿勢では支持ベース23の下面が接地部となり、この立ち姿勢における同ベース前面が倒れ姿勢での接地部となる。
【0052】
いいかえれば、架台21の倒れ姿勢における後端部下面が倒れ姿勢での接地部となる。
【0053】
また、架台21の倒れ姿勢での上面、すなわち、立ち姿勢における後側梁材28の後面28a(
図8,10に示す)が、アタッチメント部材Aの荷重を支持する荷重受け部となる。以下、後側梁材28の後面を「荷重受け部」という。
【0054】
この荷重受け部28aには、アタッチメント部材Aと接触する左右両側部分にこれを防護するためのゴム製や木製等の受け具30(
図8,10参照)が設けられている。
【0055】
支持ベース23は、架台本体22に対して左右両側に突出するように架台本体22よりも幅広に形成され、このベース幅の設定と、両側張り出し足29,29によって架台21の立ち姿勢での接地面積を十分大きくとり、前後、左右の転倒角を大きくして安定度を高めるように構成されている。
【0056】
また、上記支持ベース23の幅広設定により、架台21の倒れ姿勢で、アタッチメント部材Aが両側張り出し足29,29よりも内側で荷重受け部28aに支持される。
【0057】
一方、
図1〜
図3に示すように架台21の重心Gは、立ち姿勢でアタッチメント部材Aに対する取付点よりも前方に位置するように設定されている。
【0058】
この重心設定により、
図3に示すように架台21を取付けた状態でアタッチメント部材Aを吊り上げたときに、架台21が自然に前倒れの傾斜姿勢で垂下するように構成されている。
【0059】
なお、架台各部の符号に関して、図の簡素化のため、
図1〜
図6には架台全体の符号「21」と支持ベースの符号「23」のみを付している。
【0060】
上記架台21を用いたアタッチメント部材Aの分解、輸送方法を説明する。
【0061】
手順1:
図1に示すように、アタッチメント部材Aを水平またはやや前下がりに下げた状態で、架台21をクレーン等の吊り上げ機械(吊りロープ12のみを図示している)により吊り上げてアタッチメント部材Aの先端部に取付ピン26によって取付ける。
【0062】
この場合、図示のように架台21をその重心Gよりも前方で吊り上げることによって後倒れの傾斜姿勢とすれば、架台21とアタッチメント部材Aの位置合わせを含めた取付作業がより簡単となる。
【0063】
手順2:架台取付後、
図2に示すように、アタッチメント部材Aを下げて架台21を立ち姿勢で接地させ、アタッチメント部材Aの先端部を架台21で支持する。
【0064】
この状態でアタッチメント部材Aを吊って荷重をある程度支持した上で、メインブーム4とアタッチメント部材Aを接続したピン13,14を取り外して両者を切り離す。
【0065】
手順3:
図3に示すように、切り離したアタッチメント部材Aを一旦吊り上げて架台21を自重で垂下させる。
【0066】
このとき、架台21は前記した重心設定により、前倒れの傾斜姿勢となる。
【0067】
手順4:
図4に示すようにアタッチメント部材Aを下げて架台21を接地させる。
【0068】
このとき、架台21は前倒れに傾斜しているため、アタッチメント部材Aを地上に下ろすに従って自然に前倒れに回動し、
図5に示す倒れ姿勢となる。
【0069】
手順5:
図5に示すように、架台21をワイヤやチェーンブロック等の固定具31によってアタッチメント部材A(たとえばフロントブーム6)に倒れ姿勢で固定する。
【0070】
手順6:
図6に示すように、架台付きのアタッチメント部材Aを輸送用トレーラ15の台車16に載せて輸送する。
【0071】
この場合、前記のように架台21の倒れ姿勢における後端部下面が接地部となる。
【0072】
アタッチメント部材Aの輸送後の組立(メインブーム4との接続)は上記と逆の手順、操作によって行われる。
【0073】
