(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5692644
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】電池、電池用のセパレータ及び電池用のセパレータの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 2/18 20060101AFI20150312BHJP
H01M 2/16 20060101ALI20150312BHJP
H01M 6/12 20060101ALI20150312BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20150312BHJP
【FI】
H01M2/18 Z
H01M2/16 L
H01M2/16 M
H01M6/12 Z
H01M10/0585
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-61314(P2011-61314)
(22)【出願日】2011年3月18日
(65)【公開番号】特開2012-199020(P2012-199020A)
(43)【公開日】2012年10月18日
【審査請求日】2014年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 明彦
(72)【発明者】
【氏名】森 澄男
【審査官】
森井 隆信
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−093583(JP,A)
【文献】
特開2008−293980(JP,A)
【文献】
特開2005−235695(JP,A)
【文献】
特開2006−012835(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/103082(WO,A1)
【文献】
特開2004−134116(JP,A)
【文献】
国際公開第98/032184(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/18
H01M 2/16
H01M 6/12
H01M 10/0585
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極箔の一端部を除いた両面に負極活物質層を積層した負極板と正極箔の一端部を除いた両面に正極活物質層を積層した正極板との間に挟まれる電池用のセパレータであって、
前記負極板の負極活物質層又は前記正極板の正極活物質層に重ね合わされる基材層と前記正極板の正極活物質層又は前記負極板の負極活物質層に重ね合わされる無機層とが積層され、少なくとも正極箔又は負極箔と対峙する無機層の端部に、正極活物質層又は負極活物質層と重なり合う面に対して鈍角をなすテーパ面が形成されていることを特徴とする電池用のセパレータ。
【請求項2】
前記基材層の端部にも、前記無機層のテーパ面に連続するテーパ面が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電池用のセパレータ。
【請求項3】
前記テーパ面は、無機層と対峙する正極箔又は負極箔側に曲がった際に、無機層と対峙する正極箔又は負極箔と重なり合う角度に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電池用のセパレータ。
【請求項4】
帯状の正極板と帯状の負極板との間に帯状のセパレータを介在させた発電要素が電池ケース内に収納された電池であって、
請求項1ないし3のいずれか一項に記載のセパレータが備えられていることを特徴とする電池。
【請求項5】
請求項1に記載の電池用のセパレータの製造方法であって、
均等な厚さの基材層に均等な厚さの無機層を積層した後、無機層の端部をエッジから次第に肉厚になるような斜め向きにカットする、又は斜め向きにプレスすることでテーパ面を形成することを特徴とする電池用のセパレータの製造方法。
【請求項6】
正極箔と、前記正極箔に積層された正極活物質層とを有し、少なくとも一端部で前記正極活物質層が積層されない正極板と、
負極箔と、前記負極箔に積層された負極活物質層とを有し、少なくとも一端部で前記負極活物質層が積層されない負極板と、
基材層と、前記基材層に積層された無機層とを有し、前記正極板と前記負極板との間に挟まれるセパレータであって、前記正極活物質層が積層されない部分又は前記負極活物質層が積層されない部分と対峙するセパレータと、を備え、
前記セパレータの前記無機層は、前記正極活物質層及び前記負極活物質層のいずれか一方に対峙し、
前記無機層は、その端部に、前記正極活物質層及び前記負極活物質層のいずれか一方と重なり合う面に対して鈍角をなすテーパ面が形成されている
電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばリチウムイオン電池その他の非水電解液二次電池などの電池、この電池に備えられる電池用のセパレータ及びこの電池用のセパレータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高電圧、高エネルギ密度を有する非水電解液二次電池は、
