(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン等の小型情報機器の発達により、当該機器に搭載される電子部品は急速な小型化が要求されている。電子部品は、小型化の要求により接続端子の狭小化や、電極間のファインピッチ化、実装面積等の縮小化に対応するため、平面の樹脂のパッケージから小さいボール状の電極が並んで設置されたボールグリッドアレイ(以下、「BGA」と称する)が適用されている。BGAは、ICチップの表面実装タイプのパッケージ方法であり、当該パッケージの周囲に電極(ピン)が飛び出していないため、実装面積が小さくて済むという利点がある。
【0003】
BGAを適用した電子部品には、例えば中央処理装置(CPU)等の半導体パッケージがある。半導体パッケージでは、複数の電極を有する半導体チップが樹脂で封止されている。半導体チップの電極には、はんだバンプが形成されている。このはんだバンプは、はんだを球状に成形したはんだボールを半導体チップの電極に接合することによって形成されている。
【0004】
BGAを適用した半導体パッケージは、加熱により溶融したはんだバンプとプリント基板の導電性ランド(電極パッド)とを接合することにより、プリント基板に搭載される。また、更なる高密度実装の要求に対応するため、半導体パッケージが高さ方向に積み重ねられた3次元積層構造が考案されている。
【0005】
しかし、3次元積層構造が採られた半導体パッケージにBGAを適用しようとすると、半導体パッケージの自重によりはんだボールが潰れてしまうという問題がある。もしもはんだボールが潰れてしまうと、はんだが接続端子の電極からはみ出し、電極間が接続してしまい、短絡が発生するという問題がある。
【0006】
そこで、電子部品の電極としてバンプ電極が使用されている。バンプ電極とは、核層となる芯材、例えば、Cuボールの表面にNiめっきが被覆され、その上にはんだめっきが被覆されたCu核ボールを用いて形成されたものをいう。芯材を用いて形成されたバンプ電極は、電子部品がプリント基板に実装される際に、半導体パッケージの重量がバンプ電極に加わっても、はんだの融点では溶融しないCuボールにより半導体パッケージを支えることができる。この結果、半導体パッケージの自重によりバンプ電極が潰れることがない。
【0007】
一方、従来から、プリント基板の所定の面に電子部品をはんだ付け処理する場合に、リフロー炉が使用されている。リフロー炉でバンプ電極を形成する場合、フラックスまたははんだペーストを用いて行われる。はんだペーストはパウダー状のはんだとフラックスとを混練したものである。フラックスやはんだペースト等は、複数の電極パッドが形成された基板上にメタルマスクを位置合わせし、メタルマスク上でスキージを摺動操作し、メタルマスクに形成された複数の開口部を介して電極パッド上に塗布するようになされる。フラックスやはんだペースト等はメタルマスクを使って電極パッド上に直接塗布する方法以外にも、ボール転写方式やピン転写方式、ディスペンス方式、スプレー方式等による塗布方法も採られる。
【0008】
フラックスは、はんだ付けされる金属表面の酸化膜を除去し、また、はんだ付け工程における加熱処理時に金属表面が再酸化するのを防止する。フラックスは、はんだの表面張力を小さくして濡れを良くする作用がある。フラックスは、松脂、チキソ剤及び活性剤等の固形成分を溶剤で溶解させたものである。
【0009】
この種の関連技術として、特許文献1には電子部品の製造方法が開示されている。この電子部品の製造方法によれば、Cuコアはんだボールを電極パッドにはんだ付け処理する場合、Cuボール体積をVcとし、はんだめっき層の体積をVsとし、Cuボールの直径をDcとし、電極パッドの直径をDpとしたとき、Cuボール体積Vcに対するはんだめっき層の体積Vsの比が0.05≦Vs/Vc≦0.5で、かつ、コアとなるCuボールの直径Dcに対する電極パッドの直径Dpの比が0.5≦Dp/Dc≦1.0を満たした際にコアが中心に存在するというものである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るバンプ電極、バンプ電極基板及びその製造方法について、まず、実施形態としてのバンプ電極30及びバンプ電極基板100の構成例について説明する。本例の場合では、芯材として球状のCuボールを選択し、このCuボールを被覆するNiめっきと、さらにその上にはんだめっきが施されたCu核ボールと、このCu核ボールを電極に載置するためにフラックスを用いた場合を説明する。
