【実施例1】
【0022】
図1(A)に示すように、本実施例における空気調和装置1は、ビル等の屋外に設置される1台の室外機2と、室外機2に液管8およびガス管9で並列に接続された3台の室内機5a〜5cとを備えている。詳細には、液管8は、一端が室外機2の閉鎖弁25に、他端が分岐して室内機5a〜5cの各液管接続部53a〜53cに、それぞれ接続されている。また、ガス管9は、一端が室外機2の閉鎖弁26に、他端が分岐して室内機5a〜5cの各ガス管接続部54a〜54cに、それぞれ接続されている。以上により、空気調和装置1の冷媒回路100が構成されている。
【0023】
まずは、室外機2について説明する。室外機2は、圧縮機21と、流路切換手段である四方弁22と、室外熱交換器23と、室外膨張弁24と、液管8の一端が接続された閉鎖弁25と、ガス管9の一端が接続された閉鎖弁26と、室外ファン27とを備えている。そして、室外ファン27を除くこれら各装置が以下で詳述する各冷媒配管で相互に接続されて、冷媒回路100の一部をなす室外機冷媒回路20を構成している。
【0024】
圧縮機21は、インバータにより回転数が制御される図示しないモータによって駆動されることで、運転容量を可変できる能力可変型圧縮機である。圧縮機21の冷媒吐出側は、後述する四方弁22のポートaに吐出管41で接続されており、また、圧縮機21の冷媒吸入側は、後述する四方弁22のポートcに吸入管42で接続されている。
【0025】
四方弁22は、冷媒の流れる方向を切り換えるための弁であり、a、b、c、dの4つのポートを備えている。ポートaは、上述したように圧縮機21の冷媒吐出側に吐出管41で接続されている。ポートbは、室外熱交換器23の一方の冷媒出入口と冷媒配管43で接続されている。ポートcは、上述したように圧縮機21の冷媒吸入側と吸入管42で接続されている。そして、ポートdは、閉鎖弁26と室外機ガス管45で接続されている。
【0026】
室外熱交換器23は、冷媒と、後述する室外ファン27の回転により室外機2内部に取り込まれた外気とを熱交換させるものである。室外熱交換器23の一方の冷媒出入口は、上述したように四方弁22のポートbに冷媒配管43で接続され、他方の冷媒出入口は室外機液管44で閉鎖弁25に接続されている。
【0027】
室外膨張弁24は、室外機液管44に設けられている。室外膨張弁24は電子膨張弁であり、その開度が調整されることで、室外熱交換器23に流入する冷媒量、あるいは、室外熱交換器23から流出する冷媒量を調整する。
【0028】
室外ファン27は樹脂材で形成されており、室外熱交換器23の近傍に配置されている。室外ファン27は、図示しないファンモータによって回転することで図示しない吸込口から室外機2内部へ外気を取り込み、室外熱交換器23において冷媒と熱交換した外気を図示しない吹出口から室外機2外部へ放出する。
【0029】
以上説明した構成の他に、室外機2には各種のセンサが設けられている。
図1(A)に示すように、吐出管41には、圧縮機21から吐出される冷媒の圧力を検出する高圧センサ31と、圧縮機21から吐出される冷媒の温度を検出する吐出温度センサ33が設けられている。吸入管42には、圧縮機21に吸入される冷媒の圧力を検出する吸入圧力検出手段である低圧センサ32と、圧縮機21に吸入される冷媒の温度を検出する吸入温度センサ34とが設けられている。
【0030】
室外熱交換器23には、暖房運転時の着霜、または、除霜運転時の霜の融解を検知するための熱交温度センサ35が設けられている。そして、室外機2の図示しない吸込口付近には、室外機2内に流入する外気の温度、すなわち外気温度を検出する外気温度センサ36が備えられている。
【0031】
また、室外機2には、室外機制御手段200が備えられている。室外機制御手段200は、室外機2の図示しない電装品箱に格納されている制御基板に搭載されている。
図2(B)に示すように、室外機制御手段200は、CPU210と、記憶部220と、通信部230と、センサ入力部240とを備えている。
【0032】
記憶部220は、ROMやRAMで構成されており、室外機2の制御プログラムや各種センサからの検出信号に対応した検出値、圧縮機21や室外ファン27の制御状態、後述する除霜運転条件テーブル、等を記憶している。通信部230は、室内機5a〜5cとの通信を行うインターフェイスである。センサ入力部240は、室外機2の各種センサでの検出結果を取り込んでCPU210に出力する。
【0033】
CPU210は、前述した室外機2の各センサでの検出結果をセンサ入力部240を介して取り込む。また、CPU210は、室内機5a〜5cから送信される制御信号を通信部230を介して取り込む。CPU210は、取り込んだ検出結果や制御信号に基づいて、圧縮機21や室外ファン27の駆動制御を行う。また、CPU210は、取り込んだ検出結果や制御信号に基づいて、四方弁22の切り換え制御を行う。さらには、CPU210は、取り込んだ検出結果や制御信号に基づいて、室外膨張弁24の開度制御を行う。
【0034】
