(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
オキシラン環を有する化合物が、フェノールノボラック骨格またはクレゾールノボラック骨格を含むエポキシ化合物であることを特徴とする請求項3に記載の熱硬化性樹脂組成物。
オキシラン環を有する化合物が、カルボキシル基含有ポリエステル100質量部に対して40質量部以上90質量部以下配合されていることを特徴とする請求項3または4に記載の熱硬化性樹脂組成物。
熱硬化性樹脂組成物の全固形成分中に含まれる一般式[I]の繰り返し構造の含有率が40質量%以上71質量%以下であることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
請求項3〜6のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物、請求項7に記載の被膜形成材料、又は請求項8に記載のソルダーレジスト剤を熱硬化させて得られることを特徴とする硬化被膜。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
本発明のカルボキシル基含有ポリエステルは、以下の(a)〜(d)の特徴を有する。
(a)一般式[I]の繰り返し構造を有し、R
1及びR
2がそれぞれ以下の(i)〜(ii)である、
(i)R
1は、テトラカルボン酸二無水物から酸無水物基を除いた有機基であり、置換基を含んでいてもよく、炭素数
6〜30の芳香族
炭化水素基、
炭素数3〜30の脂環族
炭化水素基、
炭素数1〜30の脂肪族基、
及び/または
炭素数1〜30の複素環
からなる基であ
り、ただし、前記炭素数は置換基の炭素数を含む、
(ii)R
2は、ポリカーボネートジオールから水酸基を除いた有機基であり、ただし該ポリカーボネートジオールが複数種のアルキレン基
からなり、
該アルキレン基が鎖式脂肪族炭化水素であり、該ポリカーボネートジオールの数平均分子量が700〜2300である、
(b)数平均分子量が10000超50000以下である、
(c)樹脂酸価が1200当量/10
6g以上である、
(d)カルボキシル基含有ポリエステル中の一般式[I]の繰り返し構造の含有率が68質量%以上である。
【0017】
以下に、本発明のカルボキシル基含有ポリエステルを詳細に説明する。
【0018】
<カルボキシル基含有ポリエステル(A)>
本発明のカルボキシル基含有ポリエステル(A)は、テトラカルボン酸二無水物(C)の酸無水物基とポリカーボネートジオール(D)の水酸基をエステル化することにより合成される。
また、(A)成分とオキシラン環を含有する化合物(B)のような熱硬化剤と組み合わせて組成物にすることで、低温で高度な架橋構造を形成することができ、優れた熱硬化性を示す。また、(A)成分と(B)成分を組み合わせた熱硬化性樹脂組成物から得られる硬化被膜は、可とう性、銅箔密着性、長期絶縁信頼性、及び耐めっき性が要求される電子材料周辺等に好適に用いることができる。
【0019】
<テトラカルボン酸二無水物(C)>
テトラカルボン酸二無水物(C)としては、特に限定されないが、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシクロヘキサン二無水物、p−フェニルビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(エキソ−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物)スルホン、ビシクロ−(2,2,2)−オクト(7)−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン酸二無水物、4,4’ −ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド酸二無水物、1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、1,3−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、エチレングリコールビス(トリメリット酸無水物)(「エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート」または「TMEG」とも称する)などが挙げられる。
【0020】
好ましくは、(C)成分は、エチレングリコールビス(トリメリット酸無水物)(TMEG)、3,3’,4,4’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)である。
【0021】
これらの(C)成分は、単独で使用してもよく、または2種以上を混合して使用してもよい。
【0022】
<ポリカーボネートジオール(D)>
ポリカーボネートジオール(D)は、数平均分子量が700〜2300である。数平均分子量は、好ましくは800〜2200、更に好ましくは900〜2100である。(D)成分の数平均分子量が上記範囲未満の場合、カルボキシル基含有ポリエステルにおけるポリカーボネート由来のアルキレン鎖の質量比率が減少し、硬化被膜の可とう性が低下し、上記範囲を超えると、カルボキシル基含有ポリエステルの酸価が減少し、硬化被膜の架橋密度が低下するため好ましくない。
ポリカーボネートジオール(D)の数平均分子量の測定は、(D)成分を樹脂濃度が0.5質量%程度となるようにテトラヒドロフランで溶解および/または希釈し、孔径0.5μmのポリ四フッ化エチレン製メンブレンフィルターで濾過したものを測定用試料として、テトラヒドロフランを移動相とし、示差屈折計を検出器とするゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により行えばよい。流速は1mL/分、カラム温度は30℃とする。カラムには昭和電工製KF−802、804L、806Lを用いる。分子量標準には単分散ポリスチレンを使用すればよい。
【0023】
また、前記(D)成分は、原料のグリコール成分として少なくとも2種類のジオール(以下「原料ジオール」ともいう。)を共重合して得られる、複数種のアルキレン基を有するポリカーボネートジオールであることが望ましい。例えば、グリコール成分が、3−メチル−1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールとからなる共重合ポリカーボネートジオール、または1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールとからなる共重合ポリカーボネートジオール、または2−メチル−1,8−オクタンジオールと1,9−ノナンジオールとからなる共重合ポリカーボネートジオール等が挙げられる。1種類の原料ジオールのみをポリカーボネート化して得られる、1種類のアルキレン基のみを有するポリカーボネートジオールは、(A)成分の結晶性を高め、硬化被膜の可とう性が低下する。
3−メチル−1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールとからなる共重合ポリカーボネートジオールにおける3−メチル−1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールのモル比率(d1/d2)は、d1/d2=25/75〜99/1がよく、好ましくは、d1/d2=30/70〜95/5、より好ましくは、d1/d2=35/65〜90/10の比率がよい。
