特許第5692515号(P5692515)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5692515
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】画像読取装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 27/50 20060101AFI20150312BHJP
   H04N 1/10 20060101ALI20150312BHJP
   H04N 1/107 20060101ALI20150312BHJP
   H04N 1/04 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   G03B27/50 A
   H04N1/10
   H04N1/04 105
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-4241(P2011-4241)
(22)【出願日】2011年1月12日
(65)【公開番号】特開2012-145780(P2012-145780A)
(43)【公開日】2012年8月2日
【審査請求日】2013年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】鷲田 悟
【審査官】 新井 重雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−205971(JP,A)
【文献】 特開2009−267453(JP,A)
【文献】 特開2010−016497(JP,A)
【文献】 特開平09−270895(JP,A)
【文献】 特開2007−016399(JP,A)
【文献】 特開2004−291624(JP,A)
【文献】 特開2002−033882(JP,A)
【文献】 実開平02−069314(JP,U)
【文献】 特開2007−118324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 27/50
H04N 1/04
H04N 1/10
H04N 1/107
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿台に、原稿を読み取る読取ユニットと、該読取ユニットを副走査方向に沿って移動可能に支持するガイドレールと、該ガイドレールに沿って前記読取ユニットを移動させる駆動構造とが設けられている画像読取装置であって、
前記読取ユニットは、イメージセンサと、該イメージセンサを支持するキャリッジとを備えており、
前記キャリッジは、前記ガイドレールで案内されるスライドブロックと、該スライドブロックに固定されるキャリッジ本体とを備えており、
前記スライドブロックと前記キャリッジ本体との間に、前記ガイドレールの伸び方向に対する前記キャリッジ本体の角度調整を行って、前記イメージセンサの読取ラインのずれを解消するための角度調整機構が設けられており、
前記角度調整機構は、
前記スライドブロックと前記キャリッジ本体のいずれか一方に設けられた、1本の支点ピンと、
該支点ピンに対応して、前記スライドブロックと前記キャリッジ本体のいずれか他方に設けられた支点穴と、
前記支点ピンまわりの任意の角度で前記キャリッジ本体を前記スライドブロックに固定するための締結構造と、を含み、
前記スライドブロックは、標準姿勢と、該標準姿勢から180度反転した調整姿勢とのいずれかの姿勢で、前記ガイドレールに対して組み付け可能に構成されており、
前記ガイドレールに対して前記標準姿勢で前記スライドブロックを組み付けた状態においては、前記スライドブロックと前記キャリッジ本体との間に設けられた位置決め構造により、前記キャリッジ本体が前記スライドブロックに対して移動不能に位置決めされ、
前記ガイドレールに対して前記調整姿勢で前記スライドブロックを組み付けた状態においては、前記支点ピンと前記支点穴とが互いに嵌り合い、前記キャリッジ本体が前記スライドブロックに対して前記支点ピンまわりに回転可能となることで、該キャリッジ本体の該スライドブロックに対する角度調整が可能となるように構成されていることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記スライドブロックと前記キャリッジ本体とのいずれか一方に、前記支点ピンと、位置決めピンとが設けられており、
前記スライドブロックと前記キャリッジ本体のいずれか他方に、前記支点ピンに対応する支点穴と、2個の位置決め穴と、前記位置決めピンに対応する調整穴とが設けられており、
前記支点ピンと前記位置決めピンとは、前記締結構造を間に挟む状態で配置されており、
