特許第5692377号(P5692377)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5692377
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】半導体ユニットおよび半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/48 20060101AFI20150312BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20150312BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   H01L23/48 G
   H01L25/04 C
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-520502(P2013-520502)
(86)(22)【出願日】2012年5月31日
(86)【国際出願番号】JP2012064145
(87)【国際公開番号】WO2012172991
(87)【国際公開日】20121220
【審査請求日】2013年12月2日
(31)【優先権主張番号】特願2011-134565(P2011-134565)
(32)【優先日】2011年6月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092152
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 毅巖
(72)【発明者】
【氏名】三柳 俊之
【審査官】 小川 将之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−166333(JP,A)
【文献】 特開2000−058693(JP,A)
【文献】 特開平11−297929(JP,A)
【文献】 国際公開第98/012748(WO,A1)
【文献】 特開2010−206106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/48
H01L 25/07
H01L 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイドギャップ半導体基板を用いて形成される半導体チップを多数並列接続してなる半導体ユニットにおいて、
第1の共通導電板の第1の主面上に同一種の複数の前記半導体チップの一方の主面を接合し、前記半導体チップの他方の主面に導電ブロックをそれぞれ接合し、該複数の導電ブロック上に第2の共通導電板の第1の主面を接合し、前記第1の共通導電板の第2の主面と前記第2の共通導電板の第2の主面とを露出させ、前記第1の共通導電板の前記第1の主面と前記第2の共通導電板の前記第1の主面との間に絶縁樹脂を充填して一体化し、
前記半導体チップは、SiCスイッチングデバイスであり、前記一方の主面には第1主電極が形成され、前記他方の主面には第2主電極とゲート電極が形成され、前記第2の共通導電板とは絶縁されて前記第2の共通導電板の前記第2の主面側に導出される第3の導電板を備え、
前記第1主電極が前記第1の共通導電板の前記第1の主面に接合され、前記第2主電極が前記第2の共通導電板の前記第1の主面に前記導電ブロックを介して接合され、前記ゲート電極が前記第3の導電板に接続される、
ことを特徴とする半導体ユニット。
【請求項2】
ワイドギャップ半導体基板を用いて形成されるSiC−ダイオードチップを多数並列接続して内蔵する第1の半導体ユニットと、ワイドギャップ半導体基板を用いて形成されるSiCスイッチングデバイスを多数並列接続して内蔵する第2の半導体ユニットと、を共通の絶縁基板に搭載して接続する半導体装置であって、
第1の共通導電板の第1の主面上に同一種の複数の前記半導体チップの一方の主面を接合し、前記半導体チップの他方の主面に導電ブロックをそれぞれ接合し、該複数の導電ブロック上に第2の共通導電板の第1の主面を接合し、前記第1の共通導電板の第2の主面と前記第2の共通導電板の第2の主面とを露出させ、前記第1の共通導電板の前記第1の主面と前記第2の共通導電板の前記第1の主面との間に絶縁樹脂を充填して一体化し、
前記SiC−ダイオードチップは、
前記一方の主面にはカソード電極が形成され、前記他方の主面にはアノード電極が形成され、
