特許第5692477号(P5692477)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5692477
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】海老様食感を有する食品の製造法
(51)【国際特許分類】
   A23L 1/325 20060101AFI20150312BHJP
   A23J 3/16 20060101ALI20150312BHJP
   A23L 1/33 20060101ALN20150312BHJP
【FI】
   A23L1/325 101A
   A23L1/325 101C
   A23J3/16 501
   !A23L1/33 A
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-542622(P2014-542622)
(86)(22)【出願日】2014年8月21日
(86)【国際出願番号】JP2014071860
【審査請求日】2014年10月10日
(31)【優先権主張番号】特願2013-213264(P2013-213264)
(32)【優先日】2013年10月11日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-215287(P2013-215287)
(32)【優先日】2013年10月16日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236768
【氏名又は名称】不二製油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】工藤 透
(72)【発明者】
【氏名】中野 達朗
【審査官】 西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−153582(JP,A)
【文献】 特公昭48−017062(JP,B1)
【文献】 特開昭58−040047(JP,A)
【文献】 特開平02−255060(JP,A)
【文献】 特開平11−215969(JP,A)
【文献】 特開2002−112741(JP,A)
【文献】 特開昭60−221042(JP,A)
【文献】 特開平06−217704(JP,A)
【文献】 特開昭63−044849(JP,A)
【文献】 特開2013−009617(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/043384(WO,A1)
【文献】 特開平09−224583(JP,A)
【文献】 特開昭52−007460(JP,A)
【文献】 実開昭61−148194(JP,U)
【文献】 特開2011−072230(JP,A)
【文献】 特開2001−275576(JP,A)
【文献】 特開2000−279099(JP,A)
【文献】 添田孝彦,トランスグルタミナーゼによる食品タンパク質の物性改質,食品の物性第19集,1995年11月15日,pp.111-123
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 1/325
A23J 3/16
A23L 1/33
Thomson Innovation
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を経る、海老様食感を有する食品の製造法。
1.卵白を含浸させた、原料中2〜8重量%の組織状大豆蛋白質素材、原料の40〜70重量%の魚肉すり身、魚肉すり身に対し1.4〜2.5重量%の食塩、トランスグルタミナーゼ、水を混合する工程。
2.押し出し成形機でφ3〜8mm径から押し出し成形する工程。
3.30〜50℃で加熱する工程。
4.80〜100℃で加熱する工程。
【請求項2】
組織状大豆蛋白質素材が、カルシウム塩、マグネシウム塩および澱粉類を添加して製造されたものである、請求項1に記載の、海老様食感を有する食品の製造法。
【請求項3】
30〜50℃で加熱する工程が、加熱した調味液への浸漬加熱である、請求項1又は2に記載の、海老様食感を有する食品の製造法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海老様食感を有する食品の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