また、室外機2には、設置情報入力部250が備えられている。設置情報入力部250は、例えば、図示しない室外機2の筐体側面に配置されており、外部から操作可能とされている。設置情報入力部250は、図示は省略するが、設定ボタンと決定ボタンと表示部とからなる。設定ボタンは、例えばテンキーで構成され、後述する冷媒配管長(液管8やガス管9の長さ)に関する情報や、室内機5a〜5cの定格能力に関する情報を入力するためのものである。決定ボタンは、設定ボタンにより入力した情報を確定するためのものである。表示部は、入力した各種情報や現在の室外機2の運転情報等を表示するものである。尚、設置情報入力部250は上記に限るものではなく、例えば、設定ボタンがディップスイッチやダイヤルスイッチ等であってもよい。
【0035】
次に、3台の室内機5a〜5cについて説明する。3台の室内機5a〜5cは、室内熱交換器51a〜51cと、室内膨張弁52a〜52cと、分岐した液管8の他端が接続された液管接続部53a〜53cと、分岐したガス管9の他端が接続されたガス管接続部54a〜54cと、室内ファン55a〜55cとを備えている。そして、室内ファン55a〜55cを除くこれら各装置が以下で詳述する各冷媒配管で相互に接続されて、冷媒回路100の一部をなす室内機冷媒回路50a〜50cを構成している。
【0036】
尚、室内機5a〜5cの構成は全て同じであるため、以下の説明では、室内機5aの構成についてのみ説明を行い、その他の室内機5b、5cについては説明を省略する。また、
図1では、室内機5aの構成装置に付与した番号の末尾をaからbおよびcにそれぞれ変更したものが、室外機5aの構成装置と対応する室内機5b、5cの構成装置となる。
【0037】
室内熱交換器51aは、冷媒と後述する室内ファン55aにより図示しない吸込口から室内機5a内部に取り込まれた室内空気とを熱交換させるものであり、一方の冷媒出入口が液管接続部53aに室内機液管71aで接続され、他方の冷媒出入口がガス管接続部54aに室内機ガス管72aで接続されている。室内熱交換器51aは、室内機5aが冷房運転を行う場合は蒸発器として機能し、室内機5aが暖房運転を行う場合は凝縮器として機能する。
尚、液管接続部53aやガス管接続部54aは、各冷媒配管が溶接やフレアナット等により接続されている。
【0038】
室内膨張弁52aは、室内機液管71aに設けられている。室内膨張弁52aは電子膨張弁であり、室内熱交換器51aが蒸発器として機能する場合は、その開度が要求される冷房能力に応じて調整され、室内熱交換器51aが凝縮器として機能する場合は、その開度が要求される暖房能力に応じて調整される。
【0039】
室内ファン55aは樹脂材で形成されており、室内熱交換器51aの近傍に配置されている。室内ファン55aは、図示しないファンモータによって回転することで、図示しない吸込口から室内機5a内に室内空気を取り込み、室内熱交換器51aにおいて冷媒と熱交換した室内空気を図示しない吹出口から室内へ供給する。
【0040】
以上説明した構成の他に、室内機5aには各種のセンサが設けられている。室内機液管71aにおける室内熱交換器51aと室内膨張弁52aとの間には、室内熱交換器51aに流入あるいは室内熱交換器51aから流出する冷媒の温度を検出する液側温度センサ61aが設けられている。室内機ガス管72aには、室内熱交換器51aから流出あるいは室内熱交換器51aに流入する冷媒の温度を検出するガス側温度センサ62aが設けられている。そして、室内機5aの図示しない吸込口付近には、室内機5a内に流入する室内空気の温度、すなわち室内温度を検出する室内温度センサ63aが備えられている。
【0041】
また、室内機5aには、室内機制御手段500aが備えられている。室内機制御手段500aは、室内機5aの図示しない電装品箱に格納された制御基板に搭載されており、
図1(B)に示すように、CPU510aと、記憶部520aと、通信部530aと、センサ入力部540aとを備えている。
【0042】
記憶部520aは、ROMやRAMで構成されており、室内機5aの制御プログラムや各種センサからの検出信号に対応した検出値、使用者による空調運転に関する設定情報等を記憶する。通信部530aは、室外機2および他の室内機5b、5cとの通信を行うインターフェイスである。センサ入力部540aは、室内機5aの各種センサでの検出結果を取り込んでCPU510aに出力する。
【0043】
CPU510aは、前述した室内機5aの各センサでの検出結果をセンサ入力部540aを介して取り込む。また、CPU510aは、使用者が図示しないリモコンを操作して設定した運転情報やタイマー運転設定等を含んだ信号を図示しないリモコン受光部を介して取り込む。CPU510aは、取り込んだ検出結果やリモコンから送信された信号に基づいて、室内膨張弁52aの開度制御や、室内ファン55aの駆動制御を行う。また、CPU510aは、運転開始/停止信号や運転情報(設定温度や室内温度等)を含んだ制御信号を、通信部530aを介して室外機2に送信する。
【0044】
次に、本実施形態における空気調和装置1の空調運転時の冷媒回路100における冷媒の流れや各部の動作について、
図1(A)を用いて説明する。尚、以下の説明では、室内機5a〜5cが冷房運転を行う場合について説明し、暖房運転を行う場合については詳細な説明を省略する。また、
図1(A)における矢印は冷房運転時の冷媒の流れを示している。
【0045】