1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールとからなる共重合ポリカーボネートジオール1,5−ペンタンジオールにおける1,6−ヘキサンジオールのモル比率(d3/d4は、d3/d4=25/75〜99/1がよく、好ましくは、d3/d4=30/70〜95/5、より好ましくは、d3/d4=35/65〜90/10の比率がよい。
2−メチル−1,8−オクタンジオールと1,9−ノナンジオールとからなる共重合ポリカーボネートジオールにおける2−メチル−1,8−オクタンジオールと1,9−ノナンジオールのモル比率(d5/d6)は、d5/d6=25/75〜 99/1がよく、好ましくは、d5/d6=30/70〜95/5、より好ましくは、d5/d6=35/65〜90/10の比率がよい。
なお、ここでいう「グリコール成分」とは、炭酸エステルまたはホスゲンとの反応によりポリカーボネートジオールを合成するための原料であり、鎖式脂肪族炭化水
素の2つの炭素原子に1つずつヒドロキシ基が置換している構造を持つ化合物を指す。
【0024】
この(D)成分は、その骨格中に炭素数5〜9のアルキレン基(−C
nH
2n−)を有していることが好ましい。このような構造のポリカーボネートジオールは、その原料として、少なくとも炭素数が5〜9のジオールを用いることによって形成できる。原料ジオールの炭素数が5未満の場合、(D)成分におけるアルキレン基の質量比率が減少し、硬化被膜の可とう性が低下する。一方で、炭素数が9を超えると、原料ジオールの反応性が低下し、原料ジオールをポリカーボネートジオール化することが難しくなる。
【0025】
(D)成分の製造方法としては、原料ジオールと炭酸エステル類とのエステル交換、原料ジオールとホスゲンとの脱塩化水素反応を挙げることができる。
【0026】
本発明のカルボキシル基含有ポリエステルの溶媒への溶解性を考慮すると、前記(D)成分としては、その骨格中に1,5−ペンタン骨格、1,6−ヘキサン骨格、1,8−オクタン骨格、1,9−ノナン骨格で表されるアルキレン基を有する共重合ポリカーボネートジオールが好ましい。
【0027】
原料ジオールの中には、炭素数が5〜9のジオールの他にも、本発明の目的を損なわない範囲で、炭素数が4以下のジオール、炭素数が10以上のジオール、ポリエーテルジオール、両末端水酸基化ポリブタジエン、ポリエステルジオールなどが含まれていてもよい。
【0028】
エステル交換により(D)成分を製造する場合、原料である炭酸エステルとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのジアルキルカーボネート;ジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネート;およびエチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのアルキレンカーボネートが挙げられる。
【0029】
これらの原料ジオールと炭酸エステルとを、100〜230℃でエステル交換反応することによってポリカーボネートジオールが製造される。このエステル交換反応は、反応の進行状況等に応じて常圧または減圧の任意の圧力下で行うことができる。
【0030】
また、前記のエステル交換反応では、触媒は必ずしも必要ではないが、反応を速めたい場合には、触媒を使用することが望ましい。この触媒としては、通常のポリカーボネートの製造において使用されるエステル交換触媒を用いることができ、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン等のチタン化合物;ジ−n−ブチルスズラウレート、ジ−n−ブチルスズオキサイド、ジブチルスズジアセテート等のスズ化合物;酢酸マタン化合物との組み合わせなどを例示することができる。これらの触媒は、生成物に対して1〜300ppmの範囲内となるような量で用いることが好ましい。
【0031】
前記(D)成分は、その骨格中に複数種のアルキレン基を有するポリカーボネートジオール(共重合ポリカーボネートジオール)であることが好ましく、市販品としてたとえば、クラレポリオールC−1015N((株)クラレ製カーボネートジオール:2−メチル−1,8−オクタンジオール/1,9−ノナンジオール=85/15、数平均分子量約1,000)、クラレポリオールC−1065N((株)クラレ製カーボネートジオール:2−メチル−1,8−オクタンジオール/1,9−ノナンジオール=35/65、数平均分子量約1,000)、クラレポリオールC−2015N((株)クラレ製カーボネートジオール:2−メチル−1,8−オクタンジオール/1,9−ノナンジオール=85/15、数平均分子量約2,000)、クラレポリオールC2065N((株)クラレ製カーボネートジオール:2−メチル−1,8−オクタンジオール/1,9−ノナンジオール=35/65、数平均分子量約2,000)、クラレポリオールC−1050((株)クラレ製カーボネートジオール:3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール=50/50、数平均分子量約1,000)、クラレポリオールC−1090((株)クラレ製カーボネートジオール:3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール=90/10、数平均分子量約1,000)、クラレポリオールC−2050((株)クラレ製カーボネートジオール:3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール=50/50、数平均分子量約2,000)、クラレポリオールC−2090((株)クラレ製カーボネートジオール:3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール=90/10、数平均分子量約2,000)、DURANOL−T5651(旭化成ケミカルズ(株)製ポリカーボネートジオール:1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール=50/50、数平均分子量約1,000)、DURANOL−T5652(旭化成ケミカルズ(株)製ポリカーボネートジオール:1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール=50/50、数平均分子量約2,000)などを挙げることができる。
【0032】
また、本発明のカルボキシル基含有ポリエステルの溶媒溶解性や本発明の硬化物の耐熱性を改良する目的で、前記(D)成分以外に炭素数4以下のジオールを原料とするポリカーボネートジオール、ポリブタジエンジオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、低分子量ジオールを、前記ポリカーボネートジオール100質量部に対して例えば5〜80質量部の量で併用してもよい。
【0033】
