特許第5692481号(P5692481)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5692481
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】塗料組成物及び塗装物品
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/04 20060101AFI20150312BHJP
   C09D 133/04 20060101ALI20150312BHJP
   C09D 167/00 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   C09D175/04
   C09D133/04
   C09D167/00
【請求項の数】5
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-550954(P2014-550954)
(86)(22)【出願日】2014年5月26日
(86)【国際出願番号】JP2014063893
【審査請求日】2014年11月10日
(31)【優先権主張番号】特願2013-186025(P2013-186025)
(32)【優先日】2013年9月9日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090343
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 百合子
(74)【代理人】
【識別番号】100129160
【弁理士】
【氏名又は名称】古館 久丹子
(74)【代理人】
【識別番号】100177460
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 智子
(72)【発明者】
【氏名】中水 正人
【審査官】 澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−508600(JP,A)
【文献】 特開2009−46642(JP,A)
【文献】 特開昭60−47075(JP,A)
【文献】 米国特許第3998768(US,A)
【文献】 国際公開第2002/088215(WO,A2)
【文献】 特開平7−188603(JP,A)
【文献】 特開2005−179662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−10/00,101/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基含有アクリル樹脂(A)及び水酸基含有ポリエステル樹脂(B)を含有する主剤と、ポリイソシアネート化合物(C)を含有する硬化剤とを含む塗料組成物であって、
水酸基含有アクリル樹脂(A)が、水酸基価100〜200mgKOH/g、ガラス転移温度−20℃未満であり、
重合性不飽和モノマー(a1)〜(a3)の合計量を基準として、
メチルメタクリレート(a1)15〜35質量%、
炭素数4〜9のヒドロキシアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a2)5〜30質量%、及び
その他の重合性不飽和モノマー(a3)35〜80質量%
を反応させて得られる水酸基含有アクリル樹脂であり、
水酸基含有ポリエステル樹脂(B)が、水酸基価50〜200mgKOH/g、数平均分子量2,000〜20,000であって、ヌレート構造を有する環状ポリオール化合物(b1)を含む多価アルコールと多塩基酸との反応によって得られる水酸基含有ポリエステル樹脂であり、
ポリイソシアネート化合物(C)がビウレット基含有ポリイソシアネート化合物及びアロファネート基含有ポリイソシアネート化合物からなる群から選択される少なくとも1つであり、
得られる塗膜のガラス転移温度が20〜60℃である
塗料組成物。
【請求項2】
主剤中の樹脂固形分質量を基準として、水酸基含有アクリル樹脂(A)を10〜80質量部、水酸基含有ポリエステル樹脂(B)を20〜90質量部含有する請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
得られる塗膜の架橋間分子量が300〜1000である請求項1又は請求項2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
プラスチック基材に、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の塗料組成物を塗装する方法。
【請求項5】
プラスチック基材に、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の塗料組成物を塗装して得られる塗装物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック基材に対して優れた耐擦り傷性、硬度、外観、付着性及び耐薬品性を有する塗膜を形成することができる塗料組成物及び塗装物品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信機器、家電製品、自動車用部品などの各種工業製品にABS樹脂、ポリプロピレン、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂等のプラスチック基材が用いられている。かかる工業製品には耐擦り傷性、硬度、外観、付着性、耐薬品性などが求められる。
【0003】
種々の工業製品には、第一層目は基材への付着性に優れる塗料、第二層目は基材の耐擦り傷性に優れる塗料といったように、機能の異なる複数種の塗料を塗り重ねて複層塗膜を形成させる工業製品もあるが、なかには、一種類の塗料による1コート1ベーク(1回塗装1回焼付け)の塗装工程において付着性と各種塗膜性能とを成立させることが求められる工業製品もあり、課題としては1コート1ベークが求められる方が難しい。また、耐薬品性としては、近年特に、液状ファンデーション、化粧下地、コンシーラー、日焼け止め剤、美容液、乳液、ハンドクリームなどの化粧料のような、紫外線吸収剤、防腐剤及び乳化剤を含有する皮膚外用組成物が塗膜面に付着したまま放置されても塗膜の付着不良、外観低下及び硬度低下等が発生しないこと(以下、「紫外線吸収剤等を含有する組成物に対する耐性」と略記することがある)が求められている。
【0004】
例えば特許文献1には耐傷性と耐酸性に優れた塗料として、水酸基含有アクリル樹脂と多官能イソシアネート化合物とを含有するクリヤー塗料組成物であって、前記水酸基含有アクリル樹脂が、少なくとも一部のモノマーとして炭素数4〜9のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを用いて得た水酸基含有アクリル樹脂であり、前記多官能イソシアネート化合物のうちの少なくとも一部がイソシアヌレート型イソシアネート化合物であり、特定のソフトセグメント部を、前記水酸基含有アクリル樹脂及び多官能イソシアネート化合物の固形分全量に対して25〜50質量%有し、前記水酸基含有アクリル樹脂及び多官能イソシアネート化合物の固形分全量に対するラクトン含有モノマー由来のソフトセグメント部の割合を4.5質量%以下とし、かつ、得られる硬化塗膜の動的ガラス転移温度が30〜60℃の範囲となるように調製されていることを特徴とする自動車用クリヤー塗料組成物が開示されている。