【0024】
図1に示すバンプ電極基板100は、基板11、電極パッド12及びバンプ電極30を有して構成される。バンプ電極30は
Cuボール13及びはんだ14から構成されている。図中の15は絶縁膜(層)である。電極パッド12は円形状を有して、図示せずも所定のピッチで所定の基板11に複数備えられる。Cuボール13は核層となる芯材の一例を構成する。図中、DはCuボール13の球径であり、例えば、D=190μm程度である。
【0025】
バンプ電極30の核層となる芯材は、Cuボール13の他にはんだめっき24が溶融する温度において非溶融である融点を有したCu、Ni、Ag、Bi、Pb、Al、Sn、Fe、Zn、In、Ge、Sb、Co、Mn、Au、Si、Pt、Cr、La、Mo、Nb、Pd、Ti、Zr、Mgの金属単体、金属酸化物、金属混合酸化物、あるいは合金で構成されていてもよい。
【0026】
また、芯材は、はんだめっき24よりも高
融点を有する樹脂材料、炭素材料、あるいはセラミックス等の絶縁体で構成されていてもよい。樹脂材料、炭素材料、セラミックス自体に通電性はないが、芯材には金属を被覆するため、樹脂材料、炭素材料、セラミックスを核層とした核ボールを電極パッド上に接合した場合でも被覆した金属によって電極間で問題なく通電する。芯材に絶縁物を利用するのは、高周波数の信号伝送時の表皮効果を狙ったものである。
【0027】
芯材としての樹脂材料には、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン誘導体;塩化ビニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、エチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル誘導体等の単量体を重合して得られる樹脂が挙げられ、これら単量体は単独で用いられても良いし、2種以上が併用されるものであっても良い。
【0028】
芯材の表面には、芯材が金属の場合は、NiやCo等でめっき処理を施しても良い。芯材にNiやCo等をめっきしておくと、芯材にはんだめっきを被覆する際、芯材の元素がはんだめっきへ拡散するのを防止するバリアの役割を果たす。芯材が樹脂等の絶縁物の場合は、NiやCo等でめっき処理を施す前に芯材へCuめっき処理を施しても良い。Cuめっきを施しておくとバンプ電極形成時にCu部分が通電するようになる。絶縁物の芯材へのめっきには無電解めっきが用いられる。また、芯材の粒(球)径の大きさは、1〜1000μmであることが好ましい。この範囲にあると、球状の芯材を安定して製造でき、また、端子間が狭ピッチである場合の接続短絡を抑制することができる。
【0029】
芯材にめっきするはんだの組成についても特に限定はなく、はんだの組成元素はSn、Ag、Cu、Bi、In、Ni、Sb、Zn、Ge、Ga、Co、Fe、P、Cr、Pb、Fe、Alのうち少なくとも1つ以上からなり、芯材よりも液相温度が低い金属または合金が使用されていればよい。この際、芯材とはんだ合金の組成は必ず同一にはならないものとする。これらの中でも、はんだめっき被膜の合金組成は、落下衝撃特性の観点から、好ましくはSn−3重量%Ag−0.5重量%Cu合金である。
【0030】
はんだめっき被膜の厚さは特に制限されないが、好ましくは100μm(片側)以下であれば十分である。一般には20〜50μmであればよい。この例では、芯材としてCuボール13を用いた場合について説明をする。Cuボール13の表面には膜厚2μm程度のNiめっきが施され、その表面にはんだめっきが施されている。はんだめっきの膜厚は30μm程度である。以下、Cuボール13の表面にはんだめっき24が施されたものをCu核ボール50という(
図3の(A)参照)。Cu核ボール50の全体の球径は265μm程度の大きさである。
