特許第5692532号(P5692532)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5692532
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】車両用開閉体制御装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/632 20150101AFI20150312BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20150312BHJP
   B60J 5/06 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   E05F15/14
   B60J5/04 C
   B60J5/06 A
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-35243(P2012-35243)
(22)【出願日】2012年2月21日
(65)【公開番号】特開2013-170394(P2013-170394A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2014年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】錦邉 健
(72)【発明者】
【氏名】石田 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】神谷 剛
【審査官】 神崎 共哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−85032(JP,A)
【文献】 特開2003−253961(JP,A)
【文献】 特開2009−108605(JP,A)
【文献】 特開2010−272276(JP,A)
【文献】 特開2007−40005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00−15/20
E05B 1/00−85/28
B60J 5/04, 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の開閉体を駆動する駆動手段と、
前記駆動手段を制御する制御手段と、
前記開閉体の開閉作動に対応する二方向の操作入力が可能なハンドル装置と、
前記操作入力及びその操作方向を検知する操作入力検知手段と、
前記開閉体の作動位置を検出する作動位置検出手段と、を備え、
前記制御手段は、前記開閉体が全開位置にある場合には、前記開閉体の閉作動に対応する閉方向の操作入力が検知されたとき及び前記開閉体の開作動に対応する開方向の操作入力が検知されたときの何れにおいても前記開閉体を閉作動させるべく閉作動制御を実行する車両用開閉体制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用開閉体制御装置において、
前記制御手段は、前記開閉体が全閉位置にある場合には、前記開方向の操作入力が検知されたときに前記開閉体を開作動させるべく開作動制御を実行し、前記閉方向の操作入力が検知されたときには前記開作動制御を実行しないこと、
を特徴とする車両用開閉体制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用開閉体制御装置において、
前記制御手段は、前記開作動中に前記閉方向の操作入力が検知されたときには、前記開閉体の作動方向を反転させて閉作動させるべく、前記駆動手段を制御すること、
を特徴とする車両用開閉体制御装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の車両用開閉体制御装置において、
前記制御手段は、前記閉作動中に前記開方向の操作入力が検知されたときには、前記開閉体の作動方向を反転させて開作動させるべく、前記駆動手段を制御すること、
を特徴とする車両用開閉体制御装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の車両用開閉体制御装置において、
前記制御手段は、前記開作動又は前記閉作動中に前記操作入力が検知されたときには、前記開閉体を停止させるべく停止制御を実行すること、
を特徴とする車両用開閉体制御装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の車両用開閉体制御装置において、
前記制御手段は、前記開閉体が前記全開位置又は全閉位置以外の位置に停止している場合において前記操作入力が検知されたときには、前記操作方向に応じた方向に前記開閉体を作動させるべく、前記駆動手段を制御すること、を特徴とする車両用開閉体制御装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6の何れか一項に記載の車両用開閉体制御装置において、
