(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5692382
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】高耐圧半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20150312BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
H01L29/78 652N
H01L29/78 652H
H01L29/78 652P
H01L29/06 301D
H01L29/06 301G
H01L29/06 301V
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-523860(P2013-523860)
(86)(22)【出願日】2012年5月28日
(86)【国際出願番号】JP2012063685
(87)【国際公開番号】WO2013008543
(87)【国際公開日】20130117
【審査請求日】2013年11月25日
(31)【優先権主張番号】特願2011-155577(P2011-155577)
(32)【優先日】2011年7月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】曹 大為
(72)【発明者】
【氏名】北村 睦美
(72)【発明者】
【氏名】田村 隆博
(72)【発明者】
【氏名】大西 泰彦
【審査官】
大橋 達也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−203565(JP,A)
【文献】
特開2003−224273(JP,A)
【文献】
特開2001−015752(JP,A)
【文献】
特開2005−051190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型高不純物濃度の半導体基板の一方の主面に垂直な方向に長手形状を有する第1導電型半導体領域と第2導電型半導体領域とが前記半導体基板の主面に平行な方向に交互に隣接する並列pn層をドリフト層として備え、前記並列pn層がオン状態で電流が流れ、オフ状態で空乏化して電圧を阻止する構成を有する高耐圧半導体装置であって、
前記並列pn層のうち、主電流経路となる素子活性部内の第1並列pn層と、
前記並列pn層のうち、前記素子活性部を取り巻く耐圧構造部内の第2並列pn層と、
を備え、
前記第1並列pn層内の一つの前記第1導電型半導体領域と当該第1導電型半導体領域の隣の一つの前記第2導電型半導体領域とを1セットとし、当該1セットの幅を1とした場合に、前記第2並列pn層内の一つの前記第1導電型半導体領域と当該第1導電型半導体領域の隣の一つの前記第2導電型半導体領域とを1セットとした、当該1セットの幅が2/3であり、
矩形状の平面形状を有する前記半導体基板の四隅のコーナー部の前記第1並列pn層と前記第2並列pn層との境界が、前記第1並列pn層の隣接する2セットの端部と前記第2並列pn層の隣接する3セットの端部とが対向することを特徴とする高耐圧半導体装置。
【請求項2】
前記第2並列pn層の表面に、前記第1並列pn層の前記第1導電型半導体領域よりも不純物濃度の低い低濃度第1導電型半導体領域をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の高耐圧半導体装置。
【請求項3】
前記第1並列pn層は、前記第1導電型半導体領域と前記第2導電型半導体領域とが交互に繰り返し並ぶ方向に直交する方向に延びるストライプ状の平面レイアウトを有することを特徴とする請求項2に記載の高耐圧半導体装置。
【請求項4】
前記半導体基板の四隅のコーナー部に位置する前記第1並列pn層の端部の長さを偶数ピッチ毎に変えることにより、前記素子活性部の外周の、前記耐圧構造部の四隅のコーナー部付近の部分に曲率部を構成し、
前記第2並列pn層の最内側端部が前記曲率部に対応する長さで前記半導体基板の主面に平行に前記半導体基板の内側に向かって延びていることを特徴とする請求項1に記載の高耐圧半導体装置。
【請求項5】
前記第1並列pn層は、前記第1導電型半導体領域内に前記第2導電型半導体領域がマトリクス状に配置された平面レイアウトを有することを特徴とする請求項4に記載の高耐圧半導体装置。
【請求項6】
前記並列pn層内の半導体領域がチャージバランスをとるための遷移部を備えていないことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の高耐圧半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MOS(金属−酸化膜−半導体からなる絶縁ゲート)型電界効果トランジスタ等の高耐圧半導体装置にかかわり、特にスーパージャンクション構造を有し、半導体基板の両主面間に主電流が流れる縦型の高耐圧半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常の縦型MOSFET(絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)では、高抵抗のn
