(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下では、外科用開孔装置として、椎間板ヘルニアの症例に対し、椎骨に貫通孔を開けるための装置を説明するが、外側が硬い硬質部で、内側が柔らかい軟質部である生体の組織を貫通して開孔するための装置であれば、椎骨以外の生体組織に貫通孔を開けるためのものであってもよい。また、開孔用工具としてドリルを説明するが、これは説明のための例示であって、開孔に適した工具で、回転電動機で駆動されるものであればよい。
【0018】
以下で述べる寸法、形状、電圧値、回転数等は、説明のための例示であって、外科用開孔装置の仕様に合わせ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0019】
図1は、外科用開孔装置10の構成を説明する図である。この外科用開孔装置10は、椎間板ヘルニアの症例に対し、椎骨に貫通孔を開けるための装置である。以下では、外科用開孔装置10を、特に断らない限り、単に、開孔装置10として説明する。開孔装置10は、先端にドリル14を有するグラインダ12と、グラインダ12の駆動制御を行う装置本体部20と、グラインダ12と装置本体部20を接続する接続線16を含んで構成される。
【0020】
グラインダ12は、小型の回転電動機13を含む装置であって、操作者が手で持って操作しやすいような外形を有し、回転電動機13の出力軸が回転自在に保持されて先端から突き出されているものである。回転電動機13は、直流電源で動作するDCモータで、回転数が毎分1,500回転から100,000回転の間で動作するものを用いることができる。好ましくは、回転数を毎分3,500回転から20,000回転の間とすることがよい。
【0021】
ドリル14は、開孔用切削工具である。具体的には、細長い軸の先端に、工具鋼、セラミック等の硬質な工具材料を孔あけに適した工具外形に成型した工具刃先を設けたものを用いることができる。ドリル14は、グラインダ12の先端から突き出る出力軸に設けられる工具チャックを用いて、交換可能に着脱自在で取り付けられる。ドリル14の刃先の大きさは、開孔しようとする孔径に応じたものが選択される。例えば、ドリル刃先について、異なる外形、異なる材質のものを複数種類準備し、その中から、適当なものを選択するものとできる。
【0022】
一例をあげると、外径で、約0.3mmから約2mmまで、数種類の大きさの刃先を有するドリル14を準備する。なお、必要に応じ、外径で約9mmまでの刃先を準備する。そして、開孔しようとする孔径に応じて、適当な種類のドリル14を選択し、これを工具チャックに取り付けて用いることができる。開孔の過程で、ドリル14の種類を交換するものとしてもよい。例えば、最初は、粗加工用に適した外形と材質のドリル14を用いて短時間で大きな孔を開け、その後に、精密加工用に適した外形と材質のドリル14を用いるものとしてもよい。
【0023】
装置本体部20は、内部に制御装置26である電気回路等を含む箱型のものである。
図1では、グラインダ12とカール線である接続線16によって接続される様子が示される。接続線16は、グラインダ12に内蔵される回転電動機13に駆動電流を伝送するための電線である。また、
図1には、商用電源に接続される電源線18が示されている。電源線18は、先端に商用電源コネクタに挿入できる接続端子が設けられる。商用電源としては、交流100V電源を用いることができる。
【0024】
装置本体部20に設けられるダイヤル22は、グラインダ12の先端のドリル14の回転数を設定するための操作子である。このダイヤル22の回転角度を操作者が適当に変更することで、ドリル14の毎分当りの回転数を約3,500から約20,000まで可変することができる。これによって、最初の粗削りのときは低速回転数とし、その後に精密加工に適した高速回転数とする等とできる。
【0025】