また、上記エステル交換反応においては、片末端にのみ水酸基を有するポリカーボネートが副生することもある。本発明においては、このような副生物をごく少量、たとえば5質量%以下の量で含有するポリカーボネートジオールを使用してもよい。5質量%を超える場合、カルボキシル基含有ポリエステルを高分子量化することが難しくなる。
【0034】
カルボキシル基含有ポリエステル(A)成分の原料の仕込みモル比は、目的とする(A)成分の分子量および酸価に応じて調節する。
【0035】
<カルボキシル基含有ポリエステル(A)の製造方法>
以下に、(A)成分の製造方法を説明する。
(A)成分は、従来公知の方法によって得ることができる。例えば、撹拌器及び温度計を装備した反応缶中で溶剤の存在下、前記(C)成分と(D)成分を70℃以上150℃以下で反応させることが好ましい。より好ましくは、90℃以上130℃以下で反応させるのがよい。70℃以上150℃以下であれば、反応時間も4〜6時間程度と短く、モノマー成分の分解も生じにくく、三次元化反応によるゲル化も発生しにくい。反応温度は多段階で行ってもよい。反応時間は、バッチの規模、採用される反応条件、特に反応濃度により適宜選択することができる。
【0036】
<有機溶剤>
(A)成分を製造する際に使用する有機溶剤としては、アミン等の塩基性化合物を含まない溶剤が好ましい。このような溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ニトロベンゼン、シクロヘキサン、イソホロン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、メトキシプロピオン酸メチル、メトキシプロピオン酸エチル、エトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、クロロホルム及び塩化メチレン等を挙げることができる。
【0037】
好ましくは、溶剤は、溶解性の良いトリエチレングリコールジメチルエーテル、γ−ブチロラクトンである。特に好ましいものは、γ−ブチロラクトンである。
【0038】
製造時には良好な溶解性を示す有機溶剤を使用することが好ましく、具体的には単独溶剤、もしくは2種以上を混合した溶剤のいずれかに対して、製造された樹脂が10質量%以上溶解できることが好ましい。より好ましくは、15質量%以上、さらに好ましくは、20質量%以上である。尚、溶解したか否かの判定は、樹脂が固形状である場合には、200mlのビーカーに80メッシュを通過する樹脂粉末を規定重量添加し、25℃で24時間静かに攪拌した後の溶液を25℃で24時間静置し、目視にて、ゲル化、不均一化、白濁、析出のいずれかもなかったものを溶解していると判定する。
【0039】
<触媒>
(A)成分を製造する際に用いる反応触媒としては、アミン、四級アンモニウム塩、イミダゾール、アミド、ピリジン、ホスフィン、有機金属塩等が挙げられる。より好ましくは、アミン、ピリジン、ホスフィンである。より具体的には、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン等のアミン;4−ジメチルアミノピリジン等のピリジン;トリフェニルホスフィン等のホスフィン;が挙げられる。特に好ましくは、4−ジメチルアミノピリジンである。
【0040】
本発明のカルボキシル基含有ポリエステル(A)には、以下に示す特徴がある。
(1)ゲル化すること無く十分に高分子量化できる、
(2)主鎖に多数のカルボキシル基を有している、
この高分子量の(A)成分に、オキシラン環を含有する化合物(B)を配合した熱硬化性樹脂組成物は、良好な熱硬化性を示す。かかる熱硬化性樹脂組成物から得られる硬化被膜は、強靭かつ高い凝集力を有することから、フィルムや金属箔等の基材に対して良好な密着性を示す。
【0041】
(C)成分の酸無水物基と(D)成分の水酸基を反応させることにより、酸無水物基の開環反応が進行する。一方でエステル結合を形成し、もう一方で2個のカルボキシル基(残存カルボキシル基)を(A)成分の主鎖中に形成することができる。このカルボキシル基が存在することにより、(B)成分を熱硬化剤として適量配合して使用することで、優れた熱硬化性を発現することができる(
図1参照)。
なお、
図1において、R
1は、テトラカルボン酸二無水物から酸無水物基を除いた有機基であり、置換基を含んでいてもよく、炭素数
6〜30の芳香族
炭化水素基、
炭素数3〜30の脂環族
炭化水素基、
炭素数1〜30の脂肪族基、
及び/または
炭素数1〜30の複素環
からなる基であ
り、ただし、前記炭素数は置換基の炭素数を含む。R
2は、ポリカーボネートジオールから水酸基を除いた有機基であり、ただし該ポリカーボネートジオールが複数種のアルキレン基
からなり、
該アルキレン基が鎖式脂肪族炭化水素であり、該ポリカーボネートジオールの数平均分子量が700〜2300である。pは、(A)成分の数平均分子量が10000超50000以下になる整数であればよい。
【0042】
(C)成分と(D)成分の配合量は、(A)成分の分子量を制御する上で重要である。
【0043】
(C)成分と、(D)成分との仕込み比率をモル比率(C/D)で表すと、C/D=60/100〜99/100または140/100〜101/100の比率がよく、好ましくは、C/D=75/100〜99/100または125/100〜101/100、より好ましくは、C/D=85/100〜99/100または115/100〜101/100の比率がよい。
【0044】
モル比率が、C/D=60/100〜99/100または140/100〜101/100であれば、特に耐熱性と溶媒溶解性のバランスのとれた高分子量の(A)成分を得ることができる。従って、熱硬化性に優れ、ハンドリングがしやすい粘度の(A)成分を得ることができる。また、堅い硬化被膜が形成できる。
【0045】
本発明の(A)成分の数平均分子量は、10000超50000以下である。これにより耐熱性と溶媒溶解性のバランスのとれたカルボキシル基含有熱硬化性ポリエステルを得ることができる。数平均分子量は、好ましくは、10200以上49000以下、更に好ましくは10300以上47900以下である。(A)成分の数平均分子量が上記範囲以下では、硬化被膜の可とう性が低下し、上記範囲を超えると、樹脂ワニスの溶液粘度が高くなり、ソルダーレジストへの後加工が困難になるため好ましくない。
【0046】
<カルボキシル基含有ポリエステル(A)の構造>
本発明の(A)成分は、具体的には以下の一般式[I]で示される繰り返し構造を有するものであることが好ましい。
〔一般式[I]において、R
1は、テトラカルボン酸二無水物から酸無水物基を除いた有機基であり、置換基を含んでいてもよく、炭素数
6〜30の芳香族
炭化水素基、
炭素数3〜30の脂環族
炭化水素基、
炭素数1〜30の脂肪族基、
及び/または
炭素数1〜30の複素環
からなる基であ
り、ただし、前記炭素数は置換基の炭素数を含む。R
2は、ポリカーボネートジオールから水酸基を除いた有機基であり、ただし該ポリカーボネートジオールが複数種のアルキレン基
からなり、
該アルキレン基が鎖式脂肪族炭化水素であり、該ポリカーボネートジオールの数平均分子量が700〜2300である。〕
【0047】
本発明の(A)成分の酸価は、1200当量/10
6g以上である。これにより十分な架橋構造が得られ、熱硬化性、長期絶縁信頼性、銅箔密着性等が特に良好となる。また、硬化収縮も発生しにくくなる。樹脂酸価が1200当量/10