【0005】
しかしながら当該塗料は主に金属基材に適したものとなっており、プラスチック基材に対する1コート1ベーク塗装工程での付着性及び紫外線吸収剤等を含有する組成物に対する耐性は十分ではない。
【0006】
特許文献2には耐洗車傷性、耐酸性、耐候性に優れた塗料として、水酸基価が80〜220mgKOH/gであり、ガラス転移温度が−50℃以上、かつ0℃未満であって、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートに由来する単位を25〜55質量%含有する水酸基含有樹脂(A)、水酸基価が80〜220mgKOH/gであって、ガラス転移温度が0〜50℃である水酸基含有樹脂(B)、及びポリイソシアネート化合物から成る架橋剤(C)とを必須成分とする塗料組成物であって、水酸基含有樹脂(A)と水酸基含有樹脂(B)との含有割合が、樹脂固形分質量比で、95/5〜50/50であり、かつ、水酸基含有樹脂(A)および水酸基含有樹脂(B)の合計の水酸基に対する架橋剤(C)の官能基であるイソシアネート基の含有割合が、NCO/OHのモル比で0.5〜1.5であることを特徴とする塗料組成物が開示されている。
【0007】
しかしながら当該塗料は主に金属基材に適したものとなっており、プラスチック基材に対する1コート1ベーク塗装工程での付着性、紫外線吸収剤等を含有する組成物に対する耐性は十分ではない。
【0008】
特許文献3には、ラクトン変性アクリル樹脂とポリカーボネートジオールを含有することを特徴とする自己復元塗料組成物が開示されている。当該コーティング樹脂組成物は1コート1ベーク塗装工程でのABS板への耐擦傷性に優れているが、紫外線吸収剤等を含有する組成物に対する耐性は十分ではない。
【0009】
特許文献4にはイソシアネート基当量が100〜280g/eqの範囲であるポリイソシアネート化合物(A)と、平均ガラス転移温度(Tg)が−55℃以上−9℃未満であり、1分子あたりの水酸基の平均官能基数が4〜20であり、かつ、数平均分子量(Mn)が3000〜15000の範囲であるアクリル系ポリオール(B)とを、両者の比率[ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基のモル数]/[アクリル系ポリオール(B)中の水酸基のモル数]が0.75〜1.5の範囲となるような割合で含有することを特徴とするコーティング樹脂組成物が開示されている。当該コーティング樹脂組成物は1コート1ベーク塗装工程でのABS板への耐傷性、及び基材密着性に優れているが、紫外線吸収剤等を含有する組成物に対する耐性は十分ではない。
【0010】
特許文献5にはイソシアネート基当量が100〜280g/eqの範囲であるポリイソシアネート化合物(A)と、平均Tgが−50〜−10℃であり、1分子あたりの水酸基の平均官能基数が4〜20であり、かつ、数平均分子量(Mn)が1000〜3000の範囲であるポリエステルポリオール(B)とを、両者の比率[ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基のモル数]/[ポリエステルポリオール(B)中の水酸基のモル数]が0.75〜1.5の範囲となるような割合で含有することを特徴とするコーティング樹脂組成物が開示されている。当該コーティング樹脂組成物は1コート1ベーク塗装工程でのABS板への耐傷性及び基材密着性に優れているが、紫外線吸収剤等を含有する組成物に対する耐性は十分ではない。
【0011】
特許文献6には生じた傷が短時間に消失する自己修復性の塗膜を各種基材の表面に形成できる塗料組成物として、水酸基価が40〜80mgKOH/gであり、かつガラス転移温度が−40〜−10℃であるポリエステルポリオール(A)、および水酸基価が35〜65mgKOH/gであり、かつガラス転移温度が50〜70℃であるポリエステルポリオール(B)、ならびに脂肪族ジイソシアネートの三量体(C)を含有し、かつ、(A)成分と(B)成分の使用重量比〔(A)/(B)〕が45/55〜85/15であり、かつ、(A)成分と(B)成分の水酸基の合計モル数(OH)と(C)成分のイソシアネート基のモル数(NCO)との比〔NCO/OH〕が0.8〜2である塗料組成物が開示されている。しかし当該塗料組成物は1コート1ベーク塗装工程での自己修復性及び密着性に優れているが、紫外線吸収剤等を含有する組成物に対する耐性は十分ではない。
【0012】
特許文献7には耐薬品性、例えば、日焼け防止に用いるローション、ハンドクリームが付着したまま高温下で長時間曝されてもアクリル樹脂フィルム表面が荒れることなく、また、深絞り形状の成形品に成形した場合フィルム表面に割れが発生することがなく、且つ、表面硬度を備えた熱成形用フィルムとして、カルボキシル基と水酸基を有し、固形分酸価が15〜150mgKOH/gでありガラス転移温度が70〜140℃であるビニル系重合体(A)と、ポリイソシアネート化合物(B)を含有し、ポリイソシアネート化合物(B)の含有量がビニル系重合体(A)の固形分水酸基価2〜80mgKOH/gと反応する含有量であることを特徴とする熱成形用フィルム向け硬化性樹脂組成物が開示されている。しかし当該熱成型用フィルム向け硬化性樹脂組成物は1コート1ベーク塗装工程でのABS板への付着性及び耐擦り傷性が十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】日本国特開2006−176634号公報
【特許文献2】日本国特開2009−46642号公報
【特許文献3】日本国特開2012−97127号公報
【特許文献4】日本国特開2012−97173号公報
【特許文献5】日本国特開2012−87183号公報
【特許文献6】日本国特開2012−140614号公報
【特許文献7】日本国特開2012−97248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明はこれらの点を考慮してなされたものであり、1コート1ベーク塗装工程において、プラスチック基材に対して優れた耐擦り傷性、硬度、外観、付着性及び紫外線吸収剤等を含有する組成物に対する耐性を有する塗膜を形成することができる塗料組成物及び塗装物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の水酸基含有アクリル樹脂及び水酸基含有ポリエステル樹脂を含有する主剤、及び特定のポリイソシアネート化合物を含有する硬化剤とを含み、得られる塗膜のガラス転移温度が20〜60℃である塗料組成物を用いることにより、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明は、以下の塗料組成物、ならびに、該塗料組成物を塗装して得られる物品を提供するものである。
本発明は、以下の(1)〜(5)に関する。
(1)水酸基含有アクリル樹脂(A)及び水酸基含有ポリエステル樹脂(B)を含有する主剤と、ポリイソシアネート化合物(C)を含有する硬化剤とを含む塗料組成物であって、