装置本体部20に設けられるスイッチ24は、電源のオン・オフスイッチである。スイッチ24をオンとすることで、制御装置26を起動させ、グラインダ12の回転電動機13に適当な駆動電流を供給し、ドリル14を回転させることができる。また、スイッチ24をオフとすることで、制御装置26の動作を停止させ、グラインダ12の回転電動機13の動作を停止させることができる。
【0026】
制御装置26は、制御回路30と、グラインダ12の駆動回路である駆動部40を含んで構成される。制御回路30は、グラインダ12の回転電動機13の電流である負荷電流を検出する負荷電流検出部32と、開孔加工の過程における負荷電流の変化に基づいて、開孔状況に関する信号を出力する信号出力部34と、開孔過程において孔が生体組織を貫通したことを示す貫通信号が出力されたときに、回転電動機13
に回生ブレーキを掛ける回生ブレーキ作動部36と、貫通信号が出力されたときに、回生ブレーキ作動と協働しながら回転電動機13への駆動電流の供給を止めて回転電動機13の駆動を停止させる駆動停止部38を含んで構成される。
【0027】
ここで、グラインダ12に内蔵される回転電動機13の特性について説明する。回転電動機13は上記のように直流電動機である。この回転電動機13は、ドリル14の先端の負荷が重くなると、その負荷の重さに応じて電流が多くなる。負荷が軽くなると電流が少なくなる。すなわち、回転電動機13の負荷電流を観察することで、ドリル14にかかる負荷の大きさの程度が分かる。そこで、回転電動機13の負荷による電流を負荷電流と呼ぶことができる。
【0028】
したがって、対象物に孔を開けるとき、対象物が軟質のときは負荷が軽いので、負荷による電流は少なく、対象物が硬質のときは負荷が重くなって電流が多くなる。対象物に孔を開けることが進行して、貫通直前になると、正確な理由はまだ明らかになっていないが、負荷電流が一時的に急上昇する。そして、貫通してドリル14の先端に負荷がなくなると、負荷電流は小さい値となる。このように、孔が貫通するときは、貫通直前に負荷電流が急増し、貫通と共に負荷電流が急減する負荷電流ピーク特性を示す。
【0029】
次に、実際に生体組織として骨組織に貫通孔を開ける場合の負荷電流特性について説明する。その前に、
図2、
図3は、椎間板ヘルニアの椎間板ヘルニアの症例に対し、椎骨に貫通孔を開けるために開孔装置10が用いられる様子を説明する図である。
図2は、人体の脊骨部分を示す図で、上下方向が人体の身長方向である。
図3は、
図2のA−A線における断面図である。
【0030】
図2に示されるように、人体の背骨部分は、背骨を構成する複数の椎骨50と、隣接する椎骨50の間にある椎間板52が示される。椎骨50は、人体の腹部側の椎体と、背中側の椎弓とで構成され、その間に椎孔60と呼ばれる隙間がある。
図3に示すように、椎孔60には、脊髄54が納まっている硬膜56が通り、神経根62が左右に枝分かれして延びている。その内側、つまり人体の腹側には、後縦靭帯55があり、これによって硬膜56が保護されている。
【0031】
椎間板52は、中心部にゼリー状の髄核があり、その周囲は繊維輪組織となっている。椎間板ヘルニアは、椎間板52が上下の椎骨50に押され、中心部の髄核が周囲の繊維輪組織を通って外部にはみ出す症状である。
図2、
図3では、このはみ出した部分をヘルニア部位58として示した。この症状の患者は、この椎間板52においてはみ出した部分が神経根62に触れる等で、下肢や腰部に、しびれや激しい痛みを感じることがある。
【0032】
椎間板52からはみ出したヘルニア部位58は、椎孔60のところであって、背中側から見て診断を行おうとしても、椎骨50の椎弓にさえぎられて、直接的に見ることができない。そこで、外科的診断、治療のために、高速回転するドリル14を用い、椎骨50の椎弓のところに椎孔60に至る貫通孔を開けることが行われる。
【0033】
この場合に、貫通孔を開けた後、ドリル14がさらに進むと、硬膜56、神経根62を損傷する恐れがある。そこで、ドリル14は、貫通孔が開いたならば、できるだけ即時的に、それ以上進まず、回転を止めることが好ましい。そのためには、ドリル14が貫通孔を形成した瞬間をできるだけ正確に把握することが必要である。本発明は、その瞬間を、ドリル14を回転させる回転電動機13の負荷電流で検出しようというものである。
