(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱交換部材は板状部材であり、前記保持部と均熱板とを有した保持部材が、前記躯体コンクリートに接した面とは反対側に設けられている請求項4記載の躯体蓄熱構造。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の技術の特許文献1,2のように、温水パイプをコンクリート内に埋設した場合、配管のメンテナンスができず、補修等が容易にできないという問題がある。また、温水パイプを設置後にコンクリートを流し込まなければならず、施工が面倒であり、施工時に温水パイプが変形したり潰れてしまう恐れもあった。
【0007】
また、特許文献3〜5に開示された躯体蓄熱方法の場合、空調用空気を躯体内の空間に流して、躯体コンクリートとの間で熱交換するものであるが、夜間に空調機を運転させて空調用空気を躯体の中空部などに流すので熱効率が悪く、運転コストが嵩むものである。従って、運転時のエネルギー消費が大きく、CO2排出量の削減という社会的要請に反するものであった。
【0008】
さらに、特許文献6も特許文献3〜5と同様に夜間に空調機を運転させるものであり、特許文献6に開示されたように、空調用の空気の通路に金属棒を突出させて躯体コンクリートとの間で熱交換を行う場合も、金属棒と空調用空気との接触面積が小さく、空気と金属棒との熱交換効率も良くなく、十分な熱効率を得ることができるものではない。しかも、メンテナンス等に際しては、金属棒が邪魔になるものであった。
【0009】
この発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、熱交換効率が高く、効率的な躯体蓄熱が可能な躯体蓄熱構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、建築物の躯体コンクリートに蓄熱して冷暖房に利用する空調システムの躯体蓄熱構造であって、前記建築物の躯体コンクリートに直接又は間接的に固定され、前記建築物の室内側に表面が面して輻射熱を発する輻射パネルと、前記輻射パネルに取り付けられ、熱交換用の熱交換媒体が流される樹脂製の熱交換パイプとが設けられ、前記熱交換パイプを介して前記熱交換媒体からの熱エネルギーが、少なくとも輻射により前記躯体コンクリートに蓄熱される躯体蓄熱構造である。
【0011】
前記輻射パネルの裏面側に、前記熱交換パイプを保持する金属製の保持部材を備え、この保持部材に前記熱交換パイプが保持されているものである。
【0012】
前記輻射パネルと対面して、金属製の熱交換部材が直接又は間接的に前記躯体コンクリートに固定されているものである。さらに、前記熱交換部材は、前記輻射パネルの側縁部と面接触し、前記輻射パネルと熱伝導可能に設けられているものである。
【0013】
前記熱交換部材は、前記躯体コンクリート表面に面接触して固定されている。さらに、前記熱交換部材は、前記躯体コンクリートに接した面とは反対側に、前記熱交換パイプを保持する一体又は別体の保持部が設けられているものである。
【0014】
前記熱交換部材は板状部材であり、前記保持部と均熱板を有した保持部材が、前記躯体コンクリートに接した面とは反対側に設けられている。
【0015】
前記熱交換部材は、前記躯体コンクリートに埋設され、前記保持部が前記躯体コンクリートから露出している。
【0016】
また、前記熱交換部材の側縁部と前記輻射パネルの側縁部とは、断熱材を介して対向しているものでも良い。前記熱交換部材に設けられた前記熱交換パイプと、前記輻射パネルに設けられた熱交換パイプとが、断熱材を介して対向しているものでも良い。
【発明の効果】
【0017】
