特許第5692764号(P5692764)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5692764
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】対象物検出方法及びこれを用いた装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/044 20060101AFI20150312BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   G06F3/044 126
   G06F3/041 590
【請求項の数】21
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-530543(P2013-530543)
(86)(22)【出願日】2011年6月28日
(65)【公表番号】特表2013-539126(P2013-539126A)
(43)【公表日】2013年10月17日
(86)【国際出願番号】CN2011076535
(87)【国際公開番号】WO2012041092
(87)【国際公開日】20120405
【審査請求日】2013年5月23日
(31)【優先権主張番号】201010295805.5
(32)【優先日】2010年9月29日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512197733
【氏名又は名称】シェンゼェン ビーワイディー オート アールアンドディー カンパニー リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】505327398
【氏名又は名称】ビーワイディー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BYD COMPANY LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100109449
【弁理士】
【氏名又は名称】毛受 隆典
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100123618
【弁理士】
【氏名又は名称】雨宮 康仁
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】イ、リャンファン
(72)【発明者】
【氏名】カイ、チエジュン
(72)【発明者】
【氏名】へ、バンジュン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ユン
【審査官】 田川 泰宏
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0184934(US,A1)
【文献】 米国特許第05825352(US,A)
【文献】 特開2010−061351(JP,A)
【文献】 特開2008−097609(JP,A)
【文献】 特開平07−230352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01〜048
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1個の対象物によって1つ以上の方向に生じた1個以上の感応信号を受信し、
前記感応信号中の少なくとも1個の上昇トレンド及び/又は少なくとも1個の下降トレンドをそれぞれ検出するため、受信した各感応信号を基準と比較し、
受信した各感応信号中の上昇トレンド及び/又は下降トレンドの個数に基づいて対象物の個数を特定する方法であって
前記比較するステップはさらに、
前記受信した感応信号につき、当該感応信号の感応方向に基づいて第1及び第2の初期感応値を設定し、
前記基準を前記第1及び第2の初期感応値と比較し、
前記基準と前記第1及び第2の初期感応値との比較結果に基づき、上昇トレンド又は下降トレンドが含まれているか否かを判別する、
1個以上の対象物を検出するための方法。
【請求項2】
前記比較するステップはさらに、
前記感応信号の現在値を前記基準と比較して、前記感応信号の現在値が前記基準より大きいか否かを判別するステップ、
前記感応信号の現在値が前記基準より大きく、前記感応信号の前値が前記基準以下であるならば、上昇トレンドを含む前記感応信号を特定するステップ、又は、
前記感応信号の現在値が前記基準以下であり、前記感応信号の前値が前記基準より大きければ、下降トレンドを含む前記感応信号を特定するステップより構成される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記感応信号中の上昇トレンド又は下降トレンドが前記基準に交差する交差点を特定し、
2個の隣接する前記交差点間の距離が閾値より大きいか否かを判別し、
