特許第5692713号(P5692713)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5692713
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】拡開アンカー
(51)【国際特許分類】
   F16B 13/04 20060101AFI20150312BHJP
   F16B 35/04 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   F16B13/04 H
   F16B35/04 B
【請求項の数】4
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2014-160055(P2014-160055)
(22)【出願日】2014年8月6日
【審査請求日】2014年8月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508128510
【氏名又は名称】アルコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079577
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 全啓
(72)【発明者】
【氏名】島津 邦聡
【審査官】 岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−184627(JP,A)
【文献】 特開2008−256093(JP,A)
【文献】 特開2000−230520(JP,A)
【文献】 特開2005−172117(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 13/00−13/14
F16B 35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンカーチューブ、
前記アンカーチューブの中に嵌挿されるアンカーコア、
前記アンカーチューブに備えられ、前記アンカーコアが嵌挿された端部で前記アンカーチューブの軸線方向と交差する方向に拡開するヘッド部、
前記ヘッド部に備えられ、前記アンカーチューブの軸線方向に穿設されたスリット部、
前記スリット部により分割され、前記ヘッド部を拡開するように前記ヘッド部に形成される複数の削孔部、
前記アンカーコアを嵌挿された側とは反対側である前記アンカーチューブのボディ部の表面に形成され、被削物が切削されたときに出る削り粉を打ち込み方向とは反対側に案内する削り粉案内溝、および
前記アンカーコアの前記アンカーチューブに嵌挿された領域とは反対側である下端に、突設されている突起を含み、
前記削孔部は、前記スリット部側に先鋭部を有する一の削孔部、および、前記スリット部を挟んで前記一の削孔部に隣接し、前記スリット部側に切欠き先端部を有する二の削孔部を含み、
前記一の削孔部の前記先鋭部は、切削時に前記アンカーチューブを回転する方向に向かって露出して、被削物を切削するように形成され、
前記アンカーチューブは、前記アンカーコアの軸線方向に打ち込まれて、前記アンカーコアの外周面に沿って前記削孔部が拡開され、前記被削物に食い込むように形成された、拡開アンカー。
【請求項2】
前記一の削孔部の前記先鋭部は、前記一の削孔部の前記スリット部側の端縁と下端縁との交差又は直交する領域に形成され、
前記二の削孔部の前記切欠き先端部は、前記第一の削孔部の前記先鋭部における外側領域を露出させるように、前記二の削孔部の前記スリット部側の端縁と下端縁との交差する先端部が、外側面を切り欠かれて、前記スリット部側に至るに従って低くなるように形成された、請求項1に記載の拡開アンカー。
【請求項3】
前記アンカーチューブは、上部筒体と下部筒体とを一体にした円筒状であり、
前記上部筒体は、貫通孔内の孔壁に、ねじが刻設され、
前記下部筒体は、前記削孔部を有する前記ヘッド部と前記スリット部とが形成された、請求項1または請求項2に記載の拡開アンカー。
【請求項4】
前記アンカーコアは、前記アンカーチューブに嵌挿された領域から突き出た領域に至るに従って直径が次第に増加する円錐状のコーン部を有し、