前記操作入力の継続時間を計測する計測手段を備え、
前記制御手段は、前記開閉体の作動速度が異なる複数の駆動モードで前記駆動手段を制御可能であるとともに、前記継続時間が所定時間を超えた場合には、該所定時間を超える前のモードよりも前記作動速度の速い高速作動モードに前記駆動モードを切り替えること、を特徴とする車両用開閉体制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の車両用開閉体制御装置において、
前記制御手段は、前記操作方向が前記作動方向に一致する場合にのみ前記駆動モードを前記高速作動モードに切り替えること、を特徴とする車両用開閉体制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用開閉体制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用の開閉体には、多くの場合、その開閉体を開作動又は閉作動させるためのハンドル装置が設けられている。例えば、特許文献1に示されるように、通常、スライドドアのドアハンドルは、開方向に操作して、その可動部であるハンドグリップを引き起こすことにより、ロック機構によるスライドドアの拘束(全閉ロック)を解除することが可能となっている。
【0003】
ところが、このような従来の構成では、スライドドアが全開位置にある場合にも、そのロック機構による拘束(全開ロック)を解除するため、先ず、そのドアハンドルを開方向に操作しなければならない。このため、そのロック解除から一連の動作でスライドドアを閉作動させることができず、これが利用者の利便性を低下させる一因にもなっていた。
【0004】
そこで、例えば、特許文献2に記載のハンドル装置は、閉方向に操作した場合にも当該方向にハンドグリップが動くようにすることで、そのスライドドアの開閉作動に対応する二方向の操作入力が可能となっている。即ち、閉方向の操作入力により全開ロックを解除することができるような構成とすることで、そのスライドドアが全開位置にある場合であっても、全閉位置からの開作動時と同様、ロック解除から一連の動作でスライドドアを閉作動させることができるようになる。そして、これにより、直感的な操作入力による開閉作動を担保することで、その操作性及び利便性を向上させることができる。
【0005】
また、従来、例えば、特許文献3に示されるドア開閉装置のように、駆動源を有して車両の開閉体を開閉作動させる車両用開閉体制御装置が知られている。そして、このような車両用開閉体制御装置を採用することで、利用者の負担を大幅に軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−227462号公報
【特許文献2】特開2007−85032号公報
【特許文献3】特許第4161898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、駆動源により開閉体の作動を制御する場合、直感的な操作入力に対応することのみが、その操作性や利便性の向上につながるとは限らない。特に、上記のような二方向の操作入力が可能なハンドル装置については、その利用者側に、従来のハンドル装置を操作した際の記憶、或いは習慣等、所謂履歴効果が存在する可能性がある。このため、必ずしも、その直感的であると考えられる方向にハンドル装置が操作されるとは限らず、この点において、なお改善の余地を残すものとなっていた。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、二方向の操作入力が可能なハンドル装置が適用される開閉体について、その操作性及び利便性を向上させることのできる車両用開閉体制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両の開閉体を駆動する駆動手段と、前記駆動手段を制御する制御手段と、前記開閉体の開閉作動に対応する二方向の操作入力が可能なハンドル装置と、前記操作入力及びその操作方向を検知する操作入力検知手段と、前記開閉体の作動位置を検出する作動位置検出手段と、を備え、前記制御手段は、前記開閉体が全開位置にある場合には、前記開閉体の閉作動に対応する閉方向の操作入力が検知されたとき及び前記開閉体の開作動に対応する開方向の操作入力が検知されたときの何れにおいても前記開閉体を閉作動させるべく閉作動制御を実行する車両用開閉体制御装置であること、を要旨とする。
【0010】
上記構成によれば、その作動方向と一致した直感的な操作入力で、全開位置にある開閉体を閉作動させることができる。また、過去の記憶や習慣等によって、利用者が、開閉体の作動方向とは逆向きとなる開方向の操作入力を行った場合にも、その開方向の操作入力により当該開閉体を閉作動させることができる。そして、これにより、その全開ロックを解除した後、あらためてハンドル装置を閉方向に操作するような手間を省くことができる。その結果、操作性及び利便性を向上させることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記制御手段は、前記開閉体が全閉位置にある場合には、前記開方向の操作入力が検知されたときに前記開閉体を開作動させるべく開作動制御を実行し、前記閉方向の操作入力が検知されたときには前記開作動制御を実行しないこと、を要旨とする。
