(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5692661
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】フラッパ型ソレノイド
(51)【国際特許分類】
H01F 7/14 20060101AFI20150312BHJP
【FI】
H01F7/14 G
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-93257(P2012-93257)
(22)【出願日】2012年4月16日
(65)【公開番号】特開2013-222806(P2013-222806A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2012年6月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000169330
【氏名又は名称】ティディエス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100069903
【弁理士】
【氏名又は名称】幸田 全弘
(72)【発明者】
【氏名】春日 忠志
【審査官】
中野 浩昌
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭56−048105(JP,A)
【文献】
特開平07−272924(JP,A)
【文献】
特公平06−028127(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨーク内に配置される電磁コイルを有するボビンと、前記ボビン内に配置される磁性芯と、基端部に係着されるスプリング部材によって前記ヨーク上に揺動自在に配置されるフラッパを主構成要素とするフラッパ型ソレノイドであって、
少なくとも、前記ボビンと前記ボビン上に揺動自在に設けられるフラッパとが、プラスチック材料で形成され、前記ボビンとフラッパが、断面円弧状のスプリング部材で一体的に連結され、
前記磁性芯が、上下方向に可動型の磁性芯であり、
前記スプリング部材は、その厚さや幅およびカット断面によって、所望の反発力を発揮されるよう設計され、
前記フラッパは、板状体の長手方向に沿って長孔が形成され、この長孔に前記磁性芯の頂部が遊嵌状態で装着されていること
を特徴とするフラッパ型ソレノイド。
【請求項2】
前記ボビンとフラッパは、
プラスチック材料からなるスプリング部材によって、一体的に連結されていること
を特徴とする請求項1に記載のフラッパ型ソレノイド。
【請求項3】
前記ボビンとフラッパは、
金属材料からなるスプリング部材によって、一体的に連結されていること
を特徴とする請求項1に記載のフラッパ型ソレノイド。
【請求項4】
前記フラッパは、
その基端部に付設される前記円弧状のスプリング部材とプラスチック材料で一体成形されたものであって、個別に成形されたプラスチック材料からなるボビンと、前記スプリング部材を介して一体的に連結されること
を特徴とする請求項1に記載のフラッパ型ソレノイド。
【請求項5】
前記スプリング部材は、
一方の開口縁部が前記フラッパに一体的に付設され、他方の開口縁部の表面に形成された係合用の突起を、前記ボビンの外周部に形成された連結孔に嵌合させることによって一体的に連結されていること
を特徴とする請求項4に記載のフラッパ型ソレノイド。
【請求項6】
前記フラッパは、
その先端部に金属製の係止片が装着されていること
を特徴とする請求項1に記載のフラッパ型ソレノイド。
【請求項7】
前記フラッパは、
前記スプリング部材が位置する基端側の上面にも、プラスチック又は金属製の係止片が付設されていること
を特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のフラッパ型ソレノイド。
【請求項8】
前記フラッパは、
前記ヨークの上面部と当接下面に消音部材が一体的に付設されたもので、前記消音部材の断面形状は、逆円弧状又は柱状もしくは中空柱であること
を特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のフラッパ型ソレノイド。
【請求項9】
前記磁性芯は、
