(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電気コネクタが収容される筐体内に、前記電気コネクタの本体部が配置され、接続相手の電気コネクタと嵌合する嵌合部を、前記筐体の開口部から突出させ、前記開口部の周縁部に前記本体部に設けられたシール部材を密着させる電気コネクタの取付構造において、
前記本体部が配置される設置面に、前記嵌合部を前記開口部へ案内するための案内部が設けられ、
前記案内部と前記本体部の突起板とは、前記本体部の取付方向の両側に一対形成され、
前記案内部は、前記設置面との対向面となる庇部材と、前記設置面と前記対向面との間に形成された前記それぞれの突起板の側辺を案内する立壁部とを備え、前記設置面と前記対向面との間に、前記突起板を進行させて、前記嵌合部を前記筐体の開口部へ案内する電気コネクタの取付構造。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態に係る電気コネクタの取付構造について、図面に基づいて説明する。本明細書においては、相手側の電気コネクタと嵌合する側を前側、その反対側を後側と称する。また、電気コネクタが設置される筐体の底面を下側、その反対側を上側と称する。
【0017】
図1から
図4に示すように、電気コネクタ1は、プリント基板20に実装された状態で、箱状の筐体30(蓋は図示せず)に収納されて、ケーブルCが接続された接続相手の電気コネクタ100と嵌合するものである。
【0018】
図8から
図10に示す電気コネクタ1は、接続相手の電気コネクタ100(
図1参照)と嵌合する嵌合部11と、嵌合部11が前部に形成された本体部12と、防水性を確保するためのシール部材13と、接続相手の電気コネクタ100における雌側のコネクタ端子と接触するコネクタ端子14とを備えている。本実施の形態では、嵌合部11と、本体部12とは、樹脂成形されたハウジング10により、一体的に形成されている。
嵌合部11は、筒状に形成された大小2つの第1嵌合部111と第2嵌合部112とが、筐体30の幅方向に並べられ、接続相手の電気コネクタ100が挿入される嵌合穴113に、雄側のコネクタ端子14が突出している。
【0019】
本体部12は、コネクタ端子14が挿通されコネクタ端子14を支持すると共に、電気コネクタ1を筐体30に固定するための各部の機構が形成されている。
本体部12の天面部12aの両端部(両方の側部)には、電気コネクタ1にプリント基板20を固定するためのねじ穴12pが形成されている。
【0020】
本体部12の天面部12aの両端部(両側部)には、幅方向に突出した天面取付部121が形成されている。天面取付部121は、平板状になっており、取付孔121pが形成されている。また、天面部12aには、プリント基板20に挿入されて、電気コネクタ1に対するプリント基板20の位置合わせをするための凸部122が、両側部に形成されている。
【0021】
本体部12の底部12bの両端部には、幅方向に突出すると共に、後方に突出した突起板123が形成されている。突起板123には、取付孔123pが形成されている。
突起板123は、側辺123aが、電気コネクタ1の取付方向と平行に形成され、前辺123bが、後端側から取付方向に向かうに従って徐々に電気コネクタ1の中央に向かう傾斜辺に形成されていることで、略台形状に形成されている。
【0022】
本体部12の側面12cは、2枚の平行な樹脂板の間に隔壁板が所定間隔ごとに配置されて補強され、コネクタ端子14を支持する前面部12dと共に本体部12の一部を構成する枠体である。
【0023】
シール部材13は、嵌合部11の基部の周囲を囲うように本体部12に設けられ、筐体30に形成された開口部32の周縁部に密着するリング状のリップパッキンである。
【0024】
図7に示すように、コネクタ端子14は、第1嵌合部111内および第2嵌合部112内に、本体部12から前方へ直線状に延びるピン部141と、本体部12から後方へ、プリント基板20へ向かってL字状に延びる接合部142と、本体部12を貫通する軸部143とを備えている。
ピン部141は、嵌合部11に挿入される接続相手の電気コネクタ100の雌側のコネクタ端子に挿入されて接続される。接合部142は、その先端がプリント基板20に形成されたスルーホールに挿入され、プリント基板20に接合される。軸部143は、本体部12に挿通してピン部141および接合部142を支持する。
【0025】
図8から
図10に示すように、コネクタ端子14は、第1嵌合部111と、第2嵌合部112とに対応させて、それぞれ本体部12に設けられている。コネクタ端子14は、第1嵌合部111側の上段に、上下2列の軸太のものと、下段に、上下3列の軸細のものとが設けられている。また、第2嵌合部112には、第1嵌合部111側の軸細のものと同じ程度の太さの24本が、縦列および横列に配列されている。
【0026】