この発明の躯体蓄熱構造によれば、建築物の躯体を利用して効率的に冷熱や温熱の蓄熱を行うことができ、空調装置の小型化を図ることができる。また、深夜に効率的に躯体に蓄熱することにより、運転コストの削減及び冷暖房によるCO2排出量の削減を図ることができる。しかも、特別に別部材である蓄熱槽等を設けることなく、熱効率の高い空調を行うことができ、きめ細かな温度設定も可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1、
図2はこの発明の第一実施形態を示すもので、この実施形態の躯体蓄熱構造10は、鉄板等の金属製の板状の輻射パネル12と、輻射パネル12の裏面側の面に固定されたアルミニウム押出形材等の金属製の保持部材14を備えている。輻射パネル12は、矩形の板状に形成され、四方の側縁部12aが立設され、さらに側縁部12aの係止用端縁12bが内側に折り返されている。保持部材14は、後述する熱交換パイプ16を保持するもので、熱交換パイプ16を直線的に保持する長尺部材である。また、輻射パネル12に機能として、吸音が必要であれば、輻射パネル12に吸音孔を形成しても良い。
【0020】
保持部材14は、図示するように、輻射パネル12の裏面12cに重ねられる板体である均熱板18と、均熱板18の中心に設けられ熱交換パイプ16を保持する保持部19が設けられた形状に形成されている。保持部19は、均熱板18の表面から立設され、上方が開口した半円状の一対の湾曲部19aから成る。湾曲部19aによる保持部19の内径は、常温時の熱交換パイプ16の外径よりも僅かに小さく、熱交換パイプ16の外周面に湾曲部19aの内周面が密着するように形成され、熱交換パイプ16の側面を両側から弾発的に挟持するものである。また、一対の湾曲部19a間の開口幅は、保持部19の内径よりも僅かに狭く、熱交換パイプ16を弾性変形させ、湾曲部19a間に嵌合可能に設けられている。保持部材14が取り付けられる輻射パネル12の裏面12cには、接着性を確保するためのプライマー処理が施され、その裏面12cに、例えば熱可塑性樹脂のホットメルト接着剤で保持部材16の均熱板18の裏面が接着されている。
【0021】
熱交換パイプ16は、例えば3層構造のガスバリア性チューブであり、内周面に位置する第一層はポリウレタンであり、その外側の第二層はエチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと言う。)であり、その外側で外周面に位置する第三層はポリウレタンである。EVOHはガスバリア性が高く、熱交換パイプ16を通る熱交換流体に空気中の酸素が溶け込むことを防ぐ。
【0022】
建物の天井側で躯体を構成する躯体コンクリート20の表面には、金属板製の熱伝導体である熱交換部材22がビス24により直接固定されている。熱交換部材22は、躯体コンクリート20に直接接触した固定部22aと輻射パネル12の係止用端縁12bが係止する係止段部22bから成る。輻射パネル12の係止用端縁12bと熱交換部材22の係止段部22bとは、互いに接触して、熱伝導が良好に行われる程度の接触面積に形成されている。これにより、輻射パネル12の天井への取り付けが確実に成されるように設けられている。
【0023】
次に、この実施形態の躯体蓄熱構造10の蓄熱作用について説明する。例えば、夜間電力を利用して、夜間のうちに冷熱や温熱を建築物の天井側の躯体コンクリート20に蓄熱する場合、冷水や温水等の熱交換媒体を、夜間の蓄熱時間帯に熱交換パイプ16に流す。熱交換媒体の熱エネルギーは、熱交換パイプ16の肉厚を介して保持部材14の保持部19に伝達され、均熱板18を経て輻射パネル12に伝わる。保持部材14及び輻射パネル12は金属製であり、熱伝導が良好であるので、熱交換パイプ16との間の熱交換が良好に行われる。輻射パネル12に伝わった冷熱や温熱は、輻射によって躯体コンクリート20に蓄熱される。さらに、輻射パネル12に伝わった冷熱や温熱は、その側縁部12aから係止用端縁12bに伝わり、係止用端縁12bから熱交換部材22の係止段部22bに熱伝導され、熱交換部材22の固定部22aを経て躯体コンクリート20に伝わり蓄熱される。また、躯体コンクリート20には、輻射パネル12の係止用端縁12bからも輻射によって冷熱や温熱が伝わる。これにより、建物躯体の天井部を構成するコンクリート20に熱交換パイプ16からの冷熱や温熱が蓄えられる。なお、輻射パネル12に伝わった冷熱や温熱は、天井側の躯体コンクリート20だけでなく建物の躯体コンクリート全体に蓄熱され、さらには室内の事務機器等の備品にも蓄熱される。