6g未満では、カルボキシル基含有ポリエステル100質量部に対する熱硬化剤の配合量が40質量部未満となり、硬化被膜の銅箔密着性が低下するため好ましくない。酸価の上限値については特に制限はないが、2500当量/10
6g程度であることが好ましい。
【0048】
本発明のカルボキシル基含有ポリエステル中の一般式[I]の繰り返し構造の含有率(質量%)は、68質量%以上であればよく、好ましくは70質量%以上であればよい。68質量%以上であれば、本発明のカルボキシル基含有ポリエステルを含む熱硬化性樹脂組成物より得られる硬化被膜は、可とう性に加えて、銅箔密着性、長期絶縁信頼性、及び耐めっき性に特に優れる。
【0049】
<熱硬化性樹脂組成物>
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも「カルボキシル基含有ポリエステル(A)」と後述する「オキシラン環を含有する化合物(B)」を、(A)成分を製造する際に使用する有機溶剤として例示した有機溶剤中に溶解したものをいう。さらに、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、後述する「(B)成分以外の熱硬化剤」、「硬化促進剤」、及び/または「その他の添加剤」が含まれていても良い。熱硬化性樹脂組成物の固形分濃度は、好ましくは40質量%〜60質量%、より好ましくは45質量%〜55質量%がよい。40質量%〜60質量%であれば、スクリーン印刷性に特に優れる。
以下、「オキシラン環を含有する化合物(B)」、「(B)成分以外の熱硬化剤」、「硬化促進剤」、及び「その他の添加剤」を例示して説明する。
【0050】
<オキシラン環を含有する化合物(B)>
オキシラン環を含有する化合物(B)は、(A)成分のカルボキシル基と反応し得る官能基を有する化合物である。(B)成分としては、オキシラン環が分子内に含有されていれば特に限定されない。例えば、エポキシ基含有化合物や、オキセタン基含有化合物などが挙げられる。
【0051】
エポキシ基含有化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、可撓性エポキシ樹脂、アミン型エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、ビキシレノール型エポキシ樹脂、グリシジル基を有する化合物などが挙げられる。
【0052】
オキセタン基含有化合物としては、分子内にオキセタン環を有し、硬化可能なものであれば特に限定されず、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス−{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、3−エチル3−(フェノキシメチル)オキセタン、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−{[3−(トリエトキシル)プロポキシ]メチル}オキセタン、3,3−ビス(ヒドロキシメチル)オキセタン、ジ[1−ヒドロキシメチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、3,3−ビス(ヒドロキシメチル)オキセタン、およびオキセタニル−シルセスキオキサンなどが挙げられる。
【0053】
これらの(B)成分は、単独又は2種類以上を組み合わせて使用しても構わない。これらの中では、銅箔密着性、耐めっき性の観点から、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、若しくはo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0054】
これらの(B)成分には、希釈剤としてさらに、1分子中にエポキシ基を1個だけ有するエポキシ化合物を含んでいても構わない。
【0055】
これらの(B)成分の添加方法としては、あらかじめ添加する(B)成分を(A)成分に含まれる溶媒と同一の溶媒に溶解してから添加してもよく、または(A)成分に直接添加してもよい。
【0056】
また、熱硬化に関わるオキシラン環とカルボキシル基の比率を調整することにより、熱硬化性を所望の範囲に設定することができる。具体的には、オキシラン環とカルボキシル基の比率は、オキシラン環/カルボキシル基(モル比)=3/1〜1/3が好ましく、より好ましくは、2/1〜1/2である。オキシラン環/カルボキシル基(モル比)=2/1〜1/2の範囲であれば、硬化性、架橋性に特に優れる。
【0057】
(B)成分の使用量は、本発明の(A)成分の用途等を考慮して決定すればよく、特に限定されるものではないが、本発明のカルボキシル基含有ポリエステル100質量部に対して、40質量部〜90質量部が好ましく、40質量部〜80質量部であることがより好ましい。オキシラン環を含有する化合物を使用することにより、本発明の(A)成分から得られた硬化被膜の架橋密度を適度な値に調節することができるので、硬化後の被膜の各種物性をより一層向上させることができる。(B)成分の使用量が上記範囲よりも少ないと、架橋性は悪くなり、また、上記範囲よりも多い場合も架橋性が低下するため、耐熱特性や、耐溶剤性等が悪くなる場合がある。
【0058】
本発明の熱硬化性樹脂組成物においては、前記(B)成分以外にも熱硬化剤として、水酸基、カルボキシル基などと反応し得る官能基を有する化合物も使用することができる。具体的には、例えば、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、シアネートエステル化合物、アジリジン化合物、酸無水物基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、ベンゾオキサジン化合物、マレイミド化合物、シトラコンイミド化合物、ナジイミド化合物、アリルナジイミド化合物、ビニルエーテル化合物、ビニルベンジルエーテル樹脂、チオール化合物、メラミン化合物、グアナミン化合物、アミノ樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、キシレン樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、トリアリルシアヌレート樹脂、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌラートを含有する樹脂、トリアリルトリメリタートを含有する樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、芳香族ジシアナミドの三量化による熱硬化性樹脂などが挙げられる。これらの化合物は単独、又は2種類以上を組み合わせて使用してもかまわない。
【0059】
<硬化促進剤>
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、熱硬化性、耐熱性、及び耐溶剤性等の特性をより一層向上するために、硬化促進剤を用いることができる。硬化促進剤としては、上記の(A)成分と(B)成分の間の硬化反応を促進できるものであればよく、特に制限はない。
【0060】