図1に示すように、プリント基板20は、略矩形状に形成されており、筐体30に電気コネクタ1が収容される空間を確保した状態で、ねじ止めにより固定される。プリント基板20には、電気コネクタ1の底部と筐体30とをねじ止めにより固定する際に、ドライバを差し込むための、切り欠き部21が形成されている。
【0027】
図1から
図5に示すように、筐体30は、直方体の箱状に形成されたアルミダイキャスト品である。筐体30の側壁面311には、電気コネクタ1の嵌合部11を突出させるための角丸四角形状の開口部32が形成されている。筐体30の内部には、プリント基板20をねじ止めするために、一対の支柱部33と、4本の支持脚部33xが形成されている。
【0028】
図12に示すように、支柱部33は、開口部32の両側部に、側壁面311と一体的に形成されている。支柱部33は、その間隔W1が電気コネクタ1の本体部12の幅W2に対応させて形成されていると共に、支柱部33の立設位置がシール部材13の幅方向を開口部32の幅方向に合わせた位置に立設されていることで、幅方向位置決め部30aとして機能するものである。また、支柱部33は、プリント基板20の前側の両方の角部に対応する位置に形成されている。
図4に示すように、支柱部33の頭頂部33aには、ねじ穴33pが形成されている。
【0029】
図3から
図5に示すように、支柱部33の頭頂部33aのねじ穴33pに、天面取付部121の取付孔121pを合わせて、支柱部33の頭頂部33aに天面取付部121を配置して、プリント基板20をねじ121qによりねじ止めして、電気コネクタ1とプリント基板20とを筐体30に固定すれば、支柱部33の頭頂部33aの位置(後述する設置面351から頭頂部33aまでの高さH1)が、本体部12に設けられたシール部材13(
図1参照)の高さ方向を開口部32の高さ方向に合わせた位置となる。このことにより、支柱部33の頭頂部33aと、この頭頂部33aに天面取付部121をねじ止めするねじ121qとが、高さ方向位置決め部としての第2固定部30c(
図3参照)として機能する。
【0030】
本実施の形態では、支柱部33の頭頂部33aの位置(後述する設置面351から頭頂部33aまでの高さH1)を、設置面351に配置される電気コネクタ1の突起板123の底面から、天面取付部121の底面までの高さH2に合わせて形成されている。
【0031】
図1および
図2に示す支持脚部33xは、プリント基板20側からねじ止めされることで、プリント基板20を支持する。支持脚部33xは、プリント基板20の左右両方の側部中央に対応する位置と、プリント基板20の後側の左右両方の角部に対応する位置とに形成されている。
【0032】
図3から
図6に示すように、電気コネクタ1を配置させるための設置台35が、電気コネクタ1を挟んで左右両側となる筐体30の床面312に、支柱部33の基端部に繋がった状態で、一体的に形成されている。
設置台35は、電気コネクタ1の突起板123が置かれる設置面351と、設置面351から立設された立壁部352とにより、L字状に形成されている。設置面351には、ねじ穴351p(
図4参照)が形成されている。設置面351のねじ穴351pに、突起板123の取付孔123pを合わせて、設置面351に突起板123を配置し、ねじ123qによりねじ止めして、電気コネクタ1を筐体30に固定すれば、設置面351の位置が、シール部材13の高さ方向を開口部32の高さ方向に合わせた位置となる。このことにより、設置面351と、この設置面351に突起板123をねじ止めするねじ123qとが、高さ方向位置決め部としての第1固定部30bとして機能する。
【0033】
設置台35の立壁部352には、庇部材36が設けられている。本実施の形態では、庇部材36は、立壁部352の頭頂部にねじ止めされている。この庇部材36が設置台35に設けられていることにより、本体部12の取付方向への移動のがたつきを規制して、嵌合部11を筐体30の開口部32へ案内する案内部34が形成される。
【0034】
図5および
図6に示すように、庇部材36は、基部361が立壁部352にねじ止めされ、設置面351上に張り出し部362が庇のように、設置面351の後部351aと前部351bを除く中央部351cに張り出すことで、張り出し部362の底面が設置面351と対向する対向面363となる。つまり、設置面351と対向面363と立壁部352とにより、本体部12の突起板123が進行するスロットが形成される。
【0035】
図4に示すように、庇部材36による対向面363は、本体部12の取付方向における設置面351の基端部である後部351aを露出させるような長さに形成されている。また、庇部材36は、プリント基板20の切り欠き部21(
図2参照)からドライバを差し込んで、突起板123を設置面351にねじ止めできるように、ねじ穴351pを上方から露出させる幅に形成されている。
【0036】
図5および
図6に示すように、設置面351と、対向面363との間隔は、突起板123がスライドして通過できるように、突起板123の厚みより若干広く形成されている。
また、
図3および
