(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一定方向に回転する磁気記録媒体を加熱するとともに、前記磁気記録媒体に対して記録磁界を与えることで磁化反転を生じさせ、情報を記録させる近接場光ヘッドであって、
前記磁気記録媒体の表面に対向配置されたスライダと、
前記スライダの先端側に配置され、前記記録磁界を発生させる主磁極及び補助磁極を有する記録素子と、
前記他端側を前記磁気記録媒体側に向けた状態で前記記録素子に隣接して固定された、請求項3記載の近接場光発生素子と、
前記スライダに固定され、前記一端側から前記コア内に前記光束を導入させる光束導入手段と、を備えていることを特徴とする近接場光ヘッド。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、本実施形態の情報記録再生装置1は、垂直記録層d2を有するディスク(磁気記録媒体)Dに対して、近接場光Rと記録磁界とを協働させたハイブリッド磁気記録方式によりディスクDに記録再生を行う装置である(
図2参照)。
【0021】
(第1実施形態)
(情報記録再生装置)
図1は情報記録再生装置の構成図である。
本実施形態の情報記録再生装置1は、
図1に示すように、キャリッジ11と、キャリッジ11の先端側に支持されたヘッドジンバルアセンブリ(HGA)12と、ヘッドジンバルアセンブリ12をディスク面D1(ディスクDの表面)に平行なXY方向に向けてスキャン移動させるアクチュエータ5と、ディスクDを所定の方向に向けて回転させるスピンドルモータ6と、情報に応じて変調した電流をヘッドジンバルアセンブリ12の記録再生ヘッド(近接場光ヘッド)2に対して供給する制御部8と、これら各構成品を内部に収容するハウジング9と、を備えている。
【0022】
ハウジング9は、アルミニウム等の金属材料により、上面視四角形状に形成されているとともに、内側に各構成品を収容する凹部9aが形成されている。また、このハウジング9には、凹部9aの開口を塞ぐように図示しない蓋が着脱可能に固定されるようになっている。凹部9aの略中心には、スピンドルモータ6が取り付けられ、スピンドルモータ6に中心孔を嵌め込むことでディスクDが着脱自在に固定される。なお、本実施形態では、3枚のディスクDがスピンドルモータ6に固定されている場合を例に挙げて説明している。但し、ディスクDの数は3枚に限定されるものではない。
【0023】
凹部9aの隅角部には、アクチュエータ5が取り付けられている。このアクチュエータ5には、ピボット軸10を介してキャリッジ11が取り付けられている。キャリッジ11は、基端部から先端部に向けてディスク面D1に沿って延設されたアーム部14と、基端部を介してアーム部14を片持ち状に支持する基部15とが、削り出し加工等により一体形成されたものである。
基部15は、直方体形状に形成されたものであり、ピボット軸10まわりを回動可能に支持されている。つまり、基部15はピボット軸10を介してアクチュエータ5に連結されており、このピボット軸10がキャリッジ11の回転中心となっている。
【0024】
アーム部14は、基部15におけるアクチュエータ5が取り付けられた側面15aと反対側の側面(隅角部の反対側の側面)15bにおいて、基部15の上面の面方向(XY方向)と平行に延出する平板状のものであり、基部15の高さ方向(Z方向)に沿って3枚延出している。具体的には、アーム部14は、基端部から先端部に向かうにつれ先細るテーパ形状に形成され、各アーム部14間に、ディスクDが挟み込まれるように配置されている。つまり、アーム部14とディスクDとが、互い違いになるように配されており、アクチュエータ5の駆動によってアーム部14がディスクDの表面に平行な方向(XY方向)に移動可能とされている。なお、キャリッジ11及びヘッドジンバルアセンブリ12は、ディスクDの回転停止時にアクチュエータ5の駆動によって、ディスクD上から退避するようになっている。
【0025】
(ヘッドジンバルアセンブリ)
ヘッドジンバルアセンブリ12は、後述する近接場光発生素子(光束伝播素子)26を有する近接場光ヘッドである記録再生ヘッド2を支持するものである。
【0026】
図2は、記録再生ヘッドを上向きにした状態でサスペンションを記録再生ヘッド側から見た斜視図である。
図3は、記録再生ヘッドを上向きにした状態でジンバルを見た平面図である。
図4は
図3のA−A’線に沿う断面図であり、
図5は記録再生ヘッドの拡大断面図である。
図2〜5に示すように、本実施形態のヘッドジンバルアセンブリ12は、上述した記録再生ヘッド2をディスクDから浮上させる機能を有しており、記録再生ヘッド2と、金属性材料により薄い板状に形成され、ディスク面D1に平行なXY方向に移動可能なサスペンション3と、記録再生ヘッド2を、ディスク面D1に平行で且つ互いに直交する2軸(X軸、Y軸)回りに回動自在な状態、すなわち2軸を中心として捻れることができるようにサスペンション3の下面に固定させるジンバル手段16と、を備えている。
【0027】
(サスペンション)
図2〜4に示すように、上述したサスペンション3は、上面視略四角状に形成されたベースプレート51と、ベースプレート51の先端側にヒンジ板52を介して連結された平面視略三角状のロードビーム53と、で構成されている。
【0028】
ベースプレート51は、ステンレス等の厚みの薄い金属材料によって構成されており、基端側には厚さ方向に貫通する開口51aが形成されている。そして、この開口51aを介してベースプレート51がアーム部14の先端に固定されている。
ベースプレート51の下面には、ステンレス等の金属材料により構成されたシート状のヒンジ板52が配置されている。このヒンジ板52は、ベースプレート51の下面の全面に亘って形成された平板状の板材であり、その先端部分はベースプレート51の先端からベースプレート51の長手方向(X方向)に沿って延出する延出部52aとして形成されている。この延出部52aは、ヒンジ板52の幅方向(Y方向)両端部から2本延出しており、その先端部分にロードビーム53が連結されている。
【0029】
ロードビーム53は、ベースプレート51と同様にステンレス等の厚みの薄い金属材料によって形成されており、その基端がベースプレート51の先端との間に間隙を有した状態でヒンジ板52に連結されている。
これにより、サスペンション3は、ベースプレート51とロードビーム53との間を中心に屈曲して、ディスク面D1に垂直なZ方向に向けて撓み易くなっている。
【0030】
また、サスペンション3上には、フレクシャ54が設けられている。
このフレクシャ54は、ステンレス等の金属材料により形成されたシート状のものであり、シート状に形成されることで厚さ方向に撓み変形可能に構成されている。また、このフレクシャ54は、ロードビーム53の先端側に固定され、外形が上面視略五角形状に形成されたジンバル17と、ジンバル17より幅狭に形成され、ジンバル17の基端からサスペンション3上に沿って延在する支持体18と、で構成されている。