前記距離が前記閾値より大きければ、前記上昇又は下降トレンドを備える前記2個の隣接する交差点間の信号部分を有効な信号部分と指定し、
対象物の個数を、有効な信号部分の個数に基づいて特定する、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
各感応信号は複数の感応線により生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記受信するステップはさらに、
第1の方向における第1の感応信号を受信し、
第2の方向における第2の感応信号を受信する、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記特定するステップはさらに、
前記第1及び第2の感応信号中の上昇トレンド及び/又は下降トレンドの最大数に基づいて対象物の個数を特定する、
請求項に記載の方法。
【請求項7】
タッチ装置に接触する1個以上の対象物を検出するための方法であって、
少なくとも1個の対象物によって前記タッチ装置のタッチパネル上の1つ以上の方向に生じた1個以上の感応信号を受信し、
前記受信した感応信号につき、当該感応信号の感応方向に基づいて第1及び第2の初期感応値を設定し、
前記感応信号中の少なくとも1個の上昇トレンド及び/又は少なくとも1個の下降トレンドをそれぞれ検出するため、受信した各感応信号を基準と比較し、
前記基準を前記第1及び第2の初期感応値と比較し、
前記基準と前記第1及び第2の初期感応値との比較結果に基づき、上昇トレンド及び/又は下降トレンドを検出し、
受信した各感応信号中の上昇トレンド及び/又は下降トレンドの個数に基づいて対象物の個数を特定する方法。
【請求項8】
前記比較するステップはさらに、
前記感応信号の現在値を前記基準と比較して、前記感応信号の現在値が前記基準より大きいか否かを判別するステップ、
前記感応信号の現在値が前記基準より大きく、前記感応信号の前値が前記基準以下であるならば、前記感応信号が上昇トレンドを含むと特定するステップ、又は、
前記感応信号の現在値が前記基準以下であり、前記感応信号の前値が前記基準より大きければ、前記感応信号が下降トレンドを含むと特定するステップより構成される、
請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記感応信号中の上昇トレンド又は下降トレンドが前記基準に交差する交差点を特定し、
2個の隣接する交差点間の距離が閾値より大きいか否かを判別し、
前記距離が前記閾値より大きければ、前記上昇又は下降トレンドを備える前記2個の隣接する交差点間の信号部分を有効な信号部分と指定し、
前記タッチ装置に接触した対象物の個数を、有効な信号部分の個数に基づいて特定する、
請求項に記載の方法。
【請求項10】
各感応信号は複数の感応線により生成される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
各感応信号は、音響信号を電気信号へと変換可能な音響受信器により生成される、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記受信するステップはさらに、
第1の方向における第1の感応信号を受信し、
第2の方向における第2の感応信号を受信する、
請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記特定するステップはさらに、
前記第1及び第2の感応信号中の上昇トレンド又は下降トレンドの最大数に基づいて対象物の個数を特定する、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
タッチ装置に接触する1個以上の対象物を検出するための装置であって、
少なくとも1個の対象物によって前記タッチ装置のタッチパネル上の1つ以上の方向に生じた1個以上の感応信号を検出するよう構成された検出モジュール、及び、
前記感応信号を受信し、前記受信した感応信号につき、当該感応信号の感応方向に基づいて第1及び第2の初期感応値を設定し、前記感応信号中の少なくとも1個の上昇トレンド及び/又は少なくとも1個の下降トレンドを検出するため、受信した各感応信号を基準と比較し、前記基準を前記第1及び第2の初期感応値と比較し、前記基準と前記第1及び第2の初期感応値との比較結果に基づき、上昇トレンド及び/又は下降トレンドを検出し、受信した各感応信号中の上昇トレンド及び/又は下降トレンドの個数に基づいて対象物の個数を特定するよう構成された計算モジュールを備える装置。
【請求項15】