図1(A)に示すように、室内機5a〜5cが冷房運転を行う場合、室外機制御手段200は、四方弁22を実線で示す状態、すなわち、四方弁22のポートaとポートbとが連通するよう、また、ポートcとポートdとが連通するよう、切り換える。これにより、室外熱交換器23が凝縮器として機能するとともに、室内熱交換器51a〜51cが蒸発器として機能する。
【0046】
圧縮機21から吐出された高圧の冷媒は、吐出管41を流れて四方弁22に流入し、四方弁22から冷媒配管43を流れて室外熱交換器23に流入する。室外熱交換器23に流入した冷媒は、室外ファン27の回転により室外機2内部に取り込まれた外気と熱交換を行って凝縮する。室外熱交換器23から流出した冷媒は室外機液管44を流れ、全開とされている室外膨張弁24および閉鎖弁25を介して液管8に流入する。
【0047】
液管8を流れて分流し各室内機5a〜5cに流入した冷媒は、室内機液管71a〜71cを流れ、室内膨張弁52a〜52cを通過するときに減圧されて低圧の冷媒となる。室内機液管71a〜71cから室内熱交換器51a〜51cに流入した冷媒は、室内ファン55a〜55cの回転により室内機5a〜5c内部に取り込まれた室内空気と熱交換を行って蒸発する。このように、室内熱交換器51a〜51cが蒸発器として機能し、室内熱交換器51a〜51cで冷媒と熱交換を行った室内空気が図示しない吹出口から室内に吹き出されることによって、室内機5a〜5cが設置された室内の冷房が行われる。
【0048】
室内熱交換器51a〜51cから流出した冷媒は室内機ガス管72a〜72cを流れガス管9に流入する。ガス管9を流れ閉鎖弁26を介して室外機2に流入した冷媒は、室外機ガス管45、四方弁22、吸入管42を流れ、圧縮機21に吸入されて再び圧縮される。
以上説明したように冷媒回路100を冷媒が循環することで、空気調和装置1の冷房運転が行われる。
【0049】
尚、室内機5a〜5cが暖房運転を行う場合、室外機制御手段200は、四方弁22が破線で示す状態、すなわち、四方弁22のポートaとポートdとが連通するよう、また、ポートbとポートcとが連通するよう、切り換える。これにより、室外熱交換器23が蒸発器として機能するとともに、室内熱交換器51a〜51cが凝縮器として機能する。
【0050】
室内機5a〜5cが暖房運転を行っているときに、以下に記載する除霜運転開始条件が成立した場合は、蒸発器として機能している室外熱交換器23において着霜が発生している虞がある。除霜運転開始条件は、例えば、暖房運転時間(空気調和装置1を暖房運転で起動した時点、あるいは、除霜運転から暖房運転に復帰した時点から暖房運転を継続している時間)が30分経過したのち、熱交温度センサ35で検出した冷媒温度が外気温度センサ36で検出した外気温度よりも5℃以上低い状態が、10分以上継続した場合や、前回の除霜運転が終了してから所定時間(例:180分)が経過した場合、等であり、室外熱交換器23での着霜量が暖房能力に支障をきたすレベルであることを示している。
【0051】
除霜運転開始条件が成立した場合は、室外機制御手段200は、圧縮機21を停止して暖房運転を停止し、冷媒回路100を前述した冷房運転時の状態に切り換え、圧縮機21を所定の回転数で再起動して除霜運転を開始する。尚、除霜運転を行うときは、室外ファン27および室内ファン55a〜55cは停止しているが、これ以外の冷媒回路100の動作については冷房運転を行っているときと同じであるため、詳細な説明は省略する。
【0052】
空気調和装置1が除霜運転を行っているときに、以下に記載する除霜運転終了条件が成立した場合は、室外熱交換器23で発生した霜が融解したと考えられる。除霜運転終了条件が成立した場合は、室外機制御手段200は、圧縮機21を停止して除霜運転を停止し、冷媒回路100を暖房運転時の状態に切り換えた後、圧縮機21を室内機5a〜5cで必要とされる暖房能力に応じた回転数で起動して暖房運転を再開する。除霜運転終了条件は、例えば、熱交温度センサ35で検出した室外熱交換器23から流出する冷媒の温度が10℃以上となったか否かや、除霜運転を開始してから所定時間(例:10分)が経過したか否か、等であり、室外熱交換器23で発生した霜が融解したと考えられる条件である。
【0053】
次に、
図1乃至
図3を用いて、本実施形態の空気調和装置1において、本発明に関わる冷媒回路の動作やその作用、および、効果について説明する。
【0054】
室外機2の室外機制御部200に備えられている記憶部220には、
図2に示す圧縮機回転数テーブル300aが、予め記憶されている。この圧縮機回転数テーブル300aは、空気調和装置1が除霜運転を行うときの圧縮機21の回転数Cr(単位:rps)の制御範囲を、室内機5a〜5cの室内機能力の総和Piを室外機2の定格能力の総和(以降、室外機能力の総和Poと記載)で除した能力比Pに応じて定めたものである。
【0055】
具体的には、
図2に示すように、能力比Pが所定の閾能力比A(例えば、75%)未満である場合は、圧縮機回転数Crの最小値が56rps、最大値が74rps、とされており、つまりは、圧縮機回転数Crの制御範囲が56rps〜74rpsとされている。また、能力比Pが閾能力比A以上である場合は、圧縮機回転数Crの最小値が72rps、最大値が90rps、とされており、つまりは、圧縮機回転数Crの制御範囲が72rps〜90rpsとされている。
【0056】