水酸基含有アクリル樹脂(A)が、水酸基価100〜200mgKOH/g、ガラス転移温度−20℃未満であり、
重合性不飽和モノマー(a1)〜(a3)の合計量を基準として、
メチルメタクリレート(a1)15〜35質量%、
炭素数4〜9のヒドロキシアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a2)5〜30質量%、及び
その他の重合性不飽和モノマー(a3)35〜80質量%
を反応させて得られる水酸基含有アクリル樹脂であり、
水酸基含有ポリエステル樹脂(B)が、水酸基価50〜200mgKOH/g、数平均分子量2,000〜20,000であって、ヌレート構造を有する環状ポリオール化合物(b1)を含む多価アルコールと多塩基酸との反応によって得られる水酸基含有ポリエステル樹脂であり、
ポリイソシアネート化合物(C)がビウレット基含有ポリイソシアネート化合物及びアロファネート基含有ポリイソシアネート化合物からなる群から選択される少なくとも1つであり、
得られる塗膜のガラス転移温度が20〜60℃である
塗料組成物。
(2)主剤中の樹脂固形分質量を基準として、水酸基含有アクリル樹脂(A)を10〜80質量部、水酸基含有ポリエステル樹脂(B)を20〜90質量部含有する前記(1)に記載の塗料組成物。
(3)得られる塗膜の架橋間分子量が300〜1000である前記(1)又は(2)に記載の塗料組成物。
(4)プラスチック基材に、前記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の塗料組成物を塗装する方法。
(5)プラスチック基材に、前記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の塗料組成物を塗装して得られる塗装物品。
【発明の効果】
【0017】
本発明の塗料組成物によれば、1コート1ベーク塗装工程において、プラスチック基材に対して優れた耐擦り傷性、硬度、外観、付着性及び紫外線吸収剤等を含有する組成物に対する耐性を有する塗膜を形成することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の塗料組成物についてさらに詳細に説明する。
なお、本明細書において、「質量」は「重量」のことを意味するものとする。
【0019】
本発明の塗料組成物は、水酸基含有アクリル樹脂(A)及び水酸基含有ポリエステル樹脂(B)を含有する主剤と、ポリイソシアネート化合物(C)を含有する硬化剤とを含む。
【0020】
(主剤)
<水酸基含有アクリル樹脂(A)>
本発明において水酸基含有アクリル樹脂(A)は、分子中に水酸基を含有するアクリル樹脂を指す。水酸基含有アクリル樹脂(A)は、重合性不飽和モノマーである、メチルメタクリレート(a1)、炭素数4〜9のヒドロキシアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a2)及びその他の重合性不飽和モノマー(a3)を常法により共重合せしめることによって合成することができる。
【0021】
炭素数4〜9のヒドロキシアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a2)としては、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、7−ヒドロキシヘプチル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、7−メチル−8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、2−メチル−8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、9−ヒドロキシノニル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。炭素数4〜9のヒドロキシアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a2)としては、耐擦り傷性、外観、付着性及び紫外線吸収剤等を含有する組成物に対する耐性に優れるという観点から、なかでも4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0022】
その他の重合性不飽和モノマー(a3)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等の多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのモノエステル化物、該多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのモノエステル化物にε−カプロラクトンを開環重合した化合物、等の炭素数4〜9のヒドロキシアルキル基を有する重合性不飽和モノマー以外の水酸基含有重合性不飽和モノマー;
メチルアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;
N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート;
アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドメチルエーテル、N−メチロールアクリルアミドブチルエーテル等の(メタ)アクリルアミド又はその誘導体;
2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムブロマイド等の第4級アンモニウム塩基含有モノマー;
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の(メタ)アクリルアミド−アルカンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート等のスルホアルキル(メタ)アクリレート;
アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香環含有重合性不飽和モノマー;
アリルメタクリレート等の多ビニル化合物;
γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等の加水分解性シリル基含有重合性不飽和モノマー等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0023】
なかでも、その他の重合性不飽和モノマー(a3)として、耐擦り傷性、硬度、外観、付着性及び紫外線吸収剤等を含有する組成物に対する耐性に優れる塗膜を得る観点から、炭素数4〜9のヒドロキシアルキル基を有する重合性不飽和モノマー以外の水酸基含有重合性不飽和モノマー、(メタ)アクリル酸のアルキルエステルを含有することが好ましい。
【0024】
炭素数4〜9のヒドロキシアルキル基を有する重合性不飽和モノマー以外の水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、特に2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0025】
