特許第5692596号(P5692596)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5692596
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】β−Ga2O3単結晶の導電率制御方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/16 20060101AFI20150312BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20150312BHJP
   H01L 21/363 20060101ALI20150312BHJP
   H01L 33/26 20100101ALI20150312BHJP
【FI】
   C30B29/16
   H01L21/205
   H01L21/363
   H01L33/00 180
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-139763(P2011-139763)
(22)【出願日】2011年6月23日
(62)【分割の表示】特願2004-42170(P2004-42170)の分割
【原出願日】2004年2月18日
(65)【公開番号】特開2011-236125(P2011-236125A)
(43)【公開日】2011年11月24日
【審査請求日】2011年7月14日
【審判番号】不服2013-23230(P2013-23230/J1)
【審判請求日】2013年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128211
【弁理士】
【氏名又は名称】野見山 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100145171
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩行
(72)【発明者】
【氏名】一ノ瀬 昇
(72)【発明者】
【氏名】島村 清史
(72)【発明者】
【氏名】青木 和夫
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア ビジョラ エンカルナシオン アントニア
【合議体】
【審判長】 真々田 忠博
【審判官】 中澤 登
【審判官】 河原 英雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−93243(JP,A)
【文献】 特開2004−56098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00-35/00
H01L 21/205, 33/00
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型ドーパントとしてSiをドープしたβ−Ga単結晶の抵抗率をSi濃度に応じて制御するβ−Ga単結晶の導電率制御方法であって、
前記Si濃度と前記抵抗率の関係は、直交する2つの軸が対数軸である直交座標において、前記Si濃度の増減に基づいて前記抵抗率が減増する略直線の関係にあることに基づき、
n型ドーパントとしてのSi濃度を制御することにより、β−Ga単結晶の抵抗率を2.0×10−3〜8.0×10Ωcmの範囲の所定の値に制御することからなるβ−Ga単結晶の導電率制御方法
【請求項2】
ーパントとしてのSiの濃度が1×10−5〜1mol%の場合、抵抗率が2.0×10−3〜8×10Ωcmであり、キャリア濃度が5.5×1015〜2.0×1019/cmである、請求項1に記載のβ−Ga単結晶の導電率制御方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の抵抗率及びキャリア濃度を有するβ−Ga単結晶に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外領域での発光素子は、水銀フリーの蛍光灯の実現、クリーンな環境を提供する光触媒、より高密度記録を実現する新世代DVD等で特に大きな期待がもたれている。このような背景から、GaN系青色発光素子が実現されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1には、サファイア基板と、サファイア基板上に形成されたバッファ層と、バッファ層上に形成されたn型窒化ガリウム系化合物半導体層のn型クラッド層と、ノンドープ活性層と、p型窒化ガリウム系化合物半導体層のp型クラッド層と、高キャリア濃度のp型コンタクト層とを備える発光素子が記載されている。この従来のGaN系青色発光素子は、発光波長370nmで発光する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2778405号公報(図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のGaN系青色発光素子では、バンドギャップの関係でさらに短波長の紫外領域で発光する発光素子を得るのが困難である。