-ドリフト層は、オン状態のときに、縦方向(基板深さ方向)にドリフト電流を流す機能を有する。従って、このn
-ドリフト層の電流経路を短くする、すなわち、n
-ドリフト層の厚さを薄くすることにより、ドリフト抵抗が低くなるため、MOSFETの実質的なオン抵抗を下げる効果が得られる。
【0003】
その一方で、高抵抗のn
-ドリフト層は、オフ状態のときには、空乏化して高耐圧を保持する機能を有する。従って、高抵抗のn
-ドリフト層を薄くし過ぎた場合、耐圧が低くなるため、pベース領域とn
-ドリフト層とのpn接合から広がる空乏層が低い印加電圧でドレイン電極に達する。一方、高抵抗のn
-ドリフト層を厚くした場合、シリコン(Si)の臨界電界強度に達する逆バイアス電圧が高くなるため、高耐圧半導体装置となる。
【0004】
しかしながら、高抵抗のn
-ドリフト層を厚くし過ぎた場合、オン抵抗が大きくなり、損失が増える。このように、縦型MOSFETでは、オン抵抗と耐圧との間にトレードオフ関係があるため、一般的にオン抵抗および耐圧の両方の特性を同時に向上させることは難しい。
【0005】
このようなトレードオフ関係にある複数の半導体特性を同時に向上させた装置として、ドリフト層に、p型領域とn型領域とを交互に繰り返し接合した構成の超接合(スーパージャンクション、以下、SJとする)構造を備えた超接合半導体装置が知られている。このSJ構造は、縦型の高耐圧半導体装置に適用した場合、n
-ドリフト層中に、基板の深さ方向に延びかつ幅の狭いp型領域とn型領域とを基板主面に平行な方向に交互に繰り返し並列させた構造(以下、並列pn層とする)となる。
【0006】
これらの複数のp型領域とn型領域からなる並列pn層は、p型領域およびn型領域をそれぞれ高不純物濃度の低抵抗領域とした場合でも、オフ時に低い印加電圧で並列pn層内のすべての領域間のpn接合から拡がる空乏層が速やかに両領域を空乏化する程度の狭い幅にされるため、低オン抵抗と高耐圧特性とを同時に得られる構造として知られている。しかし、SJ構造によって実際に高耐圧特性を得るには、p型領域とn型領域とに含まれる不純物量をできるかぎり等しくなるように制御することが重要である。
【0007】
また、SJ構造を主電流の流れる素子活性部内のn
-ドリフト層に形成した縦型MOSFETでは、素子活性部を取り巻く耐圧構造部の構造も通常のパワーMOSFETと異なる構造にする必要がある。すなわち、SJ構造を有するMOSFETの高耐圧化を実現するためには、高耐圧を保持するように適切に設計された耐圧構造部を必要とする。通常、耐圧構造部は素子活性部よりも高耐圧を保持する構造にしなければならないため、耐圧構造部にもSJ構造あるいは疑似SJ構造を形成することになる。この耐圧構造部内でも、n型領域とp型領域との不純物量が等しくない場合、耐圧構造部の耐圧が低下するため、高耐圧半導体装置の耐圧低下に至る。
【0008】
この問題を解決するため、耐圧構造部の並列pn層の不純物量を素子活性部の並列pn層の不純物量の1/2にするとよいことが知られている(例えば、下記特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−277726号公報
【特許文献2】特開2003−224273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1,2のように耐圧構造部の並列pn層の不純物量を素子活性部の並列pn層の不純物量の1/2にするには、耐圧構造部への不純物イオン注入のドーズ量を素子活性部への不純物イオン注入のドーズ量の1/2にするか、不純物イオン注入用マスクの開口幅を耐圧構造部において素子活性部の1/2にすればよい。例えば、耐圧構造部への不純物イオン注入のドーズ量を素子活性部への不純物イオン注入のドーズ量の1/2にする具体的方法としては、不純物イオン注入を数回に分けて行い、耐圧構造部へのイオン注入回数を素子活性部へのイオン注入回数よりも少なくする方法が開示されているが、生産効率が悪くなってコストアップにつながるという問題がある。
【0011】
一方、不純物イオン注入用マスクの開口幅を耐圧構造部において素子活性部の1/2にする方法は、マスクの開口部の幅を変化させるだけなので容易に実現可能であるが、耐圧構造部におけるマスク開口幅を素子活性部におけるマスク開口幅の1/2と微細にしなければならない。このため、耐圧構造部の並列pn層は、実際にはプロセスバラツキによる影響を受け易いという問題がある。また、並列pn層のp型領域およびn型領域の幅やピッチの微細化は特性改善には効果的であるものの、p型領域のp型不純物とn型領域のn型不純物との相互領域間の拡散(以下、相互拡散とする)が増え、不純物濃度のバラツキが大きくなったり、並列pn層が形成されなくなったりする懸念がある。