【0024】
次に、日中で室内の冷房時には、躯体コンクリート20に蓄熱された冷熱により、室内が躯体コンクリート20からの吸熱による冷房効果が得られる。さらに、必要に応じて熱交換パイプ16に冷水等の熱交換媒体を流し、輻射パネル12の室内側表面から吸熱させることができる。これにより、建築物内を所望の温度に制御することができる。
【0025】
また、暖房が必要なときには、同様に夜間電力を利用して、夜間のうちに温熱を建築物の天井側の躯体コンクリート20に蓄熱し空調に利用する。蓄熱は、熱交換パイプ16に、温水等の熱交換媒体を流して行い、上記と同様に躯体コンクリート20に温熱が蓄熱される。
【0026】
この他、夜間には、躯体コンクリート20に冷熱を蓄熱しておき、日中は輻射冷房しつつ、必要なときには熱交換パイプ16に温水等の熱交換媒体を流して、室温を上げるように空調を行うことも可能である。逆に、夜間には温熱を蓄熱しておき、日中は輻射暖房しつつ、照明や電子機器の作動により室温を下げる必要があるときには、熱交換パイプ16に冷水等の熱交換媒体を流して、室温を下げるように空調を行うことも可能である。
【0027】
この実施形態の躯体蓄熱構造10によれば、夜間電力を利用して低コストで効率良く建築物躯体に蓄熱することが可能であり、空調装置の小型化を図ることができる。さらに、深夜に効率的に躯体に蓄熱することにより、運転コストの削減及びCO2排出量の削減を図ることができる。また、熱交換媒体として水を使用することにより空気と比べ搬送動力の削減を図ることができ、きめ細かな温度設定が可能となるものである。その他、この躯体蓄熱構造10は、新築の建築物のみならず、既存の建物にも取り付けることが可能であり、施工も容易なものである。ここで、この躯体蓄熱構造10の蓄熱効果は、建築物が外断熱構造を備えていると、より蓄熱効果が高いものとなる。
【0028】
なお、上記実施形態において、熱交換部材22の係止段部22bの段差を大きく取って、輻射パネル12の係止用端縁12bが躯体コンクリート20から離れて取り付けられる構造でも良い。これにより、輻射パネル12の取り付けが容易となる。
【0029】
さらに、輻射パネル12に伝わった冷熱又は温熱は、輻射と対流によって躯体コンクリート20に蓄熱されるので、熱交換部材22は必ずしも必要な部材ではない。このため、
図3に示すように、躯体コンクリート20から熱交換部材22が僅かに離れてビス24により固定されていても良い。さらに、熱交換部材22を省き躯体コンクリート20に、例えば図示しないアンカーボルトを打ち込み、アンカーボルトから図示しない吊りボルトを吊り下げ、輻射パネル12の係止用端縁12bを固定しても良い。これにより、躯体コンクリート20の表面性状に関係なく熱交換部材22を取り付けることができる。この場合も、熱交換パイプ16の冷熱は、熱交換パイプ16を経て保持部材14及び輻射パネル12により、躯体コンクリート20からの輻射熱等を吸収する。また、熱交換パイプ16に温熱が供給されると、熱交換パイプ16からの輻射熱により、躯体コンクリート20への蓄熱が行われる。
【0030】
次に、この発明の第二実施形態の躯体蓄熱構造について
図4、
