(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記本体部は、筒状の部材であって、その一端と他端との間で曲がっているガイドパイプを備えていることを特徴とする請求項1、2または3記載の内視鏡挿入補助器具。
前記本体部は、前記貫通孔が形成された、該貫通孔の中心軸が該貫通孔の一端と他端との間での曲がった状態となるように変形可能な外殻部材と、該外殻部材の姿勢を保持する姿勢保持手段とを備えていることを特徴とする請求項1または2記載の内視鏡挿入補助器具。
【背景技術】
【0002】
従来、経口内視鏡(いわゆる胃カメラ、以下単に内視鏡という)を利用した胃内部の検査や治療が行われている。
内視鏡は、画像や照明光を送受信するための光ファイバーや、検査治療器具を出し入れしたり、空気や液体を供給吸引したりするためのパイプ、先端部を動かすためのワイヤー等が組み込まれたシャフト(ファイバースコープ)を備えている。そして、胃内部にこのシャフトを入れることによって、内視鏡による胃内部の検査や治療が可能となるのである。
【0003】
かかる内視鏡を利用した検査や治療は、救急外来を受診した患者の治療では非常に有効な手段として使用されている。
例えば、救急外来を受診した患者は、救急医の診察後、消化管出血(胃潰瘍や十二指腸潰瘍や胃癌や食道静脈瘤や胃静脈瘤など)と診断されれば、消化器内視鏡医(内視鏡が専門の医師、以下単に内視鏡医という)による緊急内視鏡検査・治療が施行される。
そして、現在の内視鏡技術では、消化管出血が生じていても、出血部位が確認できればほぼ止血できるので、出血部位の確認同定を迅速に行うことが、患者を迅速に治療(止血)するうえで重要である。
【0004】
消化管出血が生じている場合において、出血部位の確認は、出血部位が露出していれば容易である。
しかし、内視鏡検査の基本姿勢である左側臥位に患者の姿勢を保持した場合には、胃体部〜穹隆部が重力の方向となる。このため、消化管出血を起こしている場合には、この部位に出血した血液が溜まることになる。すると、胃体部〜穹隆部に出血部位が存在している場合には、血液によって出血部位が覆われてしまい、そのままでは出血部位を内視鏡によって確認できない。
【0005】
溜まっている血液が凝血していなければ、内視鏡の吸引操作にて血液を吸引除去すれば、視野を確保でき出血部位が同定可能である。
しかし、出血からある程度時間が経過して、血液が凝固して凝血塊となっていたり半ゲル状となっていた場合には、これらの凝固した血液は内視鏡では吸引除去できない可能性がある。すると、凝固した血液に出血部位が覆われている場合には、出血部位が確認できない。
かかる場合には、出血点を確認・同定するために、患者の姿勢を変換して、胃内の凝血塊を移動させることが行われる。具体的には、左側の胃内凝血塊(例えば、胃体部〜穹隆部に存在する凝血塊)を右側に移動させるために、患者を右側臥位にすることが行われる。
【0006】
しかるに、左側臥位で内視鏡検査をしていた状態から患者を右側臥位にすると、患者は内視鏡医に背をむける姿勢となり、患者の口が内視鏡医に対して反対側を向いてしまう。すると、左側臥位で検査していた状態では患者に内視鏡を挿入できないので、内視鏡医が患者の左側から右側に移動するとともに、内視鏡本体や光源も患者の右側まで移動させなければならなくなる。
【0007】
ここで、左側臥位(基本姿勢)での内視鏡検査では、内視鏡医は、左手に内視鏡操作部(各種ボタンやレバー)を持ち、右手で内視鏡のシャフト(管の部分)を持って、内視鏡を挿入していく。この時、左手のレバー操作で、内視鏡先端の上下・左右方向を操作し方向を定める。そして、右手でシャフトを押し込んでいき、シャフトの先端を食道から胃へと進めていく。
【0008】
一方、右側臥位での内視鏡検査では、内視鏡医の内視鏡挿入方法は、左側臥位の場合とは全く異なった方法で内視鏡を操作しなければならなくなる。具体的には、右手にアングルレバー、左手にシャフトを持って内視鏡を操作しなければならなくなる。
左側臥位の場合と同様に、左手にアングル・右手にシャフトを持って内視鏡を操作してもよいが、この場合には、左右逆の画像での治療となってしまう。この状態は、内視鏡医にとって内視鏡の操作が非常に困難な状態である。
つまり、基本姿勢である左側臥位とは逆の右側臥位とした場合には、内視鏡医による内視鏡操作が非常に困難な状態となり、出血部位の同定やその止血治療に通常よりも時間が掛かってしまう上、その精度も低下してしまう。
【0009】