【0012】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、プロセスバラツキによる影響を低減し、耐圧構造部の第2並列pn層を構成するp型領域およびn型領域間の相互拡散を低減させた高耐圧半導体装置を提供することである。また、この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、レイアウトが容易な超接合を備えた高耐圧半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる高耐圧半導体装置は、第1導電型高不純物濃度の半導体基板の一方の主面に垂直な方向に長手形状を有する第1導電型半導体領域と第2導電型半導体領域とが前記半導体基板の主面に平行な方向に交互に隣接する並列pn層をドリフト層として備え、前記並列pn層がオン状態で電流を流し、オフ状態では空乏化して電圧を阻止する構成を有し、次の特徴を有する。前記並列pn層のうち、主電流経路となる素子活性部内の第1並列pn層を備える。前記並列pn層のうち、前記素子活性部を取り巻く耐圧構造部内の第2並列pn層を備える。
前記第1並列pn層内の一つの前記第1導電型半導体領域と当該第1導電型半導体領域の隣の一つの前記第2導電型半導体領域とを1セットとし、当該1セットの幅を1とした場合に、前記第2並列pn層内の一つの前記第1導電型半導体領域と当該第1導電型半導体領域の隣の一つの前記第2導電型半導体領域とを1セットとした、当該1セットの幅が2/3である。矩形状の平面形状を有する前記半導体基板の四隅のコーナー部の前記第1並列pn層と前記第2並列pn層との境界が、前記第1並列pn層の隣接する2
セットの端部と前記第2並列pn層の隣接する3
セットの端部とが対向することを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかる高耐圧半導体装置は、上述した発明において、前記第2並列pn層の表面に、前記第1並列pn層の前記第1導電型半導体領域よりも不純物濃度の低い低濃度第1導電型半導体領域をさらに備えることを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかる高耐圧半導体装置は、上述した発明において、前記第1並列pn層は、前記第1導電型半導体領域と前記第2導電型半導体領域とが交互に繰り返し並ぶ方向に直交する方向に延びるストライプ状の平面レイアウトを有することを特徴とする。
【0016】
また、この発明にかかる高耐圧半導体装置は、上述した発明において、前記半導体基板の四隅のコーナー部に位置する前記第1並列pn層の端部の長さを偶数ピッチ毎に変えることにより、前記素子活性部の外周の、前記耐圧構造部の四隅のコーナー部付近の部分に曲率部を構成し、前記第2並列pn層の最内側端部が前記曲率部に対応する長さで前記半導体基板の主面に平行に前記半導体基板の内側に向かって延びていることを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかる高耐圧半導体装置は、上述した発明において、前記第1並列pn層は、前記第1導電型半導体領域内に前記第2導電型半導体領域がマトリクス状に配置された平面レイアウトを有することを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる高耐圧半導体装置は、上述した発明において、前記並列pn層内の半導体領域がチャージバランスをとるための遷移部を備えていないことを特徴とする。チャージバランスとは、並列pn層内の第1導電型半導体領域と第2導電型半導体領域の不純物量が等しくされていることである。
【0019】
上述した発明によれば、耐圧構造部内の第2並列pn層のピッチを素子活性部内の第1並列pn層のピッチの2/3とすることにより、並列pn層内の第1導電型半導体領域および第2導電型半導体領域間の相互拡散およびプロセスバラツキを従来のSJ構造より少なくすることができる。また、上述した発明によれば、並列pn層内の半導体領域がチャージバランスをとるための遷移部を備えないことで、最も高耐圧特性が得られ易い。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかる高耐圧半導体装置によれば、プロセスバラツキによる影響を低減し、耐圧構造部の第2並列pn層を構成するp型領域およびn型領域内間の相互拡散を低減させることができるという効果を奏する。また、本発明にかかる高耐圧半導体装置によれば、レイアウトが容易な超接合を備えた高耐圧半導体装置を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態1にかかるSJ−MOSFETの構成を示す平面図である。