前記カソード電極が前記第1の共通導電板の前記第1の主面に接合され、
前記アノード電極が前記導電ブロックを介して前記第2の共通導電板の前記第1の主面に接合され、
前記SiCスイッチングデバイスは、前記一方の主面には第1主電極が形成され、前記他方の主面には第2主電極とゲート電極が形成され、前記第2の共通導電板とは絶縁されて前記第2の共通導電板の前記第2の主面側に導出される第3の導電板を備え、
前記第1主電極が前記第1の共通導電板の前記第1の主面に接合され、前記第2主電極が前記第2の共通導電板の前記第1の主面に前記導電ブロックを介して接合され、前記ゲート電極が前記第3の導電板に接続される、
ことを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の半導体チップを上下の導電板で挟んだ半導体ユニットと、この半導体ユニットを用いた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インバータ装置などを構成する半導体モジュールとして、Si−IGBT(Si半導体基板を用いて製作した絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)とFWD(フリーホイーリングダイオード)としてSiC−Di(SiC半導体基板を用いて製作したダイオード)を用いる構造の半導体装置が開発されている。このSiC−Diはショットキーバリアダイオードであり、Si半導体基板で製作するショットキーバリアダイオードより高耐圧化でき、またpnダイオードよりスイッチング損失を小さくできる。尚、SiはシリコンでありSiCは炭化シリコン(炭化珪素)である。
【0003】
図5は、従来の半導体装置の構成図であり、同図(a)はケース内の配置図、同図(b)は要部断面図である。この半導体装置500は、2個のSi−IGBTチップ66と、フリーホイーリングダイオードである8個のSiC−Diチップ(SiC−ダイオードチップ)68とからなる半導体モジュールである。この半導体装置500は、インバータの1つの上アーム、または下アームを構成できる。
【0004】
半導体装置500は、銅ベース板61上に導電パターン付き絶縁基板62を接合し、導電パターン付き絶縁基板62上に第1導電パターン63、第2導電パターン64、および第3導電パターン65が形成されている。この第1導電パターン63とSi−IGBTチップ66のコレクタ電極67、および第2導電パターン64SiC−Diチップ68のカソード電極69がそれぞれ図示しない半田やAgペーストで接合されている。Si−IGBTチップ66のエミッタ電極70と、SiC−Diチップ68のアノード電極71は、アルミニウムのワイヤ72で第2導電パターン64に接続する。また、Si−IGBTチップ66のゲートパッド73は、アルミニウムのワイヤ74で第3導電パターン65に接続する。
【0005】
第1導電パターン63、第2導電パターン64は、第3導電パターン65にコレクタ端子C、エミッタ端子Eおよびゲート端子Gをそれぞれ接合する。
各チップを収納するケース75は、放熱体である銅ベース板61に接合し、このケース75上に前記の各端子(コレクタ端子C、エミッタ端子E、ゲート端子G)を露出させ、ケース75内には例えば図示しないゲルが充填されている。
【0006】
図5では、2個のSi−IGBTチップ66と8個のSiC−Diチップ68がケース75に収納されている。SiC半導体基板の結晶性が必ずしも良くないため、1つのSiC−Diチップ68の大きさには制約があり、数mm角程度である。そのため、半導体装置500は、1つのSi−IGBTチップ66に対して、例えば、4個のSiC−Diチップ68が必要となる。場合によっては、さらにSiC−Diチップ68を多くする必要がある。
【0007】
特許文献1では、並列接続する異種の素子を導電板で接続して樹脂封止して半導体ユニット(単位パッケージともいう)とし、この半導体ユニット(単位パッケージ)を複数用いて半導体モジュールを構成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4254527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記したように、SiC半導体基板は大面積になると結晶欠陥を多数含むため、SiC半導体基板を用いたSiC−Diチップ68の大きさ(前記したように数mm角程度)は、Siを用いたDiチップの大きさに比べて小さくなる。そのため、図5に示すようなSiC−Diチップ68を用いる半導体モジュール(半導体装置500)では、多数のSiC−Diチップ68を並列接続させて用いる必要がある。