海老は、そのプリプリした独特の食感が好まれ、日本において広く食されている。
日本では、東南アジアから養殖エビを大量に輸入し、それにより、需要を満たしている。しかし、近年の需要の急増等により、その価格が高騰している。
海老様食感を示す食品に関する出願としては、たとえば特許文献1がある。また、関連する出願として、エビ肉入り練り製品の製造法に関する出願(特許文献2)がある
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−238075号公報
【特許文献2】特開平9−266770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、海老の代替として使用することのできる、海老様食感を有する食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題について、本発明者は鋭意検討を行った。
特許文献1はカードランを用いた食品であるが、風味および食感の点で、満足いくものは得られなかった。また特許文献2は、あくまでも練り製品に関するものであり、海老の代替として使用することのできる食品を得ることはできなかった。
本発明者は、海老の食感が蛋白質に由来することから、蛋白質を主要な原料として、その食感を再現することができないか、鋭意検討を行った。そして、卵白を含浸させた組織状大豆蛋白質素材が独特の食感を有すること、さらに、魚肉すり身と合わせ、トランスグルタミナーゼを作用させることにより、より海老に近い食感が得られることを見出した。そして、一定範囲の径で押し出し成形することにより、海老独特の繊維感が得られ、さらに海老に近い食感が得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、
(1)以下の工程を経る、海老様食感を有する食品の製造法、
1.卵白を含浸させた組織状大豆蛋白質素材、魚肉すり身、食塩、トランスグルタミナーゼ、水を混合する工程、
2.押し出し成形機でφ3〜8mm径から押し出し成形する工程、
3.30〜50℃で加熱する工程、
4.80〜100℃で加熱する工程、
"
(2)組織状大豆蛋白質素材が、カルシウム塩、マグネシウム塩および澱粉類を添加して製造されたものである、(1)に記載の、海老様食感を有する食品の製造法、
(3)組織状大豆蛋白質素材が、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムおよびコーンスターチを添加して製造されたものである、(1)に記載の、海老様食感を有する食品の製造法、
(4)組織状大豆蛋白質素材が、炭酸カルシウムを0.05〜3重量%、炭酸マグネシウムを0.05〜3重量%およびコーンスターチを6〜35重量%添加して製造されたものである、(1)に記載の、海老様食感を有する食品の製造法、
(5)30〜50℃で加熱する工程が、加熱した調味液への浸漬加熱である、(1)に記載の、海老様食感を有する食品の製造法、
(6)30〜50℃で加熱する工程が、加熱した調味液への浸漬加熱である、(2)に記載の、海老様食感を有する食品の製造法、
(7)30〜50℃で加熱する工程が、加熱した調味液への浸漬加熱である、(3)に記載の、海老様食感を有する食品の製造法、
(8)30〜50℃で加熱する工程が、加熱した調味液への浸漬加熱である、(4)に記載の、海老様食感を有する食品の製造法、
(9)魚肉すり身が原料の40〜70重量%であり、魚肉すり身に対し、食塩が1.4〜2.5重量%である、(1)に記載の、海老様食感を有する食品の製造法、
(10)魚肉すり身が原料の40〜70重量%であり、魚肉すり身に対し、食塩が1.4〜2.5重量%である、(2)に記載の、海老様食感を有する食品の製造法、
(11)魚肉すり身が原料の40〜70重量%であり、魚肉すり身に対し、食塩が1.4〜2.5重量%である、(3)に記載の、海老様食感を有する食品の製造法、
(12)魚肉すり身が原料の40〜70重量%であり、魚肉すり身に対し、食塩が1.4〜2.5重量%である、(4)に記載の、海老様食感を有する食品の製造法、
(13)魚肉すり身が原料の40〜70重量%であり、魚肉すり身に対し、食塩が1.4〜2.5重量%である、(5)に記載の、海老様食感を有する食品の製造法、
(14)魚肉すり身が原料の40〜70重量%であり、魚肉すり身に対し、食塩が1.4〜2.5重量%である、(6)に記載の、海老様食感を有する食品の製造法、