【0006】
そこで、近年、バンドギャップがより大きく、紫外領域で発光する可能性がある物質としてβ−Gaが期待されている。β−Gaバルク単結晶は、FZ(Floating Zone)法により得られており、ウエーハ加工することにより、半導体として利用することができる。FZ法により得られたβ−Gaバルク単結晶はn型導電性を示す。
【0007】
ところで、Ga系単結晶を基板あるいは薄膜として使用する場合、導電性を必要とする場合には抵抗率を制御する必要があるが、従来は意図的に不純物をドーピングしなくてもGa系単結晶の基板あるいは薄膜は、n型導電性を示すので、広範に渡る抵抗率の制御が困難であった。
【0008】
一方、高絶縁性を必要とする場合もあるが、従来は高絶縁性のGa系単結晶の基板あるいは薄膜を作ることは困難であった。酸素欠陥濃度を減少させ、絶縁性を上げるために、例えば、空気中で温度900℃で6日間のアニ−ルを必要とした。
【0009】
従って、本発明の目的は、Ga系単結晶の導電性制御を効率よく行うことができるGa系単結晶の導電率制御方法を提供することにある。
【0010】
さらに、本発明の目的は、高絶縁性のGa系単結晶を作製することができるGa系単結晶の導電率制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するため、n型ドーパントとしてSiをドープしたβ−Ga単結晶の抵抗率をSi濃度に応じて制御するβ−Ga単結晶の導電率制御方法であって、前記Si濃度と前記抵抗率の関係は、直交する2つの軸が対数軸である直交座標において、前記Si濃度の増減に基づいて前記抵抗率が減増する略直線の関係にあることに基づき、n型ドーパントとしてのSi濃度を制御することにより、β−Ga単結晶の抵抗率を2.0×10−3〜8.0×10Ωcmの範囲の所定の値に制御することからなるβ−Ga単結晶の導電率制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のGa系単結晶の導電率制御方法によれば、Ga系単結晶からなる基板あるいは薄膜を成長させる過程において不純物として含まれているSiによってn型導電性が付与されていることを見出したので、Siを除去することによって、Ga系単結晶を高純度化し、ドーパントの添加濃度に応じて抵抗率を可変することが可能となった。
【0016】
本発明のGa系単結晶の導電率制御方法によれば、ドーパントとしてIV族元素であるSi、Hf、Ge、Sn、TiまたはZrを用いることとしたため、Gaと置換することによりn型導電性を示す基板または薄膜を形成することができる。
【0017】
本発明のGa系単結晶の導電率制御方法によれば、所望の抵抗率として2.0×10−3〜8.0×10Ωcmである低抵抗の基板または薄膜を製作することができるため、種々の発光素子の基板または薄膜として使用することができる。
【0018】
本発明のGa系単結晶の導電率制御方法によれば、Ga系単結晶のキャリア濃度を5.5×1015〜2.0×1019/cmに制御することができるため、所望のキャリア濃度に設定することができるので、発光素子の電気的特性を均一化することができる。
【0019】
本発明のGa系単結晶の導電率制御方法によれば、ドーパントとしてII族元素であるMg、BeまたはZnを使用することとしたため、容易に絶縁性とすることができ、絶縁性が要求される用途に用いることができる。
【0020】
本発明のGa系単結晶の導電率制御方法によれば、II族元素を添加することにより、所望の抵抗率として1.0×10Ωcm以上の高抵抗率のGa系単結晶基板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る発光素子の断面図である。
図2】n型ドーパントとしてSiを使用したときのドーパント濃度とキャリア濃度および抵抗率との関係を示す図である。