圧縮機回転数テーブル300aにおける圧縮機回転数Crの最大値は、予め試験等によって求められて定めたものであり、空気調和装置1で除霜運転を行うときに最初に設定される回転数である。前述したように、除霜運転時は圧縮機21の回転数をできる限り高くすることで、除霜運転を早期に終了させることが好ましいため、除霜運転開始時はこの圧縮機回転数Crの最大値で圧縮機21を起動し、除霜運転中はこの回転数を維持するように制御される。
【0057】
また、圧縮機回転数テーブル300aにおける圧縮機回転数Crの最小値も、予め試験等によって求められて定めたものであり、後述する圧縮機21の吸入圧力に応じた圧縮機21の回転数制御を行う際の下限値となる回転数である。圧縮機回転数Crの最小値は、これ以上圧縮機21の回転数Crを下げると、圧縮機21の吐出圧力と吸入圧力との圧力差が小さくなって冷媒循環量が大幅に減少する、あるいは、冷媒が循環しなくなって、除霜運転時間が長くなる、あるいは、除霜運転が行えなくなる回転数である。
【0058】
除霜運転時は、室外熱交換器23において霜と冷媒との間で熱交換が行われるので、凝縮温度が上がらず凝縮圧力も上がらない。また、外気温度が低い場合も凝縮温度が上がらず凝縮圧力も上がらない。凝縮圧力が上がらないと圧縮機21の吐出圧力も上がらないので、圧縮機21の吐出圧力と吸入圧力との圧力差が小さくなり、ガス管9を流れる冷媒量が少なくなる。そして、ガス管9を流れる冷媒量が少なくなると、圧縮機21の吸入圧力が低下する。
【0059】
また、除霜運転時に室内温度が低い場合は、室内熱交換器51a〜51cでの蒸発温度が低下して蒸発圧力が低下し、圧縮機の吸入圧力が低下する。さらには、室外機2の設置場所と室内機5a〜5cの設置場所とに高低差がある場合は、高低差に起因する圧力損失によって圧縮機21の吸入圧力が低下する。
【0060】
以上説明した要因によって、除霜運転中に圧縮機21の吸入圧力が低下する場合があるが、その低下の度合が大きいときに、圧縮機21の回転数Crを最大値で駆動し続けると、吸入圧力が大きく低下して性能下限値を下回る虞がある。そして、吸入圧力が性能下限値を下回ると、圧縮機が破損する虞があり、また、圧縮機が破損しないように圧縮機を停止する低圧保護制御が実行されて除霜運転時間が長くなって暖房運転への復帰が遅れるという問題がある。
【0061】
そこで、除霜運転中は、吸入圧力センサ32で検出した圧縮機21の吸入圧力を定期的に取り込み、取り込んだ吸入圧力に応じた圧縮機21の回転数Crの制御を、
図2に示す圧縮機回転数テーブル300aで定めた制御範囲内で行う。具体的には、吸入圧力が低下して、圧縮機21の性能下限値より所定値高い第1閾圧力(例えば、0.1MPa)未満となれば、圧縮機21の回転数Crを所定の割合(例えば、30秒毎に6rps)で減少させる。回転数Crを減少させたことによって吸入圧力が上昇し、吸入圧力が第1閾圧力より高い第2閾圧力(例えば、0.2MPa)以下となれば、圧縮機21の回転数Crを所定の割合(例えば、30秒毎に6rps)で増加させる。そして、吸入圧力が第1閾圧力以上第2閾圧力未満であるときは、圧縮機21の回転数Crを変化させない。圧縮機21の回転数Crを制御するときに異なる2つの閾圧力を用いることで、圧縮機21の回転数Crを制御を安定させる(1つの閾圧力で回転数Crを制御すると、頻繁に回転数Crの増減が切り換わる虞がある)ことができる。
【0062】
次に、能力比Pに応じて、圧縮機回転数Crの制御範囲を異ならせている理由を説明する。
【0063】
除霜運転時は、室外熱交換器23を凝縮器として機能させることで、圧縮機21から吐出された高温の冷媒を室外熱交換器23に流入させて着霜した霜を融解するが、室外熱交換器23での着霜量は、室外熱交換器23の大きさに応じた着霜量となり、室外熱交換器23が大きいほど着霜量も多くなる。従って、室外熱交換器23が大きい場合は、室外熱交換器23が小さい場合と比べて、より多くの高温冷媒を室外熱交換器23に流す必要がある。
【0064】
一方、除霜運転時に蒸発器として機能する室内熱交換器51a〜51cには、室内熱交換器51a〜51cの大きさに応じた流路断面積の室内膨張弁52a〜52cが接続されており、室内熱交換器51a〜51cが小さいほど流路断面積の小さい室内膨張弁52a〜52cが接続される。従って、室内熱交換器51a〜51cが小さい場合は、室内熱交換器51a〜51cが大きい場合と比べて、室内膨張弁52a〜52cを通過できる冷媒量、つまり、室内機5a〜5cからガス管9に流出する冷媒量が少なくなる。
【0065】
以上のことから、除霜運転開始時の冷媒回路10の冷媒循環量は、室外熱交換器23の大きさと室内熱交換器51a〜51cの大きさとに左右され、室外熱交換器23と室内熱交換器51a〜51cとの大きさの違いが大きいほど、室外熱交換器23に流入する冷媒量に対し室内熱交換器51a〜51cから流出する冷媒量が少なくなり、室外熱交換器23や液管8に冷媒が滞留して冷媒回路10の冷媒循環量が少なくなる。そして、冷媒回路10の冷媒循環量が少なくなるほど、ガス管9を流れる冷媒量が少なくなって、圧縮機21の吸入圧力の低下度合は大きくなる。
【0066】