前記ガイドレールに対して前記標準姿勢で前記スライドブロックを組み付けた状態においては、前記位置決めピンと前記支点ピンとが前記位置決め穴に嵌まり込むことで前記キャリッジ本体が前記スライドブロックに対して位置決めされ、
前記ガイドレールに対して前記調整姿勢で前記スライドブロックを組み付けた状態においては、前記支点ピンが前記支点穴に嵌まり込み、かつ前記位置決めピンが前記調整穴に入り込むことで、前記調整穴の範囲内で前記キャリッジ本体の角度調整が可能となるように構成されている請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記スライドブロックと前記キャリッジ本体とのいずれか一方に、前記支点ピンと、第1、第2の位置決めピンとが設けられており、
前記スライドブロックと前記キャリッジ本体のいずれか他方に、前記支点ピンに対応する支点穴および逃げ穴と、前記各位置決めピンに対応する2個の調整穴と、2個の位置決め穴とが設けられており、
前記締結構造を間に挟む一側に前記支点ピンと前記第1位置決めピンとが配置され、他側に前記第2位置決めピンが配置されており、
前記ガイドレールに対して前記標準姿勢で前記スライドブロックを組み付けた状態においては、前記第1、第2の位置決めピンのそれぞれが前記位置決め穴に嵌まり込んで前記キャリッジ本体が位置決めされるとともに、前記支点ピンが前記逃げ穴に入り込んでおり、
前記ガイドレールに対して前記調整姿勢で前記スライドブロックを組み付けた状態においては、前記支点ピンが前記支点穴に嵌まり込み、かつ前記各位置決めピンが前記調整穴に入り込むことで、前記調整穴の範囲内で前記キャリッジ本体の角度調整が可能となるように構成されている請求項に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記支点ピンが前記スライドブロックと一体に成形されている請求項1から3のいずれかに記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記位置決めピンが前記スライドブロックと一体に成形されている請求項1から4のいずれかに記載の画像読取装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コピー機、スキャナ、ファクシミリなどに適用される画像読取装置に関し、読取ユニットのスキュー補正のための構造を改良したものである。
【背景技術】
【0002】
読取ユニットの傾きを解消するスキュー補正構造に関して、従来から様々な手段が提案されている。例えば、特許文献1の画像読取装置では、キャリッジを副走査方向へ案内する案内ロッドと、キャリッジの取付部に設けたスライド穴との間に補正隙間を設け、この補正隙間を利用してスキュー補正を行っている。具体的には停止時における読取ユニットは、副走査方向と斜めに交差する状態で傾いており、副走査方向へ移動を開始したとき、読取ユニットの全体が補正隙間に沿って移動方向と反対側に振られる。このように、読取ユニットの全体を補正隙間に沿って変位させることにより、イメージセンサの読取ラインを基準ラインと一致させることができる。
【0003】
画像読取装置の組立過程で読取ラインがずれるのを防ぐために、原稿台に対するガイドレールの取付角度を治具を使用して調整し、あるいは読取ユニットのガイドレールに対する取付姿勢を治具を使用して調整することが従来から行われている。このように、組立過程でガイドレール、あるいは読取ユニットの位置調整を行えば、組立が完了した時点での読取ラインのずれを殆ど解消できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−32942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のスキュー補正構造は、副走査方向へ移動するとき、読取ユニットの全体を補正隙間に沿って敢えて変位させることにより、イメージセンサの読取ラインを基準ラインに一致させている。そのため、キャリッジに設けた取付部のスライド穴を高い精度で形成する必要がありコストが嵩む。さらに、画像読取装置の組立後の読取試験において読取ラインにずれが発生している場合には、読取ユニットを案内ロッドから分離し、スライド穴に設けたドライベアリングを調整した後、読取ユニットを組み直す必要があり、一連の調整作業に多くの手間が掛かる。
【0006】
その点、組立過程で治具を使用してレールの取付角度を調整し、あるいは読取ユニットの取付姿勢を調整する画像読取装置では、組立が完了した時点での読取ラインのずれを殆ど解消できる。しかし、全ての画像読取装置において、治具を使用した調整作業を行う必要があり、調整作業に多くの手間が掛かる。また、読取ラインがずれる要因は、レールの取付角度または読取ユニットの取付姿勢以外にもあるため、読取ラインのずれを皆無にできるわけではなく、何らかの補正を行うための構造が必要であった。
