(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5692335
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】免震装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/04 20060101AFI20150312BHJP
F16F 1/40 20060101ALI20150312BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
F16F15/04 P
F16F1/40
E04H9/02 331A
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-231622(P2013-231622)
(22)【出願日】2013年11月7日
(62)【分割の表示】特願2012-193289(P2012-193289)の分割
【原出願日】2012年9月3日
(65)【公開番号】特開2014-47926(P2014-47926A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2014年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098095
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 武志
(72)【発明者】
【氏名】河内山 修
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 和則
(72)【発明者】
【氏名】金子 修平
【審査官】
長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭64−029539(JP,A)
【文献】
特開昭64−029538(JP,A)
【文献】
特開昭64−029540(JP,A)
【文献】
特開昭53−029470(JP,A)
【文献】
特開平11−141180(JP,A)
【文献】
特開2003−021193(JP,A)
【文献】
特開2009−243576(JP,A)
【文献】
特開2007−113649(JP,A)
【文献】
特開2002−147527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/00−15/36
E04H 9/00−9/16
F16F 1/00−6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部構造に連結される上部フランジプレートと、下部構造に連結される下部フランジプレートと、上部フランジプレート及び下部フランジプレート間に設けられていると共に、鉛直方向において交互に積層された複数のゴム弾性材料層及び複数の剛性材料層を有した積層ゴム体とを具備しており、複数のゴム弾性材料層のうちの最上部のゴム弾性材料層は、上部フランジプレートに加硫接着されており、複数のゴム弾性材料層の内の最下部のゴム弾性材料層は、下部フランジプレートに加硫接着されており、剛性材料層は、上部フランジプレートに近接配置された複数の上部剛性材料層と、下部フランジプレートに近接配置された複数の下部剛性材料層と、複数の上部剛性材料層と複数の下部剛性材料層との間に鉛直方向に並んで夫々配された複数の中間部剛性材料層とを具備しており、複数の上部剛性材料層及び複数の下部剛性材料層の夫々は、当該夫々に隣接する複数の中間部剛性材料層のうちの上部及び下部の隣接中間部剛性材料層に対して水平方向において長くなるように形成されており、上部及び下部の隣接中間部剛性材料層は、鉛直方向において当該上部及び下部の隣接中間部剛性材料層に挟まれた複数の中間部剛性材料層のうちの複数の中央側中間部剛性材料層に対して、水平方向において等しい長さとなるように形成されており、複数の上部剛性材料層の夫々は、鉛直方向に互いに並んで配されていると共に水平方向において互いに等しい長さを有しており、複数の下部剛性材料層の夫々は、鉛直方向に互いに並んで配されていると共に水平方向において互いに等しい長さを有している免震装置。
【請求項2】
