特許第5692580号(P5692580)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5692580
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】圧電トランス
(51)【国際特許分類】
   H01L 41/107 20060101AFI20150312BHJP
   H01L 41/187 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   H01L41/107
   H01L41/187
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-20937(P2011-20937)
(22)【出願日】2011年2月2日
(65)【公開番号】特開2012-160657(P2012-160657A)
(43)【公開日】2012年8月23日
【審査請求日】2013年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小町 友則
(72)【発明者】
【氏名】草柳 直也
【審査官】 外山 毅
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−083033(JP,A)
【文献】 実開平07−032972(JP,U)
【文献】 特開2005−026370(JP,A)
【文献】 特開平08−032138(JP,A)
【文献】 特開平09−275232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 41/107
H01L 41/187
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電セラミックスに入力電極と出力電極とを形成し、前記入力電極に電圧を与えて前記圧電セラミックスを振動させることで前記出力電極に電圧を発生させる圧電トランスにおいて、
前記圧電セラミックスを振動可能に支持する突状の曲面を有する導電性の支持体を備え、
前記圧電セラミックスは、前記入力電極および前記出力電極に前記曲面を接着することにより支持され、
前記支持体は前記入力電極および前記出力電極に接続される導体として機能し、
前記支持体は球体であることを特徴とする圧電トランス。
【請求項2】
前記支持体の前記曲面と、前記入力電極または前記出力電極とがハンダにより固定されることを特徴とする請求項1に記載の圧電トランス。
【請求項3】
前記支持体が取り付けられる基板を備え、前記基板の表面には前記支持体が固定される電極が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の圧電トランス。
【請求項4】
前記基板には、前記表面から裏面にかけて貫通し、前記圧電セラミックスを収容する貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項に記載の圧電トランス。
【請求項5】
前記基板の電極には、前記支持体の固定のために使用する導電材の流れを制限する手段が設けられていることを特徴とする請求項3または4に記載の圧電トランス。
【請求項6】
記入力電極または前記出力電極には、前記支持体の固定のために使用する導電材の流れを制限する手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の圧電トランス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電セラミックスに入力電極と出力電極とを形成し、前記入力電極に電圧を与えて前記圧電セラミックスを振動させることで前記出力電極に電圧を発生させる圧電トランスに関する。
【背景技術】
【0002】
圧電セラミックスに入力電極と出力電極とを形成して構成された圧電トランスは、伝達効率が高く、絶縁性も確保しやすいなどの特徴を持っている。そのため、小型電源用トランスとして注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−242540号公報
【特許文献2】特開平8−125247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、圧電トランスはトランス自体が振動するため実装が難しく、実装状態に応じてトランスの性能が大きく変化するという特殊性がある。また、圧電トランスの電極へのハンダ付けに際してハンダの広がり方やハンダの重量にばらつきがあると、これが圧電トランスの振動状態に影響し、共振周波数のシフトやトランスとして動作させた時のインピーダンスの変化などに起因する性能劣化を招くという問題もある。
【0005】
