(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5692417
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】流路切替バルブ
(51)【国際特許分類】
G01N 30/26 20060101AFI20150312BHJP
F16K 27/04 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
G01N30/26 M
F16K27/04
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-551686(P2013-551686)
(86)(22)【出願日】2012年12月21日
(86)【国際出願番号】JP2012083349
(87)【国際公開番号】WO2013099823
(87)【国際公開日】20130704
【審査請求日】2013年12月24日
(31)【優先権主張番号】特願2011-283271(P2011-283271)
(32)【優先日】2011年12月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100085464
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 繁雄
(72)【発明者】
【氏名】保永 研壱
(72)【発明者】
【氏名】前田 愛明
【審査官】
東松 修太郎
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2011/0303304(US,A1)
【文献】
国際公開第2009/078450(WO,A1)
【文献】
特開2006−292392(JP,A)
【文献】
特開平8−210526(JP,A)
【文献】
特開平1−307575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00−30/96
F16K 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングの下部を構成し、外周表面上部にネジが周方向に設けられているベースと、
前記ハウジングの上部を構成し、上面に流路を接続するための複数のポートを備え、前記ポートが前記ハウジング内の上側平面となる面に通じているステータと、
前記ハウジング内に収容され、前記ハウジング内の前記上側平面に接する平面を有し、その平面に前記ステータの複数のポート間を導通させるための流路となる切替え溝が設けられているロータと、
前記ロータを保持して前記ロータを回転させるためのロータ回転機構と、
前記ベースと前記ロータの間に圧縮状態で挿入され、弾性力により前記ロータを前記ハウジング内の前記上側平面側へ付勢する弾性部材と、
前記ベースの外周表面に設けられたネジと螺合するネジが内周面下部に設けられたリング状の部材であって、前記ベースの外周表面に装着されて前記ベースと前記ステータとを連結するとともに、回転によって前記ベースに対して前記ステータを相対的に上下動させるステータ位置調整部材と、を備えた流路切替バルブ。
【請求項2】
前記ステータの外周表面下部には前記ベースの外周表面上部に設けられたネジとは逆向きのネジが設けられており、
前記ステータ位置調整部材は、内周面上部に前記ステータの外周表面下部に設けられたネジと螺合するネジが設けられており、前記ベース及び前記ステータの外周表面に装着され、回転によって前記ベースと前記ステータを互いに離間させ又は接近させるものである請求項1に記載の流路切替バルブ。
【請求項3】
前記ステータ位置調整部材は前記ステータの上面の一部を上方から押さえるステータ押さえを備えており、回転することによって前記ベースに対して相対的に前記ステータ押さえを上下動させることで、前記ロータによって上方向へ押されている前記ステータの高さを前記ベースに対して相対的に上下動させるものである請求項1に記載の流路切替バルブ。
【請求項4】