前記アンカーチューブの前記ヘッド部は、前記アンカーコアの前記コーン部の表面を摺動して拡開するように形成された、請求項1請求項3のいずれか1項に記載の拡開アンカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンカーに関し、特に、例えば、コンクリート躯体等の躯体(母材)に対する器物の固定に使用する拡開のアンカーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート等の躯体に穿孔された下孔に挿入し、先端部(拡張部)を拡張させることにより前記躯体に固着されるとともに、躯体への器物の固定に用いられるアンカーとしては、例えば特許文献1及び2に記載されたものがある。
特許文献1に記載のアンカーは、既存コンクリート構造物1に形成したアンカー孔2に孔壁を拡径切削して上すぼまりの拡径部2aを形成し、このアンカー孔2に、アンカー本体としてのネジ棒14と、このネジ棒14に螺合する上部に上すぼまりのテーパー部15aを形成したテーパー付きナット15とこのテーパー付きナット15のテーパー部15aに当接させて押し開げられる拡張片17をリング体19の下部にスカート状に形成した拡径金具16とからなるアンカー金物を差し入れ、治具により拡径金具16を押しさげて拡張片17を開げてこれを前記孔壁の拡径部2aに係合させるように構成されている。
特許文献2に記載のアンカーは、一方の端部に挿入方向に拡開するヘッド部分(2)を有するアンカーロッド(1)と、軸線方向のスリット(5)によって互いに分離した拡開片(6)を有するスリーブ(3)とを具え、前記スリットを可塑性ヒンジ(4)からスリーブ(3)の前方遊端(7)まで設け、前記スリーブ(3)と前記アンカーロッド(1)との相対移動により前記拡開片(6)が半径方向外方に押し広げられるようにした拡開アンカーにおいて、各拡開片(6)に少なくとも1個の溝状窪み(8又は9)を設け、この溝状窪みを前記前方遊端(7)の領域まで達せしめ、拡開片(6)の軸線方向の長さ(l)の少なくとも一部にわたって延在させ、前記スリーブの軸線(A)に平行な直線(G)に対して傾斜させ、前記スリーブ(3)の前記前方遊端(7)の領域における出口の前記直線(G)からの距離(a)が大きくなるようにしたことを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3636632号公報
【特許文献2】特許第4068712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献及び2に記載のような機械式アンカーは、通常アンカー本体等にスリットを有し、スカート状に広がる拡張部を設け、このアンカー本体をコンクリート構造物に穿孔したアンカー孔に挿入後、拡張部を孔内で拡張してこの摩擦力で定着するものである。
しかしながら、機械式アンカーについて、効率的にコンクリート等の被削物を削孔することができ、且つ、機械的にコンクリート等の被削物に確実に固着されて、抜けたり、すべったりすることがないようなアンカーを望まれている。
【0005】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであって、効率的に被削物を削孔することができるとともに被削物に確実に固着されるアンカーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る本発明は、アンカーチューブと、アンカーチューブの中に嵌挿されるアンカーコアと、アンカーチューブに備えられ、アンカーコアが嵌挿された端部でアンカーチューブの軸線方向と交差する方向に拡開するヘッド部と、ヘッド部に備えられ、アンカーチューブの軸線方向に穿設されたスリット部と、スリット部により分割され、ヘッド部を拡開するようにヘッド部に形成される複数の削孔部と、アンカーコアを嵌挿された側とは反対側であるアンカーチューブのボディ部の表面に形成され、被削物が切削されたときに出る削り粉を打ち込み方向とは反対側に案内する削り粉案内溝と、アンカーコアのアンカーチューブに嵌挿された領域とは反対側である下端に、突設されている突起とを含み、削孔部は、スリット部側に先鋭部を有する一の削孔部と、スリット部を挟んで一の削孔部に隣接し、スリット部側に切欠き先端部を有する二の削孔部とを含み、一の削孔部の先鋭部は、切削時にアンカーチューブを回転する方向に向かって露出して、被削物を切削するように形成され、アンカーチューブは、アンカーコアの軸線方向に打ち込まれて、アンカーコアの外周面に沿って削孔部が拡開され、被削物に食い込むように形成された、拡開アンカーである。
