(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5692353
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】カード用コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 12/72 20110101AFI20150312BHJP
G06K 7/00 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
H01R12/72
G06K7/00 056
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-269243(P2013-269243)
(22)【出願日】2013年12月26日
【審査請求日】2014年5月13日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成25年6月28日、ソフトバンク株式会社により販売。
(73)【特許権者】
【識別番号】000177690
【氏名又は名称】山一電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 隆充
(72)【発明者】
【氏名】大家 正明
【審査官】
前田 仁
(56)【参考文献】
【文献】
特許第5323538(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/72
G06K 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICカードが通過するカードスロットに向き合う壁部を含むカード収容部を有し、該ICカードを着脱可能に該カード収容部に収容するベース部材と、
前記ベース部材を覆うカバー部材と、
前記ベース部材の前記壁部に一端が支持される可動端子、および、固定端子を含んでなり、前記カード収容部内の前記ICカードを検出するカード検出スイッチと、を備え、
前記カバー部材は、前記可動端子の一端を支持する壁部の外周面に当接する第1の補強片と、該壁部の内周面に当接し該第1の補強片と協働して該壁部を挟持する少なくとも一つの第2の補強片と、を有することを特徴とするカード用コネクタ。
【請求項2】
前記カード検出スイッチが、前記ICカードを検出しない場合、前記可動端子の接点部と前記固定端子の接点部とが互いに当接することを特徴とする請求項1記載のカード用コネクタ。
【請求項3】
前記カード収容部は、前記ICカードの電極部と前記ベース部材が配される基板の導体層とを電気的に接続する複数のコンタクト端子をさらに備え、
前記カバー部材の前記第1の補強片は、隣接した前記コンタクト端子の固定端子相互間の真上に位置することを特徴とする請求項1記載のカード用コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード検出スイッチを備えるカード用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロSDカード(登録商標)等のICカードが着脱可能に装着されるカード用コネクタは、携帯電話機等の電子機器内の配線基板上に配される。カード用コネクタは、例えば、特許文献1および特許文献2にも示されるように、カード検出スイッチを備えている。カード検出スイッチは、ICカードがそのコネクタ内のカード収容部内に装着されたか否かを検出するものとされる。そのようなカード検出スイッチは、例えば、ノーマルクローズタイプの検出スイッチとされ、一対の可動接片および固定接片を含んで構成されている。一対の可動接片および固定接片は、ハウジングにおけるカード収容部の一部を形成する後壁部の端子保持部に支持されている。このようなカード用コネクタにおいては、電子機器およびICカードの小型化に伴いさらなる小型化が要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−93233号公報
【特許文献2】特開2013−89552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カード用コネクタにおけるさらなる小型化の要望に対応すべく、ハウジングにおけるカード収容部を形成する樹脂製の側壁部および後壁部をより薄肉にすることも考えられる。
【0005】
しかしながら、壁部を薄肉にした場合、カード用コネクタが、リフロー方式の半田付けにより、配線基板上に固定されるとき、その熱により樹脂製の壁部が変形する虞があるので壁部を薄肉にすることにも、一定の限界がある。
【0006】