鉄からなるものであって、前記ボビンの内径とほぼ等しい外径を有する円柱状の芯材の頂部に縮径部を介して、円盤状の頭部を一体的に設けたもので、前記ボビン内に装着したとき、その底部がヨークの底面との間に所要の空隙が形成されること
を特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のフラッパ型ソレノイド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、コピー機、ファクシミリ、ハードディスクなどのOA機器、その他各種の情報事務機器などに使用されるフラッパ型ソレノイドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、複写機やプリンタなどの用紙の位置決めに際しては、フラッパ型ソレノイドが採用されている。
このフラッパ型ソレノイドは、ヨークに配置したボビンの中心部に設けた固定鉄芯と、前記ボビンの外側に捲回された電磁コイルとで電磁石を構成し、前記電磁コイルに通電することで磁界を発生させ、前記固定鉄芯の上部に揺動自在に配置された鉄製の可動板(フラッパ)を吸着して作動させるものである。
【0003】
かかるフラッパ型ソレノイドは、例えば、特開平06−151164号公報(特許文献
1)や特開平07−295318号公報(特許文献2)で開示されているように、前記可
動板が作動する際に、ヨークと当接する度に騒音を発する。
【0004】
この騒音の発生を抑えるため、前記特許文献1においては、コイルと固定鉄芯からなる励磁体を備えたヨークに支点軸を形成し、この支点軸に、一端が前記固定鉄芯を構成する鉄芯に吸引自在で、かつスプリングにより常に復帰付勢したフラッパの他端を揺動自在に嵌合支持させるとともに、前記フラッパの復帰によって、当該フラッパを度当りさせるゴムなどの緩衝部材を設ける形式のソレノイドにおいて、
前記の緩衝部材を、前記ヨークの支点軸とこの支点軸に嵌合されたフラッパの嵌合部との間の空隙に介在させたソレノイドが提案されている。
【0005】
一方、前記特許文献2においては、電磁コイルと、この電磁コイルの中心に位置する磁性芯と、前記電磁コイルと前記磁性芯とから成る電磁石に磁界が発生した時に前記磁性芯に吸着される回動可能の磁性可動片と、前記電磁石の磁界が消去した時に前記磁性可動片を前記磁性芯より離間させる弾性部材と、前記磁性芯と前記磁性可動片との間に固設される消音材とから構成される電子写真画像形成装置用フラッパ型ソレノイドにおいて、
前記消音材が、少なくともシリコンエラストーマから成る発泡弾性材によって形成されることソレノイドが提案されている。
【0006】
さらに、特開2000−124028号公報(特許文献3)には、電磁コイルと、この電磁コイルの略中心に位置する磁性芯と、前記電磁コイルと前記磁性芯とから成る電磁石に磁界が発生したとき、前記磁性芯に吸着される回動可能なフラッパと、前記電磁石の磁界が消去したとき、前記フラッパを前記磁性芯より離間させる付勢部材とを有するフラッパ型電磁ソレノイドにおいて、
前記フラッパとこれを支える支持部との間に、相互の部品間のガタによる作動時の叩打音を吸収する吸音静音材を介在させたことを特徴とするフラッパ型電磁ソレノイドが提案されている。
【0007】
より具体的には、エラストマやPA(ナイロン12)等の吸音効果の高い、軟性を有するプラスチックからなる、フラッパ先端部の引っ掛け爪部と、鉄芯との当接部の当接突起と、フラッパ支持部の支持嵌合部と及び引っ張りバネの振動を抑える振動抑制片からなる吸音静音材を、アウトサートインジェクション成形によりフラッパと一体的に形成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平06−151164号公報(請求項1,
図2)
【特許文献2】特開平07−295318号公報(特許請求の範囲,
図6,
図7)
【特許文献3】特開2000−124028号公報(特許請求の範囲,
図8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記特許文献1に記載の発明は、ヨークの一方側の上端部に左右一対の支点軸を突出形成し、この支点軸にスプリングによって常時開方向に付勢されているフラッパを揺動自在に装着するに際し、前記各支点軸にゴム製の緩衝材を嵌合支持させることで、フラッパ復帰時の騒音を阻止したものである。
【0010】