【0031】
ジンバル17は、中間付近から先端にかけてディスク面D1に向けて厚さ方向に僅かながら反るように形成されている。そして、この反りが加わった先端側がロードビーム53に接触しないように、基端側から略中間付近にかけてロードビーム53に固定されている。また、この浮いた状態のジンバル17の先端側には、周囲がコ形状に刳り貫かれた切欠部59が形成され、この切欠部59に囲まれた部分には連結部17aによって片持ち状に支持されたパッド部17bが形成されている。
つまり、このパッド部17bは、連結部17aによってジンバル17の先端側から基端側に向けて張出し形成されており、その周囲に切欠部59を備えている。
【0032】
これにより、パッド部17bはジンバル17の厚さ方向に撓みやすくなっており、このパッド部17bのみがサスペンション3の下面と平行になるように角度調整されている。そして、このパッド部17b上に上述した記録再生ヘッド2が載置固定されている。つまり、記録再生ヘッド2は、パッド部17bを介してロードビーム53にぶら下がった状態となっている。
【0033】
また、
図3,4に示すように、ロードビーム53の先端には、パッド部17b及び記録再生ヘッド2の略中心に向かって突出する突起部19が形成されている。この突起部19の先端は、丸みを帯びた状態となっている。そして突起部19は、記録再生ヘッド2がディスクDから受ける風圧によりロードビーム53側に浮上したときに、パッド部17bの表面(上面)に点接触するようになっている。
つまり、突起部19は、ジンバル17のパッド部17bを介して、記録再生ヘッド2を支持するとともに、ディスク面D1に向けて(Z方向に向けて)記録再生ヘッド2に荷重を付与するようになっている。
なお、これら突起部19とパッド部17bを有するジンバル17とが、ジンバル手段16を構成している。
【0034】
(記録再生ヘッド)
図6は記録再生ヘッドの流出端側の側面を拡大した断面図である。
記録再生ヘッド2は、ディスクDとサスペンション3との間に配置された状態で、サスペンション3の下面にジンバル17を挟んで支持されている。
具体的に、記録再生ヘッド2は、
図5,6に示すように、レーザ光Lから生成した近接場光Rを利用して回転するディスクDに各種の情報を記録再生するヘッドである。記録再生ヘッド2は、ディスク面D1から所定距離Hだけ浮上した状態でディスクDに対向配置されたスライダ20と、ディスクDに情報を記録する記録素子21と、ディスクDに記録されている情報を再生する再生素子22と、レーザ光Lを集光しながら伝播するとともに、近接場光Rに生成した後に外部に発する近接場光発生素子26と、近接場光発生素子26に向けてレーザ光Lを出射するレーザ光源29と、を備えている。
【0035】
スライダ20は、石英ガラス等の光透過性材料や、AlTiC(アルチック)等のセラミック等によって直方体状に形成されている。このスライダ20は、ディスクDに対向する対向面20aを有しており、後述するレーザマウント43を介して上述したパッド部17bに支持されている。
【0036】
また対向面20aには、回転するディスクDによって生じた空気流の粘性から、浮上するための圧力を発生させる凸条部20bが形成されている。この凸条部20bは、長手方向(X方向)に沿って延びるように形成され、レール状に並ぶように間隔を空けて左右(Y方向)に2つ形成されている。但し、凸条部20bはこの場合に限定されるものではなく、スライダ20をディスク面D1から離そうとする正圧と、スライダ20をディスク面D1に引き付けようとする負圧と、を調整して、スライダ20を最適な状態で浮上させるように設計されていれば、どのような凹凸形状でも構わない。なお、この凸条部20bの表面はABS(AIR BEARING SURFACE)20cと呼ばれている。
【0037】
そしてスライダ20は、この2つの凸条部20bによってディスク面D1から浮上する力を受けている。一方、サスペンション3はディスク面D1に垂直なZ方向に撓むようになっており、スライダ20の浮上力を吸収している。つまり、スライダ20は、浮上した際にサスペンション3によってディスク面D1側に押さえ付けられる力を受けている。よってスライダ20は、この両者の力のバランスによって、上述したようにディスク面D1から所定距離H離間した状態で浮上するようになっている。しかもスライダ20は、ジンバル手段16によってX軸回り及びY軸回りに回動するようになっているので、常に姿勢が安定した状態で浮上するようになっている。
なお、ディスクDの回転に伴って生じる空気流は、スライダ20の流入端側(サスペンション3のX方向基端側)から流入した後、ABS20cに沿って流れ、スライダ20の流出端側(サスペンション3のX方向先端側)から抜けている。
以下、スライダ20の流入端側(リーディングエッジ側)、つまり
図5におけるX方向右側を「後方」とし、スライダ20の流出端側(トレイリングエッジ側)、つまり
図5におけるX方向左側を「前方」とする。また、記録再生ヘッド2に対してディスク面D1側、つまり
図5におけるZ方向下側を「下方」とし、その反対側、つまり
図5におけるZ方向上側を「上方」とする。
【0038】
記録素子21は、
図5に示すディスク面D1に対向する対向面21aから記録磁界を発生させ、その記録磁界をディスクDに作用させて情報を記録する素子であり、
図6に示すように、スライダ20の前方の端部に保持されている。この記録素子21には、スライダ20の前方の端面(前端面)に固定された補助磁極31と、補助磁極31の前方に配設されて磁気回路32を介して補助磁極31に接続された主磁極33と、磁気回路32を中心として磁気回路32の周囲を螺旋状に巻回するコイル34と、が備えられている。つまり、スライダ20の前端面から前方に向かって、補助磁極31、磁気回路32、コイル34、及び主磁極33の順で並べて配置されている。
【0039】
両磁極31,33及び磁気回路32は、磁束密度が高い高飽和磁束密度(Bs)材料(例えば、CoNiFe合金、CoFe合金等)により形成されている。また、コイル34は、ショートしないように、隣り合うコイル線間、磁気回路32との間、両磁極31,33との間に隙間が空くように配置されており、この状態で絶縁体35によってモールドされている。そして、コイル34は、情報に応じて変調された電流が制御部8(
図1参照)から供給されるようになっている。すなわち、磁気回路32及びコイル34は、全体として電磁石を構成している。また、上述した主磁極33、補助磁極31及び絶縁体35のディスク面D1に対向する各対向面33a,31a,35a(Z方向端面)は、スライダ20のABS20cとそれぞれ面一に形成されている。上述した構成の記録素子21では、コイル34に電流が供給されることで、磁力線が主磁極33の対向面33aから出て補助磁極31の対向面31aに入る記録磁界が発生する。