以上の問題点を考慮し、本発明は、カード検出スイッチを備えるカード用コネクタであって、ハウジングのカード収容部を形成する壁部をより薄くし小型化を図ることができ、しかも、リフロー方式の半田付けも可能であるカード検出スイッチを備えるカード用コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明に係るカード用コネクタは、ICカードが通過するカードスロットに向き合う壁部を含むカード収容部を有し、ICカードを着脱可能にカード収容部に収容するベース部材と、ベース部材を覆うカバー部材と、ベース部材の壁部に一端が支持される可動端子、および、固定端子を含んでなり、カード収容部内のICカードを検出するカード検出スイッチと、を備え、カバー部材は、可動端子の一端を支持する壁部の外周面に当接する第1の補強片と、壁部の内周面に当接し第1の補強片と協働して壁部を挟持する少なくとも一つの第2の補強片と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るカード用コネクタによれば、カバー部材は、可動端子の一端を支持する壁部の外周面に当接する第1の補強片と、壁部の内周面に当接し第1の補強片と協働して壁部を挟持する少なくとも一つの第2の補強片と、を有するのでハウジングのカード収容部を形成する壁部をより薄くし小型化を図ることができ、しかも、壁部が熱により変形することがないのでリフロー方式の半田付けも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係るカード用コネクタの一例の外観を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示される例において、カバー部材が取り外された状態を示す平面図である。
【
図4】
図1に示される例において、カバー部材およびカード検出スイッチが取り外された状態を示す斜視図である。
【
図5】
図3に示される例において、メモリカードが挿入された状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明に係るカード用コネクタの一例の外観を示す。
【0011】
図1に示されるカード用コネクタは、例えば、そのカード収容部10A(
図3参照)に着脱可能に収容されるICカードとしてのメモリカードSCの電極部と所定の電子機器の内部に配される配線基板(不図示)の接続端子部とを電気的に接続するものとされる。カード用コネクタは、例えば、携帯電話機、携帯型オーディオ、PDA、カメラ、PC等の電子機器の内部に配されるものとされる。薄板状のメモリカードSCは、例えば、マイクロシム(登録商標)カードとされ、後述されるコンタクト端子の配列に対応して6個の電極パッドが一方の表面部に形成されている。メモリカードSCは、
図5に示されるように、一方の端部に面取り部SCKを有している。
【0012】
カード用コネクタは、収容されるメモリカードSCに対する電気的接続を行う複数のコンタクト端子が配列されるベース部材10と、ベース部材10を覆うカバー部材12とを含んで構成されている。
【0013】
メモリカードSCのカード収容部10Aは、金属製のカバー部材12の内周部とベース部材10とによって形成される。即ち、ベース部材10全体が、そのカバー部材12の内周部により覆われることとなる。ベース部材10は、
図3および
図4に示されるように、互いに向かい合う側壁部10RW1、10RW2、10RW3、側壁部10LW1、10LW2、10LW3と、側壁部10RW1〜10RW3、および、側壁部10LW1〜10LW3を連結する底部10Bと、後述する後壁部10BWとを含んで構成されている。
【0014】
カード収容部10Aの一方の端部には、
図2に示されるように、矢印の示す方向に沿って着脱されるメモリカードSCが通過する開口部10CS(以下、カードスロット10CSともいう)が形成されている。また、カード収容部10Aの他方の端部には、そのカードスロット10CSに対向して後壁部10BWが形成されている。側壁部10RW1、10RW2、10RW3、および、側壁部10LW1、10LW2、10LW3には、それぞれ、爪部10RNが形成されている。側壁部10LW1〜10LW3は、中間に位置する側壁部10LW2に対し所定の間隔をもって形成されている。側壁部10RW1〜10RW3は、中間に位置する側壁部10RW2に対し所定の間隔をもって形成されている。
【0015】
ベース部材10の底部10Bの中央部には、
図3に示されるように、所定の間隔で配される二つの矩形の開口部10aおよび10bが3列、形成されている。開口部10aおよび10bは、それぞれ、側壁10RW2および10LW2、側壁10RW1および10LW1に対して略平行に細長く形成されている。各同一列の開口部10aおよび10bは、共通の直線上に形成されている。同一列における各開口部10aおよび10bは、
