【実施例】
【0029】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0030】
[実施例1〜10および比較例1〜19]
硬化性樹脂組成物を調製するために下記成分を準備した。
(A)成分:分子中に一般式2または一般式3の加水分解性シリル基を2以上有する化合物
・分子中に一般式
3の加水分解性シリル基を2有して、Xがアルコキシ基であり、主鎖がオキシアルキレン骨格と(メタ)アクリル共重合骨格の混合物である化合物(カネカサイリルMA440 株式会社カネカ製)
・分子中に一般式
2の加水分解性シリル基を2有して、Xがアルコキシ基であり、主鎖がオキシアルキレン骨格と(メタ)アクリル共重合骨格の混合物である化合物(カネカサイリルMA451 株式会社カネカ製)
(B)成分:式1、一般式4または式5で示される化合物
・4−フルオロベンズアルデヒド(東京化成工業株式会社製)
・3,4−ジフルオロベンズアルデヒド(東京化成工業株式会社製)
・3,4,5−トリフルオロベンズアルデヒド(東京化成工業株式会社製)
・2,3,4,5−テトラフルオロベンズアルデヒド(東京化成工業株式会社製)
・ペンタフルオロベンズアルデヒド(東京化成工業株式会社製)
・ペンタフルオロベンゼンチオール(東京化成工業株式会社製)
(B’)成分:(B)成分以外のフッ素化合物や塩素化合物
・ペンタフルオロフェノール(東京化成工業株式会社製)
・ペンタフルオロアニリン(東京化成工業株式会社製)
・ペンタフルオロフェニルヒドラジン(東京化成工業株式会社製)
・ペンタフルオロトリブチルアミン(東京化成工業株式会社製)
・ペンタフルオロトリエチルアミン(東京化成工業株式会社製)
・ペンタフルオロ安息香酸(東京化成工業株式会社製)
・2−クロロベンズアルデヒド(東京化成工業株式会社製)
・2,6−ジクロロベンズアルデヒド(東京化成工業株式会社製)
(C)成分:1〜3級アミン化合物
・1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(3級アミンを有する化合物)(DBU サンアプロ株式会社製)
・テトラメチルグアニジン(2級アミンと3級アミンを有する化合物)(東京化成工業株式会社製)
・3−アミノプロピルトリエトキシシラン(1級アミンを有する化合物)(A−1100 モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)
【0031】
製造方法は、プラスチック容器中に(A)成分に(B)成分を計量し、自転・公転真空ミキサーを用いて1分間混錬した。さらに(C)成分を計量し、前記ミキサーを用いて更に1分間混錬して硬化性樹脂組成物を得た。得られた硬化性樹脂組成物は、それぞれ密閉容器に充填して23℃で24時間静置した。詳細な調製量は表1および表2に従い、数値は全て質量部で表記する。
【表1】
【0032】
実施例1〜8および比較例1〜19に対して、外観、表面硬化性および深部硬化性について試験項目を実施した。また、初期の試験項目を測定した後、保存安定性を確認するため70℃雰囲気にて5日間放置した後の各試験項目を測定した。その結果を表2に示す。
【0033】
[外観確認]
硬化性樹脂組成物を幅10mm×長50mmのビート状にポリエチレンシート上へ塗布した時の粘性を以下の通り三段階評価を行い、「性状」として示す。外観確認における性状は、「低粘度」であることが好ましいが、全ての実施例および比較例で低粘度であった。
低粘度:塗布しやすい程度に粘度が低い
高粘度:塗布しにくい程度の高粘度であるが塗布はできる
ゲル状:ゲル化が進行して半固体状態になっているため塗布できない
【0034】
[表面硬化性確認]
23℃×50%RH雰囲気下で、硬化性樹脂組成物をポリエチレンシート上に幅10mm×厚1mm×長50mmのビートを塗布し、爪楊枝で組成物の表面を軽く触れる。組成物を塗布してから、爪楊枝に付着せずに表面が硬化したと判断されるまでの時間を「皮張り時間(分)」として表面硬化性を評価した。24時間以上放置しても硬化しない場合は、「未硬化」と表記する。皮張り時間は、20分以内であることが好ましい。
【0035】