【0031】
このCu核ボール50は、バンプ電極30の形成時、電極パッド12にフラックス16が塗布された後、基板11の電極パッド12上に搭載される。次に、基板11が加熱されて常温からはんだめっきの液相温度付近に昇温され、フラックス16の作用により、Cu核ボール50のフラックス16に接している部分の表面の酸化膜と共に電極パッド12の表面の酸化膜が除去される。
【0032】
この酸化膜の除去に継続して基板11が更に昇温され、液相温度以上となるはんだめっきを溶融する工程において、電極パッド12からのフラックス16のCu核ボール50のはんだめっき24の表面に這い上がって行く速さが遅くなされ、かつ、Cu核ボール50のはんだめっき24の表面にフラックス16が這い上がり、はんだめっき24の表面の酸化膜が除去されるにともない、酸化膜が除去された部分が電極パッド12側へ流れ落ちるようになるが、上記のようにフラックス16のCu核ボール50のはんだめっき24の表面に這い上がって行く速さが遅くなされるので、電極パッド12へのはんだ14の流れ落ちが遅くなるように基板11が加熱される温度制御がなされるものである。
【0033】
このようなフラックスの這い上がりを緩やかにし、はんだを覆う酸化膜を徐々に除去し、少しずつはんだを流れ落ちるように、はんだめっき溶融工程において、昇温制御するCuコア偏心制御がなされる。Cuコア偏心制御は芯材偏心制御の一例である。このCuコア偏心制御によって、Cuコア偏心量の極めて少ないバンプ電極基板100を提供できるようになる(
図2の(A)参照)。
【0034】
ここで、
図2の(A)及び(B)を参照して、Cuコア偏心量の測定方法について説明する。この
図2の(A)及び(B)は、
図1に示される電極パッドの接合面と平行する水平方向での前記バンプ電極30において、Cuコア偏心量の測定例を示すY−Y矢視断面図である。
【0035】
図2の(A)において、バンプ電極30は、Cuボール13の表面に均等の厚みのはんだ14の膜(外殻)で覆われたものである。なお、図中、電極パッド12とはんだ14が重なって見えている。このバンプ電極30において、核層となった芯材の断面を円形と仮定したとき、Cuボール13の中心点をo1とし、Cuボール13を覆うはんだ14の外殻の中心点をo2としたとき、Cuコア偏心制御によってo1≒o2のようにほぼ一致させることができる。以降、中心点o1,o2間(円心間)の距離をxとする(x=0でo1=o2)。例えば距離xは中心点o1,o2の差の絶対値によって与えられる。
【0036】
図2の(B)において、バンプ電極30’は、Cuボール13の表面にはんだ被膜が形成されているが、Cuボール13が偏心したものである。リフロー処理時のCuボール13の偏心が発生するメカニズムは、次の通りである。まず、常温からはんだめっき24の液相温度付近に昇温され、フラックス16の作用により、電極パッド12の表面の酸化膜と共にCu核ボール50のフラックス16に接している部分の表面の酸化膜が除去される。
【0037】
次に、基板11が更に昇温され、液相温度以上となるはんだめっき24の溶融工程において、フラックス16がCu核ボール50のはんだめっき24の表面を上方へ這い上がる。はんだめっき24の表面全体の酸化膜が除去されると、はんだ14がCuボール13の下方へ流れ落ちる。このとき、加熱率の高いリフロープロセスによると、フラックス16がCuボール13の上方へ向かって急速に這い上がり、一度に多量のはんだ14が流れ落ちてくる。これにより、Cuボール13が偏心すると考えられる。
【0038】
バンプ電極30’において、Cuボール13の中心点o1と、はんだ14(めっき)の外殻の中心点o2の位置ずれ量をCuコア偏心量と定義する。実際には、リフロー処理後のバンプ電極30を基板11と平行する水平方向に研磨してその断面を露出し、距離xを測定した。
【0039】
Cuコア偏心制御では、全バンプ電極において円心間の距離xを10μm以下に抑えることを目標とする。この目標を達成するために、はんだめっき24の溶融工程において、従来方式よりも、ゆっくりとした加熱プロセスを採用する。そして、フラックス16の這い上がりを緩やかにし、はんだめっき24を覆う酸化膜を徐々に除去し、少しずつはんだ14が流れ落ちる溶融プロセスとなるようにする。この溶融プロセスによって、Cuボール13が動き難い状態(状況)を形成し、リフロー処理後においても、電極パッド12の中央にバンプ電極30が存在する接合電極を形成できるようにした。