請求項1に係る本発明によれば、上記した構成を有しているので、削り粉が詰まることなく被削物を効率よく効率的に削孔することができるとともに、被削物に確実に固着される、拡開アンカーを提供することができる。
請求項2に係る本発明は、請求項1に係る発明に従属する発明であって、一の削孔部の先鋭部は、一の削孔部のスリット部側の端縁と下端縁との交差又は直交する領域に形成され、二の削孔部の切欠き先端部は、第一の削孔部の先鋭部における外側領域を露出させるように、二の削孔部のスリット部側の端縁と下端縁との交差する先端部が、外側面を切り欠かれて、スリット部側に至るに従って低くなるように形成された、拡開アンカーである。
請求項2に係る本発明によれば、上記した構成を有しているので、拡開アンカーによって、被削物を効率よく削孔することができる。
請求項3に係る本発明は、請求項1または請求項2に係る発明に従属する発明であって、アンカーチューブは、上部筒体と下部筒体とを一体にした円筒状であり、上部筒体は、貫通孔内の孔壁に、ねじが刻設され、下部筒体は、削孔部を有するヘッド部とスリット部とが形成された、拡開アンカーである。
請求項3に係る本発明によれば、上記した構成を有しているので、拡開アンカーの打設を効率よく行うことができる。
請求項4に係る本発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に係る発明に従属する発明であって、アンカーコアは、アンカーチューブに嵌挿された領域から突き出た領域に至るに従って直径が次第に増加する円錐状のコーン部を有し、アンカーチューブのヘッド部は、アンカーコアのコーン部の表面を摺動して拡開するように形成された、拡開アンカーである。
請求項4に係る本発明によれば、上記した構成を有しているので、拡開アンカーが被削物に確実に固着される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、削り粉が詰まることなく被削物を効率よく効率的に削孔することができるとともに、被削物に確実に固着される、拡開アンカーを提供することができる。
【0008】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴及び利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための形態の説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のアンカーの一部を断面とした正面図解図である。
図2図1図示アンカーの底面図解図である。
図3図1図示アンカーの斜視図解図である。
図4A図1図示アンカーのアンカーチューブの図解図であり、(a)は、平面図解図、(b)は一部を断面とした正面図解図、(c)は底面図解図である。
図4B図1図示アンカーのアンカーチューブの図解図解図であり、(c)は底面図解図、(d)は断面図解図である。
図5】アンカーコアの図解図であり、(a)は平面図、(b)は正面図解図、(c)は底面図である。
図6】アンカーの施工方法を示す図解図である。
図7A】先行孔にセットしたアンカーの一部を断面とした正面図解図である。
図7B】先行孔にセットしたアンカーの底面図解図である。
図8図1図示アンカーの使用方法を示す斜視図解図である。
図9A図1図示アンカーの使用方法を示す一部を断面とした正面図解図である。
図9B図8図示アンカーの底面図解図である。
図10図1図示アンカーの施工方法を示す図解図である。
図11】打設前のアンカーを示す一部を断面とした正面図解図である。
図12】打設する方法示す一部を断面とした正面図解図である。
図13】打設後のアンカーを示す一部を断面とした正面図解図である。
図14A】変形例のアンカーの打設前の状態を示す一部を断面とした正面図解図であ る。
図14B】変形例のアンカーの打設前の状態を示す底面図解図である。
図15】変形例のアンカーの打設後の状態を示す一部を断面とした正面図解図である 。
図16】アンカーの利用方法を示す断面図解図である。