(メタ)アクリル酸のアルキルエステルとしては、特に、アルキル部分の炭素数が4〜8である重合性不飽和モノマーが好ましく、なかでも、得られる塗膜の耐擦り傷性、硬度、外観、付着性及び紫外線吸収剤等を含有する組成物に対する耐性等の観点から、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0026】
尚、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル又はメタクリロイルを意味し、「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド又はメタクリルアミドを意味する。
【0027】
前記モノマー成分における、メチルメタクリレート(a1)、炭素数4〜9のヒドロキシアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a2)、及びその他の重合性不飽和モノマー(a3)の使用割合は、得られる塗膜の耐擦り傷性、硬度、外観、付着性及び紫外線吸収剤等を含有する組成物に対する耐性等の観点から、モノマー成分(重合性不飽和モノマー(a1)〜(a3))の合計質量を基準として、下記の範囲内である。
【0028】
メチルメタクリレート(a1):15〜35質量%、好ましくは20〜30質量%、さらに好ましくは22〜27質量%、
炭素数4〜9のヒドロキシアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a2):5〜30質量%、好ましくは10〜25質量%、さらに好ましくは12〜20質量%、
その他の重合性不飽和モノマー(a3):35〜80質量%、好ましくは45〜70質量%、さらに好ましくは43〜66質量%。
【0029】
前記の重合性不飽和モノマー(a1)〜(a3)の共重合は、溶液重合法による共重合が好適であり、例えば、重合性不飽和モノマーとラジカル重合開始剤の混合物を、有機溶剤に溶解もしくは分散せしめ、通常、約80℃〜約200℃の温度で、1〜10時間程度撹拌しながら加熱して重合させる方法を挙げることができる。
【0030】
本発明において水酸基含有アクリル樹脂(A)は、水酸基価100〜200mgKOH/g、好ましくは105〜170mgKOH/g、さらに好ましくは110〜150mgKOH/g、かつ、ガラス転移温度−20℃未満、好ましくは−23℃未満、さらに好ましくは−25℃未満の水酸基含有アクリル樹脂である。水酸基含有アクリル樹脂(A)の水酸基価が100mgKOH/g以上であると紫外線吸収剤等を含有する組成物に対する耐性が良好となり、200mgKOH/g以下であると得られる塗膜の耐擦り傷性が良好となるため好ましい。また、ガラス転移温度が−20℃を超えると塗膜の耐擦り傷性や硬度が劣る場合がある。
【0031】
なお、本明細書において、水酸基含有アクリル樹脂(A)のガラス転移温度Tgは、下記式により算出される値である。
1/Tg(K)=W1/T1+W2/T2+・・・Wn/Tn
Tg(℃)=Tg(K)−273
式中、W1、W2、・・・Wnは各モノマーの質量分率であり、T1、T2・・・Tnは各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度Tg(K)である。
なお、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度は、POLYMERHANDBOOKFourthEdition,J.Brandrup,E.h.Immergut,E.A.Grulke編(1999年)による値であり、該文献に記載されていないモノマーのガラス転移温度は、該モノマーのホモポリマーを重量平均分子量が50,000程度になるようにして合成し、そのガラス転移温度を示差走査型熱分析により測定したときの値を使用する。
【0032】
本発明において水酸基含有アクリル樹脂(A)の重量平均分子量は、耐擦り傷性、硬度、外観、付着性及び紫外線吸収剤等を含有する組成物に対する耐性の点から、5,000〜33,000、好ましくは8,000〜30,000の範囲である。
【0033】
また本明細書において、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。カラムは、「TSKgel G−4000H×L」、「TSKgel G−3000H×L」、「TSKgel G−2500H×L」、「TSKgel G−2000H×L」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1ml/分、検出器;RIの条件で行ったものである。
【0034】
本発明において水酸基含有アクリル樹脂(A)の含有量は、主剤中の合計樹脂固形分質量を基準として10〜80質量部であることが好ましく、より好ましくは55〜75質量部である。前記範囲であると、得られる塗膜の耐擦り傷性、硬度、外観、付着性及び紫外線吸収剤等を含有する組成物に対する耐性等の観点から、好適である。
【0035】
<水酸基含有ポリエステル樹脂(B)>
水酸基含有ポリエステル樹脂(B)は、一般に多価アルコール及び多塩基酸をそれ自体既知の方法で、水酸基過剰でエステル化反応せしめることによって得ることができる。多価アルコールは1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物であり、多塩基酸は1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物である。
【0036】
本発明の塗料組成物において水酸基含有ポリエステル樹脂(B)は、多価アルコールとしてヌレート構造を有する環状ポリオール化合物(b1)を含む。
【0037】
ヌレート構造を有する環状ポリオール化合物(b1)としては、例えば、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(ヒドロキシプロピル)イソシアヌレートおよびトリス(ヒドロキシブチル)イソシアヌレート等のトリス(ヒドロキシアルキル)イソシアヌレート、該トリス(ヒドロキシアルキル)イソシアヌレートのε−カプロラクトン変性体、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ジオール化合物およびジカルボン酸を、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートおよびジオール化合物の中の水酸基がジカルボン酸中のカルボキシル基に対し過剰な状態で反応させて得られるトリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのエステル化物並びにヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物とジオール化合物とを、ジオール化合物中の水酸基がヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基に対し過剰な状態で反応させて得られる反応生成物等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0038】