室外熱交換器23と室内熱交換器51a〜51cとの大きさの違いに起因して圧縮機21の吸入圧力が大きく低下する状態、例えば、圧縮機回転数テーブル300aにおける能力比PがA未満であるときに、除霜運転時の圧縮機21の回転数Crの制御範囲を、能力比PがA以上であるときの制御範囲:72rps〜90rps、で圧縮機21の回転数Crを制御すれば、吸入圧力が大きく低下して性能下限値を下回る虞がある。吸入圧力が性能下限値を下回ると、圧縮機21が破損する虞があり、あるいは、圧縮機21が破損しないように圧縮機21を停止する低圧保護制御が実行されて除霜運転時間が長くなる虞がある。
【0067】
そこで、本発明では、圧縮機回転数テーブル300aのように、室外熱交換器23の大きさと等価である室外機能力の総和Poと、室内熱交換器51a〜51cの大きさと等価である室内機能力の総和Piとの比である能力比Pを用い、能力比Pが所定能力比A未満である場合は、圧縮機21の回転数Crの制御範囲を56rps〜74rpsとし、吸入圧力が低下して性能下限値を下回ることを防ぎつつ除霜運転を行う。そして、能力比Pが所定能力比A以上である場合は、吸入圧力の低下度合が小さく吸入圧力が性能下限値を下回る可能性が小さいので、圧縮機21の回転数Crの制御範囲を72rps〜90rpsとし、できる限り早く除霜運転が終了するよう制御する。
【0068】
次に、
図1乃至
図3を用いて、本実施形態の空気調和装置1で除霜運転を行う際の制御について説明する。
図3は、空気調和装置1が除霜運転を行う場合の、室外機制御部200のCPU210が行う処理の流れを示すものである。
図3において、STはステップを表し、これに続く数字はステップ番号を表している。尚、
図3では本発明に関わる処理を中心に説明しており、これ以外の処理、例えば、使用者の指示した設定温度や風量等の運転条件に対応した冷媒回路の制御、といった、空気調和装置に関わる一般的な処理については説明を省略している。
【0069】
空気調和装置1は、設置時における初期設定で、設定情報入力部250から入力された室内機5a〜5cの各定格能力を記憶部220に記憶する。このとき、CPU210は、記憶した室内機5a〜5cの各定格能力を用いて室内機能力の総和Piを算出し、予め記憶部220に記憶されている室外機2の定格能力の総和Po(本実施形態の場合、1台の室外機2なので、総和Poは室外機2の定格能力)で室内機能力の総和Piを除して能力比Pを算出する。そして、CPU210は、記憶部220に記憶されている圧縮機回転数テーブル300aを参照し、算出した能力比Pに対応する圧縮機21の回転数Crを抽出して記憶部220に記憶する。
【0070】
空気調和装置1が暖房運転を行っているとき、CPU210は、除霜運転開始条件が成立したか否かを判断する(ST1)。前述したように、除霜運転開始条件は、例えば、暖房運転時間が30分経過した後、熱交温度センサ35で検出した冷媒温度が、外気温度センサ36で検出した外気温度より5℃以上低い状態が10分以上継続した場合であり、CPU210は、熱交温度センサ35で検出した冷媒温度や外気温度センサ36で検出した外気温度を取り込んで、上記条件が成立したか否かを判断する。
【0071】
ST1において、除霜運転開始条件が成立していなければ(ST1−No)、CPU210は、暖房運転を継続し(ST9)、ST1に処理を戻す。除霜運転開始条件が成立していれば(ST1−Yes)、CPU210は、除霜運転準備処理を実行する(ST2)。除霜運転準備処理では、CPU210は、圧縮機21および室外ファン27を停止し、四方弁22においてポートaとbとが連通するよう、また、ポートcとdとが連通するよう切り換える。これにより、冷媒回路100が、室外熱交換器23が凝縮器として機能するとともに室内熱交換器51a〜51cが蒸発器として機能する状態、つまり、
図1(A)に示す冷房運転を行う際の状態となる。尚、除霜運転時は、室内機5a〜5cのCPU510a〜510cは、室内ファン55a〜55cを停止する。
【0072】
次に、CPU210は、圧縮機21を記憶部220に記憶している回転数Crで起動する(ST3)。圧縮機21を起動することにより、空気調和装置1で除霜運転が開始される。
【0073】
次に、CPU210は、低圧センサ32で検出した圧縮機21の吸入圧力を取り込む(ST4)。そして、CPU210は、取り込んだ吸入圧力を用いて圧縮機21の回転数制御を行う(ST5)。前述したように、CPU210は、取り込んだ吸入圧力に応じ、
図2に示す圧縮機回転数テーブル300aで定めた制御範囲内で圧縮機21の回転数制御を行い、具体的には、取り込んだ吸入圧力が、前述した閾圧力以下となれば、圧縮機21の回転数Crを所定の割合で減少させ、吸入圧力が閾圧力を超えれば、圧縮機21の回転数Crを所定の割合で増加させる。
【0074】
次に、CPU210は、除霜運転終了条件が成立しているか否かを判断する(ST6)。前述したように、除霜運転終了条件は、例えば、熱交温度センサ35で検出した室外熱交換器23から流出する冷媒の温度が10℃以上となったか否かである。CPU210は、熱交温度センサ35で検出した冷媒温度を常時取り込んで記憶部220に記憶している。CPU210は、記憶した冷媒温度を参照し、これが10℃以上となったか否か、つまり、除霜運転終了条件が成立したか否かを判断する。尚、除霜運転終了条件は、予め試験等によって定められたものであり、室外熱交換器23で発生した霜が融解したと考えられる条件である。