前記タッチ装置に接触した対象物の総数を出力するよう構成された出力モジュールをさらに備える請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記計算モジュールはさらに、前記感応信号中の上昇トレンド又は下降トレンドが前記基準に交差する交差点を特定し、2個の隣接する前記交差点間の距離が閾値より大きいか否かを判別し、前記距離が前記閾値より大きければ、前記上昇又は下降トレンドを備える前記2個の隣接する交差点間の信号部分を有効な信号部分と指定し、前記タッチ装置に接触した対象物の個数を、有効な信号部分の個数に基づいて特定するよう構成されている、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記検出モジュールは、前記感応信号を生成するよう構成された複数の感応線を備える、請求項14に記載の装置。
【請求項18】
前記検出モジュールはさらに、
音響信号を送信するよう構成された送信器、及び、
前記送信器により送信された前記音響信号を受信するよう構成された受信器を備え、
前記タッチ装置が対象物により接触された後の前記音響信号に基づいて、前記受信器により感応信号が生成される、
請求項14に記載の装置。
【請求項19】
前記検出モジュールはさらに、第1の方向における第1の感応信号を受信し、第2の方向における第2の感応信号を受信するよう構成されている、請求項14に記載の装置。
【請求項20】
前記計算モジュールはさらに、前記第1及び第2の感応信号中の上昇又は下降トレンドの最大数に基づいて対象物の個数を特定するよう構成されている、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記計算モジュールはさらに、前記感応信号の値を前記基準と比較して、前記感応信号の現在値が前記基準より大きく、前記感応信号の前値が前記基準以下であるならば、前記感応信号が上昇トレンドを含むか否かを判別し、前記感応信号の現在値が前記基準以下であり、前記感応信号の前値が前記基準より大きければ、前記感応信号が下降トレンドを含むか否かを判別するよう構成された比較ユニットをさらに備える、請求項14に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、1個以上の対象物を検出する方法及び装置に関し、より具体的には、タッチ式装置のために1個以上の対象物を検出する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、技術の急速な発展のため、電子製品には大きな変化が起きている。タッチ式電子製品は、その登場以来今日までますます普及してきている。タッチ式電子製品は省スペースであり、持ち運びが容易である。さらに、タッチ式電子製品は、指あるいはタッチペンなどを用いて直接に操作できるため、快適かつ便利に使用できる。PDA、タッチ式携帯電話、ポータブルコンピューターなどの人気製品は、ますますタッチ技術に依存してきており、タッチ式電子装置が多くの分野に広く応用されていくことは明らかである。
【0003】
静電容量式タッチ装置は、衰耗に耐え、長寿命を享受し、システム機能と光損失軽減という点で利点を有するため市場に広く受け入れられており、多くの種類の静電容量式タッチ装置が作られてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
静電容量式タッチ装置の動作原理は、コントローラーチップを用い、タッチパネル内のキャパシターの静電容量の変化を検知して、タッチする物たとえば指の位置及び動きを特定するというものである。タッチ検知処理の間、タッチパネルの水平電極アレイ及び垂直電極アレイが別個に検出され、タッチが生じる前後における静電容量の変化に基づいて、水平座標及び垂直座標が特定される。そして、水平及び垂直の各座標が重ね合わされてXY平面の座標が形成される。上記検出方法は、実際のところ、まずタッチパネル上のタッチ点をX軸上及びY軸上にそれぞれ投影し、そしてX方向及びY方向の座標を算出し、最後にこれらのX及びYの各座標を結合してXY平面内のタッチ点の座標を形成することと同等である。残念ながら、この検出方法は、単一の対象物しか検出できず、タッチ装置上の複数の対象物の検出を実現できない。
【0005】
上記に鑑み、本開示は、従来技術に存する少なくとも1個の問題を解決することを目的とする。この目的のため、接触する対象物ないしこれに伴って検知された対象物の総数のような対象物の総数を正確に特定し得る、対象物検出のための方法が提供される。さらに、タッチ装置に接触する対象物の総数を正確に特定し得る、タッチ装置上の対象物検出のための装置もまた提供される必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の代表的な実施形態では、1個以上の対象物を検出するための方法を提供する。この方法は、少なくとも1個の対象物によって1つ以上の方向に生じた1個以上の感応信号を受信し、前記感応信号中の少なくとも1個の上昇トレンド及び/又は少なくとも1個の下降トレンドをそれぞれ検出するため、受信した各感応信号を基準と比較し、受信した各感応信号中の上昇トレンド及び/又は下降トレンドの個数に基づいて対象物の個数を特定する方法であって、前記比較するステップはさらに、前記受信した感応信号につき、当該感応信号の感応方向に基づいて第1及び第2の初期感応値を設定し、前記基準を前記第1及び第2の初期感応値と比較し、前記基準と前記第1及び第2の初期感応値との比較結果に基づき、上昇トレンド又は下降トレンドが含まれているか否かを判別する