【0012】
上記構成によれば、その作動方向と一致した直感的な操作入力で、全閉位置にある開閉体を開作動させることができる。そして、その操作方向が作動方向に一致しない場合には、開閉体を全閉状態のまま保持することにより、誤操作による開作動を防止することができる。その結果、その操作性及び利便性の向上と併せて、高い安全性を確保することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記制御手段は、前記開作動中に前記閉方向の操作入力が検知されたときには、前記開閉体の作動方向を反転させて閉作動させるべく、前記駆動手段を制御すること、を要旨とする。
【0014】
請求項4に記載の発明は、前記制御手段は、前記閉作動中に前記開方向の操作入力が検知されたときには、前記開閉体の作動方向を反転させて開作動させるべく、前記駆動手段を制御すること、を要旨とする。
【0015】
上記各構成によれば、開閉体が作動中である場合においても、その作動方向をハンドル装置に対する操作入力の方向に一致させることができる。そして、これにより、より直感的に開閉体を操作することができるようにすることで、その操作性及び利便性を更に向上させることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、前記制御手段は、前記開作動又は前記閉作動中に前記操作入力が検知されたときには、前記開閉体を停止させるべく停止制御を実行すること、を要旨とする。
【0017】
上記構成によれば、利用者の意思で、速やかに作動中の開閉体を停止させることができるようになる。その結果、例えば、開閉体による所謂挟み込みの発生を未然に防ぐことができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、前記制御手段は、前記開閉体が前記全開位置又は全閉位置以外の位置に停止している場合において前記操作入力が検知されたときには、前記操作方向に応じた方向に前記開閉体を作動させるべく、前記駆動手段を制御すること、を要旨とする。
【0019】
上記構成によれば、その作動方向と一致した直感的な操作入力で、停止状態にある開閉体を開作動又は閉作動させることができる。その結果、操作性及び利便性を向上させることができる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、前記操作入力の継続時間を計測する計測手段を備え、前記制御手段は、前記開閉体の作動速度が異なる複数の駆動モードで前記駆動手段を制御可能であるとともに、前記継続時間が所定時間を超えた場合には、該所定時間を超える前のモードよりも前記作動速度の速い高速作動モードに前記駆動モードを切り替えること、を要旨とする。
【0021】
即ち、利用者の多くは、過去の経験等から、その「操作入力の継続時間と作動速度の上昇との間に相関がある」ことを感覚的に受け入れやすい傾向がある。そして、その継続時間の計測は、ハンドル装置の構造や経年変化の影響を受け難いという利点がある。従って、上記構成によれば、直感的な操作によって、より確実に、利用者が所望する適切な速度で開閉体を開閉作動させることができる。その結果、操作性及び利便性を更に向上させることができる。
【0022】
請求項8に記載の発明は、前記制御手段は、前記操作方向が前記作動方向に一致する場合にのみ前記駆動モードを前記高速作動モードに切り替えること、を要旨とする。
上記構成によれば、その操作方向が作動方向に一致しない場合には、開閉体の作動速度が抑えられたままとなる。そして、これにより、誤操作によって開閉体が高速作動することを防止することができる。その結果、その操作性及び利便性の向上と併せて、高い安全性を確保することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、二方向の操作入力が可能なハンドル装置が適用される開閉体について、その操作性及び利便性を向上させることが可能な車両用開閉体制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明にかかるドア制御装置の概略構成図。
図2】二方向の操作入力が可能なドアハンドルの概略構成図。
図3】第1の実施形態におけるドア開閉制御の態様を示すフローチャート。
図4】第2の実施形態におけるドア開閉制御の態様を示すフローチャート。
図5】第3の実施形態におけるドア開閉制御の態様を示すフローチャート。
図6】第3の実施形態におけるドア開閉制御の作用説明図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1の実施形態]
