(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
透明基体に転写したものを温度85℃、湿度85%RHの環境下に48時間さらした後の全光線透過率が前記環境下にさらす前の全光線透過率に対して1〜2.5倍である請求項1〜3いずれかに記載の金属薄膜転写材料。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の内容について詳しく説明する。
【0018】
本発明の金属薄膜転写材料は、透明基材フィルム上に、離型樹脂層、保護樹脂層をこの順に設け、さらに絶縁性金属薄膜層、接着剤層を順次形成してなる。
【0019】
本発明において、透明基材フィルムは、従来から転写フィルムに使用される公知のプラスチックフィルムを用いることができる。プラスチックフィルムとしては、ポリエステルフィルム、アクリルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、フッ素フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどが挙げられ、中でもポリエステルフィルムが耐熱性と耐湿性で好ましい。ポリエステルフィルムとしては、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムなどが挙げられ、中でも二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが耐熱性とフィルム価格等でより好ましい。
【0020】
上記透明基材フィルムの厚さは、10μm〜100μmが好ましく、特に、12μm〜50μmの範囲であることが金属薄膜転写材料とした場合に取り扱い性から好ましい。
【0021】
また、意匠性の向上を目的に、透明基材フィルムの離型樹脂層側に、ヘアライン加工、エンボス加工、マット加工等の凹凸加工を施してもよく、このような加工を施すことで、本発明の金属薄膜転写材料を被転写体であるプラスチック基材に転写した後に得られる成形品の転写部分表面が凹凸形状となり、できあがった成形品をより意匠性に優れたものとすることができる。
【0022】
本発明の金属薄膜転写材料では、透明基材フィルムの片面に離型樹脂層が設けられる。離型樹脂層としては、リン脂質(レシチン)、酢酸セルロース、ワックス、脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、ロジン、アクリル樹脂、シリコーン、フッ素樹脂等が、その剥離の容易性の程度に応じて、適宜選択されて使用される。ベースフィルムが平滑な場合は離型樹脂層は0.01μm〜2μmの厚さであり、より好ましくは、0.1μm〜1μmの厚さで使用される。
【0023】
離型樹脂層は、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法等の従来公知の方法で形成できる。
【0024】
本発明の金属薄膜転写材料では、転写後の絶縁性金属薄膜層を保護するために保護樹脂層を有する。かかる保護樹脂層の樹脂としては離型樹脂層および絶縁性金属薄膜層のいずれにも接着性のよい熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂または紫外線などによる光硬化性の樹脂が使われる。具体的には、保護樹脂層は蒸着金属の種類、用途による必要諸性能(機械的特性、耐熱性、耐溶剤性、光学的特性、耐候性など)により適宜選択することができ、例えば、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、セルロース系、ポリ塩化ビニル系等から選ばれた一種または二種以上を使用することができる。一般にその厚さは0.2μm〜5μm程度、より好ましくは1μm〜3μmである。これらの樹脂は透明性のよいものが使用されるが、染料、顔料または艶消し剤を入れて着色することもできる。また保護樹脂層の表面にホログラム加工を施すことによって、虹彩色もしくはホログラム効果を付与することもできる。
