特許第5692521号(P5692521)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スタンレー電気株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5692521-自動二輪車の前照灯 図000002
  • 特許5692521-自動二輪車の前照灯 図000003
  • 特許5692521-自動二輪車の前照灯 図000004
  • 特許5692521-自動二輪車の前照灯 図000005
  • 特許5692521-自動二輪車の前照灯 図000006
  • 特許5692521-自動二輪車の前照灯 図000007
  • 特許5692521-自動二輪車の前照灯 図000008
  • 特許5692521-自動二輪車の前照灯 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5692521
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】自動二輪車の前照灯
(51)【国際特許分類】
   F21S 8/12 20060101AFI20150312BHJP
   F21W 101/027 20060101ALN20150312BHJP
   F21W 101/10 20060101ALN20150312BHJP
【FI】
   F21S8/12 110
   F21S8/12 123
   F21S8/12 140
   F21W101:027
   F21W101:10
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-72943(P2011-72943)
(22)【出願日】2011年3月29日
(65)【公開番号】特開2012-209083(P2012-209083A)
(43)【公開日】2012年10月25日
【審査請求日】2014年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】金田 真
【審査官】 太田 良隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−149702(JP,A)
【文献】 特開2009−238470(JP,A)
【文献】 特開2006−253137(JP,A)
【文献】 特開昭64−086401(JP,A)
【文献】 特開2012−142158(JP,A)
【文献】 特開2011−181342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S8/10−8/12
F21W101/023−101/027
F21W101/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影レンズ部と、第1レンズ部と、第2レンズ部と、を含むレンズと、
前記投影レンズ部の後側焦点より後方、かつ、前記投影レンズ部の光軸上に配置された光源と、
第1焦点が前記光源近傍に設定され、第2焦点が前記投影レンズの後側焦点近傍に設定された楕円系の第1反射面と、
上端縁を前記投影レンズ部の後側焦点近傍に位置させた状態で前記レンズと前記光源との間に配置され、前記光源から放射された光の一部を遮光することで前記上端縁により規定されるカットオフラインを形成する遮光部材と、
第1焦点が前記光源近傍に設定され、第2焦点が前記第1レンズ部の入射面近傍に設定された楕円系の第2反射面と、
第1焦点が前記光源近傍に設定され、第2焦点が前記第2レンズ部の入射面近傍に設定された楕円系の第3反射面と、
を備えており、
前記第1レンズ部は、前記第2反射面で反射されて前記第1レンズ部を透過する光が、上下左右に拡散されて、直立時の車体前端に正対する仮想鉛直スクリーン上の水平線より上かつ鉛直線に対し左右いずれか一方のバンク配光領域を照射するように円柱状に凹んだ出射面を含んでおり、
前記第2レンズ部は、前記第3反射面で反射されて前記第2レンズ部を透過する光が、上下左右に拡散されて、直立時の車体前端に正対する仮想鉛直スクリーン上の水平線より上かつ鉛直線に対し他方のバンク配光領域を照射するように円柱状に凹んだ出射面を含んでおり、
前記遮光部材は、前記第2反射面からの反射光及び前記第3反射面からの反射光が通過する開口が形成されておらず、かつ、前記第2反射面からの反射光及び前記第3反射面からの反射光を遮らない位置に配置されていることを特徴とする自動二輪車の前照灯
【請求項2】
前記第1反射面は、前記光源から放射される光が入射するように前記光源の上方に配置されており、
前記第1レンズ部及び前記第2レンズ部は、前記投影レンズ部の下方かつ左右に配置されており、