図17】変形例のアンカーの打設前の状態を示す斜視図解図である。
図18】アンカーの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態であるアンカーを添付図面に基づき説明する。
図1は、本発明のアンカーの一部を断面とした正面図解図、図2は、図1図示アンカーの底面図解図である。
【0011】
拡開アンカー10は、アンカーチューブ12と、該アンカーチューブ12の中に嵌挿されるアンカーコア14とを備える。
【0012】
アンカーチューブ12は、上部筒体20と下部筒体22とを一体にした円筒状である。
上部筒体20と下部筒体22とは、略々同一径の中空の直円柱状である。
アンカーコア14は、アンカーチューブ12に嵌挿された領域から突き出た領域に至るに従って直径が次第に増加する円錐状のコーン部100を有している。
【0013】
前記アンカーチューブ12は、アンカーコア14が嵌挿された端部に、軸線方向と交差する方向に拡開するヘッド部30を備える。
前記ヘッド部30は、アンカーチューブ12の軸線方向に穿設されたスリット部70により分割され拡開するように形成された、複数の削孔部(第1削孔部32、第2削孔部34、第3削孔部36及び第4削孔部38を有している。
【0014】
この実施の形態においては、スリット部70は4条のスリット部が形成され、それを挟んで4個の削孔部が形成されている。
スリット部70は、第1スリット部72と、第2スリット部74と、第3スリット部76と、第4スリット部78とを備える。
第1スリット部72を挟んで、第1削孔部32と第2削孔部34とが隣接し、第2スリット部74を挟んで、第2削孔部34と第3削孔部36とが隣接し、第3スリット部76を挟んで、第3削孔部36と第4削孔部38とが隣接し、第4スリット部78を挟んで、第4削孔部38と第1削孔部32とが隣接している。
【0015】
アンカーチューブ12の上部筒体20は、貫通孔24内の孔壁に、ねじ28を刻設され、
前記下部筒体22は、前記ヘッド部30を構成するとともに前記スリット部70を形成されている。
【0016】
前記削孔部を構成する一の削孔部(第1削孔部32)のスリット部70側の先端は、先鋭に形成され、
前記一の削孔部(第1削孔部32)を挟んで隣接する二の削孔部(第2削孔部34)のスリット側の先端は、切り欠かれ、
前記一の削孔部(第1削孔部32)のスリット部70側の先端は、切削時にアンカーチューブ12を回転する方向に向かって露出して、被削物(C)を切削するように形成されている。
【0017】
前記削孔部を構成する第1削孔部32の第1スリット部72側の先端は、先鋭に形成されている。
前記第1削孔部32に第1スリット部72側の端縁50を挟んで隣接する第2削孔部34の第1スリット部72側の先端は、切り欠かれている。
前記第1削孔部32の第1スリット部72側の先端は、切削時にアンカーチューブ12を回転する方向に向かって露出して、被削物(C)を切削するように形成されている。
【0018】
前記第1削孔部32は、第1スリット部72側の端縁40と下端縁42との交差又は直交する領域に先鋭部44が形成されている。
前記第1スリット部72を挟んで隣接する第2削孔部34は、前記第1削孔部32の先鋭部44における外側領域を露出させるように、第1スリット部72側の端縁50と下端縁52との交差する先端領域が、外側面を切り欠かれて、第1スリット部72側に至るに従って低くなった切欠き先端部54が形成されている。
先鋭部44は、スリット部70側から視て略三角形状であって、被削物(C)の先行孔(Ch)の下部の周辺を切削するように、アンカーチューブ12の切削時の回転方向に向いて切り立っている。
【0019】
第1削孔部32は、第4スリット部78の側に切欠き先端部54を形成され、第1スリット部72の側に先鋭部44を形成されている。
第2削孔部34は、第1スリット部72の側に切欠き先端部54を形成され、第2スリット部74の側に先鋭部44を形成されている。
第3削孔部36は、第2スリット部74の側に切欠き先端部54を形成され、第3スリット部76の側に先鋭部44を形成されている。
第4削孔部38は、第3スリット部76の側に切欠き先端部54を形成され、第4スリット部78の側に先鋭部44を形成されている。
【0020】