図4に示すように、一対の設置台35の立壁部352同士の間隔は、設置面351の幅とも関係するが、設置面351の後部351aおよび中央部351cが、電気コネクタ1の両側から突出した一方の突起板123の側辺123aから他方の突起板123の側辺123aまでの間隔に対応させて形成されている。設置面351の前部351bの立壁部352同士の間隔は、後部351aおよび中央部351cより徐々に幅が狭くなり、その狭くなった状態が支柱部33まで維持されている。この後部351aおよび中央部351cより、前部351bの幅が狭くなる部分が、立壁部352同士の間隔が狭くなる狭幅部37である。
【0037】
以上のように構成された電気コネクタ1を筐体30へ取り付ける方法および状態について、図面に基づいて説明する。
図11Aに示すように、作業者は、電気コネクタ1が実装されたプリント基板20を、電気コネクタ1を筐体30側に向けて、筐体30の上方に位置させる。このとき、電気コネクタ1の突起板123を、設置面351の基端部となる後部351aに位置させる。
【0038】
次に、
図11Bおよび
図12に示すように、作業者は、設置面351の後部351aを載置面として、後部351aに電気コネクタ1の突起板123を置く。
例えば、庇部材36の長さが設置面351の後部351aまで延びていると、作業者は、突起板123の高さ方向の位置決めを空中で行うことになるため、庇部材36の配置が容易ではないが、設置面351の後部351aは、その全体が庇部材36から露出しているため、作業者は、庇部材36が邪魔になることなく、突起板123を設置面351の後部351aに容易に配置することができ、本体部12を取付方向にスライド可能な状態とすることができる。
【0039】
次に、作業者は、電気コネクタ1を筐体30の開口部32の方向へ進行させる。
電気コネクタ1が開口部32の方向へ進行すると、
図6に示すように、突起板123が設置面351と庇部材36の対向面363との間を進むので、作業者は、突起板123を設置面351から浮き上がらせることなく、進行させることができる。従って、
図12に示すように、本体部12が高さ方向に傾斜した状態、例えば、嵌合部11が斜め上方を向いた状態となったり、嵌合部11が斜め下方を向いた状態となったりして、開口部32へ進行することを防止することができる。
【0040】
また、
図6に示すように、設置台35による設置面351と、庇部材36による対向面363との間に、それぞれの突起板123の側辺123aを案内する立壁部352が形成されていることで、突起板123を立壁部352に沿って進行させることができるので、本体部12が幅方向に傾斜した状態となって開口部32へ進行することを防止することができる。
【0041】
このとき、
図4および
図9に示すように、突起板123の前辺123bが、設置面351の後部351aから中央部351cへ、中央部351cから前部351bへと進行するが、前辺123bが前部351bへ到達したときに、前辺123bが狭幅部37の傾斜部37aに当接して、狭幅部37に沿って突起板123が進行する。従って、作業者は、本体部12を進行させるだけで、本体部12の進行方向を、自然に一対の支柱部33の間に正確に向かわせることができる。
【0042】
そして、
図3および
図11Cに示すように、開口部32の両側部に位置する一方の支柱部33と他方の支柱部33との間に、電気コネクタ1が差し込まれるまで進行すると、電気コネクタ1の嵌合部11が、筐体30の開口部32から突出し、電気コネクタ1の両方の側面12cが支柱部33の対向面(内側面)に当接した状態で、電気コネクタ1の本体部12が支柱部33の間に嵌り込む。
【0043】
図1および
図3に示すように、本体部12の側面が幅方向位置決め部30aとして機能するに支柱部33に当接することで、幅方向の位置決めを行うことができる。また、幅方向位置決め部30a(支柱部33)が、開口部32の両側部に本体部12の幅W2に対応させた間隔W1で形成されているため、本体部12が支柱部33の間に嵌め込まれ、本体部12の両方の側面12cを、一対の支柱部33の対向面に当接させることで、本体部12をその幅方向の両方に移動できないような状態とすることができる。従って、本体部12が支柱部33の間に嵌め込まれることで、開口部32の周縁部に対してシール部材13を適正な幅位置に合わせることができる。
【0044】
図4および
図12に示すように、電気コネクタ1の突起板123の取付孔123pと、設置面351のねじ穴351pとの位置が一致し、天面取付部121の取付孔121pと、支柱部33のねじ穴33pと位置が一致した状態となる。
【0045】
このようにして、支柱部33が幅方向位置決め部30aとして機能して、電気コネクタ1が支柱部33の間に嵌り込むことで、電気コネクタ1の幅方向の位置が決定される。
そして、電気コネクタ1の突起板123が設置面351に載った状態、または/および天面取付部121が支柱部33に載った状態となることで、電気コネクタ1の高さ方向の位置が決定される。
【0046】
