【発明が解決しようとする課題】
【0009】
液晶基板の撮像画像は、液晶基板を載置した移動ステージを移動させながら、液晶基板上を荷電粒子で走査することで行われる。荷電粒子を基板上で走査することによって液晶基板の撮像画像を取得する場合には、一回の走査による撮像動作で取得される撮像範囲は限られている。
【0010】
そのため、液晶基板の全体について撮像画像を取得するには、撮像動作を繰り返すことによって各撮像範囲の撮像画像を取得し、これらの複数の撮像画像をつなぎ合わせる必要がある。
【0011】
このように複数の撮像画像をつなぎ合わせることによって液晶基板の全体について撮像画像を取得するには、各撮像画像に位置ずれがないことが求められる。
【0012】
しかしながら、一般にステージ動作等の機械動作は誤差を含むため、この誤差によって撮像画像に位置ずれが生じる。機械動作による位置ずれの要因として移動ステージを駆動するボールねじ等の駆動機構の膨張がある。このような撮像画像の位置ずれの発生を抑制するために、撮像動作の位置ずれを補正する必要がある。
【0013】
この撮像動作の位置ずれを補正するために、移動ステージ上の予め定めた位置にマークを設けておき、移動ステージの動作中にこのマークを検査装置側に固定したカメラ等の撮影手段で認識し、撮影画像上で検出されるマーク位置をマークの基準位置と比較することによって位置ずれを検出し、検出した位置ずれに基づいて撮像動作を補正することが考えられる。
【0014】
この撮像動作の補正として、マークの認識から求めた位置ずれに基づいて、移動ステージの実移動距離を算出し、算出した実移動間隔を用いて、移動ステージの移動速度や撮像範囲を補正することが考えられる。
【0015】
図11、12は、移動ステージの移動速度や撮像範囲を補正による位置ずれ補正を説明するための図である。
【0016】
図11は移動ステージが位置ずれしていない場合の例を示し、
図12は移動ステージが位置ずれした場合の例を示している。
【0017】
図11において、移動ステージが位置ずれしていない場合には、マークの設定位置(
図11(a))と、固定カメラで撮影して検出されたマークの位置(
図11(b))との間には位置ずれは生じない。この場合には、各撮像動作を行うステージ位置の移動間隔は一定のLoである(
図11(c))。撮像動作は、この一定の移動間隔Loに基づいて撮像トリガを発生し(
図11(d))、各撮像トリガに基づいて撮像を行う。なお、撮像トリガは、移動ステージの移動量をモニタし、この移動量が移動間隔Loとなった時点で発生させることができる。各撮像の撮像範囲は、移動ステージの移動間隔Loに対応して定まり(
図11(e))、この撮像範囲で撮像することで撮像画像が取得される(
図11(f))。
【0018】
移動ステージが位置ずれしない場合には、複数の撮像画像の間に位置ずれが生じないため、各撮像画像をつなぎ合わせることで基板の全体の撮像画像を取得することができる。
【0019】
図12において、移動ステージが位置ずれしている場合には、マークの設定位置(
図12(a))と、固定カメラで撮影して検出されたマークの位置(
図12(b))との間には位置ずれΔlが検出される。この位置ずれΔlは、例えば移動ステージの端部等の基準位置からマークまでの距離の間において発生した位置ずれ量を示している。
【0020】
この位置ずれΔlに基づいて、移動ステージの移動速度を補正すると共に、撮像範囲を補正する。撮像範囲の補正によって、各撮像動作を行うステージ位置の移動間隔をLcに補正する(
図12(c))。撮像動作は、補正した補正移動間隔Lcに基づいて撮像トリガを発生し(
図12(d))、各撮像トリガに基づいて撮像を行う。なお、撮像トリガは、移動ステージの移動量をモニタし、この移動量が補正移動間隔Lcとなった時点で発生させることができる。各撮像の撮像範囲は、移動ステージの補正移動間隔Lcに対応して定まり(