したがって、構成が簡易で既存のソレノイドにも簡単に利用できる点で、実用上の効果がきわめて高いものである。
しかしながら、前記フラッパは、その基端部がヨークの側面に一端が固定されたスプリング部材に係着される構成で、用途に応じてスプリングの種類を選択する必要がある。
【0011】
さらに、ソレノイド自体が、フラッパ、ボビン、スプリング、消音用の緩衝材およびヨークなど独立した部品で構成されているので、部品管理が煩瑣であるとともに、組立には多くの工程を必要とするので、生産性が悪いという解決すべき課題が存在している。
【0012】
さらにまた、前記フラッパは鉄製であるので、その先端部が表面処理や搬送に際して凸傷が付き易く、フラッパ型ソレノイドを必要とする機器(以下、相手方という。)のプラスチック製のカムに凸傷が引っ掛かり、削りが発生するなどの問題があった。
【0013】
さらにまた、鉄製という特性に起因して、プラスチック製の相手方のカムに当たる時、金属音が発生する。
加えて、フラッパの先端爪部の摩擦が大きいため、相手方のプラスチック製のカムの変形によって寿命が制限され、スプリング組立引っ掛け時に、スプリング自体が伸びてしまうという課題もあった。
【0014】
前記特許文献2に記載のソレノイドは、磁性芯と前記磁性可動片との間に固設される消音材が、少なくともシリコンエラストーマから成る発泡弾性材からなるもので、消音手段に具体的な相違があるものの、基本的な構成が同一であるので、前記解決すべき課題は共通している。
【0015】
前記特許文献3に記載のフラッパ型電磁ソレノイドは、フラッパと、当該フラッパを揺動自在に支持する支持部との間に、相互の部品間のガタによる作動時の叩打音を吸収する吸音静音材を介在させるもので、この吸音静音材は、フラッパ先端部の引っ掛け爪部と、鉄芯との当接部の当接突起と、フラッパ支持部の支持嵌合部と及び引っ張りバネの振動を抑える振動抑制片を一体的に有し、アウトサートインジェクション成形によりフラッパと一体的に形成されている。
【0016】
したがって、機能的には優れたものと推測されるが、吸音静音材は、アウトサートインジェクション成形によりフラッパと一体的に形成することが不可欠で、必ずしも組立工程を著しく簡素化するものではない。
【0017】
この発明はかかる現状に鑑み、鋭意検討の結果、ソレノイドを構成する部品中、フラッパとボビンをプラスチック材料によって形成し、これら部材同士を、プラスチックまたは金属製のスプリング部材によって連結させることによって、生産性の大幅な向上と、コストダウンが図れるフラッパ型ソレノイドを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記の目的を達成するため、この発明の請求項1に記載の発明は、
ヨーク内に配置される電磁コイルを有するボビンと、前記ボビン内に配置される磁性芯と、基端部に係着されるスプリング部材によって前記ヨーク上に揺動自在に配置されるフラッパを主構成要素とするフラッパ型ソレノイドであって、
少なくとも、前記ボビンと前記ボビン上に揺動自在に設けられるフラッパとが、プラスチック材料で形成され、前記ボビンとフラッパが、断面円弧状のスプリング部材で一体的に連結され、
前記磁性芯が、上下方向に可動型の磁性芯であ
り、
前記スプリング部材は、その厚さや幅およびカット断面によって、所望の反発力を発揮されるよう設計され、
前記フラッパは、板状体の長手方向に沿って長孔が形成され、この長孔に前記磁性芯の頂部が遊嵌状態で装着されていること
を特徴とするフラッパ型ソレノイドである。
【0019】
この発明の請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載のフラッパ型ソレノイドにおいて、
前記ボビンとフラッパは、
プラスチック材料からなるスプリング部材によって、一体的に連結されていること
を特徴とするものである。
【0020】
この発明の請求項3に記載の発明は、
請求項1に記載のフラッパ型ソレノイドにおいて、
前記ボビンとフラッパは、
金属材料からなるスプリング部材によって、一体的に連結されていること
を特徴とするものである。
【0021】
この発明の請求項4に記載の発明は、
請求項1に記載のフラッパ型ソレノイドにおいて、
前記フラッパは、
その基端部に付設される前記円弧状のスプリング部材とプラスチック材料で一体成形されたものであって、個別に成形されたプラスチック材料からなるボビンと、前記スプリング部材を介して一体的に連結されること