積層ゴム体は、内周面で複数の剛性材料層の外周縁に、上面及び下面で夫々上部フランジプレート及び下部フランジプレートに夫々加硫接着されていると共に該内周面で複数のゴム弾性材料層と一体となった筒状の被覆層を更に具備しており、被覆層のうちの複数の上部剛性材料層及び複数の下部剛性材料層の夫々を覆っている被覆部は、当該被覆層のうちの複数の中間部剛性材料層を覆っている被覆部に対して、水平方向に突出している請求項1に記載の免震装置。
【請求項3】
複数の上部剛性材料層及び複数の下部剛性材料層の夫々は、上部及び下部の隣接中間部剛性材料層並びに複数の中央側中間部剛性材料層の夫々の円形外周縁よりも水平方向外方に位置している円形外周縁を有している請求項1又は2に記載の免震装置。
【請求項4】
複数の上部剛性材料層及び複数の下部剛性材料層の夫々の円形外周縁は、上部及び下部の隣接中間剛性材料層並びに複数の中央側中間部剛性材料層の夫々の円形外周縁よりも大径である請求項3に記載の免震装置。
【請求項5】
複数の上部剛性材料層、複数の下部剛性材料層、上部の隣接中間部剛性材料層、下部の隣接中間剛性材料層及び複数の中央側剛性材料層の夫々は、同一の軸心を有している請求項1から4に記載の免震装置。
【請求項6】
複数の上部剛性材料層及び複数の下部剛性材料層の夫々は、複数の中間部剛性材料層の外周縁よりも水平方向外方に位置している多角形外周縁を有している請求項1又は2に記載の免震装置。
【請求項7】
積層ゴム体に設けられた少なくとも一つの柱状孔と、この少なくとも一つの柱状孔に配されている振動エネルギ吸収体とを具備している請求項1から6のいずれか一項に記載の免震装置。
【請求項8】
振動エネルギ吸収体は、円柱状である請求項7に記載の免震装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁並びにビル、戸建て住宅及び倉庫等の建物等を含む構造物を地震振動から免震する積層ゴム体を具備した免震装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1では、積層ゴム体のうち、建物の上部構造に連結される上部フランジプレートと建物の下部構造に連結される下部フランジプレートとの夫々に近接した部分に発生する歪みの集中を緩和すべく、上部フランジプレートと下部フランジプレートとの間に設けられ、水平方向に延在する複数のゴム板層と複数の鋼板層とを交互に上下方向に積層して形成された積層ゴム体とを備え、前記複数のゴム板層の材質及び厚さを互いに同一とし、それらゴム板層の面積を異ならせることで、それらゴム板層の剛性を前記積層ゴム体の上端及び下端から中央部へ向かうにつれて漸減させた積層ゴム型の免震装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−141180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、積層ゴムを具備した免震装置では、上部構造及び下部構造間の相対的な水平振動による水平方向変形時において、上部フランジプレート及び下部フランジプレートの夫々に近接した積層ゴム体の部分(フィレット部)に応力集中が生じやすく、座屈の原因になり得る前記応力集中を解消する手段が望まれる一方、本来有する免震機能を発揮できることが望まれる。
【0005】
本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、上部フランジプレート及び下部フランジプレートの夫々に近接した積層ゴム体の部分における応力集中を解消することができる上に本来有する免震機能を発揮することができる免震装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の免震装置は、上部構造に連結される上部フランジプレートと、下部構造に連結される下部フランジプレートと、上部フランジプレート及び下部フランジプレート間に設けられていると共に、鉛直方向において交互に積層されたゴム弾性材料層及び剛性材料層を有した積層ゴム体とを具備しており、剛性材料層は、上部フランジプレートに近接配置された少なくとも一つの上部剛性材料層と、下部フランジプレートに近接配置された少なくとも一つの下部剛性材料層と、上部剛性材料層と下部剛性材料層との間に鉛直方向に並んで配された複数の中間部剛性材料層とを具備しており、上部剛性材料層及び下部剛性材料層の少なくとも一方は、当該一方に隣接する複数の中間部剛性材料層のうちの隣接中間部剛性材料層に対して水平方向において長くなるように形成されており、隣接中間部剛性材料層は、鉛直方向において当該隣接中間部剛性材料層よりも中央側に位置する複数の中間部剛性材料層のうちの中央側中間部剛性材料層に対して、水平方向において等しい長さとなるように又は短くなるように形成されている。