本発明の目的は、安定的に高い性能を得ることができる圧電トランスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の圧電トランスは、圧電セラミックスに入力電極と出力電極とを形成し、前記入力電極に電圧を与えて前記圧電セラミックスを振動させることで前記出力電極に電圧を発生させる圧電トランスにおいて、前記圧電セラミックスを振動可能に支持する突状の曲面を有する導電性の支持体を備え、前記圧電セラミックスは、前記入力電極および前記出力電極に前記曲面を接着することにより支持され、前記支持体は前記入力電極および前記出力電極に接続される導体として機能し、前記支持体は球体であることを特徴とする圧電トランス。
この圧電トランスによれば、圧電セラミックスは、入力電極または出力電極に支持体に形成された突状の曲面を接着することにより支持されるので、安定的に適切な振動状態を得ることができる。
【0008】
前記支持体の前記曲面と、前記入力電極または前記出力電極とがハンダにより固定されてもよい。
【0009】
前記支持体が取り付けられる基板を備え、前記基板の表面には前記支持体が固定される電極が形成されていてもよい。
【0010】
前記基板には、前記表面から裏面にかけて貫通し、前記圧電セラミックスを収容する貫通孔が形成されていてもよい。
【0011】
前記基板の電極には、前記支持体の固定のために使用する導電材の流れを制限する手段が設けられていてもよい。
【0012】
記入力電極または前記出力電極には、前記支持体の固定のために使用する導電材の流れを制限する手段が設けられていてもよい。

【発明の効果】
【0013】
本発明の圧電トランスによれば、圧電セラミックスは、入力電極または出力電極に支持体に形成された突状の曲面を接着することにより支持されるので、安定的に適切な振動状態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1の圧電トランスの構成を示す図であり、(a)は圧電トランスを示す平面図、図1(b)は(a)のIb−Ib線方向から見た正面図。
図2図1(a)のII−II線断面図。
図3】圧電セラミックスの幅が狭い場合の構成例を示す図。
図4】実施例2の圧電トランスの構成を示す斜視図。
図5】実施例3の圧電トランスの構成を示す図であり、(a)は圧電トランスを示す平面図、(b)は図5(a)のVb−Vb線方向から見た正面図
図6】実施例3の圧電トランスの構成を示す図であり、(a)は圧電セラミックスを示す平面図、(b)は基板を示す平面図。
図7】圧電セラミックスにおける他の電極構造を示す図であり、(a)はパッドを構成する切り欠きを形成する例を示す図、(b)はソルダーレジストを使用する例等を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明による圧電トランスの実施形態について説明する。
【実施例1】
【0016】
以下、図1図3を参照して実施例1の圧電トランスについて説明する。
【0017】
図1(a)は本実施例の圧電トランスを示す平面図、図1(b)は図1(a)のIb−Ib線方向から見た正面図、図2図1(a)のII−II線断面図である。
【0018】
図1および図2に示すように、本実施例の圧電トランスは、銀電極により形成された矩形状の入力電極11,11および矩形状の出力電極12,12が設けられた板状の圧電セラミックス1と、圧電セラミックス1が取り付けられる基板2と、を備える。
【0019】
図1(a)および図2に示すように、入力電極11,11は、圧電セラミックス1の両面に互いに対向して形成される。同様に、出力電極12,12は、入力電極11,11から離れた位置において圧電セラミックス1の両面に互いに対向して形成される。
【0020】
一方、基板2の表面(図1(b)において上面)には、入力電極11,11に接続される電極パッド21と、出力電極12,12に接続される電極パッド22と、がそれぞれ形成されている。また、基板2には、その表面から裏面にかけて貫通する貫通孔23が形成されている。
【0021】
図1および図2に示すように、圧電セラミックス1の入力電極11,11および出力電極12,12には、それぞれハンダ4を介して球状のメタルボール3が取り付けられている。また、メタルボール3は、ハンダ5を介して基板2の電極パッド21および電極パッド22に、それぞれ取り付けられている。図1(a)に示すように、メタルボール3は、入力電極11,11および出力電極12,12の位置で、それぞれ圧電セラミックス1を挟み込むように対向している。
【0022】
このように、圧電セラミックス1は、4つのメタルボール3を介して基板2に取り付けられ、基板2の貫通孔23の内部に振動可能な状態で収容される。なお、図2では、出力電極12の領域を示しているが、メタルボール3による入力電極11の領域における支持状態も同様とされる。
【0023】
また、圧電セラミックス1の入力電極11,11および出力電極12,12は、それぞれメタルボール3を介して基板2の電極パッド21および電極パッド22に電気的に接続される。
【0024】