図12(e))、各撮像範囲で得られる撮像画像をつなぎ合わせることで全撮像画像が取得される(
図12(f))。
【0021】
本出願の発明者は、上記したように移動ステージの移動速度や撮像範囲を補正することによっても移動ステージの位置ずれを十分に補正できない場合があること、およびこの要因として、補正量と移動ステージの移動分解能とのずれによって生じる補正誤差の累積があることを見出した。
【0022】
移動ステージの位置補正は移動分解能を最小単位として行われる。そのため、位置ずれの補正量が移動分解能の整数倍であれば正確に補正量を補正することができるが、位置ずれの補正量が移動分解能の整数倍でない場合には各撮像範囲において補正誤差が生じ、各撮像範囲の補正誤差が全撮像範囲について累積し累積誤差が発生する。
【0023】
この移動ステージの駆動機構の移動分解能を要因とする位置ずれの累積誤差は、単に移動ステージの移動速度や撮像範囲を補正しても補正されない位置誤差である。
【0024】
図13,14は、累積誤差を説明するための図であり、
図13は正の累積誤差の例を示し、
図14は負の累積誤差の例を示している。
【0025】
図13、14において、移動ステージの位置ずれを、マークの設定位置(
図13(a),
図14(a))と、固定カメラで撮影して検出されたマークの位置(
図13(b),
図14(b))との間の位置ずれΔlによって検出する。この位置ずれΔlに基づいて、移動ステージの移動速度を補正すると共に、撮像範囲を補正する。撮像範囲の補正において、移動ステージが補正できる移動間隔の補正量は、移動ステージの移動分解能sの整数倍Nである。
【0026】
計算上で得られる補正後の移動間隔をLcに対して、実際の移動ステージの移動間隔には移動分解能に基づいてくdLの誤差が発生する。
図13(c)は実際の移動ステージの補正移動間隔Lc
+が計算上で得られる補正後の移動間隔をLcよりも長い場合を示し、
図14(c)は実際の移動ステージの補正移動間隔Lc
−が計算上で得られる補正後の移動間隔をLcよりも短い場合を示している。
【0027】
撮像動作は、補正した補正移動間隔Lc
+、Lc
−に基づいて撮像トリガを発生し(
図13(d),
図14(d))、各撮像トリガに基づいて撮像を行う。なお、撮像トリガは、移動ステージの移動量をモニタし、この移動量が補正移動間隔Lc
+、Lc
−となった時点で発生させることができる。各撮像の撮像範囲は、移動ステージの補正移動間隔Lc
+、Lc
−に対応して定まり(
図13(e),
図14(e))、各撮像範囲で得られる撮像画像をつなぎ合わせることで全撮像画像が取得される(
図13(f),
図14(f))。
【0028】
各撮像画像をつなぎ合わせて得られる全撮像画像は、各撮像画像で発生する誤差分dlが累積されてなる累積誤差を有することになり、
図13に示す場合には全撮像画像は目的とする撮像範囲よりも累積誤差だけ長くなり、
図14に示す場合には全撮像画像は目的とする撮像範囲よりも累積誤差だけ短くなる。
【0029】
図15は累積誤差を説明するための図である。
図15(a)は移動ステージの移動機構の累積誤差が無い場合を示し、
図15(b)は正の累積誤差が発生する場合を示し、
図15(c)は負の累積誤差が発生する場合を示している。
【0030】
図15(a)の移動ステージの移動機構の膨張量が無い場合には、各撮像トリガで撮像される撮像範囲はLoであり、全撮像範囲はM・Loとなる。なお、Mは全撮像範囲を取得するための撮像回数を表している。
【0031】
図15(b)の正の累積誤差が発生する場合には、各撮像で発生する誤差分dl(=Lc
+−Lc)が累積して累積誤差が発生し、
図15(c)の負の累積誤差が発生する場合には、各撮像で発生する誤差分dl(=Lc−Lc
−)が累積して累積誤差が発生する。
【0032】