これらのなかでも、得られる塗膜の紫外線吸収剤等を含有する組成物に対する耐性の観点から、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートおよびトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのε−カプロラクトン変性体が好ましく、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートがさらに好ましい。
【0039】
成分(b1)以外の多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3−メチル−4,3−ペンタンジオール、3−メチル−4,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ヒドロキシピヴァリン酸ネオペンチルグリコールエステルなどの2価アルコール;これらの2価アルコールにε−カプロラクトンなどのラクトン類を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートなどのエステルジオール類;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのポリエーテルジオール類;プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイドなどのα−オレフィンエポキシド、カージュラE10[シェル化学社製、商品名、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル]などのモノエポキシ化合物;グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニットなどの3価以上のアルコール;これらの3価以上のアルコールにε−カプロラクトンなどのラクトン類を付加させたポリラクトンポリオール類;1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、水添ビスフェノールA及び水添ビスフェノールFなど脂環族多価アルコールなどが挙げられる。
【0040】
上記水酸基含有ポリエステル樹脂(B)におけるヌレート構造を有する環状ポリオール化合物(b1)の含有割合は、得られる塗膜の紫外線吸収剤等を含有する組成物に対する耐性の点から、アルコール成分の総量を基準として、1〜75mol%の範囲内であることが好ましく、10〜60mol%の範囲内であることがより好ましい。ヌレート構造を有する環状ポリオール化合物(b1)の含有割合が前記範囲であると紫外線吸収剤等を含有する組成物に対する耐性が良好となる。
【0041】
多塩基酸は、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸などの芳香族多塩基酸及びその無水物;ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸などの脂環族ジカルボン酸及びその無水物;アジピン酸、セバシン酸、スベリン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、クロロマレイン酸、フマル酸、ドデカン二酸、ピメリン酸、アゼライン酸、イタコン酸、シトラコン酸、ダイマー酸などの脂肪族多塩基酸及びその無水物;これらのジカルボン酸のメチルエステル、エチルエステルなどの低級アルキルエステル;トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメット酸、トリメシン酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、テトラクロロヘキセン多塩基酸及びその無水物などの3価以上の多塩基酸などが挙げられる。
【0042】
水酸基の導入は、例えば、1分子中に3個以上の水酸基を有する多価アルコールを併用することによって行なうことができる。
【0043】
また上記多塩基酸と多価アルコールの反応時に、さらに必要に応じて一塩基酸、油成分(この脂肪酸も含む)などを用いてもよい。一塩基酸としては、例えば安息香酸やt−ブチル安息香酸などが挙げられ、油成分としては、例えばヒマシ油、脱水ヒマシ油、サフラワー油、大豆油、あまに油、トール油、ヤシ油及びこれらの脂肪酸などが挙げられ、これらは1種又は2種以上使用できる。さらにポリエステル樹脂は、必要に応じて、ブチルグリシジルエーテル、アルキルフェニルグリシジルエーテル、ネオデカン酸グリシジルエステルなどのエポキシ化合物で変性されていてもよい。
【0044】
本発明では、水酸基含有ポリエステル樹脂(B)は、得られる塗膜の耐擦り傷性、硬度、外観、付着性及び紫外線吸収剤等を含有する組成物に対する耐性等の観点から、水酸基価50〜200mgKOH/g、好ましくは50〜150gKOH/g、数平均分子量2,000〜20,000、好ましくは2,000〜15,000である。
【0045】
水酸基含有ポリエステル樹脂(B)の含有量は、得られる塗膜の耐擦り傷性、硬度、外観、付着性及び紫外線吸収剤等を含有する組成物に対する耐性等の観点から、主剤中の合計固形分を基準として、20〜90質量部であることが好ましく、より好ましくは25〜45質量部の範囲である。
【0046】
本発明の主剤は、水酸基含有アクリル樹脂(A)及び水酸基含有ポリエステル樹脂(B)を必須成分とするものであり、さらに必要に応じて水酸基含有ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂及びエポキシ樹脂等の樹脂成分を含有することができる。
【0047】
(硬化剤)
本発明で用いられる硬化剤は、ポリイソシアネート化合物(C)を含有するものである。
【0048】
<ポリイソシアネート化合物(C)>
ポリイソシアネート化合物(C)は、アロファネート基含有ポリイソシアネート化合物及びビウレット基含有ポリイソシアネート化合物からなる群から選択される少なくとも1つを必須成分として含むものである。
【0049】
上記アロファネート基含有ポリイソシアネート化合物は、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート及び芳香族ポリイソシアネート等から選ばれるポリイソシアネートを既知の方法でアロファネート化反応させて得られる化合物である。
【0050】
前記ビウレット基含有ポリイソシアネート化合物は、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート及び芳香族ポリイソシアネート等から選ばれるポリイソシアネートを既知の方法でビウレット化反応させて得られる化合物である。
【0051】