前記ベースの一部と前記ステータの一部は互いに前記ステータ位置調整部材の回転方向に係合しており、前記ベースと前記ステータの互いの相対的な回転が防止されている請求項1から3のいずれか一項に記載の流路切替バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフなどの分析装置に使用される流路切替バルブに関し、特に、流路を接続するためのポートを複数有するステータ及びステータに密着する面をもちその面にステータのポート間を導通させるための切替え溝を有するロータを備え、ロータを回転させることによって各ポート間の接続を切り替えるロータリー式の切替バルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば高速液体クロマトグラフにおいては、移動相の高圧送液条件の下で接続する流路を切り替える必要がある。このような高圧力条件下で使用される流路切替バルブとしては、流路を接続するためのポートを複数有するステータ及びステータに密着する面をもち、その面にステータの2つのポート間を導通させるための切替え溝を有するロータを備えたロータリー式の切替バルブが挙げられる(特許文献1参照。)。ロータリー式切替バルブは、ステータとロータの互いの平面を密着させながらロータを回転させることで、導通させるポートの切替えを行なって、接続する流路を切り替える。
【0003】
ロータリー式切替バルブの構造の一例を
図4に示す。
この切替バルブは、ハウジングの下部を構成する円筒形状のベース42とハウジングの上部を構成するステータ40とが複数のネジ44により固定されている。ステータ40の上面には流路を接続するためのポート46が複数設けられている。各ポート46はハウジング内の上側平面となるステータ40の下面41に通じている。ベース42の内部にロータ10が収容されている。ロータ10のステータ40側の平面にステータ40の複数のポート46の間を導通させるための切替え溝14が設けられている。ロータ10のステータ40側の平面はステータ40の下面41と密着している。
【0004】
ロータ10はロータ保持部8に保持されており、ロータ保持部8はシャフト12の先端に設けられている。シャフト12はベース42の中心部の穴を貫通して外部に引き出されている。ベース42の外部にはシャフト12を回転させるための回転機構(図示は省略)が設けられている。シャフト12の回転によりロータ保持部8が回転し、それに伴なってロータ10が回転する。ロータ10が回転することで切替え溝14の位置が変わり、接続されるステータ40のポート46が切り替えられる。
【0005】
ベース42内の下部にシャフト12のブレを抑制するためのリング状のベアリング20が配置されている。ロータ保持部8の外周面とベース42の内周面との間にロータ保持部8の回転のブレを抑制するベアリング22が挿入されている。ロータ保持部8とベアリング20の間にバネ18が圧縮された状態で挿入されている。ロータ保持部8はバネ18の弾性力によってステータ40側へ付勢され、それによってロータ10がステータ40の下面に押し付けられている。これにより、ロータ10とステータ40との間の液密性を高め、ロータ10の切替え溝14からの液漏れを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−307575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ロータリー式切替バルブの材質として、一般的に、ロータには樹脂などの柔らかい素材が使用され、ステータにはステンレスなどロータよりも硬い素材が使用されている。
図4の例のように、ロータはバネの弾性力によってステータ側へ押し付けられた状態で回転させられるため、流路切替バルブを長期間使用していると、ステータに接触しているロータの平面が摩耗する。その結果、ロータのステータとの接触平面の平坦性が損なわれてロータを回転させるためのトルクが増大したり、ロータの切替え溝からの液漏れが発生したり、ロータの摩耗部分に液が残留してクロスコンタミネーションが発生したりするなどの問題が発生する。また、ロータが摩耗することでロータの削り屑が発生し、その削り屑が切替え溝を流れる液とともに流れ、切替バルブの後段に接続されている分析カラムに導入されて分析カラムの劣化の原因となる。
【0008】
ロータの摩耗を防止するために、ロータの材質を硬い素材であるセラミックとしたものもある。その場合にはロータの摩耗による削り屑は発生しないが、ステータとの間のシール性を向上させるためにステータとロータの互いの接触平面の表面粗さを細かくし、平坦度を高精度に仕上げる必要がある。しかし、そのような平面と平面を強い力で押し付けると、所謂リンキングと呼ばれる鏡面接着現象が生じ、ロータの回転動作の滑らかさを損なうという問題がある。
【0009】
したがって、ロータの材質は樹脂であることが一般的である。樹脂からなるロータとステータとの間の液密性は、ステータに対するロータの押付け力を強くすることで高めることができるが、ロータをステータに強い力で押し付けているとロータが回転する際のロータの摩耗が激しくなり、切替バルブの寿命が短くなるという問題があった。切替バルブが高い送液圧力の条件下で使用される場合には、ロータとステータとの間に高い液密性が求められるため、ステータに対してロータが強く押し付けられる必要がある。一方で、送液圧力が高くない場合など、用途によってはロータとステータとの間に高い液密性が要求されない場合には、ステータに対してロータをそれほど強い力で押し付ける必要のない場合もある。