【0025】
保護樹脂層は、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法等の従来公知の方法で形成できる。
【0026】
本発明の離型樹脂層および保護樹脂層を形成する樹脂はアクリル系樹脂等による同種のものであっても良い。この場合、金属薄膜転写材料として被着体に接着剤を介して接着された後、透明基材フィルムを剥離する際に、離型樹脂の層中で凝集破壊による剥離が起き、保護樹脂層および離型樹脂の一部が転写されて保護樹脂層として機能するという層設計も含む。
【0027】
本発明は、必要に応じ、絶縁性金属薄膜層との接着性を向上させる目的でさらに該保護樹脂層上に易接着層を積層しても良い。
【0028】
本発明の金属薄膜転写材料は、上記保護樹脂層上に絶縁性金属薄膜層を設ける。本発明における絶縁性金属薄膜とは金属光沢と絶縁性を兼ね備えた金属薄膜のことで、島状構造の不連続な金属薄膜をいう。
【0029】
本発明において、絶縁性金属薄膜層の厚さXは5nm〜100nmであることが必要であり、好ましくは20nm〜80nm、より好ましくは50nm〜80nmである。厚さが5nm未満では、光線透過率が大きく、加飾に期待される金属光沢感が得られない。また、厚さが100nmを越えた場合は本発明で必要としている蒸着膜の絶縁性が確保できないため、静電破壊を抑えられず、更に十分な電波透過性を確保できない。
【0030】
本発明において、絶縁性金属薄膜層の全光線透過率Tr(%)を5%〜50%の範囲とすることが好ましく、絶縁性金属薄膜層の厚さX(nm)との関係が式1を満足することが必要であり、より好ましくは式2を満足する。
式1 Tr≧87.522×Exp(−0.0422×X)
式2 Tr≧120.52×Exp(−0.0418×X)
これらの式が意味するところは以下の通りである。すなわち、右辺は絶縁性金属薄膜の厚さXの関数として、Xが増大すると指数関数的に値が小さくなることを示すが、全光線透過率TrがこのXの関数の値以上であることを示している。言い換えれば、これらの式が等式とした場合の、ある透過率Trに対する厚さX以上の厚みを絶縁性金属薄膜が有することを示している。
【0031】
従来の技術によれば、絶縁性金属薄膜層の厚さを厚くすると島の間隔が狭まってしまうため、絶縁性を確保するために金属量を減らさざるを得ず、酸化、水酸化による腐蝕の影響をうけやすかった。本願発明は絶縁性金属薄膜層の厚さを厚くしても島の間隔をある程度保持できるため、Trを一定の値以上に保持しつつ絶縁性を確保する事が出来る。そのために金属量を減らす必要がなく、酸化等による腐蝕の影響をうけにくい。式2を満足すればより多くの絶縁性金属を付着させながら、高い光線透過率を達成でき、より高い耐蝕性を確保することができる。
【0032】
本発明において、絶縁性金属薄膜層の島のサイズや間隔は、使用する金属の種類、意匠性、絶縁性の程度等により異なるが、島のサイズは意匠性の観点から1nm〜2μmが好ましく、島の間隔は絶縁性の観点から2nm〜500nmが好ましい。
【0033】
本発明において、絶縁性金属薄膜層の全光線透過率は5%〜50%が好ましい。絶縁性金属薄膜層の厚さをこの範囲とすることにより耐蝕性、意匠性が向上する。これら効果の点から、全光線透過率を8%〜30%としておけば、より好ましい。
【0034】
本発明の金属薄膜転写材料は、透明基体へ転写したものを温度85℃、湿度85%RHの環境下に48時間さらした後の全光線透過率が前記環境下にさらす前の全光線透過率に対して1〜2.5倍であることが好ましい。2.5倍以下であると金属光沢の経時による外観変化が小さく、より実用性に優れたものとなる。
【0035】
絶縁性金属薄膜層の厚さは、使用する金属の種類や意匠性等により、上記範囲内で適宜決定すればよい。
【0036】
