【実施例】
【0023】
図1は、本発明の参考例の水量調整弁の多段開閉制御および実施例の水量調整弁の曲線開閉制御の各閉制御過程における水量調整弁の開度と時間との関係を示す図である。図では、破線が多段閉鎖制御であり、実線が曲線閉鎖制御を示している。
【0024】
図に示すとおり、多段閉鎖制御および曲線閉鎖制御の閉制御においては、水車負荷遮断時に水量調整弁を急激に閉鎖し、それから徐々にゆっくり閉鎖している。
これにより、長い配管系統を有する場合であっても、流量全体の変化を略均一に減少させることができ、配管系統の破損等を防ぐことができる。
【0025】
以下、多段開閉制御および曲線開閉制御の構成について、具体的に説明する。
図2は、本発明の参考例の多段開閉制御の回路を示す図である。1は始動用開閉器、2は駆動用モータ、3は正回転(開方向)開閉器、4は逆回転(閉方向)開閉器、5a〜cは正回転(開方向)回転数制限用インピーダンス、6a〜cは逆回転(閉方向)回転数制限用インピーダンス、7a〜cは正回転(開方向)制御用タイマー、8a〜cは逆回転(閉方向)制御用タイマーである。
【0026】
開操作では、始動用開閉器1が水量調整弁の開指令信号を受けると、開指令信号を生成して正回転(開方向)開閉器3を動作させる。最初は、正回転(開方向)回転数制限用インピーダンス5a〜cが、駆動用モータ2と直列に接続されているため、予め決められた最低回転速度で駆動用モータ2が制御される。
【0027】
その後、正回転(開方向)制御用タイマー7a〜cのそれぞれに設定された時間が経過するごとに、正回転(開方向)回転数制限用インピーダンス5a〜cが、順次、短絡される。これにより、駆動用モータ2を予め決められた回転速度ごとに段階的に増速することができる。
【0028】
最終的に、正回転(開方向)制御用タイマー7cの設定時間が経過すると、正回転(開方向)回転数制限用インピーダンス5cが短絡されて、予め決められた最高回転速度(定格回転速度)で水量調整弁は全開される。
【0029】
このように、正回転(開方向)回転数制限用インピーダンス5a〜cおよび正回転(開方向)制御用タイマー7a〜cを用いることにより、予め決定された設定値に基づいて、経過時間ごとに階段状(多段的)に駆動用モータ2の回転数を増速する制御を行うことができる。
【0030】
閉操作では、始動用開閉器1が水量調整弁の閉指令信号を受けると、閉指令信号を生成して逆回転(閉方向)開閉器4を動作させる。最初は、逆回転(閉方向)回転数制限用インピーダンス6a〜cが、駆動用モータ2と直列に接続されているため、予め決められた最高回転速度で駆動用モータ2が制御される。
【0031】
その後、逆回転(閉方向)制御用タイマー8a〜cのそれぞれに設定された時間が経過するごとに、逆回転(閉方向)回転数制限用インピーダンス6a〜cが、順次、短絡される。これにより、駆動用モータ2を予め決められた回転速度ごとに段階的に減速することができる。
【0032】
最終的に、逆回転(閉方向)制御用タイマー8cの設定時間が経過すると、逆回転(閉方向)回転数制限用インピーダンス6cが短絡されて、予め決められた最低回転速度(定格回転速度)で水量調整弁は全閉される。
【0033】
このように、逆回転(閉方向)回転数制限用インピーダンス6a〜cおよび逆回転(閉方向)制御用タイマー8a〜cを用いることにより、予め決定された設定値に基づいて、経過時間ごとに階段状(多段的)に駆動用モータ2の回転数を減速する制御を行うことができる。
【0034】
これにより、長い配管系統を有する場合であっても、水量調整弁を段階的に閉じて行く制御を行うことにより、水量調整弁の閉鎖特性を踏まえて流量全体の変化を均一に減少させることができ、配管系統の破損等を防ぐことができる。
【0035】
従って、プロペラ水車発電機が急停止または非常停止で系統と切り離された場合および水車発電機を始動する場合においても、発電機器および付帯設備に対して安全性を保って主機を停止または始動させることができる。
【0036】
また、開操作および閉操作のいずれにおいても、設定された時間の経過により、予め定められた回転速度に制御することで水量調整弁を段階的に閉じているため、開度検出器やリミットスイッチなど水量調整弁の開度を検出するための装置を備える必要はない。
【0037】
そのため、多段開閉制御のためにタイマーやインピーダンスを数設置した場合であっても、水量調整弁制御装置の全体の構成を簡易にすることができる。
図3は、本発明の参考例の多段開閉制御の開操作時における水量調整弁の開度と時間との関係を示す図である。
【0038】
正回転(開方向)制御用タイマー7a〜cのそれぞれに設定された時間が経過するごとに、正回転(開方向)回転数制限用インピーダンス5a〜cが、順次、短絡され、駆動用モータ2の回転数を階段状(多段的)に増速制御できることにより、図に示すとおり、水量調整弁を階段状(多段的)に開くことができる。