【0040】
図6に示すように、近接場光発生素子26は、ディスク面D1に対向する対向面26aから近接場光Rを発生させる素子であり、記録素子21の前方(
図6に示す主磁極33に対する補助磁極31と反対側)に配設されている。この近接場光発生素子26は、先端をディスク面D1に向けて上下に延設されたコア23と、コア23の下端部における主磁極33側の側面(側面23g)に密着して配置された金属膜(近接場光発生部)71と、コア23の下端部を被覆する遮光膜27と、コア23の側面に密着してコア23を封止するクラッド24と、を備えている。
【0041】
図7はコア及び金属膜の斜視図、
図8はコア及び金属膜の断面図であり、(a)は
図7のB−B線、(b)は
図7のC−C線、(c)は
図6のD−D線に沿う断面図である。
図7,8に示すように、コア23は、上端側(一端側)から入射されたレーザ光Lを下端側(他端側)に向けて集光しながら伝播させる光束伝播部材である。このコア23は、上端側から下端側にかけて漸次絞り成形され、レーザ光Lを内部で徐々に集光させながら伝播させることができるようになっている。具体的に説明すると、コア23は、上側から光束集光部23aと、近接場光生成部23bと、を有している。
【0042】
光束集光部23aは、上端側から下端側に向かうZ方向に直交する断面積(XY方向の断面積)が漸次減少するように絞り成形された部分であり、導入されたレーザ光Lを集光させながら下方に向けて伝播させている。つまり、光束集光部23aに導入されたレーザ光Lのスポットサイズを、徐々に小さいサイズに絞ることができるようになっている。具体的に、光束集光部23aは、上端側においてZ方向から見た断面形状(入射側端面)が台形状に形成された台形部41(
図8(c)参照)と、台形部41の下端部に一体的に連設されZ方向から見た断面形状が三角形状に形成された三角形部42(
図8(b)参照)と、で構成されている。
【0043】
図7,
図8(c)に示すように、台形部41は、左右方向を長手方向(Y方向)、前後方向(X方向)を短手方向とした扁平形状に形成されている。具体的に、台形部41は、後側の側面23gと、側面23gの左右両端(Y方向両端)から再生素子22に向かって先細るように延在する一対の側面23kと、側面23gと平行に延在するとともに、一対の側面23k同士を掛け渡す側面23jと、で構成されている。台形部41は、下端側に向かうに従い両底面(後側の側面23g及び前側の側面23j)の長さ(Y方向における幅)が漸次減少するように形成されている。また、台形部41の上端面41a(コア23の上端面)は、スライダ20の上面と面一に形成され、外部に向けて露出している。
【0044】
図7,
図8(b)に示すように、三角形部42は、底面及び一対の斜面が上述した側面23g及び側面23kにより構成されている。三角形部42は、下端側に向けて底面(側面23g)の長さ、及び斜面(側面23k)の長さが漸次減少するように形成されている。
【0045】
図9は
図7のE部拡大図である。また、
図10は
図6の要部拡大図であり、
図11は
図10のF矢視図である。
図7〜11に示すように、近接場光生成部23bは、光束集光部23aにおける三角形部42の下端部から下方に向けてさらに絞り成形された部分である。近接場光生成部23bはZ方向から見た断面形状が三角形状に形成されている。具体的に、近接場光生成部23bは、底面が側面23gにより構成され、この側面23gが主磁極33の先端部分33bに密着している。近接場光生成部23bは、側面23gの両端(Y方向両端)から再生素子22に向かって(X方向に向かって)一対の側面23dが形成されている。側面23dは、レーザ光Lの光軸(Z方向)に対して傾斜した状態で延在しており、これにより近接場光生成部23bは下端側が尖形した状態となっている。そして、近接場光生成部23bの下端は、スライダ20のABS20cよりも上方に位置しており、クラッド24により覆われて、外部には露出していない。このように、コア23において、台形部41の上端面41aがレーザ光源29から出射されるレーザ光Lの入射端を、近接場光生成部23bの下端部がレーザ光Lの出射端を構成している。
【0046】
クラッド24は、
図6,7に示すように、コア23よりも屈折率が低い材料で形成され、側面23d,23g,23j,23kに密着して、コア23を封止するモールド部材である。また、クラッド24は、コア23の上端面41aを外部に露出させる一方、コア23の下端を内部に封止している。具体的に、クラッド24は、コア23と記録素子21(主磁極33)との間でコア23を後側から覆うように形成された第1クラッド24aと、コア23と再生素子22との間でコア23を前側から覆うように形成された第2クラッド24bと、を備えている。このように、第1クラッド24a及び第2クラッド24bがコア23の側面23d,23g,23j,23kに密着しているので、コア23とクラッド24との間に隙間が生じないようになっている。
【0047】
なお、クラッド24及びコア23として使用される材料の組み合わせの一例を記載すると、例えば、石英(SiO
2)でコア23を形成し、フッ素をドープした石英でクラッド24を形成する組み合わせが考えられる。この場合には、レーザ光Lの波長が400nmのときに、コア23の屈折率が1.47となり、クラッド24の屈折率が1.47未満となるので好ましい組み合わせである。
また、ゲルマニウムをドープした石英でコア23を形成し、石英(SiO
2)でクラッド24を形成する組み合わせも考えられる。この場合には、レーザ光Lの波長が400nmのときに、コア23の屈折率が1.47より大きくなり、クラッド24の屈折率が1.47となるのでやはり好ましい組み合わせである。
特に、コア23とクラッド24との屈折率差が大きいほど、コア23内にレーザ光Lを閉じ込める力が大きくなるので、コア23に酸化タンタル(Ta
2O
5:波長が550nmのときに屈折率が2.16)を用い、クラッド24に石英やアルミナ(Al
2O
3)等を用いて、両者の屈折率差を大きくすることがより好ましい。また、赤外領域のレーザ光Lを利用する場合には、赤外光に対して透明な材料であるシリコン(Si:屈折率が約4)でコア23を形成することも有効である。
【0048】
図7〜11に示すように、コア23と第1クラッド24aとの間には、金属膜71が形成されている。金属膜71は、コア23内を伝播してきたレーザ光Lから近接場光Rを発生させ、近接場光Rを近接場光発生素子26の下端側とディスクDとの間に局在化させるものであり、例えば金(Au)や白金(Pt)等により構成されている。また、金属膜71における後側の側面71a(
図10参照)は、第1クラッド24aから露出する主磁極33の先端部分33bに接している。