吐血などの消化管出血が疑われる救急患者の全身状態は、出血量により左右される。多量出血の場合は、血圧低下や呼吸状態の悪化・出血による重症貧血で意識混濁など、全身状態は不良であることが多いので、緊急内視鏡止血処置では、速やかな治療の開始、迅速な止血処置が要求される。
そして、緊急内視鏡止血処置では、上述したような右側臥位における内視鏡よる検査治療を迅速に行うことが要求されるため、右側臥位でも左側臥位と同等程度の検査治療ができるように、内視鏡医による内視鏡の操作性を向上させることが必要である。
【0010】
従来、内視鏡による検査や治療を容易にする補助器具として、マウスピースやガイドチューブなどが開発され使用されている(例えば、特許文献1〜4)。
しかし、従来のマウスピースは、ファイバースコープを患者が噛んでファイバースコープの操作ができなくなることなどを防ぐために設けられているに過ぎない。
また、従来のガイドチューブは、人の体内に挿入されている部位を確実に案内するために使用されるものにすぎない。
つまり、いずれの器具も患者の姿勢を変更した場合において、内視鏡医による内視鏡の操作性の低下を防ぐものではない。
【0011】
現在のところ、患者が基本姿勢(左側臥位)と異なる場合(右側臥位)における、内視鏡医による内視鏡の操作性を向上させる補助器具はなく、かかる補助器具の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記事情に鑑み、検査を受ける患者の姿勢が変化しても、内視鏡医による内視鏡の操作性が低下することを防ぐことができる内視鏡挿入補助器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1発明の内視鏡挿入補助器具は、患者がくわえているマウスピースに挿入される内視鏡を、口腔外において支持する補助器具であって、内視鏡を挿入しうる内径を有する
屈曲した貫通孔を備えた本体部を備えて
いることを特徴とする。
第2発明の内視鏡挿入補助器具は、第1発明において、前記本体部が移動しないように固定する保持部を備えていることを特徴とする。
(固定型)
第3発明の内視鏡挿入補助器具は、第2発明において、前記本体部に形成されている貫通孔が曲がっており、前記保持部は、内視鏡を前記本体部の貫通孔に挿入したときに、内視鏡から加わる力によって前記本体部が移動しないように固定するものであることを特徴とする。
第4発明の内視鏡挿入補助器具は、第1、第2または第3発明において、前記本体部は、筒状の部材であって、その一端と他端との間で屈曲されているガイドパイプを備えていることを特徴とする。
第5発明の内視鏡挿入補助器具は
、第4発明において、前記本体部は、前記ガイドパイプと、該ガイドパイプ内に内視鏡が挿入された際に、該内視鏡から該ガイドパイプに加わる力を支持する支持部材とを備えており、該支持部材は、前記内視鏡から前記ガイドパイプに加わる力を支持する、凹んだ支持曲面を備えていることを特徴とする。
第6発明の内視鏡挿入補助器具は
、第4または第5発明において、前記ガイドパイプが、U字状に形成された筒状部材であることを特徴とする。
(可動型)
第7発明の内視鏡挿入補助器具は、第1または第2発明において、前記本体部は、前記貫通孔が形成された、該貫通孔の中心軸が該貫通孔の一端と他端との間での曲がった状態となるように変形可能な外殻部材と、該外殻部材の姿勢を保持する姿勢保持手段とを備えていることを特徴とする。
第8発明の内視鏡挿入補助器具は、第7発明において、前記外殻部材は、複数の筒状部材から形成されており、該複数の筒状部材は、全ての筒状部材の中心軸が同一平面内に位置し、かつ、全ての筒状部材の中心軸が同一平面に位置した状態のまま隣接する筒状部材同士が互いに屈曲可能となるように、連結されていることを特徴とする。
第9発明の内視鏡挿入補助器具は
、第8発明において
、筒状部材は、前記円筒状の内面を有する一対の壁部材を備えており、該一対の壁部材は、互いに接近離間可能であって、互いに接近した状態では両者の間に前記貫通孔が形成され、互いに離間させると両者の間に内視鏡を配置しうるように、構成されていることを特徴とする。
(マスクタイプ)
第10発明の内視鏡挿入補助器具は、第
2発明において、前記本体部が筒状の部材であり、前記保持部が、前記本体部の一端が取り付けられたマウスピースと、該マウスピースが固定された、患者の顔面を覆うように取り付けられるマスクプレートと、該マスクプレートを患者の頭部に固定する固定手段とを備えており、前記マスクプレートは、前記マウスピースの素材と同等以上の強度を有する素材によって形成されていることを特徴とする。