【0007】
本発明の免震装置によれば、特に、上部剛性材料層及び下部剛性材料層の少なくとも一方は、当該一方に隣接する複数の中間部剛性材料層のうちの隣接中間部剛性材料層に対して水平方向において長くなるように形成されているために、上部フランジプレート及び下部フランジプレートの夫々に近接した積層ゴム体の部分(フィレット部)における応力集中を解消することができ、隣接中間部剛性材料層は、鉛直方向において当該隣接中間部剛性材料層よりも中央側に位置する複数の中間部剛性材料層のうちの中央側中間部剛性材料層に対して、水平方向において等しい長さとなるように又は短くなるように形成されているために、本来有する繰り返し応力の耐久性を発揮でき、捻れ方向にも免震機能を発揮できる等、装置を大型化させることなく当該装置が本来有する免震機能を発揮し得る。
【0008】
本発明の免震装置では、剛性材料層は、鉛直方向に夫々互いに並んで配されていると共に水平方向において夫々互いに等しい長さを有している複数の上部剛性材料層を具備していてもよい。
【0009】
本発明の免震装置では、剛性材料層は、鉛直方向に夫々互いに並んで配されている複数の上部剛性材料層を具備しており、複数の上部剛性材料層のうちの上部フランジプレートに最も近接して配置された最上部剛性材料層は、複数の上部剛性材料層のうちの最上部剛性材料層を除く他の上部剛性材料層に対して、水平方向に長くなるように形成されていてもよい。斯かる免震装置によれば、積層ゴム体の水平方向変形時においても複数の上部剛性材料層に塑性変形が生じにくく、これにより、水平方向の剛性を安定させることができ、フィレット部の応力集中に基づく座屈等を生じさせる虞をなくし得る。
【0010】
本発明の免震装置では、剛性材料層は、鉛直方向に夫々互いに並んで配されていると共に水平方向において夫々互いに等しい長さを有している複数の下部剛性材料層を具備していてもよい。
【0011】
本発明の免震装置では、剛性材料層は、鉛直方向に夫々互いに並んで配されている複数の下部剛性材料層を具備しており、複数の下部剛性材料層のうちの下部フランジプレートに最も近接して配置された最下部剛性材料層は、複数の下部剛性材料層のうちの最下部剛性材料層を除く他の下部剛性材料層に対して、水平方向に長くなるように形成されていてもよい。斯かる免震装置によれば、積層ゴム体の水平方向変形時においても複数の下部剛性材料層に塑性変形が生じにくく、これにより、水平方向の剛性を安定させることができ、フィレット部の応力集中に基づく座屈等を生じさせる虞をなくし得る。
【0012】
本発明の免震装置では、積層ゴム体は、剛性材料層の外周縁に加硫接着されていると共にゴム弾性材料層と一体となった筒状の被覆層を更に具備していてもよく、被覆層のうちの前記上部剛性材料層及び下部剛性材料層の少なくとも一方を覆っている被覆部は、当該被覆層のうちの中間部剛性材料層を覆っている被覆部に対して、水平方向に突出していてもよい。
【0013】
本発明の免震装置では、上部剛性材料層及び下部剛性材料層の少なくとも一方は、複数の中間部剛性材料層の外周縁よりも水平方向外方に位置している円形外周縁を有していてもよい。
【0014】
本発明の免震装置では、複数の中間部剛性材料層は円形外周縁を有しており、上部剛性材料層及び下部剛性材料層の少なくとも一方の円形外周縁は、複数の中間部剛性材料層の円形外周縁よりも大径であってもよい。
【0015】
本発明の免震装置では、上部剛性材料層及び下部剛性材料層の少なくとも一方は、複数の中間部剛性材料層の外周縁よりも水平方向外方に位置している多角形外周縁を有していてもよい。
【0016】