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、開閉体としてのスライドドア1は、車両前後方向に移動することにより車両のボディ側面に設けられた開口部(図示略)を開閉できるように構成されている。具体的には、このスライドドア1は、車両前方側(同図中、左側)に移動することにより、ボディの開口部を閉塞する閉状態となり、車両後方側(同図中、右側)に移動することにより、その開口部を介して乗降可能な開状態になる。そして、スライドドア1の外表面(意匠面)を構成するアウターパネル2には、当該スライドドア1を開閉すべく操作されるハンドル装置としてのドアハンドル3が設けられている。
【0026】
詳述すると、スライドドア1には、当該スライドドア1を全閉位置で拘束するためのフロントロック5a及びリアロック5b(全閉ロック)が設けられている。また、スライドドア1には、当該スライドドア1を全開位置で拘束するための全開ロック5cが設けられている。そして、本実施形態では、これらの各ロック機構(ラッチ機構)5は、リモコン6から延びるワイヤ等の伝達部材を介してドアハンドル3と機械的に連結されている。
【0027】
即ち、本実施形態では、ドアハンドル3に対する操作入力は、機械的に各ロック機構(ラッチ機構)5に伝達されるようになっている。そして、その伝達される操作力によってロック機構5によるスライドドア1の拘束が解除されることにより、全閉位置にあるスライドドア1の開方向への移動、又は全開位置にあるスライドドア1の閉方向への移動が許容されるようになっている。
【0028】
さらに詳述すると、図2に示すように、本実施形態のドアハンドル3は、その操作入力に基づいて、車両後方側(同図中、右側)及び車両前方側(同図中、左側)の二方向に動作するハンドグリップ10を備えている。
【0029】
具体的には、ドアハンドル3の把持部を構成するハンドグリップ10は、車両後方側に操作されることにより、その後端10aを支点として、先端10bが車両後方側に引き起こされるように動作する(動作位置P1)。また、ハンドグリップ10は、車両前方側に操作されることにより、その先端10bが、その当接するハンドルキャップ12のテーパ面12a上を摺動する態様で車両前方側に動作する(動作位置P2)。尚、本実施形態のドアハンドル3は、その操作入力が途絶した場合、即ち利用者がハンドグリップ10を手放した場合には、図示しない付勢部材によって、そのハンドグリップ10が中立位置(P0)に復帰するように構成されている。そして、本実施形態のドアハンドル3は、このハンドグリップ10の動作に基づいて、スライドドア1の開閉作動に対応する二方向、即ち閉作動に対応する閉方向、及び開作動に対応する開方向の操作入力が可能となっている。
【0030】
本実施形態のスライドドア1は、このドアハンドル3に対する操作入力が閉方向である場合、及び開方向である場合の何れにおいても、その操作力がロック機構5に伝達されるようになっている。そして、これにより、全閉位置から開作動させる場合のみならず、全開位置から閉作動させる場合についても、そのスライドドア1の作動方向に一致する直感的な操作入力で、そのロック機構5による拘束を解除することが可能となっている。
【0031】
また、図1に示すように、スライドドア1には、当該スライドドア1を駆動して開閉作動させることが可能な駆動手段としてのドア開閉アクチュエータ(開閉ACT)20が設けられている。そして、このドア開閉アクチュエータ20は、その駆動源であるモータ21に対し、制御手段としてのドアECU22が駆動電力を供給することにより、その駆動対象となるスライドドア1を開閉作動させることが可能な構成になっている。
【0032】
詳述すると、本実施形態のドアハンドル3には、ハンドグリップ10が車両後方側に動作することにより作動する開操作スイッチ23、及びハンドグリップ10が車両前方側に動作することにより作動する閉操作スイッチ24が設けられている。そして、ドアECU22は、これら開操作スイッチ23及び閉操作スイッチ24の出力信号(操作入力信号Sc)に基づいて、操作入力(の有無)、及びその操作入力の方向(操作方向)を検知する。
【0033】
また、ドアECU22には、作動位置センサ25が接続されており、ドアECU22は、この作動位置センサ25の出力信号(作動位置信号Sp)に基づいて、スライドドア1の作動位置(開閉位置)を検出する。そして、ドアECU22は、その検知したドアハンドル3に対する操作入力の方向、及び検出したスライドドア1の作動位置に基づいて、当該スライドドア1を開閉作動(又は停止)させるべく、ドア開閉アクチュエータ20の作動を制御する。
【0034】
即ち、本実施形態では、上記開操作スイッチ23及び閉操作スイッチ24とドアECU22とにより操作入力検知手段が構成されている。また、作動位置センサ25とドアECU22とにより作動位置検出手段が構成されている。そして、これらの各構成(駆動手段、制御手段、ハンドル装置、操作入力検知手段及び作動位置検出手段)によって、車両用開閉体制御装置としてのドア制御装置30が構成されている。
【0035】
(ドア開閉制御)
次に、本実施形態におけるドア開閉制御の態様及びその処理手順について説明する。