【
図2】
図2は、
図1のABCDを頂点にもつ矩形で囲まれた部分を拡大して示す平面図である。
【
図3】
図3は、
図2の切断線E−Fにおける断面構造を示す断面図である。
【
図4】
図4は、従来の耐圧構造部の一部を拡大して示す平面図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施の形態2にかかるSJ−MOSFETの一部を拡大して示す平面図である。
【
図6】
図6は、
図5の切断線G−Hにおける断面構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる高耐圧半導体装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および−は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。以下の説明では第1導電型をn型、第2導電型をp型として説明する。
【0023】
(実施の形態1)
実施の形態1にかかる高耐圧半導体装置について、超接合(スーパージャンクション:SJ)構造を有する縦型MOSFET(以下、SJ−MOSFETとする)を例に説明する。
図1は、本発明の実施の形態1にかかるSJ−MOSFETの構成を示す平面図である。
図2は、
図1のABCDを頂点にもつ矩形で囲まれた部分を拡大して示す平面図である。
図1,2には、SJ構造の平面構造を明確に示すために、SJ構造の平面レイアウトのみを示す。
【0024】
図1,2に示すように、本発明の実施の形態1にかかるSJ−MOSFETは、素子活性部1内のドリフト層にメインSJセルを備え、耐圧構造部2内のドリフト層に微細SJセルを備えている。素子活性部1とは、オン時に電流経路となる領域である。耐圧構造部2とは、素子活性部1の周辺部の電界を緩和し耐圧を保持する領域である。耐圧構造部2は、素子活性部1を取り巻く外周に位置している。
図1には、第1並列pn層12のみの平面レイアウトを示し、
図2には、
図1のチップのコーナー部のABCDを頂点にもつ矩形(以下、矩形ABCDとする)で囲まれた部分を拡大した、チップコーナー部におけるメインSJセル12および微細SJセル12Eの両方の平面レイアウトを示す。
【0025】
メインSJセル12とは、素子活性部1内に、n型領域12aとp型領域12bとを基板主面に平行な方向に交互に繰り返し配置した第1並列pn層である。メインSJセル12は、例えば、n型領域12aとp型領域12bとが交互に繰り返し並ぶ方向に直交する方向に延びるストライプ状の平面レイアウトを有する。微細SJセル12Eとは、耐圧構造部2内に、n型領域12cとp型領域12dとを基板主面に平行な方向に交互に繰り返し配置した第2並列pn層である。微細SJセル12Eは、例えば、n型領域12c内にp型領域12dがマトリクス状に配置された平面レイアウトを有する。
【0026】
具体的には、
図2に示すように、耐圧構造部2内の第2並列pn層(微細SJセル12E)は、微細SJセル12Eを構成するn型領域12cが格子状の平面レイアウトを有する。チップコーナー部では、素子活性部1内の第1並列pn層(メインSJセル12)の耐圧構造部側の端部において、2セットのメインSJセル12毎に基板主面に平行な方向の長さを変えることにより全体として曲率部を構成している。そして、耐圧構造部2内の第2並列pn層(微細SJセル12E)の内側端部において、第1並列pn層(メインSJセル12)の端部形状に対応する3セットの微細SJセル12Eが配置されている。並列pn層における1つのn型領域とこのn型領域に隣り合う1つのp型領域を1セットとする。
【0027】
このように、実施の形態1にかかるSJ−MOSFETは、素子活性部1内のドリフト層に第1並列pn層(メインSJセル12)と、耐圧構造部2内のドリフト層に第2並列pn層(微細SJセル12E)と、を備える。次に、実施の形態1にかかるSJ−MOSFETの断面構造について説明する。
図3は、
図2の切断線E−Fにおける断面構造を示す断面図である。切断線E−Fは、メインSJセル12および微細SJセル12Eを横切る切断線である。
【0028】
図3に示すように、メインSJセル12および微細SJセル12Eは、n
+型半導体基板11の表面に設けられたn型ドリフト領域となるn型領域内に構成されている。具体的には、メインSJセル12および微細SJセル12Eは、n型ドリフト領域のn
+型半導体基板11側に対して反対側の主面から当該主面に垂直な方向に延びる長手形状を有し、かつ基板主面に平行な方向(短手方向)に繰り返し並んで配置されたn型領域(以下、nドリフト領域とする)12a,12cおよびp型領域(以下、p仕切り領域とする)12b、12dにより構成される。n