絶縁性金属薄膜層を島状構造とするには、使用する金属をスズ、インジウム、亜鉛、ビスマス、コバルト、ゲルマニウム、又はこれらの合金からなる群から選ばれるものとしておくことが好ましい。より好ましくは絶縁性金属薄膜層が少なくともスズ、インジウム、亜鉛からなる群から選ばれた一種又は二種以上の金属薄膜であり、絶縁性の点からスズ、インジウムがさらに好ましい。
【0037】
スズを用いた場合の絶縁性金属層の厚さは20nmから80nmが好ましい。
【0038】
絶縁性金属薄膜層は、上記金属を真空蒸着法、スパッタリング蒸着法、EB蒸着法等により形成できる。絶縁性金属薄膜層の厚さXと全光線透過率Trを式1または式2を満たすように制御する方法としては、例えば蒸着法における誘導加熱方式の蒸発量、フィルム速度で制御し、スパッタリング法では放電ガス圧と放電電力およびフィルム速度で制御することができる。
【0039】
本発明においては、絶縁性金属薄膜層の厚さXと全光線透過率Trを式1または式2を満たすように制御する方法として、透明基材フィルムの少なくとも片面に、離型樹脂層と保護樹脂層を積層し、この保護樹脂層の表面に、減圧下でのプラズマ処理により表面処理を行い、その上に絶縁性金属薄膜層を形成することにより達成できることを見出した。またスパッタリングにより微量の金属を基材表面に付着させる、いわゆる核付け法による表面処理によっても上記絶縁性金属薄膜層の厚さXと全光線透過率Trを式1または式2を満たす関係とできることを見出した。この場合の核付け処理においても、保護樹脂層がプラズマに曝されることから、一種のプラズマ処理と定義することができる。
【0040】
上記プラズマ処理の際には、放電電極(陰極)材料と放電ガスの組み合わせによっては、放電電極材料が実質的にスパッタされない場合もあり、またスパッタリング現象により放電電極材料がスパッタされ、保護樹脂層上に放電電極材料の金属が付着することもある。本願発明は、これらプラズマ処理による放電電極材料の付着ありなしにかかわらず、式1の関係を満足するものを提供するものである。
【0041】
減圧下によるプラズマ処理において、放電電極材料の金属が付着する場合は付着量はプラズマ処理の処理強度の指標になる。すなわちこの場合の本発明は、透明基材フィルムの少なくとも片面に、離型樹脂層、保護樹脂層、金属薄膜層、絶縁性金属薄膜層および接着剤層がこの順に積層された金属薄膜転写材料であって、金属薄膜層の付着量が15ng/cm
2〜700ng/cm
2、絶縁性金属薄膜層の厚さXが5nm〜100nmであり、全光線透過率をTr(%)としたときに、Tr≧87.522×Exp(−0.0422×X)の関係を満足する金属薄膜転写材料である。
【0042】
金属薄膜層として15ng/cm
2〜700ng/cm
2、好ましくは50ng/cm
2〜500ng/cm
2の金属を付着させる。金属薄膜層の付着量が15ng/cm
2〜700ng/cm
2の範囲内とし、その後に形成される絶縁性金属薄膜層の厚さXを5nm〜100nmとする。15ng/cm
2未満では耐蝕性が不十分であり、700ng/cm
2を越える場合は電波透過性や、絶縁性が悪化する。金属薄膜層を設ける方法としては、上記のごとく減圧下でのプラズマ処理と同時に発生するスパッタによるものか、積極的なスパッタ法であっても良い。プラズマ処理における放電電極材料あるいはスパッタ法で使用するターゲット金属種は、アルミニウム、銀、金、スズ、インジウム、鉛、亜鉛、ビスマス、チタン、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、ケイ素、ゲルマニウム、又はこれらの合金からなる群から選ばれるものが使用できるが、電波透過性の点から、インジウム、スズを使用するのが好ましい。
【0043】
前述のように、絶縁性金属層はスズ、インジウム、亜鉛からなる群から選ばれた一種又は二種以上の金属を含有するものであることが好ましく、金属薄膜層は絶縁性金属層の金属と同種であることが電波透過性の点から好ましく、異種金属を用いた場合は、本来期待する絶縁性金属の金属光沢とは異なる色目となることがあり、この点からも同種金属を用いることが好ましい。