【0075】
ST9において、除霜運転終了条件が成立していなければ(ST6−No)、CPU210は、ST4に処理を戻し除霜運転を継続する。除霜運転終了条件が成立していれば(ST6−Yes)、CPU210は、暖房運転の再開処理を実行する(ST7)。運転再開処理では、CPU210は、圧縮機21を停止し、四方弁22においてポートaとdとが連通するよう、また、ポートbとcとが連通するよう切り換える。これにより、冷媒回路100が、室外熱交換器23が蒸発器として機能するとともに室内熱交換器51a〜51cが凝縮器として機能する状態となる。
【0076】
そして、CPU210は、暖房運転を再開し(ST8)、ST1に処理を戻す。暖房運転では、CPU210は、室内機5a〜5cから要求される暖房能力に応じて、圧縮機21や室外ファン27の回転数や室外膨張弁24の開度を制御する。
【0077】
以上説明した実施形態では、室内機5a〜5cの各能力は、空気調和装置の設置時に作業者が設置情報入力部250を操作して手動で入力する場合について説明したが、これに限るものではなく、例えば、室内機5a〜5cの各能力は、室内機制御部500a〜500cの記憶部520a〜520cに記憶されている室内機5a〜5cに関する機種情報に含まれ、室外機2のCPU210がこの機種情報を室内機5a〜5cから取り込むことで、室内機5a〜5cの各能力を取得するようにしてもよい。ここで、機種情報とは、室内機5a〜5cの各能力に加えて、室内機5a〜5cの型名や識別番号といった、室内機5a〜5cの基本的な情報で構成されるものである。
【実施例2】
【0078】
次に、本発明の空気調和装置の第2の実施形態について、
図4を用いて説明する。尚、本実施形態では、空気調和装置の構成や運転動作、および、設置条件に応じて除霜運転における圧縮機の起動時回転数や除霜運転間隔を異ならせることについては、第1の実施形態と同じであるため、詳細な説明は省略する。第1の実施形態と異なるのは、圧縮機回転数テーブルにおいて、室内機能力の総和Piのみに応じて圧縮機回転数の制御範囲を定めていることである。
【0079】
図4に示す圧縮機回転数テーブル300bは、
図2に示す圧縮機回転数テーブル300aと同様、室外機制御部200の記憶部220に予め記憶されている。圧縮機回転数テーブル300bは、空気調和装置1が除霜運転を行うときの圧縮機21の回転数Crの制御範囲を、室内機能力の総和Piに応じて定めたものである。
【0080】
具体的には、
図4に示すように、室内機能力の総和Piが所定の閾能力値B(例えば、8kW)未満である場合は、圧縮機回転数Crの最小値が56rps、最大値が74rps、とされており、つまりは、圧縮機回転数Crの制御範囲が56rps〜74rpsとされている。また、室内機能力の総和Piが閾能力値B以上である場合は、圧縮機回転数Crの最小値が72rps、最大値が90rps、とされており、つまりは、圧縮機回転数Crの制御範囲が72rps〜90rpsとされている。
【0081】
次に、圧縮機回転数テーブル300bにおいて、室内機能力の総和Piのみに応じて圧縮機21の回転数Crの制御範囲を定めている理由について説明する。空気調和装置1によっては、必要とされる定格能力に応じた大きさの室外熱交換器23を搭載した室外機2(この場合、圧縮機21はインバータ圧縮機であっても一定速圧縮機であってもよい)を備えるものと、搭載される室外熱交換器23の大きさは同じとし、圧縮機21の運転容量の制御により様々な定格能力を発揮できる室外機2を備えるものとが存在する。従って、後者のような室外熱交換器23の大きさが同じで定格能力が異なる室外機2を備える空気調和装置1では、設置条件に応じて定格能力を選択しても、実質的に同じ室外機2を選択することとなり、言い換えれば、選択できる室外機2が定まっている。
【0082】
第1の実施形態で説明したように、除霜運転を行う場合、室外熱交換器23が大きいほど着霜量も多くなるため、室外熱交換器23が大きい場合は、室外熱交換器23が小さい場合と比べて、着霜した霜を融解させるためにより多くの高温冷媒を室外熱交換器23に流す必要がある。従って、上述したような、選択できる室外機2が定まっている(=室外熱交換器23の大きさが固定されている)場合では、定格能力が異なっていても除霜に必要な高温冷媒の量は同じとなる。
【0083】
選択できる室外機2が定まっている場合に、第1の実施形態で説明したように室外機能力の総和Poと室内機能力の総和Piとの能力比Pに応じて圧縮機21の回転数Crの制御範囲を決定すれば、以下の具体例に説明するように、吸入圧力の低下による低圧保護制御となる可能性が低いにも関わらず、圧縮機21の回転数Crの制御範囲を56rps〜74rpsとして除霜運転を行うこととなり、除霜運転の効率が低下する虞がある。
【0084】
例えば、室外熱交換器23の大きさが全て同じで、圧縮機21の運転容量の制御によって定格能力を10kW、12kW、14kW、とできる室外機2に、室内機5a〜5cが接続され、除霜運転時に室外熱交換器23を除霜するのに必要な高温冷媒量を冷媒回路10に循環させるときに、冷媒循環量が低下して吸入圧力が大きく低下する室内機能力の総和Piの閾能力値Bが7.5kWである空気調和装置1を考える。