作業者は、この状態で、突起板123の取付孔123pに、ねじ123qを通して、突起板123を設置面351に固定する。更に、作業者は、プリント基板20側から天面取付部121の取付孔121pを介して、ねじ121qを通して、天面取付部121を支柱部33に固定する。
更に、作業者は、プリント基板20を支持脚部33xにねじ止めすることで、電気コネクタ1が実装されたプリント基板20を、筐体30に固定することができる。
【0047】
突起板123が、第1固定部30bにより、設置面351に固定されることで、電気コネクタ1の本体部12を、その高さ方向に移動できない状態とすることができる。また、天面取付部121が、第2固定部30cにより、支柱部33に固定されることによっても、電気コネクタ1の本体部12を、その高さ方向に移動できない状態とすることができる。
【0048】
このように、高さ方向位置決め部(第1固定部30b,第2固定部30c)が、幅方向位置決め部30aにより幅方向が位置決めされた電気コネクタ1の本体部12を固定して、本体部12の高さ位置を決定するため、高さ方向についても位置決めを行うことができるので、筐体30の開口部32の周縁部に対して、シール部材13を適正な高さ位置に合わせることができる。
【0049】
従って、電気コネクタ1における本体部12の幅方向の位置決めを行うことができると共に、本体部12の高さ方向についても位置決めを行うことができるので、筐体30に形成された開口部32への電気コネクタ1の偏りを防止することができる。よって、本実施の形態に係る電気コネクタの取付構造は、シール部材13を筐体30における開口部32の周縁部に均一に密着させることができる。
【0050】
また、本実施の形態では、幅方向位置決め部30aとして、支柱部33を筐体30に形成しているため、本体部12を挟んで開口部32の両側に支柱部33を立設すればよいので、幅方向位置決め部30aを設けるために広いスペースが不要である。
更に、幅方向位置決め部30aとしての支柱部33の頭頂部33aに、第2固定部30cが形成されていることで、幅方向位置決め部30aと高さ方向位置決め部とを兼用することができるので、新たに第2固定部を設けなくてもよいため、省スペース化を図ることができる。
【0051】
また、電気コネクタ1の本体部12が配置される設置面351に、電気コネクタ1の嵌合部11を筐体30の開口部32へ案内するための案内部34が設けられているため、本体部12を傾斜させた状態で開口部32へ進行させることが防止できる。従って、嵌合部11を開口部32へ真っ直ぐ正面を向いた状態で進行させることができ、シール部材13を偏りなく均等に、開口部32の周縁部に当接させ、圧縮させることができるので、シール部材13に傷を付けることなく電気コネクタ1を筐体30に取り付けることができる。
【0052】
なお、本実施の形態では、
図3に示すように、電気コネクタ1を筐体30に固定するために、第1固定部30bおよび第2固定部30cの両方を設けているが、いずれか一方でもよい。しかし、本実施の形態では、第1固定部30bおよび第2固定部30cは、電気コネクタ1の高さ方向の位置決めだけでなく、電気コネクタ1の天面部12aおよび底部12bを固定することで、接続相手の電気コネクタ100(
図1参照)と嵌合する際に、電気コネクタ1の天面部12aおよび底部12bのそれぞれに掛かる押圧力に対する強度を向上させることができるため、第1固定部30bおよび第2固定部30cの両方を備えるのが望ましい。
【0053】
また、本実施の形態では、
図3に示すように、設置面351と立壁部352とが、筐体30の床面312に形成され、対向面363は、立壁部352に固定された庇部材36により形成されている。
例えば、
図1に示す筐体30をアルミダイキャストにより成形する際に、金型の抜き方向を床面312から上方となる蓋側方向へとした場合には、設置台35と、この設置台35上に設けられる庇部材36とにより、金型の抜き方向と直交する方向に向いたスロットが形成されているため、
図3に示す設置台35と庇部材36とを筐体30の床面312に一体的に形成することが困難である。
従って、設置台35を筐体30の床面312に一体的に形成し、庇部材36を、設置台35とは別体で、設置台35にねじ止めにより固定することにより、本体部12の突起板123をスライドさせて、嵌合部11を開口部32へ案内する案内部34を形成することができる。従って、筐体30をアルミダイキャストにより成形するときの金型の抜き方向に関係なく、案内部34を形成することができるので、筐体30における他の各部の設計が容易である。
【解決手段】電気コネクタ1を収容する筐体30には、開口部32が形成され、接続相手の電気コネクタと嵌合する嵌合部11を突出させ、開口部32に本体部12に設けられたシール部材13を密着させる。電気コネクタ1の本体部12が配置される設置面351に、嵌合部11を開口部32へ案内するための案内部34が設けられている。案内部34は、設置面351との対向面が形成され、設置面351と対向面との間に、本体部12の突起板123を進行させる。この案内部34と突起板123は、本体部12の取付方向の両側に一対形成されている。