(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5692612
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】半導体光源ユニットおよびシート状対象物測定装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/64 20100101AFI20150312BHJP
H01L 33/60 20100101ALI20150312BHJP
H01S 5/022 20060101ALI20150312BHJP
G01B 11/06 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
H01L33/00 450
H01L33/00 432
H01S5/022
G01B11/06
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-89032(P2013-89032)
(22)【出願日】2013年4月22日
(65)【公開番号】特開2014-212277(P2014-212277A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2014年6月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】市沢 康史
(72)【発明者】
【氏名】節田 和紀
(72)【発明者】
【氏名】小林 文彦
(72)【発明者】
【氏名】千田 直道
【審査官】
村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−040736(JP,A)
【文献】
実開昭58−080554(JP,U)
【文献】
特開2012−173249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体発光素子と、
前記半導体発光素子の熱が伝わる放熱器と、
空気の導入口と排出口とが設けられ、前記半導体発光素子と前記放熱器とを外気にさらさない状態で覆うための断熱筐体と、
を備えたことを特徴とする半導体光源ユニット。
【請求項2】
前記半導体発光素子の出射光を入射し、光線角度を整えて出射する内面反射鏡をさらに備え、
前記断熱筐体は、前記半導体発光素子と前記放熱器とに加え、前記内面反射鏡を外気にさらさない状態で覆うためのものであることを特徴とする請求項1に記載の半導体光源ユニット。
【請求項3】
前記断熱筐体の前記内面反射鏡の出射側の面は、前記半導体発光素子の出射光を透過させる部材で形成されていることを特徴とする請求項2に記載の半導体光源ユニット。
【請求項4】
前記排出口は前記導入口よりも大きな口径であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体光源ユニット。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体光源ユニットを搭載したシート状対象物測定装置。
【請求項6】
前記半導体発光素子の出射光を受光する受光素子と、
前記受光素子の熱が伝わる第2の放熱器と、
空気の導入口と排出口とが設けられ、前記受光素子と前記第2の放熱器とを外気にさらさない状態で覆うための第2の断熱筐体と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項5に記載のシート状対象物測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置の半導体光源ユニットに関し、特に、高温環境下で使用されるシート状対象物測定装置に適した半導体光源ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
抄紙工程や樹脂フィルム製造工程等では品質管理のために製造物の水分量や色、厚さ等の測定が行なわれる。このような測定に用いられる測定装置は、紙や樹脂フィルム等のシート状対象物に光を照射し、透過光や反射光を受光することにより測定を行なうものが多い。
【0003】
従来、光を利用した測定装置の光源としては、スペクトラムが連続的でブロードなハロゲンランプが主に用いられてきたが、近年は、LED等の半導体光源が採用されるようになってきている。LED等の半導体光源は、小型で長寿命であることに加え、光電変換効率が高く発熱が少ないこと、所望の波長の光を選択的に得られること、電気的変調が可能であること等の特徴があり、分光光学系やメカニカルな変調部品が不要となることから、測定装置が簡素化できる等のメリットがある。
【0004】
例えば、特許文献1には、