【0010】
しかし、従来のロータリー式切替バルブは、ステータに対するロータの押付け力を変更できるようになっていない場合が多い。また、ベースよりも下方に設けられているスクリューの締め込み具合の調整によって、ステータに対するロータの押付け力を可変にすることもできるが、切替バルブが分析装置に設置された状態ではスクリューの締め込み具合の調整を行なうことができず、ステータに対するロータの押付け力の調整を行なうためには切替バルブを分析装置から取り外すなどの煩雑な作業を行なう必要がある。
【0011】
そこで、本発明は、ステータに対するロータの押付け力の調整を、切替バルブを分析装置から取り外すことなく容易に行なうことができるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明にかかる流路切替バルブは、ハウジングの下部を構成し、外周表面上部にネジが周方向に設けられているベースと、ハウジングの上部を構成し、上面に流路を接続するための複数のポートを備え、ポートがハウジング内の上側平面となる面に通じており、ベースに対して上側平面と同じ平面内での回転がなされないように固定されているステータと、ハウジング内に収容され、ハウジング内の上側平面に接する平面を有し、その平面にステータの複数のポート間を導通させるための流路となる切替え溝が設けられているロータと、ロータを保持してロータを回転させるためのロータ回転機構と、ベースとロータの間に圧縮状態で挿入され、弾性力によりロータをハウジング内の上側平面側へ付勢する弾性部材と、ベースの外周表面に設けられたネジと螺合するネジが内周面下部に設けられたリング状の部材であって、ベースの外周表面に装着されてベースとステータとを連結するとともに、回転によってベースに対してステータを相対的に上下動させるステータ位置調整部材と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の流路切替バルブでは、ハウジングの下部を構成するベースの外周表面上部にネジが周方向に設けられており、ベースの外周表面に設けられたネジと螺合するネジが内周面下部に設けられたリング状の部材であって、上部でステータを回転自由に保持しながらベースの外周表面に装着され、回転によってベースに対してステータを相対的に上下動させるステータ位置調整部材を備えているので、ベースの外周表面に装着されたステータ位置調整部材を回転させるだけでステータの高さを変位させることができる。ステータの高さの変位に伴なってロータの高さも変位するため、ステータ位置調整部材の回転によってベースとロータの間に挿入されている弾性部材のストロークが変更され、ハウジング内の上側平面に対するロータの押付け力を変更することができる。したがって、ハウジングの外周面のステータ位置調整部材を回転させるだけで、ロータをステータに押し付ける力を容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】流路切替バルブの一実施例の構造を示す断面図である。
【
図2】流路切替バルブの他の実施例の構造を示す断面図である。
【
図3】流路切替バルブのさらに他の実施例の構造を示す断面図である。
【
図4】従来の流路切替バルブの構造の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好ましい実施形態としては、ステータの外周表面下部にはベースの外周表面上部に設けられたネジとは逆向きのネジが設けられており、ステータ位置調整部材は、内周面上部にステータの外周表面下部に設けられたネジと螺合するネジが設けられており、ベース及びステータの外周表面に装着され、回転によってベースとステータを互いに離間させ又は接近させるようになっているものが挙げられる。
【0016】
また、別の好ましい実施形態として、ステータ位置調整部材は、ステータの上面の一部を上方から押さえるステータ押さえを備えており、回転することによってベースに対して相対的にステータ押さえを上下動させることで、ロータによって上方向へ押されているステータの高さをベースに対して相対的に上下動させるものである形態が挙げられる。この実施形態では、ステータ位置調整部材の内周面に2種類のネジを設ける必要がなく、ステータの外周面にもネジを設ける必要がないので、構成が簡単になる。また、ステータ位置調整部材をハウジングに装着する際のネジの螺合作業が簡単になる。
【0017】