を特徴とするものである。
【0022】
この発明の請求項5に記載の発明は、
請求項4に記載のフラッパ型ソレノイドにおいて、
前記スプリング部材は、
一方の開口縁部が前記フラッパに一体的に付設され、他方の開口縁部の表面に形成された係合用の突起を、前記ボビンの外周部に形成された連結孔に嵌合させることによって一体的に連結されていること
を特徴とするものである。
【0023】
この発明の請求項6に記載の発明は、
請求項1に記載のフラッパ型ソレノイドにおいて、
前記フラッパは、
その先端部に金属製の係止片が装着されていること
を特徴とするものである。
【0024】
この発明の請求項7に記載の発明は、
請求項1〜6のいずれかに記載のフラッパ型ソレノイドにおいて、
前記フラッパは、
前記スプリング部材が位置する基端側の上面にも、プラスチック又は金属製の係止片が付設されていること
を特徴とするものである。
【0025】
この発明の請求項8に記載の発明は、
請求項1〜7のいずれかに記載のフラッパ型ソレノイドにおいて、
前記フラッパは、
前記ヨークの上面部と当接下面に消音部材が一体的に付設されたもので、前記消音部材の断面形状は、逆円弧状又は柱状もしくは中空柱であること
を特徴とするものである。
【0026】
この発明の請求項
9に記載の発明は、
請求項
1〜8のいずれかに記載のフラッパ型ソレノイドにおいて、
前記磁性芯は、
鉄からなるものであって、前記ボビンの内径とほぼ等しい外径を有する円柱状の芯材の頂部に縮径部を介して、円盤状の頭部を一体的に設けたもので、前記ボビン内に装着したとき、その底部がヨークの底面との間に所要の空隙が形成されること
を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0027】
この発明のフラッパ型ソレノイドは、少なくとも電磁コイルを捲回するボビンと、前記ボビン上に揺動自在に設けられるフラッパとを、プラスチック材料によって成形するとともに、前記ボビンとフラッパとを断面が円弧状のスプリング部材によって一体的に連結しているので、組立部品点数と組立工数を大幅に削減させることができる。
【0028】
特に、この発明においては、フラッパがプラスチックで構成されているので、従前の磁性材からなるフラッパが必須とする表面処理を必要とせず、表面処理や搬送時に生じる凸傷が生じ難く、プラスチック製の相手カムとの係合が円滑で、相手カムに削りが生じないなどの優れた作用効果を奏する。
【0029】
さらに、フラッパが相手カムに当たる時の金属音がなくなるとともに、先端部に形成される爪(係止片)の滑りが良好で、フラッパ自体の寿命を延ばすことができる。
【0030】
さらにまた、前記プラスチック製のボビンとフラッパとを、プラスチック又は金属製のスプリング部材で一体的に連結させることによって、用途に応じた強度と反発力を有するものを選択することができ、かつボビンとフラッパの組み立てを一層簡略化させることができる。
同時に、前記スプリング部材そのものの厚さや幅、カット断面形状を適宜選択することによって、使用目的に最適な反発力を有するフラッパ型ソレノイドを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】この発明にかかるフラッパ型ソレノイドの一例を示す一部切欠き側面図であ る。
【
図2】この発明にかかるフラッパ型ソレノイドの他の例を示す側面図である。
【
図7】この発明におけるフラッパとボビンとの結合例を示す説明図である。
【
図8】この発明におけるフラッパの他の例を示す側面図である。
【
図9】この発明におけるフラッパのさらに他の例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、この発明のフラッパ型ソレノイドを、添付の図面に基づいて具体的に説明する。
なお、この発明は実施例にのみ限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において種々改良を加えることができる。
【0033】
この発明のフラッパ型ソレノイド(以下、「ソレノイド」という。)1は、ヨーク2と、このヨーク2内の中心部に配置されるボビン3と、このボビン3に捲回される電磁コイル4と、この電磁コイル4の中心部に配置される磁性芯5と、前記ヨーク2の上面上に揺動自在に保持されるフラッパ6と、このフラッパ6と前記ボビン3とを一体化させ、かつフラッパ6を常時ヨーク2から離反させる方向に付勢するスプリング部材7を主たる構成部材とするものである。