【0010】
そのため、半導体モジュール(半導体装置500)は、接続に用いるワイヤ72の本数が多くなり、工数が増大しコストが増大する。また、半導体モジュール(半導体装置500)は、ワイヤ72の長さのばらつきにより、各チップ間の並列動作にばらつきが生じて電流集中を起こすチップが破壊する場合が出てきて、半導体モジュール(半導体装置500)の信頼性が低下する。また、半導体モジュール(半導体装置500)は、片面冷却構造のため、熱抵抗が高い。
【0011】
また、特許文献1では、同一種の素子(例えば、SiC−Diチップなど)を複数並列に接続して半導体ユニット(単位パッケージ)を形成し、この半導体ユニットを用いて半導体装置を組み立てることについては記載されていない。
【0012】
この発明の目的は、前記の課題を解決して、各チップ間で均一な並列動作をする半導体ユニットと、この半導体ユニットを用いて製作される熱抵抗が小さな低コストで高信頼性の半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、以下に示すような、半導体ユニットが提供される。半導体ユニットは、ワイドギャップ半導体基板を用いて形成される半導体チップを多数並列接続してなる半導体ユニットにおいて、第1の共通導電板の第1の主面上に同一種の複数の前記半導体チップの一方の主面を接合し、前記半導体チップの他方の主面に導電ブロックをそれぞれ接合し、該複数の導電ブロック上に第2の共通導電板の第1の主面を接合し、前記第1の共通導電板の第2の主面と前記第2の共通導電板の第2の主面とを露出させ、前記第1の共通導電板の前記第1の主面と前記第2の共通導電板の前記第1の主面との間に絶縁樹脂を充填して一体化し、前記半導体チップは、SiCスイッチングデバイスであり、前記一方の主面には第1主電極が形成され、前記他方の主面には第2主電極とゲート電極が形成され、前記第2の共通導電板とは絶縁されて前記第2の共通導電板の前記第2の主面側に導出される第3の導電板を備え、前記第1主電極が前記第1の共通導電板の前記第1の主面に接合され、前記第2主電極が前記第2の共通導電板の前記第1の主面に前記導電ブロックを介して接合され、前記ゲート電極が前記第3の導電板に接続される。
【0016】
また、上記目的を達成するために、以下に示すような、半導体装置が提供される。ワイドギャップ半導体基板を用いて形成されるSiC−ダイオードチップを多数並列接続して内蔵する第1の半導体ユニットと、ワイドギャップ半導体基板を用いて形成されるSiCスイッチングデバイスを多数並列接続して内蔵する第2の半導体ユニットと、を共通の絶縁基板に搭載して接続する半導体装置であって、第1の共通導電板の第1の主面上に同一種の複数の前記半導体チップの一方の主面を接合し、前記半導体チップの他方の主面に導電ブロックをそれぞれ接合し、該複数の導電ブロック上に第2の共通導電板の第1の主面を接合し、前記第1の共通導電板の第2の主面と前記第2の共通導電板の第2の主面とを露出させ、前記第1の共通導電板の前記第1の主面と前記第2の共通導電板の前記第1の主面との間に絶縁樹脂を充填して一体化し、前記SiC−ダイオードチップは、前記一方の主面にはカソード電極が形成され、前記他方の主面にはアノード電極が形成され、前記カソード電極が前記第1の共通導電板の前記第1の主面に接合され、前記アノード電極が前記導電ブロックを介して前記第2の共通導電板の前記第1の主面に接合され、前記SiCスイッチングデバイスは、前記一方の主面には第1主電極が形成され、前記他方の主面には第2主電極とゲート電極が形成され、前記第2の共通導電板とは絶縁されて前記第2の共通導電板の前記第2の主面側に導出される第3の導電板を備え、前記第1主電極が前記第1の共通導電板の前記第1の主面に接合され、前記第2主電極が前記第2の共通導電板の前記第1の主面に前記導電ブロックを介して接合され、前記ゲート電極が前記第3の導電板に接続される。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、ワイドギャップ半導体基板であるSiC半導体基板やGaN半導体基板で形成された同一で複数の小さな半導体チップを2枚の導電板(共通銅板)で挟みこみ、並列接続して半導体ユニットを形成する。こうすることで、複数の半導体チップの並列動作が均一化し、電流集中による破壊が防止できる高信頼性の半導体ユニットとすることができる。