図6に示すような半導体光源ユニット500を用いた抄紙工程用の赤外線水分センサが開示されている。
図6に示す半導体光源ユニット500では、LDやLEDといった発光波長の限定される発光素子520を複数個狭ピッチで実装した基盤530を、角錐型の内面反射鏡510の入射端510aに極力接近させて配置している。
【0005】
複数個の発光素子520は、水分に吸収され、セルロースに吸収されない波長の光を発光する素子と、水分に吸収されず、セルロースに吸収される波長の光を発光する素子と、水分にもセルロースにも吸収されない波長の光を発光する素子を含んでいる。
【0006】
複数個の発光素子520から発したそれぞれの波長の光のうち、内面反射鏡510の光軸に対してθ1のように比較的角度のある光線は、入射直後に壁面で反射し、次に反対面で反射してθ2のような小さな角度で内面反射鏡510の出射端510bに向かうことになる。すなわち、反射する度に、テーパー状の斜面により内面反射鏡510の光軸に対して平行な角度に近づいていく。一方、光軸に対して平行に近い角度で出射された光線は、出射端510bに近い壁面で反射してさらに光軸に対して平行な角度に近づいていく。
【0007】
このように、内面反射鏡510を用いることで、入射時の角度が異なる光線であっても、出射端510bでは、光軸に対して平行に近い光束に集光されて紙400に向かうことになり、有効利用が可能な光束を得ることができる。一般に、出射端510bは、10数mmから数10mm程度のサイズが好適であるのに対し、LED等の半導体光源は、数mm程度のサイズであるが、このように容易に好適なサイズの出射光を得ることができる。
【0008】
内面反射鏡510の出射端510bには、数mmの隙間を空けて、測定試料である紙400が置かれる。紙400の下には、数mmの隙間を空けて内面反射鏡510のほぼ光軸上に検出器540が配置してある。検出器540には、受光素子542が実装されており、出射端510bから出射され、紙400を透過した光束を受光する。検出器540の測定結果は、図示しない赤外線水分センサの制御装置に送られ、各波長の透過減衰率から紙400の水分率が算出される。
【0009】
一般に、光を利用した測定装置は高輝度の光源が求められる。半導体光源は、ハロゲンランプ等に比較して発熱量は少ないが、熱に弱いという特性があり、高温にさらされると、発光効率の低下、発光波長の変化、寿命短縮を招くおそれがある。このため、半導体光源を高輝度で動作させる場合は何らかの冷却構造が必要となる。
【0010】
光源の冷却構造としては、例えば、
図7に示すように、半導体光源610の基盤に放熱フィン等の放熱器620を取り付ける構造が一般的である。放熱器620は、外気開放され、半導体光源610から伝わる熱を外部に放熱する。また、半導体光源610の周辺に形成された中空の空気層630には、通気口640a、640bが設けられており、半導体光源610で熱せられた空気が外部に排出されるようになっている。
【0011】
さらに、ペルチェ素子等の電子冷却素子を半導体光源610と放熱器620との間に配置し、半導体光源610から放熱器620への熱移動を促進させることも行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2012−173249号公報
【特許文献2】特開2004−94115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来、光源の冷却は、光源が発する熱を放熱器に効率よく伝え、放熱器を外気開放して放熱器から外部に放熱することで、光源の温度上昇を防ぐようにしている。この場合、外気の温度、すなわち放熱器の周辺温度が光源の温度よりも十分低いことが条件となる。
【0014】
しかしながら、産業用の測定装置は高温環境下で用いられるものがある。例えば、抄紙工程等に使用されるシート状対象物測定装置では、常に60〜70℃程度の高温にさらされる。このような環境下で使用されるシート状対象物測定装置は、結露防止のため、測定装置全体を外気と同程度の温度に保って使用するようになっている。
【0015】
このため、ハロゲンランプほど高温にならない半導体光源は、周囲との温度差が小さく、放熱器を介した外気への放熱がほとんど行なわれなくなってしまう。例えば、
図7に示したような冷却構造を持つ光源を温度の高い環境下で使用すると、放熱器620から外気への放熱が望めないのみならず、外気温の方が高いと放熱器620から吸熱して、かえって半導体光源610の温度が上昇するおそれもある。
【0016】
ペルチェ素子等の電子冷却素子を半導体光源610と放熱器620との間に配置したとしても、放熱器620での放熱が不十分であると、半導体光源610は、電子冷却素子の発する熱の影響も受けることになり、逆効果となってしまう。
【0017】