(15)魚肉すり身が原料の40〜70重量%であり、魚肉すり身に対し、食塩が1.4〜2.5重量%である、(7)に記載の、海老様食感を有する食品の製造法、
(16)魚肉すり身が原料の40〜70重量%であり、魚肉すり身に対し、食塩が1.4〜2.5重量%である、(8)に記載の、海老様食感を有する食品の製造法、
(17)組織状大豆蛋白質素材が、原料中2〜8重量%である、(1)〜(16)いずれか1つに記載の、海老様食感を有する食品の製造法、
に関するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、比較的廉価な原材料を用い、海老の代替として使用可能な、海老様食感を有する食品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明でいう組織状大豆蛋白質素材とは、分離大豆蛋白質や脱脂大豆等の大豆蛋白質素材を、エクストルーダーのような押し出し成形機を用い、膨化成形した素材である。
なお、組織状大豆蛋白質素材を調製する際に用いるエクストルーダーも、広義の押出し成型機に含まれるが、本発明における、海老様食感を有する食品の製造に用いる押出し成型機とは相違するものである。すなわち、組織状大豆蛋白質素材を調製する際に用いるエクストルーダーは、材料を押し出した際に膨化を伴うものであるが、本発明で用いる押出し成型機は、材料を押し出した際に膨化を伴わない点で相違する。
【0008】
本発明で用いる組織状大豆蛋白質素材は、カルシウム塩、マグネシウム塩および澱粉類を併用することが望ましい。この3つを併用することにより、海老のような繊維感をより強く発現することができる。
カルシウム塩の例としては、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウムを挙げることができ、より望ましくは炭酸カルシウムである。マグネシウム塩の例としては、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウムを挙げることができ、より望ましくは炭酸マグネシウムである。澱粉類の例としては、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉を挙げることができ、より望ましくはコーンスターチである。より望ましい塩類や澱粉類を使用することにより、よりほぐれやすく、かつ、より風味が良好な組織状大豆蛋白質素材を得ることができる。
【0009】
組織状大豆蛋白質素材における、カルシウム塩、マグネシウム塩および澱粉類の量は、カルシウム塩、マグネシウム塩については、それぞれ0.01〜4重量%が望ましく、0.05〜3重量%がより望ましい。澱粉類については、5〜40重量%が望ましく、6〜35重量%がより望ましい。 望ましいとされる範囲にないと、海老のような繊維感を発現しにくくなる場合がある。
【0010】
本発明においては、原材料中、乾燥重量で、組織状大豆蛋白質素材を2〜8重量%含有することが望ましく、この量は、より望ましくは3〜7重量%である。組織状大豆蛋白質素材の量が多すぎても少なすぎても、好ましい海老様食感が得られない場合がある。なお、上記重量範囲は、原材料段階での範囲ではあるが、製品においても、乾燥重量としては同様の量が含有されていると考えられる。
【0011】
本発明においては、組織状大豆蛋白質素材に、卵白液を含浸させ使用することに特徴がある。使用する卵白は、生卵白でもよいし、粉末卵白を溶解した卵白水溶液でもよい。いずれの場合も、含浸させる卵白液中に、卵白に由来する蛋白質を2〜10.5重量%含有することが望ましく、より望ましくは5.3〜8重量%である。蛋白質の量が多すぎると、うまく含浸しない場合があり、また、蛋白質の量が少なすぎると、食感が弱くなる場合がある。
【0012】
本発明においては、原材料の一つとして、魚肉すり身を使用することが必要である。魚種は特に限定されないが、海老の色調や食感の点からは、スケソウダラすり身が望ましい。本発明においては、魚肉すり身を40〜70重量%含有することが望ましく、より望ましくは50〜60重量%である。この量が多すぎても少なすぎても、好ましい海老様食感を得ることができない場合がある。
【0013】