【0034】
図1に示す、この発明のソレノイド1は、前記構成部材中、少なくともボビン2とフラッパ6とを、プラスチック材料で構成することを最大の特長とするものである。
【0035】
この
図1で明らかなように、前記ソレノイド1は、電磁コイル4を捲回するボビン3の上部フランジ31の一部に、断面が円弧状のスプリング部材7の下方の開口縁部を連結させるとともに、前記スプリング部材7の上方の開口縁部を、前記ヨーク2の上面部に突出形成された一対の軸杆21に基端近傍が支承された、フラッパ6の基端部に連結させたものである。
【0036】
すなわち、前記ソレノイド1は、ボビン3とフラッパ6および両者を連結するスプリング部材7をプラスチック材料で一体成形したものである。
なお、図中、61はフラッパ6の先端側に突設される、他の機器のカム(図示せず)と係合する係止片、62は前記ヨーク2の上面と当接するフラッパ6の下面に一体的に付設されたプラスチック製の円弧状の消音部材、22はヨーク2を装着するための取付部材、41はリード線である。
【0037】
このソレノイド1は、フラッパ6をプラスチックで構成しているので、従来の固定タイプの磁性芯は利用できない。
そのため、この発明においては、上下方向に可動型の磁性芯5を鉄で成形している。
具体的には、前記ボビン3の内径とほぼ等しい外径を有する、円柱状の芯材51の頂部に縮径部52を介して円盤状の頭部53を一体的に設けたもので、前記ボビン3内に装着したとき、その底部がヨーク2の底面との間に所要の空隙が形成されるよう配置されるものである。
【0038】
図2に示すソレノイド11は、前記ボビン3とフラッパ6とを、同一もしくは異なるプラスチック材料で別個に構成したもので、前記フラッパ6の基端部には、あらかじめ円弧状のスプリング部材7の上方の開口縁部が一体的に付設されている。
すなわち、前記フラッパ6とスプリング部材7とを一体で成形したものである。
なお、前記ソレノイド1と同一部材は、同一符号を用いて説明する。
【0039】
前記ソレノイド11を構成するフラッパ6は、
図3に示すように、基端部にスプリング部材7の一方の開口縁が一体的に付設されるとともに、基端側近傍の長手方向において相対する縁部に、それぞれヨーク2の上面に突出形成された一対の軸杆21を係合させるための凹状の係合部63,63が形成されている。
【0040】
さらに、このフラッパ6は、その中央部に長手方向に沿って所要の幅と長さを有するガイド溝64が形成されている。
このガイド溝64の基端側には、磁性芯5の頭部53を下方から上方に貫通させるための透孔65が連続して形成されている。
【0041】
前記ガイド溝64の基端側の相対する側縁部上には、前記磁性芯5の頭部53をスポット的に支持する突起66が付設され、磁性芯5のフラッパ6に対する負荷を軽減させている。
【0042】
さらにまた、前記フラッパ6には、前記ヨーク2の上面部と当接する裏面に、断面円弧状の消音部材62が一体的に成形されているもので、図示していないが、
図1に示すフラッパ6も、
図2と同一構成を有しているものである。
この消音部材62は、事後的にフラッパ6に装着してもよく、消音に適した材料であれば特段の制限はない。
【0043】
前記スプリング部材7の他方の開口縁には、
図4で示すように、その裏面側に係合用の突起71が下方に向けて突設されている。
この点が、
図1のフラッパ6と異なる点である。
【0044】
この突起71を、
図5,6に示す、前記ボビン3の上部の外周部に形成された透孔からなる連結部32に嵌入させることによって、ボビン3とフラッパ6とを爾後的に一体化させるものである。
【0045】
なお、図中、33は磁性芯5を挿通させるための挿通孔、34は前記連結部31とは反対側の上下の外周部に形成した係合片であって、この係合片33,34を利用して、ボビン3をヨーク2に係合保持させるものである。
【0046】
このソレノイド11における磁性芯5も、
図1の磁性芯5と同様の構成を有し、その頭部をフラッパ6に形成されたガイド溝64に遊嵌させているので、電磁コイル4への通電によってボビン3内を上下方向に移動し、ヨーク2の軸杆21を支点として、スプリング部材7の付勢力に抗してフラッパ6を下方に搖動させ、スプリング部材7の付勢力によって上方に持ち上げられる。