【0019】
Si−IGBTチップとフリーホイーリングダイオードとなるSiC−Diチップで構成された半導体ユニットとを逆並列接続して、例えばインバータの上アームもしくは下アームとなる半導体装置を形成することで、熱抵抗が小さな低コストで高信頼性の半導体装置とすることができる。
【0020】
また、SiC−MOSFETチップで構成される半導体ユニットと、SiC−Diチップで構成される半導体ユニットとを逆並列接続して、インバータの上アームもしくは下アームとなる半導体装置を形成することで、熱抵抗が小さな低コストで高信頼性の半導体装置とすることができる。
【0021】
本発明の上記および他の目的、特徴および利点は本発明の例として好ましい実施の形態を表す添付の図面と関連した以下の説明により明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】この発明の第1実施例の半導体ユニットの構成図であり、(a)は要部平面図、(b)は(a)のX1−X1線で切断した要部断面図である。
図2】この発明の第2実施例の半導体ユニットの構成図であり、(a)は要部平面図、(b)は(a)のX3−X3線で切断した要部断面図である。
図3】この発明の第3実施例の半導体装置の構成図であり、(a)は要部平面図、(b)は(a)のX5−X5線で切断した要部断面図である。
図4】この発明の第4実施例の半導体装置の構成図であり、(a)は要部平面図、(b)は(a)のX6−X6線で切断した要部断面図である。
図5】従来の半導体装置の構成図であり、(a)はケース内の配置図、(b)は要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
実施の形態を以下の実施例で説明する。
<実施例1>
図1は、この発明の第1実施例の半導体ユニットの構成図であり、同図(a)は要部平面図、同図(b)は同図(a)のX1−X1線で切断した要部断面図である。図1(a)は、図1(b)のX2−X2線で切断した平面から矢印方向に見た模式的な要部平面図である。この半導体ユニット100は、炭化珪素半導体基板(SiC半導体基板)に形成されたダイオードチップ(以下、SiC−Diチップという)2を複数個、を並列接続した構造の半導体モジュールである。
【0024】
SiC−Diチップ2は、一方の主面にカソード電極3が形成され、他方の主面にアノード電極5が形成された素子である。
この例では、第1共通銅板(第1の共通電極板)1上に4個のSiC−Diチップ2のカソード電極3を半田4で接合し、4個のSiC−Diチップ2のアノード電極5上にそれぞれヒートスプレッダとしての銅ブロック6を半田7で接合する。それぞれの銅ブロック6上に1つの第2共通銅板(第2の共通電極板)8を半田9で接合する。そして、第1共通銅板1のSiC−Diチップ2との接合面とは反対側の主面と、同じく第2共通銅板8の銅ブロック6との接合面とは反対側の面を露出させ、第1共通銅板1と第2共通銅板8で挟まれた領域、少なくともSiC−Diチップ2の端部2aを覆う領域をシリコーンゴムやエポキシ樹脂などの高耐熱樹脂10でモールドする。
【0025】
ここで、少なくともSiC−Diチップ2の端部2aを覆う高耐熱樹脂10は、SiC−Diチップ2の動作時の温度(例えば150℃)に至っても、絶縁性や密着性などの封止性能が劣化しない必要があり、耐熱温度は175℃程度である。
【0026】
この4個の小さなSiC−Diチップ2が並列接続されて構成される半導体ユニット100は、等価的に大面積の素子構造になり、1素子化される。このため、半導体ユニット100を用いれば、例えば数mm角の微小なSiC−Diチップ2複数個をあたかも1素子(例えば1辺が1cm弱の1素子)として一括して取り扱うことができる。このような半導体ユニット100を予め作成しておくことで、後述する半導体装置を組み立てる際にも、SiC−Diチップ2の取り扱いが容易となる。
【0027】