+型半導体基板11は、nドリフト領域12a,12cよりも低抵抗(高不純物濃度)である。
【0029】
n
+型半導体基板11の裏面には、裏面電極が設けられている。n
+型半導体基板11はn
+ドレイン領域として機能し、裏面電極はドレイン電極8として機能する。このようなSJ構造の場合、オフ時にnドリフト領域12aとp仕切り領域12bとのpn接合から両側のnドリフト領域12aおよびp仕切り領域12bに空乏層が速やかに拡がり、低電圧で完全に空乏化するように各領域の短手方向の幅を設定することによって、高耐圧化を達成することができる。
【0030】
素子活性部1内において、各p仕切り領域12bの、n
+型半導体基板11側に対して反対側の表面層には、pベース領域13aが設けられている。pベース領域13aの表面層には、n
+ソース領域14とp
+コンタクト領域13bとが設けられている。p
+コンタクト領域13bの不純物濃度は、pベース領域13aの不純物濃度よりも高い。n
+ソース領域14とnドリフト領域12aとに挟まれたpベース領域13aの表面上には、ゲート絶縁膜5を介して多結晶シリコン膜からなるゲート電極6が設けられている。n
+ソース領域14およびp
+コンタクト領域13bの表面には、n
+ソース領域14およびp
+コンタクト領域13bにともに接触するソース電極7がアルミニウム膜によって設けられている。ゲート電極6は表面上に設けられる層間絶縁膜9によってさらにその上を覆うソース電極7との絶縁を確保している。
【0031】
耐圧構造部2において、第2並列pn層(微細SJセル12E)のn
+型半導体基板11側に対して反対側の表面層には、第2並列pn層の表面全体を覆うように、n
-領域3が一様な不純物濃度領域として形成されている。n
-領域3の不純物濃度は、素子活性部1のnドリフト領域12aの不純物濃度より低い。このn
-領域3内には、所定の間隔でp型ガードリングが設けられている。さらに、n
-領域3の表面を覆うフィールド絶縁膜4が設けられている。符号15は、空乏層の延びすぎを抑制するストッパー電極である。
【0032】
第2並列pn層(微細SJセル12E)の隣接ピッチは、素子活性部1内の第1並列pn層(メインSJセル12)の隣接ピッチの2/3とし、遷移部を設けていない構成が本発明の特徴である。遷移部とは、素子活性部1のnドリフト領域12aとp仕切り領域12bとの不純物量の関係と、耐圧構造部2のnドリフト領域12cとp仕切り領域12dとの不純物量の関係との中間の不純物量とした領域である。
【0033】
第1並列pn層の隣接ピッチとは、nドリフト領域12aとp仕切り領域12bとの隣接ピッチである。第2並列pn層の隣接ピッチとは、nドリフト領域12cとp仕切り領域12dとの隣接ピッチである。すなわち、第1並列pn層と第2並列pn層との境界において、第1並列pn層のメインSJセル12の隣接する2つの端部と、第2並列pn層の微細SJセル12Eの隣接する3つの端部とが対向する。
【0034】
耐圧構造部2内の第2並列pn層(微細SJセル12E)の隣接ピッチを素子活性部1の第1並列pn層(メインSJセル12)の隣接ピッチの2/3とした微細パターンにすることによって、p型仕切り領域およびn型ドリフト領域内間の相互拡散およびプロセスバラツキを従来のSJ構造より少なくすることができる。従来のSJ構造とは、耐圧構造部の第2並列pn層の隣接ピッチを素子活性部の第1並列pn層の隣接ピッチの1/2とした場合である(後述する
図4参照)。さらに、オフ時に素子活性部1より耐圧構造部2の空乏層が拡がり易くなるので、より高い耐圧を得ることができる。
【0035】
この点についてさらに詳細に、
図2に示す本発明の実施の形態1にかかる耐圧構造部2の平面レイアウトと、
図4に示す従来技術の耐圧構造部の平面レイアウトとを比較して説明する。
図4は、従来の耐圧構造部の一部を拡大して示す平面図である。
図4には、従来のSJ−MOSFETが形成されたチップコーナー部の平面レイアウトである。
図4に示す領域の範囲は、
図2に示す矩形ABCDで囲まれた領域の範囲と同様である。
【0036】
図4に示すように、従来のSJ−MOSFETでは、素子活性部100内に、n型領域212aとp型領域212bとを基板主面に平行な方向に交互に繰り返し配置した第1並列pn層(メインSJセル212)が設けられている。耐圧構造部200内に、n型領域212cとp型領域212dとを基板主面に平行な方向に交互に繰り返し配置した第2並列pn層(微細SJセル212E)が設けられている。従来の耐圧構造部200内の並列pn層(微細SJセル212E)のピッチは、素子活性部100内の第1並列pn層(メインSJセル212)のピッチの1/2となっている。
【0037】