このように、本実施例の圧電トランスでは、4つのメタルボール3が入力電極11,11および出力電極12,12からの電気信号の取り出しだけでなく、圧電セラミックス1を支持する支持体として機能する。
【0025】
また、本実施例の圧電トランスでは、基板と圧電セラミックスとの間の接続にメタルボールを用いることにより、圧電セラミックスの支持状態が適切なものとなり、その振動を良好な状態とすることができる。このため、圧電トランスの性能を向上させることができるとともに、振動に基づく劣化が抑制される。また、メタルボール3の位置は圧電セラミックス1の幅(図1(b)における上下方向の幅)のほぼ中心になっている。
【0026】
また、メタルボールの使用によりマウンターやリフローなどを用いた実装の自動化が可能となり、コストの低減、ばらつきの軽減、信頼性の向上等を図ることができる。さらに、メタルボールの使用により、接続に必要なハンダの量やハンダの状態を安定的に制御できるため、圧電トランスの性能を安定させることができる。
【0027】
さらに、本実施例の圧電トランスでは、圧電セラミックスを収容するケース等を用いる必要がないため、実装状態での圧電トランスを小型化でき、占有体積を抑制できる。
【0028】
なお、メタルボール3を圧電セラミックス1の振動の節となる位置に設置すれば、メタルボール3自体やハンダに機械的なストレスを与えず、振動に悪影響を及ぼさない。
さらにまた、実装上の制約等から、メタルボール3を振動の節からずれた位置に設置することもある。この場合、多少の特性劣化はあるが、実用レベルの特性が得られることがある。
【0029】
また、メタルボールの代わりに、メタルボールの外周にハンダがコーティングされたメタルコアのハンダボールを用いる場合には、実装工程においてクリームハンダを塗布する必要がなく、工程数の削減化、実装の安定化を図ることができる。
【0030】
また、メタルボールの代わりに、樹脂コアボールにメタルがコーティングされたボール、あるいは、このボールにハンダがコーティングされたコア入りハンダボールを使用してもよい。さらに、支持体として、突状の曲面を有する球状以外の形状のものを使用してもよい。
【0031】
上記実施例では、基板2に貫通孔23を形成して圧電セラミックス1を収容しているが、基板に溝を形成し、この溝に圧電セラミックスを収容してもよい。
【0032】
さらに、図3に示すように、圧電セラミックス1Aの幅(図3における上下方向の幅)が狭い場合には、基板2に貫通孔や溝を形成することなく、圧電セラミックス1を振動可能に支持することができる。なお、図3において、図1図2に示す要素に対応する要素には、図1図2と同一符号を付している。
【実施例2】
【0033】
以下、図4を参照して実施例2の圧電トランスについて説明する。
【0034】
図4は、本実施例の圧電トランスの構成を示す斜視図である。なお、図4において図1図2に示す要素に対応する要素には、図1図2と同一符号を付している。
【0035】
図4に示すように、本実施例の圧電トランスでは、圧電セラミックス1の入力電極11および出力電極12が、基板2Aの表面に対向するような方向に圧電セラミックス1が取り付けられる。
【0036】
基板2Aには、電極パッド24,25,26,27が形成され、電極パッド24は、メタルボール3,3を介して、図4において下面に形成された入力電極11とハンダ付けにより接続される。同様に、電極パッド25は、メタルボール3,3を介して、図4において下面に形成された出力電極12とハンダ付けにより接続される。
【0037】
一方、図4において上面に形成された入力電極11には、ハンダ11aによりリード線11bの一端が接続され、リード線11bの他端は基板2Aの電極パッド26にハンダ26aにより接続される。同様に、図4において上面に形成された出力電極12には、ハンダ12aによりリード線12bの一端が接続され、リード線12bの他端は基板2Aの電極パッド27にハンダ27aにより接続される。これらのリード線の接続には、ワイヤボンディングによる実装手法を用いることができる。
【0038】
本実施例では、実施例1に示す場合と比較してリード線による特性の劣化は避けられないが、圧電セラミックス1がメタルボール3を介して支持されるため、比較的安定した振動状態を得ることができる。
【0039】
なお、メタルボールの数は適宜選択可能であり、入力電極11および出力電極12についてそれぞれ1つあるいは3つ以上のメタルボール3を使用してもよい。
【0040】
支持体として、メタルボール3に代えて、実施例1で示した他のボールや突状の曲面を有する球状以外の形状のものを使用してもよい。また、メタルボール3等の支持体を圧電セラミックス1の振動の節となる位置に設置すれば、支持体自体やハンダに機械的なストレスを与えず、振動に悪影響を及ぼさない。しかし、支持体を振動の節からずれた位置に設置してもよい。
【実施例3】
【0041】
以下、図5〜7を参照して実施例3の圧電トランスについて説明する。
【0042】