【0047】
このフラッパ6とボビン3との一体化は、それぞれの用途に適したプラスチック素材で成形することができ、
図1に示すオール一体型のソレノイド1に比して、より組立てが簡易化され、かつ成形性をよくすることができる。
【0048】
前記フラッパ6の下面に付設される消音部材62は、
図1および
図2においては、断面が円弧状のものを使用しているが、要は、ヨーク2とフラッパ6との間で生ずる異音を防止できるものであれば、素材や形態に特段の限定はなく、例えば、その形態は円柱状体や角柱状体、半球状体のものであってもよい。
【0049】
前記スプリング部材7は、断面が円弧状であれば、プラスチックもしくは金属で成形されたものであってもよい。
図1および
図2においては、プラスチックを用いてリングの一部が切除された円弧状としているが、その厚みや幅を適宜選択することによって、所望の反発力を有するものとすることができる。
【0050】
さらに、図示しないが、スプリング部材7は、全体を断面が円状の可撓性を有する棒状体も使用することもできる。
帯状のスプリング部材においては、図示しないが、帯状部の一部に所要の幅と長さを有するスリットを形成することによっても、同様の作用効果を得ることができる。
【0051】
さらに、前記スプリング部材7は、
図1および
図2においては、プラスチック素材を使用し、フラッパ6とスプリング部材7およびボビン3とを一体成形するか、あるいはフラッパ6とスプリング部材7をプラスチック材料で一体成形し、事後的にボビン3と一体結合させているが、
図7に示すように、断面形状が円弧状の金属製もしくはプラスチック製で成形した単独のスプリング部材7Aを使用することもできる。
【0052】
すなわち、前記スプリング部材7Aは、各開口縁部に、それぞれ係合片7a,7aが一体的に突出形成されたものである。
したがって、前記係合片7aの一方をフラッパ6Aの基端部に形成した係合孔6aに、他方の係合片7aをボビン3Aの上部に形成した係合孔3aにそれぞれ嵌合させることによって、フラッパ6Aとボビン3Aとを一体化させることができる。
【0053】
この結合手段は、フラッパ6とボビン3との組立て作業を容易にし、使用する用途に応じてプラスチック材と金属材を選択でき、その厚さや幅などを自由に選択できるので、所望の反発力を容易に得られる点で優れている。
【0054】
前記フラッパ6の先端側に付設される相手方カム(図示せず)との係止片61は、
図1又は2に示すように、フラッパ6の先端部を上方に折り返して形成されるが、前記係止片61の屈曲角度は、磁性芯側に対して80〜90°の範囲内であることが、相手方のカムとの係合度を向上させることができるので好ましい。
【0055】
さらに、この係止片61は、たとえば、複写機などの紙送り装置における回転軸などと係合するため、用途によってはプラスチックよりも金属製が好ましい場合もある。
そのため、
図8に示すように、フラッパ6Aの先端部に、個別に形成した金属製の係止片61Aを付設することによって、係止片61A自体の強度を向上させることができる。
【0056】
さらに、この係止片61は、例えば、白黒プリンタ用では1つで済むが、カラープリンタでは、黒、赤、青、黄色の四色をプリントするので、各色に最低1個の係止片を必要とするので、最低四つのソレノイドが必要となる。
【0057】
この発明においてはかかる事情に鑑み、
図9に示すように、プラスチック材料からなるフラッパ6Aにおいて、先端部に付設される係止片61A以外に、基端部にも係止片61Aを一体的に付設し、各係止片61Aの一方を黒用に、他の係止片61Aを赤用に使用することによって、ソレノイドを2個使用するだけで、四色に対応可能としている。
【産業上の利用可能性】
【0058】
この発明のフラッパ型ソレノイドは、主要部を構成するボビンとフラッパとをプラスチック材料で成形し、両者をスプリング部材によって一体化させることによって、ソレノイドの軽量化、生産性の向上が図れるので、より広い用途に使用できる可能性がある。
【符号の説明】
【0059】
1,11 フラッパ型ソレノイド
2 ヨーク
21 ヨークの軸杆
3 ボビン
31 ボビンの外周部
32 連結孔
4 電磁コイル
5 磁性芯
53 ボビンの頭部
6 フラッパ
61 係止片
62 消音部材
63 軸杆との係合部
7 スプリング部材