前記脂肪族ポリイソシアネートとしては、ジイソシアネート(例えば、トリメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどのC2−16アルカンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなど)、ポリイソシアネート(例えば、リジンエステルトリイソシアネート、1,4,8−トリイソシアナトオクタン、1,6,11−トリイソシアナトウンデカン、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアナトヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナト−5−イソシアナトメチルオクタンなどのC6−20アルカントリイソシアネートなど)などが挙げられる。
【0052】
前記脂環族ポリイソシアネートとしては、ジイソシアネート(例えば、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−又は1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、ノルボルナンジイソシアネートなど)、ポリイソシアネート(例えば、1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,6−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ[2.2.1]−ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンなどのトリイソシアネートなど)が挙げられる。
【0053】
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、ジイソシアネート(例えば、1,3−または1,4−キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物、ω,ω’−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−または1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4’−または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネートなど)、ポリイソシアネート(例えば、1,3,5−トリイソシアナトメチルベンゼンなどのトリイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、2,4,6−トリイソシアネートトルエンなどのトリイソシアネート、例えば、4,4’−ジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネートなどのテトライソシアネートなど)が挙げられる。
【0054】
これらのうち、特に脂肪族ポリイソシアネートのビウレット基含有ポリイソシアネート化合物やアロファネート基含有ポリイソシアネート化合物が、得られる塗膜の耐擦り傷性、硬度、外観、付着性及び紫外線吸収剤等を含有する組成物に対する耐性等の点から好適に使用できる。
【0055】
前記脂肪族ポリイソシアネートのなかでも特にヘキサメチレンジイソシアネートが得られる塗膜の耐擦り傷性、硬度、外観、付着性及び紫外線吸収剤等を含有する組成物に対する耐性等の点から好適に使用できる。
【0056】
ポリイソシアネート化合物(C)は、前記アロファネート基含有ポリイソシアネート化合物及び/又はビウレット基含有ポリイソシアネート化合物以外のポリイソシアネート化合物を必要に応じて含むことができる。
【0057】
例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート類;これらの脂肪族ポリイソシアネートのイソシアヌレート環付加物、ウレトジオンタイプ付加物;イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4−もしくは−2,6−ジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート類;これらの脂環族ジイソシアネートのイソシアヌレート環付加物;キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート化合物;これらの芳香族ジイソシアネートのイソシアヌレート環付加物;水添MDI及び水添MDIの誘導体;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、ポリアルキレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどのポリオールの水酸基にイソシアネート基が過剰量となる比率でポリイソシアネート化合物を反応させてなるウレタン化付加物;これらのウレタン化付加物のイソシアヌレート環付加物等を挙げることができる。
【0058】
上記ポリイソシアネート化合物(C)の使用量は、この中に含まれるイソシアネート基(NCO)が、上記主剤中の水酸基(OH)に対して、NCO/OHの当量比で、通常、0.5〜2.0、好ましくは0.8〜1.5となる範囲内となるように選択されることが適当である。
【0059】
本発明の塗料組成物では、さらに必要に応じて、有機溶剤、硬化触媒、顔料、顔料分散剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤等の、通常塗料の分野で用いられる塗料用添加剤を適宜組み合わせて主剤及び/又は硬化剤に配合することができる。
【0060】
前記有機溶剤としては特に限定されるものではなく、例えば炭化水素系、エステル系、エーテル系、アルコール系、ケトン系などの通常の塗料用溶剤が使用できる。
【0061】
前記硬化触媒としては、例えば、オクチル酸錫、ジブチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫脂肪酸塩、2−エチルヘキサン酸鉛、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、脂肪酸亜鉛類、ナフテン酸コバルト、オクチル酸カルシウム、ナフテン酸銅、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネートなどの有機金属化合物が挙げられ、これらは1種又は2種以上混合して用いることができる。これらには、さらに必要に応じて第三級アミン、りん酸化合物など公知のウレタン硬化触媒を併用することもできる。本発明の塗料組成物が硬化触媒を含有する場合、硬化触媒の使用量は、通常、塗料組成物中の樹脂固形分100質量部に対して0.001〜2質量部、好ましくは0.01〜1質量部の範囲内が適当である。
【0062】
前記顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムエロー、酸化クロム、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリン顔料、スレン系顔料、ペリレン顔料等の着色顔料;タルク、クレー、カオリン、バリタ、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、アルミナホワイト等の体質顔料;アルミニウム粉末、雲母粉末、酸化チタンで被覆した雲母粉末等のメタリック顔料等を挙げることができる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0063】