第1スリット部72側の先鋭部44を形成された第1削孔部32は、一の削孔部を構成し、第1スリット部72側の切欠き先端部54を形成された第2削孔部34は、二の削孔部を構成する。
第2スリット部74側の先鋭部44を形成された第2削孔部34は、一の削孔部を構成し、第2スリット部74側の切欠き先端部54を形成された第3削孔部36は、二の削孔部を構成する。
第3スリット部76側の先鋭部44を形成された第3削孔部36は、一の削孔部を構成し、第3スリット部76側の切欠き先端部54を形成された第4削孔部38は、二の削孔部を構成する。
第4スリット部78側の先鋭部44を形成された第4削孔部38は、一の削孔部を構成し、第4スリット部78側の切欠き先端部54を形成された第1削孔部32は、二の削孔部を構成する。
【0021】
前記アンカーチューブ12は、アンカーコア14の軸線方向に打ち込まれて、アンカーコア14の外周面に沿って分離された領域の削孔部(第1削孔部32、第2削孔部34、第3削孔部36及び第4削孔部38)が拡開され、被削物(C)に食い込むように形成されている。
アンカーチューブ12のヘッド部30は、アンカーコア14のコーン部100の表面を摺動して拡開するように形成されている。
【0022】
前記スリット部70は、切削されたときにでる削り粉がスリット部70に沿って打ち込み方向とは反対方向に案内されるように形成されている。
前記アンカーチューブ12は、アンカーコア14を嵌挿された側とは反対側である上部筒体20(ボディ部)の表面に、被削物(C)を切削されたときにでる削り粉を打ち込み方向とは反対側に案内する削り粉案内溝80が形成されている。
【0023】
アンカーコア14は、上部柱体110と下部柱体112とを一体にした柱状体である。
上部柱体110は、アンカーチューブ12の下部筒体22の貫通孔24と略々同一の直径の直円柱体である。
下部柱体112は、円錐体のコーン部100を構成する円錐状体である。
【0024】
次に、本件発明にかかる拡開アンカー10の使用方法について説明する。
まず、コンクリート構造体等の被削物(C)のアンカーの設置位置に、コンクリート専用ドリルで、先行削孔して、先行孔(Ch)を穿設する。
次に、拡開アンカー10を先行孔(Ch)に嵌挿してセットする。
一方、六角柱状の頭部202に雄ねじ棒204を突設された、六角ボルト200を準備する。更に、該六角ボルト200の雄ねじ棒204は、六角ナット206が螺合されている。
六角ボルト200の頭部202と六角ナット206とは、外形が略々同一である。
【0025】
先行孔(Ch)にセットされた拡開アンカー10のアンカーチューブ12の貫通孔24に、六角ボルト200の雄ねじ棒204を螺合する。
一方、六角ボルト200の頭部202及び六角ナット206に嵌合する穴252を備えたソケットビット250を準備し、該ソケットビット250の穴252を六角ボルト200の頭部202及び六角ナット206に被冠させる。
更に、拡開アンカー10を回転させながら打ち込むことができるドリル等の回転打ち込み器具280を準備する。
回転打ち込み器具280のチャックに、前記ソケットビット250を装填し、該回転打ち込み器具280によりソケットビット250を回転し且つ打ち込むことができるようにする。
そして、回転打ち込み器具280を作動させて、ソケットビット250を介して六角ボルト200を回転させながら打ち込むことができるようにする。
而して、拡開アンカー10は、回転打ち込み器具280の作動により、ソケットビット250及び六角ボルト200の回転及び打ち込みによって、アンカーチューブ12が被削物(C)を切削しながら被削物(C)にねじ込まれ且つアンカーコア14の外周面に沿って摺動して、ヘッド部30の削孔部(第1削孔部32、第2削孔部34、第3削孔部36及び第4削孔部38)が拡開されて被削物(C)に食い込む。
第1削孔部32の先鋭部44は、被削物(C)に直接的に当接して切削できるので、確実に且つ効率的に被削物(C)の切削を行える。
【0026】
拡開アンカー10のアンカーチューブ12によって切削されて出る被削物(C)の削り粉は、スリット部70を通り、削り粉案内溝80に導かれて、上方に向けて徐々に上昇し、拡開アンカー10のアンカーチューブ12の外に排出される。
【0027】