【0049】
ここで、金属膜71は、コア23における近接場光生成部23bの側面23g上に配置された基部72と、基部72から下方に向けて延在する延在部73と、を有している。
基部72は、X方向から見て三角形状のものであり、Y方向における幅がコア23よりも広く形成された第1基部74と、第1基部74の中央部から段差部78を介して前方(コア23側)に向けて立設された第2基部75と、が連設されている。
第1基部74は、
図7,9に示すように、Z方向において、上端側が近接場光生成部23bと光束集光部23aとの境界部分に位置するとともに、下端側がコア23の下端と同位置に位置している。また、第1基部74は、前方に向かうに従いY方向における幅が漸次小さくなるように形成されている。具体的に、第1基部74におけるY方向両側の側面74a(
図9参照)は、コア23の側面23dと平行な傾斜面に形成されている。すなわち、第1基部74におけるY方向両端部の角度(側面71aと側面74aとのなす角度)は、近接場光生成部23bにおけるY方向両端部の角度(側面23gと側面23dとのなす角度)と同等に形成されている。
【0050】
段差部78は、XY方向に沿う平坦面であり、そのY方向の内側に第2基部75が形成されている。
第2基部75は、Z方向における長さが第1基部74と同等に形成されるとともに、Y方向における幅が第1基部74よりも小さく形成され、XY方向における外形が近接場光生成部23bの側面23gと同等に形成されている。また、第2基部75は、前方に向かうに従いY方向における幅が漸次小さくなるように形成されている。具体的に、第2基部75におけるY方向両側の側面75a(
図9参照)は、コア23の側面23dと同一面上に配置された傾斜面に形成されている。すなわち、第2基部75におけるY方向両端部の角度(側面71aと側面75aとのなす角度)は、近接場光生成部23bにおけるY方向両端部の角度(側面23gと側面23dとのなす角度)と同等に形成されている。
【0051】
図7〜11に示すように、延在部73は、X方向における厚さが第1基部74と同等に形成され、第1基部74の下端部(第1基部74の頂部)から下方に向けて延在するX方向から見て長方形状のものであり、その下端部が近接場光発生素子26の対向面26aにおいて外部に露出している。すなわち、延在部73は、Z方向において、上端部が近接場光生成部23bの下端と同位置に配置され、下端部がスライダ20のABS20cと面一に形成されている。また、延在部73は、Y方向における幅が主磁極33の先端部分33bよりも狭く形成されている。
【0052】
延在部73におけるY方向の中央部には、前方(コア23側)に向けて立設された突起部76が形成されている。突起部76は、Z方向から見て前方に向かうに従い先細る三角形状に形成され、その頂部77の位置が上述したコア23の後側の側面23gとX方向において同位置に配置されている。
また、突起部76は、Z方向において、延在部73の全域に亘って形成されている。具体的に、突起部76は、上端部が第2基部75の下端部に連設されるとともに、下端部がスライダ20のABS20cと面一に形成されて、外部に露出している。したがって、上述した頂部77は、第2基部75の下端部からZ方向に沿って稜線状に延在している。また、頂部77の稜線は、X方向から見て近接場光生成部23bの稜線(側面23d同士のなす稜線)と同一直線上に配置されている。
【0053】
遮光膜27は、外部から近接場光生成部23bに入射される光を遮断するとともに、コア23内を伝播するレーザ光Lがコア23から漏れるのを防止するためのものであり、アルミニウム(Al)等の高反射率の材料からなる。この遮光膜27は、近接場光生成部23bの側面23dを覆うように形成されている。すなわち、近接場光生成部23bは、側面23gが上述した金属膜71に覆われ、側面23dが遮光膜27に覆われている。すなわち、上述した金属膜71は、X方向から見て基部72が遮光膜27に覆われており、延在部73は遮光膜27の下端部よりも下方に延在している。なお、遮光膜27は、X方向から見て金属膜71の全域を覆うように形成しても構わない。
【0054】
図5,6に示すように、再生素子22は、ディスクDの垂直記録層d2(
図5参照)から漏れ出ている磁界の大きさに応じて電気抵抗が変換する磁気抵抗効果膜であり、近接場光発生素子26を間に挟んで記録素子21とは反対側のクラッド24(第2クラッド24b)の前端面に形成されている。この再生素子22には、後述する電気配線56を介して制御部8からバイアス電流が供給されている。これにより制御部8は、ディスクDから漏れ出た磁界の変化を電圧の変化として検出することでき、この電圧の変化から信号の再生を行うことができるようになっている。
【0055】
図5,6に示すように、上述した記録再生ヘッド2のスライダ20には、レーザ光源29が搭載されている。レーザ光源29は、スライダ20の上面に固定されたレーザマウント43と、レーザマウント43の前端面43aに固定された半導体レーザチップ44と、を有している。
【0056】
レーザマウント43は、例えばスライダ20と同一材料により構成され、XY方向における外形がスライダ20と同等に形成された板状の部材であり、上面側がジンバル17の後述するパッド部17bに固定されている。すなわち、スライダ20は、パッド部17bとの間にレーザマウント43を挟持した状態でパッド部17bに固定されている。なお、図示しないがレーザマウント43には、後述する電気配線56(
図5参照)が固定されており、レーザマウント43の前端面43aに形成された図示しない電極パッドに電気的に接続されている。
【0057】
半導体レーザチップ44は、レーザマウント43の前端面43aに形成された図示しない電極パッド上に実装されている。この場合、半導体レーザチップ44は、レーザ光Lの出射側端面44aを下方に向けた状態で、かつコア23の台形部41の上端面41aに対向するように配置されている。なお、本実施形態の半導体レーザチップ44は、スポット形状がX方向を短軸方向、Y方向を長軸方向とした楕円形状のレーザ光Lを出射する。また、半導体レーザチップ44の出射側端面44aと、台形部41の上端面41aとの間に間隔Kを有しているが、この間隔K内にコア23と同等の屈折率を有するオイル等を介在させても構わない。なお、上述した台形部41の上端面41aの形状は、半導体レーザチップ44から出射されて上端面41aに入射する時点のレーザ光Lのスポット形状に合わせて形成されている。
【0058】
なお、本実施形態のディスクDは、
図5に示すように、ディスク面D1に垂直な方向に磁化容易軸を有する垂直記録層d2と、高透磁率材料からなる軟磁性層d3との少なくとも2層で構成される垂直2層膜ディスクDを使用する。このようなディスクDとしては、例えば、基板d1上に、軟磁性層d3と、中間層d4と、垂直記録層d2と、保護層d5と、潤滑層d6とを順に成膜したものを使用する。