図3に示されるように、その中間に形成される中間底壁部10Paにより仕切られている。中間底壁部10Paには、その各列に対応して凹部10dが形成されている。また、隣接する列における開口部10aおよび10bは、それぞれ、底部10Bに形成される仕切壁10Pbにより仕切られている。
【0016】
樹脂材料で成形されるベース部材10には、コンタクト端子14Ai(i=1〜6)が上述の各開口部10aおよび10bに対応してインサート成形により配設されている。コンタクト端子14Aiは、装着されるメモリカードSCの電極パッドに当接しメモリカードSCと配線基板(不図示)とを電気的に接続するものとされる。
【0017】
各コンタクト端子14Aiは、薄板金属材料でプレス加工によって作られる。コンタクト端子14Aiは、上述のメモリカードSCの1個の電極パッドに略同時に当接し電気的に接続される接点部14ac、14bcをそれぞれ有する分岐可動片部14a,14bと、配線基板の導電層に半田付け固定される半田付端子部を有する後端部と、分岐可動片部14a,14bに連なる可動片支持部と、可動片支持部と後端部とを連結する連結部とを含んで構成されている。なお、上述の後端部の一部、可動片支持部、および、連結部は、インサート成形により底部10Bに鋳込まれている。
【0018】
弾性変位可能な分岐可動片部14a,14b、および、半田付端子部は、それぞれ、ベース部材10の底部から突出している。また、各コンタクト端子14Aiの半田付端子部14fsは、
図4に示されるように、カードスロット10CSに向かい合う後壁部10BWから外部に向けて突出している。これにより、半田がベース部材10におけるカードスロット周縁に付着することがないのでメモリカードSCの着脱において半田によって支障が生じる虞がない。
【0019】
さらに、底部10Bの表面に対し略垂直に成形される後壁部10BWには、
図1に示されるように、メモリカードSCがカード収容部10A内に装着されているか否かを検出するカード検出スイッチが設けられている。後壁部10BWは、メモリカードSCの着脱方向に対し略直交する方向に延びている。後壁部10BWは、後述するカード検出スイッチの一部を構成する可動端子20の固定部20Fを保持する端子保持部10BKを略中央部に有している。端子保持部10BKは、可動端子20の固定部20Fが圧入される細長い溝を有している。細長い溝は、可動端子20の板厚に対応した溝幅を有している。また、その溝を形成する壁の一方の端部近傍は、
図4に示されるように、可動端子20の可動部20Mの一部が後壁部10BWから
図5に示されるように張り出すように切り欠かれている。
【0020】
カード検出スイッチは、ノーマルクローズタイプのスイッチとされ、可動接点部20MCを有する可動端子20と、固定接点部10BCを有する固定端子とを備えて構成されている。可動端子20は、薄板金属材料で帯状に作られ、端子保持部10BKの溝に圧入され可動端子20をベース部材10に固定する固定部20Fと、メモリカードSCの端部に選択的に当接する当接端部20Eと、可動接点部20MCを有し固定部20Fと当接端部20Eとを連結する可動部20Mとから構成されている。
【0021】
図4において、上述の溝に差し込まれる固定部20Fには、半田付け固定端子が設けられている。これにより、その半田付け固定端子が配線基板に半田付け固定されることによって、可動端子20が配線基板の回路に導通することとなる。
【0022】
また、可動部20Mは、その帯状に広がる面が端子保持部10BKに向き合うように配置されることとなる。可動部20Mにおける固定部20Fから離隔する方向の一方の端部近傍には、隆起した可動接点部20MCが形成されている。
【0023】
当接端部20Eは、可動部20Mの一方の端部に対し所定の角度をもって可動接点部20MCの隆起する側(即ち、カード収容部10A側)に折れ曲がっている。
【0024】
一方、固定端子の固定接点部10BCは、可動端子20の可動部20Mにおける可動接点部20MCに対向するように後壁部10BWに埋設され露出されている。これにより、その固定端子に一体に形成される半田付け固定端子が、配線基板に半田付け固定されることによって、固定端子は、図示が省略される配線基板の回路に導通することとなる。
【0025】
固定端子の固定接点部10BC近傍と側壁部10RW3との間には、
図3に示されるように、当接端部20Eが侵入する隙間が形成されている。
【0026】