このように、アタッチメント部材Aのトレーラ輸送時には架台21を倒すため、架台高さを低くし、トレーラ輸送時の全高寸法H(
図6参照)を、
図12に示す従来技術よりも縮小して法制限内に収めることができる。
【0074】
この場合、架台21を前倒れ姿勢、つまりアタッチメント部材Aの下面側に抱き込む状態でトレーラ輸送するため、架台21がアタッチメント部材Aの先端から前方にはみ出さない。このため、後倒れに倒す場合と比べて輸送時の全長を短縮することができる。
【0075】
加えて、上記方法及び架台21によると、次の効果を得ることができる。
【0076】
(i) 架台21の倒れ姿勢での接地部を、倒れ姿勢での後端部下面に設定したから、いいかえれば架台21の倒れ姿勢での後端部下面を接地させる構成としたから、
図6に示すトレーラ輸送時に、アタッチメント部材Aをトレーラ台車16に載せるのに必要な前後方向寸法L2を、
図12に示す従来技術の場合の前後方向寸法L1よりも小さくすることができる。このため、トレーラ台車16として車長の短いものを使用することができる。
【0077】
(ii) 架台下端部の支持ベース23をアタッチメント部材Aよりも幅広とし、かつ、同ベース23の左右両端部に張り出し足29,29を立ち姿勢での後向きに突出する状態で設けたから、上記幅広設定と張り出し足29,29によって架台21を立ち姿勢に安定させることができる。
【0078】
また、架台21の倒れ姿勢で、両側張り出し足29,29よりも内側でアタッチメント部材Aを支持するため、アタッチメント部材Aの配管等の付属物が張り出し足29,29と干渉するおそれがない。
【0079】
(iii) 架台21全体の重心Gを、立ち姿勢でアタッチメント部材Aに対する取付点よりも前方に設定することにより、
図3に示すようにアタッチメント部材Aを吊り上げた状態で架台21が前倒れの傾斜姿勢で垂下するように構成したから、トレーラ輸送の準備段階として架台21を前倒れに倒す際に倒れ易くなる。
【0080】
(iv)
図4〜
図6に示すように、架台21を地上で倒れ姿勢としてアタッチメント部材Aに固定具31で固定し、アタッチメント部材Aと架台21を一体に吊り上げてトレーラ台車16に積み込むため、トレーラ台車16上で架台21を倒す場合や、架台21とアタッチメント部材Aを地上で一旦切り離して別々に吊り上げ、台車上でセットし直す場合と比べて作業性が良い。
【0081】
他の実施形態
(1) 上記実施形態では、アタッチメント部材Aのトレーラ輸送時に架台21を前倒れに倒すようにしたが、トレーラ輸送時の全高寸法Hを小さくするという観点のみに立てば、上記実施形態とは逆の後倒れに倒すようにしてもよい。
【0082】
(2) 上記実施形態では、架台21の前倒れ姿勢での後端部下面を接地させるようにしたが、前倒れ姿勢での中間部の下面を接地させるようにしてもよい。
【0083】
(3) 上記実施形態では架台21の荷重受け部を、架台本体22を構成する後梁28の、倒れ姿勢での上面に設定したが、たとえば架台本体22を構成する左右の支柱24,24間に梁部材を架け渡して荷重受け部としてもよい。
【0084】
(4) 本発明は、上記実施形態で挙げたメイン、フロント両ブーム4,6とアームを備えた作業アタッチメントにおける、フロントブーム6と両接続ブロック5,7から成るアタッチメント部材Aに限らず、作業アタッチメントを構成する各種のアタッチメント部材に対しても上記同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0085】
4 メインブーム
5 ブーム接続ブロック
6 フロントブーム
7 アーム接続ブロック
A アタッチメント部材
15 輸送用トレーラ
16 トレーラ台車
21 架台
23 架台の支持ベース
25 架台の取付部としての取付穴
26 取付ピン
27,28 架台を構成する梁材
28a 架台の荷重受け部(梁材後面)
29 架台の張り出し足
G 架台重心
31 固定具