第11発明の内視鏡挿入補助器具は、第10発明において、前記本体部の一端が、前記保持部の前記マウスピースに対して、着脱可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1発明によれば、内視鏡のシャフトを、本体部に形成されている貫通孔に挿入してからマウスピースに挿入すれば、内視鏡のシャフトを曲げた状態で保持できる。すると、内視鏡のシャフトの曲がりを調整すれば、患者の姿勢に係わらず、一定の場所から内視鏡医が内視鏡を操作できるので、患者の姿勢によって内視鏡医による内視鏡の操作性が低下することを防ぐことができる。
第2発明によれば、内視鏡のシャフトを本体部に形成されている貫通孔に挿入したときに内視鏡のシャフトから本体部に加わる力を保持部によって支持させることができるので、この力によって本体部が移動することを防ぐことができる。
(固定型)
第3発明によれば、本体部に形成されている貫通孔が曲がっており、しかも、本体部は、保持部によって内視鏡が挿入されても移動しないように保持されている。このため、本体部をその貫通孔の一端開口部がマウスピースの貫通孔と対向するように配置すれば、内視鏡医が患者の口が向いている方向と異なる位置にいても、内視鏡のシャフトを患者がくわえているマウスピースに挿入することができる。すると、患者の姿勢に係わらず、一定の場所から内視鏡医が内視鏡を操作することも可能となるので、患者の姿勢によって内視鏡医による内視鏡の操作性が低下することを防ぐことができる。
第4発明によれば、ガイドパイプに内視鏡のシャフトを挿入して、ガイドパイプに沿ってシャフトを移動させれば、シャフト先端を患者がくわえているマウスピースに案内することができる。また、貫通孔を筒状の部材によって形成するので、本体部を簡単な構造とすることができる。
第5発明によれば、支持曲面が患者と対向するように本体部を配置すれば、支持部材の支持曲面によって内視鏡のシャフトから加わる力を保持することができるので、ガイドパイプの強度を低くすることができる。そして、ガイドパイプとして可撓性を有する部材を使用すれば、貫通孔の一端開口部と患者がくわえているマウスピースの貫通孔との相対的な位置を簡単に調整できる。
第6発明によれば、患者が右側臥位の状態でも、患者が左側臥位の状態と同じように内視鏡を操作できるので、内視鏡医による内視鏡の操作性の低下を防ぐことができる。
(可動型)
第7発明によれば、外殻部材の曲がりを調整した後、姿勢保持手段によって外殻部材の曲がりを固定すれば、外殻部材の貫通孔を、所定の曲がりを有する貫通孔とすることができる。このため、本体部をその貫通孔の一端開口部がマウスピースの貫通孔と対向し、その他端開口部が内視鏡医を向くようにすれば、患者の姿勢に係わらず、一定の場所から内視鏡医が内視鏡を操作することが可能となる。よって、患者の姿勢によって内視鏡医による内視鏡の操作性が低下することを防ぐことができる。しかも、内視鏡に外殻部材を取り付けておけば、外殻部材を変形させることによって、内視鏡を患者に挿入したまま患者の姿勢を変更させても、その姿勢変更に合わせて内視鏡を曲げることができる。すると、患者の姿勢を変更する度に内視鏡の挿入を行う必要がないので、内視鏡による検査治療を迅速に行うことが可能となる。
第8発明によれば、隣接する筒状部材同士を屈曲すれば、外殻部材の貫通孔を曲がった状態とすることができる。また、外殻部材は、筒状部材同士を互いに屈曲可能に連結しているだけであるから、外殻部材の構造が簡単になるし、各筒状部材の剛性も高くすることができる。
第9発明によれば、筒状部材における一対の壁部材同士を離間させれば、外殻部材の貫通孔内に内視鏡のシャフトを入れることができるので、内視鏡のシャフトを患者に挿入したままでも、外殻部材の貫通孔に内視鏡のシャフトを収容とすることができる。すると、検査や治療を開始した後、患者の姿勢を変更する必要が生じた場合でも、外殻部材を取り付ければ、内視鏡を患者に挿入したまま患者の姿勢を変更することが可能となる。
(マスクタイプ)
第10発明によれば、本体部がマウスピースに固定されているので、内視鏡のシャフトを確実に患者の口に案内することができる。また、強度の高いマスクプレートを患者の顔面に取り付けるので、内視鏡のシャフトから本体部に加わる力を、あご骨などに支持させることができる。よって、内視鏡による検査中でも、本体部を安定した状態で保持することができる。