カバー部材12は、ベース部材10の側壁部10RW1、10RW2、10RW3に爪部10RNを介して係止される側壁12RWと、ベース部材10の側壁部10LW1、10LW2、10LW3に爪部10RNを介して係止される側壁12LWと、側壁12RWと側壁12LWとを連結する上面部とから構成されている。
【0027】
上面部には、
図1に示されるように、コンタクト端子14Aiの接点部14ac、14bcの真上となる位置にそれぞれ、複数の開口部12a、12bが形成されている。上面部の幅方向に沿って配列される開口部12bの列の両端には、挿入されたメモリカードSCを保持するように付勢する板ばね12RS、12LSが、隣接して形成されている。
【0028】
また、カバー部材12の上面部における後壁部10BW近傍の位置には、第1の補強片12RW1と、第2の補強片12RW2とが一体に成形されている。第1の補強片12RW1は、可動端子20の固定部20Fが固定されるベース部材10の後壁部10BWにおける端子保持部10BKの外周面に当接し、2箇所に形成される第2の補強片12RW2は、それぞれ、ベース部材10の後壁部10BWにおける固定接点部10BCの背面となる内周面部10BRと、カード検出スイッチがオフ状態となるとき、可動端子20による応力が最も大きく作用する固定部20Fが固定されるベース部材10の後壁部10BWにおけるカード収容部10Aに向かい合う内周面と、に当接している。従って、第1の補強片12RW1は、ベース部材10の後壁部10BWの中間部に配され、互いに離隔した第2の補強片12RW2相互間に位置することとなる。
【0029】
これにより、カード用コネクタが、リフロー方式で配線基板に実装される場合、後壁部10BWが、第1の補強片12RW1および2箇所の第2の補強片12RW2により、挟持され支持されるので仮に後壁部10BWの厚さがより薄く成形される場合であっても、熱変形により後壁部10BWが倒れる虞がない。
【0030】
なお、第2の補強片12RW2の幅は、第1の補強片12RW1の幅に比して大に設定されている。第1の補強片12RW1は、半田付け固定端子14fsの相互間に位置するように形成されているので半田付け固定端子の半田付け作業の良否が目視で検査可能とされる。
【0031】
斯かる構成において、
図5に示されるように、カード収容部10AにメモリカードSCが挿入される場合、可動端子20の当接端部20Eが、可動接点部20MCが固定端子の固定接点部10BCから離隔する方向にメモリカードSCの端部で押圧されるとともに、可動端子20の可動接点部20MCが固定端子の固定接点部10BCから離隔し第1の位置から所定の第2の位置まで移動せしめられることにより、カード検出スイッチは、オン状態からメモリカードSCの装着完了をあらわすオフ状態とされる。
【0032】
一方、カード収容部10AからメモリカードSCが排出される場合、メモリカードSCがカードスロット10CSを介して引き出されるとともに、可動端子20の可動接点部20MCが上述の第2の位置から固定端子の固定接点部10BCに近接する方向に復元力により回動され固定接点部10BCに当接せしめられるのでカード検出スイッチは、オフ状態からメモリカードSCの非装着状態をあらわすオン状態とされる。
【0033】
上述の本発明に係るカード用コネクタの一例は、マイクロシム(登録商標)カードが装着される、所謂、カード検出スイッチを備えるトレイタイプのカード用コネクタに適用されているが、斯かる例に限られることなく、例えば、カード検出スイッチを備え、メモリカードSCとしてSDカード、マイクロSDカード、MMCカード、ナノシム(nanoSIM)(登録商標)カード等が装着されるいずれかの他の形式のカード用コネクタに適用されてもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0034】
10 ベース部材
10BW 後壁部
10BC 固定接点部
10BK 端子保持部
12 カバー部材
12RW1 第1の補強片
12RW2 第2の補強片
14Ai コンタクト端子
20 可動端子
【要約】
【課題】ハウジングのカード収容部を形成する壁部をより薄くし小型化を図ることができ、しかも、リフロー方式の半田付けも可能であること。
【解決手段】カード用コネクタにおいて、カバー部材12の上面部に第1の補強片12RW1と、第2の補強片12RW2とが一体に成形され、第1の補強片12RW1は、可動端子20の固定部20Fが固定されるベース部材10の後壁部10BWにおける端子保持部10BKの外周面に当接し、2箇所に形成される第2の補強片12RW2は、それぞれ、ベース部材10の後壁部10BWにおける固定接点部10BCの背面となる内周面10BRと、可動端子20の固定部20Fが固定されるベース部材10の後壁部10BWにおけるカード収容部10Aに向かい合う内周面と、に当接するもの。
【選択図】
図1