図3】本発明の第2の実施の形態に係る発光素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る発光素子を示す。この発光素子1は、β−Ga単結晶からなるn型導電性を示すn型β−Ga基板50に、n型導電性を示すn型β−AlGaOクラッド層51、β−Gaからなる活性層52、p型導電性を示すp型β−AlGaOクラッド層53、およびβ−Ga単結晶からなるp型導電性を示すp型β−Gaコンタクト層54を順次積層したものである。
【0023】
また、この発光素子1は、このp型β−Gaコンタクト層54の上面に形成される透明電極4と、透明電極4の上面の一部に形成されるパッド電極6と、n型β−Ga基板50の下面の全面に形成されるn側電極37とを備える。パッド電極6は、例えばPtから形成され、パッド電極6にワイヤ8が接合部9を介して接合されており、n側電極37は、例えば、Auから形成される。
【0024】
この発光素子1は、接着剤81あるいは金属ペーストを介してプリント基板80に搭載されて図示しないプリン配線に接続される。
【0025】
ここで、p型β−AlGaOクラッド層53のキャリア濃度よりp型β−Gaコンタクト層54のキャリア濃度を高く形成する。また、同様に、n型β−AlGaOクラッド層51のキャリア濃度よりn型β−Ga基板50のキャリア濃度を高く形成する。
【0026】
β−Ga活性層52は、n型β−AlGaOクラッド層51およびp型β−AlGaOクラッド層53によりサンドイッチ状に挟まれたダブルへテロ接合とされており、活性層52は、各クラッド層51、53のバンドギャップよりも小さなバンドギャップを有するβ−Gaにより形成する。
【0027】
以下、この実施の形態について説明する。
(1)n型導電性を示すβ−Ga基板の製作および導電率制御
基板がn型導電性を示すためには、基板中のGaがn型ドーパントと置換される必要がある。Gaがn型ドーパントと置換されるガリウム置換型n型ドーパントとして、Si、Hf、Ge、Sn、TiおよびZrが挙げられる。
【0028】
n型導電性を示す基板は、以下のように製作する。まず、FZ法によりβ−Ga単結晶を形成する。すなわち、β−Ga種結晶とn型ドーパントであるHfやSi等を含むβ−Ga多結晶素材とを別個に準備し、石英管中でβ−Ga種結晶とβ−Ga多結晶素材とを接触させてその部位を加熱し、β−Ga種結晶とβ−Ga多結晶素材との接触部分で両者を溶融する。溶解したβ−Ga多結晶素材をβ−Ga種結晶とともに結晶化させると、β−Ga種結晶上にn型ドーパントであるHfやSiを含むβ−Ga単結晶が生成される。次に、このβ−Ga単結晶に切断等の加工を施すことにより、導電率が制御されたn型導電性を示す基板が得られる。ここで、β−Ga多結晶素材は、不純物としてのSi濃度の低いもの、例えば、6Nのものを用いる。
【0029】
β−Gaからなるn型導電性を示す基板の導電率を制御する方法には、FZ法によりHf、Si等を含むn型ドーパント濃度を制御する方法が挙げられる。
【0030】
(2)n型導電性を示す薄膜の製作および導電率制御
n型導電性を示す薄膜は、PLD(Pulsed Laser Deposition)法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、MOCVD(Metal Organic Vapor Deposition)法、スパッタ法等の物理的気相成長法、熱CVD(Chemical Vapor Deposition)、プラズマCVD等の化学的気相成長法等により形成することができる。
【0031】
PLD法による成膜を説明する。n型導電性を示すためには、薄膜中のGaが少なくともn型ドーパントと置換される必要がある。Gaがn型ドーパントと置換されるガリウム置換型n型ドーパントとして、Si、Hf、Ge、Sn、TiおよびZrが挙げられる。
【0032】
PLD法において、ガリウム置換型n型ドーパントをドープする方法には、β−Gaとn型ドーパントの酸化物との焼結体よりなるターゲット、β−Gaとn型ドーパントの酸化物の固溶体単結晶よりなるターゲットを用いる方法がある。
【0033】
β−Gaからなるn型導電性を示す薄膜の導電率をPLD法において制御する方法では、β−Gaとn型ドーパント酸化物の成分比を変える方法がある。
【0034】