【0085】
上記のような空気調和装置1に、第1の実施形態で説明した、能力比Pに応じて圧縮機21の回転数Crの制御範囲を異ならせると、第1の実施形態では閾能力比が75%なので、室外機2の定格能力が10kWである場合の閾能力比に対する室内機5a〜5cの能力Piの総和は7.5kWとなる。同様に、室外機2の定格能力が12kWである場合の閾能力比に対する室内機5a〜5cの能力Piの総和は9.0kW)となり、室外機2の定格能力が14kWである場合の閾能力比に対する室内機5a〜5cの能力Piの総和は10.5kWとなる。
【0086】
室外機2の定格能力が10kWの場合は、閾能力比:75%で算出した室内機5a〜5cの能力Piの総和は7.5kWとなり、これは前述した室外熱交換器23の大きさに対応した閾能力値Bである7.5kWと合致する。従って、室外機2の定格能力が10kWの場合は、閾能力比:75%以上である場合と閾能力比:75%未満である場合とで圧縮機21の回転数Crの制御範囲を異ならせることで、圧縮機21の吸入圧力が大きく低下する虞があるときは、圧縮機21の回転数Crを56rps〜74rpsの制御範囲で制御することで低圧保護制御となることを防ぎ、圧縮機21の吸入圧力が大きく低下する虞がないときは、圧縮機21の回転数Crを72rps〜90rpsの制御範囲で制御することで除霜運転をできる限り早く完了する、といった本発明の目的を過不足なく実現できる。
【0087】
これに対し、室外機2の定格能力が12kWや14kwの場合は、閾能力比:75%で算出した室内機5a〜5cの能力Piの総和はそれぞれ9.0kW、10.5kWとなり、これは前述した室外熱交換器23の大きさに対応した閾能力値Bである7.5kWよりも大きい。そして、室外機2の定格能力が12kWや14kwの場合に第1の実施形態で説明した制御を適用すると、室外機2の定格能力が12kWの場合では、室内機5a〜5cの能力Piの総和が9.0kW未満であるときに、圧縮機21の回転数Crを56rps〜74rpsの制御範囲で制御することとなる。また、室外機2の定格能力が14kWの場合では、室内機5a〜5cの能力Piの総和が10.5kW未満であるときに、圧縮機21の回転数Crを56rps〜74rpsの制御範囲で制御することとなる。
【0088】
しかし、上述した室内機5a〜5cの能力Piの総和である9.0kWや10.5kWは、室外熱交換器23の大きさに対応した閾能力値Bである7.5kWよりも大きい。従って、室外機2の定格能力が12kWや14kwの場合では、本来であれば圧縮機21の回転数Crを72rps〜90rpsの制御範囲で制御できる室内機5a〜5cの能力Piの総和(室外機2の定格能力が12kWの場合はPi:7.5〜8.9kWの間、室外機2の定格能力が14kWの場合はPi:7.5〜10.4kWの間)であるときに、回転数Crを56rps〜74rpsの制御範囲で制御とすることとなり、不必要に除霜運転時の圧縮機21の回転数Crを低くすることで除霜運転時間が長くなる虞があった。
【0089】
本実施形態では、以上説明した問題点を考慮し、選択できる室外機2が定まっている空気調和装置1では、室内機能力の総和Piのみに応じて圧縮機21の回転数Crの制御範囲を定めている圧縮機回転数テーブル300bを有し、この圧縮機回転数テーブル300bに基づいて圧縮機21の回転数Crの制御範囲を決定しているので、除霜運転時の低圧低下を防ぎつつ不必要に除霜運転時の圧縮機21の回転数Crを低くすることで、除霜運転の効率低下を防ぐことができる。
【実施例3】
【0090】
次に、本発明の空気調和装置の第3の実施形態について、
図5を用いて説明する。尚、本実施形態では、空気調和装置の構成や運転動作、および、設置条件に応じて除霜運転における圧縮機の起動時回転数や除霜運転間隔を異ならせることについては、第1の実施形態と同じであるため、詳細な説明は省略する。第1の実施形態と異なるのは、圧縮機回転数テーブルにおいて、能力比に加えて室外機と室内機とを接続する冷媒配管の長さも考慮して圧縮機回転数の制御範囲を定めていることである。
【0091】
図5に示す圧縮機回転数テーブル300cは、
図2に示す圧縮機回転数テーブル300aと同様、室外機制御部200の記憶部220に予め記憶されている。圧縮機回転数テーブル300cは、空気調和装置1が除霜運転を行うときの圧縮機21の回転数Crの制御範囲を、室内機能力の総和Piと冷媒配管長Lrとに応じて定めたものである。
【0092】
ここで、冷媒配管長Lrとは、液管8およびガス管9の長さ(単位:m)を指し、本実施形態では、冷媒配管長Lrの最大値を50mとして説明する。この冷媒配管長Lrは、空気調和装置1が設置される建物の大きさや、室外機2の設置場所から室内機5a〜5cが設置される部屋までの距離に応じて決定される。
【0093】
図5に示すように、圧縮機回転数テーブル300cでは、能力比Pが所定の閾能力比A(例えば、75%)未満である場合と閾能力比A以上である場合(これについては、除霜運転条件テーブル300aと同じ)の各々について、冷媒配管長Lrが所定の閾配管長C(例えば、40m)未満である場合と閾配管長C以上である場合とに応じて、圧縮機21の回転数Crの制御範囲が定められている。
【0094】