第11発明によれば、本体部がマウスピースに対して着脱可能であるから、通常は保持部のみを患者に装着しておき、必要な場合にのみ本体部を使用することができる。すると、患者の姿勢を変更したときに、本体部を着脱するだけで患者の姿勢変更後の検査や治療を行うことができるので、姿勢変更作業が容易になり、姿勢変更後において迅速に検査治療を開始することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の内視鏡挿入補助器具は、人の口から体内に挿入する内視鏡によって検査や治療を行う際に使用する補助器具であって、右側臥位や仰向け等、左側臥位以外の状態にある患者に対して、内視鏡を使用した検査や治療を行いやすくするようにできることに特徴を有している。
ここで、右側臥位の状態とは、右腕が下になるように患者が横になった状態(
図1参照)を意味している。この状態は、通常、内視鏡検査を行うときに患者が取る左側臥位(
図5参照)、つまり、左腕が下になるように患者が横になった状態と逆向きの姿勢である。
【0018】
本実施形態の内視鏡挿入補助器具10について説明する。
図1に示すように、本実施形態の内視鏡挿入補助器具10は、本体部11と、本体部11に連結された保持部15とを備えている。
【0019】
まず、本体部11は、筒状に形成された部材であり、その一端と他端との間でU字状に屈曲されたものである。この本体部11には、その一端と他端との間をその軸方向に沿って貫通する貫通孔11hが形成されている。つまり、本体部11には、その一端と他端との間を連通する、U字状に曲がった貫通孔11hが形成されているのである。
この本体部11に形成されている貫通孔11hは、その内径Dが、内視鏡のシャフトSを挿通し得る大きさに形成されている。具体的には、貫通孔11hの内径Dは、シャフトSを挿入したときに、シャフトSの表面と貫通孔11hの内面との間に3〜5mm程度の隙間が形成されるように形成されている。現在、口から体内に挿入する内視鏡では、そのシャフトSの外径は、大体9〜12mm程度であるので、貫通孔11hの内径Dは、12〜17mmであればよい。
【0020】
保持部15は、本体部11が移動しないように固定するための部材である。具体的には、本体部11の貫通孔11hに内視鏡のシャフトSを挿通したときに、シャフトSから本体部11に加わる力を支持し、この力によって本体部11が移動しないように保持するものである。
保持部15は、本体部11が移動しないように保持できるものであれば、構造はとくに限定されない。例えば、保持部15を、本体部11に一端が固定されたアングル等の棒状材料と、この棒状材料を診察台や手術台などに固定する公知の固定手段によって構成することができる。
【0021】
つぎに、本実施形態の内視鏡挿入補助器具10の使用について説明する。
まず、通常の内視鏡検査等では、まず、マウスピースMをくわえた患者がベッドBの上に左側臥位で寝かされる。すると、内視鏡医は、左側臥位の患者の正面から内視鏡を操作して、シャフトSの挿入および検査を行う(
図5)。
【0022】
左側臥位で検査できない部位が見つかった場合には、一旦内視鏡のシャフトを抜いた後、患者は左側臥位から右側臥位に姿勢が変更される。すると、内視鏡医は、右側臥位の患者の背面に位置した状態となる。
患者が右側臥位になると、本実施形態の内視鏡挿入補助器具10の本体部11が、患者の顔の正面に位置するように配置され、保持部15によってベッドBなどに固定される。より具体的には、本体部11を、その貫通孔11hの一端開口部が患者がくわえているマウスピースMの貫通孔Mhと対向するように配置する。
【0023】
上記のごとく本体部11を配置すれば、本体部11はU字状に曲がっておりその貫通孔11hもU字状に曲がっているので、本体部11の他端開口部は、右側臥位の患者の背面に開口した状態となる。つまり、本体部11の他端開口部が、右側臥位の患者の背面に位置する内視鏡医を向いた状態となる。
【0024】
この状態で、内視鏡医が本体部11の他端開口部からシャフトSを挿入すれば、U字状に曲がった貫通孔11hに案内されてシャフトSを移動させることができるので、シャフトSを本体部11の一端開口部まで案内することができる。すると、本体部11の一端開口部は、患者がくわえているマウスピースMの貫通孔Mhと対向するように配置されているので、シャフトSをマウスピースMの貫通孔Mhを通して患者の体内に挿入することができる(
図1)。
【0025】