図3のフローチャートに示すように、ドアECU22は、先ず、操作入力信号Scに基づく操作入力検知処理(ステップ101)、及び作動位置信号Spに基づく作動位置検出処理(ステップ102)を実行する。次に、ドアECU22は、ドアハンドル3に対する操作入力の有無を判定し(ステップ103)、操作入力がある(検知した)と判定した場合(ステップ103:YES)には、続いてスライドドア1が全開位置にあるか否かを判定する(ステップ104)。そして、スライドドア1が全開位置にあると判定した場合(ステップ104:YES)には、ドア開閉アクチュエータ20によりスライドドア1を閉作動させるべく、その閉作動制御を実行する(ステップ105)。
【0036】
即ち、スライドドア1が全開位置にあるならば、上記ステップ101の操作入力検知処理において閉方向の操作入力が検知されたとき、及び開方向の操作入力が検知されたときの何れにおいても、閉作動制御を実行する。尚、上記ステップ103において、操作入力が無い(検知していない)と判定した場合(ステップ103:NO)、ドアECU22は、ステップ104以降の各処理を実行しない。
【0037】
一方、上記ステップ104において、スライドドア1が全開位置にないと判定した場合(ステップ104:NO)、ドアECU22は、続いてスライドドア1が全閉位置にあるか否かを判定し(ステップ106)、全閉位置にあると判定した場合(ステップ106:YES)には、更に操作方向が開方向であるか否かを判定する(ステップ107)。そして、その操作方向が開方向である場合(ステップ107:YES)には、ドア開閉アクチュエータ20によりスライドドア1を開作動させるべく、その開作動制御を実行する(ステップ108)。
【0038】
尚、上記ステップ107において、その操作方向が閉方向である場合(ステップ107:NO)、ドアECU22は、ステップ108以降の各処理を実行しない。
また、ドアECU22は、上記ステップ106においてスライドドア1が全閉位置にないと判定した場合(ステップ106:NO)、即ちスライドドア1が全閉位置又は全閉位置から移動した位置にある場合には、続いてスライドドア1が作動中であるか否かを判定する(ステップ109)。そして、作動中である、即ち閉作動制御又は開作動制御の実行中であると判定した場合(ステップ109:YES)には、そのスライドドア1の作動を停止させるべく停止制御を実行する(ステップ110)。
【0039】
更に、ドアECU22は、上記ステップ109においてスライドドア1が作動中ではない、つまり既に停止していると判定した場合(ステップ109:NO)には、続いて、その操作方向が開方向であるか否かを判定する(ステップ111)。そして、その操作方向が開方向である場合(ステップ111:YES)には、開作動制御を実行し(ステップ112)、開方向でない場合、即ち閉方向である場合(ステップ111:NO)には、閉作動制御を実行する(ステップ113)。
【0040】
本実施形態のドアECU22は、上記ステップ101〜ステップ113に示される演算処理を周期的に実行する。そして、本実施形態のドア制御装置30は、これにより、その開閉作動に対応する二方向の操作入力が可能なドアハンドル3を備えたスライドドア1の操作性及び利便性を向上させることが可能となっている。
【0041】
次に、本実施形態のドア制御装置の作用について説明する。
上記のように、ドアECU22は、ドアハンドル3に対する操作入力が検知されたとき(ステップ103:YES)、スライドドア1が全開位置にあるならば(ステップ104:YES)、その操作方向に関わらず、閉作動制御を実行する(ステップ105)。そして、本実施形態では、これにより、ドアハンドル3を閉方向に操作した場合のみならず、スライドドア1の作動方向とは逆向きの開方向に操作した場合にも、その全開位置にあるスライドドア1が閉作動するようになっている。
【0042】
一方、スライドドア1が全閉位置にある場合(ステップ106:YES)、ドアECU22は、その操作方向が開方向であるときにのみ(ステップ107:YES)、開作動制御を実行する(ステップ108)。即ち、その作動方向とは逆向きとなる閉方向の操作入力があった場合(ステップ107:NO)には、開作動制御を実行しない。そして、本実施形態では、これにより、ドアハンドル3をスライドドア1の作動方向と一致した開方向に操作した場合のみ、その全閉位置にあるスライドドア1が閉作動するようになっている。
【0043】
また、ドアECU22は、ドアハンドル3に対する操作入力が検知されたとき(ステップ103:YES)、スライドドア1が作動中であるならば(ステップ109:YES)には、その操作方向に関わらず、停止制御を実行する(ステップ112)。そして、本実施形態では、これにより、スライドドア1が全閉位置又は全閉位置から移動した位置にある場合であっても(ステップ104:NO且つステップ106:NO)、スライドドア1が停止するようになっている。
【0044】