このような硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール誘導体、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等のグアナミン類、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、m−キシレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド、尿素、尿素誘導体、メラミン、多塩基ヒドラジド等のポリアミン類、これらの有機酸塩および/またはエポキシアダクト、三フッ化ホウ素のアミン錯体、エチルジアミノ−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−S−トリアジン,2,4−ジアミノ−6−キシリル−S−トリアジン等のトリアジン誘導体類、トリメチルアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルオクチルアミン、N−ベンジルジメチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、ヘキサ(N−メチル)メラミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノフェノール)、テトラメチルグアニジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(「DBU」と称することがある)、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン(「DBN」と称することがある)等の三級アミン類、これらの有機酸塩及び/又はテトラフェニルボロネート、ポリビニルフェノール、ポリビニルフェノール臭素化物、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス−2−シアノエチルホスフィン等の有機ホスフィン類、トリ−n−ブチル(2,5−ジヒドロキシフェニル)ホスホニウムブロマイド、ヘキサデシルトリブチルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボロネート等の四級ホスホニウム塩類、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、フェニルトリブチルアンモニウムクロライド等の四級アンモニウム塩類、前記ポリカルボン酸無水物、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボロネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、2,4,6−トリフェニルチオピリリウムヘキサフルオロホスフェート、イルガキュアー261(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、オプトマ−SP−170(ADEKA(株)製)等の光カチオン重合触媒、スチレン−無水マレイン酸樹脂、フェニルイソシアネートとジメチルアミンの等モル反応物や、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の有機ポリイソシアネートとジメチルアミンの等モル反応物等が挙げられる。これらを単独で又は2種類以上組み合わせて用いても構わない。これらのうちでは、潜在硬化性を有する硬化促進剤が好ましく、例えばDBU、DBNの有機酸塩及び/又はテトラフェニルボロネートや、光カチオン重合触媒等が挙げられる。
【0061】
硬化促進剤の使用量は、オキシラン環を含有する化合物(B)100質量部に対して、30質量部以下が好ましい。30質量部を超えると、カルボキシル基含有ポリエステルの保存安定性や硬化被膜の耐熱性や耐溶剤性が低下するので好ましくない。
【0062】
本発明の熱硬化性樹脂組成物の全固形成分中に含まれる一般式[I]の繰り返し構造の含有率(質量%)は、40質量%以上であればよく、好ましくは41質量%以上であればよい。上限は、71質量%以下が好ましく、さらに好ましくは70質量%以下が良い。40質量%以上71質量%以下であれば、本発明のカルボキシル基含有ポリエステルを含む熱硬化性樹脂組成物より得られる硬化被膜は可とう性に加えて、銅箔密着性、長期絶縁信頼性、及び耐めっき性に特に優れる。
【0063】
<その他の添加剤>
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、各種被膜形成材料として好適に用いられる。本発明の熱硬化性樹脂組成物には、塗工時の作業性及び被膜形成前後の膜特性を向上させるため、消泡剤、レベリング剤、フェノール樹脂、染料または顔料等の着色剤類、熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤、滑剤等を添加することもできる。他にも、無機微粒子として、シリカ(SiO
2)、アルミナ(Al
2O
3)、チタニア(TiO
2)、酸化タンタル(Ta
2O
5)、ジルコニア(ZrO
2)、窒化珪素(Si
3N
4)、チタン酸バリウム(BaO・TiO
2)、炭酸バリウム(BaCO
3)、チタン酸鉛(PbO・TiO
2)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT)、酸化ガリウム(Ga
2O
3)、スピネル(MgO・Al
2O
3)、ムライト(3Al
2O
3・2SiO
2)、コーディエライト(2MgO・2Al
2O
3/5SiO
2)、タルク(3MgO・4SiO
2・H
2O)、チタン酸アルミニウム(TiO
2−Al2O
3)、イットリア含有ジルコニア(Y
2O
3−ZrO
2)、珪酸バリウム(BaO・8SiO
2)、窒化ホウ素(BN)、炭酸カルシウム(CaCO
3)、硫酸カルシウム(CaSO
4)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸マグネシウム(MgO・TiO
2)、硫酸バリウム(BaSO
4)、有機ベントナイト、カーボン、ハイドロタルサイトなどを使用することができ、これらの1種又は2種以上を使用することもできる。
【0064】
<被膜形成材料>
本発明による熱硬化性樹脂組成物は、被膜形成用樹脂組成物あるいは被膜形成材料として好適に用いられる。被膜形成材料としては、例えば、電子部品用オーバーコート材、液状封止材、エナメル線用ワニス、電気絶縁用含浸ワニス、注型ワニス、マイカ、ガラスクロス等の基材と組み合わせたシート用ワニス、MCL積層板用ワニス、摩擦材料用ワニス、プリント基板分野などにおける層間絶縁膜、表面保護膜、ソルダーレジスト層、接着層などに使用できる。また、被膜形成用樹脂組成物あるいは被膜形成材料は、半導体素子などの電子部品にも使用でき、特に、本発明の熱硬化性樹脂組成物を含むソルダーレジスト剤は、COF用途などのフレキシブル配線板の保護膜(硬化被膜)の形成に有用である。
本発明のソルダーレジスト剤は、本発明の熱硬化性樹脂組成物をそのままを使用しても良い。
【0065】
本発明の熱硬化性樹脂組成物、被膜形成材料、またはソルダーレジスト剤を熱硬化させることにより、可とう性、銅箔密着性、長期絶縁信頼性、及び耐めっき性に優れた硬化被膜を得ることができる。