【0044】
本発明の金属薄膜転写材料における接着剤層は、絶縁性金属薄膜層上に形成され、転写後に、プラスチック基材と転写層(離型樹脂層、保護層、絶縁性金属薄膜層、及び接着剤層)を接着するものである。
【0045】
接着剤層に使用する樹脂は、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂等が使用できる。
【0046】
接着剤層は、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法等の従来公知の方法で形成できる。
【0047】
本発明の金属薄膜転写材料を使用してハーフ調金属光沢フィルムを得ることができ、さらに熱ロール転写やインモールド成形によりハーフ調金属光沢成形品を得ることができるが、ハーフ調金属光沢成形品をインモールド成形により得る場合、透明基材フィルムと離型樹脂層との離型性を向上し、転写時にプラスチックフィルムの剥離不良や破れの発生を防止する目的で、透明基材フィルムと離型樹脂層との間に、下塗層を形成するのが好ましく、該下塗層の形成により、複雑な形状の成形品を安定して得ることが可能となる。下塗層に使用する樹脂は、メラミン系樹脂、アミノアルキッド系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂等の熱硬化性樹脂やワックス等が使用できるが、特にメラミン系樹脂やアクリルメラミン系樹脂が好ましい。
【0048】
本発明の金属薄膜転写材料は、前記の通り携帯電話やオーディオ製品の耐腐蝕性についての評価基準である高温高湿試験(温度85℃、湿度85%RHの条件下で48時間放置する試験)で、試験後の全光線透過率が試験前の全光線透過率に対して1〜2.5倍とすることで、腐蝕により絶縁性金属薄膜層が消失することがないので、耐蝕性を強く要求される携帯電話やオーディオ製品等をはじめ、非常に広範な用途に使用可能となる。
【実施例】
【0049】
以下本発明の様態を実施例をもって具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、本発明における評価法は次の通りである。
【0050】
(1)金属薄膜層の金属付着量
5cm×1cmの試料フィルムを、塩酸と硝酸を1:4の比に混合した溶液に入れ24時間以上放置する。
【0051】
この液を、島津製作所製原子吸光分光光度計AA−6300にて、測定波長:286.3nm ランプ電流:10mA スリット幅:0.7nm 点灯モード:BGC−2 1%吸光光度:5.0ppmにて測定した。
【0052】
(2)全光線透過率(%)
表面をアルコールで清拭した厚さ1mm×巾10cm×長さ20cmのアクリル板に、ロールスタンパー(太平工業(株)製RT−300X)を用い、ロール温度220℃、速度5cm/秒で転写後、フィルムを剥離し、保護層を表面としたテストピースを作製した。作製したテストピースを、日本電色工業(株)製ヘイズメータNDH−2000を用い、JIS−K7136(2000年制定)に則り全光線透過率Tr(%)を測定した。
【0053】
(3)絶縁性金属薄膜層の厚さX(nm)
蒸着加工による絶縁性金属層を設けたフィルムを試料とし、日立収束イオンビーム加工観察装置FB2000Aを用い、試料断面を作成後、絶縁性金属薄膜層の断面を日立透過型電子顕微鏡(TEM)HF−2100で加速電圧30kV、観測倍率421,000倍で観察し、その写真の単位視野内に観察される島の数と島の厚さ(島の保護樹脂層側境界面からの高さ)から、数平均をとって絶縁性金属薄膜層の厚みX(nm)を算出した。この場合、島間の間隔は考慮せず、島のもっとも高い部分の厚みの数平均値を計算する。例えば
図1においては(48.9+56.6+42.6+56.7)/4=51.2nmと計算する。
【0054】
(4)耐蝕性試験