【0034】
次に、本発明の構成に至った回転電動機13の負荷電流変化の知見について説明する。
図4は、椎骨50の椎弓のような骨組織に貫通孔を開ける際の、開孔の過程に応じて変化する負荷電流特性70を説明する図である。負荷電流の大きさは、抵抗素子に負荷電流を流し、抵抗素子の両端の電圧差で評価する。
図4の負荷電流特性70に関する図の横軸は時間、縦軸は負荷電流の大きさを示す抵抗素子の両端電圧差Vである。負荷電流特性70に関する図の下側に、ドリル14が骨組織を進んでゆく様子が示されている。
【0035】
貫通孔を開けようとする椎骨50の椎弓は、骨組織であって、外側が硬い硬質部で、内側が柔らかい軟質部である生体組織である。
図4では、その様子を、椎骨50を、硬質部72−軟質部74−硬質部76の三層構造として示されている。ドリル14は、背中側の硬質部72から孔を開け始め、硬質部72から軟質部74に入り、軟質部74を通過すると再び硬質部76に入り、その硬質部76を開け終えると、椎孔60である空間に出ることになる。椎孔60には、上記のように、硬膜56、神経根62等があるので、ドリル14は、椎孔60に入ったら直ちに進むことを止め、回転を止める必要がある。
【0036】
図4の負荷電流特性70は、ドリル14の進行と共に変化する。時間t
1は、ドリル14が回転開始する時間である。時間t
1より前は、ドリル14は停止しているので、負荷電流は流れず、
図4の電圧はゼロである。時間t
1からドリル14が回転を始めるので、負荷電流はゼロから立ち上がる。時間t
2は、操作者がグラインダ12を手で持って、ドリル14を椎骨50に押し付け、ちょうどドリル14が硬質部72の表面に接触したときである。時間t
1から時間t
2の間は、ドリル14は空中で回転しているだけであるので、グラインダ12の内部の回転摩擦等による負荷電流が流れ、
図4で電圧が現れる。負荷電流の大きさは、電圧でV
1として示されている。
【0037】
時間t
2からt
3の間は、ドリル14が硬質部72に接触し、その表面を切削し始めている期間である。ドリル14が硬質部72に接触することで、負荷電流はV
1で示される大きさよりも大きくなる。次に、時間t
3からt
4は、ドリル14が硬質部72を進んでゆく期間である。この期間は、硬質部72の材質の硬さに応じた負荷電流が流れる。
図4では、その大きさを電圧でV
2として示されている。
【0038】
時間t
4からt
6は、ドリル14の先端が硬質部72を全部開口し、軟質部74に入る期間である。時間t
4が硬質部72を貫通する直前、時間t
6が硬質部72を貫通したときである、このとき、貫通直前の時間t
4から負荷電流は急増し、ピークを示した後、貫通時には、急に減少する。時間t
5は、負荷電流がピークを示す時間である。負荷電流の増加の程度は、
図4において、電圧でV
3として示されている。すなわち、硬質部72をドリル14が進んでいる間は、負荷電流は電圧でV
2のほぼ一定値であるが、硬質部72を貫通する直前で負荷電流が急増し、時間t
5でピーク値(V
2+V
3)を示し、貫通すると、負荷電流はV
2以下に減少する。
【0039】
時間t
6からt
7は、ドリル14が軟質部74を進んでゆく期間である。この期間は、軟質部74の材質の硬さに応じた負荷電流が流れる。軟質部74は、硬質部72に比べ、切削負荷が軽いので、
図4に示されるように、時間t
6からt
7における負荷電流の大きさは、硬質部72を進んでゆくときの電圧V
2よりも小さな値を示している。
【0040】
時間t
7から時間t
9は、ドリル14の先端が軟質部74を全部開口し、硬質部76に入り、硬質部76を進んで、硬質部76を貫通する期間である。時間t
7が硬質部76に接触した時間、時間t
9は硬質部76を貫通して、ドリル14が椎孔60の空間に出たときである。ドリル14が硬質部76を進んでゆく期間の負荷電流の大きさは、電圧でV
4として示されている。硬質部76が硬質部72と同じ硬さであれば、V
4はV
2と同じとなる。
【0041】