【0040】
続いて、
図3及び
図4を参照して、バンプ電極基板100の形成例(その1,2)について説明をする。この例ではバンプ電極基板100を製造する場合であって、はんだめっき24の溶融工程において、加熱率を0.01[℃/sec]〜0.3[℃/sec]の範囲に設定した。
【0041】
なお、本文中において、はんだめっき24の状態とはバンプ電極30を形成する際に、フラックス16によりCu核ボール50を電極パッド12に搭載し、その後の加熱によりCu核ボール50のはんだめっき24が溶融し、かつ、フラックス16の作用により表面の酸化膜が除去されるまでの状態をいい、表面の酸化膜が除去された状態をはんだ14という。従って、バンプ電極形成の過程で、はんだめっき24からはんだ14への遷移過程においては、はんだめっき24とはんだ14が共存する状態が存在することになる。
【0042】
これらを形成条件にして、まず、
図3の(A)に示す所定の基板11の電極パッド12上にフラックス16を塗布した後、当該電極パッド12上にCu核ボール50を搭載する。電極パッド12は銅箔基板に円形状の平面電極(ランドパターン)をパターニングすることで得られる。Cu核ボール50には、予め、Cuボール13にはんだめっき24を施したものを使用する。本実施例・比較例において、核層となる芯材にはCuの純度が99.95%以上で直径が190μmのCuボール13を使用した。
【0043】
はんだめっき24については、芯材となるCuボール13に膜厚2μm程度のNiめっきを施した後に、Sn、Ag、Cu、Bi、In、Ni、Sb、Zn、Ge、Ga、Co、Fe、P、Cr、Pb、Fe、Alのうち少なくとも1つ以上からなる、液相温度が芯材よりも低い金属または合金から構成されているはんだ14をメッキする。
【0044】
本実施例・比較例においては、はんだめっき24の組成は全てSn−3重量%Ag−0.5重量%Cuとした。また、基板11には樹脂基板(開口径:240μm、レジスト厚:15μm、表面処理:Cu−OSP)を使用する。フラックス印刷時、複数の電極パッドが形成された基板上にメタルマスクを位置合わせし、メタルマスク上でスキージを摺動操作し、メタルマスクに形成された複数の開口部を介してフラックス16を塗布する。
【0045】
次に、基板11を加熱して常温からはんだの液相温度付近に至る温度に昇温し、Cu核ボール50及び電極パッド12のフラックス16と接している表面の酸化膜を除去する(第1溶融ステップ)。第1溶融ステップの温度条件は、常温からはんだ14の液層温度付近(210℃)に至る加熱温度の加熱率(昇温速度)を例えば、2.0[℃/sec]に設定する。この第1溶融ステップで、フラックス16により電極パッド12及びCu核ボール50のフラックス16と接している底面側のみの酸化膜が除去される。
【0046】
次いで、酸化膜の除去工程に継続して基板11を更に昇温し、はんだめっき24の溶融温度に移行する(第2溶融ステップ)。この第2溶融ステップの温度条件は、例えば、加熱温度210℃から230℃に至る加熱率を0.01[℃/sec]以上〜0.3[℃/sec]未満の範囲に設定する。このとき、はんだめっき24が溶融してはんだ14に移行する状態となり、Cu核ボール50のセルフアライメント現象とCuボール13が電極パッド12まで沈み込む現象が発生する(
図3の(B))。セルフアライメント現象とは、Cu核ボール50が電極パッド12の中央に自己整合的に移動する現象をいう。
【0047】
また、このときCu核ボール50の表面はまだ酸化膜によって覆われているが、はんだめっき24は、熱容量の小さい電極パッド12の側からCuボール13の頭頂部に向かって溶融し始める。この溶融開始直前で、Cuボール13の底部外殻のはんだめっき24が溶融してその接触部位(裾部分)の周囲ではんだ14となって広がり始める。この結果、Cuボール13が電極パッド12まで沈み込むようになる。この状態から、Cuボール13の表面の外殻のはんだめっき24が溶融して酸化膜で覆われた内部がはんだ14に順次遷移し始めると、Cuボール13ははんだめっき24の拘束から免れて自由な状態となる。