本発明においては、原材料として食塩を使用する必要がある。食塩の存在が、魚肉すり身ゲルに影響を与えるからである。本発明における食塩の量は、魚肉すり身に対し、1.4〜2.5重量%であることが望ましく、より望ましくは1.5〜2.4重量%である。食塩の量が多すぎると、食感がかまぼこのようになってしまう場合がある。また、食塩の量が少なすぎると、海老様食感が得られない場合がある。
【0014】
組織状大豆蛋白質素材に卵白を含浸させる方法を、生卵白を用いる場合について説明する。
生卵白はまず、泡だて器などを用いて、十部に卵白のこしを切ることが望ましい。この操作が不十分だと、組織状大豆蛋白質素材へ含浸しにくくなる場合がある。十分にこしを切った卵白をビニール袋に入れ、更に所定量の組織状大豆蛋白質素材を入れ、真空パックする。これにより、組織状大豆蛋白質素材へ卵白が含浸される。なお、こしを切った卵白に組織状大豆蛋白質素材を入れ、遠心分離機にかけることでも、含浸させることができる。
粉末卵白を使用する場合は、こしを切る操作は不要であるが、溶解が不十分であると含浸が困難となる場合があるので、溶解を十分にすることが必要である。
【0015】
本発明においては、原材料の一つとして、澱粉を使用することが望ましい。ここで使用する澱粉は、アミロース含量の多いものが望ましく、具体的には馬鈴薯澱粉や小麦澱粉が望ましく、最も望ましくは馬鈴薯澱粉である。
使用する澱粉の量は、1.8〜4.5重量%含有することが望ましく、より望ましくは2〜3重量%であり、さらに望ましくは2.2〜2.9重量%である。この量が多すぎても少なすぎても、好ましい海老様食感を得ることができない場合がある。
【0016】
本発明においては、原材料の一つとして、分離大豆蛋白質を使用することが望ましい。使用する分離大豆蛋白質の量は、原材料中に1.3〜2.5重量%含有することが望ましく、より望ましくは1.4〜2.3重量%であり、さらに望ましくは1.5〜2.1重量%である。この量が多すぎても少なすぎても、好ましい海老様食感を得ることができない場合がある。
【0017】
本発明においては、原材料へトランスグルタミナーゼを混合しておくことに特徴がある。本発明においては、トランスグルタミナーゼ製剤として、味の素株式会社製「アクティバTGK」を使用したが、トランスグルタミナーゼ活性を有する酵素製剤であれば、他の製剤であっても使用できる。
アクティバTGKの添加量は魚肉すり身に対して0.1〜0.3重量%であり、より望ましくは0.15〜0.25重量%である。なお、トランスグルタミナーゼの添加量は、その反応時間との兼ね合いもあり、適宜選択することができる。
【0018】
本発明においては、トランスグルタミナーゼを含む原材料を混合後、スタッファーのような押し出し成形機を用い、押し出し成形する。この時の径はφ3〜8mmが望ましく、より望ましくは4〜6mmである。径が大きすぎても小さすぎても、海老様の食感を感じにくくなる場合がある。押し出した後は、海老をイメージできる形状等、適宜形を整えることもできる。
【0019】
押し出し成形機による成形後、本発明においては30〜50℃での加熱処理を行う。この加熱により、トランスグルタミナーゼの反応を行う。この時の加熱温度は、使用するトランスグルタミナーゼの至適温度にも依存するが、より望ましくは30〜45℃であり、さらに望ましくは35〜40℃である。また、加熱時間は、望ましくは20〜90分間であり、より望ましくは30〜60分間である。
このような加熱工程を設けずに、いきなり80〜100℃の加熱を行うと、トランスグルタミナーゼが失活してしまうので、効果が現れない。
【0020】
上記の加熱ののち、本発明においてはさらに加熱を行う。この時の温度は80〜100℃で行うが、より望ましくは80〜90℃である。また、加熱時間は、望ましくは10〜30分間であり、さらに望ましくは10〜20分間である。この時の加熱により、トランスグルタミナーゼが失活し、また、大豆蛋白質等の蛋白質が変性して、海老様食感を発現することになる。
【0021】
加熱方法は蒸し加熱や熱水浸漬などから、適宜選択できるが、熱水へ浸漬し加熱することが望ましく、その熱水が出汁であることがより望ましい。
以下、実施例等により本発明の実施形態をより具体的に記載する。
【実施例】
【0022】
検討1 組織状大豆蛋白質素材の調製
試験例1〜4
表1の配合により、組織状大豆蛋白質素材の調製法に従い、組織状大豆蛋白質素材を調製した。
組織状大豆蛋白質素材の蛋白質含有量も、表1に合わせて記入した。
【0023】
表1 配合表