【0007】
因みに、画像読取装置の組立過程における読取ラインのずれは、殆どの場合は許容誤差の範囲内にあり、読取ラインが許容範囲の外にずれている頻度は低い。しかし、低い頻度で発生するとはいえ、読取ラインのずれは必ず矯正しなければならず、ライン矯正作業をより簡便に行うための構造が必要であった。
【0008】
本発明の目的は、読取試験において読取ラインのずれが発生した場合の、スキュー補正をより簡便に行うことができ、したがって、組立過程におけるスキュー補正の手間を省いて、製造コストを削減できる画像読取装置を提供することにある。本発明の目的は、読取ユニットをガードレール上に配置したままでスキュー補正を行うことができ、したがって、スキュー補正をより少ない手間で迅速に行える画像読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、原稿台12に、原稿を読み取る読取ユニット19と、読取ユニット19を副走査方向に沿って移動可能に支持するガイドレール22と、ガイドレール22に沿って読取ユニット19を移動させる駆動構造43とが設けられている画像読取装置を対象とする。読取ユニット19は、イメージセンサ20と、イメージセンサ20を支持するキャリッジ21とを備える。キャリッジ21は、ガイドレール22で案内されるスライドブロック23と、スライドブロック23に固定されるキャリッジ本体24とを備える。スライドブロック23とキャリッジ本体24との間に、ガイドレール22の伸び方向に対するキャリッジ本体24の角度調整を行って、イメージセンサ20の読取ラインのずれを解消するための角度調整機構が設けられている
【0010】
角度調整機構は、スライドブロック23とキャリッジ本体24とのいずれか一方に設けられた、1本の支点ピン61(81)と、支点ピン61(81)に対応して、スライドブロック23とキャリッジ本体24のいずれか他方に設けられた支点穴71(91)と、支点ピン61(81)まわりの任意の角度でキャリッジ本体24をスライドブロック23に固定するための締結構造52とを含む。スライドブロック23は、標準姿勢と、標準姿勢から180度反転した調整姿勢とのいずれかの姿勢で、ガイドレール22に対して組み付け可能に構成されている。ガイドレール22に対して標準姿勢でスライドブロック23を組み付けた状態において、スライドブロック23とキャリッジ本体24との間に設けられた位置決め構造により、キャリッジ本体24がスライドブロック23に対して移動不能に位置決めされる。ガイドレール22に対して調整姿勢でスライドブロック23を組み付けた状態において支点ピン61(81)と支点穴71(91)とが互いに嵌り合い、キャリッジ本体24がスライドブロック23に対して支点ピン61(81)まわりに回転可能となることで、該キャリッジ本体24の該スライドブロック23に対する角度調整が可能となるように構成されている。
【0012】
図11および図12に示すように、スライドブロック23とキャリッジ本体24とのいずれか一方に、支点ピン81と位置決めピン82を設ける。さらに、スライドブロック23とキャリッジ本体24とのいずれか他方に、支点ピン81に対応する支点穴91と、2個の位置決め穴92・94と、位置決めピン82に対応する調整穴93とを設ける。支点ピン81と位置決めピン82とは、締結構造52を間に挟む状態で配置される。スライドブロック23を標準姿勢にした状態において、位置決めピン82と支点ピン81とが位置決め穴92・94に嵌まり込んでキャリッジ本体24を位置決めする。スライドブロック23を調整姿勢にした状態において、支点ピン81が支点穴91に嵌まり込み、かつ位置決めピン82が調整穴93に入り込み、調整穴93の範囲内でキャリッジ本体24の角度調整が可能となるように構成されている。
【0013】
図6に示すように、スライドブロック23とキャリッジ本体24とのいずれか一方に、支点ピン61と、第1、第2の位置決めピン62・63を設ける。さらに、スライドブロック23とキャリッジ本体24とのいずれか他方に、支点ピン61に対応する支点穴71および逃げ穴76と、2個の位置決め穴73・75と、各位置決めピン62・63に対応する2個の調整穴72・74を設ける。締結構造52を間に挟む一側に支点ピン61と第1位置決めピン62とが配置され、他側に第2位置決めピン63が配置される。スライドブロック23を標準姿勢にした状態において、各位置決めピン62・63が位置決め穴75・73に嵌まり込んでキャリッジ本体24を位置決めするとともに、支点ピン61が逃げ穴76に入り込んでいる。スライドブロック23を調整姿勢にした状態において、支点ピン61が支点穴71に嵌まり込み、かつ各位置決めピン62・63が調整穴72・74に入り込み、調整穴72・74の範囲内でキャリッジ本体24の角度調整が可能となるように構成されている。