【0048】
次いで、
図4の(A)に示すようにフラックス16がCu核ボール50のはんだめっき24の表面の酸化膜を除去しつつ、上方へ這い上がるようになる。この例では、はんだめっき24の溶融温度移行時、図中の上向きの白抜き矢印のように、電極パッド12からCuボール13へのフラックス16の這い上がりが遅くなるように基板11を加熱する(酸化膜の除去工程)。
【0049】
そして、
図4の(B)において、はんだめっき24の溶融工程では、図中の下向きの白抜き矢印のように、Cuボール13から電極パッド12へのはんだ14の流れ落ちを遅くするように基板11をゆっくり加熱する。この第2溶融ステップで、Cu核ボール50の全体の酸化膜が除去されると、はんだ14がCuボール13の周囲から電極パッド12の方へ流れ落ちるようになる(Cuコア偏心制御)。
【0050】
ここで、
図5〜
図8を参照して、Cuコア偏心制御に関し、第1のリフロープロファイルの設定例を挙げて、2つの実施例1,2と2つの比較例1,2とを比較してCuコア偏心量が最も少なくなる上限としての昇温速度を考察する。この考察ではN=20のサンプルについて、Cuコア偏心量を測定し、昇温速度とCuコア偏心量との関係から最適な上限の昇温速度を特定する。この例では、リフロー炉に代えて高温観察装置(山陽精工(株)製SP−5000 DS)を用いた。
【0051】
第1のリフロープロファイルの設定例では、第1溶融ステップとして、
図5の表図に示すように、30℃(常温)〜210℃に至る加熱温度で、第1溶融ステップにおける昇温速度が2.0[℃/sec]の場合である。第1溶融ステップは実施例1,2及び比較例1,2のいずれも同じ温度条件である。
【0052】
第2溶融ステップは加熱温度が210℃〜230℃で、その実施例1で昇温速度が0.1[℃/sec]、実施例2で昇温速度が0.2[℃/sec]、比較例1で昇温速度が0.3[℃/sec]であり、比較例2では昇温速度が2.0[℃/sec]の場合である。
【0053】
第3溶融ステップは、リフロー処理のピーク温度を245℃としたとき、実施例1,2及び比較例1,2のいずれも加熱温度が230℃〜245℃で、その昇温速度が2.0[℃/sec]である。なお、降温ステップは実施例1,2及び比較例1,2のいずれも冷却温度が245℃から180℃でその降温速度が2.0[℃/sec]である。高温観察装置における酸素濃度は100ppm以下で、フラックス16にはWF−6450(千住金属工業製)を用いる場合である。
【0054】
図6に示す第1のリフロー処理例は、第1のリフロープロファイルに基づくものであって、縦軸は高温観察装置における加熱温度[℃]である。横軸は基板11のリフロー時間[sec]である。図中の実線の太線は実施例1であって、加熱温度210℃〜230℃における昇温速度が0.1[℃/sec]の場合である。
破線の太線は実施例2であって、昇温速度が0.2[℃/sec]の場合である。一点鎖線の太線は比較例1であって、昇温速度が0.3[℃/sec]の場合である。二点鎖線の細線は比較例2であって昇温速度が2.0[℃/sec]の場合である。
【0055】
図7の(A)に示す第1のリフロープロファイルにおける昇温速度対Cuコア偏心量の分布例において、縦軸は加熱温度が210℃〜230℃のときのCuコア偏心量[μm]である。横軸は実施例1,2及び比較例1,2における昇温速度[℃/sec](図中C/s]と表記する)である。図中の黒印の菱形はCuコア偏心量の平均値(Average)である。
【0056】
この例では、N=20のサンプルについて、リフロー処理後のバンプ電極30を基板11と平行する水平方向に研磨してその断面を露出し、その中心点o1,o2間(円心間)の距離xを測定した。実施例1ではN=20のサンプルの平均値として4.4[μm]の付近にCuコア偏心量が分布している。実施例2ではその平均値として6.3[μm]の付近にCuコア偏心量が分布している。比較例1ではその平均値として15.0[μm]の付近にCuコア偏心量が分布している。比較例2ではその平均値として14.8[μm]の付近にCuコア偏心量が分布している。