ドリル14が硬質部76を貫通するときも、貫通直前の時間から負荷電流は急増し、ピークを示した後、貫通時には、急に減少する。時間t
8は、負荷電流がピークを示す時間である。負荷電流の増加の程度は、
図4において、電圧でV
5として示されている。すなわち、硬質部76をドリル14が進んでいる間は、負荷電流は電圧でV
4のほぼ一定値であるが、硬質部76を貫通する直前で負荷電流が急増し、時間t
8でピーク値(V
4+V
5=V
6)を示し、貫通すると、負荷電流はV
4以下のV
7に減少する。
【0042】
図5は、負荷電流特性70を、V
1からV
7がどのように変化するかをまとめた図である。負荷電流の大きさは、ドリル14の形状によって異なる。
図5では、ドリル14の直径dとして、4種類について、負荷電流の大きさがどのように異なるかも示されている。開口の過程における負荷電流の変化については、硬質部72を貫通して軟質部74に入るときに、V
3として、大きな負荷電流の増加があることが分かる。さらに、硬質部76を貫通して、椎孔60の空間に抜けるときに、
V5として、V
3よりも格段に大きな負荷電流の増加があることが分かる。
【0043】
なお、ドリル14の直径dの効果は、直径dが大きくなるほど、負荷電流の大きさが大きくなることが分かる。これは、ドリル14の直径dが大きくなると、ドリル1回転に対する仕事量が大きくなるからと考えられる。ショウとオクスフォード(M.C.Show & C.J.Oxford)の式として知られているものは、切削トルクM
dとブリネル硬さH
Bとドリル直径dとの間に、M
d=A・H
B・f
0.8・d
1.8の関係があるとされる。ここでAは定数、fは送り量である。この式からは、対象物の硬さが硬いほど、切削トルクが大きく、ドリル14の直径dが大きいほど切削トルクが大きいことが示される。直流回転電動機13では、切削トルクが大きいほど負荷電流が大きくなる。したがって、硬質部72,76における負荷電流の方が軟質部74における負荷電流よりも大きく、ドリル14の直径dが大きいほど負荷電流が大きくなることになる。
【0044】
上記知見からは、硬質部76を貫通するときに現れる負荷電流のピークを検出し、その時間t
8のときに、グラインダ12の駆動を停止させれば、ドリル14が椎孔60の中を余分に回転しながら進むことがなくなることになる。
【0045】
ところで、
図4の負荷電流特性70は模式的なもので、実際の負荷電流波形は、非常にノイズの大きなものである。したがって、一般的なピーク検出を行うと、ノイズのピークを誤検出することになる。ピークを検出したならば直ちにグラインダ12の駆動を止めることにすると、ノイズのピークの誤検出のために、グラインダ12が停止してしまう。誤検出のときに、そこで再びグラインダ12を再駆動しても、またノイズのピークの誤検出によってグラインダ12が止まってしまう。このように、一般的なノイズ検出をすると、グラインダ12が頻繁に停止と再駆動を繰り返すことになる。
【0046】
図6は、上記の知見を具体化した制御装置26の構成を示す図である。
図6に示されるように、駆動部40とグラインダ12の回転電動機13との間には、負荷電流検出用の抵抗素子80と、回生回路82によって回転状態切替部83が作動する。負荷電流検出用の抵抗素子80の抵抗値の一例を示すと、0.3Ωである。
【0047】
回転状態切替部83は、グラインダ12側の2本の信号線a,bと、駆動部40から引き出される2本の信号線c,dとの間の接続状態を切り替えるスイッチ部である。回転状態切替部83は、回生回路82によって切替動作を行う。回生回路82は、
図1で説明した制御回路30の回生ブレーキ作動部36によって動作が制御される。
【0048】
具体的には、通常時には、a−c,b−dの接続が行われる。この状態におけるグラインダ12の回転電動機13の回転方向を正方向と呼ぶことにすると、通常時とは、回転電動機13に取り付けられたドリル14が高速に正回転しているときである。この状況において、