具体的には、能力比Pが閾能力比A未満である場合に、冷媒配管長Lrが閾配管長C以上である場合は、圧縮機21の回転数Crの最小値が45rps、最大値が63rps、とされており、つまりは、圧縮機21の回転数Crの制御範囲が45rps〜63rpsとされている。また、冷媒配管長Lrが閾配管長C未満である場合は、圧縮機21の回転数Crの最小値が56rps、最大値が74rps、とされており、つまりは、圧縮機21の回転数Crの制御範囲が56rps〜74rpsとされている。
【0095】
能力比Pが閾能力比A以上である場合に、冷媒配管長Lrが閾配管長C以上である場合は、圧縮機21の回転数Crの最小値が62rps、最大値が80rps、とされており、つまりは、圧縮機回転数Crの制御範囲が62rps〜80rpsとされている。また、冷媒配管長Lrが閾配管長C未満である場合は、圧縮機21の回転数Crの最小値が72rps、最大値が90rps、とされており、つまりは、圧縮機21の回転数Crの制御範囲が72rps〜90rpsとされている。。
【0096】
次に、圧縮機回転数テーブル300cにおいて、能力比Pと冷媒配管長Lrとに応じて圧縮機21の回転数Crの制御範囲を定めている理由について説明する。第1の実施形態で説明したように、空気調和装置1が除霜運転を行っているときは、室外熱交換器23において霜と冷媒との間で熱交換が行われることや、外気温度が低いことによって凝縮圧力が上がらず圧縮機21の吐出圧力も上がらないので、圧縮機21の吐出圧力と吸入圧力との圧力差が小さくなり、ガス管9を流れる冷媒量が少なくなる。そして、ガス管9を流れる冷媒量が少なくなると、圧縮機21の吸入圧力が低下する。
【0097】
このとき、ガス管9の長さ、すなわち、冷媒配管長Lrが長いほど、ガス管9を流れる冷媒量が少なくなって圧縮機21に吸入される冷媒量が減少するので、冷媒配管長Lrが短い場合と比べて圧縮機21の吸入圧力が低下する虞がある。
【0098】
従って、能力比Pが小さいとき、冷媒配管長Lrが短い場合と比べて、冷媒配管長Lrが長い場合の方が吸入圧力が性能下限値を下回る可能性が高くなる。同様に、能力比Pが大きい場合であっても、冷媒配管長Lrが短い場合と比べて、冷媒配管長Lrが長い場合の方が吸入圧力が性能下限値を下回る可能性が高くなる。
【0099】
本実施形態では、以上説明した問題点を考慮し、能力比Pと冷媒配管長Lrに応じて圧縮機21の起回転数Crの制御範囲を定めている圧縮機回転数テーブル300cを有し、この圧縮機回転数テーブル300cに基づいて圧縮機21の回転数Crの制御範囲を決定している。能力比Pと冷媒配管長Lrとに応じて回転数Crの制御範囲を細かく設定することで、より的確に除霜運転時の低圧低下を防ぎつつ不必要に圧縮機21の回転数Crを低くして除霜運転の効率が低下することを防ぐことができる。
【0100】
尚、本実施形態では、能力比Pと冷媒配管長Lrとに応じて圧縮機21の回転数Crの制御範囲を定めた圧縮機回転数テーブル300cを有しているが、第2の実施形態で説明したように、室外熱交換器23の大きさが同じで定格能力の異なる複数の室外機2を備える空気調和装置1の場合は、能力比Pに代えて、室内機能力の総和Piと冷媒配管長Lrとに応じて圧縮機21の回転数Crの制御範囲を定めた圧縮機回転数テーブルを有するようにしてもよい。
【0101】
以上説明したように、本発明の空気調和装置は、除霜運転時の圧縮機の回転数を、能力比あるいは室内機の定格能力の総和あるいは冷媒配管長に応じた制御範囲で制御する。これにより、空気調和装置の設置状態により除霜運転時の冷媒循環量が減少するような場合であっても、吸入圧力が大きく低下して圧縮機の性能下限値を下回ることを防ぐことができる。従って、圧縮機の破損を防ぐことができる。また、吸入圧力が圧縮機の性能下限値を下回って低圧保護制御が実行されることを防ぐことができるので、低圧保護制御により除霜運転が中断されて除霜運転時間が長くなり、暖房運転への復帰が遅れるということがない。
【0102】
尚、以上説明した各実施形態では、室内機5a〜5cの定格能力は、空気調和装置1の設置時における初期設定時に、作業者が設定情報入力部250を操作して入力する場合について説明したが、室内機5a〜5cが自己の定格能力に関する情報を含んだ機種情報を記憶部520a〜520cに記憶しており、空気調和装置1の設置時における初期設定時に、室内機5a〜5cから室外機2の機種情報を送信するようにしてもよい。ここで、機種情報とは、室内機5a〜5cの定格能力に加えて、室内機5a〜5cの型名や識別番号等、空気調和装置1の管理や制御に必要な室内機5a〜5cの情報を含むものである。
【0103】
また、冷媒配管長Lrについても、作業者が設定情報入力部250を操作して入力するのではなく、以下に説明するように室外機2のCPU210が算出するようにしてもよい。室外機制御部200の記憶部220に、室外熱交換器23が凝縮器として機能しているときの冷媒出口における過冷却度や低圧センサ34で検出した吸入圧力を用いて求める低圧飽和温度、等といった運転状態量と冷媒配管長Lrとの関係式(例えば、過冷却度に応じて冷媒配管長Lrを定めたテーブル)を記憶しており、CPU210は、空気調和装置1を冷房運転しているときの運転状態量を取得し、上記関係式を用いて冷媒配管長Lrを求める。