本実施例は、支持体を固定するための導電材の流れを制限する手段を例示するものである。
【0043】
図5(a)は本実施例の圧電トランスを示す平面図、図5(b)は図5(a)のVb−Vb線方向から見た正面図、図6(a)は圧電セラミックスを示す平面図、図6(b)は基板を示す平面図である。図5および図6において、図1図2に示す要素に対応する要素には、図1図2と同一符号を付している。
【0044】
図5および図6に示すように、圧電セラミックス1Bには銀電極により形成された入力電極11Bおよび出力電極12Bが設けられる。入力電極11Bには、メタルボール3が接続されるパッド112を構成する切り欠き111が、出力電極12Bには、メタルボール3が接続されるパッド122を構成する切り欠き121が、それぞれ形成されている。
【0045】
また、基板2Bの表面には、個々のメタルボール3が接続されるパッド21B,21Bおよびパッド22B,22Bが形成されている。
【0046】
本実施例では、圧電セラミックス1Bに予め形成されたパッド112およびパッド121により、メタルボール3を正確に振動の節に位置決めすることができるため、ばらつきのない高性能な圧電トランスを得ることができる。また、パッド112およびパッド121の外側にハンダがフローすることが防止できるため、ハンダが広範囲に広がらず、ハンダによる振動の抑制を制限することができる。また、性能の変動も少なくすることができる。
【0047】
また、本実施例では、基板2Bの表面にパッド21B,21Bおよびパッド22B,22Bが形成されているため、基板2Bに対するメタルボール3の位置決め精度も向上し、したがって、基板2Bに対する圧電セラミックス1Bの位置関係を正確に制御できる。
【0048】
ハンダのフローを抑制する手段は、実施例2に示した構成に対しても適用できる。この場合、圧電セラミックスの片面(例えば、図4における下面)のみに支持体が接続されるため、その面の電極のみに切り欠きを形成すればよい。切り欠きは個々のメタルボール3に対してそれぞれパッドが形成されるように形成すればよい。また、この場合にも、個々のメタルボール3に対応するパッドを基板表面に形成することで、基板に対する圧電セラミックスの位置関係を正確に制御できる。
【0049】
図7(a)および図7(b)は、圧電セラミックスにおける他の電極構造を示す図である。
【0050】
図7(a)に示す例では、圧電セラミックス1Cに入力電極11Cおよび出力電極12Cが設けられる。入力電極11Cには、メタルボール3が接続されるパッド114を構成する切り欠き113が、出力電極12Cには、メタルボール3が接続されるパッド124を構成する切り欠き123が、それぞれ形成されている。このように、パッドを構成するための切り欠きの形状は適宜選択できる。
【0051】
図7(b)は、ハンダの広がりを抑える手段として、ソルダーレジストを使用する例等を示している。図7(b)の例では、圧電セラミックス1Dに入力電極11Dおよび出力電極12Dが設けられる。入力電極11Dの表面には、メタルボール3が接続されるパッド116およびパッド126の部分以外の領域を覆うソルダーレジストが設けられ、パッド116およびパッド126の外側へのハンダのフローが防止される。この場合、ソルダーレジストとしては、圧電セラミックス1Dの振動を妨げない材質、厚みのものが用いられる。
【0052】
ソルダーレジストを使用する代わりに、パッド116およびパッド126の部分について他の領域よりも電極厚を大きく形成してもよい。例えば、パッド116およびパッド126の部分のみについて二重に電極印刷を行うことで、段差を設けることができる。この場合、段差よりも外側へのハンダのフローが防止される。
【0053】
また、本実施例で示した各構成は、接続のための手段として、ハンダ以外の導電性ペースト等の他の導電材を使用する場合についても適用することができる。
【0054】
以上説明したように、本発明の圧電トランスによれば、圧電セラミックスは、入力電極または出力電極に支持体に形成された突状の曲面を接着することにより支持されるので、安定的に適切な振動状態を得ることができる。
【0055】
本発明の適用範囲は上記実施形態に限定されることはない。本発明は、圧電セラミックスに入力電極と出力電極とを形成し、前記入力電極に電圧を与えて前記圧電セラミックスを振動させることで前記出力電極に電圧を発生させる圧電トランスに対し、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1,1A,1B,1C,1D 圧電セラミックス
2,2A,2B,2C,2D 基板
3 メタルボール(支持体)
11,11A,11B,11C,11D 入力電極
12,12A,12B,12C,12D 出力電極
23 貫通孔
111,121,113,123 切り欠き(導電材の流れを制限する手段)
116,126 パッド(導電材の流れを制限する手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7