[深部硬化性確認]
表面硬化性確認で塗布した硬化性樹脂組成物を更に24時間放置した後、深部硬化性の硬化状態を評価した。硬化状態は以下の通り三段階評価を行い、その結果を「深部硬化状態」とする。深部硬化状態は、「硬化」の状態であることが好ましい。
硬化:硬化物が表面から深部まで均一に硬化している
ゲル化:硬化物の状態が表面よりも深部の方が硬化が不十分である
未硬化:表面及び深部が硬化していない
【0036】
[保存安定性確認]
硬化性樹脂組成物の調整後の初期特性を確認した後、保存安定性を確認するために容器を70℃雰囲気にて5日間放置する。放置後に、硬化性樹脂組成物における外観、表面硬化性、深部硬化性について再確認を行った。
【表2】
【0037】
[実施例11]
実施例9に対して
、3−アミノプロピルトリエトキシシランおよび充填剤として重質炭酸カルシウムの粉体を加えた組成物について、粘度、表面硬化性、引張剪断接着強さ1および引張剪断接着強さ2について測定を行った。さらに、保存安定性を確認するため70℃雰囲気にて5日間放置した後の各試験項目を測定した。その結果を表3に示す。
【0038】
製造方法は、プラスチック容器中に(A)成分と充填剤を計量し、自転・公転真空ミキサーを用いて1分間混錬した。次に(C)成分の1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7を計量して1分間混錬後、(B)成分を計量して1分間混錬した。さらに(C)成分の3−アミノプロピルトリエトキシシランを計量して前記ミキサーを用いて更に1分間混錬して硬化性樹脂組成物を得た。得られた硬化性樹脂組成物は、密閉容器に充填して23℃雰囲気で24時間静置した。詳細な調製量は表3に従い、数値は全て質量部で表記する。
【0039】
[粘度測定]
コーンプレート型回転粘度計を用いて、25℃で3分後の粘度を測定した。測定結果を「粘度(Pa・s)」とする。粘度は充填剤の添加量により適宜設定されるため、特に好ましい範囲は無い。
【0040】
[引張剪断接着強さ測定]
長100×幅25×厚1mmの寸法のテストピースを使用し、接着面積が25mm×10mmになる様に実施例16を塗布して貼り合わせて固定治具で固定する。その後、25℃×50%RH雰囲気にて7日間放置する。JIS K 6850に準拠して最大の剪断強度を測定し、接着面積より「剪断接着強さ(MPa)」を計算した。テストピースとして、アルミニウムを使用した場合を「剪断接着強さ1」とし、ポリカーボネートを使用した場合を「剪断接着強さ2」とする。剪断接着強さ1に関しては3.0MPa以上、剪断接着強さ2に関しては2.0MPa以上の数値を発現していれば、接着用途でも使用することができる。
【表3】
【0041】
実施例5〜9から式1の(C)成分を使用することで(A)成分の加水分解性シリル基が一般式2または一般式3に依存することなく、また(B)成分の種類に依存することなく良好な表面硬化性を有する。比較例8でも良好な表面硬化性を有しているが、(A)成分や(B)成分の種類を代えた場合は、比較例9と10の様に表面硬化性が大きく変化する。このことから、式1の(C)成分は湿気硬化触媒としての能力が高いことが判る。さらに、実施例5〜9は70℃雰囲気に放置してもその特性が変わることが無く、保存安定性も保持している。さらに、湿気硬化性組成物全般の傾向として充填剤を添加すると外気からの湿気が浸透し難くなるため表面硬化性および深部硬化性が低下する傾向が見られるが、実施例11の様に表面硬化性が若干低下しているが使用に際しては問題無い程度で表面硬化性を維持している。また、実施例1〜4および10と比較例1〜7を比較すると判る通り、一般式4または式5の(C)成分を使用した場合は特定の(A)成分および(B)成分を選定すると特異的に特定が向上する。具体的には(A)成分として加水分解性シリル基が一般式2であり、(B)成分が2級および/または3級アミンであれば特異的に良好な硬化性および保存性を発現する。さらに、実施例1〜4および10と比較例11〜23と比較すると、本発明における(C)成分を使用することで硬化性組成物は特異的に硬化性および保存安定性が発現することがわかる。