なお、ベースの一部とステータの一部は互いにステータ位置調整部材の回転方向に係合しており、ベースとステータの互いの相対的な回転が防止されていることが好ましい。そうすれば、ステータ位置調整部材を回す際にステータが回転しないようにステータを押さえる必要がなく、ステータに対するロータの押付け力の調整作業を容易に行なうことができる。
【0018】
以下、図面を参照しながら流路切替バルブの実施例について説明する。
図1はロータリー式切替バルブの一実施例の構造を示す断面図である。
この流路切替バルブのハウジングは上部と下部に分離している。ハウジングの下部はベース2によって構成されている。ベース2は液体クロマトグラフなどの分析装置に固定されるものであり、ハウジングの底部及び側壁下部を構成している。ハウジングの上部はステータ4により構成されている。ステータ4はハウジングの上蓋部を構成するとともに側壁上部を構成する外壁部材6を備えている。ベース2とステータ4は後述するステータ位置調整部材24により連結されている。
【0019】
ステータ4の上面に流路を接続するための複数のポート16が設けられている。ポート16はハウジングの内壁上面に相当するステータ4の下面5にまで引き出されている。ステータ4の下面5は平面である。
ベース2の中心部をシャフト12が貫通している。ハウジング内部のシャフト12の先端にロータ保持部8が設けられており、ロータ保持部8にロータ10が保持されている。ステータ4の下面5に対向するロータ10の上面には、下面5に通じるポート16間を導通させるための切替え溝14が設けられている。
【0020】
ベース2の外部にはシャフト12を回転させるための回転機構(図示は省略)が設けられている。シャフト12の回転によりロータ保持部8が回転し、それに伴なってロータ10が回転する。ロータ10が回転することで切替え溝14の位置が変わり、導通するポート16の組合せが切り替えられる。
【0021】
ベース2内の下部にシャフト12のブレを抑制するためのリング状のベアリング20が配置されている。ロータ保持部8の外周面と外壁部材6の内周面との間にロータ保持部8の回転のブレを抑制するベアリング22が挿入されている。ロータ保持部8とベアリング20の間に、弾性部材としてのバネ18が圧縮された状態で挿入されている。バネ18としてはコイルバネや皿バネを用いることができる。ロータ保持部8はバネ18の弾性力によってステータ4側へ付勢され、それによってロータ10がステータ4の下面5に押し付けられている。これにより、ロータ10の上面とステータ4の下面5との間の液密性が高められ、ロータ10の切替え溝14からの液漏れが防止されている。
【0022】
既述のように、ベース2とステータ4はステータ位置調整部材24により連結されている。ステータ位置調整部材24はベース2及びステータ4の外形と同等の内径をもつリング状の部材であり、その内周面の上部と下部にそれぞれ互いに逆向きのネジが周方向に沿って設けられている。ベース2の外周面上部26とステータ4の外壁部材6の外周面下部28にそれぞれステータ位置調整部材24の内周面のネジと螺合するネジが周方向に設けられている。
【0023】
ステータ位置調整部材24を回転させると、ベース2とステータ4は互いに逆向きに設けられたネジの作用により、互いに離間する方向又は接近する方向へ移動する。すなわち、ステータ位置調整部材24を一方向へ回転させるとステータ4がベース2から離れる方向へ移動し、それとは反対の方向へステータ位置調整部材24を回転させるとステータ4がベース2へ近付く方向へ移動する。
【0024】
ベース2とステータ4の対向面のそれぞれに互いに係合する嵌め合い部(凹凸形状)を形成し、ベース2に対してステータ4の回転中心のズレが生じないようになっている。また、ベース2とステータ4の対向面には、互いの相対的な回転を防止するための機構としての平行ピン29aとその平行ピン29aが挿入される穴29bが設けられており、互いに上下には移動可能であるが、回転しないようになっている。これにより、ステータ4はステータ位置調整部材24の回転に伴なって回転せずに上下動のみを行なう。なお、平行ピン29a及び穴29bはいくつ設けられていてもよい。
【0025】
ベース2に対するステータ4の相対的な位置が変化すると、ロータ保持部8とベアリング20との間に挿入されているバネ18のストロークが変化し、ステータ4の下面5に対するロータ10の押付け力が変化する。したがって、ステータ位置調整部材24を回転させることによって、ステータ4の下面5に対するロータ10の押付け力を容易に変更することができる。
【0026】
ベース2又はステータ4に対してステータ位置調整部材24の回転位置を示すマークを付けておいてもよい。そうすれば、ステータ4に対するロータ10の押付け力の調整作業が容易になる。