【0015】
支点ピン61(81)をスライドブロック23と一体に成形することができる。また、位置決めピン62・63(82)をスライドブロック23と一体に成形することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、キャリッジ21が、ガイドレール22で案内されるスライドブロック23と、イメージセンサ20を支持するキャリッジ本体24とを備えるものとした。そして、スライドブロック23とキャリッジ本体24との間に、ガイドレール22に対するキャリッジ本体24の直角度を調整する角度調整機構を設けた。つまり、本発明では、読取試験でイメージセンサ20の読取ラインのずれが検出された場合に、キャリッジ本体24をスライドブロック23に対して変位させることにより、スキュー補正を簡便に行うことができる。画像読取装置の組立後に簡便にスキュー補正を行えるので、画像読取装置の製造コストを削減できる。また、読取ユニット19をガイドレール22上に配置したままでも、キャリッジ本体24を変位させるだけの簡単な操作で、イメージセンサ20の読取ラインのずれを解消できる。
【0017】
角度調整機構は、スライドブロック23に対してキャリッジ本体24を回転可能に支持する支点ピン61(81)と、支点ピン61(81)まわりの任意の角度でキャリッジ本体24をスライドブロック23に固定する締結構造52とを含む。これによれば、キャリッジ本体24をスライドブロック23に対して支点ピン61(81)まわりに回転させるだけの簡単な操作で、より簡便にスキュー補正を行うことができる。
【0018】
スライドブロック23は、キャリッジ本体24が位置決め構造で位置決めされる標準姿勢と、キャリッジ本体24が支点ピン61(81)まわりに回転可能な調整姿勢とのいずれかの姿勢で組み付けられる。仮に、スライドブロック23が調整姿勢しかとることができなければ、工場で画像読取装置を組み立てるときに、スライドブロック23をキャリッジ本体24に組み付けた後、全ての画像読取装置において、キャリッジ本体24の取付角度を調整する必要が生じる。一方、本発明のように、スライドブロック23が調整姿勢に加えて標準姿勢をとることができれば、まずはスライドブロック23を標準姿勢でキャリッジ本体24に組み付けて、画像読取装置の組立を完了する。組立後、原稿の読取試験を行って、読取ラインのずれが検出された場合にのみ、スライドブロック23を調整姿勢に変更し、キャリッジ本体24の直角度を調整する。つまり、本発明では、組立後に読取ラインのずれが検出された場合にのみ角度を調整する。スライドブロック23の初期状態すなわち標準姿勢における読取ラインのずれは、殆どの場合は許容誤差の範囲内にあり、読取ラインが許容範囲の外にずれている頻度は低い。したがって、本発明によれば、全ての画像読取装置で取付角度の調整作業を行っていた従来の構成に比べて、調整作業に要する時間を大幅に短縮して、画像読取装置の製造コストを削減できる。
【0019】
支点ピン61(81)を1つだけ設けるようにすると、複数の支点ピンを設けて、支点とするピンを選択的に利用して調整する場合に比べて、角度調整機構を簡素化して低コスト化に貢献できる。
【0020】
スライドブロック23を標準姿勢にした状態において、位置決めピン82と支点ピン81とが位置決め穴92・94に嵌まり込んでキャリッジ本体24を位置決めする。もしくは、第1、第2の位置決めピン62・63が位置決め穴75・73に嵌まり込んでキャリッジ本体24を位置決めする。また、スライドブロック23を調整姿勢にした状態において、支点ピン61(81)が支点穴71(91)に嵌まり込み、かつ位置決めピン62・63(82)が調整穴72・74(93)に入り込み、調整穴72・74(93)の範囲内でキャリッジ本体24の直角度を調整できる。このように、本発明では、スライドブロック23とキャリッジ本体24との一方に設けたピン61〜63(81・82)を、他方に設けた穴71〜76(91〜94)に差し込んで、両者23・24を連結するようにした。したがって、キャリッジ本体24からスライドブロック23を容易に分離でき、スライドブロック23を標準姿勢から調整姿勢に簡単に変更できる。
【0021】
支点ピン61(81)と位置決めピン62・63(82)のうち、締結構造52から最も遠い位置に支点ピン61(81)を配置する。これによれば、支点ピン61(81)を締結構造52の近傍に配置する場合に比べて、キャリッジ本体24を支点ピン61(81)のまわりに大きく動かすことができるので、キャリッジ本体24の調整をより簡便に行える。