被削物(C)に固定された拡開アンカー10から、六角ボルト200を取り外すときは、六角ナット206をスパナ等で把持して、頭部202を把持したスパナで頭部202を回動して取り外す。六角ボルト200は、六角ナット206を螺合されているので、逆ネジとなって、比較的容易に、拡開アンカー10から六角ボルト200を外すことができる。
【0028】
更に、拡開アンカー10を被削物(C)に打ち込むときは、アンカーチューブ12の貫通孔24の入り口に設けられた段差部26に工具192を嵌め込み、ハンマー等の打込具190でアンカーチューブ12を叩いて打ち込むとよい。
アンカーチューブ12は、アンカーコア14のコーン部100の表面を摺動して下降し且つコーン部100の形状に沿って第1削孔部32が拡開する。
アンカーチューブ12の削孔部32は、被削物(C)に確実に食い込む。
【0029】
この発明は、前記実施の形態に限定されず、この発明の思想に基づいて変更することができる。
次に、前記実施の形態の拡開アンカー10の変形例であるアンカーについて説明する。
図14図示変形例のアンカーは、主として、アンカーコア14の構成が前記実施の形態の拡開アンカー10のアンカーコア14と異なる。
この変形側のアンカーコア14は、アンカーチューブ12に嵌挿された領域とは反対側である下端に、突起104が突設されている。
突起104は、底面視略六角形の柱状部を備える。
突起104は、アンカーコア104の下端に穿設された雌ねじ穴106に螺着されたボルトで形成してもよく、又、アンカーコア14に一体的に成形してもよい。
また、図17図示変形例のアンカーは、切欠き先端部54が、貫通孔24側に至るまで、切り欠かれている。切り欠かれた部分が大きいために、スリット部70側から視て略三角形状の先鋭部44がより多く露出して、被削物(C)を切削し易くなる。
【0030】
拡開アンカー10に、例えば、土台や柱等の建材等の被着材400を固定する場合、被着材400に穿設された貫通孔402に、ワッシャ404を介して、ボルト406を、アンカーチューブ12のねじ28に螺着する。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本アンカーの適用対象となる母材としては、コンクリート躯体に限定されず、例えばレンガ躯体や、ALC、樹脂等からなる躯体なども対象となる。
【符号の説明】
【0032】
10 拡開アンカー
12 アンカーチューブ
14 アンカーコア
20 上部筒体
22 下部筒体
24 貫通孔
26 段差部
28 ねじ
30 ヘッド部
32 第1削孔部
34 第2削孔部
36 第3削孔部
38 第4削孔部
40 (第1削孔部の)第1スリット側の端縁
42 (第1削孔部の)下端縁
44 先鋭部
50 (第2削孔部の)第1スリット側の端縁
52 (第2削孔部の)下端縁
54 切欠き先端部
70 スリット部
72 第1スリット部
74 第2スリット部
76 第3スリット部
78 第4スリット部
80 削り粉案内溝
100 コーン部
104 突起
106 雌ねじ部
110 上部柱体
112 下部柱体
190 打込具
192 工具
200 六角ボルト
202 頭部
204 雄ねじ棒
206 六角ナット
250 ソケットビット
252 穴
280 回転打ち込み器具
400 被着材
402 貫通孔
404 ワッシャ
406 ボルト
C 被削物
Ch 先行孔
【要約】      (修正有)
【課題】効率的に被削物を削孔することができるとともに被削物に確実に固着されるアンカーを提供すること。
【解決手段】拡開アンカー10は、アンカーチューブ12と、該アンカーチューブ12の中に嵌挿されるアンカーコア14とを備え、アンカーチューブ12は、アンカーチューブ12の軸線方向に穿設されたスリット部により分割され拡開するように形成された、複数の削孔部24を有し、一の削孔部のスリット部側の先端は、先鋭に形成され、前記一の削孔部を挟んで隣接する二の削孔部のスリット側の先端は、切り欠かれ、一の削孔部のスリット部側の先端は、露出して、被削物を切削するように形成され、前記アンカーチューブ12は、アンカーコア14の軸線方向に打ち込まれて、アンカーコア14の外周面に沿って削孔部が拡開され、被削物に食い込むように形成されている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15
図16
図17
図18