また、半導体ユニット100は、4個の小さなSiC−Diチップ2が第1共通銅板1と第2共通銅板8で挟まれ、ワイヤボンディングレスの構造であるため、4個のSiC−Diチップ2の相互間では、ボンディングワイヤに存在するインダクタンス成分による影響がなく均一な並列動作をする。そのため、特定の1個のSiC−Diチップ2に電流が集中することがなくなるため、素子破壊が防止できて高信頼性化できる。
【0028】
また、この半導体ユニット100は、第1共通銅板1と第2共通銅板8との両面冷却構造となり、SiC−Diチップ2で発生した熱は第1共通銅板1と第2共通銅板8の両方から放熱されるため、熱抵抗は小さくなる。
<実施例2>
図2は、この発明の第2実施例の半導体ユニットの構成図であり、同図(a)は要部平面図、同図(b)は同図(a)のX3−X3線で切断した要部断面図である。図2(a)は、図2(b)のX4−X4線で切断した平面から矢印方向に見た模式的な要部平面図である。この半導体ユニット200は、SiC半導体基板に形成されたSiC−MOSFETチップ12を複数個、並列接続した構造の半導体モジュールである。
【0029】
ここで、SiC−MOSFETチップ12は、SiC製のスイッチングデバイスの一例であり、SiC製のスイッチングデバイスは、SiC−JFET(Junction Field Effect Transistor:接合型電界効果トランジスタ),SiC−IGBTなども適用可能である。ここでは、SiC−MOSFETチップ12を例示して説明する。
【0030】
SiC−MOSFETチップ12は、一方の主面にドレイン電極13が形成され、他方の主面にソース電極15とゲートパッド24が形成された素子である。
図2の半導体ユニット200と図1の半導体ユニット100の違いは、半導体チップとしてSiC−Diチップ2をSiC−MOSFETチップ12に置き換えた点である。また、第1共通銅板1の代わりに、図2に示すような補助導電パターン付き絶縁基板11を用いた点である。
【0031】
補助導電パターン付き絶縁基板11は、図2に示すように裏面に裏面金属膜20を形成し、おもて面にMOSFETが接合する第1導電パターン21を形成し、この裏面金属膜20は絶縁基板22を貫通した接続導体23で第1導電パターン21に接続する。また、接続導体23を設けずに、第1導電パターン21と裏面金属膜20をワイヤなどで接続してもよい。
【0032】
補助導電パターン付き絶縁基板11の第1導電パターン21上に4個の小さなSiC−MOSFETチップ12の各ドレイン電極13を半田14で接合し、各SiC−MOSFETチップ12のゲートパッド24をそれぞれ独立した第2導電パターン25にワイヤ26を介して接続する。
【0033】
4個のSiC−MOSFETチップ12のソース電極15にそれぞれ銅ブロック16を半田17で接合する。それぞれの銅ブロック16上に1つの共通銅板18を半田19で接合する。
【0034】
共通銅板18には、共通銅板18とは絶縁されたゲート導体27が貫通している。ゲート導体27は、第2導電パターン25を介してSiC−MOSFETチップ12のゲートパッド24に接続されている。
【0035】
そして、絶縁基板11の裏面金属膜20と共通銅板18の銅ブロック16との接合面とは反対側の面を露出させ、絶縁基板11と共通銅板18で挟まれた領域、少なくともSiC−MOSFETチップ12の端部12aを覆う領域をシリコーンゴムやエポキシ樹脂などの高耐熱樹脂28でモールドする。
【0036】
ここで、少なくともSiC−MOSFETチップ12の端部12aを覆う高耐熱樹脂28は、SiC−MOSFETチップ12の動作時の温度(例えば150℃)に至っても、絶縁性や密着性などの封止性能が劣化しない必要があり、耐熱温度は175℃程度である。
【0037】
前記の補助導電パターン付き絶縁基板11が図1の第1共通銅板1の役割をする。この半導体ユニット200の場合も前記の半導体ユニット100とほぼ同様の効果が得られる。但し、SiC−MOSFETチップ12で発生した熱は下方側では補助導電パターン付き絶縁基板11から放熱されるので、図1の第1共通銅板1から放熱される場合より熱抵抗は高くなる。しかし、接続導体23の断面積を大きくすれば熱抵抗を下げることができる。
【0038】
この4個の小さなSiC−MOSFETチップ12が並列接続されて構成される半導体ユニット200は、等価的に大面積の素子構造になり、1素子化される。このため、半導体ユニット200を用いれば、例えば、複数個の微小(数mm角)なSiC−MOSFETチップ12をあたかも1素子(例えば1辺が1cm弱の1素子)として一括して取り扱うことができる。このような半導体ユニット200を予め作成しておくことで、後述する半導体装置を組み立てる際にも、SiC−MOSFETチップ12の取り扱いが容易となる。