本発明の免震装置では、積層ゴム体に設けられた少なくとも一つの柱状孔と、この少なくとも一つの柱状孔に配されている振動エネルギ吸収体とを具備していてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、上部フランジプレート及び下部フランジプレートの夫々に近接した積層ゴム体の部分における応力集中を解消することができる上に本来有する免震機能を発揮することができる免震装置を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態の例の断面説明図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す例の主に剛性材料層の説明図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態の他の例の断面拡大説明図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施の形態の更に他の例の主に剛性材料層の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に本発明の実施の形態を、図に示す好ましい例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明はこれら例に何等限定されないのである。
【0020】
図1から
図4において、本例の免震装置1は、建物の上部構造に連結される上部フランジプレート2と、基礎等からなる下部構造に連結される下部フランジプレート3と、上部フランジプレート2及び下部フランジプレート3間に設けられていると共に、鉛直方向Vにおいて交互に積層された天然ゴム又は減衰特性を有する高減衰ゴム等からなる円環状のゴム弾性材料層4及び円環状の剛性材料層5並びに剛性材料層5の外周縁16に加硫接着されていると共にゴム弾性材料層4と一体となった円筒状の被覆層6を有した積層ゴム体7と、積層ゴム体7に設けられた少なくとも一つの柱状孔、本例では一つの柱状孔8と、柱状孔8に配されている振動エネルギ吸収体9と、振動エネルギ吸収体9の下面及び上面において上部フランジプレート2及び下部フランジプレート3に固定されて柱状孔8を閉塞している円盤上の一対の閉塞部材10及び11とを具備している。
【0021】
柱状孔8は、積層ゴム体7の内周面12に加えて、上方の閉塞部材10の下面13と下方の閉塞部材11の上面14とによって規定されており、水平方向Hにおいて積層ゴム体7の中央に配されている。振動エネルギ吸収体9は、柱状孔8に密に配された鉛、錫、錫合金又は熱可塑性樹脂製の塑性体、例えば円柱状鉛15からなる。円柱状鉛15は、塑性変形により振動エネルギを吸収する。
【0022】
剛性材料層5は、鉛直方向Vにおいて上部フランジプレート2に近接配置された少なくとも一つの上部剛性材料層としての二枚の円環状の上部剛性鋼板21及び22と、下部フランジプレート3に近接配置された少なくとも一つの下部剛性材料層としての二枚の円環状の下部剛性鋼板23及び24と、上部剛性鋼板21及び22と下部剛性鋼板23及び24との間に鉛直方向Vに並んで配された複数の中間部剛性材料層としての複数の円環状の中間部剛性鋼板25とを具備している。上部剛性鋼板21及び22、下部剛性鋼板23及び24並びに複数の中間部剛性鋼板25の夫々は、同一の軸心Oを有している。
【0023】
上部剛性鋼板21及び22は、鉛直方向Vに夫々互いに並んで配されており、下部剛性鋼板23及び24は、鉛直方向Vに夫々互いに並んで配されており、上部剛性鋼板21及び22、下部剛性鋼板23及び24並びに複数の中間部剛性鋼板25は、鉛直方向Vにおいて夫々互いに等しい間隔をもって配されており、夫々互いに等しい肉厚を有している。このように等しい肉厚を有した鋼板が等間隔をもって配されることにより、ゴム弾性材料層4もまた、夫々互いに等しい肉厚をもって等間隔に配されることになる。
【0024】
上部剛性鋼板21及び22のうちの上部フランジプレート2に最も近接して配置された最上部剛性材料層としての上部剛性鋼板21は、上部剛性鋼板22に対して、水平方向Hに長くなるように形成されており、上部剛性鋼板21の円形外周縁31は、上部剛性鋼板22の円形外周縁32よりも大径であって水平方向外方に位置している。上部剛性鋼板21の円形外周縁31及び上部剛性鋼板22の円形外周縁32は、複数の中間部剛性鋼板25の円形外周縁35よりも大径であって水平方向外方に位置している。
【0025】
下部剛性鋼板23及び24のうちの下部フランジプレート3に最も近接して配置された最下部剛性材料層としての下部剛性鋼板23は、下部剛性鋼板24に対して、水平方向Hに長くなるように形成されており、下部剛性鋼板23の円形外周縁33は、下部剛性鋼板24の円形外周縁34よりも大径であって水平方向外方に位置しており、下部剛性鋼板23の円形外周縁33及び下部剛性鋼板24の円形外周縁34は、複数の中間部剛性鋼板25の円形外周縁35よりも大径であって水平方向外方に位置している。