本発明の塗料組成物がクリヤ塗料として使用される場合であって、顔料を含有する場合、顔料の配合量は、得られる塗膜の透明性を阻害しない程度の量であることが好ましく、例えば塗料組成物中の固形分100質量部を基準として、通常0.1〜20質量部の範囲内であることが好ましく、0.3〜10質量部の範囲内であることがより好ましく、0.5〜5質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0064】
また、本発明の塗料組成物が着色塗料として使用される場合であって、顔料を含有する場合、顔料の配合量は、塗料組成物中の固形分100質量部を基準として、通常1〜200質量部の範囲内であることが好ましく、2〜100質量部の範囲内であることがより好ましく、5〜50質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0065】
前記紫外線吸収剤としては、従来から公知のものが使用でき、例えば、ベンゾトリアゾール系吸収剤、トリアジン系吸収剤、サリチル酸誘導体系吸収剤、ベンゾフェノン系吸収剤等の紫外線吸収剤を挙げることができる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0066】
本発明の塗料組成物が、紫外線吸収剤を含有する場合、紫外線吸収剤の配合量は、塗料組成物中の固形分100質量部を基準として、0.1〜10質量部の範囲内であることが好ましく、0.2〜5質量部の範囲内であることがより好ましく、0.3〜2質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0067】
光安定剤としては、従来から公知のものが使用でき、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤を挙げることができる。
【0068】
本発明の塗料組成物が、光安定剤を含有する場合、光安定剤の配合量は、艶消し塗料組成物中の固形分100質量部を基準として、0.1〜10質量部の範囲内であることが好ましく、0.2〜5質量部の範囲内であることがより好ましく、0.3〜2質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0069】
本発明では、上記塗料組成物をプラスチック基材面に塗装して、塗装物品を得ることができる。プラスチック基材としては、特に限定されるものではなく、例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどに代表されるポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリカーボネート−ポリブチレンテレフタレート(PC/PBT)樹脂などの熱可塑性ポリエステル樹脂;アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル−スチレン−アクリレート(ASA)樹脂などのスチレン系樹脂;その他ポリメチルメタクリレート樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂などまたはこれらのハイブリッド樹脂や繊維強化プラスチック(Fiber-Reinforced Plastics)などの素材面を挙げることができる。これらの素材面は必要に応じて適宜、脱脂処理や表面処理がなされてもよい。さらに、プラスチック基材面に下塗り塗膜を形成させた後、本発明の塗料組成物を塗装してもよい。
【0070】
本発明の塗料組成物を塗装する方法は、特に限定されない。例えば、エアスプレー、エアレススプレー、回転霧化塗装機、浸漬塗装、刷毛などにより塗装することができる。
【0071】
本発明の塗料組成物による塗膜は、通常、硬化膜厚で通常3〜100μm、好ましくは3〜50μmの範囲内とすることができる。
【0072】
本発明の塗料組成物の塗膜形成方法における、加熱条件は特に限定されないが、50〜100℃、好ましくは50〜90℃で10〜90分保持することにより行なうことができる。熱によりプラスチック材料に変形が伴う場合の加熱条件は、例えばABS樹脂などを用いる場合には、50℃〜80℃で10〜90分保持することが好ましい。
【0073】
本発明の塗料組成物によって得られた塗膜は、耐擦り傷性、硬度、外観、付着性及び紫外線吸収剤等を含有する組成物に対する耐性等の点から、硬化塗膜のガラス転移温度が20〜60℃であり、好ましくは30〜55℃、さらに好ましくは35〜50℃である。上記ガラス転移温度は、動的粘弾性測定装置を用いて、測定試料として、80℃で30分間加熱硬化を行なった膜厚25μmの塗膜を短冊状の遊離膜(0.5cm×2cm)に調製したものを使用し、昇温速度3℃/分で、温度範囲−25〜100℃で、周波数11Hzの条件下でtanδ値を測定した時に、tanδの値が極大値を示す時の温度である。動的粘弾性測定装置としては、FTレオスペクトラDVE−V4(商品名、レオロジ社製)を用いることができる。
【0074】
本発明の塗料組成物によって得られた塗膜は、耐擦り傷性、硬度、外観、付着性及び紫外線吸収剤等を含有する組成物に対する耐性等の点から、硬化後の架橋間分子量が300〜1000であることが好ましく、より好ましくは350〜900、さらに好ましくは400〜800である。上記架橋間分子量は、上記の方法で測定した塗膜のガラス転移温度の値をFloryなどの下記のゴム粘弾性理論式にあてはめて求めた理論計算値である。
架橋間分子量(Mc)=3ρRT/Emin
[式中、Eminはゴム領域での貯蔵弾性率(dyne/cm)、ρは試料塗膜の比重(g/cm)を示し、Rは気体定数であって、R=8.31×10(erg/deg・mol)であり、Tは貯蔵弾性率がEminのときの絶対温度を示す。]
【実施例】
【0075】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。また、塗膜の膜厚は硬化塗膜に基づく。
【0076】
〔水酸基含有アクリル樹脂(A)の製造〕
製造例1
撹拌装置、温度計、還流冷却器、サーモスタットおよび滴下用ポンプを備えた反応容器に、酢酸ブチル60部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら125℃±3℃で攪拌し、この中に、メチルメタクリレート26部、4−ヒドロキシブチルアクリレート14部、n−ブチルアクリレ−ト24部、2−エチルヘキシルアクリレート24部、2−ヒドロキシエチルアクリレート12部および2,2’−アゾビスイソブチロニトリル2.0部の混合物を3時間かけて一定速度で滴下し、さらに同温度で1時間熟成させた。その後さらに2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.5部および酢酸ブチル21部の混合物を1時間かけて反応容器に滴下し、滴下終了後1時間熟成させ反応を終了した。
得られた水酸基含有アクリル樹脂(A−1)溶液は、固形分55%の均一な透明溶液であった。またアクリル樹脂の重量平均分子量は約21,000、水酸基価は113mgKOH/g、ガラス転移点温度は−29℃であった。