一方、スライドドア1が停止中である場合(ステップ109:NO)、ドアECU22は、その操作方向が開方向であるときには(ステップ111:YES)、開作動制御を実行し(ステップ112)、閉方向であるときには(ステップ111:NO)、閉作動制御を実行する(ステップ113)。そして、本実施形態では、これにより、その全開位置又は全閉位置以外の位置で停止しているスライドドア1が、操作方向に応じた方向に作動するようになっている。
【0045】
以上、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)ドアECU22は、スライドドア1が全開位置にある場合には、その操作入力検知処理において閉方向の操作入力が検知されたとき、及び開方向の操作入力が検知されたときの何れにおいても、閉作動制御を実行する。
【0046】
上記構成によれば、その作動方向と一致した直感的な操作入力で、全開位置にあるスライドドア1を閉作動させることができる。また、従来型のドアハンドルを操作した際の記憶や習慣等(所謂履歴効果)に基づいて、利用者が、作動方向とは逆向きとなる開方向への操作入力によって、ロック機構によるスライドドア1の拘束(全開ロック)を解除した場合にも、その開方向の操作入力により、当該スライドドア1を閉作動させることができる。そして、これにより、その全開ロックを解除した後、あらためてドアハンドル3を閉方向に操作するような手間を省くことができる。その結果、操作性及び利便性を向上させることができる。
【0047】
(2)ドアECU22は、スライドドア1が全閉位置にある場合には、その操作入力検知処理において開方向の操作入力が検知されたときに開作動制御を実行し、閉方向の操作入力が検知されたときには開作動制御を実行しない。
【0048】
上記構成によれば、その作動方向と一致した直感的な操作入力で、全閉位置にあるスライドドア1を開作動させることができる。そして、その操作方向が作動方向に一致しない場合には、スライドドア1を全閉状態のまま保持することにより、誤操作による開作動を防止することができる。その結果、その操作性及び利便性の向上と併せて、高い安全性を確保することができる。
【0049】
(3)ドアECU22は、開作動制御又は閉作動制御の実行中に操作入力が検知された場合には、スライドドア1の停止制御を実行する。このような構成とすることで、利用者の意思で、速やかに作動中のスライドドア1を停止させることができるようになる。その結果、例えば、スライドドア1による所謂挟み込みの発生を未然に防ぐことができる。
【0050】
(4)ドアECU22は、スライドドア1が、全開位置又は全閉位置以外の位置で停止している場合には、操作方向に応じた方向にスライドドア1を作動させる。これにより、その作動方向と一致した直感的な操作入力で、停止状態にあるスライドドア1を開作動又は閉作動させることができる。その結果、操作性及び利便性を向上させることができる。
【0051】
[第2の実施形態]
以下、本発明を具体化した第2の実施形態を図面に従って説明する。尚、本実施形態は、上記第1の実施形態との比較において、スライドドアが作動中である場合の制御内容が相違する。従って、第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0052】
また、以下に説明する処理手順において、ステップ201〜ステップ208の各処理は、図3のフローチャートに示されるステップ101〜ステップ108の各処理と同一である。従って、これらステップ201〜ステップ208の各処理については、図3中の各ステップを参照することとして、その図示及び説明を省略する。
【0053】
図4のフローチャートに示すように、本実施形態のドアECU22は、操作入力が検知されたときに、スライドドア1が全開位置又は全閉位置にない場合(図3参照、ステップ103:YES、ステップ104:NO且つステップ106:NO)、先ず当該スライドドア1が閉作動中(閉作動制御の実行中)であるかを判定する(ステップ209)。また、このステップ209において、スライドドア1が閉作動中であると判定した場合(ステップ209:YES)、ドアECU22は、続いて、その検知された操作入力の方向が開方向であるか否かを判定する(ステップ210)。そして、その操作方向が開方向、即ちスライドドア1の作動方向とは逆向きである場合(ステップ210:YES)には、その作動方向を反転させるべく、開作動制御を実行する(ステップ211)。
【0054】
尚、上記ステップ210において、その操作方向が開方向ではない、即ちスライドドア1の作動方向に一致する閉方向である場合(ステップ210:NO)、ドアECU22は、上記ステップ211の処理を実行しない。
【0055】
一方、上記ステップ209において、スライドドア1が閉作動中ではないと判定した場合(ステップ209:NO)、ドアECU22は、続いて、スライドドア1が開作動中(開作動制御の実行中)であるかを判定する(ステップ212)。また、このステップ212において、スライドドア1が開作動中であると判定した場合(ステップ212:YES)には、更に、その検知された操作入力の方向が閉方向であるか否かを判定する(ステップ213)。そして、その操作方向が閉方向、即ちスライドドア1の作動方向とは逆向きである場合(ステップ213:YES)には、スライドドア1の作動方向を反転させるべく、閉作動制御を実行する(ステップ214)。