このように、つなぎ合わせて得られる全撮像画像と、目的とする撮像範囲との間に、累積誤差の長さのずれが生じると、この全撮像画像に基づいてピクセル位置を定めると、実際のピクセル値との間に位置ずれが生じることになり、位置ずれを有したピクセル位置に基づいて欠陥検査を行った場合には、欠陥位置に誤りが発生することになる。
【0033】
そこで、本発明は前記した従来の問題点を解決し、移動ステージの移動分解能に基づいて発生する撮像範囲の累積誤差を解消し、液晶アレイ検査における欠陥検出の位置精度を向上させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明は、液晶基板に所定電圧の検査信号を印加してアレイを駆動し、前記液晶基板に電子線等の荷電粒子を照射して得られる二次電子等の信号に基づいて液晶基板を撮像し、前記撮像で得られる撮像画像に基づいて液晶基板のアレイを検査する液晶アレイ検査装置において、液晶基板を移動させる移動部の移動変動を検出し、この移動変動に基づいて移動部の移動速度と、各撮像を行う際の移動間隔とを補正すると共に、移動間隔の補正に伴う移動分解能に基づいて発生する誤差分が累積して生じる累積誤差を補正する。累積誤差の補正は、複数回行う撮像において、所定の撮像回数毎に移動部の移動分解能だけ移動間隔を補正することで行う。
【0035】
移動間隔の補正は、例えば、全撮像範囲で生じる累積誤差を移動分解能で除算することによって補正回数を算出し、全撮像回数を算出した補正回数で除算することによって、移動間隔の補正を行う撮像間隔を求めることができる。
【0036】
本発明は、液晶アレイ検査装置の態様、および液晶アレイ検査方法の態様とすることができる。
【0037】
本発明の液晶アレイ検査装置の態様は、液晶基板に所定電圧の検査信号を印加してアレイを駆動し、液晶基板に荷電粒子線を照射して得られる信号に基づいて液晶基板を撮像し、この撮像で得られる撮像画像に基づいて液晶基板のアレイを検査する液晶アレイ検査装置において、移動部と、撮像部と、撮像画像形成部と、変動検出部と、撮像補正部の各部を備える。荷電粒子は電子線とすることができ、この際に得られる二次電子を検出信号として検出する。
【0038】
移動部は、液晶基板を移動する構成要素であり、例えば、液晶基板を載置して移動する移動ステージとすることができる。移動ステージは、XY方向の二次元方向に移動自在とするステージ機構とする他、XY方向の移動にZ方向の移動を加えた三次元方向に移動自在とするステージ機構としてもよい。
【0039】
撮像部は、液晶基板を分割して撮像する構成要素であり、移動部による液晶基板の移動に伴って、液晶基板が所定の移動間隔分の距離を移動する毎に撮像を開始する。撮像部は撮像を開始する度に、移動間隔分を撮像範囲として撮像を行い、各撮像動作において移動間隔を撮像範囲とする撮像動作を繰り返す。繰り返して行う撮像動作によって複数の分割撮像画像を取得する。
【0040】
撮像画像形成部は、撮像部で取得した複数の分割撮像画像をつなぎ合わせて一つの結合撮像画像を形成する。
【0041】
変動検出部は、移動部の移動変動を検出する。移動変動には、移動部の移動機構が膨張することによって生じる変動分も含まれている。
【0042】
撮像補正部は、変動検出部で検出した移動部の移動変動の変動幅および変動方向に基づいて、撮像部が撮像画像を取得する際の撮像条件を補正する。
【0043】
本発明の液晶アレイ検査装置に一形態において、移動部は液晶基板を載置して移動する移動ステージを有し、撮像補正部は、撮像範囲を定める移動間隔を撮像条件とし、移動部の移動変動に基づいて補正する。
【0044】
撮像補正部は、移動間隔を補正する移動間隔補正部と、移動間隔補正部による移動間隔の補正誤差が累積することで生じる累積誤差を補正する累積誤差補正部とを備える。
【0045】
移動間隔補正部は、移動間隔を変動検出部が検出した移動変動の変動幅および変動方向に基づいて補正移動間隔を算出する。累積誤差補正部は、移動ステージの最小分解能の大きさを補正量とし、移動間隔補正部で算出した補正移動間隔に補正量を増減して累積誤差を補正する。