つまり、本実施形態の内視鏡挿入補助器具10を使用すれば、内視鏡医は、左側臥位の患者に対する検査治療と同じ状態で、右側臥位の患者に対しても検査治療を行うことができる。言い換えれば、患者が右側臥位の状態でも、患者が左側臥位の状態と同じように内視鏡を操作できるので、内視鏡医が内視鏡を操作する際の操作性の低下を防ぐことができる。
【0026】
また、シャフトSが本体部11の貫通孔11h内を通過するときには、シャフトSを貫通孔11hの形状に沿って曲げなければならない。そして、シャフトSが本体部11の貫通孔11h内に配置されている状態(つまり、検査治療中)でも、シャフトSを貫通孔11hの形状に沿って曲げた状態で保持しておかなければならない。すると、シャフトSを曲げる力やシャフトSを曲げておく力の反力(シャフトSが真っ直ぐになろうとする弾性力等)がシャフトSから本体部11に加わる。
しかし、本実施形態の内視鏡挿入補助器具10では、これらの反力は保持部15によって支持されるので、この反力によって本体部11が移動することを防ぐことができる。つまり、本体部11の貫通孔11h内にシャフトSが挿入された状態でも、本体部11を、その一端開口部を、患者がくわえているマウスピースMの貫通孔Mhと対向するように配置した状態に維持できるので、右側臥位の患者に対しても確実にシャフトSをマウスピースMに挿入することができる。
【0027】
なお、内視鏡のシャフトSを挿通し易くし本体部11が受ける反力を小さくする上では、本体部11の貫通孔11hの内面にシャフトSとの間の摩擦を小さくする処理が施されていることが好ましい。例えば、貫通孔11hの内面に、テフロン(登録商標)加工のように、内視鏡のシャフトSとの間の摩擦係数が小さい素材の層を設ける加工等を施しておけば、シャフトSの先端やシャフトSの側面を、貫通孔11h内面に沿ってスムースに滑らせて移動させることができる。すると、内視鏡のシャフトSを患者の体内に挿入する作業が容易かつ迅速に行うことができるので、検査治療を開始するまでの時間や、検査治療時間を短縮できる。しかも、シャフトSから本体部11に加わる力も軽減されるので、本体部11や保持部15の強度を弱くでき、本体部11や保持部15の軽量化が可能となる。
【0028】
また、本体部11は、その一端がマウスピースMに取り付けることができるようになっていてもよい。例えば、本体部11の一端の外径が、マウスピースMの貫通孔Mhよりもわずかに小さくなっていれば、その一端をマウスピースMの貫通孔Mhに挿入することができる。すると、内視鏡による検査治療の間に、本体部11とマウスピースMとの相対的な位置がズレることを防ぐことができる。
とくに、本体部11とマウスピースMのズレを防ぐのであれば、本体部11の一端にマウスピースMを設けてもよい。
【0029】
(本体部11の他の形状)
また、上記例では、本体部11がU字状に屈曲された筒状に形成された部材である場合を説明した。しかし、本体部11は必ずしもU字状である必要はなく、本体部11の屈曲割合を種々選択可能であり、本体部11は、L字状に屈曲したものや、U字状とL字状の中間的ぐらいに屈曲させたもの、L字状よりも曲げ角度が小さいもの等でもよい。
例えば、仰向けにしか寝させることができない患者の場合には、仰向けに寝させた患者に内視鏡のシャフトSを挿入しなければならない。しかし、L字状に屈曲した本体部11を使用すれば、患者が仰向けの状態でも、患者が左側臥位の状態と同じように内視鏡医が内視鏡を操作できる。
同様に、患者の姿勢に適した本体部11を使用すれば、患者の姿勢にかかわらず、患者が左側臥位の状態と同じように内視鏡医が内視鏡を操作できる。
【0030】
上記例では、本体部11が筒状に形成された部材である場合を説明したが、本体部11は、屈曲した貫通孔を有するものであればよく、とくに限定されない。例えば、ブロック状の部材に貫通孔を形成したものでもよく、その貫通孔の一端開口部を、患者がくわえているマウスピースMの貫通孔Mhと対向するように配置した状態で、その他端開口部を左側臥位の状態において内視鏡医が通常内視鏡を操作する位置と対向するように配置できればよい。
しかし、本体部11を筒状の部材で形成すれば、本体部11を簡単な構造とすることができる点で好ましい。
【0031】
(他の実施形態)
上述した本体部11の素材はとくに限定されず、内視鏡のシャフトSから加わる反力によって破損しない程度の強度を有するものであればよく、とくに限定されない。
しかし、シャフトSから加わる反力が大きくなるのは、シャフトSを屈曲させる部分であるから、