絶縁性金属薄膜転写材料としてのフィルムを、厚さ1mmの透明アクリル板(透明基体)を用意し、表面をアルコール等で清拭し、ロールスタンパー(太平工業(株)製RT−300X)を用い、ロール温度220℃、速度5cm/秒で転写し、フィルムを剥離し、保護樹脂層を表面としたテストピースを作製した。作製したテストピースを、日本電色工業(株)製ヘイズメーターNDH2000(JIS−K7136(2000年制定)準拠)で全光線透過率を測定し、タバイエスペック(株)製恒温恒湿オーブン(PL−1SP)のサンプルセット網にクリップで吊し、温度85℃、湿度85%RH環境下にて48時間放置した。48時間経過品も先述同様に全光線透過率を測定し、環境負荷前のサンプルと比較した。負荷前(試験前)透過率をA(%)、負荷後(試験後)透過率をB(%)としB/Aの倍率を透過率変化として算出した。
【0055】
(5)電波透過性試験
15cm×15cmにカットした金属薄膜転写フィルムを、マイクロウェーブファクトリー株式会社製KEC法シールド効果測定装置MAM101にセットし、Agilent Technologies製 Network Analyzer Agilent E5062Aを用い、800MHzの電波の減衰率(dB)を測定した。電波透過性は、金属薄膜が不連続な島状構造であることにより発現し、同時に絶縁性が確保される。値は小さいほど電波透過性に優れ、絶縁性に優れたものとなり、1dB以下であることが好ましく、0.5dB以下であることがより好ましい。
(実施例1〜3)
透明基材フィルムとして東洋紡製二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムE5001タイプ25μmを用いて、該フィルムの片面に離型樹脂層として、酢酸セルロース樹脂をグラビア型塗工機で乾燥後厚さ0.5g/m
2になるように塗工形成し、さらに該離型樹脂層面にメタクリル酸、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸nブチル、メラミン樹脂を含有するトルエン溶液を前記コータを用いて塗布、乾燥、樹脂硬化をおこない、厚さ1μmの保護樹脂層を得た。続いて該保護樹脂層面に金属薄膜層としてスズ50ng/cm
2をスパッタリング法により設けた。スパッタリング条件は、放電ガスとしてアルゴンガスを使用し、カソードとしてスズ電極を用いた。該金属薄膜層面にスズを絶縁性金属層として、Trを調節して、5%、15%および46%とし、各々を実施例1、2、3とした。該絶縁性金属層は、誘導加熱方式真空蒸着機(日本真空製EB5207)を使用し、作業圧力0.04Paで蒸着加工により設けた。該蒸着面に接着剤層として、飽和ポリエステル樹脂をグラビア型塗工機を用いて、乾燥後厚さ1g/m
2に塗工形成した。ここで得た金属薄膜転写フィルムの性能を評価した結果を表1に示す。実施例1、2、3では、いずれも良好な電波透過性を示し、同時に耐蝕性試験でも試験前後の変化(B/A)が2.5倍以下と良好であった。なお、実施例2で得た絶縁性金属薄膜材料の島状金属層の構造についてTEMでの断面写真を
図1に示す。
(実施例4〜6)
金属薄膜層の厚さを、実施例4として15ng/cm
2、実施例5として200ng/cm
2、実施例6として500ng/cm
2に形成した。次いで各々に、絶縁性金属薄膜としてスズを光線透過率Trを15%となるように形成した。その他条件は実施例1、2、3と同様にして、金属薄膜転写材を作成して特性を評価した結果を表1に示す。実施例4、5、6ともに良好な電波透過性、絶縁性を持つと同時に耐蝕性試験でのTr変化が2.5倍以下であった。
(実施例7)
保護樹脂層面に金属薄膜層として銅50ng/cm
2をスパッタリング法により設けた。スパッタリング条件は、放電ガスとしてアルゴンガスを使用し、カソードとして銅電極を用いた。、絶縁性金属としてインジウムをTrが15%となるように蒸着した。
(実施例8)
実施例1と同様にして準備した保護樹脂層までを積層した基材フィルムロールを誘導加熱方式真空蒸着機(日本真空製EB5207)にセットし、フィルムを巻き出した後、真空中でスズ電極を用いたプレーナー方式のプラズマ処理装置により、窒素ガスを流しながらプラズマ処理を行い、引き続きスズを絶縁性金属として蒸着しTrを25%としたものを作成した。なお、プラズマ処理のみを行い蒸着を行わなかった事前検討により、スズの付着量は45ng/cm