【0056】
尚、上記ステップ213において、その操作方向が閉方向ではない、即ちスライドドア1の作動方向に一致する開方向である場合(ステップ213:NO)、ドアECU22は、上記ステップ214の処理を実行しない。
【0057】
そして、ドアECU22は、上記ステップ212において、スライドドア1が開作動中ではないと判定した場合、即ち停止していると判定した場合(ステップ212:NO)には、検知された操作入力に対応する方向にスライドドア1を作動させるべく、その操作方向に応じて開作動制御又は閉作動制御を実行する(ステップ215〜ステップ217)。
【0058】
以上、本実施形態によれば、スライドドア1が作動中である場合においても、その作動方向をドアハンドル3に対する操作入力の方向に一致させることができる。そして、これにより、より直感的にスライドドア1を操作することができるようにすることで、その操作性及び利便性を更に向上させることができる。
【0059】
[第3の実施形態]
以下、本発明を具体化した第3の実施形態を図面に従って説明する。尚、第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0060】
本実施形態のドアECU22は、スライドドア1の作動速度が異なる複数の駆動モードでドア開閉アクチュエータ20(図1参照)を制御する機能を有している。具体的には、ドアECU22は、その駆動モードとして、基本的な駆動モードとなる通常モードと、この通常モードよりもスライドドア1の作動速度が速い高速作動モードとを備えている。そして、スライドドア1の開閉制御(開作動制御又は閉作動制御)は、これら二つの駆動モードのうちの通常モードで開始されるようになっている。
【0061】
また、本実施形態のドアECU22は、ドアハンドル3に設けられた開操作スイッチ23及び閉操作スイッチ24の出力信号(操作入力信号Sc)に基づいて、ドアハンドル3に対する操作入力の継続時間(t)を計測する。具体的には、計測手段としてのドアECU22は、利用者がハンドグリップ10を把持して車両前後の何れかの方向にドアハンドル3を操作した時点から、そのハンドグリップ10を手放した時点までを操作入力の継続時間(t)として計測する。そして、この操作入力の継続時間(t)が所定時間(t0)を超えた場合には、その駆動モードを開閉制御開始時の通常モードから高速作動モードに切り替える構成になっている。
【0062】
詳述すると、図5のフローチャートに示すように、ドアECU22は、操作入力の継続時間計測処理を実行すると(ステップ301)、その継続時間tが所定時間t0を超えるか否かを判定する(ステップ302)。また、操作入力の継続時間tが所定時間t0を超える場合(t≧t0、ステップ302:YES)、ドアECU22は、その操作方向がスライドドア1の作動方向と一致するか否かを判定する(ステップ303)。そして、その操作方向と作動方向とが一致する場合(ステップ303:YES)には、その駆動モードを高速作動モードに切り替えるべく、高速フラグをセットする(ステップ304)。
【0063】
本実施形態のドアECU22は、上記ステップ301〜ステップ304の各処理を、上記操作入力検知処理(図3参照、ステップ101)のサブルーチンとして実行する。そして、上記ステップ304において高速フラグがセットされた場合には、実行中の閉作動制御(図3参照、ステップ105等)又は開作動制御(図3参照、ステップ108等)において、その駆動モードが、通常モードから高速作動モードに切り替えられる。
【0064】
尚、上記ステップ302において、操作入力の継続時間tが所定時間t0に満たない場合(t<t0、ステップ302:NO)には、ステップ303及びステップ304の処理は実行されない。また、上記ステップ303において、その操作方向と作動方向とが一致しない場合(ステップ303:NO)には、ステップ304の処理は実行されない。そして、これにより、高速フラグがセットされることなく閉作動制御又は開作動制御が実行されることによって、その駆動モードが通常モードで維持される構成になっている。
【0065】
次に、上記のように構成された本実施形態のドア制御装置の作用について説明する。
図6に示すように、ドアハンドル3に対する操作入力が検知されることにより、通常モードでスライドドア1の開閉制御が開始される(t=0)。本実施形態では、その後、この操作入力が継続した場合、即ち利用者がドアハンドル3を操作し続ける「所謂長引き操作」を行うことによって、その継続時間tが計測される。そして、その長引き操作が所定時間t0を超えて継続していることが確認された後、駆動モードが高速作動モードに切り替わることで、そのスライドドア1の作動速度が上昇するようになっている。
【0066】