図4に示すように、帯状の正極板10と帯状の負極板20との間に帯状のセパレータ30を介在させた発電要素100が電池ケース110内に収納され、非水系溶媒にリチウム塩を溶解した電解液が電解質として電池ケース110内に溜められている。
【0003】
電池ケース110は、薄型の有底角筒状のケース本体111と、このケース本体111の開口部を塞ぐ蓋体112とを備えている。また、ケース本体111内には、正極板10に接続される集電体121と負極板20に接続される集電体122とが収納されている。そして、蓋体112からは、内端部が各集電体121,122に接続される電極端子131,132が突出している。
【0004】
また、発電要素100は、薄型のケース本体111内に収納されるように扁平状に巻回され、正極板10が(図面において左方向に)セパレータ30よりも突出することで集電体121に接続され、負極板20が(図面において右方向に)セパレータ30よりも突出することで集電体122に接続されている。
【0005】
そして、正極板10としてはリチウム複合酸化物が用いられ、負極板20としてはリチウムを吸蔵放出可能な炭素材料又は合金が用いられる。また、セパレータ30は、一般的に多孔質ポリオレフィンによって形成され、外部短絡や過充電などによって電池温度が上昇したときに、多孔質ポリオレフィンが軟化して無孔質となり、電流を遮断する機能(以下、「シャットダウン機能」という。)を備えている。
【0006】
しかし、内部短絡によって短絡電流が流れた場合は、短絡部が局所的に高温になるため、シャットダウン機能で温度上昇が止まる以前にセパレータ30が局所的に溶融し、熱収縮や破膜してしまい、ついには正極板10と負極板20とが短絡する。
【0007】
そのため、内部短絡によって短絡電流が流れても、熱収縮や破膜を抑制する効果があるセパレータ30も提供されている。このセパレータ30は、
図5に示すように、多孔質ポリオレフィンからなる基材層31に、セラミック粉末からなる又はセラミック粉末と耐熱性樹脂との複合体からなる無機層32が積層されている。
【0008】
また、正極板10は、正極箔11の両面に正極活物質層12を積層したものであるが、正極箔11の一端部(図面において左側端部)11aは、正極活物質層12が積層されないで集電体121(同図において図示せず)に接続される。そして、負極板20は、負極箔21の両面に負極活物質層22を積層したものであるが、負極箔21の一端部(図面において右側端部)21aは、負極活物質層22が積層されないで集電体122(同図において図示せず)に接続される。
【0009】
そして、セパレータ30の両端部30aは、正極板10の正極活物質層12及び負極板20の負極活物質層22の端縁よりも突出し、セパレータ30が高温に加熱されることによって伸縮しても、正極板10と負極板20との絶縁性を確保することができるようにされている。また、セパレータ30は、基材層31が負極板20の負極活物質層22に重ね合わされ、無機層32が正極板10の正極活物質層12に重ね合わされている。
【0010】
なお、特許文献1には、多孔質ポリオレフィン層(基材層)に耐熱性多孔質層(無機層)を積層したセパレータを備え、前記耐熱性多孔質層を長手方向に間歇的に形成したことを特徴とする非水電解液二次電池が記載されている。この非水電解液二次電池によれば、セパレータの表面において、極板群の軸方向に筋状の溝が形成されるため、電解液がこの溝を通って極板群内に含浸し、また、充放電によって発生したガスが溝を通って極板群外へ排出することができるようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−49114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
非水電解液二次電池その他の電池は、正極板10と負極板20との絶縁性を確保するため、セパレータ30の端部30aが正極板10の正極活物質層12及び負極板20の負極活物質層22の端縁よりも突出している。したがって、正極活物質層12の端縁から突出しているセパレータ30の端部30aは、電池が振動することにより、あるいは正極板10又は負極板20が膨張収縮することにより、あるいは電解液が電池ケース110内を移動することにより、
図5の仮想線に示すように、負極箔21又は正極箔11の方に折れ曲がったり、撓曲したり曲がってしまう。
【0013】
セパレータ30の端部30aが負極箔21の端部21aの方に曲がり、基材層31が負極箔21の端部21aに衝突したとしても、基材層31が多孔質ポリオレフィンから形成されていることから、基材層31がクッションのように作用し、無機層32が基材層21から剥離することはない。
【0014】
しかし、セパレータ30が正極箔11の端部11aの方に曲がると、無機層32に衝撃力が加えられることにより、無機層32が基材層31から剥離してしまう。すると、セパレータ30は、内部短絡によって短絡電流が流れた場合、局所的に溶融し、熱収縮や破膜してしまうことがある。
【0015】