前記第2反射面及び前記第3反射面は、前記光源から放射される光が入射するように前記光源の下方かつ左右に配置されており、
前記遮光部材は、前記第2反射面及び前記第3反射面から前記第1レンズ部及び前記第2レンズ部に向かう光を遮らない高さ寸法に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の自動二輪車の前照灯
【請求項3】
前記レンズと前記遮光部材との間に配置され、前記第1反射面から前記第1レンズ部及び前記第2レンズ部に向かう光を遮光するための付加遮光部材をさらに備えていることを特徴とする請求項2に記載の自動二輪車の前照灯
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に係り、特に車体をバンクさせた場合であっても、進行方向の路面を照射することが可能な車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用灯具の分野においては、プロジェクタ型の車両用前照灯が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図7に示すように、特許文献1に記載のプロジェクタ型の車両用前照灯90は、長軸Xを回転軸とする回転放物面として形成された反射鏡91、反射鏡91の第1焦点F1に一致するように配置されたハロゲン電球などの光源92、反射鏡91の略第2焦点F2に略一致するように配置された遮光板93、反射鏡91の前方(すなわち、照射方向前方)に遮光板93に焦点を位置させて配置された投影レンズ94等を備えている。
【0004】
特許文献1に記載の車両用前照灯90によれば、第1焦点F1に配置された光源92の像は第2焦点F2に結像するものとなるが、投影レンズ94で投射されると上向き光となる反射鏡91の下半分で反射した光は遮光板93により遮蔽され、投影レンズ94に達することはない。よって、車両用前照灯90としての照射光には上向き光は含まれることはなく、図8(a)に示すようなカットオフラインCLを含むすれ違い配光パターンPが得られるものとなる。
【0005】
上記構成の車両用前照灯90を自動二輪車の前照灯として用いた場合、車体をバンクさせると、これに伴って車両用前照灯90もバンクする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−135247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、車両用前照灯90はプロジェクタ型のため、その配光パターンPは明瞭なカットオフラインCLを持ち、それより上に光が照射されない(図8(b)参照)。このため、車体をバンクさせた場合、進行方向への路面への光が無く、先の路面情報(図8(b)中ハッチングの円領域参照)を得ることができない(又はほとんどできない)、という問題がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、車体をバンクさせた場合であっても、進行方向の路面を照射しその方向の路面状況を把握することが可能な車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、投影レンズ部と、第1レンズ部と、第2レンズ部と、を含むレンズと、前記投影レンズ部の後側焦点より後方、かつ、前記投影レンズ部の光軸上に配置された光源と、第1焦点が前記光源近傍に設定され、第2焦点が前記投影レンズの後側焦点近傍に設定された楕円系の第1反射面と、上端縁を前記投影レンズ部の後側焦点近傍に位置させた状態で前記レンズと前記光源との間に配置され、前記光源から放射された光の一部を遮光することで前記上端縁により規定されるカットオフラインを形成する遮光部材と、第1焦点が前記光源近傍に設定され、第2焦点が前記第1レンズ部の入射面近傍に設定された楕円系の第2反射面と、第1焦点が前記光源近傍に設定され、第2焦点が前記第2レンズ部の入射面近傍に設定された楕円系の第3反射面と、を備えており、前記第1レンズ部は、前記第2反射面で反射されて前記第1レンズ部を透過する光が、上下左右に拡散されて、直立時の車体前端に正対する仮想鉛直スクリーン上の水平線より上かつ鉛直線に対し左右いずれか一方のバンク配光領域を照射するように円柱状に凹んだ出射面を含んでおり、前記第2レンズ部は、前記第3反射面で反射されて前記第2レンズ部を透過する光が、上下左右に拡散されて、直立時の車体前端に正対する仮想鉛直スクリーン上の水平線より上かつ鉛直線に対し他方のバンク配光領域を照射するように円柱状に凹んだ出射面を含んでおり、前記遮光部材は、前記第2反射面からの反射光及び前記第3反射面からの反射光が通過する開口が形成されておらず、かつ、前記第2反射面からの反射光及び前記第3反射面からの反射光を遮らない位置に配置されていることを特徴とする。