即ち、利用者の多くは、過去の経験等から、その「操作入力の継続時間と作動速度の上昇との間に相関がある」ことを感覚的に受け入れやすい傾向がある。そして、その継続時間の計測は、ドアハンドル3の構造や経年変化の影響を受け難いという利点がある。従って、上記構成によれば、直感的な操作によって、より確実に、利用者が所望する適切な速度でスライドドア1を開閉作動させることができる。その結果、操作性及び利便性を更に向上させることができる。
【0067】
また、その操作方向が作動方向に一致しない場合には、スライドドア1の作動速度が抑えられたままとなる。そして、これにより、誤操作によってスライドドア1が高速作動することを防止することができる。その結果、その操作性及び利便性の向上と併せて、高い安全性を確保することができる。
【0068】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記各実施形態では、本発明を、車両のボディ側面に設けられたスライドドア1を開閉作動させるドア制御装置30に具体化した。しかし、これに限らず、スイング式のドア、或いは車両後部に設けられたバックドアやラゲッジドア等、その他のドア制御装置に適用してもよい。そして、サンルーフ装置やパワーウィンドウ装置等、ドア以外の開閉体を対象とする車両用開閉体制御装置に適用してもよい。
【0069】
・上記各実施形態では、スライドドア1の外表面となるアウターパネル2に設けられたドアハンドル3、即ちアウトサイドハンドルをハンドル装置とした。しかし、これに限らず、本発明は、車室内に設けられたハンドル装置、即ちインサイドハンドルについて適用してもよい。そして、スライドドアの開閉作動に対応する二方向の操作入力が可能なハンドル装置であれば、その構成についても適宜変更してもよい。
【0070】
・上記各実施形態では、ドアハンドル3に対する操作入力を機械的に各ロック機構(ラッチ機構)5に伝達することによって、そのロック機構5によるスライドドア1の拘束を解除する構成とした。しかし、これに限らず、その操作入力の伝達を電気的な信号に置き換えて、アクチュエータにより、そのロック機構5による拘束を解除する構成としてもよい。また、上記各実施形態のような手動式のラッチ解除を組み合わせたものであってもよい。
【0071】
・上記各実施形態では、ドアハンドル3に対する操作入力検知処理(図3参照、ステップ101)をスライドドア1の作動位置検出処理(ステップ102)よりも先に実行することとしたが、その実行順は逆であってもよい。
【0072】
・また、上記各実施形態では、スライドドア1が全開位置にあると判定した場合(ステップ104:YES)には、その操作方向についての判定処理を行うことなく、閉作動制御を実行する(ステップ105)こととした。しかし、これに限らず、明示的に、閉方向の操作入力が検知されたとき、及び開方向の操作入力が検知されたときに、その閉作動制御を実行するような処理手順であってもよい。
【0073】
・上記第2の実施形態では、特に言及しなかったが、スライドドア1の作動方向を反転させるべく実行する開作動制御(ステップ211)及び閉作動制御(ステップ214)の具体的な制御内容については、例えば、その過渡特性等、停止状態からの開作動制御(ステップ108)及び閉作動制御(ステップ105)と細部が異なるものであってもよい。
【0074】
・また、全開位置又は全閉位置以外の位置における停止状態からの開作動制御(ステップ112,216)及び閉作動制御(ステップ113,217)についても、その具体的な制御内容の細部が、全開位置又は全閉位置からの開作動制御(ステップ108)及び閉作動制御(ステップ105)と異なるものであってもよい。
【0075】
・上記第3の実施形態については、上記第1の実施形態の構成を基礎として説明したが、上記第2の実施形態の構成を基礎としてもよい。
・上記第3の実施形態では、ドアECU22は、その駆動モードとして、通常モード及び高速作動モードを備えることとした。しかし、これに限らず、3つ以上の駆動モードを備える構成であってもよい。また、この場合、複数段階のモード切替についても、これを排除しない。そして、「高速作動モードへの切替」については、その操作入力の継続時間tが所定時間t0を超える前のモードが何れであれ、そのモードよりもスライドドア1の作動速度の速い別のモードに切り替われるものであればよい。
【符号の説明】
【0076】
1…スライドドア(開閉体)、3…ドアハンドル(ハンドル装置)、5…ロック機構、5a…フロントロック、5b…リアロック、5c…全開ロック、10…ハンドグリップ、20…ドア開閉アクチュエータ(駆動手段)、22…ドアECU(制御手段、操作入力検知手段、作動位置検出手段、計測手段)、23…開操作スイッチ(操作入力検知手段)、24…閉操作スイッチ(操作入力検知手段)、25…作動位置センサ(作動位置検出手段)、30…ドア制御装置(開閉体制御装置)、Sc…操作入力信号、Sp…作動位置信号、t…継続時間、t0…所定時間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6