【実施例】
【0020】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施例に係るガスケット11の半裁断面を示している。当該実施例に係るガスケット11は、自動車等車両におけるオートマチックトランスミッション(AT)内の継ぎ手シールなど、油圧経路22を備えるハウジング21の内部に設けたガスケット装着溝23に装着されて前記油圧をシールするものであって、以下のように構成されている。
【0022】
すなわち、所定のゴム状弾性体よりなる環状体(ゴム環状体)13の内部に金属等剛材製の補強環14が埋設されることにより当該ガスケット11におけるガスケット本体12が設けられており、このガスケット本体12の軸方向一方(図では上方)の端部に、装着時に装着溝23の一方の側面23aに密接する第1シールビード15が前記ゴム状弾性体により一体成形されるとともに、ガスケット本体12の軸方向他方(図では下方)の端部に、装着時に装着溝23の他方の側面23bに密接する第2シールビード16が同じく前記ゴム状弾性体により一体成形されている。装着溝23は矩形断面であって、径方向内方へ向けて開口している。ガスケット本体12の軸方向幅は、装着溝23の軸方向幅よりも若干小さく設定されている。ガスケット本体12の外径寸法は、装着溝23の底面23cの径寸法よりも若干小さく設定されている。
【0023】
第1および第2シールビード15,16はそれぞれ、装着時、装着溝23の側面23a,23bに密接したとき、締め代によって径方向内方へ倒れ込むように構成されている。
【0024】
このため、第1シールビード15は、全体としてガスケット本体12から径方向斜め内方へ向けて突出するように形成され、これによりガスケット本体12の内径面12aよりも径方向内方へ所定幅突出する内径突出部15aと、ガスケット本体12の一方の端面12bよりも軸方向一方へ所定幅突出する端面突出部15bとを備えている。図では内径突出部15aの径方向突出幅をw1で示している。前者の内径突出部15aは、その内径面におけるビード基端側(軸方向他方側)にテーパー面15cを備え、ビード先端側(軸方向一方側)に円筒面15dを備えている。テーパー面15cの傾斜は軸方向他方から軸方向一方へかけてビード内径寸法が徐々に縮小する向きとされている。図ではテーパー面15cの傾斜角度をαで示している。後者の端面突出部15bは、その端面におけるビード基端側(径方向外方側)にテーパー面15eを備え、ビード先端側(径方向内方側)に軸直角平面15fを備えている。テーパー面15eの傾斜は軸方向他方から軸方向一方へかけてビード外径寸法が徐々に縮小する向きとされている。
【0025】
一方、第2シールビード16は、これも全体としてガスケット本体12から径方向斜め内方へ向けて突出するように形成され、これによりガスケット本体12の内径面12aよりも径方向内方へ所定幅突出する内径突出部16aと、ガスケット本体12の他方の端面12cよりも軸方向他方へ所定幅突出する端面突出部16bとを備えている。図では内径突出部16aの径方向突出幅をw2で示している。前者の内径突出部16aは、その内径面におけるビード基端側(軸方向一方側)にテーパー面16cを備え、ビード先端側(軸方向他方側)に円筒面16dを備えている。テーパー面16cの傾斜は軸方向一方から軸方向他方へかけてビード内径寸法が徐々に縮小する向きとされている。図ではテーパー面16cの傾斜角度をβで示している。後者の端面突出部16bは、その端面におけるビード基端側(径方向外方側)にテーパー面16eを備え、ビード先端側(径方向内方側)に軸直角平面16fを備えている。テーパー面16eの傾斜は軸方向一方から軸方向他方へかけてビード外径寸法が徐々に縮小する向きとされている。
【0026】
上記構成の第1および第2シールビード15,16において、第2シールビード16における内径突出部16aのテーパー面16cの傾斜角度βは、第1シールビード15における内径突出部15aのテーパー面15cの傾斜角度αよりも大きく設定され(0°<α<β<90°)、また第2シールビード16における内径突出部16aの径方向突出幅w2は第1シールビード15における内径突出部15aの径方向突出幅w1よりも大きく設定されている(w1<w2)。したがって両シールビード15,16は、軸方向(図では上下方向)に非対称な断面形状とされるとともに第1シールビード15よりも第2シールビード16のほうが剛性が高く軸方向に潰れにくい形状とされており、これは、上記したところの「(1)第1態様」に相当し、「(3)第3態様」前半部に相当する。
【0027】
また、上記構成のガスケット本体12において、補強環14は図示するようにガスケット本体12内で軸方向一方に片寄って配置されており、これは、上記したところの「(2)第2態様」に相当し、「(3)第3態様」後半部に相当する。
【0028】