・脱脂大豆は不二製油株式会社製「脱脂大豆」を使用した。
・分離大豆たん白は、不二製油株式会社製「フジプロE」を使用した。
・澱粉は、株式会社J−オイルミルズ製「コーンスターチ」を使用した。
【0024】
○組織状大豆蛋白質素材の調製法
1 配合に従い、脱脂大豆粉と乳化剤を粉体混合した。
2 幸和工業(株)製二軸エクストルーダーを用いて組織化した。
水の添加量はダイから押し出される組織化物が膨化するようにバルブを調整し、原料中の水分を約7〜30重量%の間で調整した。
スクリュー回転数は200rpmとした。
先端バレル温度は160〜180℃であった。先端バレルの圧力は3〜20kg/cm2の間で変化させた。
3 得られた膨化物は、長さ20mm程度となるようダイス出口直後にカッターで切断した。
4 粉砕機にて粒子径0.1〜3mm程度に粉砕後、タバイ(株)製ESPEC PV-221乾燥機にて水分8重量%となるよう80℃の熱風で乾燥を行った。
【0025】
検討2 卵白含浸組織状大豆蛋白質素材の調製
試験例5〜9
検討1で調製した組織状大豆蛋白質素材を用い、表2の配合に従い、卵白含浸組織状大豆蛋白質素材ないし、比較対象品を調製した。
調製方法は「卵白含浸組織状大豆蛋白質素材の調製法」に従った。
【0026】
表2 配合
・原材料における「試験例1」は試験例1で調製した組織状大豆蛋白質素材を示す。以下、同様である。
・液卵白は、市販の卵を割卵して黄身を分離して使用した。
【0027】
○卵白含浸組織状大豆蛋白質素材の調製法
1 配合表に従い、原料をポリ袋に入れ、混合した。
2 袋ごと真空シーラーにより脱気した。
3 5分後、袋を開封し、卵白含浸組織状大豆蛋白質素材ないし、比較対象品を得た。
【0028】
検討3 海老様食感を有する食品の調製1(卵白含浸の有無による比較)
実施例1、比較例1
表3の配合により、海老様食感を有する食品の調製法に従い、海老様食感を有する食品の調製を行った。
得られたサンプルを、「海老様食感を有する食品の評価法」に従い、評価を行った。評価結果を表4に記載した。
【0029】
表3 海老様食感を有する食品の配合
・魚すり身は、スケソウすり身を使用した。
・分離大豆蛋白質は、不二製油株式会社製「フジプロFM」を使用した。
・油脂は、不二製油株式会社製「菜種白絞油」を使用した。
・トランスグルタミナーゼ製剤は味の素株式会社製「アクティバTGK」を使用した。
・卵白含浸組織状大豆蛋白質素材は、検討1で調製したものを使用した。
【0030】
○海老様食感を有する食品の調製法
1 卵白を含浸させた組織状大豆蛋白質素材を、カッターで最長辺5mmとなるようにカットした。
2 魚肉すり身、分離大豆蛋白質、油脂、水(配合表で「水」と表記)をカッターへ入れ,0℃まで擂潰した。
3 食塩を入れ、カッターで,5分間擂潰した。
4 砂糖、グルタミン酸ソーダを添加し、カッターで,4分間擂潰した。
5 トランスグルタミナーゼ製剤、澱粉、延ばし水を入れ、カッターで,3分間擂潰した。
6 1で調製した、卵白を含浸させた組織状大豆蛋白質素材のカット品を添加し、ミキサーで撹拌した。
7 スタッファーで押し出し成形した。径はφ5mmで行った。
8 40℃ 20分間 調味液に入れ加熱した。
9 蒸し器で90℃、15分間加熱した。
【0031】
○海老様食感を有する食品の評価法
海老の食経験があるパネラー5名により、以下のポイントについて、合議により評価を行った。
すべてのポイントにおいて、3点以上のものを合格と判断した。
A噛みだし時の食感
5点 本物の海老と同等と思えるもの。
4点 本物の海老には若干劣るが、ほぼ同等と思えるもの。
3点 本物の海老には劣るが、許容範囲と思えるもの。
2点 本物の海老に明らかに劣るもの。
1点 本物の海老とは思えないもの。

B 咀嚼時の食感
5点 本物の海老と同等と思えるもの。
4点 本物の海老には若干劣るが、ほぼ同等と思えるもの。
3点 本物の海老には劣るが、許容範囲と思えるもの。
2点 本物の海老に明らかに劣るもの。
1点 本物の海老とは思えないもの。

C 嚥下時の喉越し
5点 本物の海老と同等と思えるもの。
4点 本物の海老には若干劣るが、ほぼ同等と思えるもの。
3点 本物の海老には劣るが、許容範囲と思えるもの。
2点 本物の海老に明らかに劣るもの。
1点 本物の海老とは思えないもの。
【0032】
表4 評価結果
【0033】
考察
評価結果の通り、組織状大豆蛋白質素材を卵白にて含浸し、調製された食品は、海老のような食感が得られることが明らかとなった。