【0057】
これらの関係を示す表を
図7の(B)にまとめている。この表から分かるように、Cuコア偏心量を低下させるためには、0.3[℃/sec]未満の昇温速度での加熱を行えばよいことが明確となった。
【0058】
図8に示す第1のリフロープロファイルにおける昇温速度対Cuコア偏心量の出現例において、縦軸は出現個数[%](存在確率)であり、加熱温度が210℃〜230℃のときのN=20に対する当該Cuコア偏心量が出現した個数を百分率で示したものである。横軸は実施例1,2及び比較例1,2における昇温速度[℃/sec]である。
【0059】
図中の左下斜線模様は距離xが0≦x<5[μm]の範囲のものであり、右下斜線模様は距離xが5≦x<10[μm]の範囲のものである。横線模様は距離xが10≦x<15[μm]の範囲のものであり、格子模様は距離xが15≦x<20[μm]の範囲のものである。梨地模様は距離xが20≦x<25[μm]の範囲のものであり、煉瓦模様は距離xが25≦x<30[μm]の範囲のものである。波地模様は距離xが30≦x<35[μm]の範囲のものであり、斜め格子模様は距離xが35≦x<40[μm]の範囲のものである。市松模様は距離xが40≦x<45[μm]の範囲のものである。
【0060】
この例では、N=20のサンプルについて、実施例1(昇温速度=0.1[℃/sec])ではN=20のサンプル中、その80%が0≦x<5[μm]の範囲に有る。5≦x<10[μm]の範囲のものを含めるとその90%を占めている。実施例2(昇温速度=0.2[℃/sec])ではN=20のサンプル中、45%が0≦x<5[μm]の範囲に有る。5≦x<10[μm]の範囲のものを含めるとその85%を占めている。
【0061】
比較例1(昇温速度=0.3[℃/sec])ではN=20のサンプル中、35%が0≦x<5[μm]の範囲に有り、5≦x<10[μm]の範囲のものを含めてもその48%を占める程度である。比較例2(昇温速度=2.0[℃/sec])ではN=20のサンプル中、20%が0≦x<5[μm]の範囲に有り、5≦x<10[μm]の範囲のものを含めてもその55%を占める程度である。
【0062】
このように加熱温度210℃〜230℃におけるCuコア偏心制御では、バンプ電極30において円心間の距離xを10μm以下に抑えるという目的をほぼ達成する昇温速度の上限は0.3[℃/sec]未満に設定すればよいことが明確となった。
【0063】
続いて、
図9〜
図12を参照して、Cuコア偏心制御に関し、第2のリフロープロファイルの設定例を挙げて、6つの実施例3〜8と1つの比較例3とを比較してCuコア偏心量が最も少なくなる下限値の昇温速度を考察する。この考察でもN=20のサンプルについて、Cuコア偏心量を測定し、昇温速度とCuコア偏心量との関係から最適な下限の昇温速度を特定する。
【0064】
第2のリフロープロファイルの設定例では、第1溶融ステップとして、
図9の表図に示すように、30℃(常温)〜215℃に至る加熱温度で、第1溶融ステップにおける昇温速度が2.0[℃/sec]の場合である。第1溶融ステップは実施例3〜8及び比較例
3のいずれも同じ温度条件である。
【0065】
第2溶融ステップは加熱温度が215℃〜228℃で、その実施例3で昇温速度が0.01[℃/sec]、実施例4で昇温速度が0.05[℃/sec]、実施例5で昇温速度が0.10[℃/sec]、実施例6で昇温速度が0.13[℃/sec]、実施例7で昇温速度が0.15[℃/sec]、実施例8で昇温速度が0.20[℃/sec]
、比較例
3で昇温速度が2.00[℃/sec]の場合である。
【0066】
第3溶融ステップは、リフロー処理のピーク温度を245℃としたとき、実施例3〜8及び比較例3のいずれも加熱温度が228℃〜245℃で、その昇温速度が2.0[℃/sec]である。なお、降温ステップは実施例1,2及び比較例1,2と同様にして、実施例3〜8及び比較例
3のいずれも冷却温度が245℃〜180℃でその降温速度が2.0[℃/sec]である。高温観察装置における酸素濃度は100ppm以下で、フラックス16にはWF−6450を用いる場合である。