基板d1としては、例えば、アルミ基板やガラス基板等である。軟磁性層d3は、高透磁率層である。中間層d4は、垂直記録層d2の結晶制御層である。垂直記録層d2は、垂直異方性磁性層となっており、例えばCoCrPt系合金が使用される。保護層d5は、垂直記録層d2を保護するためのもので、例えばDLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)膜が使用される。潤滑層d6は、例えば、フッ素系の液体潤滑材が使用される。
【0059】
ところで、
図1に示すように、キャリッジ11の基部15における側面15cには、ターミナル基板55が配置されている。このターミナル基板55は、ハウジング9に設けられた制御部8と記録再生ヘッド2とを電気的に接続する際の中継点となるものであり、その表面には、各種制御回路(不図示)が形成されている。
制御部8とターミナル基板55とは、可撓性を有するフラットケーブル4により電気的に接続されている一方、ターミナル基板55と記録再生ヘッド2とは、電気配線56により接続されている。この電気配線56は、各キャリッジ11毎に設けられた記録再生ヘッド2に対応して3組設けられており、フラットケーブル4を介して制御部8から出力された信号に情報に応じて変調した電流が、電気配線56を介して記録再生ヘッド2に供給されるようになっている。
【0060】
電気配線56は、ターミナル基板55の表面からアーム部14の側面を通って、アーム部14上に引き回されている。具体的には、
図2〜4に示すように、電気配線56は、アーム部14及びサスペンション3上において、フレクシャ54の支持体18上に配置されており、支持体18を間に挟んだ状態でサスペンション3の先端まで引き回されている。
【0061】
そして、電気配線56は、サスペンション3の先端(ジンバル17の中間位置)において再生素子22及び記録素子21に電流を供給するための第1電気配線57と、レーザ光源29に電流を供給するための第2電気配線58と、に分岐している。
具体的に、第1電気配線57は、電気配線56の先端側における分岐地点において、ジンバル17の外周部分に向けて屈曲されており、ジンバル17の外周部分(切欠部59の外側)から引き回されている。そして、切欠部59の外側から引き回された第1電気配線57は、連結部17a上を通って記録再生ヘッド2の前端面側に接続されている。すなわち、第1電気配線57は、スライダ20の前端面側に設けられた再生素子22と記録素子21とのそれぞれに対して、記録再生ヘッド2の外部から直接接続されている。
【0062】
一方、第2電気配線58は、上述した分岐地点からジンバル17の長手方向(X方向)に沿って延在しており、ジンバル17の切欠部59を跨いで記録再生ヘッド2の後端面側から、レーザマウント43に直接接続されている。そして、第2電気配線58は、レーザマウント43の前端面43aに形成された電極パッドに接続され、この電極パッドを介して半導体レーザチップ44に電流を供給するようになっている。また、第2電気配線58は、分岐地点においてジンバル17の下面から離間されており、分岐地点から記録再生ヘッド2の前端面側に向かうにつれ、パッド部17bとジンバル17との間を架け渡すように僅かながら浮いた状態で延在している。つまり、ジンバル17の下面において、第2電気配線58は略直線的(曲率半径が略無限大)に延在した状態で、記録再生ヘッド2の幅方向(Y方向)中央部から記録再生ヘッド2の後側に引き回されている。
【0063】
(情報記録再生方法)
次に、このように構成された情報記録再生装置1により、ディスクDに各種の情報を記録再生する場合について以下に説明する。
まず、
図1に示すように、スピンドルモータ6を駆動させてディスクDを一定方向に回転させる。次いで、アクチュエータ5を作動させて、キャリッジ11を介してサスペンション3をXY方向にスキャンさせる。これにより、ディスクD上の所望する位置に記録再生ヘッド2を位置させることができる。この際、記録再生ヘッド2は、スライダ20の対向面20aに形成された2つの凸条部20bによって浮上する力を受けるとともに、サスペンション3等によってディスクD側に所定の力で押さえ付けられる。記録再生ヘッド2は、この両者の力のバランスによって、
図2に示すようにディスクD上から所定距離H離間した位置に浮上する。
【0064】
また、記録再生ヘッド2は、ディスクDのうねりに起因して発生する風圧を受けたとしても、サスペンション3によってZ方向の変位が吸収されるとともに、ジンバル17によってXY軸回りに変位することができるようになっているので、うねりに起因する風圧を吸収することができる。そのため、記録再生ヘッド2を安定した状態で浮上させることができる。
【0065】
図12,13は情報記録再生装置により情報を記録再生する際の説明図であって、
図12は
図6に相当する図であり、
図13は
図11に相当する図である。
ここで、情報の記録を行う場合、
図12,13に示すように、制御部8はレーザ光源29を作動させてレーザ光Lを出射させるとともに、情報に応じて変調した電流をコイル34に供給して記録素子21を作動させる。
まず、レーザ光源29からレーザ光Lを出射し、このレーザ光Lをコア23の上端面41aからコア23の光束集光部23a内に入射させる。光束集光部23aを伝播するレーザ光Lは、ディスクD側に位置する下端側に向かってコア23とクラッド24との間で全反射を繰り返しながら伝播する。特に、コア23の側面23k,23dにはクラッド24が密着しているので、コア23の外部に光が漏れることはない。よって、導入されたレーザ光Lを無駄にすることなく絞りながら下端側に伝播させて、近接場光生成部23bに入射させることができる。
この際、コア23は、Z方向に直交する断面積が漸次減少するように絞り成形されている。そのため、レーザ光Lは光束集光部23a内を伝播するにしたがって徐々に絞り込まれてスポットサイズが小さくなる。
【0066】
スポットサイズが小さくなったレーザ光Lは、続いて、近接場光生成部23bに入射する。この近接場光生成部23bは、下端側に向けてさらに絞り成形されており、光の波長以下のサイズとされている。この場合、近接場光生成部23bの2つの側面23dは、遮光膜27によって遮光されている。よって、近接場光生成部23bに入射したレーザ光Lは、第2クラッド24b側に漏れることなく、遮光膜27と近接場光生成部23bとの界面で反射されながら伝播する。
【0067】