したがって、上記構成のガスケット11は、上記したところの「(1)第1態様」「(2)第2態様」および「(3)第3態様」に相当するので、当該ガスケット11に対しその径方向内方から高圧の油圧が作用すると、ガスケット本体12が装着溝23内で軸方向一方へ変位しやすく、このようにガスケット本体12が装着溝23内で軸方向一方へ変位すると、装着溝23の他方の側面23bに対する第2シールビード16の締め代が低下し、これにより第2シールビード16によるシール性が低下することがある。
【0029】
そこで、これを防止すべく当該ガスケット11では、第2シールビード16と並んでその外径側に第3シールビード17が併設されており、この第3シールビード17が第2シールビード16と同様、装着溝23の他方の側面23bに密接することにより、第2シールビード16によるシール性の低下分ないし不足分を第3シールビード17が補うように構成されている。
【0030】
第3シールビード17は、全体としてガスケット本体12から径方向斜め外方へ向けて突出するように形成され、これによりガスケット本体12の外径面12dよりも径方向外方へ所定幅突出する外径突出部17aと、ガスケット本体12の他方の端面12cよりも軸方向他方へ所定幅突出する端面突出部17bとを備えている。前者の外径突出部17aは、その外径面におけるビード基端側(軸方向一方側)にテーパー面17cを備え、ビード先端側(軸方向他方側)に円筒面17dを備えている。テーパー面17cの傾斜は軸方向一方から軸方向他方へかけてビード外径寸法が徐々に拡大する向きとされている。また後者の端面突出部17bは、その端面におけるビード基端側(径方向内方側)にテーパー面17eを備え、ビード先端側(径方向外方側)に軸直角平面17fを備えている。テーパー面17eの傾斜は軸方向一方から軸方向他方へかけてビード内径寸法が徐々に拡大する向きとされている。
【0031】
この第3シールビード17は、装着時、装着溝23の他方の側面23bに密接し、このとき締め代によって径方向外方へ倒れるように構成されており、このように径方向外方へ倒れたときに、装着溝23の底面23cに対しても同時に密接する。したがって、優れたシール性を発揮することが可能とされている。
【0032】
以上説明したように当該実施例に係るガスケット11は、補強環14を埋設したガスケット本体12の軸方向両端にそれぞれシールビード15,16を設けてなるガスケット11において、油圧が当該ガスケット11に作用したときにガスケット本体12が装着溝23内で軸方向一方へ変位する構造であっても、締め代が低下する側のシール性を第3シールビード17によって補うようにしたために、ガスケット11全体としてのシール性を維持向上させることが可能とされている。また、第3シールビード17として装着溝23の側面23bおよび底面23cの双方に対し密接させる構造としたため、更なるシール性の向上を期待することができる。
【0033】
尚、上記実施例では、第2シールビード16における内径テーパー面16cの傾斜角度βが第1シールビード15における内径テーパー面15cの傾斜角度αよりも大きく設定(0°<α<β<90°)されるとともに第2シールビード16における径方向突出幅w2が第1シールビード15における径方向突出幅w1よりも大きく設定(w1<w2)されることにより、第2シールビード16が第1シールビード15よりも剛性が高く潰れにくい形状とされているが、これに代えて、第2シールビード16の肉厚が第1シールビード15の肉厚よりも大きく設定されることにより、第2シールビード16が第1シールビード15よりも剛性が高く潰れにくい形状とされるものであっても良い。
【0034】
また、上記実施例では、ハウジング21が装着溝23の底面23cにおける軸方向一方の端部で軸方向2つ割りとされる構造であるため、ガスケット11の装着の向きに関して制約を受ける可能性がある。すなわち上記実施例では、図示するようにハウジング21が半体21a,21b同士の組み合わせで装着溝23の底面23cにおける軸方向一方の端部で軸方向2つ割りとされる一方、ガスケット11の第3シールビード17は装着溝23の底面23cにおける軸方向他方の端部に配置されているため、ハウジング2つ割りによる隙間部21cに第3シールビード17がはみ出すことはない。しかしながら仮にガスケット11を軸方向反対向きに装着しようとするとハウジング2つ割りによる隙間部21cに第3シールビード17がはみ出し、これにより破損する虞があるので、このようにガスケット11を軸方向反対向きに装着することができない。したがってこれに対処するには、
図2に示すようにハウジング21を装着溝23の底面23cにおける軸方向中央部で軸方向2つ割りする構造とすれば良く、このような2つ割り構造であればガスケット11を何れの向きに装着することにしても上記はみ出しの問題を未然に解消することができる。尚、
図2におけるガスケット11の構成は
図1のガスケット11の構成とまったく同じとなっている。
【0035】
更にまた、上記実施例では、補強環14の形状が最も単純な円筒形とされているが、補強環14の形状はとくに限定されず、例えば円筒の端部に径方向フランジを一体に設けたものなどであっても良い。