【0027】
なお、ステータ位置調整部材24の位置がハウジングの高い位置にあるほど、流量切替バルブを装置に取り付けた状態でロータ10へのバネ18の付勢力を変更する作業が容易になる。
図2は
図1の実施例よりも高い位置にステータ位置調整部材24を配置した実施例を示す断面図である。
【0028】
図2の実施例では、ベース2aがハウジングの底部及び側壁部を構成している。上面にポート16aを備えたステータ4aがハウジングの上蓋部を構成している。ベース2aとステータ4aは、
図1の実施例と同じステータ位置調整部材24により連結されている。ベース2aの側壁部外周面の上部30とステータ4aの外周面32にはステータ位置調整部材24の内周面に設けられたネジと螺合するネジが周方向に設けられている。
図1の実施例と同様に、ベース2aとステータ4aの対向面のそれぞれに互いに係合する嵌め合い部(凹凸形状)を形成し、ベース2aに対してステータ4aの回転中心のズレが生じないようになっている。また、ベース2aとステータ4aの対向面には、平行ピン33aとその平行ピン33aが挿入される穴33bが設けられており、互いに上下には移動可能であるが、回転しないようになっている。これにより、ステータ4はステータ位置調整部材24の回転に伴なって回転せずに上下動のみを行なう。
【0029】
ステータ位置調整部材24を回転させることによりステータ4aがベース2aから離間する方向又はベース2aに接近する方向へ移動する。ステータ位置調整部材24がハウジングの外周の最上部に配置されているので、この流路切替バルブを分析装置に設置した状態のままでも、ロータ保持部8とベアリング20との間に挿入されているバネ18のストロークを変化させてステータ4aの下面5aに対するロータ10の押付け力を変更することが容易にできる。
【0030】
ベース2a又はステータ4aに対してステータ位置調整部材24の回転位置を示すマークを付けておいてもよい。そうすれば、ステータ4aに対するロータ10の押付け力の調整作業が容易になる。
【0031】
図3は流路切替バルブの他の実施例を示す断面図である。
この実施例の流路切替バルブでは、ベース2bがハウジングの底部及び側壁部を構成し、上面にポート16bを備えたステータ4bがハウジングの上蓋部を構成している。ベース2bとステータ4bは、
図1及び
図2の実施例のステータ位置調整部材24とは異なるステータ位置調整部材34により連結されている。ステータ位置調整部材34は断面がL字型の部材であり、上端部にステータ4bの上面周縁部を押さえるためのステータ押さえ35を備えている。ステータ位置調整部材34の内周面の下部にネジが周方向に設けられており、ベース2bの外周面上部36にステータ位置調整部材34の内周面のネジと螺合するネジが周方向に設けられている。
【0032】
ステータ4bの外周面にネジは設けられておらず、ステータ4bはステータ位置調整部材34のステータ押さえ35により上面周縁部が押さえられているだけである。ステータ位置調整部材34は、回転することによってベース2bの周面に沿って上下動する。ステータ4bの下面5bにはバネ18の弾性力によってロータ10が押し付けられており、これによってステータ4bが常に上方向に押されている。したがって、ステータ位置調整部材34が回転によって上下動を行なうと、それに伴なってステータ4bが上下動を行なう。
【0033】
なお、この実施例においても、ベース2bとステータ4bの対向面のそれぞれに互いに係合する嵌め合い部(凹凸形状)を形成し、ベース2bに対してステータ4bの回転中心のズレが生じないようになっている。また、ベース2bとステータ4bの対向面には、平行ピン37aとその平行ピンが挿入される穴37bが設けられており、互いに上下には移動可能であるが、回転しないようになっている。これにより、ステータ4はステータ位置調整部材24の回転に伴なって回転せずに上下動のみを行なう。
【0034】
上記の実施例では、ステータ位置調整部材34を回転させることにより、ステータ4bに対するロータ10の押付け力を連続的に変化させることができる。
ベース2b又はステータ4bに対してステータ位置調整部材34の回転位置を示すマークを付けておいてもよい。そうすれば、ステータ4bに対するロータ10の押付け力の調整作業が容易になる。
また、ステータは単一の部品ではなく、複数の部品構成からなるものであってもよい。
【符号の説明】
【0035】
2,2a,2b ベース
4,4a,4b ステータ
6 外壁部材
8 ロータ保持部
10 ロータ
12 シャフト
14 切替え溝
16,16a,16b ポート
18 バネ
20,22 ベアリング
24,34 ステータ位置調整部材
29a,33a,37a 平行ピン