【0067】
図10に示す第2のリフロー処理例は、第2のリフロープロファイルに基づくものであって、縦軸は高温観察装置における加熱温度[℃]である。横軸は基板11のリフロー時間[sec]である。図中の実線の太線は実施例3であって、加熱温度215℃〜228℃における昇温速度が0.01[℃/sec]の場合であり、
破線の太線は実施例4であって昇温速度が0.05[℃/sec]の場合である。
【0068】
一点鎖線の太線は実施例5であって、昇温速度が0.10[℃/sec]の場合であり、二点鎖線の太線は実施例6であって、昇温速度が0.13[℃/sec]の場合である。実線の細線は実施例7であって、昇温速度が0.15[℃/sec]の場合であり、
破線の細線は実施例8であって、昇温速度が0.20[℃/sec]の場合である。一点鎖線の細線
は比較例
3であって、昇温速度が2.0[℃/sec]の場合である。
【0069】
本発明に係るCuコア偏心制御では、はんだ溶融温度の±10[℃]の領域で昇温速度を低下させることにより、Cuコア偏心量を抑制するようにした。なお、リフロー時間を増加すると、IMCの成長による接合信頼性が低下したり、フラックス16の失活、バンプ電極の酸化膜増加等が懸念されるので、昇温速度を低下させる領域は狭い方がよいことも明確となった。
【0070】
図11の(A)に示す第2のリフロープロファイルにおける昇温速度対Cuコア偏心量の分布例において、縦軸は加熱温度が215℃〜228℃のときのCuコア偏心量[μm]である。横軸は実施例3〜8及び比較例3における昇温速度[℃/sec]である。
【0071】
この例でも、N=20のサンプルについて、リフロー処理後のバンプ電極30を基板11と平行する水平方向に研磨してその断面(
図2のY−Y矢視断面参照)を露出し、その中心点o1,o2間(円心間)の距離xを測定した。実施例3ではN=20のサンプルの平均値として2.5[μm]付近にCuコア偏心量が分布している。実施例4ではその平均値として3.9[μm]の付近にCuコア偏心量が分布している。実施例5ではその平均値として3.6[μm]の付近にCuコア偏心量が分布している。
【0072】
実施例6ではその平均値として4.0[μm]の付近にCuコア偏心量が分布している。実施例7ではその平均値として6.8[μm]の付近にCuコア偏心量が分布している。実施例8ではその平均値として7.3[μm]の付近にCuコア偏心量が分布している
。比較例
3ではその平均値として14.8[μm]の付近にCuコア偏心量が分布している。これらの関係を
図11の(B)に示す表にまとめている。この表から分かるように、Cuコア偏心量を低下させるためには、0.3[℃/sec]未満の昇温速度での加熱を行えばよいことが明確となった。
【0073】
図12に示す第2のリフロープロファイルにおける昇温速度対Cuコア偏心量の出現例において、縦軸は出現個数[%](存在確率)であり、加熱温度が215℃〜228℃のときのN=20に対する当該Cuコア偏心量が出現した個数を百分率で示したものである。横軸は実施例3〜8及び比較例
3における昇温速度[℃/sec]である。
【0074】
図中の左下斜線模様、右下斜線模様、横線模様、格子模様、梨地模様、煉瓦模様、波地模様、斜め格子模様及び市松模様については、第1のリフロープロファイルにおける昇温速度対Cuコア偏心量の出現例におけるものと同一であるのでその説明を省略する。
【0075】
この例では、N=20のサンプルについて、実施例3(昇温速度=0.01[℃/sec])ではN=20のサンプル中、その90%が0≦x<5[μm]の範囲に有る。5≦x<10[μm]の範囲のものを含めるとその100%を占めている。実施例4(昇温速度=0.05[℃/sec])では、その70%が0≦x<5[μm]の範囲に有る。5≦x<10[μm]の範囲のものを含めるとその100%を占めている。
【0076】
実施例5(昇温速度=0.10[℃/sec])では、その80%が0≦x<5[μm]の範囲に有る。5≦x<10[μm]の範囲のものを含めるとその100%を占めている。実施例6(昇温速度=0.13[℃/sec])では、その70%が0≦x<5[μm]の範囲に有る。5≦x<10[μm]の範囲のものを含めるとその100%を占めている。