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、第1レンズ部(円柱状に凹んだ出射面)、第2反射面、第2レンズ部(円柱状に凹んだ出射面)及び第3反射面の作用により、第1レンズ部及び第2レンズ部を透過する光が上下左右方向に拡散されることで、直立時の車体前端に正対する仮想鉛直スクリーン上の水平線より上かつ鉛直線に対し一方及び他方のバンク配光領域を照射する配光パターンを形成することが可能となる。この配光パターンは、車体をバンクさせた場合、水平線よりも下に移動し、進行方向の路面を照射する。これにより、進行方向の路面状況を把握することが可能となる。
【0011】
以上のように、請求項1に記載の発明によれば、車体をバンクさせた場合であっても、進行方向の路面を照射しその方向の路面状況を把握することが可能な車両用灯具を実現することが可能となる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第1反射面は、前記光源から放射される光が入射するように前記光源の上方に配置されており、前記第1レンズ部及び前記第2レンズ部は、前記投影レンズ部の下方かつ左右に配置されており、前記第2反射面及び前記第3反射面は、前記光源から放射される光が入射するように前記光源の下方かつ左右に配置されており、前記遮光部材は、前記第2反射面及び前記第3反射面から前記第1レンズ部及び前記第2レンズ部に向かう光を遮らない高さ寸法に設定されていることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、第2反射面及び第3反射面(従来の反射鏡の下半分に相当)で反射した光が遮蔽部材により遮られることなく第1レンズ部及び第2レンズ部に入射する構成であるため、反射鏡の下半分で反射した光が遮光板により遮蔽されていた従来と比べ、光束利用効率を向上させることが可能となる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記レンズと前記遮光部材との間に配置され、前記第1反射面から前記第1レンズ部及び前記第2レンズ部に向かう光を遮光するための付加遮光部材をさらに備えていることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、付加遮光部材の作用により、第1反射面で反射された反射光が第1レンズ部及び第2レンズ部を透過するのを防止することが可能となるため、第1反射面で反射された反射光が第1レンズ部及び第2レンズ部を透過して前方に照射され、グレアの原因となるのを防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、車体をバンクさせた場合であっても、進行方向の路面を照射しその方向の路面状況を把握することが可能な車両用灯具を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態である車両用灯具10の斜視図である。
図2】車両用灯具10の縦断面図である。
図3】(a)レンズ11の正面図、(b)側面図、(c)底面図である。
図4】遮光部材14の斜視図である。
図5】車両用灯具10(レンズ11及び第1反射面13を省略)の斜視図である。
図6】(a)車体直立時の主配光パターンP1及び付加配光パターンP2、P2の例、(b)車体バンク時の主配光パターンP1及び付加配光パターンP2、P2の例である。
図7】従来の車両用前照灯90の縦断面図である。
図8】(a)従来の車両用前照灯90により形成される配光パターンP(車体直立時)の例、(b)従来の車両用前照灯90により形成される配光パターンP(車体バンク時)の例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態である車両用灯具について図面を参照しながら説明する。
【0019】
本実施形態の車両用灯具10は、例えば、自動二輪車の前照灯又は自動車のフォグランプとして用いられるプロジェクタタイプの灯具ユニットである。
【0020】
以下、車両用灯具10が自動二輪車用の前照灯である例について説明する。
【0021】
図1図2に示すように、車両用灯具10は、レンズ11、光源12、第1反射面13、遮光部材14、第2反射面15、第3反射面16等を備えている。
【0022】
レンズ11は、図3(a)〜図3(c)に示すように、投影レンズ部11a、その下方かつ左右に配置された第1レンズ部11b及び第2レンズ部11cを含む透明樹脂製(又はガラス製)のレンズである。
【0023】