【0022】
支点ピン61(81)をスライドブロック23と一体に成形することができる。これによれば、支点ピン61(81)をスライドブロック23と別部材にする場合に比べて、部品点数を減らすことができるので、部品の管理コストおよび組立コストを削減することができる。位置決めピン62・63(82)をスライドブロック23と一体に成形することによっても、同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る画像読取装置の横断平面図である。
図2】本発明に係る画像読取装置が適用される複合機の概念図である。
図3】本発明に係る画像読取装置の平面図である。
図4図5のB−B線断面図である。
図5図1のA−A線断面図である。
図6】スライドブロックとキャリッジ本体を分離した状態の一部破断斜視図である。
図7】スライドブロックの標準姿勢における要部の縦断正面図である。
図8】スライドブロックの標準姿勢における要部の平面図である。
図9】スライドブロックの調整姿勢における要部の縦断正面図である。
図10】スライドブロックの調整姿勢における要部の平面図である。
図11】別の実施形態に係るスライドブロックの標準姿勢における要部の平面図である。
図12】別の実施形態に係るスライドブロックの調整姿勢における要部の平面図である。
図13】さらに別の実施形態に係るスライドブロックの標準姿勢における要部の平面図である。
図14】さらに別の実施形態に係るスライドブロックの調整姿勢における要部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施例) 図1から図10に、本発明に係る画像読取装置を、コピー機能とファクシミリ機能とを備えた複合機に適用した実施形態を示す。なお、本発明における前後、左右、上下とは、図2および図3に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。
【0025】
図2において、複合機1は、給紙カセット2と、給紙カセット2から搬送された記録用紙に対してトナー像を転写する画像記録部3と、画像記録部3を経た記録用紙に対して加熱・加圧処理を施してトナー像を定着させる定着部4とを含む。これら画像記録部3および定着部4の上方に画像読取部(画像読取装置)5が配置されている。画像読取部5の前面には、各種操作ボタンを有する操作パネル6が設けられている。画像記録部3は、帯電ドラム7を含む感光体ユニット8と、感光体ユニット8にトナーを供給するトナーカートリッジ9などで構成される。
【0026】
図3に示すように画像読取部5は、読取対象となる原稿を載せるプラテンガラス11が配置された原稿台12と、原稿をプラテンガラス11に押し付けて密着させる原稿押えカバー13とからなる。原稿押えカバー13は、原稿台12の後端部に設けられた左右一対のヒンジ14・14で支持されて、上下に回転できる。図4に示すように、原稿台12は、上向きに開口する四角箱状のフレーム16と、フレーム16の上開口を塞ぐフレームカバー17などで箱状に形成される。フレームカバー17の中央には四角形の開口が形成されており、この中央開口にプラテンガラス11が組み付けられている。
【0027】
図1に示すように、原稿台12のフレーム16には、原稿を読み取る読取ユニット19と、読取ユニット19を左右方向(副走査方向)に沿って移動可能に支持する一本のガイドレール22とが設けられている。読取ユニット19は、原稿を読み取る密着型のイメージセンサ(以下、単にCISと記す。)20と、CIS20を支持するキャリッジ21とを備える。図4に示すように、キャリッジ21は、ガイドレール22で案内されるスライドブロック23と、スライドブロック23の上面に固定されるキャリッジ本体24とを備える。キャリッジ本体24は、上向きに開口する前後に長い箱状に形成された樹脂成形品であり、このキャリッジ本体24でCIS20が支持されている。キャリッジ本体24のガイドレール22に臨む部分には、キャリッジ本体24をスライドブロック23に締結するための締結部25が、キャリッジ本体24の左右壁と交差する状態で形成されている。キャリッジ本体24の内底面の前後両端部には、CIS20を上下方向にスライド可能に支持するためのガイド片26が、キャリッジ本体24と一体に形成されている。また、キャリッジ本体24の内底面には、CIS20の前後方向の遊動を規制する規制片27が、キャリッジ本体24と一体に形成されている。
【0028】
図5に示すように、CIS20は、上向きに開口する前後に長い四角箱状のハウジング29と、ハウジング29の上開口を塞ぐ透明な保護カバー30とを備える。ハウジング29の内部には、左右一対のキセノンランプ31と、レンズアレイ32と、イメージセンサ基板33とが収容されている。キセノンランプ31で発した光を原稿へ向かって照射し、原稿からの反射光をレンズアレイ32を介してイメージセンサ基板33上に結合することにより、原稿画像を読み取って電気信号に変換し出力できる。