【0077】
実施例7(昇温速度=0.15[℃/sec])では、その45%が0≦x<5[μm]の範囲に有る。5≦x<10[μm]の範囲のものを含めるとその80%を占めている。実施例8(昇温速度=0.2[℃/sec])ではN=20のサンプル中、30%が0≦x<5[μm]の範囲に有る。5≦x<10[μm]の範囲のものを含めるとその80%を占めている。
【0078】
これらに対して
、比較例
3(昇温速度=2.0[℃/sec])によれば、N=20のサンプル中、20%が0≦x<5[μm]の範囲に有り、5≦x<10[μm]の範囲のものを含めてもその55%を占める程度である。
【0079】
上述の加熱温度215℃〜228℃におけるCuコア偏心制御では、昇温速度が0.13[℃/sec]以下で、Cuコア偏心量が全て10μm以下(100%)となっている。これは、はんだ溶融温度近傍の昇温速度がリフロー処理後のCuコア偏心制御に効果を発揮しているものと考えられる。これにより、IMCの成長による接合信頼性の低下の恐れがなく、工業的にも使用できるリフロー時間の限界速度である点からバンプ電極30において円心間の距離xを10μm以下に抑えるという目的をほぼ達成する昇温速度の下限値は0.01[℃/sec]に設定すればよいことが明確となった。
【0080】
このように、実施形態としてのバンプ電極30およびバンプ電極基板100によれば、加熱温度に関わらず、加熱率を0.01[℃/sec]以上〜0.3[℃/sec]未満の範囲に設定すれば、Cuボール13の偏心を制御できる。このCuボール13の偏心制御、すなわち、電極パッド12からのフラックス16の這い上がりが遅くされ、かつ、電極パッド12へのはんだ14の流れ落ちを遅くするように基板11が加熱され、はんだ14が溶融されてなるCuボール13が備えられるものである。
【0081】
この構成によって、電極パッド12上において、核層となった芯材を成すCuボール13の中心がその水平断面ではんだ14の外殻の中心に配置された高信頼度のバンプ電極基板100を提供できるようになった。
【0082】
また、実施形態としてのバンプ電極基板100の製造方法によれば、電極パッド12及びCuボール13の酸化膜の除去後のはんだめっき24の溶融工程において、電極パッド12からCuボール13へのフラックス16の這い上がりを遅くし、かつ、Cuボール13から電極パッド12へのはんだ14の流れ落ちを遅くするように基板11を加熱するようにした。
【0083】
この構成によって、フラックス16の這い上がりが緩やかになり、はんだめっき24を覆う酸化膜が徐々に除去され、少しずつはんだ14が流れ落ちる溶融プロセスとすることができる。このため、Cuボール13の表面が均等の厚みのはんだ14の膜(外殻)で覆われ、Cuボール13が動き難い状態(状況)とすることができ、加熱処理後において、はんだ14の外殻の中心とCuボール13の中心とが共に電極パッド12の中央に存在するバンプ電極30を形成できるようになった。
【0084】
この実施形態では、芯材についてCuボール13の場合について説明したが、これに限られることはなく、芯材がCu、Ni、Ag、Bi、Pb、Al、Sn、Fe、Zn、In、Ge、Sb、Co、Mn、Au、Si、Pt、Cr、La、Mo、Nb、Pd、Ti、Zr、Mgの金属単体、金属酸化物、金属混合酸化物、あるいは合金の場合であっても同様な効果が得られる。さらに芯材は、はんだめっき層が溶融する温度で非溶融である樹脂材料等で構成されていてもよい。
【0085】
また、従来例のようなCuボール体積Vcに対するはんだめっき層の体積Vsの比が0.05≦Vs/Vc≦0.5かつ、コアとなるCuボールの直径Dcに対する電極パッド12の直径Dpの比が0.5≦Dp/Dc≦1.0といった条件に関わらず、リフロー処理後において、Cuボール13の中心をはんだ14の外殻の中心に配置できるようになる。
【0086】
なお、本実施例においては、電極パッド12上にフラックス16を塗布した場合について説明したが、これに限らず、フラックス16の代わりにはんだペーストを用いてもよい。