投影レンズ部11aは、一般的なプロジェクタタイプの灯具ユニットに用いられる投影レンズと同様、車両前方側表面が凸レンズ面11aで車両後方側表面が平面の非球面レンズである。
【0024】
図3(a)に示すように、第1レンズ部11bは投影レンズ部11aの光軸AXを含む鉛直面を境界として一方の側(図3(a)中右側)に配置され、第2レンズ部11cは他方の側(図3(a)中左側)に配置されている。
【0025】
第1レンズ部11bは、これを透過する第2反射面15からの光が上下左右に拡散されて、直立時の車体前端に正対する仮想鉛直スクリーン(例えば、車両前端部前方約25mに配置されている)上の水平線Hより上かつ鉛直線Vに対し一方の側(図6(a)中左側)のバンク配光領域A(例えば、上方30度、左60度程度)を照射するように、円柱状(ある半径のある程度傾きを持った円柱状)に凹んだ出射面11b及びその反対側の入射面11bを含んでいる(図3(a)〜図3(b)参照)。なお、円柱状の凹んだ出射面11bの半径や傾きを調整することで上下左右に拡散する程度を調整することが可能である。
【0026】
同様に、第2レンズ部11cは、これを透過する第3反射面16からの光が上下左右に拡散されて、直立時の車体前端に正対する仮想鉛直スクリーン上の水平線Hより上かつ鉛直線Vに対し他方の側(図6(a)中右側)のバンク配光領域A(例えば、上方30度、右60度程度)を照射するように、円柱状(ある半径のある程度傾きを持った円柱状)に凹んだ出射面11c及びその反対側の入射面11cを含んでいる(図3(a)〜図3(b)参照)。なお、円柱状の凹んだ出射面11bの半径や傾きを調整することで上下左右に拡散する程度を調整することが可能である。
【0027】
光源12は、図2に示すように、投影レンズ部11aの後側焦点F11aより後方、かつ、投影レンズ部11aの光軸AX上に配置されている。
【0028】
光源12は、ガラス管内に少なくとも1つのフィラメント(例えば、HS1型ハロゲン電球の走行ビーム用フィラメント)を含むハロゲン電球、HID電球、白熱電球のように、全周方向に光を放射することが可能な光源である。なお、光源12は、LED(例えば、青色LEDチップと蛍光体とを組み合わせた白色LED)であってもよい。LEDは半球方向に光を放射する光源であるが、二つのLEDの背面(発光面の反対側の面)を対向させることで、全周方向に光を放射することが可能な光源を構成することが可能である。
【0029】
第1反射面13は、光源12から上方向に放射される光が入射するように光源12の上方(投影レンズ部11aの光軸AXの上方)に配置されている(図2参照)。第1反射面13は、第1焦点F113が光源12近傍に設定され、第2焦点F213が投影レンズ部11aの後側焦点F11a近傍に設定された楕円系の反射面である。第1反射面13は、光源12から入射する光を反射し投影レンズ部11aを透過させる。
【0030】
遮光部材14は、上端縁14aを投影レンズ部11aの後側焦点F11a近傍に位置させた状態でレンズ11と光源12との間に配置されている(図2参照)。遮光部材14は、図4に示すように、遮光部本体14b、付加遮光部14c等を含んでいる。
【0031】
遮光部本体14bは、一般的なプロジェクタタイプの灯具ユニットに用いられる遮光部材と同様、カットオフラインCL(図6(a)参照)に対応した上端縁14aを備えており、光源12から放射された光の一部を遮光することで上端縁14aにより規定されるカットオフラインCLを形成する。遮光部材14(遮光部材本体14b)は、第2反射面15及び第3反射面16で反射されて第1レンズ部11b及び第2レンズ部11cに向かう光を遮らない高さ寸法に設定されている(図2参照)。
【0032】
付加遮光部14cは、遮光部材本体14bの下端縁からレンズ11に向かって略水平に延びており、第1反射面13で反射され第1レンズ部11b及び第2レンズ部11cに向かう光を遮光する。なお、付加遮光部14cは、遮光部材本体14bと一体であってもよいし、別体であってもよい。
【0033】
第2反射面15及び第3反射面16は、光源12から下方向に放射される光が入射するように光源12の下方(投影レンズ部11aの光軸AXの下方)かつ左右に配置されている(図1図5参照)。第2反射面15は、図5に示すように、投影レンズ部11aの光軸AXを含む鉛直面を境界として一方の側(図5中右側)に配置され、第3反射面16は他方の側(図5中左側)に配置されている。
【0034】
第2反射面15は、第1焦点F115が光源12近傍に設定され(図2図5参照)、第2焦点F215が第1レンズ部11bの入射面11b近傍に設定された(図2図3(b)、図3(c)参照)楕円系の反射面である。第2反射面15は、光源12から入射する光を反射し第1レンズ部11bを透過させる(図2参照)。