そこで、本発明は、基材層に無機層を積層した電池用のセパレータにおいて、振動が加えられるなどにより、曲がっても無機層が基材層から剥離しないようにした電池用のセパレータ、この電池用のセパレータの製造方法及びこの電池用のセパレータを備えた電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る電池用のセパレータは、負極箔の一端部を除いた両面に負極活物質層を積層した負極板と正極箔の一端部を除いた両面に正極活物質層を積層した正極板との間に挟まれる電池用のセパレータであって、前記負極板の負極活物質層又は前記正極板の正極活物質層に重ね合わされる基材層と前記正極板の正極活物質層又は前記負極板の負極活物質層に重ね合わされる無機層とが積層され、少なくとも正極箔又は負極箔と対峙する無機層の端部に、正極活物質層又は負極活物質層と重なり合う面に対して鈍角をなすテーパ面が形成されていることを特徴としている。
【0017】
この電池用のセパレータによれば、無機層の端部に形成されたテーパ面が正極活物質層又は負極活物質層から突出している正極箔又は負極箔の一端部に対峙する。そして、テーパ面は、正極活物質層又は負極活物質層と重なり合う面に対して鈍角をなしている。したがって、このセパレータを正極板と負極板との間に挟んだ発電要素を備えた二次電池が振動するなどにより、無機層が正極箔又は負極箔に衝突したとしても、衝撃力がテーパ面に加えられ、分布荷重が無機層に作用する状態となるため、無機層は基材層から剥離しない。
【0018】
また、前記本発明に係る電池用のセパレータにおいて、前記基材層の端部にも、前記無機層のテーパ面に連続するテーパ面が形成されていることが好ましい。この電池用のセパレータによれば、テーパ面が無機層だけでなく、基材層にも形成されていることにより、基材層のテーパ面でも衝撃力を受け止め、基材層に加えられる衝撃力を緩和することができる。
【0019】
また、前記本発明に係る電池用のセパレータにおいて、前記テーパ面は、無機層と対峙する正極箔又は負極箔側に曲がった際に、無機層と対峙する正極箔又は負極箔と重なり合う角度に形成されていることが好ましい。この電池用のセパレータによれば、テーパ面が無機層と対峙する正極箔又は負極箔側側に曲がった際に、無機層と対峙する正極箔又は負極箔と重なり合う角度とされていることにより、テーパ面全面で衝撃力を受けるようにすることができる。
【0020】
また、本発明に係る電池は、前記いずれかの本発明に係るセパレータが備えられていることを特徴としている。すなわち、本発明に係る電池は、少なくとも正極箔又は負極箔と対峙する無機層の端部に、正極活物質層又は負極活物質層と重なり合う面に対して鈍角をなすテーパ面が形成されたセパレータを備えている。
【0021】
したがって、この電池は、振動することで、セパレータのテーパ面に衝撃力が加えられても、無機層が基材層から剥離しないため、セパレータに起因する損傷を低減することができる。
【0022】
また、本発明に係る電池用のセパレータの製造方法は、前記の本発明に係るセパレータの製造方法であって、均等な厚さの基材層に均等な厚さの無機層を積層した後、無機層の端部をエッジから次第に肉厚になるような斜め向きにカットする、又は斜め向きにプレスすることでテーパ面を形成することを特徴としている。
【0023】
この電池用のセパレータの製造方法によれば、セパレータのテーパ面が斜め向きにカットすることにより、又は斜め向きにプレスすることにより、形成するため、生産性を向上させることができる。
また、本発明は、正極箔と、前記正極箔に積層された正極活物質層とを有し、少なくとも一端部で前記正極活物質層が積層されない正極板と、負極箔と、前記負極箔に積層された負極活物質層とを有し、少なくとも一端部で前記負極活物質層が積層されない負極板と、基材層と、前記基材層に積層された無機層とを有し、前記正極板と前記負極板との間に挟まれるセパレータであって、前記正極活物質層が積層されない部分又は前記負極活物質層が積層されない部分と対峙するセパレータと、を備え、前記セパレータの前記無機層は、前記正極活物質層及び前記負極活物質層のいずれか一方に対峙し、前記無機層は、その端部に、前記正極活物質層及び前記負極活物質層のいずれか一方と重なり合う面に対して鈍角をなすテーパ面が形成されている電池として実現されても良い。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、基材層に重ね合わされる無機層の端部にテーパ面を形成した電池用のセパレータが提供されることにより、振動などによってセパレータの端部が正極箔の方に曲がっても、無機層が基材層から剥離しないようにすることができる。
【0025】
したがって、この電池用のセパレータは、内部短絡によって短絡電流が流れた場合、局所的に溶融することがなく、熱収縮や破膜を抑制する効果があるセパレータを備えた電池を提供することができ、また、このセパレータを備えた電池は、長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明に係る電池用のセパレータを含む発電要素の一実施形態を示す断面平面図である。
【
図2】本発明に係る電池用のセパレータの要部であって、(a)〜(d)は異なる変形例を示す断面平面図である。
【
図3】本発明に係る電池用のセパレータの要部であって、(a),(b)は異なる変形例を示す断面平面図である。
【
図5】従来の電池用のセパレータを含む発電要素を示す断面平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に係る電池用のセパレータの実施形態について、図面を参酌しつつ説明する。なお、従来と同一部分は、同一符号を付して説明する。
【0028】
セパレータ30は、