【0007】
感応信号と、感応信号中の上昇トレンド及び/又は下降トレンドの特定とに基づき、接触する対象物ないし検知された対象物が、これに伴って正確に特定され得る。
【0008】
本開示の他の代表的な実施形態では、タッチ装置に接触する対象物を検出するための方法を提供する。この方法は、少なくとも1個の対象物によってタッチ装置のタッチパネル上の1つ以上の方向に生じた1個以上の感応信号を受信し、前記受信した感応信号につき、当該感応信号の感応方向に基づいて第1及び第2の初期感応値を設定し、前記各感応信号中の少なくとも1個の上昇トレンド及び/又は少なくとも1個の下降トレンドをそれぞれ検出するため、受信した各感応信号を基準と比較し、前記基準を前記第1及び第2の初期感応値と比較し、前記基準と前記第1及び第2の初期感応値との比較結果に基づき、上昇トレンド及び/又は下降トレンドを検出し、受信した各感応信号中の上昇トレンド及び/又は下降トレンドの個数に基づいて対象物の個数を特定する。
【0009】
上述した、タッチ装置に接触する対象物を検出するための方法によれば、タッチ装置に接触する対象物の総数が、タッチ装置のタッチ面上の少なくともある方向において得られた感応信号に基づいて正確に特定され得る。この感応信号においては、上昇トレンド及び/又は下降トレンドがそれぞれ特定される。
【0010】
本開示のさらに他の代表的な実施形態では、タッチ装置上の接触する1個以上の対象物を検出するための装置を提供する。この装置は、少なくとも1個の対象物によって前記タッチ装置のタッチパネル上の1つ以上の方向に沿って生じた1個以上の感応信号を検出するよう構成された検出モジュール、及び、前記感応信号を受信し、前記受信した感応信号につき、当該感応信号の感応方向に基づいて第1及び第2の初期感応値を設定し、前記感応信号中の少なくとも1個の上昇トレンド及び/又は少なくとも1個の下降トレンドを検出するため、受信した各感応信号を基準と比較し、前記基準を前記第1及び第2の初期感応値と比較し、前記基準と前記第1及び第2の初期感応値との比較結果に基づき、上昇トレンド及び/又は下降トレンドを検出し、受信した各感応信号中の上昇トレンド及び/又は下降トレンドの個数に基づいて対象物の個数を特定するよう構成された計算モジュールを備えていてもよい。
【0011】
上述の概要も、後述する本開示の詳細な説明も、添付の図面と併せ読むことによってよりよく理解される。ここに付属する図面に示された図は例示のためのものであって、限定のためのものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の代表的な実施形態に係る、1個以上の対象物の検出のフローチャートを示す。
図2】本開示の代表的な実施形態に係る、タッチ装置の感応線の概要図を示す。
図3】本開示の代表的な実施形態に係る、1個以上の対象物の検出のための方法の一部分のフローチャートを示す。
図4】本開示の代表的な実施形態に係る、感応信号及び基準の概要図を示す。
図5】本開示の他の代表的な実施形態に係る、他の感応信号及び基準の概要図を示す。
図6】本開示のさらに他の代表的な実施形態に係る、さらに他の感応信号及び基準の概要図を示す。
図7】本開示の代表的な実施形態に係る、タッチ装置に接触する1個以上の対象物を検出するための装置の概要図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の好適な実施形態を示す添付の図面を参照して、本開示をより詳細に説明する。しかしながら、本開示は多くの異なった形態で実施可能であり、ここに示した実施形態に限定されるものと解釈されるべきではない。これらの実施形態はむしろ、本開示を徹底的かつ完全なものとし、この技術分野の通常の知識を有する者に対して本開示の範囲が十全に伝わるようにするために提示されたものである。
【0014】
明細書における「代表的な実施形態」「この代表的な実施形態」あるいは「環境」への言及は、この実施形態を参照して説明される特定の特徴、構造ないし性質が、本開示の少なくとも一つの実施形態に含まれているということを意味する。「代表的な実施形態において」あるいは「ある環境において」という句がこの明細書を通じて様々な箇所に現れるものの、これは必ずもすべて同一の実施形態について述べるものではない。この特定の特徴、構造ないし性質はさらに、適切な手法で一つ以上の実施形態と結び付き得る。
【0015】