そこで、本発明は、高温環境下で使用しても放熱器を介した放熱を行なうことができる半導体光源ユニットおよびこの半導体光源ユニットを用いたシート状対象物測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様である半導体光源ユニットは、半導体発光素子と、前記半導体発光素子の熱が伝わる放熱器と、空気の導入口と排出口とが設けられ、前記半導体発光素子と前記放熱器とを外気にさらさない状態で覆うための断熱筐体と、を備えたことを特徴とする。
ここで、前記半導体発光素子の出射光を入射し、光線角度を整えて出射する内面反射鏡をさらに備え、前記断熱筐体は、前記半導体発光素子と前記放熱器とに加え、前記内面反射鏡を外気にさらさない状態で覆うためのものとしてもよい。
このとき、前記断熱筐体の前記内面反射鏡の出射側の面は、前記半導体発光素子の出射光を透過させる部材で形成することが望ましい。
また、前記排出口は前記導入口よりも大きな口径とすることができる。
【0019】
上記課題を解決するため、本発明の第2の態様であるシート状対象物測定装置は、上記の半導体光源ユニットを搭載したことを特徴とする。
ここで、前記半導体発光素子の出射光を受光する受光素子と、前記受光素子の熱が伝わる第2の放熱器と、空気の導入口と排出口とが設けられ、前記受光素子と前記第2の放熱器とを外気にさらさない状態で覆うための第2の断熱筐体とをさらに備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、温環境下で使用しても放熱器を介した放熱を行なうことができる半導体光源ユニットおよびこの半導体光源ユニットを用いたシート状対象物測定装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施形態に係る半導体光源ユニットの構造を模式的に示す図である。
【
図2】半導体光源ユニットを搭載するシート状対象物測定装置を模式的に示す図である。
【
図3】本実施形態に係る半導体光源ユニットの構造の別例を模式的に示す図である。
【
図5】排出口を導入口よりも大きく設定した場合の図である。
【
図6】半導体光源ユニットを用いた従来の抄紙工程用の赤外線水分センサを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る半導体光源ユニットの構造を模式的に示す図である。本図示すように半導体光源ユニット100は、複数個の半導体発光素子101を搭載した光源パッケージ103と角錐状の内面反射鏡104とを備えており、光源パッケージ103から出力される光が内面反射鏡104の入射口に入射するようになっている。また、光源パッケージ103の内面反射鏡104の反対側の面には放熱器102が取り付けられている。これにより、半導体発光素子101の熱が放熱器102に伝えられる。
【0023】
これらの部品は、略直方体形状あるいは円筒状の断熱筐体110によって覆われている。すなわち、光源パッケージ103のみならず、放熱器102を含めて断熱筐体110によって覆われている。ただし、断熱筐体110は他の形状であってもよい。
【0024】
断熱筐体110の側面および上面は、例えば、ポリプロピレン等の断熱性が高く、難燃性の樹脂を用いて構成することができる。また、断熱筐体110の下面110aは、半導体発光素子101の発光波長での透過率が高い部材で構成するものとする。例えば、半導体光源ユニット100を赤外線水分センサに適用する場合には、近赤外〜赤外領域での透過率が高く、熱伝導率が低い樹脂であるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等を用いて構成することができる。
【0025】
放熱器102近傍の断熱筐体110の側面には、冷却空気を導入する導入口111と、空気を排出する排出口112とが設けられている。運用時において、導入口111、排出口112には、図示しない配管を接続し、導入口111から乾燥空気を導入し、排出口112から排出するようにする。断熱筐体110および配管は外気の流入がないように、密閉構造とする。
【0026】
半導体発光素子101は、LED、LD等を用いて構成することができ、図示しない駆動回路から電流を供給することで発光する。半導体発光素子101が出力する光は、測定対象に応じて可視光、不可視光のいずれであってもよく、本実施形態では、赤外線を放射するものとする。半導体発光素子101からの放射は、内面反射鏡104内部で反射を繰り返して、複数の放射が混合されると共に、放射方向が整えられて断熱筐体110の下面110aから外部に放射される。
【0027】