【0077】
製造例2〜19
上記製造例1において、モノマーの混合物を表1に示す配合組成とする以外は製造例1と同様の操作を行なって、固形分55%の水酸基含有アクリル樹脂(A−2)〜(A−19)溶液を得た。得られた各水酸基含有アクリル樹脂の重量平均分子量、水酸基価、ガラス転移温度を表1に併せて示す。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
〔水酸基含有ポリエステル樹脂(B)の製造〕
製造例20
撹拌機、温度計、精留塔および水分離器を装備した反応容器に、ヘキサヒドロ無水フタル酸136部、1,6−ヘキサンジオール83部、およびトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート78部を仕込み、窒素雰囲気下で160℃まで昇温した。
【0081】
その後、3時間かけて220℃まで昇温し、キシレンを加えて水を留去しながら還流下反応させた。所望の酸価になったところで冷却後、次いで酢酸ブチルで希釈して固形分50%のポリエステル樹脂(B−1)溶液を得た。このポリエステル樹脂(B−1)の数平均分子量は2,200であり、水酸基価106mgKOH/gであった。
【0082】
製造例21〜28
上記製造例20において、モノマー及び重合開始剤の混合物を表2に示す配合組成とする以外は製造例20と同様の操作を行なって、固形分50%の水酸基含有ポリエステル樹脂(B−2)〜(B−9)溶液を得た。得られた各水酸基含有ポリエステル樹脂の数平均分子量、水酸基価を表2に併せて示す。
【0083】
【表3】
【0084】
【表4】
【0085】
〔塗料組成物の製造〕
実施例及び比較例
表3に示す配合組成となるように成分(A)、成分(B)及び黒顔料を混合・攪拌して固形分約40%の各主剤を作成した。この主剤に表3に示す配合組成となるように成分(C)の硬化剤を加え、均一に混合した。次いで、得られた混合物に希釈溶剤を添加し、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度が25秒である塗料組成物を得た。
【0086】
尚、表3は固形分表示であり、表3中における(C−1)〜(C−3)は下記の通りである。
(C−1):デュラネート24A−90E、商品名、旭化成ケミカルズ社製、ヘキサメチレンジイソシアネートを原料とするビウレット基含有ポリイソシアネート化合物、固形分90%、イソシアネート基含有率21.2%
(C−2)XP2580:商品名、バイエル社製、ヘキサメチレンジイソシアネートを原料とするアロファネート基含有ポリイソシアネート化合物、固形分100%、イソシアネート基含有率19.5%
(C−3)スミジュールN3300:商品名、住友バイエルウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体、固形分100%、イソシアネート基含有率21.8%
また、表3に記載の黒顔料は分散剤(「ソルスパーズ37500」、商品名、ルーブリゾール社製)1部とあらかじめ混合させてから配合した。
【0087】
〔試験塗板の作製〕
ABS板(黒色、脱脂処理済み)に、上記のように製造した各塗料組成物を硬化膜厚で約25μmになるようにエアスプレー塗装を行ない、80℃で30分間加熱し硬化させて各試験塗板を得た。
【0088】
得られた各試験塗板を、下記の性能試験に供した。結果を表3に併せて示す。
【0089】
〔塗膜性能試験〕
耐擦り傷性:学振型摩擦堅牢試験機「RT−200」(商品名、大栄化学精機製作所社製)に、上記のようにして得られた試験塗板をセットした。摩擦子にNo.2000のサンドペーパーを両面テープで貼り付け、摩擦子に200gの重りを載せて、往復2回研磨することによって塗膜に傷を付けた。25℃で24時間静置した後に、塗膜のL15°値を測定し、傷を付ける前の塗膜のL15°値との差(ΔL15°)から下記の基準で評価した。
【0090】
L15°値の測定は、変角色差計「MA68II」(商品名、X−rite社製)を用いて、傷に対して垂直方向に光が入射する向きに対して受光角15度方向のL値(これをL15°値という)を読みとり、試験前後での差ΔL15°を計算した。ΔL15°が30を超えるものは不合格である。
【0091】
鉛筆硬度:JIS K 5600−5−4(1999)に準じて実施する。各試験塗板の塗膜面に対し約45°の角度に鉛筆の芯を当て、芯が折れない程度に強く塗膜面に押し付けながら、鉛筆を前方に均一な速さで約10mm動かした。当該操作を、場所を変えて5回繰り返し、塗膜に鉛筆芯の痕がつかない最も硬い鉛筆の硬度記号を鉛筆硬度とした。
【0092】
付着性:各試験塗板の塗膜面に素地に達するようにカッターで切り込み線を入れ、大きさ2mm×2mmのマス目を100個作った。続いて、該塗膜面にセロハン粘着テープ及び布粘着テープを貼着し、20℃においてそれを急激に剥離した後に塗膜が残存しているマス目の数を調べ、下記の基準で評価した。
【0093】
◎:セロハン粘着テープを剥離したときに塗膜が残存しているマス目の数が100個であり、かつ、布粘着テープを剥離したときに塗膜が残存しているマス目の数が100個である
○:セロハン粘着テープを剥離したときに塗膜が残存しているマス目の数が100個であり、かつ、布粘着テープを剥離したときに塗膜が残存しているマス目の数が99個以下である
×:セロハン粘着テープを剥離したときに塗膜が残存しているマス目の数が99個以下であり、かつ、布粘着テープを剥離したときに塗膜が残存しているマス目の数が99個以下である
【0094】
紫外線吸収剤等を含有する組成物に対する耐性:各試験塗板の塗膜面に単位塗装面積に対して0.5g/100cmの化粧品(ジバンシイ DW UVシールド、商品名、パルファム ジバンシイ社製、SPF50 PA+++)を塗布し、55℃で4時間放置した後に、室温に冷却し、表面の化粧品をふき取り、塗膜外観、鉛筆硬度及び付着性を評価した。
鉛筆硬度の測定は上記方法と同様の方法で行ない、鉛筆硬度記号が上記「鉛筆硬度:」の項で得られた硬度記号から2ランクダウン以内だったものを合格とする。
付着性の評価は上記方法と同様に行なった。塗膜外観については下記の基準で評価した。
【0095】
○:異常なし
×:ちぢみ、変色、跡付き、剥離が発生
【0096】
【表5】
【0097】
【表6】
【0098】
【表7】
【0099】
【表8】
【0100】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は、2013年9月9日出願の日本特許出願(特願2013−186025)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【要約】
本発明の目的は、プラスチック基材に対して優れた耐擦り傷性、硬度、外観、付着性及び耐薬品性を有する塗膜を形成することができる塗料組成物及び塗装物品を提供することにある。本発明の塗料組成物は、特定の水酸基含有アクリル樹脂(A)及び特定の水酸基含有ポリエステル樹脂(B)を含有する主剤と、特定のポリイソシアネート化合物(C)を含有する硬化剤とを含み、得られる塗膜のガラス転移温度が20〜60℃である。