図2に示すように、本体部11を、屈曲した貫通孔を有するガイドパイプ12と、このガイドパイプ12において屈曲している部分を支持する支持部材13とから構成してもよい。かかる支持部材13は、例えば、
図2に示すように、支持部材13として、ガイドパイプ12を収容する貫通孔を有し、その貫通孔が凹んだ支持曲面13aを有するものを使用することができる。
【0032】
かかる支持部材13を検査治療において使用する場合には、支持部材13の支持曲面13aがマウスピースMをくわえている患者側から凹んだ状態となるように本体部11を配置する。そして、支持曲面13aにガイドパイプ12の外面が接触するように配置する。例えば、ガイドパイプ12として可撓性を有する部材(例えば、蛇腹管等)を使用する場合であれば、支持曲面13aに沿って屈曲した状態となるようにガイドパイプ12を配置する。
すると、内視鏡のシャフトSからガイドパイプ12に加わる力を支持部材13によって支持させることができるので、ガイドパイプ12の強度を低くすることも可能となる。つまり、ガイドパイプ12の強度をシャフトSから加わる力を支持できる強度としなくても良くなる。よって、ガイドパイプ12として使用する部材やその素材の自由度が高くなるから、本体部11を軽量化でき製造コストを抑えることも可能となる。
そして、ガイドパイプ12として可撓性を有する部材を使用すれば、ガイドパイプ12の一端と患者がくわえているマウスピースMとの相対的な位置や、ガイドパイプ12の他端と内視鏡医との相対的な位置を微調整することが可能となり、本実施形態の内視鏡挿入補助器具10を使用した検査や治療を迅速に開始することができる。
【0033】
(可動型本体部)
また、上述した支持部材13では、患者が姿勢を変更した場合において、内視鏡のシャフトSの曲がり具合を変化させる場合には、ガイドパイプ12および支持部材13を変更しなければならない。つまり、患者が姿勢を変更する度に、内視鏡のシャフトSを患者から一端外して、別のガイドパイプ12および支持部材13にシャフトSを挿通させた後、再度シャフトSを患者に挿入しなければならない。
【0034】
しかし、可撓性を有するガイドパイプ12を使用した場合において、支持部材13として、
図7に示すような外殻部材14を使用すれば、患者の姿勢を変更する度に内視鏡のシャフトSの取り外しおよび挿入を行う必要がないので、内視鏡による検査治療を迅速に行うことが可能となる。
【0035】
以下、外殻部材14を説明する。
図7に示すように、外殻部材14は、その両端間(
図7(A)では左右端間)を貫通する貫通孔を備えた筒状の部材である。この外殻部材14は、その軸方向(
図7(A)では左右方向)を貫通する貫通孔を備えた部材である、複数の筒状部材14aを連結して形成されている。
なお、
図7において、符号14dは、
図1および
図2に示す保持部15に外殻部材14を取り付ける公知の部材である。
【0036】
図7に示すように、この複数の筒状部材14aは、隣接する筒状部材14a同士が、互いに屈曲可能となるように連結されている。具体的には、複数の筒状部材14aは、全ての筒状部材14aの中心軸が同一平面内に位置し、かつ、全ての筒状部材14aの中心軸が同一平面に位置した状態のまま隣接する筒状部材14a同士が互いに屈曲可能となるように連結されている。
しかも、外殻部材14が真っ直ぐになった状態(
図7(A)の状態)において、全ての筒状部材14aの貫通孔の中心軸が同軸上(
図7(A)におけるCL上、以下、外殻部材14の中心軸CLという)に並ぶように連結されている。
【0037】
なお、複数の筒状部材14aを連結する方法は、上記のごとき状態(全ての筒状部材14aの中心軸が同一平面内に位置する状態)を維持したまま、隣接する筒状部材14a同士を互いに屈曲させることができるのであれば、とくに限定されない。
例えば、
図7(A)に示すように、隣接する筒状部材14a同士をその軸方向と直交する軸(連結軸)で連結し、かつ、全ての連結軸が互いに平行であって外殻部材14の中心軸CLに対して同じ側に位置するように連結する。すると、全ての筒状部材14aの中心軸が同一平面に位置した状態のまま、隣接する筒状部材14a同士を互いに屈曲させることができる。
【0038】
また、外殻部材14には、外殻部材14の姿勢、つまり、曲がりを保持する姿勢保持手段を備えている。この姿勢保持手段は、内視鏡のシャフトSから外殻部材14を真っ直ぐにしようとする力が加わっても、外殻部材14の姿勢が変化しないように保持できるのであれば、どのような方法も用いても良い。
【0039】