図5に基づいて説明する。ここで、上記実施形態と同様の部材は同一の符号を付して説明を省略する。この実施形態の躯体蓄熱構造30は、板状の熱交換部材32が天井の躯体コンクリート20表面に接触して、ビス24により固定され、熱交換部材32の躯体コンクリート20に接した面とは反対側の表面に、保持部材14が固定されているものである。熱交換部材32は、側縁部32aの断面が、鈎状に屈曲されて形成されている。なお、
図4の左右の側縁部32aに示すように、側縁部32aの形状は、用途や強度等により適宜設定可能である。
【0031】
熱交換部材32には、輻射パネル34が取り付けられている。輻射パネル34は、矩形の板状に形成され、四方の側縁部34aが立設され、さらに側縁部34aの係止用端縁34bが内側に折り返されている。係止用端縁34bは、さらにその縁部34cが側縁部34aと平行に折り曲げられている。なお、
図4に示すように、係止用端縁34bの形状は、用途や強度等により適宜設定可能である。
【0032】
熱交換部材32と輻射パネル34の係合は、熱交換部材32の側縁部32aに、輻射パネル34の側縁部34aの係止用端縁34bが係合して成る。側縁部32aと係止用端縁34bと縁部34cとの間には、断熱材36が介在し、熱伝導を遮断している。
【0033】
次に、この実施形態の躯体蓄熱構造30の蓄熱作用について説明する。この実施形態の躯体蓄熱構造30も上記実施形態と同様の蓄熱作用を有するものであり、例えば、夜間電力を利用して、夜間のうちに冷熱や温熱を建築物の天井側の躯体コンクリート20に蓄熱する。蓄熱は、熱交換部材32に取り付けられた熱交換パイプ16に、冷水や温水等の熱交換媒体を流す。これにより、冷水の冷熱又は温水の温熱が、熱交換パイプ16を介して保持部材14を経て熱交換部材32に伝わり、熱交換部材32を通して躯体コンクリート20と熱交換を行い、躯体コンクリート20に蓄熱される。
【0034】
次に、日中等で建物内の室内の冷暖房時には、躯体コンクリート20に蓄熱された冷熱や温熱により、室内が躯体コンクリート20の冷熱の吸熱による冷房効果、又は躯体コンクリート20の温熱の輻射による暖房効果が得られる。さらに、必要に応じて輻射パネル34に取り付けられた熱交換パイプ16に、冷水又は温水等の熱交換媒体を流し、輻射パネル34の室内側表面から輻射熱を吸収または放射するようにして冷暖房を行い、所望の室温に制御することができる。
【0035】
さらに、上記実施形態と同様に、夜間には、躯体コンクリート20に冷熱を蓄熱しておき、日中は輻射冷房しつつ、必要なときには熱交換パイプ16に温水等の熱交換媒体を流して、室温を上げるように空調を行うことも可能であり、この逆の空調も可能である。
【0036】
この実施形態の躯体蓄熱構造30によれば、上記実施形態と同様の効果を得ることができ、より効率的な躯体蓄熱や、冷暖房においてよりきめ細かな温度設定が可能となるものである。しかも、熱交換部材32と輻射パネル34が断熱材36で熱の移動が遮断されているので、夜間等の蓄熱や輻射パネル34による日中の輻射冷暖房をより効率的に行うことができる。
【0037】
次に、この発明の第三実施形態の躯体蓄熱構造について
図6、
図7に基づいて説明する。ここで、上記実施形態と同様の部材は同一の符号を付して説明を省略する。この実施形態の躯体蓄熱構造40は、板状の熱交換部材42が天井の躯体コンクリート20表面に接触して、ビス24により固定され、躯体コンクリート20に接した面とは反対側の熱交換部材42の表面に、保持部材14が固定されているものである。熱交換部材42は、側縁部42aが、断面L字状に屈曲されて形成されている。
【0038】
熱交換部材42には、輻射パネル44が取り付けられている。輻射パネル44は、矩形の板状に形成され、四方の側縁部44aが立設され、さらに側縁部44aの係止用端縁44bが内側に折り返されている。
【0039】
熱交換部材42と輻射パネル44の係合は、熱交換部材42のL字状の側縁部42aに、輻射パネル44の側縁部44aの係止用端縁44bが直接に接触して係合している。熱交換部材42と輻射パネル44により囲まれた空間内には、互いに対面する熱交換部材42と輻射パネル44内の空間を熱的に分断するように、断熱材46が空間内全面に亘り収納されている。
