【実施例】
【0030】
[実施例1]
再利用対象の熱可塑性樹脂組成物成形体製品廃棄品として、自動車内装部材回収品(熱可塑性樹脂としてポリプロピレンが使われ、含有されている無機材料フィラーが実質的にタルクのみである廃棄品試料)を選び、この廃棄品試料を粉砕した粉砕物を用いた。この粉砕物について、その無機材料フィラー(タルク)含有量を以下に記載の方法により測定したところ、17質量%であることが確認された。
【0031】
次に、上記の粉砕物85.0質量部に対して、平均粒子径が4.0μmのタルク(市販品)を15.0質量部、添加剤(酸化防止剤、滑剤など)を0.1質量部添加して混合物を調製し、この混合物を加熱溶融することにより溶融物を得て、最後にこの溶融物を粒状化して、再生熱可塑性樹脂組成物の粒状物を得た。この再生熱可塑性樹脂組成物のタルク含有量(無機材料フィラー含有量)は30質量%である。この再生熱可塑性樹脂組成物のタルク含有量(無機材料フィラー含有量)の30質量%は、予め同種の再生ポリプロピレン樹脂にタルクを添加量を変えて製造して成形体の各種物性とタルクの含有量との関係から作製した相関データ、そして本実施例で製造する成形体の各種物性の目標値を参照して決定した値である。
【0032】
なお、廃棄品試料粉砕物中の無機材料フィラー量の測定は以下に記載の方法により行った。
るつぼを予め秤量し、ついで試料粉砕物約10gを収容し、試料粉砕物が収容されたるつぼを秤量して、その差から、るつぼに収容した試料粉砕物の質量を決定する。その後、このるつぼを電熱ヒータにて加熱して、試料粉砕物を予備燃焼させ、次いで、るつぼを電気炉に入れ、600℃にて90分間加熱して、内容物を灰化する。次に、るつぼを電気炉から取り出し、デシケータに入れて室温で1時間保存したのち、るつぼを秤量し、灰化物の質量を算出する。これらの作業により得られた灰化対象とした試料粉砕物の質量と灰化物の質量とから試料粉砕物中の無機材料フィラー(タルク)の含有量を決定する。
【0033】
次に、この再生熱可塑性樹脂組成物の粒状物を射出成形して成形体試料を製造し、その成形体試料の各種物性値をJISに規定された方法により測定した。また、再生熱可塑性樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)も測定した。各測定値を、第1表に示す。
【0034】
[実施例2]
実施例1で調製した粉砕物に添加するタルクを、平均粒子径が5.5μmのタルク(市販品)に替えた以外は、実施例1に記載の方法により、再生熱可塑性樹脂組成物の粒状物を得た。
次に、この再生熱可塑性樹脂組成物の粒状物を射出成形して成形体試料を製造し、その成形体試料の各種物性値を測定した。また、再生熱可塑性樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)も測定した。各測定値を、第1表に示す。
【0035】
[比較例1]
実施例1で調製した粉砕物に添加するタルクを、平均粒子径が12.0μmのタルク(市販品)に替えた以外は、実施例1に記載の方法により、再生熱可塑性樹脂組成物の粒状物を得た。
次に、この再生熱可塑性樹脂組成物の粒状物を射出成形して成形体試料を製造し、その成形体試料の各種物性値を測定した。また、再生熱可塑性樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)も測定した。各測定値を、第1表に示す。
【0036】
[比較例2]
実施例1で調製した粉砕物に添加するタルクを、平均粒子径が13.5μmのタルク(市販品)に替えた以外は、実施例1に記載の方法により、再生熱可塑性樹脂組成物の粒状物を得た。
次に、この再生熱可塑性樹脂組成物の粒状物を射出成形して成形体試料を製造し、その成形体試料の各種物性値を測定した。また、再生熱可塑性樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)も測定した。各測定値を、第1表に示す。
【0037】
第1表
────────────────────────────────────
実施例1 実施例2 比較例1 比較例2
────────────────────────────────────
タルク平均粒子径(μm) 4.0 5.5 12.0 13.5
────────────────────────────────────
MFR 17.8 16.3 17.1 17.0
引張降伏強さ 28.3 28.2 27.4 27.1
引張破壊呼び歪み 24 25 26 25
引張弾性率 2310 2270 2140 2130
曲げ強さ 44.3 44.5 43.5 43.1
曲げ弾性率 2470 2420 2310 2250
シャルピー衝撃強さ
(23℃) 5.9 6.1 5.4 5.1
(−30℃) 2.8 3.2 2.3 2.6
ロックウェル硬さ 89.6 90.1 89.1 88.7
荷重たわみ温度 115.9 115.5 113.1 113.5
───────────────────────────────────
【0038】
第1表に示した物性値の単位、そして測定方法と条件を以下に示す。
MFR:g/10分、K7210