そして、近接場光生成部23bを下端側まで伝播したレーザ光Lは、金属膜71に入射する。すると、金属膜71には、表面プラズモンが励起される。励起された表面プラズモンは、金属膜71上を下方に向けて伝播する。そして、金属膜71上を伝播する表面プラズモンが延在部73まで伝播すると、突起部76の頂部77において光強度の強い近接場光Rとなる。そして、頂部77で発生した近接場光Rは、頂部77を下方に向かって伝播した後、下端(近接場光発生素子26の対向面26a)で外部に漏れ出す。つまり、近接場光発生素子26の下端側とディスクDとの間に近接場光Rを局在化させることができる。するとディスクDは、この近接場光Rによって局所的に加熱されて一時的に保磁力が低下する。
【0068】
一方、制御部8によってコイル34に電流が供給されると、電磁石の原理により電流磁界が磁気回路32内に磁界が発生するので、主磁極33と補助磁極31との間にディスクDに対して垂直方向の記録磁界を発生させることができる。すると、主磁極33側から発生した磁束が、ディスクDの垂直記録層d2を真直ぐ通り抜けて軟磁性層d3に達する。これによって、垂直記録層d2の磁化をディスク面D1に対して垂直に向けた状態で記録を行うことができる。また、軟磁性層d3に達した磁束は、軟磁性層d3を経由して補助磁極31に戻る。この際、補助磁極31に戻るときには磁化の方向に影響を与えることはない。これは、ディスク面D1に対向する補助磁極31の面積が、主磁極33よりも大きいので磁束密度が大きく磁化を反転させるほどの力が生じないためである。つまり、主磁極33側でのみ記録を行うことができる。
【0069】
その結果、近接場光Rと両磁極31,33で発生した記録磁界とを協働させたハイブリッド磁気記録方式により情報の記録を行うことができる。しかも垂直記録方式で記録を行うので、熱揺らぎ現象等の影響を受け難く、安定した記録を行うことができる。よって、書き込みの信頼性を高めることができる。
【0070】
また、ディスクDに記録された情報を再生する場合には、ディスクDの保磁力が一時的に低下している時に、再生素子22がディスクDの垂直記録層d2から漏れ出ている磁界を受けて、その大きさに応じて電気抵抗が変化する。よって、再生素子22の電圧が変化する。これにより制御部8は、ディスクDから漏れ出た磁界の変化を電圧の変化として検出することができる。そして制御部8は、この電圧の変化から信号の再生を行うことで、ディスクDに記録されている情報の再生を行うことができる。
【0071】
(記録再生ヘッドの製造方法)
次に、上述した近接場光発生素子26を有する記録再生ヘッド2の製造方法について説明する。
図14は近接場光発生素子の製造方法を説明するための工程図であって、コア母材の平面図である。また、
図15は
図14(a)のG−G線に沿う断面図である。なお、以下の説明では、記録再生ヘッド2の製造工程のうち、主として近接場光発生素子の製造工程について具体的に説明する。
本実施形態では、複数のスライダ20がX方向及びY方向に沿って連なってなる基板120(例えば、AlTiC(アルチック)等)を用意し、この基板120における記録再生ヘッド2の各形成領域上にそれぞれ記録素子21、近接場光発生素子26、及び再生素子22を順に形成した後、記録再生ヘッド2の形成領域毎にダイシングすることで、記録再生ヘッド2を製造する。
【0072】
まず
図15(a)に示すように、基板120上に記録素子21(
図6参照)を形成し、絶縁体35でモールドする。その後、絶縁体35上に近接場光発生素子26の母材を成膜する(第1クラッド形成工程、及びコア形成工程)。具体的には、基板120(絶縁体35)上に第1クラッド母材124a、金属膜母材171(例えば、20nm程度)、コア母材123(数μm程度)の順で成膜する。なお、各母材124a,171,123の成膜後には、CMP(Chemical Mechanical Polishing)等でそれぞれの表面を研磨して、平坦面とする。
【0073】
また、金属膜母材171は、第1クラッド母材124a上の全面に成膜した後、所定の領域のみ残存するように予めパターニングしておくことが好ましい。この場合、本実施形態では、Z方向において、少なくともコア母材123における光束集光部23a(
図6参照)に相当する領域の金属膜母材171を除去するようにパターニングしている。この場合には、近接場光生成部23bに相当する領域では、コア母材123と第1クラッド母材124aとの間に金属膜母材171が挟持され、それ以外の領域(例えば、光束集光部23aに相当する領域)では、コア母材123と第1クラッド母材124aとが密着することになる。これにより、少なくとも光束集光部23aに相当する領域では、コア母材123と、金属膜母材171よりもコア母材123との密着性が高い第1クラッド母材124aと、が密着することになる。これにより、製造途中における膜剥がれを抑制できる。なお、金属膜母材171は、上述した金属膜71の形成領域のみに残存するようにパターニングすることが、より好ましい。
【0074】
続いて、
図15(b)に示すように、フォトリソグラフィ技術を用い、コア母材123を除去すべき領域が開口したマスクパターン(不図示)をコア母材123上に形成し、このマスクパターンを介して反応性イオンエッチング(RIE)を行う(第1パターニング工程)。これにより、マスクパターンが開口した領域のコア母材123が垂直(X方向に沿って)にエッチングされ、Z方向から見て矩形状のコア母材123が形成される。また、
図14(a),15(b)に示すように、コア母材123は、X方向から見て上端側から下端側にかけて先細る台形状に形成された第1母材(本体部)123aと、第1母材123aの下端側から下方に向けてさらに先細る第2母材(本体部)123bと、第2母材123bの下端側から下方に向けて一定幅で延在する第3母材(舌部)123cと、により構成される。なお、第1パターニング工程においては、マスクパターンが開口した領域のコア母材123は、完全に除去せず僅かに残存させることが好ましい(
図15(b)中残存部160参照)。
【0075】
次に、
図14(b),15(c)に示すように、アルゴン(Ar)等のプラズマ中でコア母材123及び金属膜母材171をスパッタエッチングする(第2パターニング工程)。第2パターニング工程において、上述した断面矩形状のコア母材123をスパッタエッチングすると、コア母材123の各角部が選択的にエッチングされて斜面が形成される。そして、この状態でさらにエッチングを続けると、斜面が底面(
図7中側面23gに相当)に対して一定の角度を保ちながらエッチングされる。なお、第1母材123aのうち、上側が光束集光部23aの台形部41、下側が光束集光部23aの三角形部42となり、また第2母材123bが近接場光生成部23bとなる。この場合、第3母材123cは、Y方向の両側の角部が除去されてZ方向から見て三角形状に残存している。
【0076】
そして、第2パターニング工程において、エッチングを継続すると、コア母材123は相似形を保ちながら幅(Y方向における幅)、及び高さ(X方向における高さ)が縮小して、コア母材123の外形が縮小する。すると、コア母材123に覆われていた金属膜母材171が露出する。
【0077】