図2は、n型ドーパントとしてSiを使用したときのドーパント濃度とキャリア濃度および抵抗率との関係を示す。Si濃度を例えば、1×10−5〜1mol%に変化させることにより、抵抗率が2.0×10−3〜8×10Ωcm、キャリア濃度が5.5×1015〜2.0×1019/cmの範囲の値となる。このことから、ドーパント濃度を制御することにより、抵抗率およびキャリア濃度を変えることができる。なお、5.5×1015という低キャリア濃度が得られたのは、6Nという高純度のβ−Ga多結晶素材を使用したこと、およびいわゆるクリーンルーム内にFZ法またはPLD法を行う装置を設置し、また、必要なガス、器具等も清浄なものを使用したこと等によるものである。
【0035】
上述したn型ドーパントの中で、Hf、SiおよびSnが特に良好な制御性を示すことを確認した。
【0036】
(3)p型導電性を示す薄膜の製造方法
p型導電性を示す薄膜は、PLD法、MBE法、MOCVD法等の物理的気相成長法、熱CVD、プラズマCVD等の化学的気相成長法等により成膜することができる。
【0037】
PLD法による成膜を説明する。p型導電性を示すためには、薄膜中のGaがp型ドーパントと置換されるか、薄膜中の酸素がp型ドーパントと置換されるか、Ga欠陥によらなければならない。
Gaがp型ドーパントと置換されるガリウム置換型p型ドーパントとして、H、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Mn、Fe、Co、Ni、Pd、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Tl、Pb等が挙げられる。酸素がp型ドーパントと置換される酸素置換型p型ドーパントとして、P等が挙げられる。
【0038】
PLD法によりガリウム置換型p型ドーパントをドープする方法および酸素置換型p型ドーパントをドープする方法は、薄膜成長工程でp型ドーパントをドープする方法である。p型ドーパントをドープする方法には、下記の方法がある。すなわち、Gaとp型ドーパントの合金からなるターゲット、β−Gaとp型ドーパントの酸化物との焼結体からなるターゲット、β−Gaとp型ドーパントの酸化物との固溶体単結晶からなるターゲット、またはGa金属からなるターゲットおよびp型ドーパントからなるターゲットを用いる方法等がある。
【0039】
また、Ga欠陥によりP型導電性を示す薄膜は、ターゲットとしてGa金属、β−Ga焼結体、あるいはβ−Ga結晶(単結晶、多結晶)を用い、プラズマガンによりラジカルにされたNOの雰囲気中で成膜することにより作製できる。
【0040】
(5)電極
電極は、オーミック接触が得られる材料で形成される。例えば、n型導電性を示す薄膜あるいは基板には、Au、Al、Ti、Sn、Ge、In、Ni、Co、Pt、W、Mo、Cr、Cu、Pb等の金属単体、これらのうち少なくとも2種の合金(例えば、Au−Ge合金)、これらを2層構造に形成するもの(例えば、Al/Ti、Au/Ni、Au/Co)、あるいはITOを用いる。p型導電性を示す薄膜あるいは基板には、Au、Al、Be、Ni、Pt、In、Sn、Cr、Ti、Zn等の金属単体、これらのうち少なくとも2種の合金(例えば、Au−Zn合金、Au−Be合金)、これらを2層構造に形成するもの (例えば、Ni/Au)あるいはITOを用いる。
【0041】
本発明の第1の実施の形態に係る発光素子によれば、下記の効果を奏する。
(イ)ドーパント濃度を制御することにより、抵抗率およびキャリア濃度を変えることができるため、所望のキャリア濃度を有する薄膜や基板を製作することができる。
(ロ)発光素子1の基板抵抗が小さくなり、順方向電圧Vfが小さくなる。
(ハ)n型β−Ga基板50は、導電性を有するため、基板の上下から電極を取り出す垂直型の構造をとることができるので、層構成、製造工程の簡素化を図ることができる。
(ニ)発光光は、透明電極4を透過して上方に出射する出射光70として外部に射出する他、n型β−Ga基板50の下面の方に向う発光光71は、例えば、n側電極37あるいは接着剤81により反射させられて上方に出射するため、出射光70のみを出射するものと比べて、発光強度が増大する。
【0042】
図3は、本発明の第2の実施の形態に係る発光素子を示す。この発光素子1は、β−Ga単結晶からなる絶縁型β−Ga基板55に、β−Ga単結晶からなるn型導電性を示すn型β−Gaコンタクト層56、n型β−AlGaOクラッド層51、β−Gaからなる活性層52、p型導電性を示すp型β−AlGaOクラッド層53、およびβ−Ga単結晶からなるp型導電性を示すp型β−Gaコンタクト層54を順次積層したものである。
【0043】