図1を参照すると、代表的な実施形態において、1個以上の対象物を検出する方法は、以下のステップを含む。ステップ102では、少なくとも一つの方向に沿って、少なくとも1個以上の対象物により生じた感応信号を受信する。ステップ104では、この感応信号と基準信号とを比較し、この感応信号における少なくとも1個の上昇トレンド及び/又は少なくとも1個の下降トレンドを検出する。ステップ106では、この感応信号における上昇トレンド及び/又は下降トレンドの個数に基づいて、感応を起こした対象物の個数を特定する。この感応信号と、この感応信号の上昇トレンド及び/又は下降トレンドの特定とに基づいて、タッチした対象物ないし検知された対象物がそれに応じて正確に特定される。
【0016】
感応信号は、物理的接触、音響的な感応、電気的な感応あるいは映像の投影によって生じ得ることに留意すべきである。したがって、以下に示す手段による感応信号の取得についての説明は、限定ではなく例示の目的によるものである。さらに、感応信号は光学センサーあるいは電気的センサーによっても取得し得る。これらすべての変種は本開示の範囲に包含される。
【0017】
上記ステップ102はさらに、第1の方向における第1の感応信号の受信と、第2の方向における第2の感応信号の受信とを含んでいてもよい。
【0018】
以下の説明では、本開示の検出方法及び装置を応用する例としてタッチ装置が用いられるものの、本開示の範囲はこれらのタッチ装置に限定されないことに留意されたい。この技術分野の通常の知識を有する者であれば、本開示の説明を吟味した後、本開示の検出方法及び装置を応用しあるいは他の方法及び装置と結合することができることは明らかである。これらの他の方法及び装置も、やはり、本開示の範囲に包含される。
【0019】
代表的な実施形態においては、タッチ装置上の1個以上の対象物を検出するための方法を提供する。この方法は、タッチ装置から、少なくとも一つの方向に沿って1個以上の対象物により生じた感応信号を受信すること、この感応信号と基準信号とを比較し、この感応信号における少なくとも1個の上昇トレンド及び/又は少なくとも1個の下降トレンドをそれぞれ検出すること、及び、この感応信号における上昇トレンド及び/又は下降トレンドの個数に基づいて、感応を起こした対象物の個数を特定することより構成される。
【0020】
感応信号を受信するステップは、ある環境においては、タッチ装置の第1の方向から第1の感応信号を受信することと、タッチ装置の第2の方向から第2の感応信号を受信することとによりさらに構成される。
【0021】
図2を参照すると、図2は、タッチ装置の感応線の概要図を示す。タッチ装置200は、第1の方向に配置された複数の感応線202と、第2の方向に配置された複数の感応線204とを備えている。ある環境においては、第1の方向の感応線と、第2の方向の感応線とは角度をなしている。ある環境においては、感応線202がX方向に配置され、感応線204がY方向に配置され、線202と線204との間の角度が90度であってもよい。
【0022】
上記感応線は、タッチ装置上の対象物により生じた感応信号を受信するために用いられる代表的な装置のほんの一形態にすぎないことに留意されたい。音響センサーや光センサーなど他のセンサー装置も、感応信号の受信に用いることができ、これらすべてのセンサー装置は本開示の範囲に包含される。感応信号は、感応線に接触する対象物の値の連続であってもよいことに留意すべきである。
【0023】
いくつかの代表的な実施形態において、「上昇トレンド」の語は、信号の値が、基準値未満の値からこの基準値を超える値へと増加する信号部分を意味する。そして「下降トレンド」の語は、信号の値が、基準値を超える値からこの基準値未満の値へと減少する信号部分を意味する。感応信号及び基準信号はいずれも、任意の形式ないし形状の信号であってよい。実施形態の一つにおいては基準信号は水平な線であるものの、この技術分野の通常の知識を有する者であれば、実施にあたっては任意の形式の基準信号を採用することができ、これらの基準信号はいずれも、本開示の範囲に包含される。
【0024】
図2に戻ると、タッチ装置上の対象物を検出するとき、本開示の実施形態に係る方法は、まず、X方向について第1の感応信号を受信し、この第1の感応信号と基準信号とを比較してX方向における上昇トレンド及び/又は下降トレンドの個数を検出し、X方向における上昇トレンド及び/又は下降トレンドの個数に基づいて、X方向におけるタッチ対象物の個数を特定する。そして、Y方向について第2の感応信号を受信し、この第2の感応信号と基準信号とを比較してY方向における上昇トレンド及び/又は下降トレンドの個数を検出し、Y方向における上昇トレンド及び/又は下降トレンドの個数に基づいて、Y方向におけるタッチ対象物の個数を特定する。
【0025】
所望により、X方向におけるタッチ対象物の個数がY方向におけるタッチ対象物の個数と比較され、多い方の個数が、タッチ装置に接触した対象物の実際の個数であるとして選択される。さらに、精度を向上させるため、より多くの方向(例えば、3、4あるいは5つの方向)から、より多くの感応信号を受信してもよく、これもまた本開示の範囲に包含される。
【0026】