2であることを確認していたが、一連の蒸着でスズを絶縁性金属として形成したものでは同様の付着量であると推定する。
(実施例9)
実施例8と同様にして、真空中で銅電極を用いたプレーナー方式のプラズマ処理装置により、窒素ガスを流しながらプラズマ処理を行い、引き続きスズを絶縁性金属として蒸着しTrを23%としたものを作成した。なお、プラズマ処理のみを行い蒸着を行わなかった事前検討により、銅の付着量は55ng/cm
2であることを確認していたが、一連の蒸着でスズを絶縁性金属として形成したものでは同様の付着量であると推定する。
(実施例10)
実施例6とほぼ同様にして、スズを700ng/cm
2付着させたものを実施例10とした。電波透過性は0.68dBと大きくなる傾向が認められたが実用範囲内であり、良好なものが得られた。
(実施例11)
実施例7と同様にして保護樹脂層面に金属薄膜層として銅を300ng/cm
2をスパッタリング法により設けた上に、絶縁性金属としてスズをTr18%となるように蒸着した。耐蝕性試験においては良い結果であったが、核付けの銅金属の影響により基材フィルム剥離後の金属光沢が若干赤目であり、電波透過性も1dBを超えたものとなった。
(実施例12)
実施例1と同様にして、絶縁性金属層を95.8nmとした。電波透過性が1.23dBと悪化したため、電波透過性を必要とする用途には使用しづらい性能となったが、通常の金属光沢のみを必要とする用途には好適に使用できるものであった。
(実施例13)
実施例4と同様に金属薄膜の付着量を15ng/cm
2とし、全光線透過率を22%としたところ、透過率の変化が2.6倍となり、やや耐蝕性に不十分なものとなった。
(実施例14)
実施例8、9と同様に真空蒸着機中でプラズマ処理を行い、連続的にスズの蒸着を行ったが、プラズマ処理の電極をガラス被覆の電極とし、電源は110kHzの高周波のものを用いて50W・分/m
2の強度でプラズマ処理を行った。放電ガスは酸素であり、実質的に放電電極材料のスパッタリングは発生していなかったが、式1を満足する結果であり、電波透過性、耐蝕性に優れたものとなった。
(比較例1、2)
金属薄膜層を設けずにスズ蒸着膜をTr=6%、17%に設け、その他の条件を実施例1と同様にして、各々を比較例1、比較例2とし、その特性を評価した。評価結果を表1に示す。比較例1では電波透過性が低く、絶縁性も不十分であった。また比較例1、2ともに耐蝕性が低い結果であった。なお、比較例2のTEM断面写真を
図2に示す。
(比較例3)
金属薄膜層を実施例1と同様のスパッタリング法で10ng/cm
2の付着量で形成し、スズを光線透過率Trを14%となるように形成した。その他の条件を実施例1と同様にして比較例3とし、性能を評価しその結果を表1に示す。耐蝕性試験では、耐蝕試験前後のTrの変化率が2.5倍を越え不十分であった。
(比較例4)
金属薄膜層を実施例1と同様のスパッタリング法で800ng/cm
2の付着量で形成し、スズを光線透過率Trを15%となるように形成した。その他の条件を実施例1と同様にして比較例4とし、性能を評価しその結果を表1に示す。電波透過性が1.56dBと悪化し、絶縁性も不十分なものとなった。金属の付着量が多くなり、電波透過性が悪化したものと推定される。
(比較例5、6)
実施例1と同様にして、絶縁性金属層の厚さを4.5nmと108nmとしてそれぞれ全光線透過率を74%、2.6%としてものを作成しそれぞれ比較例5、6とした。比較例5では、全光線透過率が高く、金属光沢が不十分なものとなった。比較例6では絶縁性が確保できず電波透過性が悪化した。
(比較例7)
実施例13と同様に真空蒸着機中で、ガラス被覆電極を用いてプラズマ処理を行ったが処理強度を6W・分/m
2としたところ、式1を満足せず、耐蝕性が不十分なものとなった。
【0056】
【表1】