本実施形態の半導体光源ユニット100は、断熱筐体110が、半導体発光素子101のみならず放熱器102を覆っているため、放熱器102が半導体光源ユニット100の外部の温度影響を受けにくくなっている。このため、放熱器102からの放熱が外部温度によって妨げられない。さらに、断熱筐体110に空気の導入口111と排出口112とを設けているため、外部の温度が高い場合であっても、放熱器102から効率的に放熱することができる。この結果、高輝度で動作する半導体発光素子101を十分冷却することができる。
【0028】
このような半導体光源ユニット100は、例えば、
図2に示すようなシート状対象物測定装置200に搭載されて赤外線水分センサの光源として使用される。シート状対象物測定装置200は、フレーム210を備えており、フレーム210の内側を、測定対象物であるシート状の紙400が、図示しないローラー等により矢印A方向に移動する。フレーム210の上側ビームには、紙400を表面側から測定する上部ヘッド220が移動可能に取り付けられており、フレーム210の下側ビームには、紙400を裏面側から測定する下部ヘッド230が移動可能に取り付けられている。
【0029】
上部ヘッド220と下部ヘッド230とは、同期して紙移動方向に直交する方向を往復移動し、同じ領域を表面と裏面から測定するようになっており、測定領域は図中のラインに示すようにジグザグの軌跡を描くことになる。
【0030】
半導体光源ユニット100は、例えば、上部ヘッド220に搭載され、紙400に対して上面から複数の波長の赤外光を照射する。この場合、下部ヘッド230の対応する位置に受光素子を備えた検出器が搭載され、各波長の赤外光を受光する。もちろん、半導体光源ユニット100は、色センサ、厚さセンサ、坪量センサ等の光源としてシート状対象物測定装置200に搭載して使用することもできる。
【0031】
シート状対象物測定装置200は、一般に、高温下で使用されるが、本実施形態の半導体光源ユニット100は、半導体発光素子101と放熱器102とが断熱筐体110に覆われ、空気導入口111および排出口112が設けられているため、半導体発光素子101の熱を、放熱器102を介して効率的に放熱することができる。
【0032】
なお、上記の例では、断熱筐体110は、内面反射鏡104もすべて含めて覆うようにしていたが、
図3に示すように、少なくとも半導体発光素子101を搭載した光源パッケージ103と放熱器102の全体を、外気にさらさないように密閉を保つ状態で覆うようにしてもよい。内面反射鏡104の出射口を断熱筐体110で覆わない場合は、断熱筐体110の下面を半導体発光素子101の発光波長での透過率が高い部材で構成する必要はなく、上面、側面と同じ部材で構成することができる。
【0033】
また、半導体発光素子101と放熱器102との間にペルチェ素子等の電子冷却素子を配置するようにしてもよい。この場合、半導体発光素子101の近傍に温度センサを設置し、温度に応じて電子冷却素子の動作を制御することで、導入口111から導入する空気の温度変化等によらず、半導体発光素子101の温度を一定に保つことが可能となる。
【0034】
また、半導体光源ユニット100を
図2に示したシート状対象物測定装置200に用いた場合、下部ヘッド230に搭載される検出器に本発明を適用することができる。
【0035】
例えば、
図4に示すように、受光素子302を搭載した検出器301に放熱器303を取り付け、略直方体形状の断熱筐体310で検出器301と放熱器303とを覆うようにする。このとき、検出器301と放熱器303とが外気にさらされないように密閉を保つ状態とする。そして、断熱筐体310には、冷却空気を導入する導入口311と、空気を排出する排出口312とを設けるようにする。受光素子302の場合、発熱量は小さいが、温度による熱雑音の影響が大きいため、このような冷却構造とすることでS/N比の向上を図ることができる。なお、断熱筐体310は、円筒状等、他の形状であってもよい。
【0036】
また、
図5に示すように排出口112を導入口111よりも大きな口径とし、導入口111から、圧縮させた少量の空気を高速に流入させるようにしてもよい。これにより、導入口111から流入する空気が断熱筐体110に入ったところで断熱膨張することになるため、一層の冷却効果を期待することができる。
【符号の説明】
【0037】
100…半導体光源ユニット、101…半導体発光素子、102…放熱器、103…光源パッケージ、104…内面反射鏡、110…断熱筐体、111…導入口、112…排出口、200…シート状対象物測定装置、210…フレーム、220…上部ヘッド、230…下部ヘッド、301…検出器、302…受光素子、303…放熱器、310…断熱筐体、311…導入口、312…排出口、400…紙、500…半導体光源ユニット、510…内面反射鏡、520…発光素子、530…基盤、540…検出器、542…受光素子、610…半導体光源、620…放熱器、630…空気層、640…通気口