本発明による熱硬化性樹脂組成物を、配線パターン部がスズめっき処理されたCOF用途のフレキシブル配線板の保護膜(ソルダーレジスト剤)に用いる場合は、熱硬化の加熱温度条件は、スズめっき層の拡散を防ぎ、かつ保護膜として好適な可とう性、銅箔密着性、長期絶縁信頼性、及び耐めっき性を得る観点から、80〜130℃であることが好ましく、90〜120℃であることが特に好ましい。また、熱硬化の加熱時間は、スズめっき層の拡散を防ぎ、かつ保護膜として好適な可とう性、銅箔密着性、長期絶縁信頼性、及び耐めっき性を得る観点から、30〜150分であることが好ましく、45〜120分であることが特に好ましい。
【実施例】
【0066】
以下に、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、各実施例における特性値の評価は、以下の方法によって行った。
【0067】
<カルボキシル基含有ポリエステル(A)中の組成>
(A)成分を、重クロロホルム、または重ジメチルスルホキシドに溶解し、VARIAN社製 NMR装置400―MRを用いて、
1H−NMR分析を行い、カルボキシル基含有ポリエステル(A)に含まれる各成分のモル比を求め、含有率(質量%)に換算した。
【0068】
<数平均分子量>
(A)成分を、樹脂濃度が0.5質量%程度となるようにテトラヒドロフランで溶解および/または希釈し、孔径0.5μmのポリ四フッ化エチレン製メンブレンフィルターで濾過したものを測定用試料として、テトラヒドロフランを移動相とし、示差屈折計を検出器とするゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により分子量を測定した。流速は1mL/分、カラム温度は30℃とした。カラムには昭和電工製KF−802、804L、806Lを用いた。分子量標準には単分散ポリスチレンを使用した。
【0069】
<酸価>
(A)成分0.2gを20mlのN−メチルピロリドンに溶解し、0.1Nの水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、(A)成分10
6gあたりの当量(当量/10
6g)を求めた。
【0070】
<熱硬化性>
実施例・比較例等で得られた熱硬化性樹脂組成物を、乾燥後の厚さ20μmになるように、厚さ18μmの電解銅箔の光沢面、およびポリイミドフィルム((株)宇部興産製、ユーピレックス−50S)に塗布した。80℃×30分熱風乾燥した後、空気雰囲気下、120℃で60分加熱して硬化被膜を形成した積層体(以下、積層体という)を得た。この積層体を5.0cm×10cmの大きさに切り出したものを試験片とした。
アセトン浸漬前の試験片の質量を測定後、試験片を60分間、室温で100mlのアセトン中に浸漬した。浸漬後の試験片を60分間、100℃で乾燥させたのちに質量を測定し、質量の残存率をゲル分率とした。
ゲル分率(質量%)=[(アセトン浸漬後の質量−電解銅箔の質量)/(アセトン浸漬前の質量−電解銅箔の質量)]×100
【0071】
<可とう性>
JIS K5600−5−1:1999に準拠し、マンドレルは直径2mmのものを使用し、温度23℃±2℃、相対湿度(50±5)%の条件の条件で試験を行った。
試験装置に前述のマンドレルを装着し、更に前述の積層体の試験片(5.0cm×10cm)を硬化被膜面が外側になるように折り曲げた。試験装置の折り曲げは、1〜2秒をかけて、均等に行った。試験片を180°折り曲げを行ったのち、クラック発生の有無を評価した。
○:クラックの発生なし
×:クラックの発生あり
【0072】
<銅箔密着性>
前記の積層体に対して、JIS K5600−5−6:1999に準拠し、温度23℃±2℃、相対湿度(50±5)%の条件で試験を行った。前述の積層体の硬化被膜層に1mm間隔で10マス×10マスの計100マス目のクロスカットを形成し、セロハンテープ剥離後の残存する硬化被膜の様子を目視で観察した。なお、剥離用テープはニチバン(株)社製を用いた。
○:碁盤目の数が完全に残る場合
△:碁盤目の数が50個以上100個未満残る場合
×:碁盤目の数が50個未満しか残らない場合
【0073】
<長期絶縁信頼性>
#200メッシュのステンレス製スクリーン版を用いて、フレキシブル銅張り積層板(商品名:UPISEL−N BE1310(グレード名)、宇部興産(株)製)をエッチングした櫛型基板(銅配線幅/銅配線間幅=20μm/20μm)(
図2)に、熱硬化性樹脂組成物を#100メッシュポリエステル版でスクリーン印刷により塗布し、80℃で30分間乾燥した後、120℃で1時間熱硬化した。その基板を85℃、相対湿度85%の雰囲気下において60Vのバイアス電圧を印加して1000時間放置し、以下の基準で長期絶縁信頼性を評価した。
○:マイグレーションなし、且つ絶縁抵抗値≧10
8Ω
×:1000時間以下でマイグレーション、または絶縁抵抗値<10
8Ω
【0074】
<耐めっき性>
厚さ25μmのポリイミドフイルムに厚さ12μmの銅箔を積層した片面積層ポリイミドフィルムからなるプリント基板〔ユピセル(登録商標)N、宇部興産(株)製〕を酸性脱脂剤AC−401で洗浄し、水洗後、70℃で3分間乾燥したものに、熱硬化性樹脂組成物を#100メッシュポリエステル版でスクリーン印刷により塗布した。これを80℃で30分間乾燥した後、120℃で1時間熱硬化し、水洗した後、23℃のICPクリーン91に1分間浸漬し、水洗して23℃の10%硫酸水溶液に1分間浸漬した後水洗した。洗浄後の基板を70℃の錫めっき液(TINPOSIT LT−34、ロームアンドハース社製)に3分間浸漬し、水洗した後70℃の温水に3分間浸漬した。めっき後の基板を120℃で2時間熱処理した後、硬化被膜を目視で観察し、以下の基準で耐めっき性を評価した。
○:硬化被膜の変色、めっき潜りともになし
×:硬化被膜の変色または、めっき潜りあり
【0075】
<熱硬化性樹脂組成物の全固形成分中の一般式[I]の繰り返し構造の含有率>
熱硬化性樹脂組成物の全固形成分中のカルボキシル基含有ポリエステル(A)の含有率(質量%)を求め、カルボキシル基含有ポリエステル(A)に含まれる一般式[I]の繰り返し構造のモル比から、熱硬化性樹脂組成物の全固形成分中の一般式[I]の繰り返し構造の含有率(質量%)を算出した。
【0076】
<合成例1−1>
撹拌器及び温度計を装備した四つ口フラスコに、テトラカルボン酸二無水物として、エチレングリコールビス(トリメリット酸無水物)(新日本理化(株)製リカシッドTMEG−100)114.84g(0.28モル)と、ポリカーボネートジオールとしてC−1015N((株)クラレ製ポリカ−ボネートジオール、原料ジオールモル比:1,9−ノナンジオール/2−メチル−1,8−オクタンジオール=15/85、分子量1000)294.60g(0.29モル)と、溶剤としてγ−ブチロラクトン(三菱化学(株)製)409.44gを加え、ここに触媒として4−ジメチルアミノピリジン(ナカライテスク製)1.71gを添加し、窒素気流下、100℃×6時間反応させた。その後、室温まで冷却することで固形分濃度50質量%のカルボキシル基含有ポリエステルを得た。このポリマーの組成と物性を表1に示す。
【0077】
<合成例1−2、1−3、1−4、1−5>
ポリカーボネートジオールを表1のように変更したこと以外は合成例1と同様にして、種々のカルボキシル基含有ポリエステルを得た。これらのポリマーの組成と物性を表1に示す。