【0029】
図4に示すように、ハウジング29の前後端には、前後方向のスライド軸34が設けられており、キャリッジ21の各ガイド片26には、スライド軸34を案内する長穴35が上下方向に形成されている。スライド軸34を各ガイド片26の長穴35で案内することにより、CIS20はキャリッジ21に対して上下方向にのみ移動可能に支持される。ハウジング29の下面とキャリッジ本体24の内底面との間における前後2箇所に、CIS20をプラテンガラス11に向かって押し付け付勢する圧縮コイル形のばね36が配置されている(図1参照)。CIS20の上面の前後端には、スペーサ37が突出されている(図1参照)。スペーサ37は、プラテンガラス11の下面に密着して、CIS20の焦点を原稿面と一致させるために設けられている。ハウジング29には、CIS20の規制片27を受け入れる溝38が形成されており、この溝38と規制片27とが協同してCIS20の前後方向の遊動を規制している。
【0030】
図1および図4に示すようにガイドレール22は、キャリッジ21の前後方向中央よりも前側に配置されている。キャリッジ21の後端部は、ガイドレール22と平行に配置した支持レール41で下側から支持されている。ガイドレール22および支持レール41は、フレーム16と一体に形成されている。ガイドレール22の上面には、先のスライドブロック23を案内する台形状のガイド面が形成されている。
【0031】
図1に示すように、原稿台12のフレーム16には、ガイドレール22に沿って読取ユニット19を移動させる駆動構造43が設けられている。駆動構造43は、モータ44の出力軸に固定されて水平面内で回転する原動プーリ45と、原動プーリ45に対応して配置される従動プーリ46と、両プーリ45・46に巻き掛けられるタイミングベルト47とを含んで構成される。原動プーリ45は、フレーム16の右後隅部に配置されており、従動プーリ46は、ガイドレール22の左端部の後方に配置されている。原動プーリ45の前方には一対の方向転換プーリ48が配置されている。従動プーリ46と方向転換プーリ48の間に位置するタイミングベルト47は、ガイドレール22と平行に配置され、原動プーリ45と方向転換プーリ48の間に位置するタイミングベルト47は、ガイドレール22と直交する状態で前後方向に配置してある。図4に示すように、キャリッジ本体24の下面にはベルトクランプ49が設けてあり、このベルトクランプ49をタイミングベルト47に連結することにより、タイミングベルト47の移動に同行して、読取ユニット19をガイドレール22に沿って左右へ移動できる。
【0032】
図6に示すようにスライドブロック23は、左右に長いVブロック状に形成された樹脂成形品であり、その下面に、ガイドレール22で受け止められるスライド面51が、逆V字状に形成してある。キャリッジ本体24は、その締結部25がスライドブロック23に対して締結構造52で分離不能に固定される。締結構造52は、スライドブロック23の上面の左右方向中央部に形成されて上向きに開口するねじ穴53と、このねじ穴53にねじ込まれるねじ体54とで構成される。締結部25の底壁の左右方向中央部には、前後方向の長穴からなる貫通孔55が形成してあり、この貫通孔55に差し込んだねじ体54をねじ穴53にねじ込むことにより、キャリッジ本体24をスライドブロック23に固定することができる。貫通孔55を前後方向の長穴で形成するのは、後述するように、キャリッジ本体24のガイドレール22に対する直角度を調整するためである。
【0033】
スライドブロック23の上面には、図6に向かって左側から順に、支点ピン61と、第1位置決めピン62と、第2位置決めピン63が、ねじ穴53の中心を通る左右の仮想線に沿って上向きに設けられている。換言すると、締結構造52を間に挟む一側に支点ピン61と第1位置決めピン62とが配置され、他側に第2位置決めピン63が配置されている。各ピン61〜63の直径は同じであり、3個のピン61〜63のうち、支点ピン61がねじ穴53の中心から最も遠い位置に設けられている。
【0034】
キャリッジ本体24の締結部25には、上記の各ピン61〜63に対応して支点穴71、調整穴72、位置決め穴73、調整穴74、位置決め穴75、および逃げ穴76が、左側から順に設けられている。これらの穴71〜76のうち、貫通孔55より左側の領域に支点穴71と、調整穴72と、位置決め穴73が配置されており、貫通孔55より右側の領域に調整穴74と、位置決め穴75と、逃げ穴76が配置されている。支点穴71は、支点ピン61に対応して形成されており、位置決め穴73・75は、第1、第2の両位置決めピン62・63に対応して形成されている。また、調整穴72・74の直径は、第1、第2の両位置決めピン62・63の直径の2倍に設定されており、逃げ穴76の直径は、支点ピン61の直径の2倍に形成されている。