本発明の実施の形態1にかかる耐圧構造部2においては、従来の耐圧構造部200内の並列pn層212Eの場合に生じ易いプロセスバラツキによる影響を低減することができ、不純物量を制御するのも容易になる。かつ、耐圧構造部2のnドリフト領域12cとp仕切り領域12dとの相互拡散の影響も低減することができる。
【0038】
さらに、従来のSJ−MOSFETのように素子活性部のメインSJセルの隣接する端部の数を奇数として微細SJセルとの間の遷移部を必要とする場合、この遷移部でチャージバランスを取るために、より微細SJセルの配置が必要となりプロセスバラツキが大きくなるので好ましくない。これに対し、本発明にかかるSJ−MOSFETは、素子活性部1のメインSJセル12の隣接する端部の数が偶数であるので、より微細なセル配置となる遷移部の設置の必要が無くなり、平面レイアウトを簡略化させるメリットが得られる。
【0039】
また、本発明にかかるSJ−MOSFETは、矩形状のチップに形成されたSJ−MOSFETの4隅のコーナー部の第1並列pn層(メインSJセル12)と第2並列pn層(微細SJセル12E)との境界が、第1並列pn層の2つの隣接する端部と第2並列pn層の3つの隣接する端部とが対向する構成となっている。このため、遷移部を設けずにチャージバランスをとることができる。
【0040】
図2に示す高耐圧半導体装置のコーナー部の平面レイアウトは一例であり、種々変更可能である。例えば、耐圧構造部2の第2並列pn層12Eのp仕切り領域12dの平面形状は、正方形状に限らず、円状および長方形や六角形状などの多角形状であってもよい。
【0041】
(実施の形態2)
図5は、本発明の実施の形態2にかかるSJ−MOSFETの一部を拡大して示す平面図である。
図6は、
図5の切断線G−Hにおける断面構造を示す断面図である。
図5には、
図1の矩形ABCDで囲む部分の別の一例を示す。実施の形態2にかかるSJ−MOSFETが実施の形態1にかかるSJ−MOSFETと異なる点は、次の2点である。1つ目の相違点は、素子活性部1内で繰り返しパターン配置される並列pn層(メインSJセル12)が、ストライプ状の平面レイアウトではなく、nドリフト領域12a内にp仕切り領域12bがマトリクス状に配置された平面レイアウトとなっている点である。
【0042】
2つ目の相違点は、耐圧構造部2の表面側に一様な不純物濃度領域としてn
-領域3が形成されていない点である。実施の形態2にかかるSJ−MOSFETの上記2つの相違点以外の構成は、実施の形態1にかかるSJ−MOSFETと同様である。この実施の形態2にかかるSJ−MOSFETにおいても、耐圧構造部2の第2並列pn層12Eのピッチが素子活性部1内の並列pn層12のピッチより小さく(おおむね2/3)なっているため、実施の形態1と同様に、オフ時に素子活性部1より耐圧構造部2の空乏層が拡がり易くなり、より高い耐圧を得ることができるメリットが得られる。
【0043】
以上、説明したように、本発明によれば、耐圧構造部内の第2並列pn層のピッチを素子活性部内の第1並列pn層のピッチの2/3とすることにより、並列pn層内のp型仕切り領域およびn型ドリフト領域内間の相互拡散およびプロセスバラツキを従来のSJ構造より少なくすることができる。また、上述した発明によれば、並列pn層内の半導体領域がチャージバランスをとるための遷移部を備えないことで、最も高耐圧特性が得られ易い。
【0044】
以上において本発明では、SJ−MOSFETを例に説明しているが、上述した実施の形態に限らず、ドリフト層中にSJ構造が形成されたさまざまな装置に適用することが可能である。また、各実施の形態では第1導電型をn型とし、第2導電型をp型としたが、本発明は第1導電型をp型とし、第2導電型をn型としても同様に成り立つ。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上のように、本発明にかかる高耐圧半導体装置は、MOS(金属−酸化膜−半導体からなる絶縁ゲート)型電界効果トランジスタ等、半導体基板の両主面間に主電流が流れる縦型の高耐圧・大電流のパワー半導体装置に有用である。
【符号の説明】
【0046】
1 素子活性部
2 耐圧構造部
3 n
-領域(低濃度第1導電型半導体領域)
4 フィールド絶縁膜
5 ゲート絶縁膜
6 ゲート電極
7 ソース電極
8 ドレイン電極
9 層間絶縁膜
11 n
+型半導体基板(n
+ドレイン領域)
12 第1並列pn層(メインSJセル)
12a メインSJセルのnドリフト領域(第1導電型半導体領域)
12b メインSJセルのp仕切り領域(第2導電型半導体領域)
12E 第2並列pn層(微細SJセル)
12c 微細SJセルのnドリフト領域(第1導電型半導体領域)
12d 微細SJセルのp仕切り領域(第2導電型半導体領域)
13a pベース領域
13b p
+コンタクト領域
14 n
+ソース領域
15 ストッパー電極