【0026】
本例においては、上部剛性鋼板21及び下部剛性鋼板23は夫々互いに同様に形成されており、上部剛性鋼板22及び下部剛性鋼板24は夫々互いに同様に形成されている。以上の剛性材料層5においては、上部剛性鋼板21及び22の夫々は、複数の中間部剛性鋼板25のうちの上部剛性鋼板22に隣接する隣接中間部剛性材料層としての中間部剛性鋼板26に対して水平方向Hにおいて長くなるように形成されており、下部剛性鋼板23及び24の夫々は、複数の中間部剛性鋼板25のうちの下部剛性鋼板24に隣接する隣接中間部剛性材料層としての中間部剛性鋼板27に対して水平方向Hにおいて長くなるように形成されている。
【0027】
複数の中間部剛性鋼板25は、本例では夫々互いに同様に形成されており、これにより、これらは夫々互いに水平方向Hにおいて等しい長さを有することになり、中間部剛性鋼板26及び27は、これらよりも鉛直方向Vにおいて中央側に位置する中央側中間部剛性材料層としての中間部剛性鋼板28に対して、水平方向Hにおいて等しい長さを有することとなる。尚、本例では、複数の中間部剛性鋼板25は夫々互いに同様に形成されているが、この構成に代えて、例えば、中間部剛性鋼板26及び27が、鉛直方向Vにおいて当該中間部剛性鋼板26及び27よりも中央側に位置している中間部剛性鋼板28に対して、水平方向Hにおいて短くなるように形成されていてもよい。
【0028】
被覆層6は、上部剛性鋼板21及び22を覆っている大径円環状の被覆部41と、下部剛性鋼板23及び24を覆っている大径円環状の被覆部42と、複数の中間部剛性鋼板25を覆っている円環状の被覆部43とを有している。被覆部43の上縁には被覆部41が一体的に連結されており、被覆部43の下縁には被覆部42が一体的に連結されている。被覆部41及び42は、被覆部43に対して、水平方向Hに突出している。
【0029】
免震装置1を製造する場合には、まず、ゴム弾性材料層4と剛性材料層5とを交互に積層して積層体を形成し、その積層体の上面及び下面に上部フランジプレート2及び下部フランジプレート3を配置し、型内における加圧下での加硫接着等によりこれらを相互に固定してなる積層ゴム体7を準備し、その後、円柱状鉛15を柱状孔8に形成すべく、柱状孔8に鉛を圧入する。鉛の圧入は、円柱状鉛15が積層ゴム体7により柱状孔8において隙間なしに拘束されるように、鉛を柱状孔8に油圧ラム等により押し込んで行う。鉛の圧入後、閉塞部材10及び11を取り付ける。尚、型内における加圧下での加硫接着による積層ゴム体7の形成において、剛性弾性材料層5の外周縁16を覆って、円筒状の被覆層6が形成されるようにするとよい。
【0030】
以上の免震装置1は、地震等が生じて下部構造が水平方向Hに振動すると、
図5に示すように、積層ゴム体7が水平方向Hに関して弾性変形し、これにより上部構造を下部構造の水平方向Hの振動に対して免震し、しかも、円柱状鉛15に塑性変形を生じさせて、下部構造の上部構造に対する振動エネルギを吸収して、当該振動を減衰させる。このように積層ゴム体7が水平方向Hに関して弾性変形すると、中間部剛性鋼板28は中間部剛性鋼板27に対して水平方向H1に水平変位し、中間部剛性鋼板27は下部剛性鋼板23及び24に対して水平方向H1に水平変位し、そして、下部剛性鋼板24は下部剛性鋼板23に対して水平方向H1に水平変位する。この際、下部剛性鋼板23及び24は中間部剛性鋼板25、主に中間部剛性鋼板27を支えているので、積層ゴム体7の下部フランジプレート3に近接した圧縮側の部分(フィレット部)に応力集中を生じさせにくくして座屈の虞をなくし得る一方、十分な横断面積を有した複数の中間部剛性鋼板25及びゴム弾性材料層4が交互に積層された部分(中間部)でもって本来有する免震機構を発揮させることができ、しかも、斯かる弾性変形時においても下部剛性鋼板23が下部剛性鋼板24を支えているので、積層ゴム体7の塑性変形及び水平方向の剛性をより安定させることができる。上部剛性鋼板21及び22もまた中間部剛性鋼板26及び28との関係において積層ゴム体7の弾性変形時に下部剛性鋼板23及び24と同様に作用する。
【0031】