【0035】
第2反射面15の第2焦点F215は鉛直方向に関し投影レンズ部11aの光軸AX上ではなく第1レンズ部11bの入射面11b近傍に設定されているため(図2参照)、第2反射面15で反射されて第1レンズ部11bを透過する光の大部分は、斜め上方向に向かいかつ第2焦点F215から拡散する光となる(図2参照)。これにより、第1レンズ部11bを透過する光を上下方向に大きく拡散させることが可能となる。
【0036】
また、第2反射面15の第2焦点F215は水平方向に関し投影レンズ部11aの光軸AX上ではなく第1レンズ部11bの入射面11b近傍に設定されている(図3(c)参照)ため、第1レンズ部11bを透過する光を左右方向に大きく拡散させることが可能となる。
【0037】
第3反射面16は、第1焦点F116が光源12近傍に設定され(図2図5参照)、第2焦点F216が第2レンズ部11cの入射面11c近傍に設定された(図2図3(b)、図3(c)参照)楕円系の反射面である。第3反射面16は、光源12から入射する光を反射し第2レンズ部11cを透過させる(図2参照)。
【0038】
第3反射面16の第2焦点F216は鉛直方向に関し投影レンズ部11aの光軸AX上ではなく第2レンズ部11cの入射面11c近傍に設定されているため(図2参照)、第3反射面15で反射されて第2レンズ部11cを透過する光の大部分は、斜め上方向に向かいかつ第2焦点F216から拡散する光となる(図2参照)。これにより、第2レンズ部11cを透過する光を上下方向に大きく拡散させることが可能となる。
【0039】
また、第3反射面16の第2焦点F216は水平方向に関し投影レンズ部11aの光軸AX上ではなく第2レンズ部11cの入射面11c近傍に設定されている(図3(c)参照)ため、第2レンズ部11cを透過する光を左右方向に大きく拡散させることが可能となる。
【0040】
上記構成の車両用灯具10によれば、光源12から放射された光のうち第1反射面13に入射した光は、当該第1反射面13で反射されて投影レンズ部11aを透過し、前方に照射される。これにより、車両前端部に正対する仮想鉛直スクリーン上にカットオフラインCLを含むすれ違い用配光パターンに適した主配光パターンP1(図6(a)参照)が形成される。なお、第1反射面13で反射される光は、遮光部材14(付加遮光部14c)で遮光されるため、第1レンズ部11b及び第2レンズ部11cに入射しない。
【0041】
一方、光源12から放射された光のうち第2反射面15に入射した光は、当該第2反射面15で反射され、遮光部材14の下方を通過して第1レンズ部11bを透過し(図2参照)、円柱状に凹んだ出射面11bの作用により上下左右に拡散する光として前方に照射される。円柱状に凹んだ出射面11bはレンズ11の車両後方側表面(平面)に対し、ある角度を持っているため、第1レンズ部11b(出射面11b)を透過した光は、上下左右に拡散される。
【0042】
以上のように、第2反射面15で反射されて第1レンズ部11bを透過する光が上下左右方向に拡散されることで、図6(a)に示すように、バンク配光領域Aを照射する付加配光パターンP2が形成される。
【0043】
同様に、光源12から放射された光のうち第3反射面16に入射した光は、当該第3反射面16で反射され、遮光部材14の下方を通過して第2レンズ部11cを透過し(図2参照)、円柱状に凹んだ出射面11cの作用により上下左右に拡散する光として前方に照射される。円柱状に凹んだ出射面11cはレンズ11の車両後方側表面(平面)に対し、ある角度を持っているため、第1レンズ部11c(出射面11c)を透過した光は、上下左右に拡散される。
【0044】
以上のように、第3反射面16で反射されて第2レンズ部11cを透過する光が上下左右方向に拡散されることで、図6(a)に示すように、バンク配光領域Aを照射する付加配光パターンP2が形成される。
【0045】
以上のように形成されるバンク配光パターン(付加配光パターンP2及び付加配光パターンP2)は、主配光パターンP1より広い範囲(上方30度、左右それぞれ60度程度)を照射する配光パターンとなる(図6(a)、図6(b)参照)。
【0046】
次に、車体バンク時の作用について説明する。
【0047】