引張降伏強さ:MPa、K7161、K7162
引張破壊呼び歪み:%、K7161、K7162
引張弾性率:MPa、K7161、K7162
曲げ強さ:MPa、K7171
曲げ弾性率:MPa、K7171
シャルピー衝撃強さ:kJ/m
2、ノッチ付き、23℃(K7111、−30℃(K7111)
ロックウェル硬さ:R−スケール、K7202
荷重たわみ温度:℃、0.45MPa、K7191-1、-2
【0039】
第1表に記載したデータから、実施例1及び実施例2のそれぞれで得た成形体の各種物性値は、比較例1及び比較例2のそれぞれで得た成形体の各種物性値と比較すると多くの物性にて優れていることが分かる。なお、タルクの平均粒子径の選択により特に優れた物性値が得られる引張弾性率とシャルピー衝撃強さについての比較データを添付の
図1と
図2に示す。
【0040】
[実施例3]
予め同種の再生ポリプロピレン樹脂にタルクを添加量を変えて製造して成形体の各種物性とタルクの含有量との関係から作製した相関データ、そして本実施例で製造する成形体の各種物性の目標値を参照して、実施例1で調製した廃棄品試料粉砕物にタルク(平均粒子径:5.5μm)を16質量%添加して、タルク含有量が30質量%の混合物を得た。
この混合物について、比較例1と同様にして、メルトフローレート(MFR)を測定し、次いで、この混合物を射出成形して成形体試料を得た。このメルトフローレート、そして成形体試料の各種物性値を第2表に示す。また、この実施例3で製造された混合物の射出成形により得られる成形体試料の目標物性値も併せて記載した。
【0041】
第2表
───────────────────────────────────
目標値 原料粉砕物 実施例3
───────────────────────────────────
無機材料フィラー量
(タルク量、質量%) − 17 30
───────────────────────────────────
MFR(g/10分、K7210) >15 20 18
引張降伏強さ(MPa、K7161) >20 24 24
引張破壊呼び歪み(%、K7161) − 15 4
曲げ強さ(MPa、K7171) >35 39 39
曲げ弾性率(MPa、K7171) >3500 2490 3580
シャルピー衝撃強さ(kJ/m
2)
(23℃、ノッチ付き、K7111) − 6 3
荷重たわみ温度(℃、K7191)
(0.45MPa) >120 118 124
────────────────────────────────────
【0042】
第2表に記載したデータから、実施例3で得た成形体の各種物性値が目標値に到達していることが確認された。
【0043】
[実施例4]
再利用対象の熱可塑性樹脂組成物成形体製品廃棄品として、自動車バンパー回収品(熱可塑性樹脂としてポリプロピレンが使われ、含有されている無機材料フィラーが実質的にタルクのみである廃棄品試料)を選び、この廃棄品試料を粉砕した粉砕物について、その無機材料フィラー含有量を測定した。また、この廃棄品試料粉砕物の射出成形により成形体試料を製造し、その成形体試料の各種物性値を測定した。また、廃棄品試料粉砕物のメルトフローレートも測定した。
【0044】
なお、廃棄品試料粉砕物中の無機材料フィラー量(タルク量)の測定は前記の方法により行った。
【0045】
廃棄品試料粉砕物中の無機材料フィラーの量、そして廃棄品試料粉砕物のメルトフローレート(MFR)、そして廃棄品試料粉砕物の射出成形により得られた成形体試料の各種物性値を第2表に示す。
【0046】
実施例3で利用した相関データ、そして本実施例で製造する成形体の各種物性の目標値を参照して、実施例3で調製した廃棄品試料粉砕物にタルク(平均粒子径:5.5μm)を4.5質量%添加して、タルク含有量が14質量%の混合物を得た。
この混合物について、メルトフローレートを測定し、次いで、この混合物を射出成形して成形体試料を得た。このメルトフローレート、そして成形体試料の各種物性値を第3表に示す。また、この実施例4で製造された混合物の射出成形により得られる成形体試料の目標物性値も併せて記載した。
【0047】
第3表
───────────────────────────────────
目標値 原料粉砕物 実施例4
───────────────────────────────────
無機材料フィラー量
(タルク量、質量%) − 10 14
───────────────────────────────────
MFR(g/10分、K7210) >10 16 16
引張降伏強さ(MPa、K7161) >15 18 19
引張破壊呼び歪み(%、K7161) − 52 58
曲げ強さ(MPa、K7171) >25 26 27
曲げ弾性率(MPa、K7171) >1600 1420 1620
シャルピー衝撃強さ(kJ/m
2)
23℃、ノッチ付き、K7111) >25 29 29
荷重たわみ温度(℃、K7191)
(0.45MPa) >95 89 96
──────────────────────────────────
【0048】
第3表に記載したデータから、実施例4で得た成形体の各種物性値が目標値に到達していることが確認された。