【0035】
スライドブロック23は、標準姿勢と、標準姿勢から180度反転した調整姿勢とのいずれかの姿勢でガイドレール22に組み付けられる。図8に示すように、支点ピン61が締結部25の右端寄りに位置する状態が標準姿勢であり、図10に示すように、支点ピン61が締結部25の左端寄りに位置する状態が調整姿勢である。
【0036】
図7および図8に示すように、スライドブロック23を標準姿勢でガイドレール22に組み付け、さらにキャリッジ本体24をスライドブロック23に組み付けた状態では、各ピン61〜63と各穴71〜76とは次のように結合する。第2位置決めピン63と左側の位置決め穴73とが互いに嵌まり合い、さらに、第1位置決めピン62と右側の位置決め穴75とが互いに嵌まり合って、キャリッジ本体24を位置決めしている。この状態の支点ピン61は逃げ穴76に入り込むが、何等機能していない。
【0037】
逆に、図9および図10に示すように、スライドブロック23を調整姿勢にした状態では、支点ピン61と支点穴71とが互いに嵌まり合い、さらに、第1、第2の位置決めピン62・63は、それぞれ調整穴72・74に入り込んでいる。この状態のキャリッジ本体24は、支点ピン61を中心にして調整穴72・74の範囲内で前後へ回転でき、したがって、ガイドレール22に対するキャリッジ本体24の直角度を調整できる。以上のように角度調整機構は、キャリッジ本体24の回転の支点となる支点ピン61および支点穴71と、上述の締結構造52とで構成される。
【0038】
画像読取部5を組み立てる際には、スライドブロック23は標準姿勢にした状態でキャリッジ本体24に組み付けたのち読取試験を行う。読取試験の結果、CIS20の読取ラインにずれの無いことが確認できれば、キャリッジ本体24の直角度を調整する必要は無く、殆どの画像読取部5において無調整のままで次工程へと送られる。一方、読取ラインが基準ラインからずれている場合は、以下の手順でキャリッジ本体24の直角度を調整することにより、読取ラインを基準ラインに正確に合致させる。
【0039】
キャリッジ本体24の直角度を調整する場合には、まず、プラテンガラス11をフレームカバー17と共にフレーム16から取り外して、キャリッジ21およびCIS20の上方空間を開放する。次に、スライドブロック23を標準姿勢から調整姿勢に変更する。具体的には、キャリッジ21をガイドレール22から分離し、締結構造52のねじ体54を取り外し、キャリッジ本体24とスライドブロック23を分離する。スライドブロック23を水平面内で180度反転させてからキャリッジ本体24に再装着し、ねじ体54をねじ穴53にねじ込んで仮止めする。スライドブロック23とキャリッジ本体24を一体化したキャリッジ21を、ガイドレール22に再装着する。なお、ここまでの作業順序は上記のものに限られず、例えばキャリッジ21をガイドレール22から分離する前に、ねじ体54を取り外してもよい。
【0040】
ねじ体54を緩めた状態のままで、キャリッジ本体24を支点ピン61のまわりに前後へ回転することにより、キャリッジ本体24の直角度を調整できる。調整後、ねじ体54をねじ穴53に完全にねじ込んで、キャリッジ本体24をスライドブロック23に固定する。その後、原稿の読取試験を再度行い、読取ラインのずれの有無を確認して、必要に応じて再度調整作業を行う。以上のように、キャリッジ本体24の直角度を調整する場合には、CIS20をキャリッジ21から取り外さなくても、ねじ体54を操作して、キャリッジ本体24の角度を調整することができる。また、図1に示すように、ねじ体54の操作頭部は、平面視においてCIS20の外側方(左方)に配置されているので、ねじ体54の操作頭部に上方から直接アクセスすることができる。
【0041】
以上のように、本実施形態においては、読取試験でCIS20の読取ラインのずれが検出された場合に、キャリッジ本体24をスライドブロック23に対して支点ピン61まわりに回転させることにより、スキュー補正を簡便に行うことができる。画像読取部5の組立後に簡便にスキュー補正を行えるので、画像読取部5の製造コストを削減できる。また、読取ユニット19をガイドレール22上に配置したままでも、キャリッジ本体24を回転させるだけの簡単な操作で、CIS20の読取ラインのずれを解消できる。
【0042】