【0040】
次に、この実施形態の躯体蓄熱構造40の蓄熱作用について説明する。この実施形態の躯体蓄熱構造40も上記実施形態と同様の蓄熱作用を有するものであり、例えば、夜間電力を利用して、夜間のうちに冷熱又は温熱を建築物の天井側の躯体コンクリート20に蓄熱する。蓄熱は、熱交換部材42に取り付けられた熱交換パイプ16に、冷水又は温水等の熱交換媒体を流す。これにより、冷水の冷熱又は温水の温熱が、熱交換パイプ16を介して保持部材14を経て熱交換部材42に伝わり、熱交換部材42を通して躯体コンクリート20と熱交換を行い、躯体コンクリート20に蓄熱される。
【0041】
次に、日中等で建物内の室内の冷暖房時には、躯体コンクリート20に蓄熱された冷熱や温熱により、室内が躯体コンクリート20の冷熱の吸熱による冷房効果、又は躯体コンクリート20の温熱の輻射による暖房効果が得られる。さらに、必要に応じて輻射パネル34に取り付けられた熱交換パイプ16に、冷水又は温水等の熱交換媒体を流し、輻射パネル44の室内側表面から輻射熱を吸収または放射するようにして冷暖房を行い、所望の室温に制御することができる。
【0042】
また、上記実施形態と同様に、夜間には躯体コンクリート20に冷熱を蓄熱しておき、日中は輻射冷房しつつ、必要なときには熱交換パイプ16に温水等の熱交換媒体を流して、室温を上げるように空調を行うことも可能であり、この逆の空調も可能である。
【0043】
この実施形態の躯体蓄熱構造40によれば、上記実施形態と同様の効果を得ることができ、より効率的な躯体蓄熱や、冷暖房においてよりきめ細かな温度設定が可能となるものである。また、熱交換部材42と輻射パネル44が断熱材46により熱的に分断されているので、夜間等の蓄熱や輻射パネル44による日中の輻射冷暖房をより効率的に行うことができる。
【0044】
次に、この発明の第四実施形態の躯体蓄熱構造について
図8、
図9に基づいて説明する。ここで、上記実施形態と同様の部材は同一の符号を付して説明を省略する。この実施形態の躯体蓄熱構造50は、上記第一実施形態の輻射パネル12と、輻射パネル12の裏面側の面に固定されたアルミニウム押出形材等の金属製の保持部材14を備えている。さらに、建物の躯体コンクリート20の表面には、輻射パネル取付用の熱交換部材22がビス24により直接固定され、躯体コンクリート20に直接接触した固定部22aと輻射パネル12の係止用端縁12bが係合している。
【0045】
輻射パネル12の内側に位置した躯体コンクリート20の表面には、アルミニウム押出形材等から成る長尺材である熱交換部材52が埋設されている。熱交換部材52は、断面がH字状に形成され、その一方の面の外側には、C字状のパイプ保持部54が形成されている。H字状の両側の延出部53は、躯体コンクリート20と接触する表面積を大きくして、躯体コンクリート20との間の熱交換効率を高めるものである。
【0046】
パイプ保持部54は、上記実施形態の保持部材と同様に、熱交換部材52表面から立設され外方で開口した半円状の一対の湾曲部54aから成る。湾曲部54aによる保持部54の内径は、常温時の熱交換パイプ16の外径よりも僅かに小さく、熱交換パイプ16の外周面に湾曲部54aの内周面が密着するように形成され、熱交換パイプ16の側面を両側から弾発的に挟持するものである。また、一対の湾曲部54a間の開口幅は、保持部54の内径よりも僅かに狭く、熱交換パイプ16を弾性変形させ、湾曲部19a間に嵌合可能に設けられている。
【0047】