また、この発光素子1は、p型β−Gaコンタクト層54に形成される透明電極4と、透明電極4の一部に形成されるパッド電極6と、n型β−Gaコンタクト層56の上に形成されるn側電極37とを備える。パッド電極6は、例えば、Ptから形成され、ワイヤ8が接合部9によって接続され、n側電極37は、例えば、Auから形成され、ワイヤ58が接合部59によって接続される。
【0044】
この発光素子1は、接着剤81あるいは金属ペーストを介してプリント基板80に搭載され、プリント基板80法のプリント配線に接続される。
【0045】
ここで、p型β−AlGaOクラッド層53のキャリア濃度よりp型β−Gaコンタクト層54のキャリア濃度を高く形成し、n型β−AlGaOクラッド層51のキャリア濃度よりn型β−Gaコンタクト層56のキャリア濃度を高く形成する。
【0046】
β−Ga活性層52は、n型β−AlGaOクラッド層51およびp型β−AlGaOクラッド層53によりサンドイッチ状に挟まれたダブルへテロ接合とされており、各クラッド層51、53のバンドギャップよりも小さなバンドギャップを有するβ−Gaで形成される。
【0047】
(6)絶縁型基板の製造方法
絶縁型基板は、以下のように製作する。まず、n型導電性を示す基板の製造方法と同様に、FZ法による。すなわち、β−Ga種結晶と不純物としてのSi濃度の低い高純度のβ−Ga多結晶素材とを別個に準備し、石英管中でβ−Ga種結晶とp型ドーパントであるMg、BeまたはZnを含むβ−Ga多結晶素材とを接触させてその部位を加熱し、β−Ga種結晶とβ−Ga多結晶素材との接触部分で両者を溶融する。溶解したβ−Ga多結晶素材をβ−Ga種結晶とともに結晶化させると、β−Ga種結晶上にMgを含むβ−Ga単結晶が生成される。次に、このβ−Ga単結晶に切断等の加工を施すことにより、絶縁性を示す基板が得られる。ここで、Mgの添加量が、0.01mol%および0.05mol%のとき、得られた基板の抵抗値は、1000MΩ以上であり、絶縁性を示した。BeおよびZnを添加したときもβ−Ga単結晶は、絶縁性を示した。
【0048】
この第2の実施の形態によれば、以下の効果が得られる。
(イ)p型ドーパントを添加することにより絶縁性を有する薄膜や基板を製作することができるため、β−Ga系単結晶でMIS構造の発光素子を製作することがで得きる。
(ロ)この発光素子1は、発光素子1の基板抵抗が小さくなり、順方向電圧Vfが小さくなる。
(ハ)活性層52を形成するβ−Ga系単結晶が有する広いバンドギャップにより短波長、例えば、260nmの発光が可能となる。
(ニ)絶縁型β−Ga基板55およびn型β−AlGaOクラッド層51は、β−Gaを主体に構成されているので、バッファ層を不要にすることが可能となり、結晶性の高いn型層を形成することができる。
(ホ)絶縁型β−Ga基板55が、発光領域で透過性が高いので、光の取り出し効率を高くすることができる。
(ヘ)発光光は、透明電極4を透過して上方に出射する出射光70として外部に射出する他、絶縁型β−Ga基板55の下面の方に向う発光光71は、例えば、接着剤81により反射させられて上方に出射する。従って、発光光71が直接外部に出射するのと比べて、発光強度が増大する。
(ト)絶縁型β−Ga基板55や各層51、52、54、56に酸化物系β−Ga系単結晶を用いているため、高温の大気中でも安定に動作する発光素子を形成することができる。
(チ)プリント基板やリードフレームとの接続方法が、フリップチップ・ボンディングが可能となるので、発光領域からの発熱を効率よくプリント基板や、リードフレームに逃がすことができる。
【0049】
第1および第2の実施の形態において、β−Gaを使用する場合について説明したが、他のタイプのGaであってもよい。
【0050】
また、第1および第2の実施の形態において、発光素子について説明したが、入射光を電気信号に変換するフォトセンサにも適用することができる。
【0051】
また、活性層52は、β−GaInOにより形成してもよい。この時クラッド層としてβ−Gaで形成しても良い。また活性層52として、発光効率を高めることができる量子井戸構造のものであってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 発光素子
2 n型β−Ga基板
4 透明電極
5 電極
6 パッド電極
8 ワイヤ
9 接合層
37 n側電極
50 n型β−Ga基板
51 n型AlGaOクラッド層
52 β−Ga活性層
53 p型β−Gaクラッド層
54 p型β−Gaコンタクト層
55 絶縁型β−Ga基板
56 n型β−Gaコンタクト層
58 ワイヤ
59 説合部
70 出射光
71 発光光
80 プリント基板
81 接着剤
図1
図2
図3