例えば、
図7(A)に示すように、隣接する筒状部材14a同士をその軸方向と直交する連結軸で連結した場合であれば、姿勢保持手段として、ワイヤー14wと、このワイヤー14wの巻き取り繰り出しを行うことができ、しかも、ワイヤー14wの繰り出し量を保持できるウインチやリールのような巻上装置14fを採用することができる。
かかるワイヤー14wと巻上装置14fを使用する場合には、
図7(A)に示すように、外殻部材14の一端に位置する筒状部材14aに巻上装置14fを取り付け、外殻部材14の他端に位置する筒状部材14aにブラケットなどを介してワイヤー14wの先端を固定する。また、ワイヤー14wが外殻部材14の中心軸CLと同一平面状に位置するように配置する。すると、外殻部材14を所定の姿勢として(
図7(B)参照)、この状態でワイヤー14wが張った状態となるまで巻上装置14fによってワイヤー14wを巻き取り、ワイヤー14wが張った状態を維持する。すると、ワイヤー14wの張力が内視鏡のシャフトSから外殻部材14を真っ直ぐにしようとする力に対する抵抗力となるので、外殻部材14を所定の姿勢に維持することができる。
【0040】
以上のごとき外殻部材14を使用した場合には、外殻部材14の曲がりを調整して姿勢保持手段によって曲がりを固定すれば、外殻部材14の貫通孔を、所定の曲がりを有する貫通孔とすることができる。
しかも、外殻部材14を変形させることによって、可撓性を有するガイドパイプ12とともに、内視鏡のシャフトSを曲げることができる。つまり、外殻部材14を取り付けておけば、シャフトSを患者に挿入したまま患者の姿勢を変更しても、その姿勢変更に合わせてシャフトSを曲げることができる。すると、患者の姿勢を変更する度に内視鏡のシャフトSの挿入を行う必要がなくなるので、内視鏡による検査治療を迅速に行うことが可能となる。
【0041】
さらに、姿勢保持手段として、
図7に示すような構造を有するものを使用すれば、巻上装置14fによってワイヤー14wを巻き取れば、ワイヤー14wの張力を内視鏡のシャフトSを曲げる力として利用することも可能であり、内視鏡のシャフトSを曲げる作業を容易にすることができる。
【0042】
そして、筒状部材14aを、円筒状の内面を有する一対の壁部材LP,RPによって形成し、この一対の壁部材LP,RPが、互いに接近離間可能となるようにしてもよい。この場合には、ガイドパイプ12に後から外殻部材14を取り付けることが可能となる。すると、検査や治療を開始した後、患者の姿勢を変更する必要が生じた場合でも、内視鏡を患者に挿入したまま患者の姿勢を変更しても、その姿勢変更に合わせて内視鏡を曲げることが可能となるので、好ましい。
【0043】
例えば、断面円弧状に形成された一対の壁部材LP,RPによって筒状部材14aを形成した場合には、その壁部材LP,RPにおける一端縁同士を、筒状部材14aの中心軸と平行な軸(連結軸)で連結した構造とする。この場合、壁部材LP,RPの他端縁同士が、連結軸を支点として揺動可能となるので、この他端縁同士互いに離間させれば、他端縁同士の間に隙間ができる。すると、この隙間の長さLが、ガイドパイプ12の直径よりも広ければ、この隙間を通して、筒状部材14aの貫通孔にガイドパイプ12を入れることができる。つまり、全ての筒状部材14aにおいて、壁部材LP,RPの他端縁同士を離間させれば、内視鏡を患者に挿入したままでも、ガイドパイプ12に外殻部材14を取り付けることが可能となるのである。
【0044】
なお、一対の壁部材LP,RPは、両者を接近させたときに、他端縁同士を固定する機構を備えていることが好ましい。しかし、固定する機構を備えていなくても、例えば、テープや紐などによって両者が接近させた状態で維持することは可能である。
また、一対の壁部材LP,RPは、上述したように互いに連結されていてもよいが、一対の壁部材LP,RPが完全に分離されるような構造となっていてもよい。
【0045】
さらに、上記例では、ガイドパイプ12に外殻部材14を取り付ける場合を説明したが、ガイドパイプ12を使用しない場合であれば、内視鏡のシャフトSに直接外殻部材14を取り付けてもよいのは、いうまでもない。
【0046】
(顔面固定)
また、上記例では、保持部15がベッドBなどに固定する構造を有する場合を説明したが、
図3および
図4に示すように、保持部25を介して、本体部21が人の顔面に固定できるようにしてもよい。
以下、本体部21を人の顔面に固定する内視鏡挿入補助器具20を説明する。
【0047】
図3および