本例の免震装置1によれば、上部構造に連結される上部フランジプレート2と、下部構造に連結される下部フランジプレート3と、上部フランジプレート2及び下部フランジプレート3間に設けられていると共に、鉛直方向Vにおいて交互に積層されたゴム弾性材料層4及び剛性材料層5を有した積層ゴム体7とを具備しており、剛性材料層5は、上部フランジプレート2に近接配置された少なくとも一つの上部剛性材料層としての上部剛性鋼板21及び22と、下部フランジプレート3に近接配置された少なくとも一つの下部剛性材料層としての下部剛性鋼板23及び24と、上部剛性鋼板21及び22と下部剛性鋼板23及び24との間に鉛直方向Vに並んで配された複数の中間部剛性材料層としての中間部剛性鋼板25とを具備しており、上部剛性鋼板21及び22並びに下部剛性鋼板23及び24は、これらに隣接する複数の中間部剛性鋼板25のうちの隣接中間部剛性材料層としての中間部剛性鋼板26及び27に対して水平方向Hにおいて長くなるように形成されており、中間部剛性鋼板26及び27は、鉛直方向Vにおいて当該中間部剛性鋼板26及び27よりも中央側に位置する複数の中間部剛性鋼板25のうちの中央側中間部剛性材料層としての中間部剛性鋼板28に対して、水平方向Hにおいて等しい長さとなるように又は短くなるように形成されているために、上部フランジプレート2及び下部フランジプレート3の夫々に近接した積層ゴム体7の部分(フィレット部)における応力集中を解消することができ、しかも、本来有する繰り返し応力の耐久性を発揮でき、捻れ方向にも免震機能を発揮できる等、装置を大型化させることなく当該装置が本来有する免震機能を発揮し得る。
【0032】
免震装置1によれば、剛性材料層5は、鉛直方向Vに夫々互いに並んで配されている複数の上部剛性鋼板21及び22を具備しており、上部剛性材料層21及び22のうちの上部フランジプレート2に最も近接して配置された最上部剛性材料層としての上部剛性鋼板21は、上部剛性鋼板22に対して、水平方向Hに長くなるように形成されているために、積層ゴム体7の水平方向変形時においても複数の上部剛性鋼板21及び22に塑性変形が生じにくく、これにより、水平方向Hの剛性を安定させることができ、フィレット部の応力集中に基づく座屈等を生じさせる虞をなくし得る。
【0033】
免震装置1によれば、剛性材料層5は、鉛直方向Vに夫々互いに並んで配されている複数の下部剛性鋼板23及び24を具備しており、下部剛性鋼板23及び24のうちの下部フランジプレート3に最も近接して配置された最下部剛性材料層としての下部剛性鋼板23は、下部剛性鋼板24に対して、水平方向Hに長くなるように形成されているために、積層ゴム体7の水平方向変形時においても複数の下部剛性鋼板23及び24に塑性変形が生じにくく、これにより、水平方向Hの剛性を安定させることができ、フィレット部の応力集中に基づく座屈等を生じさせる虞をなくし得る。
【0034】
尚、免震装置1の剛性材料層5は、下部剛性鋼板23及び24に代えて、例えば
図6に示すように、鉛直方向Vに夫々互いに並んで配されていると共に水平方向Hにおいて夫々互いに等しい長さを有している複数の下部剛性材料層としての下部剛性鋼板53及び54を具備していてもよい。また、剛性材料層5は、前記同様に、上部剛性鋼板21及び22に代えて、鉛直方向Vに夫々互いに並んで配されていると共に水平方向Hにおいて夫々互いに等しい長さを有している複数の上部剛性材料層(図示せず)を具備していてもよい。
【0035】
上部剛性鋼板21及び22並びに下部剛性鋼板23及び24は、円形外周縁31、32、33及び34を夫々有しているが、これに代えて、例えば
図7に示すように、複数の中間部剛性鋼板25の外周縁16よりも水平方向外方に位置している多角形外周縁55を有していてもよい。外周縁16は上述のように円形外周縁であってもよく、また、多角形外周縁であってもよい。この場合、被覆層6は多角筒状であってもよい。
【0036】
免震装置1は、本例では振動エネルギ吸収体9を具備しているが、この構成を省いてもよく、この場合、ゴム弾性材料層4及び剛性材料層5の夫々が円板状に形成され、積層ゴム体7が円柱状に形成されてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 免震装置
2 上部フランジプレート
3 下部フランジプレート
4 ゴム弾性材料層
5 剛性材料層
6 被覆層
7 積層ゴム体
9 振動エネルギ吸収体
21、22 上部剛性鋼板
23、24、53、54 下部剛性鋼板
25、26、27、28 中間部剛性鋼板