図3は、感応信号と基準信号とを比較して、感応信号中の少なくとも1個の上昇トレンド及び/又は少なくとも1個の下降トレンドの個数を検出する、本開示の実施形態に係るステップのフローチャートを示す。このフローチャートによれば、この比較するステップはさらに以下のステップを含む。
【0027】
ステップ302では、感応信号の現在値を基準信号と比較して、感応信号の現在値が基準より大きいか否かを判別し、YESであれば処理をステップ304に移し、NOであれば処理をステップ308に移す。
【0028】
ステップ304では、感応信号の前値を基準と比較して、感応信号のこの前値が基準以下であるか否かを判別し、YESであれば処理をステップ306へと移し、感応信号が上昇トレンドを含むと決定してステップ312へ移し、NOであれば、処理を直接にステップ312へ移す。
【0029】
ステップ308では、感応信号の前値を基準と比較して、感応信号のこの前値が基準より大きいか否かを判別し、YESであれば処理をステップ310へと移し、感応信号が下降トレンドを含むと決定してステップ312へ移し、NOであれば、処理を直接にステップ312へ移す。
【0030】
ステップ312は、現在値が感応信号の最終値であるか否かを判別し、YESであれば処理をステップ314へと移して、感応信号中の上昇トレンド及び/又は下降トレンドの個数を特定し、NOであれば処理をステップ302に戻す。
【0031】
代表的な実施形態において、上記図1のステップ104に示す比較のステップは、さらに以下のステップ、すなわち、第1の初期感応値を設定すること、感応信号の第1の初期感応値と基準とを比較すること、第1の初期感応値と基準とを比較すること、及び、感応信号のうち元来の感応信号と第1の初期感応値との間の信号部分について、基準と第1の初期感応値との比較結果に基づき、上昇トレンド又は下降トレンドが含まれているか否かを判別すること、により構成されていてもよい。第1の初期感応値は、感応信号の方向に従って設定される。この代表的な実施形態において、感応信号の方向は、押圧する方向にある対象物により生じる変位変化の方向である。例えば、図4においては感応信号の方向は上昇方向であり、図5においては感応信号の方向は下降方向である。この代表的な実施形態において、感応信号の方向が上昇方向であるならば、第1の初期感応値は基準より低く設定される。感応信号の方向が下降方向であるならば、第1の初期感応値は基準より高く設定される。感応信号の始点において感応信号が部分的にしか得られない場合、第1の初期感応値の設定は、完備した感応信号を得るように機能し、感応信号の開始部分が部分的にしか得られなくても、それのために完備された感応信号によって、対象物の正確な個数が得られるようにする。
【0032】
他の代表的な実施形態では、図1のステップ104に示す比較のステップは、さらに以下のステップ、すなわち、受信した感応信号につきこの感応信号の感応方向に基づいて第2の初期感応値を設定すること、基準を第2の初期感応値と比較すること、及び、感応信号のうち元来の感応信号と第2の初期感応値との間の信号部分について、基準と第2の初期感応値との比較結果に基づき、感応信号が上昇トレンド又は下降トレンドを含んでいるか否かを判別すること、により構成されていてもよい。第2の初期感応値は、感応信号の方向に従って設定される。この代表的な実施形態においては、上述のように、感応信号の方向は、押圧してくる対象物により生じる変位変化の方向である。この代表的な実施形態において、感応信号の方向が上昇方向であるならば、第2の初期感応値は基準より低く設定される。そして感応信号の方向が下降方向であるならば、第2の初期感応値は基準より高く設定される。感応信号の終点において感応信号が部分的にしか得られない場合、第2の初期感応値の設定は、完備した感応信号を得るために機能し、感応信号の終了部分が部分的にしか得られなくても、それのために完備された感応信号によって、対象物の正確な個数が得られるようにする。
【0033】
感応信号の初期値の前に第1の初期感応値を設定し、感応信号の終値の後に第2の初期感応値を設定することにより、初期値あるいは終値に、上昇トレンド又は下降トレンドの存在を特定するために比較する前値がない、という事態が回避される。さらに、第1及び第2の初期感応値を導入することにより、上昇及び下降の各トレンドの個数を等しくし得る。上昇トレンドの個数又は下降トレンドの個数のいずれも、感応を起こした対象物の個数として用いることができる。
【0034】
代表的な実施形態においては、上昇トレンドの個数が下降トレンドの個数に等しくないならば、本開示の方法はステップ102からステップを再び実行する。
【0035】
代表的な実施形態において、本方法はさらに、感応信号が上昇トレンドにおいて基準に交差する点と、これに後続する点であって感応信号が下降トレンドにおいて基準に交差する直近の点との距離を比較すること、及び、この距離が閾値より大きいか否かを判別することにより、感応を引き起こしている対象物の存在を検証すること、により構成されている。