図4に示すように、符号21は、筒状の部材であり、U字状に屈曲された本体部を示している。この本体部21には、上述した実施形態の本体部11と同様の構造機能を有するものを採用できる。
【0048】
図3および
図4に示すように、符号26はマウスピースを示している。このマウスピース26には、前記本体部21の一端が連結されている。そして、マウスピース26と本体部21の他端との間には、両者間を連通する貫通孔が形成されている。つまり、両者間を貫通する屈曲した貫通孔が形成されているのである。
したがって、本体部21の他端の開口部から内視鏡のシャフトSを挿入すれば、貫通孔に案内されて、シャフトSを患者の体内に導入することができるのである。
【0049】
また、
図3および
図4に示すように、マウスピース26は、マスクプレート27に固定されている。このマスクプレート27は、マウスピース26と同じ素材によって一体形成されている。つまり、マスクプレート27は、マウスピース26に対して相対的に移動できないように連結されているのである。
しかも、マスクプレート27は、マウスピース26側に凹んだ凹面している。この凹面は、マウスピース26を患者がくわえた状態において、その凹面が患者の顔面に密着するような形状に形成されている。
【0050】
そして、
図3および
図4に示すように、マスクプレート27には、マスクプレート27を患者の頭部に固定する固定手段28が設けられている。この固定手段28は、例えば、ゴムバンドやベルト等の公知の固定手段であり、マウスピース26を患者がしっかりとくわえていなくてもマスクプレート27が外れないようにできるものである。
【0051】
以上のごとく、内視鏡挿入補助器具20は、強度の高いマスクプレート27によってマウスピース26を患者の顔面に取り付けることができる。このため、内視鏡のシャフトSを本体部21の貫通孔に挿入しても、シャフトSから本体部21に加わる力をあご骨などに支持させることができる。
よって、内視鏡を挿入する作業や内視鏡による検査治療中において、シャフトSから本体部21に力が加わっても、本体部21を安定した状態で保持することができる。
しかも、本体部21に加わる力は、マスクプレート27を介してあご骨などの大きく強度の高い骨によって支持されるので、マウスピース26が接触している歯等に加わる力を弱くすることができる。
【0052】
なお、上記例では、マウスピース26とマスクプレート27とが一体成形されている場合を説明したが、両者は相対的に移動できないように連結できればよく、必ずしも一体成形されている必要はない。一体成形しない場合には、マスクプレート27をマウスピース26の素材と同等以上の強度を有する素材によって形成することも可能となる。すると、マスクプレート27によるマウスピース26を保持する機能を向上させることができる。
【0053】
また、本体部21の一端はマウスピース26に固定されていてもよいが、本体部21の一端はマウスピース26に対して着脱可能に設けられていてもよい。この場合には、通常は保持部25のみを患者に装着しておき、必要な場合にのみ本体部21を使用することが可能となる。すると、患者の姿勢を変更した際に、本体部21を着脱するだけで、姿勢変更後の検査や治療を行うことができるので、姿勢変更作業が容易になり、姿勢変更後において迅速に検査治療を開始することができる。
【0054】
(保持部15のない実施形態)
上記実施形態では、内視鏡挿入補助器具10が、保持部15によって本体部11に加わる力を支持する場合を説明したが、必ずしも保持部15は設けなくてもよい。
例えば、本体部11を人が保持する(持っておく)だけで内視鏡のシャフトSから本体部11に加わる力を支持することができる場合であれば、保持部15のない本体部11だけの内視鏡挿入補助器具10を使用して、右側臥位の患者に対して、内視鏡のシャフトSを患者の体内に挿入することができる。
この場合には、保持部15をベッドBなどに固定しない分、内視鏡のシャフトSを患者に挿入するまでの時間を短くできるし、保持部15を固定する位置によって患者の姿勢が制限されない。また、保持部15を固定する対象がない場所でも、内視鏡挿入補助器具10を使用できるので、患者を寝かせる場所(検査や手術を行う場所)なども制限されない。
なお、内視鏡のシャフトSから本体部11に加わる力を人の力で支持することができる場合であれば、内視鏡挿入補助器具10の保持部15を人が保持して、右側臥位の患者に対して、内視鏡のシャフトSを患者の体内に挿入してもよいのはいうまでもない。