【0078】
<合成例1−6、1−7、1−8、1−9>
テトラカルボン酸二無水物を表1のように変更したこと以外は合成例1と同様にして、種々のカルボキシル基含有ポリエステルを得た。これらのポリマーの組成と物性を表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
表1中の略号の意味を以下に記載する。
TMEG:エチレングリコールビス(トリメリット酸無水物)
BPDA:3,3’,4,4’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物
PMDA:ピロメリット酸二無水物
BTDA:3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
ODPA:4,4’−オキシジフタル酸二無水物
C1015N:(株)クラレ製ポリカーボネートジオール(1,9−ノナンジオール/2−メチル−1,8−オクタンジオール=15/85)、数平均分子量約1000
C1065N:(株)クラレ製ポリカーボネートジオール(1,9−ノナンジオール/2−メチル−1,8−オクタンジオール=65/35)、数平均分子量約1000
C1050:(株)クラレ製ポリカーボネートジオール(3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール=50/50)、数平均分子量約1000
C1090:(株)クラレ製ポリカーボネートジオール(3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール=90/10)、数平均分子量約1000
T5651:旭化成ケミカルズ(株)製ポリカーボネートジオール(1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール=50/50)、数平均分子量約1000
【0081】
<比較合成例2−1>
撹拌器及び温度計を装備した四つ口フラスコに、テトラカルボン酸二無水物として、エチレングリコールビス(トリメリット酸無水物)(新日本理化(株)製リカシッドTMEG−100)170.89g(0.42モル)と、ジイソシアネート化合物として2,4−トルエンジイソシアネート(日本ポリウレタン(株)製コロネートT−100)を35.01g(0.20モル)と、溶剤としてγ−ブチロラクトン(三菱化学(株)製)349.51gを加え、ここに触媒として1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(ナカライテスク製)0.31gを添加し、130℃×2時間反応させた。ついで、室温まで冷却後、ポリカーボネートジオールとしてC−1015N((株)クラレ製ポリカ−ボネートジオール、原料ジオールモル比:1,9−ノナンジオール/2−メチル−1,8−オクタンジオール=15/85、分子量1000)248.50g(0.25モル)と、溶剤としてγ−ブチロラクトン(三菱化学(株)製)87.19gを加え、ここに触媒として4−メチルアミノピリジン(ナカライテスク製)2.63gを添加し、窒素気流下、100℃×6時間反応させた。その後、室温まで冷却することで固形分濃度50質量%のカルボキシル基含有ポリエステルイミドを得た。このポリマーの組成と物性を表2に示す。
【0082】
<比較合成例2−2>
撹拌器及び温度計を装備した四つ口フラスコに、テトラカルボン酸二無水物として、エチレングリコールビス(トリメリット酸無水物)(新日本理化(株)製リカシッドTMEG−100)214.17g(0.52モル)と、ポリカーボネートジオールとしてC−3090((株)クラレ製ポリカ−ボネートジオール、原料ジオールモル比:1,6−ヘキサンジオール/3−メチル−1,5−ペンタンジオール=10/90、分子量3000)1353.00g(0.45モル)と、溶剤としてγ−ブチロラクトン(三菱化学(株)製)1567.17gを加え、ここに触媒として4−ジメチルアミノピリジン(ナカライテスク製)3.19gを添加し、窒素気流下、100℃×6時間反応させた。その後、室温まで冷却することで固形分濃度50質量%のカルボキシル基含有ポリエステルを得た。得られたポリマーの組成と物性を表2に示す。
【0083】
<比較合成例2−3>
オートクレーブに、ジカルボン酸として、イソフタル酸(エイ・ジイ・インタナショナル・ケミカル(株)製)86.73g(0.52モル)と、ポリカーボネートジオールとしてC−1015N((株)クラレ製ポリカ−ボネートジオール、原料ジオールモル比:1,9−ノナンジオール/2−メチル−1,8−オクタンジオール=15/85、分子量1000)475.00g(0.45モル)と、ここに触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート(関東化学(株)製)0.05gを添加し、220℃×3時間反応させた。その後、前記反応系を20分かけて5mmHgまで減圧し、220℃で45分間縮合反応を実施した。続いて、室温まで冷却し、溶剤としてγ−ブチロラクトン(三菱化学(株)製)519.92gを加えことで固形分濃度50質量%のポリエステルを得た。得られたポリマーの組成と物性を表2に示す。
【0084】
<比較合成例2−4,2−5,2−6>
ポリカーボネートジオールを表2のように変更したこと以外は合成例1と同様にして、種々のカルボキシル基含有ポリエステルを得た。これらのポリマーの組成と物性を表2に示す。
【0085】
<P含有ジオールの合成:比較合成例2−6>
比較合成例2−6で使用した(D)成分のP含有ジオールは以下の手順により合成した。
1,6−ヘキサンジオール(宇部興産(株)製)21.27g(0.18モル)、n−ブチル−ビス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキサイド(PO−4500、リン含有ジオール、日本化学工業製)33.84g(0.18モル)、ジフェニルカーボネート(東京化成工業(株)製)57.84g(0.27モル)、触媒であるテトラ−n−ブチルチタネート0.09gを、オートクレーブに仕込み、220℃まで昇温し、フェノールの留出を確認した後、前記反応系を20分かけて常圧から5mmHgまで減圧した。反応系を5mmHgの減圧下で、200℃に保ちながら、フェノールを反応系外に留出し、80分間重縮合反応を実施した。得られたポリカーボネートジオールの数平均分子量は690であった。
【0086】
【表2】
【0087】
表2中の略号の意味を以下に記載する。
TMEG:エチレングリコールビス(トリメリット酸無水物)
IPA:イソフタル酸
TDI:2,4−トルエンジイソシアネート
C1015N:(株)クラレ製ポリカーボネートジオール(1,9−ノナンジオール/2−メチル−1,8−オクタンジオール=15/85)、数平均分子量約1000
T5650E:旭化成ケミカルズ(株)製ポリカーボネートジオール(1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール)、数平均分子量約500
C3090:(株)クラレ製ポリカーボネートジオール(3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール=90/10)、数平均分子量約3000