【0036】
同様に、本方法はさらに、感応信号が下降トレンドにおいて基準に交差する点と、これに後続する点であって感応信号が上昇トレンドにおいて基準に交差する直近の点との距離を比較すること、及び、この距離が閾値より大きいか否かを判別することにより、感応を引き起こしている対象物の存在を検証すること、により構成されていてもよい。
【0037】
本開示の実施形態によれば、閾値は、指の幅、例えば感応信号を生じ得る人間の指1本の最小幅に関係付けられてもよい。比較により、誤ったタッチ現象あるいはノイズを意図的に除去することができる。
【0038】
上述のように、本開示の方法は、他の方向から感応信号を受信し、当該他の方向における対象物の個数を特定し、これらすべての方向のうち最大の数を対象物の個数として選択することを含んでいてもよい。
【0039】
図4を参照すると、信号402は感応信号であり、参照数字404は基準信号を表す。4個の点A、B、C及びDはそれぞれ交差する点であり、感応対象物の数を特定するために用いることができる。これらのうち、A及びCは上昇して交差する点であり、B及びDは下降して交差する点である。感応対象物の存在は、2個の交差点A及びBの間の距離を閾値と比較すること(または、2個の点C及びDの間の距離を閾値と比較すること)により検証される。この距離が閾値より高ければ、点A及びBの間(またはC及びDの間)に感応対象物が存在する。
【0040】
基準信号404は、感応装置の感応線のX方向及びY方向における感応能力を計測し、平均して評価することにより得ることができる。本開示の実施形態によれば、感応装置は静電容量式タッチ装置であってもよい。X方向及びY方向は直角でなくてもよく、感応装置の実用上の要求にしたがい任意の角度をとってよい。
【0041】
図5は、本開示の実施形態に係る、感応信号と基準信号との他の比較を示す。図5において、参照数字502は感応信号を表し、数字504は基準信号である。4個の点A’、B’、C’及びD’はそれぞれ交差する点であり、感応対象物の数を特定するために用いることができる。感応対象物の存在は、2個の点A’及びB’の間の距離を閾値と比較すること(または、2個の点C’及びD’の間の距離を閾値と比較すること)により検証され得る。この距離が閾値より高ければ、点A’及びB’の間(またはC’及びD’の間)に感応対象物が存在する。図5は、2個の感応対象物により生じた感応信号を示すのみであることに留意されたい。さらに多くの対象物により生じる感応信号にも、同じ方法を適用できることが理解されよう。
【0042】
図6は、本開示の他の実施形態に従って受信された感応信号及び基準信号を示す。感応信号は、音響式タッチ装置の受信器から受信される。このような装置は、1個の送信器と1個の受信器とを有する。送信器は、タッチ装置からの電気信号を音響信号に変換する。音響信号は、タッチ装置の四つの側面に刻まれた超音波反射ストライプにより反射され、受信器により受信される。そして受信器はこれを電気信号に変換する。対象物がタッチ装置に接触したとき、反射された音響エネルギーの一部が対象物により吸収され、このため受信器により受信される音響信号が変化する。この変化した信号がタッチ装置のコントローラーにより処理され、そして感応信号が得られる。
【0043】
図6を参照すると、参照数字602は感応信号を表し、604は基準を表す。感応信号602は音波信号である。感応信号602は、2個の減衰部分606及び608からなる。この感応信号の減衰部分は、対象物がタッチ装置に接触するとき、当該部分のエネルギーが吸収されるために生成される。本方法によれば、この感応信号は、2個の上昇トレンドと2個の下降トレンドとを有する。点M、N、E及びFはそれぞれ交差する点であり、感応対象物の数を特定するために用いることができる。感応対象物の存在は、2個の点M及びNの間の距離を閾値と比較すること(または、2個の点E及びFの間の距離を閾値と比較すること)により検証され得る。この距離が閾値より高ければ、点M及びNの間(またはE及びFの間)に感応対象物が存在する。
【0044】
タッチ装置などに接触した対象物を検出する上述の方法によれば、タッチ装置の接触面上の少なくともある方向について得られた感応信号につき、上昇トレンド及び/又は下降トレンドがそれぞれ特定され、これに基づいて、そこに接触している対象物の総数が正確に特定され得る。
【0045】
代表的な実施形態において、タッチ装置上の1個以上の対象物を検出するための装置は、対象物により発生された感応信号を受信するよう構成された検出モジュール、及び、感応信号中の少なくとも1個の上昇トレンド及び/又は少なくとも1個の下降トレンドを検出するために感応信号を基準信号と比較し、感応信号中の上昇トレンド及び/又は下降トレンドの個数に基づいて対象物の個数を特定するよう構成された計算モジュールを備える。ある実施形態では、この装置はさらに、対象物の総数を出力するよう構成された出力モジュールを備える。