例えば、図6(b)に示すように、右コーナーコーナリング時(左コーナーコーナリング時も同様)に車体を右側にバンクさせると(例えば、バンク角36°)、これに伴って車両用灯具10もバンクする。これにより、それまで水平線Hよりも上の領域Aを照射していた付加配光パターンP2図6(a)参照)が、水平線Hよりも下に移動し、進行方向の路面(図6(b)中ライダーの右前方の路面)を照射する。この水平線Hよりも下に移動した付加配光パターンP2が照射する路面領域はライダーの視線方向に位置するため、その方向の路面状況を把握することが可能となる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態の車両用灯具10によれば、第1レンズ部11b(円柱状に凹んだ出射面11b)、第2反射面15、第2レンズ部11c(円柱状に凹んだ出射面11c)及び第3反射面16の作用により、第1レンズ部11b及び第2レンズ部11cを透過する光が上下左右方向に拡散されることで、直立時の車体前端に正対する仮想鉛直スクリーン上の水平線Hより上かつ鉛直線Vに対し一方及び他方のバンク配光領域A、Aを照射する付加配光パターンP、P図6(a)参照)を形成することが可能となる。この付加配光パターンP、Pは、車体をバンクさせた場合、水平線Hよりも下に移動し、進行方向の路面を照射する(図6(b)参照)。これにより、進行方向の路面状況を把握することが可能となる。
【0049】
以上のように、本実施形態の車両用灯具10によれば、車体をバンクさせた場合であっても、進行方向の路面を照射しその方向の路面状況を把握することが可能な車両用灯具10を実現することが可能となる。
【0050】
また、本実施形態の車両用灯具10によれば、第2反射面15及び第3反射面16(従来の反射鏡の下半分に相当)で反射した光が遮蔽部材14により遮られることなく第1レンズ部11b及び第2レンズ部11cに入射する構成であるため(図2参照)、反射鏡の下半分で反射した光が遮光板により遮蔽されていた従来(図7参照)と比べ、光束利用効率を向上させることが可能となる。
【0051】
また、本実施形態の車両用灯具10によれば、第1反射面13とは別の第2反射面15及び第3反射面16を用いているため、主配光パターンP1の光量が減少することがない。
【0052】
また、本実施形態の車両用灯具10によれば、付加遮光部材14の作用により、第1反射面13で反射された反射光が第1レンズ部11b及び第2レンズ部11cを透過するのを防止することが可能となるため、第1反射面13で反射された反射光が第1レンズ部11b及び第2レンズ部11cを透過して前方に照射され、グレアの原因となるのを防止することが可能となる。
【0053】
また、本実施形態の車両用灯具10によれば、第1反射面13とは別の光学系(第1レンズ部11b、第2反射面15、第2レンズ部11c及び第3反射面16)を用いて付加配光パターンP、Pを形成する構成であるため、バンク配光パターン(付加配光パターンP及び付加配光パターンP)単独の調整が可能となる。
【0054】
また、本実施形態の車両用灯具10によれば、実質的に追加部品が不要であるため、低コスト化が可能となる。
【0055】
次に、変形例について説明する。
【0056】
上記実施形態では、第2反射面15及び第3反射面16を光源12の下方(投影レンズ部11aの光軸AXの下方)に配置した例(図2図5参照)について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第2反射面15及び第3反射面16は、光源12の上方に配置してもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、第1レンズ部11b及び第2レンズ部11cを投影レンズ部11aの下方に配置した例(図1参照)について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1レンズ部11b及び第2レンズ部11cは、投影レンズ部11aの上方に配置してもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、第2反射面15の第2焦点F215が第1レンズ部11bの入射面11b近傍に設定され、第3反射面16の第2焦点F216が第2レンズ部11cの入射面11c近傍に設定された例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、これとは逆に、第2反射面15の第2焦点F215が第2レンズ部11cの入射面11c近傍に設定され、第3反射面16の第2焦点F216が第1レンズ部11bの入射面11b近傍に設定されていてもよい。
【0059】
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。これらの記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0060】
10…車両用灯具、11…レンズ、11a…投影レンズ部、11b…第1レンズ部、11c…第2レンズ部、12…光源、13…第1反射面、14…遮光部材、15…第2反射面、16…第3反射面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8