【0039】
尚、実施例1および実施例2では、小さなSiC−Diチップ2および小さなSiC−MOSFETチップ12で構成された半導体ユニット100,200をそれぞれ例として挙げた。しかし、チップとしてはSiC−Diチップ2やSiC−MOSFETチップ12に限るものではない。また、例えば、GaN(窒化ガリウム)半導体基板などバンドギャップの広い半導体基板を用いて形成された素子で面積の大きいチップの製作が困難な場合、複数の小さなチップを並列動作させる本構造が有用である。また、将来的には、SiC−IGBTチップおよびGaN−Diチップ、GaN−MOSFETチップ,GaN−IGBTチップなどにも本発明を適用することができる。
【0040】
また、半導体ユニット100,200は4個の同一の小さなSiC−Diチップ2あるいはSiC−MOSFETチップ12で構成された例を示したが、個数についてはこれに限るものではない。所望の電流容量となるように、半導体ユニット100,200に格納するSiC−Diチップ2,SiC−MOSFETチップ12の個数(並列数)を適宜変更すればよい。
<実施例3>
図3は、この発明の第3実施例の半導体装置の構成図であり、同図(a)は要部平面図、同図(b)は同図(a)のX5−X5線で切断した要部断面図である。図3(a)はケース44内の模式的な配置図である。
【0041】
この半導体装置300は、2個のSi−IGBTチップ35にフリーホイーリングダイオードとしてSiC−Diチップ2で構成される半導体ユニット100を逆並列接続した構造であり、インバータの1つの上アームもしくは1つの下アームを構成する半導体モジュールである。個数についてはこれに限るものではない。
【0042】
銅ベース板31上に導電パターン付き絶縁基板32の裏面金属膜33を図示しない半田で接合し、第3導電パターン34上に2個のSi−IGBTチップ35のコレクタ電極36とSiC−Diチップ2で構成された2個の半導体ユニット100の第1共通銅板1を図示しない半田で接合する。
【0043】
Si−IGBTチップ35のエミッタ電極37と第4導電パターン38をワイヤ39で接続する。また、Si−IGBTチップ35のゲートパッド40と第5導電パターン41をワイヤ42で接続する。半導体ユニット100の第2共通銅板8と第4導電パターン38をフリキシブルな平板のリボンワイヤ43で接続する。
【0044】
前記の第3導電パターン34にコレクタ端子C、第4導電パターン38にエミッタ端子E、第5導電パターン41にゲート端子Gを接続する。
尚、このリボンワイヤ43の代わりに複数の銅線やアルミニウム線、あるいは単なる薄い銅板などの導体を用いても構わない。
【0045】
Si−IGBTチップ35と、SiC−Diチップ2で構成された半導体ユニット100とが収納されるように上方からケース44を被せ、エミッタ端子E、コレクタ端子Cおよびゲート端子Gをケース44の上面に露出させる。また、ケース44の下部を銅ベース板31に接合し、図示しないゲルをケース44内に充填して半導体装置300が完成する。
【0046】
半導体装置300は、半導体ユニット100を用いることで、従来の半導体装置500に比べると、組立性が向上し、半導体装置300の低コスト化を図ることができる。
また、半導体装置300は4個のSiC−Diチップ2のアノード電極5が銅ブロック6を介して第2共通銅板8に接続する構造であるため、4個のSiC−Diチップ2間のインダクタンスのばらつき小さくなり、この4個のSiC−Diチップ2は均一な並列動作ができる。その結果、電流集中による半導体ユニット100の破壊が生じ難くなり、半導体装置300の信頼性が向上する。
【0047】
また、半導体ユニット100は両面から冷却されるため、半導体装置300の熱抵抗を小さくできる。
<実施例4>
図4は、この発明の第4実施例の半導体装置の構成図であり、同図(a)は要部平面図、同図(b)は同図(a)のX6−X6線で切断した要部断面図である。図4(a)はケース57内の模式的な配置図である。
【0048】