次に、この実施形態の躯体蓄熱構造50の蓄熱作用について説明する。この実施形態の躯体蓄熱構造50も上記実施形態と同様の蓄熱作用を有するものであり、例えば、夜間電力を利用して、夜間のうちに冷熱又は温熱を建築物の天井側の躯体コンクリート20に蓄熱する。蓄熱は、熱交換部材52の熱交換パイプ16に、冷水又は温水等の熱交換媒体を流す。これにより、冷水の冷熱又は温水の温熱が、熱交換パイプ16を介して保持部54を経て熱交換部材52に伝わり、熱交換部材52を通して躯体コンクリート20と熱交換を行い、躯体コンクリートに蓄熱される。また、上記第一実施形態と同様に、輻射パネル12の熱交換パイプ16に熱交換媒体を流して、さらに蓄熱を行うこともできる。
【0048】
次に、日中等で建物内の室内の冷暖房時には、躯体コンクリート20に蓄熱された冷熱や温熱により、室内が躯体コンクリート20の冷熱の吸熱による冷房効果、又は躯体コンクリート20の温熱の輻射による暖房効果が得られる。さらに、必要に応じて輻射パネル12に取り付けられた熱交換パイプ16に、冷水又は温水等の熱交換媒体を流し、輻射パネル12の室内側表面から輻射熱を吸収または放射するようにして冷暖房を行い、所望の室温に制御することができる。
【0049】
また、上記実施形態と同様に、夜間には躯体コンクリート20に冷熱を蓄熱しておき、日中は吸熱により冷房しつつ、必要なときには熱交換パイプ16に温水等の熱交換媒体を流して、室温を上げるように空調を行うことも可能であり、この逆の空調も可能である。
【0050】
この実施形態の躯体蓄熱構造50によれば、上記実施形態と同様の効果を得ることができ、しかも、熱交換部材52により、夜間等の蓄熱がさらに効率的に行うことができ、より効率的な躯体蓄熱を可能とし、冷暖房においてさらにきめ細かな温度設定が可能となるものである。
【0051】
また、
図10、
図11に示すように、熱交換部材52の外側に位置する一方の延出部53を、天井から僅かに離れて天井と平行に延びて形成し、輻射パネル12の係止用端縁12bを係止するようにしても良い。これにより、熱交換部材22を設けなくても良く、より施工が容易となる。
【0052】
次に、この発明の第五実施形態の躯体蓄熱構造について
図12、
図13に基づいて説明する。ここで、上記実施形態と同様の部材は同一の符号を付して説明を省略する。この実施形態の躯体蓄熱構造60は、上記第一実施形態の輻射パネル12と、輻射パネル12の裏面側の面に固定されたアルミニウム押出形材等の金属製の保持部材14を備えている。さらに、建物の躯体コンクリート20の表面には、熱交換部材22がビス24により直接固定され、躯体コンクリート20に直接接触した固定部22aと輻射パネル12の係止用端縁12bが係合している。
【0053】
輻射パネル12の内側に位置した躯体コンクリート20の表面には、アルミニウム押出形材等から成る熱交換部材56が埋設されている。熱交換部材56は、断面が台形状に形成され、その台形の上底部分の面の外側には、C字状のパイプ保持部54が形成されている。
【0054】
この実施形態の躯体蓄熱構造60の蓄熱作用も上記第四実施形態と同様である。そして、この実施形態の躯体蓄熱構造60によれば、上記実施形態と同様の効果を得ることができ、しかも、熱交換部材56により、夜間等の蓄熱がさらに効率的に行うことができ、より効率的な躯体蓄熱を可能とし、冷暖房においてさらにきめ細かな温度設定が可能となるものである。
【0055】
なお、この発明の躯体蓄熱構造は、上記各実施形態に限定されるものではなく、輻射パネルや熱交換部材の大きさや形状、躯体コンクリートの固定手段は適宜設定可能なものであり、熱交換パイプの配置や形状も適宜設定可能なものである。
【0056】
また、上記第二、第三実施形態においても、熱交換部材を
図3に示すように、躯体コンクリートから僅かに離間させて取り付けても良いものである。この場合も、熱交換パイプからの冷熱又は温熱は、保持部材を経て輻射パネルに伝わり、輻射と対流によって躯体コンクリート20に蓄熱を行う。さらに、熱交換部材を設けることにより、熱交換パイプの冷熱又は温熱が熱交換部材から躯体コンクリートに熱伝導により供給される。