図4に示したような非水電解質二次電池に備えられ発電要素100を構成する。すなわち、発電要素100は、帯状の正極板10と帯状の負極板20との間にセパレータ30を介在させたもので、扁平に巻回され、薄型の電池ケース110内に収納される。
【0029】
そして、正極板10は、正極箔11の一端部11a(
図1において左側端部)を除いた両面に正極活物質層12を積層したものであるため、正極箔11の他端縁と正極活物質層12の他端縁とが同一面に揃えられている一方、正極箔11の一端部11aが正極活物質層12から突出している。
【0030】
また、負極板20は、負極箔21の一端部21a(
図1において右端側部)を除いた両面に負極活物質層22を積層したものであるため、負極箔21の他端縁と負極活物質層22の他端縁とが同一面に揃えられている一方、負極箔21の一端部21aが負極活物質層22から突出している。
【0031】
そして、セパレータ30が140〜180℃程度に加熱されることによって伸縮しても、正極板10と負極板20との絶縁性を確保することができるようにするため、セパレータ30の両端部30aは、正極活物質層12の両端縁及び負極活物質層22の両端縁から突出している。ただし、正極箔11の一端部11aと負極箔21の一端部21aとには、それぞれ集電体が接続されるため、セパレータ30の両端部30aは、正極箔11の一端部11a及び負極箔21の一端部21aと対峙している。
【0032】
また、セパレータ30は、内部短絡によって短絡電流が流れても、局所的に溶融し、熱収縮や破膜しないようにするため、例えば多孔質ポリオレフィン膜からなる基材層31に、セラミック粉末からなる又はセラミック粉末と樹脂との複合体からなる無機層32を積層した二層に形成され、基材層31が負極板20の負極活物質層22に重なり合い、無機層32が正極板10の正極活物質層12に重なり合っている。
【0033】
基材層31は、多孔質樹脂フィルムであり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、塩素化ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン誘導体;ポリエチレンテレフタレート、共重合ポリエステル等のポリエステル類;セルロース類等の有機樹脂を採用することができ、耐電解液性や耐久性等の観点から、ポリエチレン、ポリプロピレンを採用することが好ましい。上記有機樹脂は一種類を用いてもよいし、二種以上を混合又は積層して用いてもよい。基材層31の厚みは、0.5μm〜50μmの範囲が好ましい。
【0034】
セラミック粉末には、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄等の酸化物;窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の窒化物;シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、チタン酸カリウム、タルク、カオリンクレイ、カオリナイト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等、またこれらの化合物からなる複合化合物を採用することができる。なかでも、アルミナ、シリカ、チタニアが好ましく、これらのうち1種類以上を含むことが好ましい。セラミック粉末は、平均粒子径が0.01μm〜5μmの範囲が好ましい。
【0035】
樹脂は、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ化樹脂、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体等のフッ素ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体及びその水素化物、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体及びその水素化物、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体及びその水素化物、メタクリル酸エステル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体等の合成ゴム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩等のセルロース系樹脂、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド及びその前駆体(ポリアミック酸等)等のポリイミド樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル等を採用することができる。樹脂は、上記に挙げた中の一種類を用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。無機層32の厚みは、0.5μm〜50μmの範囲が好ましい。
【0036】
そして、この実施形態のセパレータ30は、少なくとも正極箔11と対峙する無機層32の端部、すなわち、正極活物質層12の端縁付近で露出している内寄部30bから端縁にかけて、正極箔11の一端部11aと対峙するテーパ面33が形成されていることを特徴としている。
【0037】