この半導体装置400は、SiC−MOSFETチップ12で構成される半導体ユニット200にフリーホイーリングダイオードとしてSiC−Diチップ2で構成される半導体ユニット100を逆並列接続した構造であり、インバータの1つの上アームもしくは1つの下アームを構成する半導体モジュールである。ここでは、半導体ユニット100,200は共に2個の例を挙げたが、個数はこれに限るものではない。
【0049】
銅ベース板51上に導電パターン付き絶縁基板52を図示しない半田で接合し、第6導電パターン53上に2個のSiC−MOSFETチップ12で構成された半導体ユニット200の補助導電パターン付き絶縁基板11を図示しない半田で接合する。
【0050】
また、第6の導電パターン53上に2個のSiC−Diチップ2で構成された半導体ユニット100の第1共通銅板1を図示しない半田で接合する。
半導体ユニット200の共通銅板18と第7導電パターン54をフリキシブルな平板のリボンワイヤ55で接続する。また、半導体ユニット100の第2共通銅板8と第7導電パターン54をフリキシブルな平板のリボンワイヤ55で接続する。また、半導体ユニット200のゲート導体27を第8導電パターン56にワイヤ58で接続する。このゲート導体27と共通銅板18は、高耐熱樹脂28で電気的に絶縁されている。
【0051】
また、前記の第6導電パターン53にコレクタ端子C、第7導電パターン54にエミッタ端子Eおよび第8導電パターン56にゲート端子Gをそれぞれ接合する。
尚、このリボンワイヤ55の代わりに複数の銅線やアルミニウム線、あるいは単なる薄い銅板などの導体を用いても構わない。
【0052】
SiC−MOSFETチップ12で構成された半導体ユニット200とSiC−Diチップ2で構成された半導体ユニット100が収納されるように上方からケース57を被せ、ケース57の上面からコレクタ端子C、エミッタ端子Eおよびゲート端子Gをそれぞれ露出させる。ケース57の下部を銅ベース板51に接合して半導体装置400が完成する。
【0053】
SiC−MOSFETチップ12とSiC−Diチップ2をそれぞれ1個毎にワイヤを介して導電パターンに接続する従来の場合に比べると、半導体ユニット100,200を用いることで、組立性が向上し、半導体装置400の低コスト化を図ることができる。
【0054】
また、両面冷却できる半導体ユニット100,200を用いることで、半導体装置400の熱抵抗を小さくできる。
また、半導体ユニット100,200を用いることで、各チップ間でのインダクタンスのばらつきは小さくなり、各チップ間で均一な並列動作ができる。その結果、電流集中による半導体ユニット100,200の破壊が生じ難くなり半導体装置400の信頼性が向上する。
【0055】
尚、実施例4において、SiC−MOSFETチップ12とSiC−Diチップ2からなる半導体ユニット100,200を組み合わせた半導体装置400を例に挙げたが、用いられる半導体チップとしては、前記したように、SiC−MOSFETチップ12やSiC−Diチップ2に限るものではない。
【0056】
上記については単に本発明の原理を示すものである。
さらに、多数の変形、変更が当業者にとって可能であり、本発明は上記に示し、説明した正確な構成および応用例に限定されるものではなく、対応するすべての変形例および均等物は、添付の請求項およびその均等物による本発明の範囲とみなされる。
【符号の説明】
【0057】
1 第1共通銅板
2 SiC−Diチップ
2a,12a 端部
3 カソード電極
4,7,9,14,17,19 半田
5 アノード電極
6,16 銅ブロック
8 第2共通銅板
10,28 高耐熱樹脂
11 補助導電パターン付き絶縁基板
12 SiC−MOSFETチップ
13 ドレイン電極
15 ソース電極
18 共通銅板
20,33 裏面金属膜
21 第1導電パターン
22 絶縁基板
23 接続導体
24,40 ゲートパッド
25 第2導電パターン
26,39,42,58 ワイヤ
27 ゲート導体
31,51 銅ベース板
32,52 導電パターン付き絶縁基板
34 第3導電パターン
35 Si−IGBTチップ
36 コレクタ電極
37 エミッタ電極
38 第4導電パターン
41 第5導電パターン
43,55 リボンワイヤ
44,57 ケース
53 第6導電パターン
54 第7導電パターン
56 第8導電パターン
100,200 半導体ユニット
300,400 半導体装置
C コレクタ端子
E エミッタ端子
G ゲート端子
図1
図2
図3
図4
図5