図16は、近接場光発生素子の製造方法を説明するための工程図であって、(a)は
図14(c)のI−I線に沿う断面図、(b)は
図14(c)のH−H線に沿う断面図である。
図14(c),16に示すように、金属膜母材171が露出した状態からさらにスパッタエッチングを継続すると、コア母材123は相似形を保ったままエッチングされるとともに、金属膜母材171の角部がエッチングされる。
【0078】
ここで、上述したコア母材123(コア23)に用いる材料(例えば、石英)と、金属膜母材171(金属膜71)に用いる材料(例えば、金)と、は異種材料であるため、スパッタエッチング時におけるエッチングレートに差が生じる。本実施形態の場合、コア母材123に用いる材料は、金属膜母材171に用いる材料に比べてエッチングレートが大きいため、金属膜母材171に比べてコア母材123が積極的にエッチングされることになる。
【0079】
そのため、
図14(c),16(a)に示すように、コア母材123と金属膜母材171とがX方向で重なる領域のうち、第2母材123bの領域では、第2母材123bの外周縁(Y方向の両側)に金属膜母材171が露出する。これにより、第2母材123bの領域では、第2母材123bよりもY方向における幅が広い基部72が形成される。その後、さらにスパッタエッチングを継続することで、基部72は、第2母材123bから露出した部分(外周縁の角部)から除々にエッチングが行われるため、
図9に示すように近接場光生成部23bの側面23dと平行な側面74aを有する第1基部74と、側面23dと同一面上の側面75aを有する第2基部75と、が段差部78を介して形成されることになる。
【0080】
一方で、
図14(c),16(b)に示すように、第3母材123c(
図14(b)参照)の領域では、第3母材123cの外周縁から金属膜母材171が露出する。その後、さらにスパッタエッチングを継続することで、金属膜母材171は、第3母材123cから露出した部分(外周縁の角部)から内側に向けて除々にエッチングが行われる。そして、最終的には、第3母材123cが完全に除去されることで、第3母材123cに覆われていた金属膜母材171のみが残存する。これにより、第3母材123cの領域では、第3母材123cと同一幅で延びる延在部73が形成される。この際、第3母材123cから露出した金属膜母材171が、外周縁の角部から内側に向けて除々にエッチングされるため、延在部73のうち、第3母材123cにより最後まで覆われていた部分が、頂部77を有する突起部76として残存することになる。
以上により、第1クラッド母材124a(第1クラッド24a)上に、金属膜71及びコア23が一括して形成される。
【0081】
図17は
図14(c)のI−I線に相当する断面図である。
次に、
図17(a)に示すように、コア23(コア母材123)を覆うように遮光膜27を形成する(遮光膜形成工程)。具体的には、コア23の側面23dにおける近接場光生成部23bに相当する領域に、遮光膜27が残存するようにパターニングする。
そして、
図17(b)に示すように、コア23及び遮光膜27を覆うように、第2クラッド24bを形成する(第2クラッド形成工程)。その後、CMP等で第2クラッド24bの表面を研磨して、平坦面に形成する。そして、第2クラッド24b上に再生素子22を形成する。これにより、基板120上に記録素子21、近接場光発生素子26、及び再生素子22が形成される。
【0082】
続いて、基板120をY方向に沿ってダイシングして、一方向(Y方向)に沿って複数のスライダ20が連なった状態のバー(不図示)を形成する。その後、ダイシングしたバーの側面(切断面)を研磨する(研磨工程)。これにより、基板120とともに近接場光発生素子26におけるZ方向の両端面が平坦面に形成される。
【0083】
その後、各スライダ20ごとの大きさになるようにバーをZ方向に沿って切断する(スライダ工程)。
最後に、スライダ20の上面にレーザ光源29を搭載する。具体的には、半導体レーザチップ44が、レーザ光Lの出射側端面を下方に向けた状態で、かつコア23の台形部41の上端面41aに対向するように配置する。
以上により、上述した近接場光発生素子26を有する記録再生ヘッド2が完成する。
【0084】
このように、本実施形態では、金属膜71の基部72からコア23よりも下方に延びる延在部73を形成し、この延在部73に頂部77を有する突起部76を形成する構成とした。
この構成によれば、延在部73に突起部76を形成することで、金属膜71の基部72で励起された表面プラズモンが金属膜71上を伝播し、突起部76の頂部77において光強度の強い近接場光Rとなる。そのため、Z方向から見てコア23との界面の幅よりも狭い近接場光Rを発生させることができる。
そして、本発明の情報記録再生装置1(記録再生ヘッド2)は、上述した近接場光発生素子26を備えているので、情報の記録再生を正確且つ高密度に行うことができ、高品質化を図ることができる。
【0085】
また、コア23の側面23dを覆うように遮光膜27を形成することで、コア23に入射したレーザ光Lは、クラッド24側に漏れることなく、遮光膜27とコア23との界面で反射されながら伝播する。これにより、レーザ光を効率的に金属膜71に入射させることができ、近接場光Rの発生効率を向上できる。
【0086】
しかも、本実施形態では、コア23と金属膜71とを一括してパターニングする際に、コア23と金属膜71との構成材料の違いに起因するエッチングレートの差を利用して突起部76を形成する構成とした。
この構成によれば、エッチング時間の管理のみで金属膜71を微細パターンに形成することができるため、コア23や金属膜71の微細パターンの形成に高価な装置を用いる必要がない。これにより、製造コストの増加を抑制した上で、近接場光Rのスポットサイズを縮小できる。
また、コア23と金属膜71とを一括してパターニングすることで、コア23と金属膜71とをそれぞれ別工程でパターニングする場合と異なり、金属膜71とコア23とを精度良く位置決めすることができる。よって、コア23の下端側まで伝播したレーザ光Lを漏れなく金属膜71の基部72に入射させることができるので、近接場光Rの発生効率を向上させることができる。
さらに、コア23よりも下方に延びる延在部73に突起部76を形成することで、コア23の形状やコア23との位置精度に関わらず、延在部73(突起部76)のみを所望の形状に形成できるため、製造が容易であり、また設計の自由度を向上させることもできる。
【0087】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図18は、第2実施形態における記録再生ヘッドの前側を拡大した断面図である。なお、以下の説明では、上述した第1実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、説明は省略する。本実施形態では、コア23の下端側を2層構造とした点で上述した第1実施形態と相違している。