本発明にかかる、海老様食感を有する食品を得るためには、組織状大豆蛋白質素材を卵白にて含浸することが、発明特定事項であることが明示された。
【0034】
検討4 海老様食感を有する食品の調製2(組織状大豆蛋白質素材の種類による比較)
実施例2〜3
表5の配合により、海老様食感を有する食品の調製法に従い、海老様食感を有する食品の調製を行った。
得られたサンプルを、「海老様食感を有する食品の評価法」に従い、評価を行った。評価結果を表6に記載した。
【0035】
表5 配合
・魚すり身は、スケソウすり身を使用した。
・分離大豆蛋白質は、不二製油株式会社製「フジプロFM」を使用した。
・油脂は、不二製油株式会社製「菜種白絞油」を使用した。
・トランスグルタミナーゼ製剤は味の素株式会社製「アクティバTGK」を使用した。
・卵白含浸組織状大豆蛋白質素材は、検討1で調製したものを使用した。
【0036】
表6 評価結果
【0037】
考察
評価結果の通り、原料に炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムを添加し、調製された組織状大豆蛋白質素材を使用した場合に、より好ましい海老様食感を有する食品が得られることが明らかとなった。
【0038】
検討4 海老様食感を有する食品の調製3(食塩量の検討)
実施例4〜7
表7の配合により、海老様食感を有する食品の調製法に従い、海老様食感を有する食品の調製を行った。
得られたサンプルを、「海老様食感を有する食品の評価法」に従い、評価を行った。評価結果を表8に記載した。
【0039】
表7 海老様食感を有する食品の配合
・魚すり身は、スケソウすり身を使用した。
・分離大豆蛋白質は、不二製油株式会社製「フジプロFM」を使用した。
・油脂は、不二製油株式会社製「菜種白絞油」を使用した。
・トランスグルタミナーゼ製剤は味の素株式会社製「アクティバTGK」を使用した。
・卵白含浸組織状大豆蛋白質素材は、検討1で調製したものを使用した。
【0040】
表8 評価結果
【0041】
考察
評価結果の通り、魚肉すり身が原料の50〜60重量%であり、魚肉すり身に対し、食塩が1.4〜2.5重量%とした場合に、より好ましい海老様食感を有する食品が得られることが明らかとなった。
【0042】
検討5 海老様食感を有する食品の調製4(トランスグルタミナーゼの検討)
比較例2
表9の配合により、海老様食感を有する食品の調製法に従い、海老様食感を有する食品の調製を行った。
得られたサンプルを、「海老様食感を有する食品の評価法」に従い、評価を行った。評価結果を表10に記載した。
【0043】
表9 海老様食感を有する食品の配合
・魚すり身は、スケソウすり身を使用した。
・分離大豆蛋白質は、不二製油株式会社製「フジプロFM」を使用した。
・油脂は、不二製油株式会社製「菜種白絞油」を使用した。
・卵白含浸組織状大豆蛋白質素材は、検討1で調製したものを使用した。
【0044】
表10 評価結果
【0045】
考察
評価結果の通り、トランスグルタミナーゼを使用することが、海老様食感を有する食品を得るために不可欠であることが明らかとなった。
【0046】
検討6 澱粉有無の検討
実施例8
表11の配合により、海老様食感を有する食品の調製法に従い、海老様食感を有する食品の調製を行った。
得られたサンプルを、「海老様食感を有する食品の評価法」に従い、評価を行った。評価結果を表12に記載した。
【0047】
表11 海老様食感を有する食品の配合
・魚すり身は、スケソウすり身を使用した。
・分離大豆蛋白質は、不二製油株式会社製「フジプロFM」を使用した。
・油脂は、不二製油株式会社製「菜種白絞油」を使用した。
・卵白含浸組織状大豆蛋白質素材は、検討1で調製したものを使用した。
【0048】
表12 評価結果
【0049】
考察
評価結果の通り、澱粉を使用しない場合でも、海老様食感を有する食品の調製をすることができた。
【要約】
本発明は、価格が高騰する海老の代替として使用することのできる、海老様食感を有する食品を提供することを課題とする。
以下の工程を経る、海老様食感を有する食品を調製することができる。
1.卵白を含浸させた組織状大豆蛋白質素材、魚肉すり身、食塩、トランスグルタミナーゼ、水を混合する工程。
2.押し出し成形機でφ3〜8mm径から押し出し成形する工程。
3.30〜50℃で加熱する工程。
4.80〜100℃で加熱する工程。