接続状態を切り替えて接続a−cまたはb−dを開いても、高速回転しているドリル14は慣性力により回転し続けることになる。このとき、回転電動機13は発電を行っているため、a−bを接続することで、慣性力で回転しているドリル14にブレーキが掛かり停止させることができる。したがって、
接続状態を切り替えて
発電状態になったらすぐに
a−bを接続すれば、極めて短時間でドリル14の回転が停止する。このように、回生回路82と回転状態切替部83は、ドリル14の回転を短時間で停止させるブレーキ機能を有する。
【0049】
信号出力部34は、抵抗素子80の両端の電圧信号を用いて、負荷電流のピーク検出を行い、ドリル14が硬質部76を貫通したことを示す貫通信号と、貫通信号の手前の時期を示す貫通準備信号を出力する機能を有する。
【0050】
貫通信号は、
図4における時間t
8を検出して出力される信号である。時間t
8は、硬質部76をドリル14が貫通する際に、負荷電流がピークを示す時間であるので、負荷電流の微分信号のゼロクロス時間を用いることで、正確に検出できる。その様子を
図7に示す。
図7の上段側の図は、負荷電流特性70の波形であり、横軸が時間、縦軸が負荷電流の大きさを電圧で示したものである。
図7の下段側の図は、負荷電流特性70を時間で微分した微分信号71の波形であり、横軸が時間、縦軸はdV/dtの値である。ここに示されるように、時間t
8は、微分信号71が(dV/dt)=0となるゼロクロス時間で与えられる。
【0051】
貫通信号が出力されると、制御装置26において、回生回路82に回生ブレーキ作動指令が出される。これとともに、正回転している状態から回転電動機13への負荷電流を遮断するために、予め定めた所定の短時間の遅延時間経過後に、
回転電動機13の駆動回路である駆動部40に回転電動機13の駆動停止指令が出される。予め定めた所定の短時間としては、回生ブレーキ作動指令が出されて、回転電動機13
の回転が停止するタイミングで、駆動部40に駆動停止指令が出されるように設定されることが好ましい。
【0052】
ところで、このように、微分信号71のゼロクロス時間で貫通信号を出力することにしても、上記のように負荷電流特性70にノイズが重畳されるときは、ノイズのピークを検出してしまう恐れがある。そこで、できるだけノイズによる誤動作を避けるため、回生回路82の動作開始を貫通準備信号によって行うものとする。具体的には、回生回路82の電源
のオンを、貫通準備信号が出力されたときとする。
【0053】
回生回路82が
動作していないときは、回転状態切替部83は通常の接続状態のままである。したがって、グラインダ12の回転電動機13に回生ブレーキは掛からない。また、
回転電動機13の駆動回路である駆動部40への駆動停止指令は、回生回路82
の制御によって回転電動機13に回生ブレーキが掛けられた後であるので、回生回路82が
動作開始するまでは、回転電動機13
が駆動停止することがない。このようにすることで、貫通準備信号が出力するまでは、ノイズによるピーク誤検出によって回転電動機13を停止することがなくなる。
【0054】
貫通準備信号が出力されるタイミングとしては、貫通信号が出力するタイミングの前の時間であって、できるだけ貫通信号が出力されるタイミングに近い時間が好ましい。ここでは、
図4のt
5が貫通準備信号の出力タイミングとされる。時間t
5は、貫通孔を開ける対象物が、硬質部−軟質部−硬質部の三層構造を有するときに必ず確実に現れる負荷電流特性70のピークの時間であり、かつ、貫通信号よりも手前の時間である。このようなことから、時間t
5を貫通準備信号が出力するタイミングとして用いることができる。
【0055】
貫通準備信号は、時間t
5から予め定めた遅延時間経過後として設定することができる。この場合には、遅延時間経過後でも貫通信号が出力されるタイミングのt
8以前の時間となるようにすることが必要である。例えば、
図4で時間t
7で負荷電流が増加して電圧値でV
4となるが、その時間を閾値設定等の方法で検出し、t
5以後を条件としてt
7まで遅延させるようにしてもよい。また、ノイズによる誤検出を抑制する他の方法として、負荷電流特性70の信号に対し、適当なフィルタ処理を行うことができる。