図18に示すように、本実施形態の記録再生ヘッド202(近接場光発生素子26)におけるコア223の下端側は、Z方向から見て三角形状の第1コア223aと、第1コア223aを覆うように形成された第2コア223bと、で構成されている。この場合、第1コア223aは、上述した第1実施形態のコア23と同様の構成からなり、上端側がスライダ20の上面と面一に形成され、外部に向けて露出している。一方で、第1コア223a(近接場光生成部23b)の下端側は、スライダ20のABS20cよりも上方に位置しており、クラッド24により覆われて、外部には露出していない。
【0088】
第2コア223bは、Y方向において、第1コア223a及び金属膜71を覆うように形成されている。そのため、Z方向から見て、第2コア223bにおけるY方向の外側端部が、第1基部74の外側端部よりも外側に位置することになる。すなわち、本実施形態のコア223全体のY方向における幅は、第1基部74の幅よりも広く形成されている。
また、第2コア223bは、Z方向において、第1コア223aの下端側を覆うように形成され、第1コア223aとともに光束集光部23aの下端側、及び近接場光生成部23bを構成している。さらに、第2コア223bは、第1コア223aの下端側よりも下方に向けて延びている。具体的に、第2コア223bは、遮光膜27と金属膜71との間から金属膜71の延在部73を覆うように延在しており、スライダ20のABS20cと面一に形成されて外部に露出している。
【0089】
なお、第2コア223bの形成領域は、上述した範囲に限られず、第1コア223a全体を覆うように形成してもよく、また下端位置を第1コア223aの下端位置と同位置に形成してもよい。
【0090】
また、第2コア223bの製作は、
図19に示すように、上述した第2パターニング工程(
図16参照)と遮光膜形成工程(
図17参照)との間で、第1コア223a(コア母材123)及び金属膜71を覆うように第2コア223bとなるコア母材をパターニングすることで形成できる。なお、
図19は、
図16に相当する断面図である。
【0091】
この構成によれば、第1コア223aを覆うように第2コア223bを形成することで、コア223全体(第1コア223a及び第2コア223b)のY方向における幅を、金属膜71のY方向における幅に比べて広く形成できる。そのため、コア23内を伝播するレーザ光Lの伝播効率の低下を抑制した上で、近接場光Rのスポットサイズの縮小化を図ることができる。これにより、光量を確保した上で、近接場光Rのスポットサイズを縮小できるので、ディスクDをより局所的に加熱することができる。
【0092】
なお、本発明の技術範囲は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、上述した実施形態で挙げた構成等はほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
例えば、上述の実施形態では、記録再生ヘッドを浮上させた空気浮上タイプの情報記録再生装置を例に挙げて説明したが、この場合に限られず、ディスク面に対向配置されていればディスクと記録再生ヘッドとが接触していても構わない。つまり、本発明の記録再生ヘッドは、コンタクトスライダタイプの記録再生ヘッドであっても構わない。この場合であっても、同様の作用効果を奏することができる。
また、各実施形態を適宜組み合わせても構わない。
【0093】
また、上述した第1パターニング工程において、コア23の残存部60を形成する方法について説明したが、残存部60を残さずにコア23の形成領域以外のコア23を全て除去しても構わない。
さらに、上述した実施形態では、第1コア54及び第2コア55の2層によりコア23を構成したが、これに限らず3層以上で構成しても構わない。
【0094】
また、上述した実施形態では、第1パターニング工程及び第2パターニング工程によりコア23及び金属膜71の形状を調整する場合について説明したが、これに限らず、金属膜71が所望の外形になった時点で、コア23のみをエッチングしてコア23の外形を調整することも可能である。この方法を以下に詳述する。
【0095】
図20,21は、近接場光発生素子の他の製造方法を説明するための工程図であって、
図17に相当する断面図である。
具体的には、
図20に示すように、上述した第2パターニング工程と同様に、コア母材123及び金属膜母材171をエッチングして、金属膜母材171をY方向において所望の幅になるように形成する。なお、
図20では、コア母材123におけるY方向の両側面と、金属膜母材171におけるY方向の両側面と、がほぼ面一になった時点でエッチングを停止している。
次に、
図21に示すように、フッ酸(HF)等を用いたウェットエッチングを行い、コア母材123のみをエッチングする(第3パターニング工程)。これにより、コア母材123のみの外形が縮小される。なお、
図21では、
図20(b)に示す第3母材123cが完全に除去されるまで、エッチングを継続する。
【0096】
この構成によれば、コア23及び金属膜71をそれぞれ所望の外形に形成することができるため、近接場光Rのスポットサイズを所望の大きさに調整することができる。なお、この際、第2パターニング工程におけるエッチング時間を管理することで、
図20に示す状態に限らず、金属膜71を所望の外形に形成した後、第3パターニング工程においてコア23のみの外形を調整できる。
【0097】
また、上述した実施形態では、本発明の記録再生ヘッド2をディスクDに対して垂直な記録磁界を与える垂直磁気記録方式に採用する場合について説明したが、これに限らず、ディスクDに対して水平な記録磁界を与える面内記録方式に採用しても構わない。
【0098】
また、上述した実施形態における近接場光発生素子26(
図6等参照)では、Z方向において金属膜71がコア23における近接場光生成部23bのみと重なるように形成したが、金属膜71の形成範囲は、少なくとも頂部77が外部に露出していれば、これに限られない。例えば、コア23のZ方向の全域(光束集光部23a及び近接場光生成部23b)に亘って金属膜71を形成しても構わない。
但し、光束集光部23aと重なる領域にも金属膜71が形成されていると、光束集光部23aを伝播するレーザ光Lが金属膜71で吸収されて損失となり、レーザ光Lの伝播効率が低下する虞がある。これに対して、上述した実施形態のように、近接場光生成部23bに相当する領域にのみ金属膜71を形成することで、近接場光生成部23bまではコア23とクラッド24との間でレーザ光Lを全反射条件で伝播させることができる。そのため、より多くのレーザ光Lを近接場光生成部23bまで導くことができ、レーザ光Lの伝播効率を向上できる。