UH−CARB100:宇部興産(株)製ポリカーボネートジオール(1,6−ヘキサンジオール)、数平均分子量約1000
【0088】
<実施例1>
合成例1−1で得られたカルボキシル基含有ポリエステルの樹脂分100質量部に対して、HP−7200H(DIC(株)製ジシクロペンタジエン含有フェノールノボラック型エポキシ樹脂の商品名)50質量部を加え、γ−ブチロラクトンで希釈した。さらに硬化促進剤としてUCAT−5002(サンアプロ(株)製)を2.1質量部加え、γ−ブチロラクトンで調整しながら、三本ロールミル((株)小平製作所製、型式:RIII−1RM−2)に3回通して混練し、固形分濃度が52質量%の熱硬化性樹脂組成物を得た。得られた熱硬化性樹脂組成物を乾燥後の厚さ20μmになるように、厚さ18μmの電解銅箔の光沢面、およびポリイミドフィルム((株)宇部興産製、ユーピレックス−50S)に塗布した。80℃×30分熱風乾燥した後、空気雰囲気下、120℃で60分加熱して硬化被膜を形成した積層体を得た。得られた熱硬化性樹脂組成物の組成と硬化被膜の物性を表3に示す。
【0089】
<実施例2〜9、比較例1〜6>
表3記載の組成に変更する以外は実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を作製し、硬化被膜を形成した積層体を得た。得られた熱硬化性樹脂組成物の組成と硬化被膜の物性を表3に示す。
【0090】
【表3】
【0091】
表3中の略号の意味を以下に記載する。
HP−7200H:DIC(株)製、ジシクロペンタジエン含有フェノールノボラック型エポキシ樹脂
JER−152:三菱化学(株)製、フェノールノボラック型エポキシ樹脂
YDCN−701:新日鐵化学(株)製、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂
UCAT−5002:サンアプロ(株)製硬化促進剤、DBU系テトラフェニルボレート塩
【0092】
表3から明らかなように、実施例1〜9では、熱硬化性が全て90質量%以上を示し、長期絶縁信頼性も全て良好であった。また、可とう性、耐めっき性、銅箔密着性も全て良好であった。すなわち、本発明の要件を満たすカルボキシル基含有ポリエステルを含有する熱硬化性樹脂組成物より得られた硬化被膜は熱硬化性、長期絶縁信頼性、可とう性、耐めっき性、及び銅箔密着性の全てにおいて良好な評価結果を示した。
【0093】
比較例1においては、ポリマー酸価がやや低いために、銅箔密着性に寄与するエポキシ樹脂の配合量を樹脂分100質量部に対して40質量部以上にすることができない。従って、銅箔と硬化被膜間に働く分子間力が低下し、銅箔密着性不良となった。さらに、銅箔と硬化被膜界面からのめっき液の染みこみが確認され、耐めっき性不良であった。
【0094】
比較例2においても、比較例1と同様の理由で銅箔密着性、耐めっき性不良であった。さらに、使用したポリカーボネートジオール(3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール=90/10)の数平均分子量約3000が高いために耐熱性が低下し、長期絶縁信頼性不良であった。
【0095】
比較例3においては、ポリマー中のカルボキシル基が樹脂末端にしかないため酸価が低く、熱硬化性が73質量%となり不良となった。銅箔密着性、耐めっき性、長期絶縁信頼性についても、比較例2と同様に不良であった。
【0096】
比較例4においては、1種類のアルキレン基のみを有するポリカーボネートジオールを共重合したカルボキシル基含有ポリエステルであるために樹脂の結晶性が高くなり、硬化被膜の可とう性が不良であった。
【0097】
比較例5においては、ポリカーボネートジオールの数平均分子量が500と低いために、柔軟特性に寄与するポリカーボネートジオールの質量比率が減少し、硬化被膜の可とう性が不良であった。
【0098】
比較例6においては、P含有ジオールの耐加水分解性が悪いために長期絶縁信頼性が不良であった。
【0099】
<合成例3−1,3−2,3−3, 3−4,3−5,3−6,3−7>
テトラカルボン酸二無水物、ポリグリコールを表4のように変更したこと以外は合成例1と同様にして、種々のカルボキシル基含有ポリエステルを得た。これらのポリマーの組成と物性を表4に示す。
【0100】
【表4】
【0101】
表4中の略号の意味を以下に記載する。
PTMG1000:(株)三菱化学製ポリテトラメチレンエーテルグリコール、数平均分子量約1000
P−1010:(株)クラレ製ポリエステルジオール(3−メチル−1,5−ペンタンジオール//アジピン酸)、数平均分子量約1000
P−1050:(株)クラレ製ポリエステルジオール(3−メチル−1,5−ペンタンジオール//セバシン酸)、数平均分子量約1000
その他の略号の意味は、表1〜3に記載の略号の意味と同一である。
【0102】
<比較合成例4−1,4−2,4−3>
テトラカルボン酸二無水物、ポリグリコールを表5のように変更したこと以外は合成例1と同様にして、種々のカルボキシル基含有ポリエステルを得た。これらのポリマーの組成と物性を表5に示す。
【0103】
【表5】
【0104】
表5中の略号の意味を以下に記載する。
PNOA1010:(株)クラレ製ポリエステルジオール(1,9−ノナンジオール/2−メチル−1,8−オクタンジオール=65/35//アジピン酸)、数平均分子量約1000
PTXG1000:旭化成せんい(株)製テトラヒドロフラン/ネオペンチルグリコール共重合体ポリエーテルグリコール、数平均分子量約1000
その他の略号の意味は、表1〜4に記載の略号の意味と同一である。
【0105】
<実施例10〜17、比較例7〜10>
表6記載の組成に変更する以外は実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を作製し、硬化被膜を形成した積層体を得た。得られた熱硬化性樹脂組成物の組成と硬化被膜の物性を表6に示す。なお、表6中の略号の意味は、表1〜5に記載の略号の意味と同一である。
【0106】
【表6】
【0107】
表6から明らかなように、実施例10〜17では、熱硬化性が全て90質量%以上を示し、長期絶縁信頼性も全て良好であった。また、可とう性、耐めっき性、銅箔密着性も全て良好であった。すなわち、本発明の要件を満たすカルボキシル基含有ポリエステルを含有する熱硬化性樹脂組成物より得られた硬化被膜は、熱硬化性、長期絶縁信頼性、可とう性、耐めっき性、及び銅箔密着性の全てにおいて良好な評価結果を示した。
【0108】
比較例7、10においては、カルボキシル基含有ポリエステル(A)中の一般式[I]の繰り返し構造の含有率が低く、1種類のアルキレン基のみを有するポリカーボネートジオールを多く含有しているために樹脂の結晶性が高くなり、硬化被膜の可とう性が不良であった。
【0109】
比較例8、9においても、同様にカルボキシル基含有ポリエステル(A)中の一般式[I]の繰り返し構造の含有率が低く、長期絶縁信頼性に劣るポリエステルポリオールを多く含有しているために硬化被膜の長期絶縁信頼性が不良であった。
g以上であり、さらに、原料のポリカーボネートジオールは、少なくとも2種類の原料ジオールを共重合した複数種のアルキレン鎖を有し、数平均分子量が700〜2300であることを特徴とするカルボキシル基含有ポリエステル。