【0046】
図7を参照すると、装置700は、対象物により生じた感応信号を検出するよう構成された検出モジュール702、検出モジュール702に接続され、感応信号を受信し、感応信号中の少なくとも1個の上昇トレンド及び/又は少なくとも1個の下降トレンドを検出するために感応信号を基準信号と比較し、感応信号中の上昇トレンド及び/又は下降トレンドの個数に基づいて対象物の個数を特定するよう構成された計算モジュール704、及び、計算モジュール704に接続され、対象物の総数を出力するよう構成された出力モジュール706により構成されていてもよい。ある実施形態においては、検出モジュール702は、対象物により生じた、第1の方向における第1の感応信号及び第2の方向における第2の感応信号を受信して、第1の感応信号及び第2の信号を計算モジュール704に送る。ある実施形態においては、検出モジュールは、音響信号を送信するよう構成された送信器と、音響信号を受信してこれを電気信号に変換するように構成された受信器とを備えていてもよい。ある実施形態においては、計算モジュールはさらに、感応信号中の上昇トレンド及び/又は下降トレンドの個数に従って対象物の個数を特定するよう構成される。
【0047】
代表的な実施形態において、検出モジュール702はさらに、第1及び第2の初期感応値を設定するよう構成される。第1の初期感応値及び第2の初期感応値は、上述したように、感応信号の方向に従って設定される。この代表的な実施形態において、感応信号の方向は、対象物により生じる変位変化の方向である。例えば、図4においては感応信号の方向は上昇方向であり、図5においては感応信号の方向は下降方向である。この代表的な実施形態において、感応信号の方向が上昇方向であるならば、第1の初期感応値は基準より低く設定され、感応信号の方向が下降方向であるならば、第1の初期感応値は基準より高く設定される。これに伴い、この代表的な実施形態においては、感応信号の方向が上昇方向であるならば、第2の初期感応値は基準より低く設定され、感応信号の方向が下降方向であるならば、第2の初期感応値は基準より高く設定される。代表的な実施形態において、計算モジュール704は、比較ユニットを備えていてもよい。比較ユニットは、感応信号の現在値を基準と比較して、感応信号の現在値が基準より大きいか否かを判別するよう構成されており、感応信号の現在値が基準より大きく、感応信号の前値が基準以下であるならば、感応信号が上昇トレンドを含むか否かを決定し、感応信号の現在値が基準以下であり、感応信号の前値が基準より大きければ、感応信号が下降トレンドを含むか否かを決定する。
【0048】
代表的な実施形態において、計算モジュール704はさらに、基準と第1の初期感応値とを比較し、感応信号のうち元来の感応信号と第1の初期感応値との間の信号部分について、基準と第1の初期感応値との比較結果に基づき、上昇トレンド又は下降トレンドが含まれているか否かを判別するよう構成される。代表的な実施形態において、計算モジュール704はさらに、基準と第2の初期感応値とを比較し、感応信号のうち元来の感応信号と第2の初期感応値との間の信号部分について、基準と第2の初期感応値との比較結果に基づき、上昇トレンド及び/又は下降トレンドが含まれているか否かを判別するよう構成される。
【0049】
代表的な実施形態において、計算モジュール704はさらに、感応信号の、隣接する2個の交差点間の距離を比較し、2個の隣接する交差点間の信号部分が有効な感応信号部分であるか否かを決定し、有効な信号部分の個数に従って対象物の個数を決定するよう構成される。例えば、信号部分が基準の上であるときは、上昇して交差する点と、これに隣接する下降して交差する点との間の距離が閾値より大きければ、信号部分は有効である。
【0050】
代表的な実施形態において、検出モジュール702は、第1の方向における第1の感応信号及び第2の方向における第2の感応信号を受信するよう構成される。第1の方向及び第2の方向は角度をなす。この角度は、望ましくは90度である。検出モジュール502はまた、第1及び第2の感応信号中の上昇又は下降トレンドの最大数に従ってタッチ対象物の個数を特定するよう構成される。
【0051】
この技術分野の通常の知識を有する者は、広義の発明思想を逸脱することなく、上述の例に対し変更を加え得ることを理解されたい。したがって、本開示は、開示した特定の例に限定されるものではなく、添付した請求の範囲に定義された本開示の精神及び範囲に属する改変をなしたものを包含することを意図するものである。
【0052】
(関連出願の相互参照)
本願は、2010年9月29日に中華人民共和国国家知識産権局に出願された中国特許出願第201010295805.5に基づく優先権及び利益を主張し、その全文を参照のためここに援用する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7