スライドブロック23は、標準姿勢を初期状態としてキャリッジ本体24に組み付けられる。画像読取部5の組立後に原稿の読取試験を行って、CIS20の読取ラインにずれが無い場合には、その画像読取部5はそのまま次工程へと送られる。一方、読取ラインにずれがある場合には、スライドブロック23を調整姿勢に変更して、キャリッジ本体24の直角度を調整する。つまり、本実施形態では、組立後に読取ラインのずれが検出された場合にのみ角度を調整する。したがって、全ての画像読取装置で取付角度の調整作業を行っていた従来の構成に比べて、調整作業に要する時間を大幅に短縮して、画像読取装置の製造コストを削減できる。
【0043】
本実施形態では、スライドブロック23の上面のピン61〜63を、キャリッジ本体24の下面の穴71〜76に差し込むことにより、両者23・24を連結する。したがって、キャリッジ本体24からスライドブロック23を容易に分離でき、スライドブロック23を標準姿勢から調整姿勢に簡単に変更できる。
【0044】
本発明において支点ピン61の位置は特に限定されないが、本実施形態のように、ねじ穴53から遠いスライドブロック23の左端部に支点ピン61を配置することが好ましい。この場合は、支点ピンをねじ穴の近傍に配置する場合に比べて、キャリッジ本体24を支点ピン61のまわりに大きく動かすことができるので、キャリッジ本体24の調整をより簡便に行える。
【0045】
上記の実施形態では、スライドブロック23を標準姿勢にした状態において、第1、第2の位置決めピン62・63で位置決めを行うようにしたが、図11および図12に示すように支点ピンを利用して位置決めすることができる。その場合には、図11に示すように、スライドブロック23が標準姿勢のときは、位置決めピン82と支点ピン81とが位置決め穴92・94に嵌まり込んでキャリッジ本体24を位置決めする。図12に示すように、スライドブロック23を調整姿勢に反転した状態では、支点ピン81が支点穴91に嵌まり込み、位置決めピン82が調整穴93に入り込む。したがって、調整穴93の範囲内で、キャリッジ本体24をスライドブロック23に対して支点ピン81まわりに回転させて、キャリッジ本体24の直角度を調整できる。
【0046】
支点ピン81は、スライドブロック23が調整姿勢のときは、キャリッジ本体24の回転の支点として機能し、スライドブロック23が標準姿勢のときは、位置決め穴94に嵌まり込んでキャリッジ本体24の位置決めを担う。つまり、本実施形態では、支点ピンが位置決めピンを兼ねている。他は先の実施形態と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。以下の別実施形態においても同様とする。
【0047】
上記各実施形態では、キャリッジ本体24の締結部25の左端に支点穴71・91を配置し、左右方向中央部に貫通孔55を設けたが、図13および図14に示すように、支点穴91を左右方向中央部に配置し、貫通孔55を左右端に配置することができる。この場合の締結部25には、1個の位置決め穴92を支点穴91の左方に配置し、1個の調整穴93を支点穴91の右方に配置する。一方、スライドブロック23には、左右方向中央部に支点ピン81を配置し、その側方に1個の位置決めピン82を配置し、スライドブロック23の左右端のいずれかに、ねじ体54がねじ込まれるねじ穴53を配置する。
【0048】
図14に示すスライドブロック23の調整姿勢においては、支点ピン81が支点穴91に嵌まり込み、位置決めピン82が調整穴93に入り込み、支点ピン81のまわりにキャリッジ本体24を回転できる。一方、図13に示すスライドブロック23の標準姿勢においては、支点ピン81が支点穴91に嵌まり込み、位置決めピン82が位置決め穴92に嵌まり込むことにより、キャリッジ本体24が位置決めされる。つまり、本実施形態では、支点ピンが位置決めピンを兼ねるとともに、支点穴が位置決め穴を兼ねている。
【0049】
その他、上記各実施形態では、スライドブロック23にピン61〜63・81・82を設け、キャリッジ本体24に穴71〜76・91〜94を設けたが、これとは逆に、キャリッジ本体24にピンを設け、スライドブロック23に穴を設けることができる。位置決めピンは3個以上設けることができる。調整穴72・74・93は正円状に限られず、例えば長円状あるいは円弧状に形成することができる。貫通孔55の形状も長孔状に限定されない。
【符号の説明】
【0050】
5 画像読取装置(画像読取部)
12 原稿台
19 読取ユニット
20 イメージセンサ(CIS)
21 キャリッジ
22 ガイドレール
23 スライドブロック
24 キャリッジ本体
43 駆動構造
52 締結構造
61・81 支点ピン
62・63・82 位置決めピン
71・91 支点穴
72・74・93 調整穴
73・75・92・94 位置決め穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14