【0046】
累積誤差補正部は、補正移動間隔に対する補正量の増減を所定回の撮像毎に行う。補正量の増減量および増減回数は、移動変動の変動幅および変動方向に基づいて算出する。
【0047】
変動検出部の一形態は、液晶アレイ検査装置上に固定した撮影手段を備える。撮影手段は、移動ステージ上に設けたマークを撮影し、撮影画像におけるマーク画像の位置ずれに基づいて移動部の移動変動を検出する。
【0048】
撮像補正部は、上記した移動間隔補正部および累積誤差補正部の他に、移動ステージの移動速度を補正する速度補正部を備えることができる。速度補正部は、変動検出部が検出した移動変動の変動幅および変動方向に基づいて補正速度を算出する。
【0049】
本発明の液晶アレイ検査装置は、撮像補正部において累積誤差補正部を備えることを特徴とし、移動ステージの最小分解能の大きさを補正量とし、移動間隔補正部で算出した補正移動間隔に補正量を増減することによって、分割撮像する際に、移動間隔補正部が補正を行う度に発生する誤差が全撮像画像分について累積して形成される累積誤差を補正する。
【0050】
次に、本発明の液晶アレイ検査方法の態様は、液晶基板に所定電圧の検査信号を印加してアレイを駆動し、液晶基板に電子線等の荷電粒子を照射して得られる二次電子等の信号に基づいて液晶基板を撮像し、撮像で得られる撮像画像に基づいて液晶基板のアレイを検査する液晶アレイ検査装置の撮像画像取得方法において、移動工程と、撮像工程と、撮像画像形成工程と、変動検出工程と、撮像補正工程の各工程を備える。
【0051】
移動工程は、液晶基板を移動する。撮像工程は、移動工程による液晶基板の移動に伴って液晶基板が所定の移動間隔分を移動する毎に撮像を開始する。撮像を開始する毎に、移動間隔分を撮像範囲として撮像し、一分割撮像画像を取得する。各撮像動作において移動間隔を撮像範囲とする撮像動作を繰り返すことによって、複数の分割撮像画像を取得する。
【0052】
撮像画像形成工程において、撮像工程で取得した複数の分割撮像画像をつなぎ合わせて一つの結合撮像画像を形成する。
【0053】
変動検出工程は、移動工程で移動する液晶基板の移動変動を検出する。
【0054】
撮像補正工程は、変動検出工程で検出した移動工程における液晶基板の移動変動の変動幅および変動方向に基づいて、撮像工程が撮像画像を取得する際の撮像条件を補正する。
【0055】
液晶アレイ検査方法の一形態において、移動工程は液晶基板を移動ステージ上に載置して移動し、撮像補正工程は、撮像範囲を定める移動間隔を撮像条件として撮像動作を補正する。
【0056】
撮像補正工程は、移動間隔を補正する移動間隔補正工程と、移動間隔補正工程による移動間隔の補正誤差が累積することで生じる累積誤差を補正する累積誤差補正工程とを備える。
【0057】
移動間隔補正工程は、移動間隔を変動検出工程が検出した移動変動の変動幅および変動方向に基づいて補正移動間隔を算出する。累積誤差補正工程は、移動ステージの最小分解能の大きさを補正量とし、移動間隔補正工程で算出した補正移動間隔にこの補正量を増減して累積誤差を補正する。
【0058】
累積誤差補正工程は、補正移動間隔に対する補正量の増減を所定回の撮像毎に行う。補正量の増減量および増減回数は、移動変動の変動幅および変動方向に基づいて算出することができる。
【0059】
変動検出工程は、液晶アレイ検査装置上に固定した撮影手段によって移動ステージ上に設けたマークを撮影し、撮影画像におけるマーク画像の位置ずれに基づいて移動工程の移動変動を検出する。
【0060】
撮像補正工程は、移動間隔補正工程および累積誤差補正工程に加えて、移動ステージの移動速度を補正する速度補正工程を備えることができる。速度補正工程は、変動検出工程が検出した移動変動の変動幅および変動方向に基づいて補正速度を算出して速度補正を行う。