ただし、生産性や組立性を向上させるため、テーパ面33は、正極箔11と対峙しない端部、すなわち両端部に設けてもよい。いずれにしても、このテーパ面33は、正極活物質層12と重なり合う面32aとなす角度θが鈍角、例えば120°〜150°、好ましくは135°程度とされる。
【0038】
また、テーパ面33は、
図1に示すように、無機層32から連続して基材層31にも設けてもよい。したがって、この基材層31は、尖端形状に形成される。ただし、負極板20の負極活物質層22の端縁から突出している基材層31は、テーパ面でなく、負極活物質層22と重なっている面に連続する平坦面とされ、対峙している2枚の基材層31の表面は、平行になる。
【0039】
あるいは、テーパ面33は、
図2(a)に示すように、無機層32の内寄部30bから端縁にかけて、無機層32にのみ形成してもよい。このテーパ面33の先端は、無機層32と基材層31との境界部30cに位置し、テーパ面33は基材層31に設けられていない。
【0040】
あるいは、テーパ面33は、
図2(b)に示すように無機層32の内寄部30bから無機層32の先端縁の中間部30dにかけて形成してもよい。したがって、このセパレータ30の先端部には、無機層32の先端部と基材層31の先端部とが連続する平坦部が設けられている。
【0041】
また、テーパ面33は、
図2(c)に示すように、無機層32の内寄部30bから先端縁30eに向かって、先細りに、かつ、基材層31に食い込むように傾斜し、基材層31も先端側ほど薄肉化されることによって形成してもよい。
【0042】
あるいは、テーパ面33は、
図2(d)に示すように、無機層32の内寄部30bから先端縁30fに向かって、ほぼ同一幅で基材層31に食い込むように傾斜し、基材層31が先端側ほど薄肉化されることによって形成してもよい。
【0043】
このようなテーパ面33は、基材層31の表面と無機層32の表面とが全幅に亘って平行な状態のセパレータ30の原反が繰り出され、原反の端部がカッタによってカットしたり、ヤスリによって擦られたりすることで、
図1、
図2(a)(b)のように設けることができ、ロールなどで圧潰されることで、
図2(c)(d)のように設けることができる。
【0044】
なお、このようにカッタ、ヤスリ、ロールなどで成形されたセパレータ30は、
図3(a)に示すように、内寄部30bが角張らずに膨出し、基材層31の先端部31bが突出し、あるいは、
図3(b)に示すように、内寄部30bが曲面に形成され、基材層31の先端部31bが曲面状に若干食い込む状態に形成されることがある。セパレータ30の端部30aがこのように形成されても、テーパ面33の機能が損なわれることはない。
【0045】
そして、
図1ないし
図3に示したようなセパレータ30を正極板10と負極板20とが挟んだ発電要素100を巻回し、発電要素100を電池ケース110内に収納することで電池(二次電池)として使用される。この発電要素100を巻回する際、電池ケース110内に収納する際、あるいは二次電池を車両などに搭載した状態において、二次電池に振動が加えられることにより、あるいは正極板10又は負極板20が膨張収縮することにより、あるいは、電解液が電池ケース110内で移動することにより、セパレータ30の端部が曲げられる。
【0046】
しかし、このセパレータ30は、正極活物質層12と重なり合う面32aとテーパ面33とのなす角度θが鈍角に形成され、このテーパ面33が正極箔11に衝突することにより、衝撃力がテーパ面33に加えられ、分布荷重が無機層32に作用する状態となるため、無機層32は基材層31から剥離しない。
【0047】
また、セパレータ30は、テーパ面33を設けていない基材層31が負極箔21に衝突したとしても、基材層31が多孔質ポリオレフィン膜から形成され、軟質であることから、損傷するなどのダメージが与えられない。したがって、このセパレータ30は、内部短絡によって短絡電流が流れた場合に、局所的に溶融せず、したがって、熱収縮や破膜することを抑制することができる。
【0048】
なお、本発明は、前記実施の形態に限定することなく、種々変更することができる。例えば、前記実施の形態では、セパレータ30の基材層31が負極板20の負極活物質層22に重なり合い、無機層32が正極板10の正極活物質層12に重なり合い、テーパ面33が正極板11の一端部11aと対峙している場合について説明したが、セパレータ30の基材層31が正極板10の正極活物質層12に重なり合い、無機層32が負極板31の負極活物質層22に重なり合い、テーパ面33が負極箔21の一端部21aと対峙するようにしてもよい。
【0049】
また、このセパレータ30を正極板10と負極板20とに挟んだ発電要素100は、円柱状に巻回し、有底円筒状のケース本体内に収納する場合でも使用することができる。また、テーパ面33は、正極箔11と対峙する端部にのみ形成し、正極箔11と対峙しない端部には形成しないようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
10……正極板
11……正極箔
11a…一端部
12……正極活物質層
20……負極板
21……負極箔
21a…一端部
22……負極活物質層
30……セパレータ
30a…端部
30b…内寄部
31……基材層
32……無機層
32a…重なり合う面
33……テーパ面
100…発電要素
θ………角度