【0039】
図4は、本発明の参考例の多段開閉制御の開操作時における駆動用モータの回転数(回転速度)と時間との関係を示す図である。
正回転(開方向)制御用タイマー7a〜cのそれぞれに設定された時間が経過するごとに、正回転(開方向)回転数制限用インピーダンス5a〜cが、順次、短絡されることにより、駆動用モータ2の回転数は、図に示すとおり、設定時間の経過ごとに階段状(多段的)に増速制御される。
【0040】
図5は、本発明の参考例の多段開閉制御の閉操作時における水量調整弁の開度と時間との関係を示す図である。
逆回転(閉方向)制御用タイマー8a〜cのそれぞれに設定された時間が経過するごとに、逆回転(閉方向)回転数制限用インピーダンス6a〜cが、順次、短絡され、駆動用モータ2の回転数を階段状(多段的)に減速制御できることにより、図に示すとおり、水量調整弁を階段状(多段的)に閉じることができる。
【0041】
図6は、本発明の参考例の多段開閉制御の閉操作時における駆動用モータの回転数(回転速度)と時間との関係を示す図である。
逆回転(閉方向)制御用タイマー8a〜cのそれぞれに設定された時間が経過するごとに、逆回転(閉方向)回転数制限用インピーダンス6a〜cが、順次、短絡されることにより、駆動用モータ2の回転数は、図に示すとおり、設定時間の経過ごとに階段状(多段的)に減速制御される。
【0042】
なお、本参考例は、4段での制御例であるが、回転数制限用インピーダンスおよび制御用タイマーを増減することにより、任意の多段特性を容易に実現することができる。
図7は、従来技術に係る水量調整弁の閉鎖制御(2段階)と本発明の他の参考例の多段閉鎖制御(5段階)における配管系統の水圧変化の比較を示す図である。
【0043】
従来技術の閉鎖制御(2段階)を行った場合には、直線的に水量調整弁を閉じることになるため、全閉までの間に、水圧が急激に上昇する時間帯が見られる。
それに対し、本発明の参考例の多段閉鎖制御(5段階)を行った場合には、そのような急激な水圧変動は発生せず、水圧の変化は緩やかであることが示されている。
【0044】
このように、本発明の参考例の多段閉鎖制御(5段階)により、配管系統の異常な水圧変動の発生を抑制することができる。
図8は、従来技術に係る水量調整弁の開制御(2段階)と本発明の他の参考例の多段開制御(5段階)における配管系統の水圧変化の比較を示す図である。
【0045】
従来方法の開制御(2段階)を行った場合には、直線的に水量調整弁を開くことになるため、開き始めてからすぐに水圧降下が生じている。
それに対し、本発明の参考例の多段開制御(5段階)を行った場合には、そのような急激な水圧変動は発生せず、水圧の変化は緩やかであることが示されている。
【0046】
このように、本発明の参考例の多段開制御(5段階)により、配管系統の異常な水圧変動の発生を抑制することができる。
図9は、本発明の実施例の曲線開閉制御の回路を示す図である。9は正回転(開方向)指令、10は逆回転(閉方向)指令、11は回転数制御機である。
【0047】
図10は、本発明の実施例の曲線開閉制御の開操作時における駆動用モータの回転速度と時間との関係を示す図である。
図11は、本発明の実施例の曲線開閉制御の閉操作時における駆動用モータの回転速度と時間との関係を示す図である。
【0048】
開操作では、始動用開閉器1が水量調整弁の開指令信号を受けると、回転数制御機11を通して、あらかじめ決められた内部の設定値に基づいて、駆動用モータ2が動作する。
そして、正回転(開方向)指令9が与えられると、その時点からの経過時間に応じて、
図10に示されるような設定値曲線に従って、回転数制御機11により、駆動用モータ2が連続的に増速制御される。
【0049】
閉操作では、同様に駆動用モータ2が動作した後、逆回転(閉方向)指令10が与えられると、その時点からの経過時間に応じて、
図11に示されるような設定値曲線に従って、回転数制御機11により、駆動用モータ2が連続的に減速制御される。
【0050】
回転数制御機11としては、駆動用モータ2の回転数を連続的に制御することが可能なインバータを使用する。インバータは、内部に設定値を記憶できるものが一般的である。
これにより、長い配管系統を有する場合であっても、水量調整弁を曲線的に連続して開閉制御を行うことにより、水量調整弁の閉鎖特性を踏まえて流量全体の変化を均一に減少させることができ、配管系統の破損等を防ぐことができる。
【0051】
また、開操作および閉操作のいずれにおいても、設定された時間の経過により、水量調整弁を曲線的に連続して開閉制御しているため、開度検出器やリミットスイッチなど水量調整弁の開度を検出する装置を備える必要がない。そのため、水量調整弁制御装置の全体の構成を簡易にすることができる。